説明

極細長繊維不織布とその製造方法およびその用途

【課題】、繊維径が小さく、柔軟性、吸水性、濾過性に優れ、かつ機械的強度にも優れる極細長繊維不織布とその製造方法および用途を提供する。
【解決手段】平均繊度が0.5dtex以下である極細長繊維からなる不織布であって、不織布構造体中に水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールが存在しており、80℃水中で60分間浸漬処理を行った後のバイレック法による20℃、10分間の吸上性が30mm以上であることを特徴とする極細長繊維不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細長繊維からなる不織布とその製造方法および用途に関する。より詳細には、極細化処理前の複合長繊維を構成していた水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールが極細化後の長繊維不織布の内部に一部残存している不織布、その製造方法及びそれを使用したワイパー、フィルター、電池用セパレーター、キャパシタ用セパレーター等の用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
極細繊維からなる不織布は、表面積が大きく、吸液性、柔軟性、濾過性等に優れ、幅広い用途で利用されている。
溶融紡糸と直結した効率的な不織布製造方法としては、スパンボンド法とメルトブローン法がある。一般的なスパンボンド法によって製造された従来の長繊維不織布は、機械的強度には優れるものの、繊維径が大きいため表面積が小さく、吸液性、柔軟性、濾過性に欠けるものであった。それに比べて、メルトブローン不織布は繊維径が小さく、これによる柔軟性、表面積の大きさを活かし、ワイパー材やフィルター基材等、幅広く利用されている。しかし、メルトブローン不織布は、それ単独では機械的強度が低く、支持層としてスパンボンド不織布等を積層して利用されるのが一般的である。
【0003】
また、極細長繊維不織布の製造法としては、2成分以上のポリマーからなる複合長繊維不織布を処理して同不織布構成繊維を長さ方向に分割処理して極細化する方法も知られているが、この場合、不織布中に2種以上の成分が存在することになる。化学薬品を使用して一方の成分を除去することで、1成分のみからなる極細長繊維不織布を得ることはできるが、除去する成分とは別の成分が好ましくない影響を受けるため、複合繊維を構成する成分の組み合せが限定される場合が多い。
【0004】
一方、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することもある)は水溶性のポリマーであって、その基本骨格と分子構造、形態、各種変性により水溶性の程度を変えることができることが知られている。また、PVAは生分解性であることが確認されている。地球環境的に、合成物を自然界といかに調和させるかが大きな課題となっている現在、このような基本性能を有するPVAおよびPVA系繊維は多いに注目されている。
【0005】
本発明者等は、特開2001−262456公報(特許文献1)で、溶融紡糸によりPVAと他の熱可塑性ポリマーとの複合長繊維を製造すると同時に得られた同複合長繊維を不織布とする方法について、さらには、同複合長繊維不織布からPVAを水で抽出除去して得られる異型断面あるいは極細繊度を有する長繊維不織布について提案している。
しかしながら、該公報の発明では、PVAの一部を残存させること、さらに残存させる際の条件により従来の常識からは予測できない耐久性に優れた吸水性を有する極細長繊維布が得られることについて記載がない。通常の熱水による抽出処理及び乾燥処理を行うと耐久性ある吸水性は得られない。
【0006】
【特許文献1】特開2001−262456公報(0039欄および0040欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、繊維径が小さく、耐久性ある吸水性を有し、柔軟性に優れ、かつ機械的強度にも優れる極細長繊維不織布とその製造方法およびその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、特定の水溶性熱可塑性樹脂、好ましくは水溶性熱可塑性PVAと他の熱可塑性ポリマーから構成された溶融紡糸による複合長繊維不織布(いわゆるスパンボンド不織布)から該水溶性熱可塑性樹脂を特定の条件下にて抽出除去および乾燥処理して該複合長繊維を極細化することにより、耐久性ある吸水性および機械的強度に優れ、さらには柔軟性に優れる極細長繊維不織布が得られることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、平均繊度が0.5dtex以下である極細長繊維からなる不織布であって、不織布構造体中に水溶性熱可塑性樹脂、好ましくは水溶性熱可塑性PVAが存在しており、80℃水中で60分間浸漬処理を行った後のバイレック法による20℃、10分間の吸上性が30mm以上で、不織布の縦方向および横方向の引張強度(B)N/5cmが、目付(A)g/mに対して(B)/(A)≧0.25であることを特徴とする極細長繊維不織布である。
【0010】
また、本発明は、水溶性熱可塑性樹脂(a)、好ましくは水溶性熱可塑性PVA、および他の熱可塑性ポリマー(b)からなり、該水溶性熱可塑性樹脂(a)を水で抽出除去することにより、該熱可塑性ポリマー(b)からなる平均繊度0.5dtex以下の極細長繊維束となり得る複合長繊維からなる不織布から極細長繊維不織布を製造する方法において、該複合長繊維から該熱可塑性樹脂(a)の大部分を水で溶解除去すると共に、該熱可塑性樹脂(a)の一部を不織布内に残存させることを特徴とする極細長繊維不織布の製造方法である。さらに、本発明は、このような極細長繊維不織布と好適な用途として、このような極細長繊維不織布からなるワイパー、フィルター、電池用セパレーター、キャパシタ用セパレーター等に関するものである。
【0011】
吸水性に優れた極細長繊維不織布を製造する方法として、極細長繊維不織布にPVA水溶液を付与し乾燥させる方法が考えられるが、この方法の場合には、付与したPVAが水や温水により簡単に脱落し、本発明が目的とする耐久性ある吸水性は得られない。また、この方法において、PVAが水により簡単に脱落することを防ぐ方法として、付与したPVA水溶液の乾燥条件として、PVAが結晶化するような高い温度を採用することにより、付与したPVAの耐久吸水性を高める方法も考えられるが、この方法の場合には、結晶化した後のPVAは吸水性が低下し、したがって、これらの一般的な方法では、十分な吸水性は得られない。
【0012】
また、本発明では、不織布は長繊維不織布に限定されているが、その理由は、長繊維不織布は、上記したように、生産性の点で他の不織布、例えば短繊維からなるウェッブをニードルパンチや水流絡合させて製造する乾式不織布や、水に分散させたショートカット繊維を漉き上げて乾燥させる、いわゆる湿式不織布と比べて極めて優れている。更に、長繊維不織布は、構成繊維が長繊維であることから不織布からの繊維の脱落が生じにくく、ワイパーやフィルター、電池用やキャパシタ用セパレーター等の繊維脱落が嫌われる用途に極めて優れている。更に、長繊維不織布は不織布の強度が短繊維からなる不織布やショートカット繊維からなる不織布等と比べて一般的に高く、この点からも、強度が要求されるワイパー、フィルター、電池用やキャパシタ用セパレーターに極めて適していると言える。
【0013】
本発明の極細長繊維不織布が耐久性に優れた吸水性を有して理由としては、水溶性熱可塑性樹脂(a)が極細化前の複合繊維の段階で繊維を構成している一成分であったことから、繊維を構成している他の熱可塑性ポリマー(b)との間で何らかの結合が存在していること、さらに、水溶性熱可塑性樹脂(a)除去後の熱可塑性樹脂(b)は極細繊維となり、水溶性熱可塑性樹脂(a)は極細繊維中或いは繊維間の細い隙間の奥に主として存在していること等により、水溶性熱可塑性樹脂(a)を水により抽出除去する際の処理では極細繊維表面から脱落しにくい状態となっており、それが耐久性ある吸水性をもたらし、さらに本発明では、水により水溶性熱可塑性樹脂(a)を除去した後の乾燥処理を水溶性熱可塑性樹脂(a)が結晶化し難い温度条件で行っており、これにより水溶性熱可塑性樹脂(a)の有する吸水性が損なわれることがないものと予想される。
【0014】
一般に、複合繊維から一成分を除去する際には、除去処理速度を高めるために、高温の溶媒を用いて激しい攪拌条件で洗浄処理を何回も繰り返し、最後に高温で乾燥する方法が採用されているが、このような従来採用されているような除去条件を採用すると、吸水性が発揮できる程度の水溶性熱可塑性樹脂(a)は残留せず、かつ残留していたとしても、乾燥時に結晶化することとなり、本発明が目的とするような耐久性ある吸水性は得られない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、水溶性熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂(b)からなる極細長繊維は平均0.5dtex以下の繊度を有していることが必要であり、0.4dtex以下の繊度を有することが好ましく、0.3dtex以下の繊度を有することがより好ましく、0.25dtex以下の繊度を有することが特に好ましい。極細長繊維の繊度が0.5dtexよりも大きい場合には、極細化が十分でなく、繊維表面積が低下し、さらに柔軟性、吸液性等が著しく低下する。また、下限値に関しては特に限定はないが、生産のし易さの点で0.001dtex以上が好ましい。
【0016】
本発明の極細長繊維不織布の縦方向および横方向の引張強度(B)N/5cmは、目付(A)g/mに対して横方向及び縦方向ともに(B)/(A)≧0.25であることが必要で、(B)/(A)≧0.3であることが好ましく、(B)/(A)≧0.4であることがさらに好ましく、(B)/(A)≧0.5であることが特に好ましい。(B)/(A)<0.25の場合、極細長繊維不織布の強度が不十分であり、単独で十分な機能を果たすことができない。
