説明

楽器のリガチャー

【課題】
マウスピースに傷を付けることなく装着できるリガチャーを提供すること。
【解決手段】 マウスピース1にリード2を固定するためのリガチャー3であって、
リード2をマウスピース1に押しつけつつ、マウスピース1の導体部周囲に巻き付けられる帯状部材201a〜cと、帯状部材201a〜cの両端に設けられた2つの穴に貫挿され、帯状部材の両端同士を接続する棒状部材202と、を備え、棒状部材202は、マウスピース1と接触しないように、凹部202aを有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は楽器のマウスピースに取り付けられるリガチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
サックスやクラリネットなどの楽器においては、リガチャーを用いて、リードを演奏者の好みに応じた位置でマウスピースに固定することが一般的に行なわれている。リードの材質や形状や位置などによって音色が変わるため、演奏者が容易に操作できるよう、通常、リガチャーは、特許文献1に開示されているように、マウスピースに巻きつけたベルトの両端をねじによって締め付ける構成となっている。また、通常は、ねじをゆるめて形成した環状リガチャーの中央部分の空間にリードとマウスピースとを挿入して、ねじを締め付けることにより、リードをマウスピースに固定する。
【0003】
【特許文献1】特開2003−84756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のリガチャーでは、環状リガチャーの中央部分の空間にマウスピースを挿入する際、ベルトの両端を接続する棒状部材が、マウスピースと接触することにより、マウスピースに傷が付いていた。
【0005】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的は、マウスピースに傷を付けることなく装着できるリガチャーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明にあっては、
マウスピースにリードを固定するためのリガチャーであって、
リードをマウスピースに押しつけつつ、マウスピースの導体部周囲に巻き付けられる帯状部材と、
前記帯状部材の両端に設けられた2つの穴に貫挿され、前記帯状部材の両端同士を接続する棒状部材と、
を備え、
前記棒状部材は、前記マウスピースと接触しないように、凹部を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
マウスピースに傷を付けることなく装着できるリガチャーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0009】
図1は、本発明の実施形態としてのリガチャーを装着したサックス全体の構成を示す図であり、図1(a)は正面図、(b)は側面図である。本実施形態では、本実施形態に係るリガチャーを装着する楽器としてアルトサックスを例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、クラリネットなどの他のシングルリード楽器は勿論、マウスピース及びリガチャーを用いるあらゆる楽器に適用できる。
【0010】
図1において、1はマウスピース、2はリード、3はリガチャー、4は、サックス本体である。
【0011】
リガチャー3によってマウスピース1に取り付けられたリード2を、マウスピース1に息を吹き込むことで振動させ、その振動音をサックス本体4で増幅させる構成となっている。振動するのはリード2であるが、そのリード2をマウスピース1に固定するリガチャー3の材質や構成などによって音色や音の出しやすさが大きく変わるため、演奏者にとってリガチャー3選びは非常に重要な課題である。
【0012】
図2乃至5を用いてリガチャー3の構成を詳しく説明する。図2は、マウスピース1を挿入した状態のリガチャー3全体の斜視図である。マウスピース1及びリード2は、2点鎖線で示されている。
【0013】
リガチャー3は、リード2をマウスピース1に押しつけつつ、マウスピース1の導体部周囲に巻き付けられる帯状部材と、帯状部材の両端に設けられた2つの穴に貫挿され、帯状部の両端同士を接続する棒状部材202を備える。帯状部材は、ベルト201aと、その端部に取り付けられた金属棒201b、201cとから構成される。なお、ここでは、革製のベルト201aを示しているが、ベルト201aの材質は皮革に限定されるものではなく、金属や編み込みの紐などその他の材質であってもよい。
【0014】
棒状部材202の材質としては、真鍮、洋白、またはステンレスなどから選ぶことができる。また、滑りを良くするため、金めっき、銀めっき、ニッケルめっき或いは、チタンめっきを施すことが望ましい。
【0015】
また、ベルト201aにおける、棒状部材202と対向する位置には、レール部材206が設けられており、2本のレールでリード2に接触することにより、リード2の振動を最大限に生かす構成となっている。
【0016】
図3は、マウスピース1を挿入した状態のリガチャー3の正面図である。
【0017】
