説明

楽器用ストラップ及びストラップベルトの長さ調節方法

【課題】楽器を肩に掛けた状態でストラップベルトの長さを調節することのできる楽器用ストラップ及びストラップベルトの長さ調節方法を提供することにある。
【解決手段】ギター用ストラップ10は、第2ベルト17の長さを調節するためのアジャスタ13を備えている。アジャスタ13は、ベース31と、第2ベルト17の長さを調節するときに操作されるレバー32と、レバー32を第1の方向に回動するように付勢するトーションバネ38とを備えている。第2ベルト17は、トーションバネ38の付勢力によりベース31とレバー32とによって挟持される。また、第2ベルト17は、トーションバネの付勢力に抗してレバー32を第1の方向と異なる第2の方向に回動させると、ベース31及びレバー32により挟持された状態から解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器用ストラップ及びストラップベルトの長さ調節方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の楽器用ストラップは、ギターやキーボードなどの楽器を演奏者の肩に掛けて演奏するために用いられる。例えば、特許文献1に開示されるように、ギター用ストラップ(以下、ストラップと称す)は、ナイロン製や皮製のストラップベルトと、ストラップベルトの長さを調節するアジャスタと、ストラップベルトの両端に設けられ、ギターのボディに着脱される一対のストラップコネクタとを備えている。
【0003】
演奏者は、ギターを肩に掛ける前に、アジャスタを用いてストラップベルトの長さを調節する。そして、演奏者は、ギターを肩に掛けて、ストラップベルトの長さが適切であるか否かを確認する。多くの場合、演奏者は、ギターを最も演奏し易い位置に配置できるまで、ストラップベルトの長さの微調節を繰り返す。このように、ストラップベルトの長さの調節は、演奏者にとって、細心の注意を要するデリケートな作業の一つである。
【特許文献1】特開2001−83962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のストラップでは、ギターを肩に掛けた状態でストラップベルトの長さを調節することができない。このため、演奏者は、ストラップベルトの長さを調節するためギターを肩から下ろしたり、ストラップベルトの長さの確認のためギターを肩に掛けたりするといった動作を繰り返していた。こうした一連の動作は、演奏者にとって、非常に効率が悪く、かつ面倒な作業であった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ギターを肩に掛けた状態でストラップベルトの長さを調節することのできる楽器用ストラップ及びストラップベルトの長さ調節方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ストラップベルトと、ストラップベルトの長さを調節するためのアジャスタとを備えた楽器用ストラップであって、アジャスタは、ベースと、ベースに対し回動可能に取り付けられ、ストラップベルトの長さを調節するときに操作されるレバーと、ベースとレバーとの間に設けられ、レバーを第1の方向に回動するように付勢する付勢手段とを備え、ストラップベルトは、付勢手段の付勢力によりベースとレバーとによって挟持されると共に、付勢手段の付勢力に抗してレバーを第1の方向と異なる第2の方向に回動させることにより、ベース及びレバーにより挟持された状態から解除されることを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、レバーを操作して第2の方向に回動させることにより、ストラップベルトは、ベース及びレバーにより挟持された状態から解除される。これにより、ストラップベルトの長さを調節することが可能になる。ストラップベルトの長さを調節した後はレバーを操作しないため、ストラップベルトは、付勢手段の付勢力によりベースとレバーとによって挟持される。これにより、調節後のストラップベルトの長さを固定することができる。こうした一連の動作をレバーの操作により簡単に行えるため、演奏者は、楽器を肩に掛けた状態でストラップベルトの長さを調節することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、アジャスタは、ストラップベルトとの間に生じる滑りを防止するための滑り防止手段を備えていることを要旨とする。