一方で、引張強度(B)N/5cmと目付(A)g/mは(B)/(A)≦10.0を満足することが好ましい。(B)/(A)>10.0の場合には、極細長繊維不織布の柔軟性が低下する場合がある。なお、(B)/(A)の値は、平均繊度、紡糸引取速度、熱圧着・絡合条件等により変えることが可能で、平均繊度を大きくする、紡糸引取速度を大きくする、あるいは熱圧着・絡合条件を強化する等により、(B)/(A)の値を高くすることができる。
【0017】
本発明の極細繊維不織布は、不織布構造体中に水溶性熱可塑性樹脂の一部を残存させることによって不織布の吸水性をコントロールさせることが大きな特徴である。具体的には、本発明の極細繊維不織布は、80℃水中で60分間浸漬処理を行った後のバイレック法による20℃、10分間の吸上性が30mm以上であることが必要であり、50mm以上であることがより好ましく、60mm以上であることが特に好ましい。吸上性が30mm未満の場合には、十分な吸水機能を果たすことができず、吸水性が要求されるフィルター、ワイパー、電池用セパレーター等に使用できない。このような耐久性ある吸液性は、特定太さの極細繊維からなる不織布に特定の熱可塑性性樹脂が残存され、かつそれが特定の条件で乾燥され、特定の条件下でカレンダー処理すること等により達成される。但し、吸上性が300mmを越えるようなものは製造することが困難である。なお、ここでいう「80℃水中で60分間浸漬処理」とは、「不織布の重量に対して1000倍の水量の80℃水中に不織布約20gを浸漬し、軽い攪拌条件下で60分間放置し、その後、不織布を取り出し、20℃の水で表面を洗い流し、その状態で80℃で3分間乾燥し、得られる不織布の吸上性を測定」する操作を言う。
【0018】
不織布の吸上性はJIS−1018−70「メリヤス生地試験法」(吸水性B法(バイレック法)KRT No.411−2)に準じて測定される。2.5cm×32cmの不織布の下端に荷重を取り付け、水溶性インク(インク/水=1/5)に試験片の下端1cmまで沈め、10分間保持したときの吸い上げ高さを測定する。
本発明の極細長繊維不織布構造体中に存在する水溶性熱可塑性樹脂の割合は、不織布質量に対して5質量%以下であることが必要であり、0.001〜5質量%であることが好ましく、0.03〜4質量%であることがより好ましく、0.05〜3.5質量%であることが特に好ましい。水溶性熱可塑性樹脂の割合が5質量%より多い場合には、使用時に水溶性熱可塑性樹脂の溶出が高くなり、また不織布の柔軟性が低下する。一方、水溶性熱可塑性樹脂の割合が0.001質量%より少ない場合には、不織布の吸水性が十分でなく、ワイパー等の用途で使用する際の吸水性能で劣る場合がある。
【0019】
本発明においては、不織布表面の30%以上が水溶性熱可塑性樹脂で被覆されていることが好ましく、50%以上の場合がより好ましい。水溶性熱可塑性樹脂による被覆率が30%未満の場合には、極細長繊維不織布の吸水性が低下する。
不織布表面の水溶性熱可塑性樹脂被覆率はX線光電子分光法により分析することができる。
【0020】
本発明の極細長繊維不織布で用いられる水溶性熱可塑性樹脂として、水にて溶解除去できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド樹脂;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール樹脂;ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、PVA、ポリビニルアセタール等のポリビニル系樹脂;アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリル系共重合体およびそのアルカリ金属塩;イソブチレン、スチレン、エチレン等と無水マレイン酸との共重合体のアルカリ金属塩、さらにはスルホン酸等の可溶化置換基を有するポリエステル、ポリアミド、ポリスチレンおよびそのアルカリ金属塩等を挙げることができる。もちろん、本発明で使用できる水溶性熱可塑性樹脂は溶融紡糸が可能であり、かつ120℃以下の水に溶解し、常温で固体のものであらねばならない。
【0021】
これらの水溶性樹脂の中でも、溶融紡糸安定性に優れかつ80℃水中で60分間浸漬処理した後の吸水性が特に優れていることから、水溶性熱可塑性PVAが最適樹脂として挙げられる。
水溶性熱可塑性PVAは、PVAのホモポリマーは勿論のこと、例えば、共重合、末端変性、および後変性により官能基を導入した変性PVAも包括するものである。勿論、溶融紡糸可能なものであらねばならない。通常の一般市販PVAは溶融温度と熱分解温度が近接しているため溶融紡糸することはできず(すなわち熱可塑性ではなく)、種々の工夫が必要である。
【0022】
PVAの粘度平均重合度(以下、単に重合度と略記する)は200〜800が好ましく、230〜600がより好ましく、250〜500が特に好ましい。通常の繊維用に使用されるPVAは、重合度が高いほど高強度繊維が得られることから、重合度1500以上のものが一般的であり、例えば重合度約1700のものや約2100のものが一般的である。そのことから考えると、本発明で用いられるPVAの重合度200〜800は極めて低いと言える。重合度が200未満の場合には紡糸時に十分な曳糸性が得られず、その結果として満足な複合長繊維不織布が得られない場合がある。一方、重合度が800を越えると溶融粘度が高すぎて紡糸ノズルからポリマーを吐出することができず、満足な複合長繊維不織布を得られない場合がある。
【0023】
PVAの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、PVAを完全に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](dl/g)から次式により求められるものである。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
【0024】
本発明に用いられるPVAのけん化度は90〜99.99モル%の範囲が好ましく、92〜99.9モル%がより好ましく、94〜99.8モル%が特に好ましい。けん化度が90モル%未満の場合には、PVAの熱安定性が悪く熱分解やゲル化によって安定な複合溶融紡糸を行うことができない場合がある。一方、けん化度が99.99モル%よりも大きいPVAは安定に製造することが困難である。
【0025】
PVAは、ビニルエステル系重合体のビニルエステル単位をけん化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でもPVAを生産性よく得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
【0026】
本発明の極細長繊維不織布を構成するPVAは、ホモポリマーであっても共重合単位を導入した変成PVAであってもよいが、複合溶融紡糸性、吸水性、繊維物性および不織布物性の観点からは、共重合単位を導入した変性PVAを用いることが好ましい。共重合単量体の種類としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類、アクリル酸およびその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等のオキシアルキレン基を有する単量体、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類、酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類またはそのエステル化物、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、または無水イタコン酸等に由来するカルボキシル基を有する単量体;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等に由来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。これらの単量体の含有量は、共重合PVAを構成する全単位のモル数を100%とした場合の通常その20モル%以下である。また、共重合されていることのメリットを発揮するためには、0.01モル%以上が上記共重合単位であることが好ましい。
【0027】
これらの単量体の中でも、入手のしやすさなどから、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテートで代表されるアリルエステル類、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、 N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類、オキシアルキレン基を有する単量体、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類に由来する単量体が好ましい。
【0028】
特に、共重合性、複合溶融紡糸性および繊維物性等の観点からエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンの炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類がより好ましい。炭素数4以下のα−オレフィン類およびビニルエーテル類に由来する単位は、PVA中に0.1〜20モル%存在していることが好ましく、0.5〜18モル%がより好ましい。
さらに、α−オレフィンがエチレンである場合には、特に繊維物性が高くなることからもっとも好ましく、特にエチレン単位が3〜20モル%存在する場合が好適であり、より好ましくは5〜18モル%エチレン単位が導入された変性PVAを使用する場合である。
