説明

楽曲検索装置

【課題】利用者の所望の楽曲を迅速に検索する。
【解決手段】記憶装置64は、楽曲の関連情報WBと楽曲内の音符の時系列を示す音符列情報WCとを含む楽曲データを楽曲毎に記憶する。受信部664は、利用者が端末装置10に対して順次に指定した各音符を示す指定音情報Qの時系列を端末装置10から受信する。楽曲検索部622は、利用者による指定済の音符の指定音情報Qの時系列に対応した音符列情報WCを含む楽曲データDAを利用者による音符の指定毎に順次に検索する。送信部662は、楽曲検索部622による検索毎に検索結果を端末装置10に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の楽曲から利用者の所望の楽曲を検索する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者が指定した音符の時系列を利用して利用者の所望の楽曲を多数の楽曲から検索する技術が従来から提案されている。例えば特許文献1には、楽曲内の各音符の位置情報と出現頻度とを示すインデックスを事前に生成および登録し、利用者が指定した複数の音符の時系列と各インデックスとの照合で、利用者の所望の楽曲を検索する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−110945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、検索結果を1個の楽曲に絞り込むのに充分な個数の音符が各インデックスとの対比の対象として指定されてから楽曲の検索が開始されるため、利用者が音符の指定を開始してから実際に検索の結果が利用者に提示されるまでに長時間が必要であるという問題がある。以上の事情を考慮して、本発明は、利用者の所望の楽曲を迅速に検索することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために本発明が採用する手段を説明する。なお、本発明の理解を容易にするために、以下の説明では、本発明の要素と後述の実施形態の要素との対応を括弧書で付記するが、本発明の範囲を実施形態の例示に限定する趣旨ではない。
【0006】
本発明の楽曲検索装置は、利用者が音符を順次に指定可能な端末装置と通信する楽曲検索装置であって、楽曲の関連情報(例えば関連情報WB)と当該楽曲を構成する音符の時系列を示す音符列情報(例えば音符列情報WC)とを含む楽曲データを楽曲毎に記憶する楽曲記憶手段(例えば記憶装置64)と、利用者が順次に指定した各音符を示す指定音情報(例えば指定音情報Q)の時系列を端末装置から受信する受信手段(例えば受信部664)と、利用者による指定済の音符の指定音情報の時系列に対応した音符列情報を含む楽曲データを利用者による音符の指定毎に順次に検索する楽曲検索手段(例えば楽曲検索部622)と、楽曲検索手段による検索毎に当該検索の結果を端末装置に送信する送信手段(例えば送信部662)とを具備する。以上の構成においては、利用者による音符の指定毎に楽曲データの検索(検索結果の絞込)が順次に実行される。したがって、検索結果を1個の楽曲に絞り込むのに充分な個数の音符が指定されてから楽曲の検索が開始される構成と比較して、利用者の所望の楽曲を迅速に検索できるという利点がある。
【0007】
本発明の好適な態様において、指定音情報は、直前に指定された音符に対する音高の相対値を示し、音符列情報は、楽曲内の直前の音符に対する音高の相対値を音符毎に示す。以上の態様における各指定音情報および音符列情報は、相前後する音符の音高の差分を示す情報であるから、利用者が記憶する楽曲の調(キー)と楽曲の本来の調(原調)とが相違する場合でも、利用者の所望の楽曲を適切に検索することが可能である。
【0008】