棒状部材202は、ボルト202bとナット202cとから構成され、ボルト202bの一部に、マウスピース1と接触しないように、凹部202aを有している。この凹部202aは、金属棒201b、201cに棒状部材202を取り付けた状態で、ベルト201aと棒状部材202とによって形成される円筒形状の空間301に、マウスピース1を挿入する際に、マウスピース1と最も近接する棒状部材202の一部に設けられる。図3では、凹部202aの形状は、マウスピース1の外周面の形状に応じたアールとなっているが、これに限定されるものではなく、マウスピース1の外周と接触しない程度に削られていればよい。ただし、凹部202aが深すぎると、ボルト202bの強度が落ちるため、マウスピース1をリガチャー3に挿入する際に、マウスピース1が接触しない程度の必要最低限の深さであることが望ましい。また、凹部202aを形成しつつ強度を保つにはボルト202bの太さをφ2mm以上にすることが望ましいが、一方、ボルト202bが太すぎると、リガチャー3が重くなり、装着時などに不都合が生じるため、φ6mm以下にすることが望ましい。
【0018】
また、レール部材206は、ねじ207によって、帯状部材201に取り付けられている。
【0019】
図4は、リガチャー3の分解図である。図4から明らかなように、帯状部材は、皮革製又は布製のベルト201aと、ベルトの両端に取り付けられた2本の金属棒201b、201cと、を備える。棒状部材202のボルト202bは、2本の金属棒201b、201cのそれぞれに設けられた穴に貫挿され、ナット202cによって締め付けられる。
【0020】
図5は、金属棒201bに形成された穴にボルト202bが挿入される様子をを示す図である。図5に示すようにボルト202bのヘッド部分501には、ボルト202bの軸に平行な平面部501a、501bが形成されている。一方、金属棒201bの穴の入口端部にも平面部502a、502bが形成されている。平面部501aと平面部502aとが当接し、平面部501bと平面部502bとが当接することにより、ボルト202bの回転を規制する。これにより、図4に示したナット202cを片手で回転させるだけで、リガチャー3を締め付けることが可能になる。
【0021】
ナット202cを捻っていくと、金属棒201bと金属棒201cとの間隔が次第に狭くなる。これに伴い、図3に示す空間301が狭くなり、マウスピース1に対して強くリード2を押圧していく。更に、棒状部材202とマウスピース1との間の距離が徐々に大きくなり、棒状部材202が、マウスピース1から離れていく(図6参照)。
【0022】
つまり、凹部202aは、あくまでも、ナット202cをゆるめた状態で、ボルト202bにおいて、マウスピース1の外周に最も近い位置に形成される。したがって、ナット202cを捻りこんだ状態、つまり演奏中には、凹部202aは、図3における右側に移動し、外部からはほとんど見えない状態となる。
【0023】
以上のように、本発明によれば、リガチャーの棒状部材に凹部を設けたことにより、その棒状部材がマウスピースに干渉することがなくなり、マウスピースの傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態を適用できる楽器としてアルトサックスの全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係るリガチャーの全体構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るリガチャーの構成を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るリガチャーの構成を示す分解図である。
【図5】本発明の実施形態に係るリガチャーの部分拡大図である。
【図6】本発明の実施形態に係るリガチャーをマウスピースに完全に装着した状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 マウスピース
2 リード
3 リガチャー
201a ベルト
201b、201c 金属棒
202 棒状部材
206 レール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスピースにリードを固定するためのリガチャーであって、
リードをマウスピースに押しつけつつ、マウスピースの導体部周囲に巻き付けられる帯状部材と、
前記帯状部材の両端に設けられた2つの穴に貫挿され、前記帯状部材の両端同士を接続する棒状部材と、
を備え、
前記棒状部材は、前記マウスピースと接触しないように、凹部を有していることを特徴とするリガチャー。
【請求項2】
前記棒状部材は、ボルトとナットから構成され、該ボルトの一部に、前記凹部を有していることを特徴とする請求項1に記載のリガチャー。
【請求項3】
前記帯状部材は、皮革製、紐製又は布製のベルトと、該ベルトの両端に取り付けられた2本の金属棒と、を備え、
前記棒状部材は、2本の前記金属棒のそれぞれに設けられた穴に貫挿されることを特徴とする請求項1に記載のリガチャー。
【請求項4】
前記凹部は、
前記帯状部材に前記棒状部材を取り付けた状態で、前記帯状部材と前記棒状部材とによって形成される円筒形状の空間に、前記マウスピースを挿入する際に、前記マウスピースと最も近接する前記棒状部材の一部に設けられることを特徴とする請求項1に記載のリガチャー。
【請求項5】
前記凹部は、
前記マウスピースの外周面の形状に応じたアール状の窪みであることを特徴とする請求項1に記載のリガチャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−26264(P2010−26264A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187808(P2008−187808)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(597041448)株式会社石森管楽器 (7)