説明

楽音演奏装置

【課題】演奏者に対し同室者への配慮を喚起してマイナスワン演奏を中止するかどうかを自ら決定可能とし、演奏者及び同室者双方の利便性を向上する。
【解決手段】カラオケ装置10は、複数の楽器演奏パートを含むカラオケ楽曲データを、エレキギターの演奏パートを除いたマイナスワン再生状態で再生するか、マイナスワン再生状態でない通常再生状態で再生するかを切り替えて設定可能であり、カラオケ楽曲データの再生時に演奏者によるエレキギター4の演奏の採点を行い、採点値が所定の第1しきい値よりも低い場合に、演奏者に対しマイナスワン再生状態での再生の中止を促す表示をモニタ13,14に行う。そして、当該表示が実行された以降の所定期間における、エレキギター4の演奏信号のレベルが、演奏者が演奏を停止するなどにより所定の第2しきい値よりも低い場合には、マイナスワン再生状態での再生から通常再生状態での再生へ設定を自動的に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラオケ楽曲を演奏可能な楽音演奏装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラオケ楽曲を演奏する演奏装置において、複数の楽器演奏パートを含むカラオケ楽曲データを、当該複数の楽器演奏パートのうち所望の1つの楽器演奏パートを除いた(又は減音した)マイナスワン再生状態で再生する技術が既に提唱されている(例えば、特許文献1参照)。楽器演奏者である利用者は、当該マイナスワン再生状態で再生されるカラオケ楽曲に合わせて上記除かれた(又は減音された)楽器演奏パートを自ら演奏して、当該楽器の練習を行ったり、カラオケ楽曲全体のアンサンブルを楽しむことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−187175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カラオケ楽曲の再生サービスを利用する場合には、通常、複数の人物が一緒に同室して楽しむ場合が多い。楽器演奏者が上記のようにマイナスワン再生状態で自分の楽器の演奏を行うとき、上手な演奏であれば、同室者にとっては心地よくまたライブ感によって高い娯楽性を得ることができるが、下手な演奏であれば、同室者にとっては苦痛を伴う。演奏者は、自分の楽器演奏が同室者に対し苦痛を与えているか若しくは心地よいライブ感を与えているか、同室者に対する気遣いを実行することが好ましい。しかしながら、上記従来技術では、このような点までは配慮されていなかった。
【0005】
本発明の目的は、演奏者に対し同室者への配慮を喚起し、マイナスワン演奏を中止するかどうかを自ら決定可能とすることで、演奏者及び同室者双方の利便性を向上できる楽音演奏装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明は、複数の楽器演奏パートを含むカラオケ楽曲データを再生する通常再生状態と、当該複数の楽器演奏パートのうち所望の1つの楽器演奏パートを除いて再生するマイナスワン再生状態と、を切り替えて設定可能なマイナスワン切替手段と、前記マイナスワン切替手段での設定に応じ、前記マイナスワン再生状態又は前記通常再生状態で前記カラオケ楽曲データを再生するカラオケ楽曲再生手段と、楽器演奏者の楽器の演奏により前記楽器から出力される演奏信号を入力する演奏信号入力手段と、前記カラオケ楽曲再生手段による前記カラオケ楽曲データの再生時において前記演奏信号入力手段により入力された前記演奏信号に基づき、前記楽器の演奏の採点を行う楽器演奏採点手段と、前記楽器演奏者に対し、前記マイナスワン再生状態での再生の継続又は中止を促す表示を実行可能な表示手段と、前記カラオケ楽曲再生手段により前記マイナスワン再生状態で前記カラオケ楽曲データの再生が行われているとき、前記楽器演奏採点手段による採点値が所定の第1しきい値よりも低い場合には、前記マイナスワン再生状態での再生の中止を促す表示を行うように、前記表示手段を制御し、かつ、当該中止を促す表示が実行された以降の所定期間における、前記演奏信号入力手段により入力される前記演奏信号のレベルが、所定の第2しきい値よりも低い場合には、前記マイナスワン再生状態での再生から前記通常再生状態での再生へ設定を切り替えるように、前記マイナスワン切替手段を制御する、マイナスワン制御手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