本発明の好適な態様において、楽曲データは、音符列情報が示す各音符について楽曲内の演奏の時点を示す時刻情報(例えば時刻情報T)を含み、楽曲検索装置は、楽曲の演奏音を示す音響データ(例えば音響データDB)を楽曲毎に記憶する音響記憶手段(例えば記憶装置64)と、楽曲検索手段による検索結果から利用者が確定した楽曲の音響データのうち利用者が最後に指定した音符の時刻情報に応じた時点以降の区間を端末装置に送信する音響送信手段(例えば送信部662)とを具備する。以上の態様においては、音響データのうち利用者による指定済の音符の系列に継続する区間が端末装置に送信されるから、利用者は、自身による音符の指定(演奏)に引続いて楽曲の再生音を聴取することが可能である。
【0009】
本発明の好適な態様において、楽曲データは、音符列情報が示す各音符について楽曲内の演奏の時点を示す時刻情報(例えば時刻情報T)を含み、楽曲の楽譜を示す楽譜データ(例えば楽譜データDC)を楽曲毎に記憶する楽譜記憶手段(例えば記憶装置64)と、楽曲検索手段による検索結果から利用者が確定した楽曲の楽譜データのうち利用者が最後に指定した音符の時刻情報に応じた時点以降の区間を端末装置に送信する楽譜送信手段(例えば送信部662)とを具備する。以上の態様においては、楽譜データのうち利用者による指定済の音符の系列に継続する区間が端末装置に送信されるから、利用者は、自身の記憶から指定した音符の系列に後続する区間を、楽譜を確認しながら演奏することが可能である。
【0010】
以上の各態様に係る楽曲検索装置は、DSP(Digital Signal Processor)等の専用の電子回路で実現されるほか、CPU(Central Processing Unit)などの汎用の演算処理装置とプログラムとの協働でも実現される。本発明のプログラム(例えばプログラムPGM2)は、楽曲の関連情報と当該楽曲を構成する音符の時系列を示す音符列情報とを含む楽曲データを楽曲毎に記憶する楽曲記憶手段を具備するコンピュータに、利用者が順次に指定した各音符を示す指定音情報の時系列を端末装置から受信する受信処理と、利用者による指定済の音符の指定音情報の時系列に対応した音符列情報を含む楽曲データを利用者による音符の指定毎に順次に検索する楽曲検索処理と、楽曲検索処理による検索毎に当該検索の結果を端末装置に送信する送信処理とを実行させる。以上のプログラムによれば、本発明の楽曲検索装置と同様の効果が実現される。なお、本発明のプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で利用者に提供されてコンピュータにインストールされるほか、通信網を介した配信の形態でサーバ装置から提供されてコンピュータにインストールされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る通信システムのブロック図である。
【図2】端末装置のブロック図である。
【図3】指定音情報を生成する処理の説明図である。
【図4】楽曲検索装置のブロック図である。
【図5】楽曲データの説明図である。
【図6】通信システムの動作の説明図である。
【図7】楽曲検索結果が利用者による音符の指定毎に絞り込まれる様子の説明図である。
【図8】第2実施形態において指定音情報を生成する処理の説明図である。
【図9】第3実施形態において指定音情報を生成する処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<A:第1実施形態>
[実施形態の構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る通信システム100のブロック図である。図1に示すように、通信システム100は、端末装置10と楽曲検索装置20と具備する。端末装置10と楽曲検索装置20とは通信網(例えばインターネット)30を介して相互に通信する。楽曲検索装置20は、端末装置10の利用者が順次に指定した音符の時系列を含む楽曲を多数の楽曲から検索して利用者に提示するサーバ装置である。利用者は、自身が記憶する楽曲の特定の部分のみから当該楽曲の曲名等を知得することが可能である。なお、図1では便宜的に1個の端末装置10のみを図示したが、実際には複数の端末装置10が通信網30を介して楽曲検索装置20と並列に通信する。
【0013】
