説明

楽器支持ベルト

【課題】楽器を良好に演奏することができる楽器支持ベルトを提供する。
【解決手段】演奏者2の体に着脱可能に取り付けられるベルト本体3に、ギター4が取り付けられる制動装置5を設け、この制動装置5が、ギターを取り付けた状態で演奏する際に、ギター4の回転方向の動作を制動する構成である。従って、演奏者2の体にギター4を取り付けて演奏する際に、制動装置5によってギター4の回転方向における動きを制動することができる。このため、演奏者2に対するギター4のふらつきを防いで、ギター4を演奏者2に対して安定させることができ、これにより良好にギター4を演奏することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弦楽器、管楽器、鍵盤楽器などの各種の楽器を演奏者の体の一部に装着して演奏する際に用いる楽器支持ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、楽器支持ベルトとしては、特許文献1に記載されているように、ベルト本体を演奏者の首に掛けて吊り下げ、このベルト本体の下部に設けられたフック部にギターなどの楽器を取り付けることにより、演奏中に楽器の落下を防ぐように構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−316151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の楽器支持ベルトでは、ベルト本体のフック部に楽器を取り付けているだけであるから、演奏者に対して楽器がふらつき易い。このため、演奏中に楽器がふらつかないように、常に演奏者が楽器を支持していなければならないという問題がある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、演奏者に対する楽器のふらつきを防いで、良好に演奏することができる楽器支持ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、演奏者の体に着脱可能に取り付けられるベルト本体と、このベルト本体に設けられて楽器が取り付けられる制動装置とを備えた楽器支持ベルトであって、前記制動装置は、前記楽器が取り付けられた状態で、前記楽器を演奏する際に、前記楽器の回転方向の動作を制動する構成であることを特徴とする楽器支持ベルトである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記制動部材が、前記楽器の回転方向に負荷がほとんど加わらないニュートラル状態を有し、常に前記ニュートラル状態に戻るように付勢されている構成であることを特徴とする請求項1に記載の楽器支持ベルトである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、前記制動装置が、前記楽器に設けられた取付部を着脱可能に取り付ける装着部を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の楽器支持ベルトである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、演奏者の体に着脱可能に取り付けられたベルト本体の制動装置に楽器を取り付けて演奏する際に、制動装置によって楽器の回転方向における動きを制動することができる。このため、演奏者に対する楽器のふらつきを防いで、楽器を演奏者に対して安定させることができるので、良好に演奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明を適用した楽器支持ベルトの一実施形態において楽器支持ベルトを演奏者に取り付けた状態を示した図である。
【図2】図1に示された楽器支持ベルトにギターを取り付けた状態を示した図である。
【図3】図1に示された楽器支持ベルトの拡大斜視図である。
【図4】図3に示された楽器支持ベルトを展開した状態を示し、(a)はその正面図、(b)はその裏面図である。
【図5】図3に示された制動装置のA−A矢視においてギターが取り付けられた状態を示した要部の拡大断面図である。
【図6】図5に示された制動装置のダンパー部材の一部を示した拡大底面図である。
【図7】図5に示された制動装置において回転体が一方向に回転した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図8】図7に示された制動装置のダンパー部材の一部を示した拡大底面図である。
