説明

楽器端末

【課題】ユーザが容易に演奏データの内容を認識することができる技術を提供する。
【解決手段】楽器端末1の制御部11は、楽曲を収録する旨の操作が行われたことを検知すると、演奏データを生成するとともに、文字タイトル情報を生成する。このとき、制御部11は、音声タイトル情報の入力を促すメッセージを表示させる。音声タイトル情報が入力されると、制御部11は、文字タイトル情報と音声タイトル情報とを対応付けて記憶部12に記憶するとともに、文字タイトル情報と音声タイトル情報と演奏データとを対応付けてサーバ装置に送信する。そして、文字タイトルの一覧が表示されている画面において文字タイトルが選択されると、制御部11は、選択された文字タイトル情報と対応付けて記憶された音声タイトル情報を記憶部12から読み出し、その音声をスピーカ19から発音させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏データの保存、検索、アクセス制御等を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
演奏者の演奏内容に応じて演奏データを生成する電子楽器端末においては、生成した演奏データを自身のメモリから読み出してサーバなどへ送信する通信機能を備えたものがある。このような場合、楽器端末の操作ボタン等により入力されるテキストデータや、楽器端末が自動で生成したタイムスタンプ(日付、時刻等)を示すテキストデータが、演奏データを識別するファイル名として用いられている。
【0003】
ところで、楽器端末が自動で生成するファイル名は、機械的、無機的な文字列となることが多く、使用者がそのファイル名から演奏データの内容を思い出すことが困難なために、所望のファイルを見つけ出すことができないという問題があった。
また、ユーザがファイル名を入力する場合は、ファイル名にある程度の意味を持たせることができるので、上述した問題は緩和されるが、ファイル名の文字数は限られていることが多く、本来残したい意味内容を含めたファイル名にすることができないことが多い。そのため、上述の場合と同様に所望のファイルがなかなか見つけられないことが多かった。
このような場合は、ユーザは、いちいちそのファイルを開いて、ファイルの内容を確認しなければ、そのファイルがどのようなものであるかを把握することができなかった。更に、ファイルを読み出して再生しても、曲の特徴部分(サビの部分など)を聞かないと、所望のファイルかどうか分からないことが多いため、そのファイルの最初の音声を確認しただけでは内容が把握できず、結局有る程度の時間をかけてそのファイルの内容を試聴しなければならず、所望のファイルを探すのに時間がかかってしまうという問題があった。
【0004】
ところで、データ(ファイル)の蓄積および管理方法については種々のものが提案されている。例えば、特許文献1に記載の技術は、筆記面に書き込まれた画像を読み取り、読み取られた画像データと、その画像が書き込まれた際に発言された音声とを対応付けて記憶し、再生指示が行われると、画像と音声とが同期して再生されるようになっている。また、特許文献2に記載の技術では、音声データが画像データに添付されて蓄積され、キーワード等を入力することによって、音声データと画像データとを検索できるようになっている。
【特許文献1】特開2003−260896号公報
【特許文献2】特開2000−165577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載の技術では、ファイル内容として音声データが包含されているので、ファイル内容を再生すれば、再生される音声や画像から所望のファイルであるか否かを比較的早く判断することができることも予想される。
しかしながら、特許文献1,2に記載の技術においては、いずれも記録するファイルにファイル名を付けるという点においては、上述した従来の手法となんら代わりが無く、ファイルを読み出す際には、結局、ファイル名あるいはキーワードを頼りにするしかなかった。また、特許文献2ではキーワードを使って検索を補助することができるものの、ファイル名そのものの記憶が曖昧な場合には、キーワード検索の的中率も悪くなるから、結局、上記の問題を解決することはできない。
したがって、特許文献1,2に記載の技術では、所望のファイルを即座に検索することは困難である。
【0006】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、楽器端末において生成された演奏データについて、ユーザが容易にその演奏データの内容を認識することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、演奏を行うための操作子と、前記操作子が操作された内容に応じた信号を出力する検知手段と、前記検知手段によって出力された信号に基づいて演奏データを生成する演奏データ生成手段と、前記演奏データのタイトルを示すタイトルデータを生成するタイトルデータ生成手段と、入力される音声に対応する音声データを生成する音声入力手段と、前記演奏データを前記音声データおよび前記タイトルデータに対応付けて、所定のサーバ装置に通信ネットワークを介して送信する送信手段とを備えることを特徴とする楽器端末を提供する。
