説明

楽器装着型演奏支援装置及びその制御方法

【課題】本発明は演奏者の意思に基づいて楽器の演奏を支援することを課題とする。
【解決手段】楽器装着型演奏支援装置10は、通常の楽器20の演奏を支援するように構成されており、呼気センサ30と、制御装置40と、運指モジュール50とから構成されている。制御装置40のコントロールユニット70は、記憶部150と、バッテリ210と、入力装置220と、マイクロコンピュータ230とを有する。マイクロコンピュータ230は、判別手段160と、音選択手段170と、制御手段180と、指示手段190と、演奏曲抽出手段200とを有する。制御手段180は、判別手段160により判別された呼気圧の変化のタイミングで音選択手段170により選択された音の種別に対応する運指モジュール50の電磁ソレノイド80への駆動信号を出力する制御プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は楽器装着型演奏支援装置及びその制御方法に係り、特に演奏者が楽器を演奏する際の操作を演奏曲に応じて支援する楽器装着型演奏支援装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、楽器を初めて演奏する演奏者の場合、当該楽器の操作に慣れていないので、練習曲をどのように演奏すれば良いのか、分からないまま練習を開始することになる。また、初心者の中には、楽器の操作方法が分からないだけなく、楽譜を正確に読み取ることができない場合もある。このように演奏者の操作を支援する演奏支援装置としては、楽器の演奏音を解析し、当該演奏音に含まれるコードの情報を算出し、予め記憶されたコード情報と算出されたコード情報との近似度合いに基づいて演奏音を評価する装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、演奏者の唇の振動に応じて内部の空気に振動を付与される中空の吹奏体の圧力を検出し、当該検出信号により吹奏体の内部に空気を供給して、呼気圧の弱い演奏者による演奏を支援する装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−47816号公報
【特許文献2】特開2008−197227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された演奏支援装置では、演奏音を解析して評価することで、本来の曲を正確に演奏しているかを演奏者に知らせるものであり、楽器から発せられた音の精度をより高めることを目的としているので、楽器の操作が分からない初心者の支援を効果的に行えないという問題があった。
【0006】
上記特許文献2に記載された演奏支援装置では、楽器の操作部に空気圧を供給して当該楽器の音量を高めるものであり、演奏者が通常の楽器を演奏するのとは異なり、楽器自体を改造することになり、機械が演奏しているような感覚となり、演奏者の満足感が得られないという問題があった。
【0007】
また、従来は、演奏者が初心者の場合、あるいは演奏者が手または指の操作が不自由な場合でも、演奏者の意思に合わせて演奏を支援することが難しかった。
【0008】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した楽器装着型演奏支援装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、楽器を演奏する演奏者の呼気圧を検出する呼気検出手段と、
前記楽器により演奏しようとする曲の楽譜データが記憶された記憶手段と、
前記呼気検出手段によって検出された呼気圧の変化を判別する判別手段と、
前記楽器の各操作部に個別に連結された複数の駆動手段と、
前記判別手段により判別された呼気圧の変化のタイミングで前記記憶手段に記憶された楽譜データから次に演奏される音の種別を選択する音選択手段と、
前記判別手段により判別された呼気圧の変化のタイミングで前記音選択手段により選択された音の種別に対応する前記駆動手段に駆動信号を出力する制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
(2)本発明の前記呼気検出手段は、前記演奏者が発生させる呼気圧の変化に応じた検出信号を出力する圧力センサであり、
前記判別手段は、前記圧力センサからの検出信号の立ち上がり及び立ち下がりを判別し、音の切り替わりのタイミングであることを示す信号を生成することを特徴とする。
(3)本発明の前記記憶手段は、複数の曲の楽譜データを記憶しており、
前記複数の曲の中から任意の曲の楽譜データを演奏曲として指示する指示手段と、
前記指示手段により演奏曲を指示された場合、前記記憶手段に記憶された複数の曲の中から指示された一の曲の楽譜データを当該演奏曲として抽出する演奏曲抽出手段と、