【図9】図5に示された制動装置において回転体が逆方向に回転した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図10】図9に示された制動装置のダンパー部材の一部を示した拡大底面図である。
【図11】図5に示された制動装置の制動特性を示した図である。
【図12】図5に示された制動装置のダンパー部材のB−B矢視における拡大断面図である。
【図13】図5に示された制動装置の装着部にギターの取付部を着脱する状態を示し、(a)は制動装置の装着部にギターの取付部を取り付けた状態を示した要部の拡大断面図、(b)は制動装置の装着部にギターの取付部を取り付ける途中の状態を示した要部の拡大断面図である。
【図14】図1〜図13に示された一実施形態においてギターに代えて鍵盤楽器を楽器支持ベルトによって演奏者に取り付けた場合の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図13を参照して、この発明を適用した楽器支持ベルトの一実施形態について説明する。
この楽器支持ベルト1は、図1および図2に示すように、演奏者2の体に装着されるベルト本体3と、このベルト本体3に設けられて、楽器であるギター4が取り付けられる制動装置5とを備えている。
【0012】
ベルト本体3は、ナイロン(登録商標)などの合成繊維や合成皮革、天然皮革などのベルト素材からなる帯状のものである。このベルト本体3の一端部(図3では右側部)には、図1および図3に示すように、ベルト本体3の両端部を連結するための留め金具6が設けられている。これにより、このベルト本体3は、演奏者2の体の一部、例えば演奏者2の腰に巻き付けた状態で、留め金具6によってベルト本体3の両端部を連結して演奏者2に取り付けられるように構成されている。
【0013】
制動装置5は、図1および図3に示すように、ベルト本体3に取り付けられるベース部材7と、このベース部材7に設けられてギター4が着脱可能に取り付けられるダンパー部材8とを備えている。ベース部材7は、鋳物やスチールなどの金属からなり、図3および図4に示すように、全体がほぼ長方形の角板状に形成されている。
【0014】
このベース部材7の中央部には、図3および図4(a)に示すように、ダンパー部材8を収容するダンパー収納凹部9がベース部材7の表面側に開放されて設けられている。また、このベース部材7の両側部には、図3および図4(b)に示すように、ベルト本体3が通り抜ける通し孔7a、7bが、ベース部材7の両側部からベース部材7の裏面(図4(b)では表面)に向けて貫通して設けられている。
【0015】
ダンパー部材8は、図5に示すように、ハウジング10と、このハウジング10内に回転自在に配置された回転体11と、この回転体11の回転を制動するための制動ばね12とを備えている。ハウジング10は、外側ハウジング13と、この外側ハウジング13に螺合する内側ハウジング14とを備えている。
【0016】
外側ハウジング13は、図5および図6に示すように、全体がほぼ円筒形状に形成されている。この外側ハウジング13の内周面には、雌ねじ部13aが設けられている。また、この外側ハウジング13の上部には、円板状の鍔部13bが外側ハウジング13の内側に向けて水平に突出して設けられている。この鍔部13bには、円形孔13cが外側ハウジング13の中心部に対応して設けられている。さらに、この鍔部13bの下面には、押え突起13dが設けられている。
【0017】
内側ハウジング14は、図5および図6に示すように、全体が外側ハウジング13内に挿入するほぼ円筒形状に形成されている。この内側ハウジング14の外周面には、外側ハウジング13の雌ねじ部13aに螺合する雄ねじ部14aが設けられている。また、この内側ハウジング14の下部には、図5および図6に示すように、内側ハウジング14の下部を塞ぐ底部14bが内側ハウジング14の外周側に突出して設けられている。
【0018】
これにより、内側ハウジング14は、図5に示すように、その外周側に突出した底部14bがスペーサ15を介してベース部材7のダンパー収納凹部9内にビス16によって取り付けられている。また、内側ハウジング14における底部14bの中心部には、円筒軸17が内側ハウジング14内に起立して設けられている。この円筒軸17は、内側ハウジング14の内外に貫通し、その内部に底部14bの下側に開放された円柱状の空間が形成されている。