【0029】
本発明で使用するPVAは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合に使用される開始剤としては、α,α'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、nープロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、0℃〜200℃の範囲が適当である。
【0030】
本発明で使用するPVAにおけるアルカリ金属イオンの含有割合は、PVA100質量部に対してナトリウムイオン換算で0.00001〜0.05質量部が好ましく、0.0001〜0.03質量部がより好ましく、0.0005〜0.01質量部が特に好ましい。アルカリ金属イオンの含有割合が0.00001質量部未満のものは工業的に製造困難である。またアルカリ金属イオンの含有量が0.05質量部より多い場合には複合溶融紡糸時のポリマー分解、ゲル化および断糸が著しく、安定に繊維化することができない場合がある。なお、アルカリ金属イオンとしては、カリウムイオン、ナトリウムイオン等が挙げられる。
【0031】
本発明において、特定量のアルカリ金属イオンをPVA中に含有させる方法は特に制限されず、PVAを重合した後にアルカリ金属イオン含有の化合物を添加する方法、ビニルエステルの重合体を溶媒中においてけん化するに際し、けん化触媒としてアルカリイオンを含有するアルカリ性物質を使用することによりPVA中にアルカリ金属イオンを配合し、けん化して得られたPVAを洗浄液で洗浄することにより、PVA中に含まれるアルカリ金属イオン含有量を制御する方法などが挙げられるが、後者の方法が好ましい。なお、アルカリ金属イオンの含有量は、原子吸光法で求めることができる。
【0032】
けん化触媒として使用するアルカリ性物質としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムが挙げられる。けん化触媒に使用するアルカリ性物質のモル比は、酢酸ビニル単位に対して0.004〜0.5が好ましく、0.005〜0.05が特に好ましい。けん化触媒は、けん化反応の初期に一括添加しても良いし、けん化反応の途中で追加添加しても良い。
【0033】
けん化反応の溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましく、含水率を0.001〜1質量%に制御したメタノールがより好ましく、含水率を0.003〜0.9質量%に制御したメタノールがもっと好ましく、含水率を0.005〜0.8質量%に制御したメタノールが特に好ましい。洗浄液としては、メタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、水などが挙げられ、これらの中でもメタノール、酢酸メチル、水の単独もしくは混合液がより好ましい。
洗浄液の量としてはアルカリ金属イオンの含有割合を満足するように設定されるが、通常、PVA100質量部に対して、300〜10000質量部が好ましく、500〜5000質量部がより好ましい。洗浄温度としては、5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。洗浄時間としては20分間〜100時間が好ましく、1時間〜50時間がより好ましい。
【0034】
また本発明の目的や効果を損なわない範囲で、PVAには融点や溶融粘度を調整する等の目的で可塑剤を添加することが可能である。可塑剤としては、従来公知のもの全てが使用できるが、ジグリセリン、ポリグリセリンアルキルモノカルボン酸エステル類、グリコール類にエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを付加したものが好適に使用される。そのなかでも、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイドを1〜30モル付加した化合物が好ましい。
【0035】
次に本発明の極細長繊維不織布の製造方法について説明する。本発明の極細長繊維不織布は、水溶性熱可塑性樹脂(a)と他の熱可塑性樹脂(b)からなる複合長繊維で構成された不織布から該水溶性熱可塑性樹脂(a)を水で溶解(抽出)除去することにより製造することができる。
【0036】
本発明に用いられる水溶性熱可塑性樹脂(a)以外の熱可塑性樹脂(b)としては水に不溶の熱可塑性樹脂であり、その具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート共重合体、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルおよびその共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン10、ナイロン12、ナイロン6−12等の脂肪族ポリアミドおよびその共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンおよびその共重合体、エチレン単位を25モル%から70モル%含有する水不溶性のエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン系、ポリジエン系、塩素系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、フッ素系のエラストマー等の中から少なくとも一種類を選んで用いることができる。
本発明に好適に用いられるPVAと複合紡糸しやすい点からは、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ナイロン6、ナイロン66、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびエチレン単位を25モル%から70モル%含有する上記エチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。
【0037】
水溶性熱可塑性樹脂(a)と他の熱可塑性樹脂(b)からなる複合長繊維不織布は、溶融紡糸と不織布形成を直結したいわゆるスパンボンド不織布の製造方法によって効率良く製造することができる。
【0038】
例えば、水溶性熱可塑性樹脂(a)と他の熱可塑性樹脂(b)をそれぞれ別の押出機で溶融混練し、引き続きこれら溶融したポリマーの流れをそれぞれ紡糸頭に導き、合流し、流量を計量し、紡糸ノズル孔から吐出させ、この吐出糸条を冷却装置により冷却せしめた後、エアジェット・ノズルのような吸引装置を用いて、目的の繊度となるように、1000〜6000m/分の糸条の引取り速度に該当する速度で高速気流により牽引細化させた後、開繊させながら移動式の捕集面の上に堆積させて不織布ウエブを形成させ、引き続きこのウエブを部分熱圧着して巻き取ることによって複合長繊維不織布を得ることができる。
【0039】
複合長繊維不織布を構成する複合長繊維の長さ方向に分離可能な複合断面としては、分割性や極細化後の長繊維の均一性を考慮すると、ミカンの横断面形状型または扇型の形状を有するもの、短冊状に配列した貼り合せ型形状を有するもの、海成分と島成分からなる海島型の形状を有するものが好ましい。複合長繊維の横断面形状がミカンの横断面形状型、扇型、或いは貼り合せ型の形状を有する場合には、複合繊維を構成する極細繊維形成成分(b)は水溶性熱可塑性樹脂(a)により2〜20個に分割されているのが生産性の点で好ましい。また複合断面形状が海島型である場合には、極細繊維形成成分(b)である島成分の数としては2〜800の範囲が生産性の点で好ましく、より好ましくは10〜200の範囲である。特に、横断面形状がミカンの横断面形状型、扇型、或いは貼り合せ型等の異型断面形状であり、極細繊維形成性成分(b)が6〜15個に分割されている複合長繊維は耐久性ある吸水性の点で特に優れており、本発明には特に好適である。
【0040】
ワイパーに使用する場合には、繊維断面が角張ったものがふき取り性に優れていることから、ミカンの横断面形状型または扇型の形状を有するもの、短冊状に配列した貼り合せ型形状を有するものが好ましく、一方、電池用セパレーターやフィルターに用いる場合には、繊維の細さが重要であることから、細い繊維が得られやすい海島型の形状が好ましい。
【0041】
本発明に用いる熱可塑性樹脂(b)と水溶性熱可塑性樹脂(a)とからなる複合長繊維不織布における熱可塑性ポリマー(b)と水溶性熱可塑性樹脂(a)の質量比は目的に応じて適宜設定されるので特に制限はないが、5/95〜92/8が好適であり、10/90〜90/10がより好ましい。好適な範囲を外れた場合には複合した効果が現れない場合がある。
【0042】
また本発明の目的や効果を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂(b)および水溶性熱可塑性樹脂(a)には、必要に応じて銅化合物等の安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤を重合反応時、またはその後の工程で添加することができる。特に熱安定剤としてヒンダードフェノール等の有機系安定剤、ヨウ化銅等のハロゲン化銅化合物、ヨウ化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属化合物を添加すると、繊維化の際の溶融滞留安定性が向上するので好ましい。
【0043】
また必要に応じて平均粒子径が0.01μm以上5μm以下の微粒子を0.05質量%以上10質量%以下、重合反応時、またはその後の工程で該熱可塑性樹脂(b)に添加することができる。微粒子の種類は特に限定されず、たとえばシリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の不活性微粒子を添加することができ、これらは単独で使用しても2種以上併用しても良い。特に平均粒子径が0.02μm以上1μm以下の無機微粒子、例えばシリカ等が添加されていることが好ましく、この場合には紡糸性、延伸性が向上する。