この構成によれば、ストラップベルトを、付勢手段の付勢力によりベースとレバーとによって挟持することに加え、滑り防止手段によりアジャスタに対し滑らないように保持することもできる。これにより、楽器の自重によりストラップベルトが下方に引っ張られても、調節後のストラップベルトの長さをより確実に固定することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の発明において、滑り防止手段は複数の突起からなり、突起は、ベース及びレバーの少なくとも一方においてストラップベルトを挟持する面に設けられていることを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、アジャスタベース及びレバーの少なくとも一方に設けられた複数の突起をストラップベルトに突き刺すことにより、ストラップベルトをアジャスタに対し滑らないように保持することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の発明において、楽器のボディは、ストラップベルトの両端が装着される一対の端部を有し、アジャスタは、ボディの両端部のうちのいずれか一方の端部付近に設けられていることを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、楽器のボディの端部付近にアジャスタが配置されることで、演奏者の手により、アジャスタのレバーを容易に操作することができる。よって、アジャスタの操作性が向上するため、演奏者は、楽器を肩に掛けた状態でストラップベルトの長さを容易に調節することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4記載の発明において、アジャスタは、ボディとの接触による衝撃を緩和するための衝撃緩和部材を備えていることを要旨とする。
楽器のボディ付近にアジャスタが配置されている場合、演奏者が動きながら演奏するときに、アジャスタがボディに接触して、ボディの表面に傷を付けてしまうことがある。この構成によれば、衝撃緩和部材によって、アジャスタがボディに接触してもその接触による衝撃が緩和されるため、ボディの表面に傷を付けないようにすることができる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の発明において、付勢手段は、一対のアーム部を有するトーションバネであり、ベース及びレバーの少なくともいずれか一方には、トーションバネのアーム部を係止するための係止凹部が設けられていることを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、係止凹部により、トーションバネのアーム部をベース及びレバーの少なくとも一方に係止させることができる。これにより、トーションバネの付勢力を、ベースとレバーとに確実に付与することができる。よって、強い付勢力により、ストラップベルトをベースとレバーとによって挟持することができる。従って、調節後のストラップベルトの長さをより確実に固定することができる。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の発明において、レバーの一端には、レバーの操作時に操作される操作部が設けられ、その操作部を押し下げることによりレバーが第2の方向に回動することを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、操作部を押し下げることでレバーが第2の方向に回動し、ストラップベルトがベース及びレバーにより挟持された状態から解除される。つまり、レバーを押し下げるだけで、ストラップベルトの長さを調節することが可能になる。よって、アジャスタの操作性が一層向上する。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のうちいずれか一項に記載の発明において、ストラップベルトは、ボディの第1端部に装着される第1ベルトと、第1ベルトに連結され、ボディの第2端部に装着される第2ベルトとから構成され、アジャスタは、第1又は第2のベルトに取り付けられると共にアジャスタが取り付けられたベルトの長さを調節することを要旨とする。
【0019】
この構成によれば、アジャスタを用いることで、ストラップベルトを構成する第1及び第2ベルトのうちの一方のみを調節することができる。これにより、ストラップベルトの長さを部分的に調節することができる。よって、アジャスタを用いることで、ストラップベルトの長さを微調節することができる。
【0020】
請求項9に記載の発明は、請求項8記載の発明において、第1ベルトには、第1ベルトの長さを調節する第1アジャスタが設けられ、第2ベルトには、第2ベルトの長さを調節する第2アジャスタが設けられていることを要旨とする。
【0021】