本願第1発明の楽音演奏装置は、カラオケ楽曲データをマイナスワン再生状態で再生する機能を備えている。すなわち、マイナスワン切替手段が、カラオケ楽曲データをマイナスワン再生状態で再生する設定とした場合には、カラオケ楽曲再生手段によってカラオケ楽曲データは所望の1つの楽器演奏パートを除いたマイナスワン再生状態で再生される。これにより、楽器演奏者は、当該マイナスワン再生状態で再生されるカラオケ楽曲に合わせて、上記除かれた楽器演奏パートを自ら演奏して、当該楽器の練習を行ったり、カラオケ楽曲全体のアンサンブルを楽しむことができる。
【0008】
ここで、カラオケ楽曲の再生サービスを利用する場合には、通常、複数の人物が一緒に同室して楽しむ場合が多い。楽器演奏者が上記のようにマイナスワン再生状態で自分の楽器の演奏を行うとき、上手な演奏であれば、同室者にとっては心地よくまたライブ感によって高い娯楽性を得ることができるが、下手な演奏であれば、同室者にとっては苦痛を伴う。
【0009】
そこで、本願第1発明においては、楽器演奏の採点機能を備えている。すなわち、楽器演奏者の楽器からの演奏信号が演奏信号入力手段より入力されると、楽器演奏採点手段がその楽器演奏の採点を行う。そして、その採点値が所定の第1しきい値よりも低かった場合には、制御手段の制御により、表示手段において、マイナスワン再生状態での再生の中止を促す表示が行われる。これにより、演奏者は、自分の楽器演奏が同室者に対し苦痛を与えているかもしれない可能性を認識することができる。
【0010】
そして、演奏者が当該認識により楽器演奏を中止する場合に備え、本願第1発明においては、上記中止を促す表示が実行された以降の所定期間における演奏信号のレベルが所定の第2しきい値よりも低い場合には、マイナスワン制御手段の制御により、マイナスワン切替手段が、マイナスワン再生状態での再生から通常再生状態での再生へと設定を自動的に切り替える。これにより、楽器演奏者は、例えば楽器演奏を中止するかほとんど演奏しないようにすることで、自らの意思でマイナスワン再生状態による楽器演奏を中止し、同室者に対する気遣いを実行することができる。
【0011】
以上のようにして、本願第1発明においては、演奏者に対し同室者への配慮を喚起しつつ、演奏者の自らの意思でマイナスワン演奏を中止するかどうかを決定させることができる。したがって、演奏者及び同室者双方の利便性を向上することができる。
【0012】
第2発明は、上記第1発明において、前記マイナスワン制御手段は、前記カラオケ楽曲再生手段により前記通常再生状態で前記カラオケ楽曲データの再生が行われているとき、前記楽器演奏採点手段による採点値が所定の第1しきい値以上である場合には、前記マイナスワン再生状態での再生を促す表示を行うように、前記表示手段を制御し、かつ、当該マイナスワン再生状態での再生を促す表示が実行された以降の所定期間における、前記楽器演奏採点手段による採点値が所定の第3しきい値以上である場合には、前記通常再生状態での再生から前記マイナスワン再生状態での再生へ設定を切り替えるように、前記マイナスワン切替手段を制御する、ことを特徴とする。
【0013】
上述したように、楽器演奏者の演奏が上手であれば、同室者にとってはその演奏は心地よく、ライブ感により高い娯楽性を得ることができる。したがって、可能な限りその演奏は継続するほうが好ましい。
【0014】
そこで、本願第2発明では、例えばマイナスワン再生状態ではない通常再生状態(すなわち楽器演奏者が演奏している当該楽器の楽器演奏パートを含む状態)でカラオケ楽曲データを再生しつつ、その再生される楽器演奏パートと楽音が重複するように楽器演奏者が自らの楽器の演奏を行っている場合において、楽器演奏の採点値が所定の第3しきい値よりも高かった場合には、マイナスワン制御手段の制御により、表示手段において、マイナスワン再生状態での再生を促す表示が行われる。これにより、演奏者に対し、自分の楽器演奏により同室者を喜ばすためには、マイナスワン再生状態としたほうがよいかもしれない、という認識を与えることができる。