【0044】
本発明において複合長繊維不織布を構成する繊維化の条件は、ポリマーの組み合せ、複合断面に応じて適宜設定する必要があるが、主に、以下のような点に留意して繊維化条件を決めることが望ましい。
紡糸口金温度は、複合長繊維を構成するポリマーのうち高い融点を持つポリマーの融点をMpとするときMp+10℃〜Mp+80℃が好ましく、せん断速度(γ)500〜25000sec−1、ドラフト(V)50〜2000で紡糸することが好ましい。また、複合紡糸するポリマーの組み合わせから見た場合、紡糸時における口金温度とノズル通過時のせん断速度で測定したときの溶融粘度が近接したポリマー、例えば溶融紡糸口金温度において、せん断速度1000sec−1における溶融粘度差が2000poise以内である組み合せで複合紡糸することが紡糸安定性の面から好ましい。
【0045】
本発明におけるポリマーの融点Tmとは、示差走査熱量計(DSC:例えばMettler社TA3000)で観察される主吸熱ピークのピーク温度である。せん断速度(γ)は、ノズル半径をr(cm)、単孔あたりのポリマー吐出量をQ(cm/sec)とするとき、γ=4Q/πrで計算される。またドラフトVは、引取速度をA(m/分)とするとき、V=A・πr/Qで計算される。
【0046】
本発明の複合繊維を製造するに際して、紡糸口金温度が複合長繊維を構成するポリマーのうち高い融点を持つポリマーの融点Mp+10℃より低い温度では、該ポリマーの溶融粘度が高すぎて、高速気流による曳糸・細化性に劣り、またMp+80℃を越えるとPVAが熱分解しやすくなるために安定した紡糸ができない。また、せん断速度は500sec−1よりも低いと断糸しやすく、25000sec−1より高いとノズルの背圧が高くなり紡糸性が悪くなる。ドラフトは50より低いと繊度むらが大きくなり安定に紡糸しにくくなり、ドラフトが2000より高くなると断糸しやすくなる。
【0047】
本発明において、エアジェット・ノズルのような吸引装置を用いて吐出糸条を牽引細化させるに際し、1000〜6000m/分の糸条の引取速度に該当する速度で高速気流により牽引細化させるのが好ましい。吸引装置による糸条の引取条件は、紡糸ノズル孔から吐出する溶融ポリマーの溶融粘度、吐出速度、紡糸ノズル温度、冷却条件などにより適宜選択するが、1000m/分未満では、吐出糸条の冷却固化遅れによる隣接糸条間の融着が起こる場合があり、また糸条の配向・結晶化が進まず、得られる複合不織布は、粗雑で機械的強度の低いものになってしまい好ましくない。一方、6000m/分を越えると、吐出糸条の曳糸・細化性が追随できず糸条の切断が発生して、安定した複合長繊維不織布の製造ができない。
【0048】
さらに、本発明の複合長繊維不織布を安定に製造するに際し、紡糸ノズル孔とエアジェット・ノズルのような吸引装置との間隔は30〜200cmが好ましい。該間隔は使用するポリマー、組成、上記で述べた紡糸条件にもよるが、該間隔が30cmより小さい場合には、吐出糸条の冷却固化遅れによる隣接糸条間の融着が起こる場合があり、また糸条の配向・結晶化が進まず、得られる複合不織布は、粗雑で機械的強度の低いものになってしまい好ましくない。一方、200cmを越える場合には、吐出糸条の冷却固化が進みすぎて吐出糸条の曳糸・細化性が追随できず糸条の切断が発生して、安定した複合長繊維不織布の製造ができない。
【0049】
エアジェット・ノズルのような吸引装置で細化された複合長繊維は、捕集用シート面上にほぼ均一な厚さとなるように分散捕集してウエッブを形成する。吸引装置と捕集面との間隔としては30〜200cmであることが生産性、得られる不織布の繊維物性の観点から好ましい。また、ウエッブの目付としては、5〜500g/mの範囲が不織布の生産性および後加工性の点で好ましい。更に吸引細化されたウエッブ形成複合長繊維の太さとしては0.2〜8dtexの範囲が生産性の点で好ましい。
【0050】
本発明では、複合長繊維不織布から水溶性熱可塑性樹脂(a)を水で抽出除去することにより、熱可塑性ポリマー(b)の極細化が可能である。複合長繊維不織布から水溶性熱可塑性樹脂(a)を水で抽出する方法に関しては特に制約はなく、サーキュラー、ビーム、ジッカー、ウィーンス等の染色機やバイブロウォッシャー、リラクサー等の熱水処理設備を使用する方法、高圧水流を噴射する方法等、任意の方法を適宜選択することができる。高圧水流を噴射する方法は、分割極細長繊維が相互に強く絡まされ、さらには毛細管現象により吸水性がより向上するという点で、非常に有効な方法あるが、高圧水流を噴射するだけでは、水溶性熱可塑性樹脂(a)の付着量を本発明で既定する範囲にまで減少させることが難しい場合が多い。したがって、高圧水流で処理した後、水浴中で不織布を攪拌処理して水溶性熱可塑性樹脂(a)の付着量を本発明で既定する範囲にする方法を用いることが好ましい。抽出水は中性でかまわないし、アルカリ水溶液、酸性水溶液、あるいは界面活性剤等を添加した水溶液であっても良い。
【0051】
特に本発明において重要なことは、水で水溶性熱可塑性樹脂(a)を抽出除去する際に、不織布内に水溶性熱可塑性樹脂(a)の一部が残存するように、除去処理を行わなければならないことである。そのためには、予め、除去処理に使用する水の量、処理方法、処理時間、処理温度等を種々変更して、本発明で規定する吸水性が得られるようにこれら条件を決めておくのが好ましい。
【0052】
具体的には、本発明においては、水溶性熱可塑性樹脂(a)を水で抽出除去する方法として、水浴中で複合長繊維不織布を攪拌処理して含有水溶性熱可塑性樹脂(a)を溶解除去する方法が好ましく、その際の水浴比は、複合長繊維不織布の質量に対して100〜2000倍であることが好ましく、200〜1000倍であることがより好ましい。水浴比が100倍より少ない場合、水溶性熱可塑性樹脂(a)の溶解除去が不十分となり、目的とする極細長繊維不織布が得られないことがある。また、水浴比が2000倍を越える場合には、複合長繊維から極細長繊維への分割性が低下することがある。もちろん、抽出除去が不十分な場合には、水溶性熱可塑性樹脂(a)を含まないフレッシュな水を用いて、再度水浴中で水溶性熱可塑性樹脂(a)を抽出除去する方法が用いられる。
【0053】
抽出処理温度は目的に応じて適宜調整すればよいが、熱水を用いて抽出する場合には、40〜120℃で処理するのが好ましく、60〜110℃で処理するのがより好ましく、80〜100℃で抽出処理を行うのが特に好ましい。処理温度が40℃より低い場合、水溶性熱可塑性樹脂(a)の抽出性が十分でなく、生産性が低下する。また、処理温度が120℃より高い場合には、水溶性熱可塑性樹脂(a)の溶解時間が極端に短くなり、目的とする水溶性熱可塑性樹脂(a)の割合での安定な生産が困難な場合がある。一旦、水溶性熱可塑性樹脂(a)が不織布から完全に抽出除去された場合には、その後で、水溶性熱可塑性樹脂(a)水溶液を付与する等の方法を用いて水溶性熱可塑性樹脂(a)を不織布に添加しても本発明で規定するような耐久性ある吸水性は得られ難い。
【0054】
抽出処理時間についても、目的や使用する装置、処理温度に応じて適宜調整が可能であるが、生産効率、安定性、得られる極細長繊維不織布の品質・性能等を考慮すると、バッチ処理を行う場合には合計で10〜200分であることが好ましく、連続処理の場合は1〜20分であることが好ましい。
【0055】
複合繊維の横断面形状が、ミカンの横断面形状型、扇型、或いは貼り合せ型、海島型等の断面形状である場合、複合長繊維から極細長繊維への分割性・分繊性を向上させる目的で、50℃以下の温度から、好ましくは室温付近から抽出処理を開始し、徐々に水温を高めて、所定の温度、好ましくは80〜110℃まで昇温し、この温度範囲で5分〜10時間抽出処理を行う操作を用いるのが効果的である。徐々に昇温する速度としては0.2〜30℃/分が好ましい。そのような徐々に昇温する条件を適用することで、水溶性熱可塑性樹脂(a)成分が溶解時に収縮し、その結果、残存成分である熱可塑性ポリマー極細長繊維が微細な捲縮を有することとなり、極細長繊維の分割性が向上し、得られる極細長繊維不織布の吸水性がより向上する。好ましい収縮率としては0.1〜10%であり、その結果、得られる熱可塑性樹脂(b)からなる極細長繊維は微細な捲縮を有していることとなる。微細な捲縮の程度としては、捲縮率1〜50%程度が好ましい。
上記以外にも、複合長繊維の分割性を向上させる方法として、高圧水流の噴射により分割する方法、加圧ロール間を通過させることによる分割方法等、種々の方法が適用可能であり、水溶性熱可塑性樹脂(a)を抽出除去する方法と併用して行われる。
【0056】
本発明においては、極細長繊維不織布構造体の含水率が、不織布質量に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。含水率が0.01質量%より少ない場合には、不織布の吸水性が十分でなく、ワイパー等の用途で使用することが困難な場合がある。
【0057】
本発明では、上記含水率を維持するため、乾燥後、もしくは熱カレンダーロール等による加圧処理後、新たに極細長繊維不織布に水分を付与する工程を設けることができる。水分を付与する方法に特に制限はなく、例えば、不織布表面に水を噴霧する方法、恒温恒湿器内で調湿する方法、水浴等に短時間浸漬処理する方法等、適宜選択することができる。
【0058】
本発明で規定する吸水性を満足するため、水溶性熱可塑性樹脂(a)抽出処理後の乾燥温度は、120℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることが特に好ましい。乾燥温度が120℃を超える場合には、残存する水溶性熱可塑性樹脂(a)の結晶化が進行することにより不織布構造体の含水率が低下し、吸水性能が低下する。もちろん、室温で乾燥を行なってもよい。