この構成によれば、第1及び第2アジャスタを用いて対応するベルトの長さをそれぞれ調節することができる。これにより、第1アジャスタを用いて調節できるストラップベルトの長さと、第2アジャスタを用いて調節できるストラップベルトの長さとを、必要に応じて所望の長さにそれぞれ設定することができる。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項9記載の発明において、第1アジャスタにより調節できるストラップベルトの長さは、第2アジャスタにより調節できるストラップベルトの長さとは異なることを要旨とする。
【0023】
この構成によれば、ストラップベルトの長さを調節する際にその目的を使い分けて第1及び第2アジャスタをそれぞれ操作することができる。
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10記載の楽器用ストラップを用いたストラップベルトの長さ調節方法であって、楽器を演奏者の肩に掛ける前に、第1アジャスタを用いて第1ベルトの長さを調節することによりストラップベルトの長さを調節するステップと、第1ベルトの長さを調節した後、楽器を演奏者の肩に掛けた状態で、第2アジャスタを用いて第2ベルトの長さを調節することによりストラップベルトの長さを微調節するステップとを備えることを要旨とする。
【0024】
この構成によれば、演奏者は、楽器を肩に掛ける前に、第1アジャスタを用いて第1ベルトの長さを調節する。このとき、演奏者は、ストラップベルトの長さを大まかに調節する。次に、演奏者は、楽器を肩に掛けた状態で、アジャスタを用いて第2ベルトの長さを調節する。このとき、演奏者は、楽器を最も演奏し易い位置に配置できるまで、第2ベルトの長さを調節することによりストラップベルトの長さを微調節する。こうした一連の操作を通じて、効率良く、かつ適切にストラップベルトの長さを調節することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、楽器を肩に掛けた状態でストラップベルトの長さを調節することのできる楽器用ストラップ及びストラップベルトの長さ調節方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の楽器用ストラップをギター用ストラップに具体化した一実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、ギター用ストラップ(以下、ストラップと称す)10は、ストラップベルト11と、ストラップベルト11の両端に設けられた一対のストラップコネクタ(以下、コネクタと称す)12とを備えている。一方、ギター1のボディ2は、ヘッド3に近い第1端部2aと第1端部2aの反対側に位置する第2端部2bとにコネクタピン4をそれぞれ有している。ストラップ10は、各コネクタ12の中央に、ギター1のコネクタピン4を挿通するための挿通孔12aをそれぞれ有している。ストラップ10は、コネクタ12及びコネクタピン4を介して、ギター1のボディ2の両端部に装着される。
【0027】
ストラップベルト11は、2つの独立した第1及び第2ベルト16,17と、両ベルト16,17を連結する連結部材18とを備えている。第1及び第2ベルト16,17は、ナイロンやポリプロピレンなどの樹脂素材、又は布や皮革等の繊維素材により形成されている。また、連結部材18は、ポリカーボネート等の樹脂や金属等のような剛性の高い材料により形成されている。連結部材18には、長さの異なる2つのスリット18a,18bが形成されている。長い方のスリット18aには第1ベルト16の端部が連結され、短い方のスリット18bには第2ベルト17が連結されている。
【0028】
第1ベルト16には、第1ベルト16の長さを調節する第1アジャスタとしての調節具20と、コネクタ12との連結に用いられるリング19とが取り付けられている。調節具20は、ポリカーボネート等の樹脂や金属等のような剛性の高い材料からなる。調節具20は、略長方形状に形成されている。調節具20には、調節具20の長手方向に沿って延びる2つのスリット20a,20bが形成されている。
【0029】
第1ベルト16は、調節具20の両スリット20a,20b及びリング19に通されて、それらに対しスライド移動可能に支持されている。第1ベルト16の一方の端部は、連結部材18のスリット18aに通されて、第1ベルト16の他の部分に縫合されている。また、第1ベルト16の他方の端部は、調節具20の両スリット20a,20b間の部分に巻き付けられて、第1ベルト16の他の部分に縫合されている。こうして、第1ベルト16は、各端部を連結部材18と調節具20とにそれぞれ連結した状態で、調節具20及びリング19に対しスライド移動可能に組み付けられている。第1ベルト16は、調節具20とリング19との間においてループ状に、即ち第1ベルト16の一部を他の部分と重複させるように形成されている。
【0030】