【0019】
回転体11は、図5および図6に示すように、全体が内側ハウジング14内に配置されるほぼ円柱状に形成されている。この回転体11の回転中心部には、内側ハウジング14の円筒軸17が挿入する軸受け穴部18が下側に開放されて設けられている。この軸受け穴部18は、円形状の貫通しない穴であり、その内周面が内側ハウジング14の円筒軸17の外周面に対面するよう構成されている。
【0020】
これにより、回転体11は、軸受け穴部18の内周面が内側ハウジング14の円筒軸17の外周面にガイドされて回転するように構成されている。また、この軸受け穴部18の回転中心部には、図5および図6に示すように、内側ハウジング14の円筒軸17内に隙間をもって挿入する軸部20が円筒軸17の下側に突出した状態で設けられている。
【0021】
この場合、回転体11は、図5に示すように、その外周面における上部が外側ハウジング13と内側ハウジング14との間に配置された防水リング21に摺動可能に圧接している。また、この回転体11は、その上面における外周部が外側ハウジング13の鍔部13bの下面に設けられた押え突起13dによって押えられている。さらに、この回転体11と内側ハウジング14との間には、グリスなどの潤滑剤22が封入されている。これにより、回転体11は、外側ハウジング13と内側ハウジング14との両者の内部に回転自在に配置されている。
【0022】
制動ばね12は、図5および図6に示すように、ねじりコイルばねであり、コイル部23を有している。この制動ばね12は、コイル部23が内側ハウジング14の円筒軸17内に配置された状態で、このコイル部23内に回転体11の軸部20が挿入するように構成されている。
【0023】
また、この制動ばね12は、図5および図6に示すように、コイル部23の一端部23a(図5では上端部)が、軸部20の上部に設けられた取付穴20aに挿入されて係止されていると共に、他端部23b(図5では下端部)が、内側ハウジング14の円筒軸17内から下側に突出して内側ハウジング14の底板14bの下面に固定されている。これにより、制動ばね12は、回転体11と内側ハウジング14との両者に取り付けられている。
【0024】
このため、この制動ばね12は、図5および図6に示すように、コイル部23が自由状態のときにニュートラル状態となり、このニュートラル状態で回転体11が一方向、例えば図8に示す矢印X方向に回転すると、図7に示すように、コイル部23の外径が徐々に縮んで小さくなるように構成されている。
【0025】
すなわち、この制動ばね12は、回転体11が図8に示す矢印X方向に回転した際に、図7に示すように、内側ハウジング14の円筒軸17の内周面から徐々に離れて回転体11の軸部20の外周面に徐々に接近するように弾性変形する構成になっている。これにより、制動ばね12は、図11における右側の実線で示すように、回転体11をニュートラル状態に戻すように作用する負荷を徐々に増大させるように構成されている。
【0026】
また、この制動ばね12は、図5および図6に示すように、コイル部23が自由状態のニュートラル状態で、回転体11が上述した方向と逆方向、例えば図10に示す矢印Y方向に回転すると、図9に示すように、コイル部23の外径が徐々に伸びて大きくなるように構成されている。
【0027】
すなわち、この制動ばね12は、回転体11が図10に示す矢印Y方向に回転した際に、図9に示すように、回転体11の軸部20の外周面から徐々に離れて内側ハウジング14の円筒軸17の内周面に徐々に接近するように弾性変形する構成になっている。これにより、制動ばね12は、図11における左側の実線で示すように、回転体11をニュートラル状態に戻すように作用する負荷を徐々に増大させるように構成されている。
【0028】
このように、この制動ばね12は、図11に実線で示すように、コイル部23が自由状態のニュートラル状態を境にして、回転体11が一方向(正方向)つまり図8に示した矢印X方向に回転すると、その回転に伴って徐々に収縮変形することにより、回転体11をニュートラル状態に戻すように作用する負荷を徐々に増大させるように構成されている。
【0029】
また、この制動ばね12は、図11に実線で示すように、ニュートラル状態を境にして、回転体11が逆方向(負方向)つまり図10に示した矢印Y方向に回転すると、その回転に伴って徐々に膨張変形することにより、回転体11をニュートラル状態に戻すように作用する負荷を徐々に増大させるように構成されている。
【0030】