乾燥時間についても、目的や使用する装置、乾燥温度に応じて適宜調整が可能であるが、生産効率、安定性、得られる極細長繊維不織布の品質・性能等を考慮すると、バッチ処理を行う場合には24時間以内であることが好ましく、連続処理の場合は1時間以内であることが好ましい。
【0059】
水溶性熱可塑性樹脂(a)の大部分を除去した不織布は、極細長繊維の集束体である極細長繊維束から実質的に形成されていることとなり、このように集束体であることにより、従来の一般的な個々の極細繊維がそれぞれ独立している場合と比べ、毛羽が発生しにくく、所定量のPVAを残存させやすく、そして吸水性が向上し、更に不織布の形態安定性が向上する。
勿論、水流絡合等の絡合方法を用いて集束状態を解き、極細長繊維を集束体から離れて独立して存在させることも可能である。該方法は柔軟性を付与したい場合に効果的であり、絡合の程度を変更することにより、適宜調整が可能である。
【0060】
更に、本発明では、残存している水溶性熱可塑性樹脂(a)が多い場合、例えば不織布に水溶性熱可塑性樹脂(a)が1質量%以上存在している場合には、不織布を構成する繊維同士を残存している水溶性熱可塑性樹脂(a)により固定していることとなるため、不織布の形態を保つ上からも好ましくなる。
本発明において、不織布の目付けとしては、5〜500g/mの範囲が生産性および後加工性の点で好ましい。
【0061】
本発明で使用されるPVAは生分解性を有しており、活性汚泥処理あるいは土壌に埋めておくと分解されて水と二酸化炭素になる。PVAを溶解した後の廃液の処理には活性汚泥法が好ましい。該PVA水溶液を活性汚泥で連続処理すると2日間から1ヶ月で分解される。また、本発明に用いるPVAは燃焼熱が低く、焼却炉に対する負荷が小さいので、PVAを溶解した排水を乾燥させてPVAを焼却処理してもよい。
【0062】
本発明では、このようにして得られた極細長繊維不織布は部分的な熱圧融着により形態を保持する方法が適用できる。具体的には、加熱された凹凸模様の金属ロール(エンボスロール)と加熱平滑ロールとの間に該ウエブを通して、部分的な熱圧着により長繊維同士を結合させ、不織布としての形態安定化を図る。熱圧着処理における加熱ロールの温度、熱圧する圧力、処理速度、エンボスロールの模様等は目的に応じて適宜選択することができる。また、熱圧着をどの段階で行うかについても特に制限はなく、必要に応じて適宜実施することが可能である。例えば、PVAを水抽出する前であってもよいし、高圧水流の噴射による分割極細化の後でもよい。
このようなエンボス模様で熱圧着された部分は、形態安定性と柔軟性、吸水性の観点から、不織布の表面積の5〜30%であることが好ましい。
【0063】
さらに本発明の極細長繊維不織布は目的に応じ、エレクトレット加工による帯電処理、プラズマ放電処理やコロナ放電処理による親水化処理等の後加工処理を行ってもよい。
【0064】
また、本発明で得られる極細長繊維不織布は、単独で使用するのみではなく、他の長繊維不織布や短繊維不織布、織物や編物等と積層して用いることも可能であり、上記の用途に用いる場合、実用機能をさらに付与することができる。例えば、本発明の極細長繊維不織布の片面にメルトブローン不織布を積層すると、フィルター用途に適した極細繊維からなる積層不織布が得られる。
【0065】
このようにして得られる極細長繊維不織布は、柔軟性、吸水性に優れることから、水性液をふき取るワイパー、或いはワイパーに水性液を含ませた状態で使用するワイパー等のワイパー類として好適に使用することができる。
【0066】
また、本発明の極細長繊維不織布は、表面積が大きく、濾過性にも優れることから、フィルター基材としても使用することができる。その場合、気体用フィルターだけでなく、その優れた吸水特性を活かすことで、異物が混合されている水性の液体から該異物を除去するような液体用フィルターとしても好適に使用することができる。フィルター基材として利用する場合、通気度が200cc/cm/sec以下であることが好ましく、160cc/cm/sec以下であることがより好ましく、120cc/cm/sec以下であることが特に好ましい。通気度が200cc/cm/secを越える場合には、十分なフィルター機能を果たすことができない場合がある。下限値に関しては特に限定されないが、フィルターとしての目的を達成する上で1cc/cm/secが下限値である。このような通気度はJIS−L1906「一般長繊維不織布試験方法」のフラジール法に準じて測定される。
【0067】
さらに本発明の不織布は電池用セパレーターとしても使用できる。特に電池用セパレーターとして用いる場合には、本発明において、電池の高容量化に対応するため、熱カレンダーロール等による加圧処理にて極細長繊維不織布の厚みを250μm以下まで薄膜化するのが好ましい。その場合の加圧処理温度は40〜120℃であることが好ましく、50〜100℃であることがより好ましく、60〜90℃であることが特に好ましい。処理温度が40℃より低いと極細長繊維不織布の薄膜化が不十分となる場合があり、また処理温度が120℃を越えると残存する水溶性熱可塑性樹脂(a)の結晶化が進行することにより、電池セパレーターとしての吸水性能が低下する場合がある。
【0068】
また、加圧処理における線圧は20〜200kgf/cmであることが好ましく、50〜150kgf/cmであることがより好ましい。線圧が20kgf/cmより低い場合、極細長繊維不織布の薄膜化が不十分で不均一となる場合があり、また線圧が200kgf/cmを越える場合、セパレーター表面の吸水性が大幅に低下する場合がある。
【0069】
このようにして得られた極細長繊維不織布は良好な吸水性能を示し、単独でも電池セパレーターとして十分な機能を果たすことができるが、さらに吸水性を向上させる目的で、必要に応じて各種親水化処理を行ってもよい。親水化処理方法としては、例えば、スルホン化処理、コロナ放電やプラズマ放電などの放電処理、グラフト重合処理、フッ素ガス処理などが挙げられる。
本発明の不織布を電池用セパレーターとして用いる場合には、極細長繊維を構成するポリマー(b)として、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等が挙げられ、中でも耐アルカリ性を有していることから特にポリプロピレンが好ましい。従来、ニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池等のアルカリ二次電池のセパレーターとして、スルホン化処理により親水化したポリプロピン製不織布が用いられているが、本発明の不織布は吸水性(親水性)、すなわち吸アルカリ液性に優れているため、従来技術のようにスルホン化して親水性を付与する必要がない。もちろん、本発明において、スルホン化する方法を併用してもよい。
【0070】
本発明の不織布を用いた電池セパレーターは、耐アルカリ性、保液性、耐酸化劣化性、耐酸性に優れ、アルカリ電池、鉛蓄電池、空気電池等に幅広く使用することができる。アルカリ電池は、正極に金属酸化物または金属水素化物を用い、負極にカドミウム、亜鉛、鉄、それらの水酸化物または水素吸蔵合金を用いているものが多いが、特に繰り返し充放電して使用されるニッケル−カドミウム電池、ニッケル−水素電池等のアルカリ二次電池に好適に使用することができる。
【0071】
更に本発明の極細長繊維不織布は、構成繊維が極細でありかつ吸水保持性に優れていることから、キャパシタ用セパレーターとして好適に使用できる。キャパシタとは、対向する2つの電極間に誘電体または電気二重層を挟んだ形で構成される蓄電機能を有するもので、誘電体としてはアルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサが挙げられ、電気二重層を用いるものとしては、電気二重層キャパシタが挙げられる。電気二重層キャパシタの電極としては、一対の分極性電極、一方が分極性電極もう一方が非分極性電極の組み合わせのいずれでも良い。キャパシタの電解液としては水溶液系または有機系のものが用いられる。キャパシタ用セパレーターとして使用する場合であっても、キャパシタ内に占めるセパレーターの体積割合を減らし誘電体または電気二重層の割合を増やし蓄電容量を増加させるために、セパレーターの厚みを250μm以下にするのが好ましい。
【0072】
その他にも、本発明の極細長繊維不織布は、優れた柔軟性、吸水性、濾過性を活かし、種々の用途で使用することができる。例として、絶縁材で代表されるエレクトロニクス用、油吸着材、皮革基布、セメント用配合材、ゴム用配合材、各種テープ基材などの産業用資材;紙おむつ、ガーゼ、包帯、医療用ガウン、サージカルテープなどの医療・衛材;印刷物基材、包装・袋物資材、収納材などの生活関連資材;衣料用;断熱材、吸音材などの内装材用;建設資材用;農業・園芸用資材;土壌安定材、濾過用資材、流砂防止材、補強材などの土木・資材用;鞄靴材等の用途を挙げることができる。
【実施例】
【0073】
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において、各物性値は以下のようにして測定した。なお、実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に関するものである。
【0074】
[PVAの分析方法]
PVAの分析方法は、特に記載のない限り、JIS−K6726に従った。
変性量は、変性ポリビニルエステルあるいは変性PVAを用いて500MHz1H−NMR(JEOL社製 GX−500)装置による測定から求めた。
アルカリ金属イオンの含有量は原子吸光法で求めた。
【0075】
[融点]
PVAの融点は、DSC(メトラー社、TA3000)を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を調べた。
【0076】
[紡糸状態]
溶融紡糸の状態を観察して次の基準で評価した。
◎:極めて良好、○:良好、△:やや難あり、×:不良
【0077】
[不織布の状態]
得られた不織布を目視観察および手触観察して次の基準で評価した。