を備えたことを特徴とする。
(4)本発明の前記駆動手段は、前記楽器を構成する所定箇所に係止される係止部を有することを特徴とする。
(5)本発明の前記駆動手段は、
前記制御手段からの駆動信号により励磁または消磁される電磁ソレノイドと、
一端が前記操作部に連結され、他端が前記電磁ソレノイドのプランジャに連結された伝達部材と、
を有することを特徴とする。
(6)本発明の前記判別手段と、前記音選択手段と、前記制御手段とは、コントロールユニットに収納されたマイクロコンピュータが実行する制御プログラムからなり、
前記コントロールユニットには、前記マイクロコンピュータ及び駆動手段に電源供給を行なうバッテリが搭載されていることを特徴とする。
(7)本発明は、楽器により演奏しようとする曲の楽譜データが記憶された記憶手段と、
前記楽器の各操作部に個別に連結された複数の駆動手段と、を有する楽器装着型演奏支援装置の制御方法であって、
前記楽器を演奏する演奏者による呼気圧を検出する手順1と、
前記演奏者の呼気圧の変化を判別する手順2と、
前記手順2により判別された呼気圧の変化のタイミングで前記記憶手段に記憶された楽譜データから次に演奏される音の種別を選択する手順3と、
前記手順2により判別された呼気圧の変化のタイミングで前記手順3により選択された音の種別に対応する前記駆動手段への駆動信号を出力する手順4と、
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、呼気圧の変化のタイミングで記憶手段に記憶された楽譜データから次に演奏される音の種別を選択し、当該選択された音の種別に対応する駆動手段への駆動信号を出力するため、演奏者の呼気圧の変化によって当該楽器を演奏を支援することが可能になり、演奏に慣れていない初心者あるいは手や指が不自由な場合でも演奏者の呼気圧が検出されることで演奏者を主体とした通常の楽器による演奏が可能になり、且つ通常の楽器を演奏することで演奏者の満足感をより高められる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による楽器装着型演奏支援装置の一実施例を示す概略構成図である。
【図2A】運指モジュールの構成を模式的に示す図である。
【図2B】運指モジュールの取付部を模式的に示す図である。
【図3】マウスピースに設けられた呼気センサを示す図である。
【図4】コントロールユニットの構成を示す図である。
【図5】呼気センサの呼気検出信号の波形図である。
【図6】演奏音の振幅を示す波形図である。
【図7】呼気圧検出処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】演奏支援制御処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明による楽器装着型演奏支援装置の一実施例を示す概略構成図である。図1に示されるように、楽器装着型演奏支援装置10は、通常の楽器20の演奏を支援するように構成されており、呼気センサ(呼気検出手段)30と、制御装置40と、運指モジュール(駆動手段)50とから構成されている。尚、本実施例においては、吹奏楽器として幅広く使用されているとしてサクスフォーンを演奏支援される楽器20として説明するが、これ以外の楽器として、例えば、クラリネット、フルートやトランペットなどにも本発明を適用することができる。
【0014】
呼気センサ30は、演奏者Xの呼気圧を検出し、呼気圧に応じた呼気検出信号を出力する圧力センサからなる。本実施例の楽器20では、演奏者Xの呼気圧によって音を発生させる吹奏楽器であるので、呼気圧の変化により音の強弱として演奏できると共に、演奏者Xの演奏タイミングや演奏のリズムを検出することも可能になる。
【0015】
また、制御装置40は、増幅器60と、コントロールユニット70とを有する。増幅器60は、呼気センサ30からの呼気検出信号を例えば、400倍〜500倍に増幅しており、呼気検出信号の出力レベルに応じた増幅率が設定されている。コントロールユニット70は、後述するように各種制御プログラムを実行する手段と、記憶部、バッテリを有する。
【0016】
また、制御装置40及び運指モジュール50は、小型化及び軽量化されており、当該楽器20の演奏の邪魔にならない位置に取り付けられている。従って、演奏者Xは、制御装置40及び運指モジュール50の存在によって演奏方法を変える必要がなく、通常の楽器と同じように演奏することができる。
【0017】