【0015】
そして、演奏者が当該認識によりカラオケ楽曲データの再生をマイナスワン再生状態に切り替える場合に備え、本願第2発明においては、上記マイナスワン再生状態での再生を促す表示が実行された以降の所定期間における演奏信号のレベルが所定の第3しきい値以上である場合には、マイナスワン制御手段の制御により、マイナスワン切替手段が、通常再生状態での再生からマイナスワン再生状態での再生へと設定を自動的に切り替える。これにより、楽器演奏者は、例えばその上手な楽器演奏を継続して実行することで、自らの意思でマイナスワン再生状態によるカラオケ楽曲の再生に切り替え、同室者に対するさらなる気遣いを実行することができる。
【0016】
第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記演奏信号入力手段に前記楽器演奏者の前記楽器が接続されたこと、及び、接続された当該楽器の種類、を検出する楽器識別手段をさらに有し、前記マイナスワン制御手段は、前記楽器識別手段により前記楽器の接続及び当該楽器の種類が検出された場合に、複数の楽器演奏パートのうち当該検出された楽器の前記楽器演奏パートを除いたマイナスワン再生状態での再生へ設定を切り替えるように、前記マイナスワン切替手段を制御することを特徴とする。
【0017】
これにより、楽器演奏者が楽器の演奏を開始しようとして演奏信号入力手段に対し自らの楽器を接続するだけで、カラオケ楽曲データの再生の設定が、当該楽器の楽器パートを除いたマイナスワン再生状態に自動的に切り替えられる。したがって、楽器演奏者は、マイナスワン再生状態へ切り替えるための設定を手動で行う必要が無くなり、操作労力を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、演奏者に対し同室者への配慮を喚起することで、演奏者はマイナスワン演奏を中止するかどうかを自ら決定できる。したがって、演奏者及び同室者双方の利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態のカラオケ装置の主要構成を示す説明図である。
【図2】楽器接続ボードの前面パネルの説明図、及び、楽器接続ボードの背面パネルの説明図である。
【図3】楽器接続ボードの内部に設けられた拡張I/Oポートと各フォンジャックとの接続関係を示す機能ブロック図である。
【図4】カラオケ装置に備えられた制御装置の前面パネルの説明図、及び、制御装置の背面パネルの説明図である。
【図5】制御装置の制御系の主要構成を示す機能ブロック図である。
【図6】サーバーから制御装置へ送信される曲データの主要構成を示す説明図、及び、MIDIデータ、MIDIデータの演奏部分の構成を示す説明図、エレキギターの音源を指定するMIDIデータ#4を削除した演奏部分の構成を示す説明図、及び、ミュートデータ#4が付加された演奏部分の構成を示す説明図である。
【図7】データテーブルの説明図である。
【図8】リモコンの外観を示す上面図である。
【図9】カラオケ装置による楽曲再生時にCPUにより実行される処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、楽音演奏装置の一例としてのカラオケ装置に本発明を適用した場合を例にとって説明する。この例では、利用者がカラオケ装置の演奏と共に自らエレキギターを演奏するために、エレキギターの楽曲パートを除いたマイナスワン再生状態でのカラオケ楽曲データの再生を意図する場合を例にとって説明する。
【0021】
<主要構成>