◎:均質で極めて良好、○:ほぼ均質で良好、△:やや難あり、×:不良
【0078】
[不織布中の水溶性熱可塑性樹脂の割合]
30cm×30cmの不織布試料をオートクレーブ中で2000ccの水に浸漬し、120℃で1時間加熱処理した。処理後、熱水中から不織布を取り出して軽く搾り、抽出液を取り換えて同様の操作を実施。計3回の繰り返し処理により、不織布中の水溶性熱可塑性樹脂を完全抽出除去。処理前後の質量変化より、不織布中の水溶性熱可塑性樹脂の割合を求めた。
【0079】
[不織布表面のPVAによる被覆率]
X線光電子分光法(XPS)により不織布表面の構成元素および結合状態を解析し、その結果よりPVAの割合を算出した。
【0080】
[不織布の含水率]
30cm×30cmの不織布試料を105℃で1晩乾燥した。乾燥前後の質量変化より、不織布の含水率を求めた。
【0081】
[平均繊維径]
顕微鏡により倍率1000倍で撮影した不織布試料の拡大写真から、無作為に10本の繊維を選び、それらの繊維径を測定し、その平均値を平均繊維径とした。
【0082】
[目付]
JIS L1906 「一般長繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
【0083】
[引張強度]
JIS L1906 「一般長繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
【0084】
[剛軟度]
JIS L1906 「一般長繊維不織布試験方法」(剛軟性A法(カンチレバー法))に準じて測定した。
【0085】
[吸上性]
JIS L1018−70「メリヤス生地試験法」(吸水性B法(バイレック法)KRT No.411−2)に準じて測定した。2.5cm×32cmの不織布の下端に荷重を取り付け、水溶性インク(インク/水=1/5)に試験片の下端1cmまで沈め、10分間保持したときの吸い上げ高さを測定した。
【0086】
[保水率]
予め絶乾した後に精秤した20cm×20cmの不織布を、20℃の純水500cc中に5分間浸漬後、不織布を水上に引き上げた状態で約30秒間保ち、水滴が落ちなくなった時点での全質量を精秤して不織布の保水率を求めた。
【0087】
[拭取残]
時計皿(直径9cm)に1gの蒸留水を入れ、その上に5cm×5cmの不織布を広げて漬け、5秒後に不織布の一端をピンセットでつまみ、時計皿から取り除き、時計皿に残った水量を測定した。
【0088】
[通気度]
JIS L1906 「一般長繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
【0089】
[捲縮率]
不織布資料の表面に存在する極細繊維束を取り出し、繊維の捲縮を伸ばしたときの長さと、もとの長さとの差の、伸ばしたときの長さに対する百分率。
【0090】
[耐酸化劣化性]
JIS−P8113に準じて測定した。不織布試料を5%KMnO水溶液と30%KOH水溶液を250cc/50ccの割合で混合した50℃溶液に1時間浸漬処理した。処理前後の引張強度を測定し、その保持率(%)を求めた。
【0091】
[電解液保持性]
5cm×5cmの電池セパレーターを、20℃の30%KOH試験水溶液に30分間浸漬処理し、水上に引き上げた状態で約30秒間保ち、水滴が落ちなくなった時点での全質量を精秤して含液量(%)を求めた。
【0092】
実施例1
[エチレン変性PVAの製造]
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.6kg/cm(5.5×10Pa)となるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を5.6kg/cm(5.5×10Pa)に、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて610ml/hrでAMVを連続添加して重合を実施した。9.5時間後に重合率が68%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。
【0093】
得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が50%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液2.0kg(溶液中のポリ酢酸ビニル1.0kg)に、0.47kg(ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニルユニットに対してモル比(MR)0.10)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。アルカリ添加後約5分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、60℃で3時間放置してけん化を進行させた後、0.5%酢酸濃度の水/メタノール=20/80混合溶液10.0kgを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAに水/メタノール=20/80の混合溶液20.0kgを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、さらにメタノール10.0kgを加えて室温で3時間放置洗浄した。その後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥PVA(PVA−1)を得た。
【0094】
得られたエチレン変性PVAのけん化度は99.1モル%であった。また該変性PVAを灰化させた後、酸に溶解したものを用いて原子吸光光度計により測定したナトリウムの含有量は、変性PVA100質量部に対して0.0012質量部であった。
【0095】
また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢酸ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをDMSO−d6に溶解し、500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定したところ、エチレンの含有量は8.7モル%であった。上記のポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をアルカリモル比0.5で鹸化した後、粉砕したものを60℃で5時間放置して鹸化を進行させた後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製されたエチレン変性PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ340であった。さらに該精製された変性PVAの5%水溶液を調整し厚み10ミクロンのキャスト製フィルムを作成した。該フィルムを80℃で1日間減圧乾燥を行った後に、DSC(メトラー社、TA3000)を用いて、前述の方法によりPVAの融点を測定したところ212℃であった(表1)。
【0096】
【表1】

【0097】
上記で得られたPVAを日本製鋼所(株)二軸押出機(30mmφ)を用いて設定温度220℃、スクリュー回転数200rpmで溶融押出することによりペレットを製造した(表1)。
【0098】
上記で得られたPVA(PVA−1)ペレットと、固有粘度が0.7、融点が255℃のポリエチレンテレフタレートを準備し、それぞれのポリマーを別の押出機で加熱して溶融混練し、不織布を構成する複合長繊維の繊維軸に直交する繊維断面に占める質量比率がPET/PVA=85/15になるように280℃の16分割型(ミカン型)複合紡糸パック(図1)に導き、ノズル径0.35mmφ×1008ホール、吐出量1050g/分、せん断速度2500sec−1の条件で紡糸口金から吐出させ、紡出フィラメント群を20℃の冷却風で冷却しながら、ノズルから80cmの距離にあるエジェクターにより高速エアーで3000m/分の引取り速度で牽引細化させ、開繊したフィラメント群をエンドレスに回転している捕集コンベア装置上に捕集堆積させ長繊維ウエブを形成させた。紡糸状態は、断糸は全く見られず、断面形状も極めて良好であった。
【0099】
次いで、このウエブを180℃に加熱した凹凸柄エンボスロールとフラットロールとの間で、線圧50kg/cmの圧力下で通過させ、エンボス部分熱圧着させることにより、単繊維繊度3.5dtexの長繊維からなる目付121g/mの16分割型複合長繊維不織布を得た。得られた不織布は均質なもので極めて良好であった。複合長繊維不織布の製造条件を表2に記載する。
【0100】
【表2】

【0101】
得られた複合長繊維不織布約50mについて、サーキュラー型染色機(水浴800L、不織布質量に対する水浴比330倍、不織布回転速度約50m/分)を用い、PVA成分の抽出処理を行った。複合長繊維不織布投入後、室温から約5℃/分の速度で95℃まで昇温させ、さらに95℃にて20分間熱水処理を行った。このような処理を2回行う(95℃でのトータル処理時間40分)ことにより、複合長繊維不織布中のPVA成分を抽出除去した。抽出除去後の不織布中PVAの割合は0.04%であった。
【0102】
次いで、このウエッブを連続処理にて80℃で3分間熱風乾燥させることにより、ポリエチレンテレフタレートの極細長繊維不織布を得た。乾燥後の不織布の水分率は0.18%であった。この不織布において、構成する極細長繊維の横断面はくさび型をしており、このくさび型繊維が8本集束した状態で不織布を構成していた。また、このくさび型極細繊維は微細な捲縮を有しており、捲縮の程度としては、捲縮を伸ばした場合に繊維長が %程度伸長する程度のものであった。
【0103】
上記で得られた極細長繊維不織布のPVA被覆率、繊度、目付、および各種基礎物性評価結果を表3に記載した。
【0104】
【表3】

【0105】