【0008】
本発明の好ましい態様においては、前記タイトルデータと前記音声データとを対応付けて記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された1または複数のタイトルデータを表示する表示手段と、前記表示手段に表示されたタイトルデータのうちのいずれか一つを選択する選択手段と、前記選択手段により選択されたタイトルデータと対応する音声データを前記記憶手段から読み出し、読み出した音声データに基づいて音声を発音する発音手段とを備えることを特徴とする。
本発明の別の好ましい態様においては、前記演奏データを前記サーバ装置に送信する旨のコマンド信号を受け取ると、前記音声入力手段への音声入力を促す報知動作を行う報知手段を有し、前記送信手段は前記報知手段による報知動作が行われ、前記音声入力手段によって音声データが生成されたことを認識した後に、前記演奏データを前記音声データに対応付けて送信することを特徴とする。
本発明の更に好ましい態様においては、前記記憶手段に記憶された音声データを読み出して、前記所定のサーバ装置に通信ネットワークを介して送信する音声データ送信手段と、前記所定のサーバ装置から、前記演奏データを受信する演奏データ受信手段と、前記演奏データ受信手段により受信された演奏データを記憶する演奏データ記憶手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、楽器端末において生成された演奏データについて、ユーザが容易にその演奏データの内容を認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<A:構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るシステムの全体構成を示すブロック図である。図に示すように、このシステムは、楽器端末1とサーバ装置2とが、通信ネットワークにより接続されて構成される。なお、実際にはより多くの楽器端末が接続されるが、説明の簡略化のために1つの楽器端末1だけを示している。
【0011】
楽器端末1は、電子キーボード等の電子楽器である。ここで、楽器端末1の構成について、図2および図3を参照しつつ説明する。図2は、楽器端末1の外観を示す図であり、図3は、楽器端末1のハードウェア構成を示すブロック図である。図において、10は、複数の鍵10aを備えた演奏部である。楽器端末1の演奏者は、この演奏部10の鍵10aを押下することによって楽器端末1を演奏する。鍵10aが押下されて演奏が行われると、演奏部10は、その演奏内容に応じた信号を出力する。11は例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置や、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの各種メモリを備えた制御部である。12は、フラッシュメモリ等で構成された記憶部であり、楽器端末1の各部を制御するための各種プログラムが記憶されている。制御部11の演算装置は、記憶部12に記憶されているコンピュータプログラムを読み出して実行することにより、バス13を介して楽器端末1の各部を制御する。また、演奏者によって演奏部10が操作されると、制御部11は、演奏部10から供給される信号に基づいてMIDI(Musical Instrument Digital Interface:登録商標)形式の演奏データを生成する。
なお、記憶部12は、数曲の演奏データを記憶可能な記憶領域を備えており、制御部11によって生成された演奏データを記憶部12に記憶できるようになっている。
【0012】
14は、通信ネットワークに接続するためのモデムや各種通信装置を備えた通信部であり、制御部11による制御の下で他の装置とデータ通信を行うようになっている。15は、5インチ程度の狭小な表示領域を有する表示部である。16は、「受信」、「送信」、「収録」、「停止」及び「再生」等の各種ボタンや、カーソル表示を上下させる上下キー等を備えた操作部である。楽器端末1のユーザは、表示部15に表示されたメッセージを見ながら操作部16を操作することにより、楽器端末1に対して各種指示入力を行うことができる。17は、音声を収音するマイクロフォンであり、制御部11は、マイクロフォン17が収音する音声からデジタル形式の音声データを生成する。18は、制御部11によって供給される演奏データに基づいてスピーカ19を駆動するオーディオ制御部である。
【0013】