図1は、本発明の音楽演奏装置の一実施形態としてのカラオケ装置の主要構成を示す説明図である。図1に示すように、カラオケ装置10には、歌詞を示す歌詞テロップ、歌詞テロップの背景に表示する背景映像、選曲番号を示す映像などをCRTに表示するモニタテレビ(以下、モニタと略称する)13(表示手段)と、歌唱者用のモニタ14(表示手段)と、エレキギター4やエレキベースギターなどの電子楽器を接続するための楽器接続ボード8と、複数の楽器の楽音により構成されるカラオケ用の楽曲(カラオケ楽曲。以下、適宜「曲」と略称する)の選曲、及び曲の再生の予約などの選曲制御、選曲された曲の送信要求を示すリクエスト信号のサーバーへの送信、及びリクエスト信号により示される曲に対応する曲データ(カラオケ楽曲データ)の受信などの通信制御、受信された曲データに含まれる楽音種類指定情報たるMIDIデータのうち楽器接続ボード8に接続された楽器と同じ種類の楽器の音源を指定するMIDIデータの削除、等を行う制御装置(コマンダ)20とが備えられている。
【0022】
さらに、カラオケ装置10には、この例では、楽器接続ボード8から入力される楽器の演奏信号、マイクロフォン17,18から入力される音声信号及び曲の再生信号のミキシング、音声と曲との音量バランス、エコー調整、ディレイ調整、ミキシング信号の増幅、再生される曲の音程制御(キーコントロール)、高音、低音の制御(トーンコントロール)などを行うアンプ16と、このアンプ16から出力される増幅信号を音として再生するフロアータイプの1組のスピーカ11,11と、天井吊下げ用の1組のスピーカ12,12と、制御装置20を遠隔操作するリモコン60とが備えられている。
【0023】
<楽器接続ボード>
楽器接続ボード8の構成について図2を参照して説明する。図2(a)は、楽器接続ボード8の前面パネルの説明図であり、図2(b)は、楽器接続ボード8の背面パネルの説明図である。図2(a)に示すように、楽器接続ボード8の前面パネルの左上には、楽器接続ボード8の電源を立ち上げるための電源ボタン81が設けられており、その右方には、電子ドラムの出力端子であるフォンプラグを接続する接続端子たるフォンジャック82と、キーボードのフォンプラグを接続するフォンジャック83と、エレキベースギターのフォンプラグを接続するフォンジャック84と、エレキギター4のフォンプラグを接続する入力端子85と、楽器の音程をLEDで表示する音程表示手段たるチューニングメーターのプラグを接続するジャック86とが設けられている。また、図2(b)に示すように、楽器接続ボード8の背面パネルには、各フォンジャック82,83,84,85に入力される演奏信号をそれぞれ出力する出力端子87が設けられている。
【0024】
<フォンジャックの接続関係>
図3は、楽器接続ボード8の内部に設けられた拡張I/Oポートと各フォンジャック82〜85(演奏信号入力手段)との接続関係を示す説明図である。なお、各フォンジャック82〜85への楽器の接続は、それぞれ同一であるため、ここでは、エレキギター4をフォンジャック85に接続する場合を代表に説明する。フォンジャック85には、エレキギター4のフォンプラグ4aの挿入によりONし、離脱によりOFFするスイッチが設けられている。スイッチは、拡張I/Oポート88の検知ポートP03に接続されている。スイッチには、5Vの直流電圧が印加されている。
【0025】
そして、エレキギター4のフォンプラグ4aがフォンジャック85に挿入されると、スイッチがONし、拡張I/Oポート88の検知ポートP03に現れる電圧は、0V(ローレベル)から5V(ハイレベル)に変化し、この変化は、背面の出力端子87を介して後述する制御装置20に備えられたCPU45(後述)により検出される。一方、エレキギター4から出力される演奏信号は、フォンプラグ4aを介して背面の出力端子87へ出力され、この出力された演奏信号は、制御装置20の入力端子6へ入力される。そして、音声制御回路52において、音源信号のエレキギターの楽曲パート一部をエレキギター4の演奏信号と置き換えたマイナスワン再生状態で、音声出力端子41へ出力される。
【0026】
また、図3に示すように、電子ドラム1の演奏信号は、フォンジャック82を介して拡張I/Oポート88の検知ポートP00に、キーボード2の演奏信号は、フォンジャック83を介して検知ポートP01に、エレキベースギター3の演奏信号は、フォンジャック84を介して検知ポートP02にそれぞれ入力される。さらに、フォンジャック84,85は、チューニングメーター5を接続する出力端子86に接続されており、エレキベースギター3及びエレキギター4の音程をチューニングできるようになっている。