ところで、このような制動装置5は、図5に示すように、ギター4が着脱可能に取り付けられるように構成されている。すなわち、制動装置5のダンパー部材8は、図1〜図5に示すように、回転体11に装着部24が設けられ、この装着部23にギター4の取付部25が着脱可能に取り付けられるように構成されている。
【0031】
この場合、ギター4の取付部25は、強度の高い金属や合成樹脂からなり、図5に示すように、ギター4の背面にビス26aによって取り付けられた取付板26と、この取付板26に設けられた取付軸27とを備えている。この取付軸27の外周面には、図12に示すように、回転止め用の突起27aが軸方向に沿って設けられている。また、取付軸27の外周面には、図13(a)および図13(b)に示すように、装着溝27bが円周方向に沿ってリング状に形成されている。この装着溝27bには、径方向に伸縮するリング状のロック部材28が取り付けられている。
【0032】
このロック部材28は、金属製の丸棒を円形状に丸める際に、両端部間に隙間をもたせて丸めることにより、連続しないほぼリング状に形成されている。これにより、ロック部材28は、外周側から中心部に向けて外力が加わると、径方向に収縮するように構成されている。すなわち、このロック部材28は、外力が加わらない自由状態のとき、図13(a)に示すように、その外周が取付軸27の外周よりも大きく形成され、内周が取付軸27の外周よりも小さく形成されている。
【0033】
これにより、ロック部材28は、図13(a)に示すように、取付軸27の装着溝27bに装着されると、外周側が取付軸27の外周面から突出し、内周側が装着溝27b内に挿入し、この状態で取付軸27の装着溝2bに取り付けられている。また、このロック部材28は、外周側から中心部に向けて外力が加わると、図13(b)に示すように、径方向に収縮して、取付軸27の装着溝27b内に没入し、外周面が取付軸27の外周面とほぼ同じ状態になるように構成されている。
【0034】
一方、ギター4の取付部25が取り付けられるダンパー部材8の回転体11に設けられた装着部24は、図5に示すように、外側ハウジング13の鍔部13bの円形孔13cを通して上方に突出している。この装着部24は、図12および図13に示すように、ギター4の取付部25の取付軸27が装着する円形状の軸装着穴30を有している。この軸装着穴30は、回転体11の回転中心部である回転体11の軸部20に対応した状態で、上面側に開放されて設けられている。
【0035】
この軸装着穴30の内周面には、図12に示すように、ギター4の取付軸27の突起27aが挿入する回転止め溝30aが軸方向に沿って設けられている。これにより、装着部24は、ギター4の取付軸27が回転体11の軸装着穴30に挿入されて、ギター4の取付軸27の突起27aが回転止め溝30aに挿入されることにより、ギター4の回転方向の動きを回転体11に伝え、ギター4の回転方向の動きに応じて回転体11を回転させるように構成されている。
【0036】
また、この軸装着穴30の内周面には、図13(a)および図13(b)に示すように、ギター4の取付軸27に取り付けられたロック部材28が係脱可能に係合する係止溝30bが円周方向に沿って設けられている。これにより、装着部24は、図13(b)に示すように、ギター4の取付軸27が回転体11の軸装着穴30に挿入する際に、軸装着穴30の内周面によってロック部材28を収縮させて取付軸27の装着溝27b内に没入させるように構成されている。
【0037】
また、この装着部24は、図13(a)に示すように、ロック部材28を収縮した状態で軸装着穴30の係止溝30bに対応すると、ロック部材28が弾性復帰して軸装着穴30の係止溝30bに嵌合するように構成されている。これにより、装着部24は、ギター4の取付軸27が回転体11の軸装着穴30に取り付けられ、この状態でギター4の回転方向の動きを回転体11に伝え、ギター4の回転方向の動きに応じて回転体11を回転させるように構成されている。
【0038】
さらに、この装着部24は、ロック部材28が軸装着穴30の係止溝30bに嵌着した状態で、ギター4の取付軸27を軸装着穴30から抜き出す際に、図13(b)に示すように、ロック部材28の弾性力に抗してギター4の取付軸27を軸装着穴30から抜き出す方向に引き出すことにより、ロック部材28を収縮させながら軸装着穴30の係止溝30bから離脱させ、これによりギター4の取付軸27を軸装着穴30から抜き出させるように構成されている。