図2は、端末装置10のブロック図である。端末装置10は、携帯電話機やパーソナルコンピュータ等の情報端末であり、図2に示すように制御装置(CPU)42と記憶装置44と入力装置46と通信装置48と表示装置52と放音装置54とを含んで構成される。記憶装置44は、制御装置42が実行するプログラムPGM1や制御装置42が使用する様々なデータを記憶する。
【0014】
入力装置46は、利用者からの指示を受付ける機器である。例えば、マウスまたはキーボード等の汎用の入力機器や特定の楽器型の入力機器(例えばMIDIキーボード)が入力装置46として好適に採用される。利用者は、所望の楽曲のうち自身が記憶する区間(例えばサビ部分)の各音符を入力装置46の操作で順次に指定する(すなわち演奏する)ことが可能である。
【0015】
通信装置48は、通信網30を介して楽曲検索装置20と通信する機器であり、送信部482と受信部484とを含んで構成される。送信部482は、楽曲検索装置20を宛先として通信網30に情報を送信し、受信部484は、楽曲検索装置20から送信された情報を通信網30から受信する。表示装置(例えば液晶表示装置)52は、制御装置42から指示された画像を表示する。放音装置(例えばヘッドホンやスピーカ)54は、制御装置42の指示に応じた音波を放射する。
【0016】
制御装置42は、記憶装置44に記憶されたプログラムPGM1の実行で複数の機能(情報生成部422,出力処理部424)を実現する。情報生成部422は、利用者が入力装置46の操作で指定した音符を示す指定音情報Qを順次に生成する。図3に示すように、指定音情報Qは、相前後する各音符間の音高の差分(相対値)を示す情報であり、利用者が音符を指定するたびに順次に生成される。例えば、図3に示すように、最初に指定された音符が「ド」で直後の音符が「レ」である場合、両音符間の音高の差分を意味する数値「+2」を指定する指定音情報Qが生成される。以上のように指定音情報Qは、音符の絶対的な音高(オクターブ)やリズム等の音楽的な要素を含まない。情報生成部422が生成した各指定音情報Qは各々の生成のたびに送信部482から楽曲検索装置20に送信されて楽曲の検索に利用される。
【0017】
図1の楽曲検索装置20は、端末装置10から順次に送信される各指定音情報Qが示す音符の時系列を含む楽曲を検索する。図4は、楽曲検索装置20のブロック図である。図4に示すように、楽曲検索装置20は、制御装置(CPU)62と記憶装置64と通信装置66とを含んで構成される。通信装置66は、通信網30を介して各端末装置10と通信する機器であり、送信部662と受信部664とを含んで構成される。送信部662は、端末装置10を宛先として通信網30に情報(例えば楽曲検索結果)を送信し、受信部664は、端末装置10から送信された情報(例えば指定音情報Q)を通信網30から受信する。
【0018】
記憶装置64は、制御装置62が実行するプログラムPGM2や制御装置62が使用する様々なデータを記憶する。具体的には、図4に示すように、楽曲データDAと音響データDBと楽譜データDCとが楽曲毎に事前に作成されて記憶装置64に格納される。
【0019】
楽曲データDAは、楽曲検索装置20による検索の対象となるデータであり、図5に示すように、識別情報WAと関連情報WBと音符列情報WCと演奏点情報WDとを含んで構成される。識別情報WAは、各楽曲に固有に付与されて各楽曲の識別に使用される符号である。関連情報WBは、楽曲に関連する情報である。例えば楽曲名や作曲者名,歌手名,楽曲の分野(ジャンル)等の属性情報が関連情報WBにて指定される。
【0020】
音符列情報WCは、楽曲内の各音符の音高を時系列に示す情報であり、楽曲内の相異なる音符(n1,n2,n3,……)に対応する複数の構成音情報Rの時系列で構成される。1個の音符の構成音情報Rは、前述の指定音情報Qと同様に、その音符と楽曲内の直前の音符との音高の差分(相対値)を指定する。演奏点情報WDは、楽曲内の各音符の演奏の時点を示す情報であり、楽曲内の相異なる音符(n1,n2,n3,……)に対応する複数の時刻情報Tの時系列で構成される。1個の音符の時刻情報Tは、楽曲内でその音符が演奏される時点(例えば楽曲の演奏の開始からの経過時間)を指定する。