図2Aは運指モジュールの構成を模式的に示す図である。図2Aに示されるように、運指モジュール50は、電磁ソレノイド80と、伝達部材90とから構成されている。電磁ソレノイド80は、円筒状のコイル82と、コイル82内に挿通されたプランジャ84とからなり、プランジャ84の先端には、伝達部材90の一端が連結されている。また、伝達部材90は、例えば、ピアノ線などの金属ワイヤなどからなり、他端が操作部100に連結されている。伝達部材90は、例えば、金属棒などでも良いが、演奏の邪魔にならないようにできるだけ細い材料を用いる方が望ましい。
【0018】
操作部100は、市販されている通常のサクスフォーンの各キー毎に音孔に対応して設けられている。演奏者Xが操作部100を指先で押圧操作することにより音孔22を閉じて当該キーの演奏音が朝顔管の開口から発せられる。
【0019】
本実施例では、楽器20に左手操作用の3箇所と、右手操作用の4箇所に運指モジュール50が取り付けられている。
【0020】
電磁ソレノイド80は、コントロールユニット70からの駆動信号によりコイル82に電流供給されて励磁された場合は、操作部100をA方向に駆動する電磁力を発生させる。また、コイル82への電流供給がオフになった場合には、電磁力がなくなると共に、楽器20にもとから備えられている復帰ばねにより操作部100がB方向に復帰する。
【0021】
また、電子ソレノイド80と操作部100との間は、電磁ソレノイド80に対して駆動方向(A、B方向)に変位可能な伝達部材90によって連結されているので、演奏者X自身が楽譜をみながら当該操作部100を押圧操作した場合は、運指モジュール50が運指操作を阻害することがなく、また演奏者の運指操作による操作部100の動作が運指モジュール50の駆動を阻害することもない。
【0022】
図2Bは運指モジュールの取付部を模式的に示す図である。図2Bに示されるように、運指モジュール50は、例えば、楽器20の右側に配されたセンタ棒120等に固定されている。電磁ソレノイド80は、絶縁性を有する樹脂ケース110に収納されている。そして、電磁ソレノイド80を収納する樹脂ケース110は、センタ棒120に係止される一対の係止部102、104を有する。一対の係止部102、104は、弾性を有する樹脂材により成形されているので、比較的容易に装着脱することができる。
【0023】
従って、運指モジュール50の設置箇所を変更したい場合には、係止部102、104を外側に広げるだけで簡単に外すことができ、別の場所に係止させることもできる。また、樹脂ケース110は、係止部102、104によってセンタ棒120以外の凹凸を有する部分に係止させることも可能である。
【0024】
図3はマウスピースに設けられた呼気センサを示す図である。図3に示されるように、楽器20のマウスピース130には、演奏者Xが口から吹き出す呼気が通過する通路が設けられている。
【0025】
また、マウスピース130の外側には、呼気を導出するチューブ132の一端が連通されており、チューブ132の他端は、呼気センサ30に連通されている。従って、演奏者Xがマウスピース130を口にくわえた状態で、呼気を吹き出すことにより、呼気センサ30から呼気検出信号が出力されると共に、当該楽器20から音が発生する。
【0026】
また、呼気センサ30は、楽器20に対して締結ベルト140により固定されており、演奏中にガタツクことがないように保持されている。
【0027】
図4はコントロールユニットの構成を示す図である。図4に示されるように、コントロールユニット70は、記憶部150と、バッテリ210と、入力装置220と、マイクロコンピュータ230とを有する。マイクロコンピュータ230は、判別手段160と、音選択手段170と、制御手段180と、指示手段190と、演奏曲抽出手段200とを有する。
【0028】
記憶部150は、当該楽器20により演奏しようとする複数の曲の楽譜データが記憶されている。尚、記憶部150に記憶された各曲は、予め設定されたコード番号によって管理されており、入力装置220によってコード番号が入力されると、当該コード番号に対応する記憶エリアに記憶された楽譜データを読み出すことが可能になる。
【0029】
判別手段160は、呼気センサ30によって検出された呼気圧の変化を判別する制御プログラムからなる。本実施例では、後述する閾値P1を設定することにより、呼気センサ30によって検出された呼気圧が閾値P1以上になったときに呼気圧の立ち上がり信号を出力し、呼気センサ30によって検出された呼気圧が閾値P1未満になったときに呼気圧の立ち下がり信号を出力する。
【0030】
音選択手段170は、判別手段160により判別された呼気圧の変化のタイミング(呼気圧の立ち下がり信号が出力されたとき)で記憶部150に記憶された楽譜データから次に演奏される音の種別を選択する制御プログラムからなる。
【0031】