次に、サーバ装置2の構成について図4を参照しつつ説明する。図4は、サーバ装置2のハードウェア構成を示すブロック図である。図において、21は、例えばCPU等の演算装置や、ROMやRAMなどの各種メモリを備えた制御部である。22は、例えばハードディスクなどの大容量記憶装置で構成された記憶部である。記憶部22はサーバ装置2を動作させるための各種プログラムを記憶しており、制御部21の演算装置は、記憶部22に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、バス23を介してサーバ装置2の各部を制御する。24は、各種通信装置等を備える通信部であり、制御部21の制御の下、楽器端末1とのデータの授受を行う。
【0014】
図4に示す記憶部22には、多数のファイルが記憶されるファイル群記憶エリア22aが設けられている。ここで、サーバ装置2の記憶部22に記憶されるファイルの構造について、図5を参照しつつ説明する。
本実施形態においては、図5に示すように、文字タイトル情報TIと音声タイトル情報AIと演奏データDAとの3つの情報が互いに対応付けられて構成されるファイルを取り扱う。このファイルは他の一般的なファイルとは拡張子によって区別される。図5において文字タイトル情報TIは、ファイル名や、そのファイルが生成された日付等のテキスト形式のデータであり、ファイルを識別するためにファイルに付与される情報である。文字タイトル情報TIは一般的なファイルに付随しているものと同様である。次に、音声タイトル情報AIは、音声データであり、文字タイトル情報TIと同様にファイルを識別するためにファイルに付与される情報である。この音声タイトル情報AIは、一般的ファイルにはない付加的な情報である。演奏データDAは、楽器端末1によって生成される演奏データである。
【0015】
<B:動作>
次に、本実施形態の動作について説明する。
<B−1:ファイル生成>
まず、楽器端末1のユーザが楽器端末1を演奏して楽曲を収録し、収録した演奏データを含むファイルを、サーバ装置2に送信する動作について、図6を参照しつつ説明する。図6は、楽器端末1の制御部11が行うファイル生成処理を示すフローチャートである。まず、楽器端末1のユーザは、操作部16の「収録」ボタンを押下して、楽曲の収録を開始させ、演奏部10を操作して楽器端末1の演奏を行う。楽器端末1の制御部11は、収録を開始する旨の操作が行われたことを検知すると(ステップSA1;YES)、演奏部10から供給される信号からMIDI形式の演奏データを生成し、生成した演奏データを記憶部12に記憶させる(ステップSA2)。また、同時に、制御部11は、生成した演奏データをオーディオ制御部18に供給し、オーディオ制御部18は、供給されるデータに基づいてスピーカ19を駆動する。これにより、楽器端末1のユーザによって演奏される演奏音が、スピーカ19から出力される(ステップSA3)。
【0016】
楽曲の演奏を終えると、楽器端末1のユーザは、「停止」ボタンを押下して、楽曲の収録を終了する。「停止」ボタンが押下されたことを検知すると(ステップSA4;YES)、制御部11は、日付や時刻等のテキスト形式のデータを文字タイトル情報TIとして生成する(ステップSA5)。
【0017】
次に、制御部11は、表示部15を制御して、音声タイトル情報AIの入力を促すメッセージを表示部15に表示させる(ステップSA6)。楽器端末1のユーザは、表示部15に表示されたメッセージの内容を確認し、操作部16を用いて音声タイトル情報AIを入力する旨の操作を行い、ファイルの内容を示す音声を発音する。楽器端末1の制御部11は、音声タイトル情報AIを入力する旨の操作が行われたことを検知すると(ステップSA7;YES)、音声をマイクロフォン17によって収音して音声データを生成し、その音声データをそのファイルの音声タイトル情報AIとする(ステップSA8)。この処理によって、文字タイトル情報TIと音声タイトル情報AIとが演奏データに付与されたファイルが生成されることになる。
【0018】
楽器端末1の制御部11は、生成したファイルの文字タイトル情報TIと音声タイトル情報AIとを対応付けて記憶部12に記憶させる(ステップSA9)。このように、楽器端末1が演奏データを生成する毎に、その演奏データの文字タイトル情報とTIと音声タイトル情報AIとが対応付けて記憶されるから、楽器端末1の記憶部12には、楽器端末1が生成した複数の演奏データについて、その演奏データと対応する文字タイトル情報TIと音声タイトル情報AIとが対応付けて記憶されることになる。
【0019】
このとき、楽器端末1のユーザは、操作部16の「送信」ボタンを押下して、演奏データをサーバに送信する旨の指示を楽器端末1に入力することができる。送信指示が入力されたことを検知すると(ステップSA10;YES)、制御部11は、生成したファイルを、通信ネットワークを介してサーバ装置2に送信する(ステップSA11)。
【0020】
サーバ装置2の制御部21は、通信部24を介してファイルを受信すると、ファイル群記憶エリア22aに受信したファイルを記憶させる。すなわち、文字タイトル情報TIと音声タイトル情報AIと演奏データDAとを対応付けて記憶部22に記憶させる。