【0021】
図4の各音響データDBは、楽曲の演奏音(歌唱音)を示す時系列データである。例えば楽曲の演奏音の時間波形を示すサンプル系列が音響データDBとして記憶装置64に格納される。なお、MIDIデータ等の演奏情報を音響データDBとして利用することも可能である。楽譜データ(スコアデータ)DCは、楽曲の楽譜を示す時系列データである。例えば、楽曲内の各音符の音高と継続長と歌詞とが楽譜データDCにおいて時系列に指定される。
【0022】
制御装置62は、記憶装置64に記憶されたプログラムPGM2の実行で複数の機能(楽曲検索部622,要求処理部624)を実現する。楽曲検索部622は、受信部664が端末装置10から順次に受信する指定音情報Qの時系列(すなわち利用者が指定した音符の時系列)に対応する楽曲を検索する。具体的には、楽曲検索部622は、記憶装置64に格納された複数の楽曲データDAのうち受信済の指定音情報Qの時系列に合致する構成音情報Rの配列(音符列情報WC)を含む楽曲データDAを検索する。楽曲検索部622による検索の結果は送信部662から端末装置10に送信される。要求処理部624は、音響データDBや楽譜データDCの要求を端末装置10から取得して必要な処理を実行する(詳細は後述)。
【0023】
[実施形態の動作]
図6は、通信システム100の動作の説明図である。利用者が音符を指定するたびに(S11:YES)、指定音情報Qを含む楽曲検索要求が端末装置10の送信部482から楽曲検索装置20に送信される(S12)。楽曲検索装置20の楽曲検索部622は、受信部664が端末装置10から受信した楽曲検索要求の指定音情報Qを抽出し、端末装置10から取得済の指定音情報Qの時系列(今回の指定音情報Qを含む1個以上の指定音情報Qの系列)に合致する構成音情報Rの配列を含む1個以上の楽曲データDAを検索する(S13)。送信部662は、楽曲検索結果を端末装置10に送信する(S14)。楽曲検索結果は、処理S13で検索された楽曲データDA毎に、その楽曲データDA内の識別情報WAおよび関連情報WBと、その楽曲データDA内の演奏点情報WDのうち最新の指定音情報Qに対応する音符(利用者が最後に指定した音符)の時刻情報Tとを含んで構成される。
【0024】
楽曲検索結果を受信部484が受信すると、端末装置10の出力処理部424は、楽曲検索結果に含まれる楽曲毎の関連情報WBを表示装置52に表示させる(S15)。すなわち、利用者が指定した音符の時系列を含む楽曲の関連情報WB(楽曲名等)が表示装置52に表示(例えばリスト表示)される。
【0025】
以上に説明したように、指定音情報Qを含む楽曲検索要求の送信(S12)と、複数の指定音情報Qの時系列を検索キーとした楽曲データDAの検索(S13)と、端末装置10に対する楽曲検索結果の送信(S14)と、利用者に対する楽曲検索結果の提示(S15)とを含む一連の処理が、利用者による音符の指定毎に順次に反復される。したがって、利用者が新たな音符を指定するたびに楽曲検索部622による検索の結果(楽曲データDA)が段階的に限定(絞込)される(インクリメンタル検索)。
【0026】
例えば、図7に示すように「ド-レ-ミ-ファ」という4個の音符が指定された段階でNA個の楽曲(#1,#2,#3,#5,……)が検索されている状況を想定する。図7の部分(B)のように利用者が新たに「ミ」を指定すると、検索済のNA個の楽曲のうち新たに指定された「ミ」を追加した「ド-レ-ミ-ファ-ミ」を含むNB個(NB<NA)の楽曲(#1,#2,#5,……)が検索されて利用者に提示される。更に利用者が「レ」を指定すると、現段階で検索済のNB個の楽曲のうち「ド-レ-ミ-ファ-ミ-レ」を含むNC個(NC<NB)の楽曲(#2,#5,……)が検索されて利用者に提示される。
【0027】
利用者は、楽曲検索結果として表示装置52に表示された複数の楽曲のうち所望の楽曲(以下「選択曲」という)を、入力装置46に対する所定の操作で任意に選択することが可能である。図6の処理S11から処理S16の過程は、利用者が選択曲を確定するまで順次に反復される(S16:NO)。そして、利用者は、選択曲を確定し(S16:YES)、選択曲の音響データDBまたは楽譜データDCの要求を端末装置10に指示することが可能である。