【0039】
次に、この楽器支持ベルト1の作用について説明する。
まず、楽器支持ベルト1を演奏者2の腰に装着する。このときには、図1に示すように、ベルト本体3を演奏者2の腰に巻き付けて制動装置5を演奏者2の正面に配置させ、この状態でベルト本体3の両端部を留め金具6によって取り付ける。そして、制動装置5にギター4を取り付ける。
【0040】
このときには、ベルト本体3に取り付けられた制動装置5のダンパー部材8における回転体11の装着部21が外部に露出しているので、この露出した回転体11の装着部21の軸装着穴30に、ギター4の背面に設けられた取付部25の取付軸27を挿入させる。すなわち、ギター4の取付軸27の外周面に設けられた突起27aを、図12に示すように、装着部21の軸装着穴30の内周面に設けられた回転止め溝30aに対応させて、ギター4の取付軸27を回転体11の装着部21の軸装着穴30に挿入する。
【0041】
すると、図13(b)に示すように、軸装着穴30の内周面がギター4の取付軸27に取り付けられたロック部材28を径方向に収縮させて取付軸27の装着溝27b内に没入させる。この状態で、ギター4の取付軸27を回転体11の装着部21の軸装着穴30に挿入する。そして、収縮した状態のロック部材28が軸装着穴30の係止溝30bに対応すると、図13(a)に示すように、ロック部材28が弾性復帰して、その外周部が軸装着穴30の係止溝30bに嵌着する。
【0042】
これにより、ギター4の取付軸27が回転体11の装着部21に取り付けられる。この状態では、ギター4の回転方向の動きが回転体11に伝わり、ギター4の回転方向の動きに応じて回転体11が回転する。また、このときには、演奏者2がギター4を最も弾き易い状態、つまり図1に示すように、ギター4の回転方向の傾きを最も弾き易い角度で、ギター4の取付軸27を回転体11の装着部21に取り付ける。
【0043】
これにより、ギター4は、ダンパー装置8の制動ばね12のニュートラル位置で、制動装置5に取り付けられる。この状態では、演奏者2がギター4を良好に演奏することができる。このように、演奏者2がギター4を演奏する際には、演奏者2が体を激しく動かしながら演奏する場合、あるいはギター4のフレット部4aを低音域から高音域に亘って連続操作しながら演奏する場合がある。このような場合には、演奏者2の動きや、フレット部4aの操作位置などに応じてギター4の角度が変化し、ギター4が回転する。このときには、制動装置5のダンパー部材8によってギター4の回転方向の動きを制動することができる。
【0044】
例えば、ギター4のフレット部4aを押し上げる方向にギター4を回転させた際には、図7および図8に示すように、制動ばね12のコイル部23の外径が徐々に縮んで小さくなり、回転体11の軸部20の外周面に徐々に接近するように弾性変形する。これにより、制動ばね12が回転体11をニュートラル状態に戻すように作用する負荷を徐々に増大させるので、ギター4に負荷が加わる。このため、ギター4を最も弾き易いニュートラル状態に戻すときには、制動ばね12のばね力によって容易にギター4をニュートラル状態に戻すことができる。
【0045】
また、ギター4のフレット部4aを押し下げる方向にギター4を回転させた際には、図9および図10に示すように、制動ばね12のコイル部23の外径が徐々に伸びて大きくなり、内側ハウジング14の円筒軸17の内周面に徐々に接近するように弾性変形する。これにより、制動ばね12が回転体11をニュートラル状態に戻すように作用する負荷を徐々に増大させるので、ギター4に負荷が加わる。このため、ギター4を最も弾き易いニュートラル状態に戻すときには、制動ばね12のばね力によって容易にギター4をニュートラル状態に戻すことができる。
【0046】
これにより、演奏者2が体を激しく動かしながら演奏する際、あるいはギター4のフレット部4aを低音域から高音域に亘って連続操作しながら演奏する際に、演奏者2の動きや、フレット部4aの操作位置などに応じてギター4を回転方向に動かしても、ギター4を最も弾き易いニュートラル状態に戻す際に、制動ばね12のばね力によって容易に戻すことができるので、長時間演奏しても、演奏者2の肩や首がこらずに良好に演奏することができる。
【0047】