【0021】
<B−2:ファイル一覧表示>
次に、ファイルの一覧表示動作について説明する。
楽器端末1のユーザは、操作部16を操作して、ファイルの一覧を表示させる旨の操作を行う。楽器端末1の制御部11は、ファイルの一覧を表示する旨の操作が行われたことを検知すると、例えば図7に示すような、記憶部12に記憶された文字タイトル情報TIに基づく文字タイトルを一覧表示する。図7に示すように、複数のファイルについて、その文字タイトル情報の示す文字タイトルが表示部15に表示される。
【0022】
楽器端末1のユーザは、表示部15に表示される画面を確認しながら、操作部16の上下キーを操作してファイルの文字タイトルを選択する。楽器端末1の制御部11は、文字タイトルが選択されたことを検知すると、選択された文字タイトルと対応して記憶部12に記憶された音声タイトル情報を記憶部12から読み出して、読み出した音声タイトル情報の示す音声を、オーディオ制御部18、スピーカ19を介して発音させる。楽器端末1のユーザは、発音される音声タイトル情報を聴くことによって、このファイルの音声タイトルを認識することができる。
【0023】
一般に、文字タイトル情報TIは日付や時刻等を示すテキストデータであるため、意味が希薄であり、そのテキストタイトルからファイルの内容を把握することは困難であることが多い。そのため、楽器端末1のユーザは、そのファイルの文字タイトル情報を見ても、それがどのようなファイルであるかが分からなかったり、思い出せなかったりする場合が多々ある。
【0024】
これに対し本実施形態においては、文字タイトル情報TIに加えて、音声タイトル情報AIをファイルに付与するようにし、楽器端末1の制御部11は、ファイルのファイル名(文字タイトル情報TI)の表示に併せて、音声タイトル情報TIを発音する。ファイルの内容を示す音声を聞くことによって、楽器端末1のユーザは、そのファイルがどのようなものであるかを容易に把握することが可能となる。具体的には、例えば、保存時における音声の抑揚や声の質などから、そのファイルを記録したときの状況や感情(嬉しい、悲しい、元気、弱気・・・)などを具体的に思い出すことが容易になる。一例として、仮に風邪声で記録した場合は、風邪をひいていたその当時の状況などが思い出され、同時にそのときに作業していたファイルがどのようなものだったという記憶が手繰られてくる。つまり、そのときのユーザの声の調子等によって音声タイトル情報はユニークなものとなり、ユーザにとっては後に容易に思い出し易いものとなる。これにより、楽器端末1のユーザは、多数のファイルの音声タイトルを順次聞きながら所得したいファイルを探すことができる。
【0025】
また、一般的に、電子楽器は、キーボードやマウスなどの入力手段を有していないため、ファイル名としてユーザがテキストデータを入力することが困難であったり、煩雑である場合が多い。これに対し本実施形態においては、音声によってタイトルを入力するので、テキストデータを入力する必要がなく、ユーザは容易にタイトルを入力することが可能となる。
【0026】
<B−3:ファイル取得>
次に、ファイルの取得動作について説明する。楽器端末1のユーザは、取得したいファイルの文字タイトルを選択した状態で、操作部16の「受信」ボタンを押下する。楽器端末1の制御部11は、「受信」ボタンが押下されたことを検知すると、選択されたファイルの文字タイトル情報TIと音声タイトル情報AIとを記憶部12から読み出し、読み出した文字タイトル情報TIと音声タイトル情報AIとを通信部14を介してサーバ装置2に送信する。
【0027】
サーバ装置2の制御部21は、通信部24を介して、文字タイトル情報TIと音声タイトル情報AIとを受信すると、それらと一致する文字タイトル情報TIおよび音声タイトル情報AIを有するファイルを、記憶部22に記憶されているファイル群記憶エリア22aから検索する。一致するものが検索された場合は、そのファイルに対するアクセスを許可する。すなわち、検索されたファイルを、通信部24を介して楽器端末1に送信する。
逆に、一致するものが検索されなかった場合は、ファイルに対するアクセスを拒否する。すなわち、文字タイトル情報TIが一致しても、音声タイトル情報AIが一致しない場合は、そのファイルへのアクセスが拒否されることになる。このように、本実施形態においては、文字タイトル情報TIに加えて音声タイトル情報AIが認証のための情報として用いられる。
【0028】
楽器端末1の制御部11は、サーバ装置2からファイルを受信すると、受信したファイルの演奏データを、記憶部12に記憶させる。
【0029】