制御手段180は、判別手段160により判別された呼気圧の変化のタイミングで音選択手段170により選択された音の種別に対応する運指モジュール50の電磁ソレノイド80への駆動信号を出力する制御プログラムからなる。
【0032】
指示手段190は、例えば、スイッチやリモートコントローラなどからなる入力装置220によって演奏しようとする曲を指定するためのコードが入力された場合、当該コードに対応する任意の曲を複数の曲の中から演奏曲として指示する信号を出力する。
【0033】
演奏曲抽出手段200は、演奏者Xが入力装置220により演奏しようとする曲(コード番号)を指示した場合、記憶部150に記憶された複数の曲の中から指示された一の曲に対応する楽譜データを当該演奏曲の楽譜データとして抽出する制御プログラムからなる。
【0034】
図5は呼気センサの呼気検出信号の波形図である。図5に示されるように、呼気センサ30により出力された呼気信号は、ほぼ矩形波に近い波形Iとなる。これは、演奏者Xがマウスピース130に呼気を吹き出す際、意識的に強く吹くため、呼気圧のオン、オフが明確に区別することができるといった特性を有する。
【0035】
例えば、図5に示す波形Iにおいて、呼気圧が殆どゼロに近いときは、演奏者Xがマウスピース130に呼気を吹き出していないことから、呼気圧がゼロ(大気圧)に近い圧力を閾値P1に設定する。そして、呼気センサ30の検出信号の出力レベルが閾値P1以上であれば呼気圧がオンであると判別することができ、呼気センサ30の検出信号の出力レベルが閾値P1未満であれば呼気圧がオフであると判別することができる。
【0036】
このように、呼気センサ30の検出信号の出力レベルの変化に基づいて呼気圧低下のタイミングT1〜T4(図5中、丸印で示す)を正確に検出することが可能になる。このタイミングT1〜T4は、演奏者自身による演奏音の切替えタイミングであり、リズム(音の開始点から次の音の開始点までの長さを、)のトリガとして用いることができる。
【0037】
図6は演奏音の振幅を示す波形図である。図6に示されるように、楽器20の演奏音の波形IIは、図5の波形Iとほぼ同じタイミングで立ち上がり、ほぼ同じタイミングで立ち下がることがわかる。このことから、当該楽器20では、演奏者Xの呼気圧の変化と同じタイミングT1〜T4で演奏音がオンまたはオフになる。従って、呼気センサ30により出力された呼気信号の立ち上がり、立ち下がりを判別し、この判別タイミングT1〜T4で運指モジュール50の電磁ソレノイド80をオンまたはオフに切替えることにより、当該楽器20からの演奏音を演奏者自身のリズムで支援することが可能になる。
【0038】
本実施例の制御装置40は、図7に示す呼気圧検出処理と、図8に示す演奏支援制御処理とを並列処理しており、演奏者Xからの呼気圧をトリガとして運指モジュール50による演奏支援動作の制御を行なう。
【0039】
図7は呼気圧検出処理を説明するためのフローチャートである。図7に示されるように、制御装置40は、S11で呼気センサ30からの呼気検出信号を読み込む。次のS12では、呼気検出信号が閾値P1(図5参照)以上か否かをチェックする(判別手段160)。S12において、呼気検出信号が閾値P1以上になったときは(YESの場合)、S13に進み、呼気圧の立ち上がりを検出し、当該立ち上がり検出信号を出力する。また、S12において、呼気検出信号が閾値P1以上でないときは(NOの場合)、呼気圧なしであり、上記S11の処理に戻る。
【0040】
続いて、S14では、呼気センサ30からの呼気検出信号を読み込み、そして、次のS15において、呼気検出信号が閾値P1(図5参照)未満か否かをチェックする(判別手段160)。S15において、呼気検出信号が閾値P1以上であるときは(NOの場合)、呼気圧有り(演奏音有り)であり、上記S14の処理に戻る。また、S15において、呼気検出信号が閾値P1未満であるときは(YESの場合)、S16に進み、呼気圧の立ち下がりを検出し、当該立ち下がり検出信号(タンギング検出)を出力する。
【0041】
従って、呼気センサ30からの呼気検出信号の立ち下がりを検出することで、演奏者Xが呼気圧の変化によるタンギング(音を切る)操作を行なったものと判別することが可能になる。
【0042】
図8は演奏支援制御処理を説明するためのフローチャートである。図8において、制御装置40は、S21で演奏を行なう曲の指示入力が有るか否かをチェックする(指示手段190)。S21において、入力装置220から任意の曲のコード番号が指示されると(YESの場合)、S22に進み、指示された曲のコード番号に対応する楽譜データを記憶部150から抽出する(演奏曲抽出手段200)。
【0043】