調節具20を第1ベルト16に沿ってスライド移動させると、第1ベルト16の重複部分の長さが変更される。これにより、第1ベルト16の長さが変更されるため、ストラップベルト11の長さも変更される。詳しくは、調節具20をスライド移動させてリング19に接近させると、第1ベルト16の重複部分の長さは短くなり、その分、第1ベルト16は長くなる。一方、調節具20をスライド移動させて連結部材18に接近させると、第1ベルト16の重複部分は長くなり、その分、第1ベルト16の長さが短くなる。このような調節具20の操作を通じて、第1ベルト16をその全長と略同じ長さにまで長くすることができ、第1ベルト16の長さの略半分にまで短くすることができる。
【0031】
第2ベルト17には、第2ベルト17の長さを調節する第2アジャスタとしてのアジャスタ13が取り付けられている。アジャスタ13は、ギター1のボディ2の第2端部2b付近に取り付けられている。図3〜図6に示すように、アジャスタ13は、ベース31、レバー32、及び付勢手段としてのトーションバネ38を備えている。ベース31は、長方形状の底壁31aと、底壁31aの両側部から延びると共に略三角形状をなす一対の側壁31bとを備えている。ベース31の底壁31aには、ベース31の幅方向に沿って延びる2つの長孔31c,31dが形成されている。底壁31aの端部に近接する長孔31cの幅は、底壁31aの中央に位置する長孔31dよりも小さく設定されている。ベース31の底壁31aの外面には、四角形状のゴム板からなる衝撃緩和部材33が設けられている。衝撃緩和部材33は、アジャスタ13とギター1のボディ2との接触による衝撃を緩和するために設けられている。
【0032】
レバー32は、ベース31の内面を覆うカバー部34と、第2ベルト17をベース31の底壁31aに押し付ける押さえ部35とを備えている。また、カバー部34には、ベース31に取り付けられる取付部34aと、第2ベルト17の長さの調節時に操作される操作部34bとが設けられている。取付部34aの両側縁には、ベース31の底壁31aに向けて延びると共に略三角形状をなす一対の側壁34cが設けられている。レバー32は、取付部34aの両側壁34cの外面をベース31の両側壁31bの内面に向けて配置されている。レバー32は、取付部34aの両側壁34cを貫通するシャフト36を介して、ベース31の両側壁31bに対し回動可能に取り付けられている。操作部34bには、レバー32の幅方向に沿って延びる複数本の突条34dが形成されている。突条34dは、手でレバー32を操作するときに滑らないようにするために設けられている。
【0033】
押さえ部35は、カバー部34の先端からベース31の底壁31aに向けて延びている。押さえ部35の先端は、ベース31の中央にある長孔31dと対応する位置に設けられている。押さえ部35の中央には、ベース31の底壁31aに沿って突出する突出部35aが設けられている。突出部35aは、レバー32の幅方向に沿って、かつレバー32の全幅に亘って延びている。突出部35aには、レバー32と第2ベルト17との間に生じる滑りを防止する滑り防止手段が設けられている。この滑り防止手段は、ベース31の底壁31aと対向する突出部35aの裏面に設けられた複数の突起37からなる。突起37は、先端に向かうほど縮径するようテーパ状に形成されている。複数の突起37は、突出部35aの裏面の全体に亘って形成されている。
【0034】
トーションバネ38は、ベース31とレバー32との間に設けられている。トーションバネ38は、コイル部38aと、コイル部38aの両端から延びる一対のアーム部38bとを備えている。トーションバネ38は、コイル部38aの中央にシャフト36を挿通させると共に、一対のアーム部38bを介してベース31とレバー32との間に支持されている。トーションバネ38の一方のアーム部38bは、ベース31の両側壁31b間を連絡する支持棒39によって支持されている。また、トーションバネ38の他方のアーム部38bは、レバー32の内面に形成された係止凹部40に係止されている。係止凹部40は、レバー32の内面から突出した2つの突部41の間に形成されている。
【0035】
トーションバネ38は、シャフト36、支持棒39、及びレバー32の内面によって、所定の大きさの付勢力を蓄えた状態で支持されている。この状態で、レバー32は、トーションバネ38の付勢力により、ベース31に対し第1の方向(図5に示す矢印方向)に回動するように常に付勢されている。ここで、第1の方向とは、レバー32の押さえ部35をベース31の底壁31aに押し付ける方向を意味する。
【0036】