このように、この楽器支持ベルト1によれば、演奏者2の体に着脱可能に取り付けられるベルト本体3に、ギター4が取り付けられる制動装置5を設け、この制動装置5が、ギター4を取り付けた状態で演奏する際に、ギター4の回転方向の動作を制動する構成であるから、演奏者2の体にギター4を取り付けて演奏する際に、制動装置5によってギター4の回転方向における動きを制動することができ、これにより演奏者2に対するギター4のふらつきを防いで、ギター4を演奏者2に対して安定させることができるので、良好にギター4を演奏することができる。
【0048】
この場合、ベルト本体3を演奏者2の腰に取り付け、このベルト本体3の制動装置5にギター4を取り付けることにより、演奏者2の肩や首にギター4の荷重が掛かることない。このため、長時間演奏しても、演奏者2の肩や首がこるのを防ぐことができると共に、良好に演奏することができる。
【0049】
また、この楽器支持ベルト1では、制動装置5がギター4の回転方向に負荷がほとんど加わらないニュートラル状態を有し、常にニュートラル状態に戻るように付勢されている構成であることにより、演奏者2が体を激しく動かしながら演奏する際、あるいはギター4のフレット部4aを低音域から高音域に亘って連続操作しながら演奏する際に、演奏者2の動きや、フレット部4aの操作位置などに応じてギター4を回転方向に動かしても、ギター4を最も弾き易いニュートラル状態に戻す際に、制動ばね12のばね力によって容易に戻すことができるので、長時間演奏しても、演奏者2の肩や首がこらずに良好に演奏することができる。
【0050】
この場合、制動装置5は、ベルト本体3に取り付けられるベース部材7と、このベース部材7に設けられてギター4が着脱可能に取り付けられるダンパー部材8とを備えているので、ギター4が取り付けられるダンパー部材8をベース部材7によってベルト本体3に容易に取り付けることができる。すなわち、ベース部材7は、その両側部にベルト本体3が通り抜ける通し孔7a、7bが、ベース部材7の両側部からベース部材7の裏面に向けて貫通して設けられているので、この通し孔7a、7bにベルト本体3を通すだけで、簡単にベース部材7をベルト本体3に取り付けることができる。
【0051】
また、ダンパー装置8は、ハウジング10と、このハウジング10内に回転自在に配置された回転体11と、この回転体11の回転を制動するための制動ばね12とを備えているので、制動ばね12のばね力によって常に回転体11をニュートラル状態に戻すように付勢することができる。すなわち、制動ばね12は、ねじりコイルばねであり、コイル部23を有し、このコイル部23の一端部23a(図4では上端部)が軸部20に係止され、他端部23b(図4では下端部)が内側ハウジング14に対して固定されているので、コイル部23が自由状態のときにニュートラル状態となり、コイル部23のばね力によって常に回転体11をニュートラル状態に戻すように付勢することができる。
【0052】
このため、このダンパー部材8によれば、回転体11がニュートラル状態から一方向に回転すると、コイル部23の外径が徐々に縮んで小さくなるように弾性変形することにより、回転体11をニュートラル状態に戻すように作用する負荷を徐々に増大させることができ、また回転体11がニュートラル状態から逆方向に回転すると、コイル部23の外径が徐々に伸びて大きくなるように弾性変形することにより、回転体11をニュートラル状態に戻すように作用する負荷を徐々に増大させることができる。このため、コイル部23のばね力によって常に回転体11をニュートラル状態に戻すように付勢することができる。
【0053】
また、この楽器支持ベルト1によれば、制動装置5が、ギター4に設けられた取付部25を着脱可能に取り付けるための装着部24を備えているので、ベルト本体3を演奏者2の体に取り付けた状態で、ギター4を制動装置5に取り付けることができると共に、ギター4を制動装置5から取り外すことができ、これにより使い勝手が良いものを提供することができる。
【0054】
この場合、ギター4の取付部25は、ギター4の背面に取り付けられた取付板26と、この取付板26に設けられた取付軸27とを備え、この取付軸27が、その外周面に円周方向に沿ってリング状に設けられた装着溝27bと、この装着溝27bに取り付けられて径方向に伸縮するリング状のロック部材28とを備えており、制動装置5の装着部24が、回転体11に設けられた軸装着穴30と、この軸装着穴30の内周面に設けられた係止溝30bとを備えている構成であるから、装着部24の軸装着穴30にギター4の取付軸27を挿入するだけで、ギター4を制動装置5に簡単に且つ容易に取り付けることができる。
【0055】