【0028】
[音響データDBの要求]
利用者が選択曲の音響データDBの要求を指示すると(S21)、端末装置10の情報生成部422は、音響データ要求を生成して送信部482から楽曲検索装置20に送信する(S22)。音響データ要求は、直近の処理S14で受信した楽曲検索結果のうち選択曲の識別情報WAと時刻情報(すなわち利用者が指定済の音符の時刻)Tとを含んで構成される。音響データ要求を受信部664が受信すると、楽曲検索装置20の要求処理部624は、音響データ要求内の識別情報WAが示す選択曲の音響データDBを記憶装置64から検索し(S23)、その音響データDBのうち音響データ要求内の時刻情報Tが示す時点(すなわち選択曲のうち利用者による指定済の時点)以降の区間を送信部662から端末装置10に送信する(S24)。音響データDBの送信には例えばストリーミング送信が好適に採用される。
【0029】
端末装置10の出力処理部424は、受信部484が楽曲検索装置20から受信した音響データDBを放音装置54に供給して再生する(S25)。すなわち、選択曲のうち利用者が音符を指定した区間の直後の区間が、利用者による音符の指定(選択曲の演奏)から引続いて再生される。
【0030】
[楽譜データDCの要求]
他方、利用者が選択曲の楽譜データDCの要求を指示すると(S31)、端末装置10の情報生成部422は、楽譜データ要求を生成して送信部482から楽曲検索装置20に送信する(S32)。楽譜データ要求は、音響データ要求(S22)と同様に、選択曲の識別情報WAと時刻情報Tとを含んで構成される。楽譜データ要求を受信部664が受信すると、楽曲検索装置20の要求処理部624は、楽譜データ要求内の識別情報WAが示す選択曲の楽譜データDCを記憶装置64から検索し(S33)、その楽譜データDCのうち楽譜データ要求内の時刻情報Tが示す時点(すなわち選択曲のうち利用者による指定済の時点)以降の区間を送信部662から端末装置10に送信する(S34)。
【0031】
端末装置10の出力処理部424は、楽曲検索装置20から受信部484が受信した楽譜データDCを表示装置52に供給して選択曲の楽譜を表示させる(S35)。すなわち、利用者は、表示装置52に表示された選択曲の楽譜を確認しながら、それまでに指定した音符から引続き選択曲を演奏することが可能である。なお、楽譜の表示の態様は任意であるが、例えば、表示装置52が表示する楽譜のうち現在の演奏位置を強調(ハイライト表示)する構成が好適である。
【0032】
以上の形態においては、利用者による音符の指定毎に楽曲の検索が実行されて楽曲の検索数が順次に減少する。したがって、検索結果を1個の楽曲に絞り込むのに充分な個数の音符が指定されてから楽曲の検索が開始される特許文献1の技術と比較して、利用者の所望の楽曲を迅速に検索できるという利点がある。
【0033】
また、指定音情報Qおよび構成音情報R(楽曲データDA)は、相前後する音符の音高の差分を示す情報であるから、利用者が指定する音符の調(キー)が楽曲の本来の調(原調)と相違する場合や、利用者による音符の指定のリズムが楽曲の本来のリズムと相違する場合でも、利用者の所望の楽曲を検索することが可能である。
【0034】
<B:第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0035】
第1実施形態では、利用者による音符の指定毎に指定音情報Qを端末装置10から楽曲検索装置20に送信した。しかし、利用者が指定した音符の総数が少ない段階では、楽曲検索装置20において過度に多数の楽曲が検索される可能性がある。そこで、第2実施形態では、利用者による指定済の音符の個数が所定値NTH(Nは2以上の自然数)に到達した段階で、楽曲検索装置20に対する指定音情報Q(楽曲検索要求)の送信が開始される(S12)。
【0036】