また、上記で得られた極細長繊維不織布のワイパー性能について評価を行った。吸上性、保水率、拭取残の評価結果を表3に示す。
いずれの評価においても良好な性能を示した。
【0106】
さらに上記極細長繊維不織布のフィルター性能について調べるため、通気度の測定を行った。結果を同じく表3に示す。
通気度が低く、濾過性に優れることを確認した。
【0107】
実施例2〜8
実施例1で用いたPVAの代わりに表1に記載するPVAを用いる以外は実施例1と同じ条件下にて複合長繊維からなる不織ウエブを得た。紡糸状態を表2に示す。
得られた複合長繊維不織布について、実施例1と同様にサーキュラー染色機を用いてPVA成分を抽出し、80℃で3分間熱風乾燥させることにより、目的とする極細長繊維不織布を得た。これらの不織布においても、極細長繊維は8本集束した状態で不織布を構成していた。
得られた極細長繊維不織布のPVA残存量、被覆率、水分率、繊度、目付、基礎物性評価結果を表3に示す。さらにワイパー性能およびフィルター性能についての評価結果も表3に示す。
【0108】
実施例9〜18
実施例1で用いたPVAの代わりに表1に記載するPVAを用い、表2に記載する型状の複合紡糸用口金、熱可塑性ポリマーを用い、表2に記載する紡糸条件を採用し、適宜ノズル−エジェクター間距離およびラインネット速度を調整する以外は実施例1と全く同じ条件下にて複合長繊維からなる不織ウエブを得た後、表2に記載するエンボス処理温度にて部分熱圧着して複合長繊維不織布とした。
複合繊維成分の質量比率はパックへのポリマー導入量を変えることで調整させた。また、張り合せ型複合繊維は、図2の断面で熱可塑性ポリマーが6層部分、PVAが5層部分となるように導いた。海島型複合繊維は、図4の断面で熱可塑性ポリマーが島成分、PVAが海成分となるように導いた。
【0109】
実施例9および10についてはロールを加熱せず、線圧50kg/cmの圧力下で通過させるのみとした。さらに実施例10については、水流絡合機(水圧150kg/cm、不織布通過速度3m/分)を用いて高圧水流を噴射させることにより、複合長繊維を分割処理した。
得られた複合長繊維不織布についてPVA成分を抽出し、乾燥させることにより、目的とする極細長繊維不織布を得た。実施例9〜11については、ウィンス染色機(水浴1000L、90℃×60分、不織布回転速度約100m/分)を用いて処理を行った。実施例12〜17については、実施例1と同様にサーキュラー染色機を用い、熱水温度、処理時間を変更することにより、不織布中のPVAの割合を調整した。
得られた極細長繊維不織布のPVA残存量、被覆率、水分率、繊度、目付、基礎物性評価結果を表3に示す。さらにワイパー性能およびフィルター性能についての評価結果も表3に示す。なお、これらの不織布においても、極細長繊維は6本集束した状態で不織布を構成していた。
【0110】
実施例19、20
実施例1と全く同じ条件下にて複合長繊維からなる不織ウエブの製造、エンボス処理および抽出を行った後、表2に示す条件にて熱風乾燥を行い、目的とする極細長繊維不織布を得た。得られた極細長繊維不織布のPVA残存量、被覆率、水分率、繊度、目付、基礎物性評価結果を表3に示す。ワイパー性能およびフィルター性能についての評価結果も表3に示す。なお、この不織布においても、極細長繊維は集束した状態で不織布を構成していた。
【0111】
実施例21、22
実施例1と全く同じ条件下にて複合長繊維からなる不織ウエブの製造、エンボス処理を行った後、表2に示す水浴比にてPVAを抽出し、80℃にて3分間熱風乾燥を行い、目的とする極細長繊維不織布を得た。得られた極細長繊維不織布のPVA残存量、被覆率、水分率、繊度、目付、基礎物性評価結果を表3に示す。ワイパー性能およびフィルター性能についての評価結果も表3に示す。なお、この不織布においても、極細長繊維は集束した状態で不織布を構成していた。
【0112】
比較例1〜3
実施例1で用いたPVAの代わりに表1に記載するPVAを用い、表2に記載する熱可塑性ポリマー、紡糸条件を適用し、適宜ノズル−エジェクター間距離およびラインネット速度を調整する以外は実施例1と全く同じ条件下にて複合長繊維からなる不織ウエブを得た後、表2に記載するエンボス処理温度にて部分熱圧着して複合長繊維不織布とした。複合繊維成分の質量比率はパックへのポリマー導入量を変えることで調整させた。紡糸状態はいずれも良好であった。
得られた複合長繊維不織布について、実施例1と同様にPVA成分を抽出し、乾燥させることにより、目的とする極細長繊維不織布を得た。不織布中のPVAの割合は、熱水温度および処理時間を適宜変更することにより調整した。
極細長繊維不織布のPVA残存量、被覆率、水分率、繊度、目付、各種性能についての評価結果を表3に示す。
【0113】
比較例1については、長繊維不織布の繊度が大きく、その結果、不織布の吸上性が低下し、さらには通気度も大きいため、フィルター基材として利用する場合の濾過性にやや劣るものとなった。
比較例2については、熱水処理でPVAがほぼ完全に除去されたことにより、不織布の吸上性が低下し、ワイピング性能に劣るものとなった。
また比較例3については、熱水処理後のPVA残存率が高くなり、柔軟性に劣る極細長繊維不織布しか得られなかった。
【0114】
比較例4
固有粘度が0.7、融点が255℃のポリエチレンテレフタレートを準備し、押出機内で加熱して溶融混練し、280℃の紡糸パックに導き、ノズル径0.35mmφ×1008ホール、吐出量620g/分、せん断速度3000sec−1の条件で紡糸口金から吐出させ、紡出フィラメント群を20℃の冷却風で冷却しながら、ノズルから80cmの距離にあるエジェクターにより高速エアーで4000m/分の引取り速度で牽引細化させ、開繊したフィラメント群をエンドレスに回転している捕集コンベア装置上に捕集堆積させ、ポリエチレンテレフタレートからなる長繊維ウエブを形成した。
次いで、このウエブを180℃に加熱した凹凸柄エンボスロールとフラットロールとの間で、線圧50kg/cmの圧力下で通過させ、エンボス部分熱圧着させることにより、単繊維繊度1.54dtexの長繊維からなる目付84g/mの長繊維不織布を得た。
【0115】
得られた長繊維不織布のPVA残存量、被覆率、水分率、繊度、目付、各種性能についての評価結果を表3に記載する。
ポリエチレンテレフタレートのみでは吸液性を示さず、さらには通気度も大きいため濾過性に劣るものとなった。
【0116】
比較例5
比較例4で得られた長繊維不織布をPVA−1の1%水溶液に浸漬し、95℃で1時間加熱処理を行った。処理後、長繊維不織布を引き上げ、そのまま80℃にて3分間熱風乾燥させることにより、不織布構造体中にPVA−1を含有する長繊維不織布を得た。長繊維不織布中のPVA残存率は1.4%であった。
得られた長繊維不織布を用いて各種性能評価を行った結果を表3に示す。
PVAを含有させることで吸水性を付与することができたが、繊維径が大きいため吸水性が十分でなく、ワイパー性能に劣るものであった。
【0117】
比較例6
メルトフローレート(MFR)が400g/10分のポリプロピレンを溶融押出機を用いて230℃で溶融混練し、溶融したポリマー流をメルトブローダイヘッドに導き、ギヤポンプで計量し、直径0.3mmΦの孔を0.75mmピッチで一列に並べたメルトブローンノズルから吐出させ、同時にこの樹脂に240℃の熱風を噴射して吐出した繊維を成形コンベア上に捕集し、目付100g/mのポリプロピレン系極細繊維不織布を得た。
得られた極細繊維不織布の繊度、目付、各種性能についての評価結果を表3に示す。
引張強度が小さく、単独での利用が困難であった。
【0118】
比較例7
比較例6で得られた極細繊維不織布をPVA−1の1%水溶液に浸漬し、95℃で1時間加熱処理を行った。処理後、極細繊維不織布を引き上げ、そのまま80℃にて3分間熱風乾燥させることにより、不織布構造体中にPVA−1を含有する極細繊維不織布を得た。極細繊維不織布中のPVA残存率は1.2%であった。
得られた極細繊維不織布を用いて各種性能評価を行った結果を表3に示す。
PVAを含有させることで吸水性を付与することができたが、繊維および不織布の強度が小さいため毛羽の発生が激しく、該不織布単独での利用は困難であった。また、極細繊維は一本一本が実質的に独立しており、本発明のように、集束状態を形成していなかった。
【0119】
実施例23
実施例6および比較例6のポリプロピレン系不織布を積層し、150℃に加熱した凹凸柄エンボスロールとフラットロールとの間で、線圧50kg/cmの圧力下で通過させ、エンボス部分熱圧着させることにより、極細繊維からなる不織布積層物を得た。
得られた極細繊維不織布積層物について各種性能評価を行った結果を表3に示す。
強度が大きく、さらには通気度が低く、フィルター基材として好適な極細繊維不織布積層物を得ることができた。
【0120】
実施例24〜28
実施例9、13、および18で得られた複合長繊維不織布各50mについて、水流絡合機(150kg/cm、不織布通過速度5m/分)を用いて高圧水流を噴射させることにより、複合長繊維を交絡処理した。
続いてサーキュラー型染色機(水浴800L、不織布回転速度約50m/分)を用い、PVA成分の抽出処理を行った。複合長繊維不織布投入後、室温から約5℃/分の速度で95℃まで昇温させ、さらに95℃にて15分間熱水処理を行った。このような処理を2回行うことにより、複合長繊維不織布中のPVA成分を抽出した。
上記ウェブを連続処理にて80℃で3分間熱風乾燥させることにより、ポリプロピレン極細長繊維不織布を得た。
さらに、各極細長繊維不織布を表4に示す条件で熱フラットロール間を通過させることにより、均質で良好な電池セパレーターを得た。
得られた電池セパレーターの各種基礎物性評価結果を表4に記載した。いずれも評価においても良好な性能を示した。
【0121】
比較例8
実施例9で得られた複合長繊維不織布を用い、表4に示す条件で熱フラットロール間を通過させること以外は実施例24と同じ条件にて水流絡合、熱水処理を行い、電池セパレーターを得た。得られた電池セパレーターの各種基礎物性評価結果を表4に記載した。