ファイルへのアクセスを行うためのキーがファイル名(文字タイトル情報TI)のみである場合は、文字データでは文字数が限られていることもあり、偶然に一致することもあり得る。また、推定して作成した文字データによってアクセスが可能になってしまうおそれもある。一方、音声データが偶然に一致する確率は皆無であり、推定等によって似せた音声データを作ることも難しい。本実施形態においては、音声タイトル情報AIが一致することを条件にして演奏データへのアクセスを許可しているので、そのセキュリティは極めて高い。音声タイトル情報AIの一致確認における分析方法は種々あり、波形の全部一致、フォルマント一致、周波数成分の一致など種々のアルゴリズムが考えられる。いずれの方法を用いても、分析を細かくすれば確認の精度は著しく高くなるので、記憶部22に記憶されているファイルが悪意の第3者によって容易にアクセスされてしまうという事態を防ぐことが可能となる。
【0030】
また、楽器端末は記憶領域が限られており、大量のデータを記憶することができない場合が多いが、本実施形態においては、演奏データをサーバ装置2で蓄積および管理するので、大量のデータを保存しておくことができ、かつ、楽器端末1には文字タイトル情報TIと音声タイトル情報AIだけを保存しておけばよいので、楽器端末1の記憶領域を多く使うことはない。また、ユーザは、文字タイトル情報(または音声タイトル情報)を選択するという簡単な操作を行うだけで、ファイルをサーバ装置2からダウンロードすることができる。
【0031】
本実施形態においては、例えば、あるユーザに、ある演奏データに対するアクセスを許可したい場合は、その演奏データの音声タイトル情報AIを与えるようにすればよい。このようにすれば、そのユーザは、与えられた音声タイトル情報AIをキーとして照合可能となるから、その演奏データにアクセスすることが可能となる。このようにして、アクセスの自由度を増すこともできる。このようなアクセス処理を行えば、例えば、セッションに参加する複数の楽器端末の間で、各々の演奏データを交換することができ、しかも、演奏データが第三者に漏洩してしまうという心配がない。
【0032】
<C:変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその一例を示す。
(1)上述した実施形態においては、楽器端末として、電子キーボード等の電子楽器を用いたが、楽器端末はこれに限定されるものではなく、電子ドラムや電子ギター等であってもよい。
【0033】
(2)上述した実施形態においては、楽器端末が生成する演奏データを、MIDI形式のデータとして、ファイルとして記憶する内容もMIDIデータとしたが、ファイルの内容となる演奏データの形式はこれに限定されるものではなく、例えば演奏音の波形を示す波形データであってもよい。具体的には、上述した実施形態に即していえば、オーディオ制御部18でMIDIデータに基づいて生成される波形データを用いるようにしてもよい。また、演奏操作子が発生する演奏データもMIDI形式に限らず、他の形式であってもよく、さらに、演奏音に対応した波形データを直接出力するタイプの楽器端末を用い、この波形データを記憶あるいはサーバへ転送するようにしてもよい。
【0034】
(3)上述した第1および第2の実施形態においては、図5に示すデータ構造を有するファイルをサーバ装置2の記憶部に記憶させるようにした。ファイルの保存形式はこれに限定されるものではなく、例えば、図8に示すように、文字タイトル情報と、音声タイトル情報と、演奏データとの各項目を互いに関連付けてテーブルに記憶させておくようにしてもよい。図8において、「音声タイトル情報識別子」は、例えば音声タイトル情報が記憶された領域の先頭アドレスであってもよく、または、音声タイトル情報のファイル名であってもよい。または、音声タイトル情報本体をこのテーブルに記憶させておくようにしてもよい。このように実質的に演奏データDAと音声タイトル情報AIとが関連していればよい。
【0035】
(4)上述した第1および第2の実施形態においては、文字タイトル情報TIとして、その演奏データDAが生成された日付や時刻等のテキスト形式のデータを制御部11が生成するようにしたが、文字タイトル情報はこれに限定されるものではなく、例えば、ユーザを識別するためのユーザID等の所定の識別情報を文字タイトル情報に含めるようにしてもよい。または、例えば、操作部にテキストデータを入力するためのテンキー等を設けて、表示部15にファイル名の入力を促す旨のメッセージを表示させ、ユーザによって入力されたテキストデータを文字タイトル情報TIとして用いるようにしてもよい。または、日付や時刻とユーザ入力によるテキストデータとを併用して用いるようにしてもよく、文字タイトル情報TIの生成方法は設計等に応じて変更可能である。
【0036】
(5)上述した実施形態においては、楽器端末のマイクロフォンから入力される音声を音声タイトル情報とするようにした。この音声タイトル情報は、サンプリングされた音声データを所定のアルゴリズムで圧縮するようにしてもよい。また、音声タイトルについてどのくらいの密度のデータにするかは、設計等に応じて変更可能である。
また、音声タイトル情報の照合や解析を行う際に、複数のアルゴリズムからいずれか一つを選択できるようにしてもよい。