すなわち、図8に示すように、利用者による音符の指定数が所定値NTH(図8の例示ではNTH=3)に到達しない段階では指定音情報Qの送信は実行されない。音符の個数が所定値NTHに到達すると、その時点で指定済のNTH個の音符を示す指定音情報Qが情報生成部422にて生成されて楽曲検索装置20に送信される。楽曲検索装置20は、指定音情報Qが示すNTH個の音符を検索キーとして楽曲データDAを検索して端末装置10に通知する。以後は第1実施形態と同様に、1個の音符の指定毎に指定音情報Qが端末装置10から楽曲検索装置20に送信される。
【0037】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態では、指定済の音符の個数が所定値NTHに到達した段階で指定音情報Qを検索キーとした楽曲データDAの検索が開始されるから、利用者が1個目の音符を指定した段階から楽曲データDAを検索する構成と比較して、楽曲検索装置20の処理の負荷が軽減されるという利点がある。
【0038】
なお、以上の例示では音符の指定数が所定値NTHに到達した段階で指定音情報Qの送信を開始したが、利用者による音符の指定数に関わらず指定音情報Qを端末装置10から順次に楽曲検索装置20に送信し、受信部664が受信した指定音情報Qの個数が所定値NTHに到達した段階で楽曲検索部622が楽曲の検索を開始する構成も採用され得る。
【0039】
<C:第3実施形態>
図9は、第3実施形態における端末装置10の情報生成部422の動作の説明図である。第1実施形態では各音符間の音高の差分を指定音情報Qとして生成したが、第3実施形態では、相前後する各音符間の音高の差分に対応する文字を情報生成部422が指定音情報Qとして生成する。図9では、音高の差分「+2」が文字「a」に変換され、差分「+1」が文字「b」に変換され、差分「−1」が文字「c」に変換され、差分「−2」が文字「d」に変換されて、楽曲検索装置20に送信される指定音情報Qの時系列が文字列「aabcdd」を示す場合が例示されている。なお、音高の差分の各数値と指定音情報Qとして指定される文字との対応は事前に決定(マッピング)される。
【0040】
指定音情報Qと同様に、楽曲検索装置20の記憶装置64が記憶する楽曲データDA内の各構成音情報Rは、楽曲内の相前後する音高の差分に対応する文字を指定する情報である。楽曲検索装置20の楽曲検索部622は、複数の楽曲データDAのうち指定音情報Qの時系列で指定される文字列に合致する構成音情報Rの配列を含む楽曲データDAを検索する(S13)。
【0041】
第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第3実施形態では、指定音情報Qおよび構成音情報R(楽曲データDA)が文字を示す情報であるから、文字列検索用の既存の検索技術を楽曲検索部622による楽曲の検索に流用できるという利点がある。
【0042】
<D:変形例>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は適宜に併合され得る。
【0043】
(1)変形例1
楽曲データDA内の関連情報WBの内容は任意である。例えば、楽曲の詳細情報が提示されたウェブサイトのURLや、楽曲の音響データDBまたは楽譜データDCを利用者が購入するためのウェブサイトのURL等を関連情報WBに含めた構成も好適である。
【0044】
(2)変形例2
以上の説明では、音符の音高の差分を示す指定音情報Q(第1実施形態)や差分に対応する文字を示す指定音情報Q(第3実施形態)を例示したが、指定音情報Qの内容は以上の例示に限定されない。例えば、指定音情報Qが音符の音高の数値自体を示す構成も採用され得る。以上の例示から理解されるように、指定音情報Qは、利用者が指定した音符を示す情報として包括され、音高の差分を示す第1実施形態や音高の差分に対応する文字を示す第3実施形態は、指定音情報Qの表現方式の例示である。
【0045】
(3)変形例3