次のS23では、記憶部150から抽出された楽譜データを演奏曲として設定する。続いて、S24に進み、立ち上がり検出信号が入力(S13の処理参照)されたか否かをチェックする。S24において、立ち上がり検出信号が入力された場合(YESの場合)は、S25に進み、当該演奏曲として設定された楽譜データの最初の音に対応する運指モジュール50の電磁ソレノイド80に駆動信号を出力する。これにより、当該電磁ソレノイド80は、励磁されて駆動力を伝達部材90及び操作部100(図2Aを参照)に伝達する。そのため、当該操作部100がA方向に駆動され、当該楽器20の音孔22を閉じて楽譜データの音が発生される。尚、音によって一の操作部100を操作する場合と、2つまたは3つの操作部100を同時に操作する場合があり、各音に応じて複数の運指モジュール50を同時に駆動する場合もある。
【0044】
従って、楽器20では、演奏者Xの呼気圧の立ち上がりのタイミングで当該操作部100がA方向に駆動されると共に、マウスピース130から吹き込まれた呼気圧による振動音が演奏音として発生される。このとき、演奏者Xは、当該操作部100に指先を接触させることで、当該操作部100が駆動されて楽譜データの音が発生されることを認識することができる。そのため、演奏者Xが当該楽器20の操作が分からない場合、あるいは楽譜が分からない場合でも、各操作部100の動きと発生される音との関連を体験することができるので、複数の操作部100のどれを操作すれば良いかが分かり、効果的に運指練習することができる。
【0045】
S26では、立ち下がり検出信号(タンギング検出)が入力(S16の処理参照)されたか否かをチェックする。S26において、立ち下がり検出信号が入力された場合(YESの場合)は、演奏者Xの呼気圧が低下して音を切る(タンギング)S27に進み、演奏曲として設定された楽譜データから次の音を選択する(音選択手段170)。尚、呼気圧が低下すると、楽器20の演奏音も低下するが、次の音が出るまでの間は、電磁ソレノイド80の駆動力を徐々に低下させることで、演奏した音と次の音との間での音の変化を滑らかにするようにスルーとしても良い。
【0046】
続いて、S28では、立ち上がり検出信号が入力されたか否かをチェックする。S28において、立ち上がり検出信号が入力されると(YESの場合)、演奏者Xが当該楽器20のマウスピース130に呼気圧を吹き込んだため、次の音の発生タイミングであると判別し、S29に進み、選択された次の音に対応する駆動信号を運指モジュール50の電磁ソレノイド80に出力する。これにより、当該選択された電磁ソレノイド80は、励磁されて駆動力を伝達部材90及び操作部100(図2Aを参照)に伝達する。そのため、当該操作部100がA方向に駆動され、当該楽器20の音孔22を閉じて楽譜データの次の音が発生される。
【0047】
次のS30では、楽譜データの最後の音を演奏終了したか否かをチェックする。S30において、楽譜データの最後の音を演奏終了していないときは(NOの場合)、S26に戻り、上記S26〜S30の処理を繰り返す。
【0048】
また、上記S30において、楽譜データの最後の音を演奏終了したときは(YESの場合)、S31に進み、同じ曲を再度演奏するか否かをチェックする。S31において、演奏者Xが入力装置220を操作して同じ曲を再度演奏曲として指定した場合には(YESの場合)、演奏曲の設定処理を行なわずに上記S24に戻り、S24〜S31の処理を繰り返す。また、S31において、再演奏の入力がない場合(NOの場合)は、S32に進み、演奏終了か否かをチェックする。S32において、演奏者Xが入力装置220を操作して演奏終了を入力した場合(YESの場合)は、今回の制御処理を終了する。また、S32において、演奏終了が入力されない場合(NOの場合)は、上記S21の処理に戻り、S21以降の処理を実行する。
【0049】
このように、演奏者Xは、当該楽器20のマウスピース130に吹き込む呼気圧を変化させることにより、どの操作部100を操作すればよいのか分からない場合でも、演奏者自身の意思で任意の演奏曲を演奏することが可能になり、演奏による満足感も得ることができる。さらに、演奏者Xが、例えば、片手が不自由な場合、あるいは手の一部の指が不自由な場合でも、楽器装着型演奏支援装置10を用いることで、健常者と同じように呼気圧を変化させて任意の曲を演奏することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上記実施例では、サクスフォーンを用いた構成を一例として挙げたが、これに限らず、他の楽器(例えば、クラリネット、フルート、トランペット等)にも適用することができるのは勿論である。
【0051】
また、本発明は、吹奏楽器以外の楽器にも応用することが可能であり、例えば、ピアノの鍵盤に上記運指モジュール50と同様な駆動手段を設けることで、演奏者Xは選択した演奏曲に応じたリズムで呼気圧を変化させることにより、ピアノを演奏することも可能になる。