電池セパレーターを構成する極細長繊維不織布がフィルム状となって吸水性能が低下し、セパレーターとしての使用は困難であった。
【0122】
【表4】

【0123】
実施例29
水酸化ニッケルの粉末100重量部にカルボキシメチルセルロースの水溶液を固形分換算で20重量部添加し、更に混練してペーストを調製した。なお、水酸化ニッケルは水酸化コバルトをコートしたものを用いた。このペーストを集電体である多孔質ニッケル板内に充填し、乾燥した後、ローラプレスして圧延成形することにより水酸化ニッケルを含む正極合剤が集電体に担持された構造の正極板を作製した。正極板は、厚さが680μmで、単位体積当りの容量が580mAh/ccであった。
【0124】
LmNi4.0Co0.4Mn0.3Al0.3で示される組成を有する水素吸蔵合金粉末100重量部にメチルセルロースの水溶液を20重量部を加えて混合することによって、ペーストを調製した。このペーストを集電体であるパンチングメタルの両面に、各面厚み0.4mmの厚さにて塗布して乾燥させ、負極合剤の厚みが各面0.35mmになるまでローラプレスによって加圧成形することにより、負極板1枚あたりの負極合剤の充填密度Dが0.23g/cmである負極板を作製した。
【0125】
得られた正極板を実施例24のセパレーターで介して負極板と交互に重ねることにより、図5のごとく電極群を作製し、更に各電極からリード線を取り出した。このような電極群を3個用意し、安全弁つきアクリル外装缶内に入れて、比重1.28のKOH水溶液を注液して、図6に示した公称容量1000mAhの電池を作製した。
60℃で2日間エージング後、10時間率で15時間充電し、0.2Cで端子電圧が1Vになるまで放電するという充放電を3回繰り返した。表5に3サイクル目の放電容量の平均値を示した。
【0126】
比較例9
比較例8で作製したセパレーターを用いた以外は実施例29と同様に電池を作製し、充放電を行った。表5に3サイクル目の放電容量の平均値を示した。
【0127】
【表5】

【0128】
実施例30
活性炭(クラレケミカル社製 BP−20)80重量部に、重量比でポリテトラフロロエチレン10重量部、導電性フィラー(電気化学社製デンカブラック)10重量部を加え、混錬、シート化した後、打ち抜き、直径13mmの円形の分極性電極を得た。分極性電極を導電性ペーストで、缶蓋に接着し、150℃にて30分間乾燥後、更に200℃で12時間真空乾燥を行った。直径13.5mmに打ち抜いた実施例24のセパレータ2枚を60℃にて真空乾燥後、露点−80℃以下グローブボックス内に移行し、以後のセル作製に関わる作業をグローブボックス内で実施した。電解液には1M/Lのテトラエチルアンモニウムテトラフロロボレートのプロピレンカーボネート溶液を使用し、分極性電極、実施例24のセパレーターを真空下、30分間電解液に含浸した。これらの材料を用いて図7の如くコイン型キャパシタを組み立てた。コイン型キャパシタを4mAの定電流で2.0Vまで充放電を行い、1サイクル目の放電カーブにおける1.0Vから0.5Vまでの放電カーブから静電容量を算出した。また、放電直後の電圧低下から抵抗を算出した。結果を表6に示した
【0129】
比較例10
比較例8で作製したセパレータを用いた以外は実施例30同様にキャパシタを作製し、充放電を行った。表6に静電容量の平均値を示した。
【0130】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明に使用される複合長繊維の複合形態の一例を示す繊維断面図
【図2】本発明に使用される複合長繊維の複合形態の一例を示す繊維断面図
【図3】本発明に使用される複合長繊維の複合形態の一例を示す繊維断面図
【図4】本発明に使用される複合長繊維の複合形態の一例を示す繊維断面図
【図5】電池特性評価に用いた電極群の模式図
【図6】電池特性評価に用いた電池の断面図
【図7】キャパシタの特性評価に用いたコイン型キャパシタの断面図
【符号の説明】
【0132】
1 水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール
2 他の熱可塑性ポリマー
3 正極
4 負極
5 セパレーター
6 リード線
7 正極
8 負極
9 セパレーター
10 ガスケット
11 ケース
12 安全弁
13 集電部材
14 集電部材
15 分極性電極
16 分極性電極
17 セパレーター
18 ガスケット
19 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊度が0.5dtex以下である極細長繊維からなる不織布であって、不織布構造体中に水溶性熱可塑性樹脂が不織布質量に対して5質量%以下存在しており、80℃水中で60分間浸漬処理を行った後のバイレック法による20℃、10分間の吸上性が30mm以上、不織布の縦方向および横方向の引張強度(B)N/5cmが目付(A)g/mに対して(B)/(A)≧0.25であることを特徴とする極細長繊維不織布。
【請求項2】
不織布構造体表面の30%以上が水溶性熱可塑性樹脂により被覆されている請求項1記載の極細長繊維不織布。
【請求項3】
水溶性熱可塑性樹脂が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールである請求項1または2に記載の極細長繊維不織布。
【請求項4】
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールが、炭素数4以下のαオレフィン単位および/またはビニルエーテル単位を0.1〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコールである請求項3に記載の極細長繊維不織布。
【請求項5】
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールが、エチレン単位を3〜20モル%含有する変性ポリビニルアルコールである請求項3または4に記載の極細長繊維不織布。
【請求項6】
水溶性熱可塑性樹脂が不織布中に0.001〜5質量%存在している請求項1〜5のいずれかに記載の極細長繊維不織布。
【請求項7】
極細長繊維不織布が、部分的な熱圧着により形態を維持している請求項1〜6のいずれかに記載の極細長繊維不織布。
【請求項8】
前記極細長繊維不織布が、高圧水流の噴射により絡合されている請求項1〜7のいずれかに記載の極細長繊維不織布。
【請求項9】
極細長繊維不織布が、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンおよびエチレン単位を25モル%〜70モル%含有するエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性ポリマーからなるものである請求項1〜8のいずれかに記載の極細長繊維不織布。
【請求項10】
極細長繊維不織布が、極細長繊維の集束体である極細長繊維束から形成されている請求項1〜9のいずれかに記載の極細長繊維不織布。
【請求項11】
極細長繊維不織布が、微細な捲縮を有する極細長繊維の集束体である極細長繊維束から形成されている請求項1〜10のいずれかに記載の極細長繊維不織布。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の極細長繊維不織布と他の不織布が積層されている不織布積層物。
【請求項13】
水溶性熱可塑性樹脂(a)および他の熱可塑性ポリマー(b)からなり、該水溶性熱可塑性樹脂(a)を除去することにより該熱可塑性ポリマー(b)からなる平均繊度0.5dtex以下の極細長繊維となり得る複合長繊維からなる不織布から極細長繊維不織布を製造する方法において、該複合長繊維から該水溶性熱可塑性樹脂(a)の大部分を水で溶解除去すると共に、該水溶性熱可塑性樹脂(a)の一部を不織布内に残存させることを特徴とする極細長繊維不織布の製造方法。
【請求項14】
水溶性熱可塑性樹脂(a)の大部分を水で溶解除去した後、120℃以下の温度で乾燥させる請求項13に記載の極細長繊維不織布の製造方法。
【請求項15】
水溶性熱可塑性樹脂(a)の大部分を水で溶解除去するに際し、水浴比が不織布質量に対して100〜2000倍である水浴を使用する請求項13または14に記載の極細長繊維不織布の製造方法。
【請求項16】
水溶性熱可塑性樹脂(a)の大部分を水で溶解除去する際の操作方法として、50℃以下の温度の水で溶解処理を開始し、徐々に水温を高め、水温80〜120℃で5分〜10時間溶解処理する操作を用いる請求項13に記載の極細長繊維不織布の製造方法。
【請求項17】
水溶性熱可塑性樹脂(a)が水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールである請求項13〜16のいずれかに記載の極細長繊維不織布。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれかに記載の極細長繊維不織布からなるワイパー。
【請求項19】
請求項1〜12のいずれかに記載の極細長繊維不織布からなるフィルター材。
【請求項20】
請求項1〜12のいずれかに記載された厚み250μm以下の極細長繊維不織布からなる電池用セパレーター。
【請求項21】
請求項1〜12のいずれかに記載された厚み250μm以下の極細長繊維不織布からなるキャパシタセパレーター。
【請求項22】
請求項20に記載のセパレーターを用いた電池。
【請求項23】
請求項21に記載のセパレーターを用いたキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−89851(P2006−89851A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271549(P2004−271549)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】