すなわち、回転体11の装着部21の軸装着穴30に、ギター4の背面に設けられた取付部25の取付軸27を挿入させる際には、軸装着穴30の内周面がギター4の取付軸27に取り付けられたロック部材28を径方向に収縮させて取付軸27の装着溝27b内に没入させ、この状態で収縮した状態のロック部材28が軸装着穴30の係止溝30bに対応すると、ロック部材28が弾性復帰するので、ロック部材28の外周部を軸装着穴30の係止溝30bに嵌合させることができる。このため、ギター4の取付軸27を回転体11の装着部21の軸装着穴30に挿入するだけで、ギター4を制動装置5に簡単に且つ容易に取り付けることができる。
【0056】
また、ギター4を制動装置5から取り外す際には、ロック部材28の弾性力に抗してギター4の取付軸27を軸装着穴30から抜き出す方向に引き出すと、ロック部材28が径方向に収縮しながら軸装着穴30の係止溝30bから離脱するので、ギター4の取付軸27を軸装着穴30から容易に抜き出すことができ、これによりギター4を制動装置5から簡単に且つ容易に取り外すことができる。
【0057】
さらに、この楽器支持ベルト1では、ギター4の取付軸27の外周面に、回転止め用の突起27aが軸方向に沿って設けられており、制動装置5の回転体11に設けられた装着部24の軸装着穴30の内周面には、ギター4の取付軸27の突起27aが挿入する回転止め溝30aが軸方向に沿って設けられているので、ギター4の取付軸27を装着部24の軸装着穴30に挿入する際に、軸装着穴30の回転止め溝30aに取付軸27の突起27aを挿入させることにより、ギター4の回転方向の動きを回転体11に確実に伝えることができ、これによりギター4の回転方向の動きに応じて回転体11を回転させることができる。
【0058】
なお、上述した実施形態では、ベルト本体3の制動装置5に取り付けられる楽器として、ギター4について述べたが、必ずしもギター4である必要はなく、例えば図14に示すような鍵盤装置35であっても良く、またこれらに限らず、三味線やベースなどの弦楽器、サックスホーンなどの管楽器など、各種の楽器に適用することができる。
【0059】
また、上述した実施形態では、ベルト本体3を演奏者2の腰に取り付けた場合について述べたが、これに限らず、楽器に応じて演奏者の胸や腹、あるいは演奏者の太ももなどに取り付けるようにしても良い。
【0060】
さらに、上述した実施形態では、ダンパー部材8として制動ばね12によって回転体11を制動する場合について述べたが、これに限らず、例えば回転体11を摩擦抵抗によって常に一定の負荷を付与して制動する摩擦式のダンパー部材を用いても良く、また回転体11を油圧などの液体の圧力で常に一定の負荷を付与して制動する油圧式のダンパー部材を用いても良い。
【符号の説明】
【0061】
1 楽器支持ベルト
2 演奏者
3 ベルト本体
4 ギター
5 制動装置
7 ベース部材
8 ダンパー部材
10 ハウジング
11 回転体
12 制動ばね
24 装着部
25 取付部
27 取付軸
27a 突起
27b 装着溝
28 ロック部材
30 軸装着穴
30a 回転止め溝
30b 係止溝
35 鍵盤楽器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者の体に着脱可能に取り付けられるベルト本体と、このベルト本体に設けられて楽器が取り付けられる制動装置とを備えた楽器支持ベルトであって、
前記制動装置は、前記楽器が取り付けられた状態で、前記楽器を演奏する際に、前記楽器の回転方向の動作を制動する構成であることを特徴とする楽器支持ベルト。
【請求項2】
前記制動装置は、前記楽器の回転方向に負荷がほとんど加わらないニュートラル状態を有し、常に前記ニュートラル状態に戻るように付勢されている構成であることを特徴とする請求項1に記載の楽器支持ベルト。
【請求項3】
前記制動装置は、前記楽器に設けられた取付部が着脱可能に取り付けられる装着部を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の楽器支持ベルト。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−227278(P2011−227278A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96748(P2010−96748)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】