【符号の説明】
【0052】
10 楽器装着型演奏支援装置
20 楽器
22 音孔
30 呼気センサ(呼気検出手段)
40 制御装置
50 運指モジュール(駆動手段)
60 増幅器
70 コントロールユニット
80 電磁ソレノイド
82 コイル
84 プランジャ
90 伝達部材
100 操作部
102、104 係止部
110 樹脂ケース
120 センタ棒
130 マウスピース
132 チューブ
140 締結ベルト
150 記憶部
160 判別手段
170 音選択手段
180 制御手段
190 指示手段
200 演奏曲抽出手段
210 バッテリ
220 入力装置
230 マイクロコンピュータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器を演奏する演奏者の呼気圧を検出する呼気検出手段と、
前記楽器により演奏しようとする曲の楽譜データが記憶された記憶手段と、
前記呼気検出手段によって検出された呼気圧の変化を判別する判別手段と、
前記楽器の各操作部に個別に連結された複数の駆動手段と、
前記判別手段により判別された呼気圧の変化のタイミングで前記記憶手段に記憶された楽譜データから次に演奏される音の種別を選択する音選択手段と、
前記判別手段により判別された呼気圧の変化のタイミングで前記音選択手段により選択された音の種別に対応する前記駆動手段に駆動信号を出力する制御手段と、
を備えたことを特徴とする楽器装着型演奏支援装置。
【請求項2】
前記呼気検出手段は、前記演奏者が発生させる呼気圧の変化に応じた検出信号を出力する圧力センサであり、
前記判別手段は、前記圧力センサからの検出信号の立ち上がり及び立ち下がりを判別し、音の切り替わりのタイミングであることを示す信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の楽器装着型演奏支援装置。
【請求項3】
前記記憶手段は、複数の曲の各楽譜データを記憶しており、
前記複数の曲の中から任意の曲の楽譜データを演奏曲として指示する指示手段と、
前記指示手段により演奏曲を指示された場合、前記記憶手段に記憶された複数の曲の中から指示された一の曲の楽譜データを当該演奏曲として抽出する演奏曲抽出手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の楽器装着型演奏支援装置。
【請求項4】
前記駆動手段は、前記楽器を構成する所定箇所に係止される係止部を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の楽器装着型演奏支援装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、
前記制御手段からの駆動信号により励磁または消磁される電磁ソレノイドと、
一端が前記操作部に連結され、他端が前記電磁ソレノイドのプランジャに連結された伝達部材と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の楽器装着型演奏支援装置。
【請求項6】
前記判別手段と、前記音選択手段と、前記制御手段とは、コントロールユニットに設けられたマイクロコンピュータが実行する制御プログラムからなり、
前記コントロールユニットには、前記マイクロコンピュータ及び前記駆動手段に電源供給を行なうバッテリが搭載されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の楽器装着型演奏支援装置。
【請求項7】
楽器により演奏しようとする曲の楽譜データが記憶された記憶手段と、
前記楽器の各操作部に個別に連結された複数の駆動手段と、を有する楽器装着型演奏支援装置の制御方法であって、
前記楽器を演奏する演奏者による呼気圧を検出する手順1と、
前記演奏者の呼気圧の変化を判別する手順2と、
前記手順2により判別された呼気圧の変化のタイミングで前記記憶手段に記憶された楽譜データから次に演奏される音の種別を選択する手順3と、
前記手順2により判別された呼気圧の変化のタイミングで前記手順3により選択された音の種別に対応する前記駆動手段への駆動信号を出力する手順4と、
を実行することを特徴とする楽器装着型演奏支援装置の制御方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−209439(P2011−209439A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75720(P2010−75720)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】