図2〜図4に示すように、第2ベルト17は、上記アジャスタ13の内部及び連結部材18のスリット18bに通されて、それらに対しスライド移動可能に支持されている。第2ベルト17の一方の端部は、ベース31の長孔31cに通されて、第2ベルト17の他の部分に縫合されている。第2ベルト17の他方の端部には、ボディ2の第2端部2bに装着されるコネクタ12が縫合されている。こうして、第2ベルト17は、一方の端部をアジャスタ13に連結した状態で、アジャスタ13及び連結部材18に対しスライド移動可能に組み付けられている。第2ベルト17は、アジャスタ13と連結部材18との間においてループ状に、即ち、第2ベルト17の一部を他の部分と重複させるように形成されている。
【0037】
レバー32を操作しないとき、第2ベルト17は、図7(a)に示すように、トーションバネ38の付勢力により、ベース31の底壁31aとレバー32の押さえ部35とによって挟持されている。このとき、レバー32の押さえ部35により、第2ベルト17がベース31の底壁31aに押し付けられている。また、このとき、第2ベルト17には、レバー32の突出部35aに設けられた複数の突起37が突き刺さっている。これらにより、第2ベルト17は、アジャスタ13に対しスライド移動不能に保持されている。
【0038】
レバー32の操作部34bを押し下げることで、レバー32は、図7(b)に示すように、トーションバネ38の付勢力に抗して、シャフト36を中心に第2の方向(図7(b)に示す矢印方向)に回動する。これにより、レバー32の押さえ部35がベース31の底壁31aから離れるため、レバー32の複数の突起37が第2ベルト17から外れる。こうして、第2ベルト17は、ベース31及びレバー32によって挟持された状態から解除される。そして、第2ベルト17は、アジャスタ13に対してスライド移動可能となる。ここで、第2の方向とは、前記第1の方向と逆方向を指し、レバー32の押さえ部35をベース31の底壁31aから引き離す方向を意味する。
【0039】
第1ベルト16の場合と同様に、第2ベルト17はその全長さと略同じ長さにまで長くすることができ、第2ベルト17の長さの略半分にまで短くすることができる。第2ベルト17の長さは、第1ベルト16の長さよりも短く設定されており、詳しくは、第1ベルト16の長さの1/4以上1/2未満に設定されている。そのため、アジャスタ13を用いて調節できる第2ベルト17の長さは、調節具20を用いて調節できる第1ベルト16の長さよりも短く設定されており、詳しくは、調節具20を用いて調節できる第1ベルト16の長さの1/4以上1/2未満に設定されている。
【0040】
次に、上記のストラップ10を用いたストラップベルト11の長さ調節方法について、図1及び図7(a),(b)を参照して詳細に説明する。
まず、演奏者は、ギター1を肩に掛ける前に、調節具20を用いて第1ベルト16の長さを調節する。このとき、第1ベルト16の長さを調節することで、ストラップベルト11全体の長さを大まかに調節する。第1ベルト16の長さを調節した後、演奏者は、ギター1を肩に掛けることにより、ストラップベルト11の長さが適切であるか否かを確認する。そして、演奏者は、ギター1を肩に掛けた状態で、アジャスタ13を用いて第2ベルト17の長さを調節する。このとき、演奏者は、ギター1を最も演奏し易い位置に配置できるまで、アジャスタ13を操作して第2ベルト17の長さを調節し、ストラップベルト11の長さを微調節する。
【0041】
その際、演奏者は、図7(b)に示すように、手でレバー32の操作部34bを押し下げる。すると、レバー32は、シャフト36を中心として第2の方向(図7(b)に示す矢印方向)に回動する。これにより、レバー32の押さえ部35がベース31の底壁31aから離れるため、第2ベルト17は、ベース31及びレバー32によって挟持された状態から解除される。その結果、第2ベルト17は、アジャスタ13に対してスライド移動可能となる。こうして、演奏者は、手でレバー32の操作部34bを押し下げたまま、第2ベルト17の長さを調節し、ストラップベルト11の長さを調節する。一方、レバー32の操作部34bから手を離すと、レバー32は、トーションバネ38の付勢力により、シャフト36を中心に第1の方向(図7(a)に示す矢印方向)に回動する。そして、レバー32の押さえ部35により、第2ベルト17が、ベース31の底壁31aに対して押し付けられる。これにより、第2ベルト17がベース31及びレバー32によって挟持されると共に、第2ベルト17にレバー32の複数の突起37が突き刺さる。その結果、第2ベルト17は、アジャスタ13に対してスライド移動不能に保持される。こうして、演奏者は、第2ベルト17の長さを固定して、ストラップベルト11全体の長さを固定する。