以上の各形態では、利用者が音符を指定するたびに1個の音符の指定音情報Qを端末装置10から楽曲検索装置20に送信したが(S12)、利用者による指定済の複数の音符を示す指定音情報Qを音符の指定毎に端末装置10から楽曲検索装置20に送信する構成も採用され得る。例えば、図3の例示の場合には、最初の音符「ド」の指定音情報Qが送信され、次に音符列「ド-レ」の指定音情報Qが送信され、次に音符列「ド-レ-ミ」の指定音情報Qが送信されるという具合である。
【0046】
(4)変形例4
以上の各形態では、楽曲検索部622が検索した全部の楽曲を検索毎に楽曲検索装置20から端末装置10に通知したが、前回に検索された複数の楽曲のうち今回の検索で除外された楽曲のみを楽曲検索装置20から端末装置10に通知する構成も採用され得る。
【0047】
(5)変形例5
以上の各形態では、楽曲データDAと音響データDBと楽譜データDCとを1個の記憶装置64に格納したが、楽曲データDAを記憶する記憶装置(楽曲記憶手段)と音響データDBを記憶する記憶装置(音響記憶手段)と楽譜データDCを記憶する記憶装置(楽譜記憶手段)とを別個に設置した構成も採用され得る。また、以上の各形態では、楽曲検索装置20が楽曲の検索と音響データDBの配信と楽譜データDCの配信とを実行したが、音響データDBや楽譜データDCを配信する配信装置(サーバ装置)が楽曲検索装置20とは別個に設置された構成も採用され得る。
【符号の説明】
【0048】
100……通信システム、10……端末装置、42,62……制御装置、422……情報生成部、424……出力処理部、44,64……記憶装置、46……入力装置、48,66……通信装置、482,662……送信部、484,664……受信部、52……表示装置、54……放音装置、20……楽曲検索装置、622……楽曲検索部、624……要求処理部、30……通信網、DA……楽曲データ、WA……識別情報、WB……関連情報、WC……音符列情報、R……構成音情報、WD……演奏点情報、T……時刻情報、DB……音響データ、DC……楽譜データ、Q……指定音情報。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が音符を順次に指定可能な端末装置と通信する楽曲検索装置であって、
楽曲の関連情報と当該楽曲を構成する音符の時系列を示す音符列情報とを含む楽曲データを楽曲毎に記憶する楽曲記憶手段と、
利用者が順次に指定した各音符を示す指定音情報の時系列を前記端末装置から受信する受信手段と、
利用者による指定済の音符の前記指定音情報の時系列に対応した音符列情報を含む楽曲データを利用者による音符の指定毎に順次に検索する楽曲検索手段と、
前記楽曲検索手段による検索毎に当該検索の結果を前記端末装置に送信する送信手段と
を具備する楽曲検索装置。
【請求項2】
前記指定音情報は、直前に指定された音符に対する音高の相対値を示し、
前記音符列情報は、楽曲内の直前の音符に対する音高の相対値を音符毎に示す
請求項1の楽曲検索装置。
【請求項3】
前記楽曲データは、音符列情報が示す各音符について楽曲内の演奏の時点を示す時刻情報を含み、
楽曲の演奏音を示す音響データを楽曲毎に記憶する音響記憶手段と、
前記楽曲検索手段による検索結果から利用者が確定した楽曲の音響データのうち利用者が最後に指定した音符の時刻情報に応じた時点以降の区間を前記端末装置に送信する音響送信手段と
を具備する請求項1または請求項2の楽曲検索装置。
【請求項4】
前記楽曲データは、音符列情報が示す各音符について楽曲内の演奏の時点を示す時刻情報を含み、
楽曲の楽譜を示す楽譜データを楽曲毎に記憶する楽譜記憶手段と、
前記楽曲検索手段による検索結果から利用者が確定した楽曲の楽譜データのうち利用者が最後に指定した音符の時刻情報に応じた時点以降の区間を前記端末装置に送信する楽譜送信手段と
を具備する請求項1または請求項2の楽曲検索装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−48619(P2012−48619A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192207(P2010−192207)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】