または、音声を所定のアルゴリズムで変形する特殊マイクを楽器端末に設けるようにし、このマイクに入力される音声を所定のアルゴリズムで変形して生成した音声データを音声タイトル情報として用いるようにしてもよい。
【0037】
(6)上述した実施形態においては、楽器端末1の制御部11は、文字タイトル情報と音声タイトル情報とを記憶部12に記憶させておき、ファイルを取得する場合には、記憶部12に記憶された文字タイトル情報と音声タイトル情報とを記憶部12から読み出して、サーバ装置2に送信するようにした。これに代えて、楽器端末1のマイクロフォン17からユーザが音声を入力し、入力された音声の声紋等を照合することによって、ファイルへのアクセスを許可するようにしてもよい。
なお、この場合、楽器端末1に呼気センサを備えたマイクロフォンを設けるようにしてもよい。音声照合するときに、自分の音声データが他人に傍受されると、他人でもデータを取得できるという問題があるが、呼気センサーマイクで音声タイトルを入力すると、音声を収録した機器から発音されたのか、人がライブでしゃべったのかを認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係るシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態に係る楽器端末の外観を示す図である。
【図3】同実施形態に係る楽器端末の構成を示すブロック図である。
【図4】同実施形態に係るサーバ装置の構成を示すブロック図である。
【図5】同実施形態に係るファイルのデータ構造を示す図である。
【図6】同実施形態の楽器端末の処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】同実施形態の楽器端末が表示するファイル一覧画面の一例を示す図である。
【図8】本発明の変形例に係るテーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0039】
1…楽器端末、2…サーバ装置、10…演奏部、11,21…制御部、12,22…記憶部、13,23…バス、14,24…通信部、15…表示部、16…操作部、17…マイクロフォン、18…オーディオ制御部、19…スピーカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏を行うための操作子と、
前記操作子が操作された内容に応じた信号を出力する検知手段と、
前記検知手段によって出力された信号に基づいて演奏データを生成する演奏データ生成手段と、
前記演奏データのタイトルを示すタイトルデータを生成するタイトルデータ生成手段と、
入力される音声に対応する音声データを生成する音声入力手段と、
前記演奏データを前記音声データおよび前記タイトルデータに対応付けて、所定のサーバ装置に通信ネットワークを介して送信する送信手段と
を備えることを特徴とする楽器端末。
【請求項2】
前記タイトルデータと前記音声データとを対応付けて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された1または複数のタイトルデータを表示する表示手段と、
前記表示手段に表示されたタイトルデータのうちのいずれか一つを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択されたタイトルデータと対応する音声データを前記記憶手段から読み出し、読み出した音声データに基づいて音声を発音する発音手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の楽器端末。
【請求項3】
前記演奏データを前記サーバ装置に送信する旨のコマンド信号を受け取ると、前記音声入力手段への音声入力を促す報知動作を行う報知手段を有し、
前記送信手段は前記報知手段による報知動作が行われ、前記音声入力手段によって音声データが生成されたことを認識した後に、前記演奏データを前記音声データに対応付けて送信することを特徴とする請求項1記載の楽器端末。
【請求項4】
前記記憶手段に記憶された音声データを読み出して、前記所定のサーバ装置に通信ネットワークを介して送信する音声データ送信手段と、
前記所定のサーバ装置から、前記演奏データを受信する演奏データ受信手段と、
前記演奏データ受信手段により受信された演奏データを記憶する演奏データ記憶手段と
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の楽器端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−156153(P2007−156153A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352008(P2005−352008)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】