【0042】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)アジャスタ13は、ベース31と、第2ベルト17の長さを調節するときに操作されるレバー32と、レバー32を第1の方向に回動するように付勢するトーションバネ38とを備えている。この構成によれば、レバー32を操作して第2の方向に回動させることにより、第2ベルト17は、ベース31及びレバー32により挟持された状態から解除される。これにより、第2ベルト17の長さを調節して、ストラップベルト11全体の長さを調節することが可能になる。第2ベルト17の長さを調節した後はレバー32を操作しないため、第2ベルト17は、トーションバネ38の付勢力によりベース31とレバー32とによって挟持される。これにより、調節後の第2ベルト17の長さを固定して、ストラップベルト11全体の長さを固定することができる。こうした一連の動作をレバー32の操作により簡単に行えるため、演奏者は、ギター1を肩に掛けた状態で、第2ベルト17の長さを調節して、ストラップベルト11の長さを調節することができる。
【0043】
(2)レバー32の突出部35aは、ベース31の底壁31aと対向する面に滑り防止手段としての複数の突起37を有している。この構成によれば、トーションバネ38の付勢力によりベース31とレバー32とによって第2ベルト17を挟持することに加え、複数の突起を第2ベルト17に突き刺すことにより、第2ベルト17をアジャスタ13に対し滑らないように保持することができる。これにより、ギター1の自重により第2ベルト17が下方に引っ張られても、調節後の第2ベルト17の長さをより確実に固定することができ、ストラップベルト11の長さをより確実に固定することができる。
【0044】
(3)アジャスタ13は、ギター1のヘッド3と反対側に位置するボディの第2端部2b付近に配置されている。このため、演奏者の利き手により、アジャスタ13のレバー32を操作することができる。よって、アジャスタ13の操作性が向上するため、演奏者は、ギター1を肩に掛けた状態で、第2ベルト17の長さを容易に調節することができ、ストラップベルト11全体の長さを容易に調節することができる。
【0045】
(4)ギター1のボディ2付近にアジャスタ13が配置されている場合、演奏者が動きながら演奏するときに、アジャスタ13がギター1のボディ2に接触して、ボディ2の表面に傷を付けてしまうことがある。その点、本実施形態によれば、アジャスタ13は、ギター1との接触による衝撃を緩和するための衝撃緩和部材33を備えている。この衝撃緩和部材33によって、アジャスタ13がギター1に接触してもその接触による衝撃が緩和されるため、ボディ2の表面に傷を付けないようにすることができる。
【0046】
(5)レバー32の内面には、係止凹部40が形成されている。この構成によれば、係止凹部40により、トーションバネ38のアーム部38bをレバー32に係止させることができる。これにより、トーションバネ38の付勢力を、ベース31とレバー32とに確実に付与することができる。よって、より強い付勢力により、第2ベルト17をベース31とレバー32とによって挟持することができる。従って、調節後の第2ベルト17の長さをより確実に固定することができ、ストラップベルト11全体の長さをより確実に固定することができる。
【0047】
(6)レバー32の一端には、レバー32の操作時に操作される操作部34bが設けられている。この構成によれば、操作部34bを押し下げることでレバー32が第2の方向に回動し、第2ベルト17がベース31及びレバー32により挟持された状態から解除される。つまり、レバー32を押し下げるだけで、第2ベルト17の長さを調節することができ、ストラップベルト11全体の長さを調節することが可能になる。よって、アジャスタ13の操作性が一層向上する。
【0048】
(7)ストラップベルト11は、2つの独立した第1及び第2ベルト16,17を備えている。また、アジャスタ13は、第2ベルト17の長さを変更するために用いられる。この構成によれば、アジャスタ13を用いることで、ストラップベルト11を構成する第2ベルト17のみを調節することができる。これにより、ストラップベルト11の長さを部分的に調節することができる。よって、アジャスタ13を用いることで、第2ベルト17の長さを調節して、ストラップベルト11全体の長さを微調節することができる。
(8)第1ベルト16には、アジャスタ13とは別に、第1アジャスタとしての調節具20が取り付けられている。この構成によれば、調節具20を用いて第1ベルト16の長さを調節すると共に、第2アジャスタとしてのアジャスタ13を用いて第2ベルト17の長さを調節することができる。これにより、調節具20を用いて調節できる第1ベルト16の長さと、アジャスタ13を用いて調節できる第2ベルト17の長さとを、必要に応じて所望の長さにそれぞれ設定することができる。
(9)アジャスタ13を用いて調節できる第2ベルト17の長さは、調節具20を用いて調節できる第1ベルト16の長さよりも短く設定されている。この構成によれば、ストラップベルト11の長さを大まかに調節するために調節具20を用い、ストラップベルト11の長さを微調節するためにアジャスタ13を用いることができる。つまり、ストラップベルト11の長さを調節する際にその目的を使い分けて調節具20及びアジャスタ13をそれぞれ操作することができる。
(10)本実施形態によるストラップベルト11の長さ調節方法によれば、演奏者は、ギター1を肩に掛ける前に、調節具20を用いて第1ベルト16の長さを調節する。このとき、演奏者は、ストラップベルト11の長さを大まかに調節する。次に、演奏者は、ギター1を肩に掛けた状態で、アジャスタ13を用いて第2ベルト17の長さを調節する。このとき、演奏者は、ギターを最も演奏し易い位置に配置できるまで、第2ベルト17の長さを調節することによりストラップベルト11の長さを微調節する。こうした一連の操作を通じて、効率良く、かつ適切にストラップベルト11の長さを調節することができる。
【0049】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態において、ストラップベルト11から第1ベルト16を省略してもよい。つまり、ギター用ストラップ10を、アジャスタ13を備えた第2ベルト17のみによって構成してもよい。
【0050】
・本実施形態において、第2ベルト17からアジャスタ13を省略し、また第1ベルト16から調節具20を省略する代わりに、第1ベルト16にアジャスタ13を取り付けてもよい。また、第1及び第2ベルト16,17の両方にアジャスタ13をそれぞれ取り付けてもよい。
【0051】
・本実施形態において、レバー32の突出部35aに設けられた突起37を省略してもよい。また、レバー32から突起37を省略する代わりに、ベース31の底壁31aの内面に突起37を設けてもよい。つまり、ベース31及びレバー32のいずれか一方であって第2ベルト17を挟持する面に突起37を設ければよい。また、レバー32の突出部35a及びベース31の底壁31aの内面の両方に突起37を設けてもよい。
【0052】
・本実施形態において、滑り防止手段は、テーパ状の突起以外にも、例えば、円柱状の突起、レバー32の幅方向に沿って延びる突条、又は表面粗さの大きい凹凸面などであってもよい。
【0053】
・本実施形態において、ベース31から衝撃緩和部材33を省略してもよい。また、衝撃緩和部材33は、ゴム板以外にも、例えば、スポンジやフェルトなどの弾性素材であってもよい。
【0054】
・本実施形態において、トーションバネ38に代えて、圧縮コイルばねを用いてもよい。この場合、圧縮コイルバネは、レバー32又はベース31の内面に圧縮された状態で固定されている。
【0055】
・本実施形態において、レバー32の操作部34bから突条34dを省略してもよい。また、突条34dに代えて、操作部34bに複数の突起を設けたり、操作部34bの表面粗さを他の部分よりも粗くしたりしてもよい。
【0056】
また、図8(a),(b)に示すように、トーションバネ38と反対側に位置するレバー82の端部に操作部82aを形成してもよい。この場合、レバー82の操作部82aを図8(b)に示す矢印方向に引き上げることにより、第2ベルト17を、ベース31及びレバー32により挟持された状態から解除することができる。
【0057】
・本実施形態において、アジャスタ13により調節できる第2ベルト17の長さは、調節具20により調節できる第1ベルト16の長さと同じかそれよりも長くてもよい。
・本発明は、ギター用ストラップ以外にも、例えば、ベースやキーボードなど、肩に掛けた状態で演奏できる楽器用ストラップに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係るギター用ストラップがギターに装着された状態を示す正面図。
【図2】ギター用ストラップの斜視図。
【図3】ギター用ストラップのアジャスタ付近を表側から見た拡大斜視図。
【図4】ギター用ストラップのアジャスタ付近を裏側から見た拡大斜視図。
【図5】アジャスタの内部構造を示す縦断面図。
【図6】アジャスタの内部構造を示す端面図。
【図7】(a)はアジャスタによりストラップベルトが保持されている状態を示す縦断面図、(b)はアジャスタに対するストラップベルトの保持が解除されている状態を示す縦断面図。
【図8】(a)は別例のアジャスタによりストラップベルトが保持されている状態を示す縦断面図、(b)は別例のアジャスタに対するストラップベルトの保持が解除されている状態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0059】
1…ギター(楽器)、2…ボディ、2a…第1端部、2b…第2端部、10…ストラップ(ギター用ストラップ)、11…ストラップベルト、13…アジャスタ、16…第1ベルト、17…第2ベルト、20…調節具、31…ベース、32…レバー、33…衝撃緩和部材、34b…操作部、37…突起(滑り防止手段)、38…トーションバネ(付勢手段)、38b…アーム部、40…係止凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストラップベルトと、前記ストラップベルトの長さを調節するためのアジャスタとを備えた楽器用ストラップであって、
前記アジャスタは、ベースと、前記ベースに対し回動可能に取り付けられ、前記ストラップベルトの長さを調節するときに操作されるレバーと、前記ベースと前記レバーとの間に設けられ、前記レバーを第1の方向に回動するように付勢する付勢手段とを備え、
前記ストラップベルトは、前記付勢手段の付勢力により前記ベースと前記レバーとによって挟持されると共に、前記付勢手段の付勢力に抗して前記レバーを前記第1の方向と異なる第2の方向に回動させることにより、前記ベース及び前記レバーにより挟持された状態から解除されることを特徴とする楽器用ストラップ。
【請求項2】
請求項1記載の楽器用ストラップにおいて、
前記アジャスタは、前記ストラップベルトとの間に生じる滑りを防止するための滑り防止手段を備えていることを特徴とする楽器用ストラップ。
【請求項3】
請求項2記載の楽器用ストラップにおいて、
前記滑り防止手段は複数の突起からなり、前記突起は、前記ベース及び前記レバーの少なくとも一方において前記ストラップベルトを挟持する面に設けられていることを特徴とする楽器用ストラップ。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の楽器用ストラップにおいて、
前記楽器のボディは、前記ストラップベルトの両端が装着される一対の端部を有し、前記アジャスタは、前記ボディの両端部のうちのいずれか一方の端部付近に設けられていることを特徴とする楽器用ストラップ。
【請求項5】
請求項4記載の楽器用ストラップにおいて、
前記アジャスタは、前記ボディとの接触による衝撃を緩和するための衝撃緩和部材を備えていることを特徴とする楽器用ストラップ。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項に記載の楽器用ストラップにおいて、
前記付勢手段は、一対のアーム部を有するトーションバネであり、前記ベース及び前記レバーの少なくともいずれか一方には、前記トーションバネのアーム部を係止するための係止凹部が設けられていることを特徴とする楽器用ストラップ。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の楽器用ストラップにおいて、
前記レバーの一端には、前記レバーの操作時に操作される操作部が設けられ、その操作部を押し下げることにより前記レバーが前記第2の方向に回動することを特徴とする楽器用ストラップ。
【請求項8】
請求項4〜7のうちいずれか一項に記載の楽器用ストラップにおいて、
前記ストラップベルトは、前記ボディの第1端部に装着される第1ベルトと、前記第1ベルトに連結され、前記ボディの第2端部に装着される第2ベルトとから構成され、前記アジャスタは、前記第1又は第2のベルトに取り付けられると共に前記アジャスタが取り付けられたベルトの長さを調節することを特徴とする楽器用ストラップ。
【請求項9】
請求項8記載の楽器用ストラップにおいて、
前記第1ベルトには、前記第1ベルトの長さを調節する第1アジャスタが設けられ、前記第2ベルトには、前記第2ベルトの長さを調節する第2アジャスタが設けられていることを特徴とする楽器用ストラップ。
【請求項10】
請求項9記載の楽器用ストラップにおいて、
前記第1アジャスタにより調節できるストラップベルトの長さは、前記第2アジャスタにより調節できるストラップベルトの長さとは異なることを特徴とする楽器用ストラップ。
【請求項11】
請求項9又は10記載の楽器用ストラップを用いたストラップベルトの長さ調節方法であって、
前記楽器を演奏者の肩に掛ける前に、前記第1アジャスタを用いて前記第1ベルトの長さを調節することにより前記ストラップベルトの長さを調節するステップと、
前記第1ベルトの長さを調節した後、前記楽器を演奏者の肩に掛けた状態で、前記第2アジャスタを用いて前記第2ベルトの長さを調節することにより前記ストラップベルトの長さを微調節するステップと
を備えることを特徴とするストラップベルトの長さ調節方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−85423(P2010−85423A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250934(P2008−250934)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000195018)星野楽器株式会社 (13)
【Fターム(参考)】