【0027】
以上のように、楽器接続ボード8は、各楽器のフォンプラグが接続されたことを検出するとともに、接続された楽器の1つの演奏信号を選択し、その選択された演奏信号6を信号制御装置20の入力端子44へ出力する役割をする。
【0028】
<制御装置の概略>
上記制御装置20の装備について図4を参照して説明する。図4(a)は、制御装置20の前面パネルの説明図であり、図4(b)は、制御装置20の背面パネルの説明図である。図4(a)に示すように、制御装置20の前面パネルには、選曲する曲の選曲番号の入力などを行うための0〜9のボタンからなるテンキー21と、選曲を確定するための選曲ボタン22とが設けられており、テンキー21の上には、選曲された曲の選曲番号を6桁の数字でLED表示する選曲番号表示体23が設けられている。
【0029】
また、選曲番号表示体23の左には、再生が予約されている曲の数をLED表示する予約曲数表示体24が設けられており、その下には、予約の取り消を行うための取り消しボタン25と、演奏を停止させる演奏停止ボタン26と、歌っている途中で最初から歌い直すための歌い直しボタン27と、予約曲の間に割り込んで予約するための割り込みボタン28とが設けられている。さらに、前面パネルの左上には、リモコン60から送信される光信号を受光する受光部38が設けられており、左下には、制御装置20の電源を立ち上げる電源ボタン39が設けられている。
【0030】
また、テンキー21の右には、再生する曲のキーを低くコントロールするためのフラットキー29と、再生する曲のキーを標準にコントロールするための標準キー30と、再生する曲のキーを高くコントロールするためのシャープキー31とが設けられており、それらキーの下には、ボーカルのメロディーラインの音量を設定するボーカルボタン32と、2コーラス目までを再生する2コーラスカットボタン33と、曲の後奏部分をカットする後奏カットボタン34とが設けられている。さらに、それらボタンの下には、カラオケとBGM用とを切り替えるカラオケ切替ボタン35と、LAN回線15(図5参照)を介して入力されるデータを曲データから有線放送、テレビ放送などに切り替える入力切替ボタン36と、モニタ13,14の表示をカラオケボックスなどが提供しているサービス情報の表示に切り替えるサービスボタン37とが設けられている。
【0031】
また、図4(b)に示すように、制御装置20の背面パネルには、LAN回線15を接続する通信端子40が設けられており、この通信端子40の右方には、楽器接続ボード8の出力端子87(図2(b)参照)と接続される入力端子44が設けられている。この入力端子44の右方には、アンプ16の音声入力端子(図示省略)と接続される音声出力端子41と、モニタ13の映像入力端子(図示省略)と接続される映像出力端子42と、モニタ14の映像入力端子(図示省略)と接続される映像出力端子43とが設けられている。
【0032】
<制御系>
上記制御装置20の制御系の構成について図5を参照して説明する。図5は、制御装置20の制御系の主要構成を示す機能ブロック図である。制御装置20には、上記各種制御をプログラムにしたがって実行するCPU45が備えられている。CPU45には、リモコン60から送信されるデータ、選曲された曲の選曲番号を示す選曲番号データ、予約された曲の選曲番号データなどを一時保存するためのRAM46と、データテーブル78(後述の図7参照)及びCPU45により実行されるプログラムなどが記憶されたROM47とが接続されている。
【0033】
また、CPU45には、モニタ13,14に歌詞テロップや各種メッセージ映像を表示するための文字映像データが記憶されたビデオRAM48と、サーバー58から送信される曲データ100(後述の図6参照)を受信するためのLANボード50と、このLANボード50により受信された曲データ100を一時保存するためのRAM49とが接続されている。
【0034】
さらに、CPU45には、RAM49から読み出された曲データ100に含まれるMIDIデータ110(後述の図6参照)を入力するとともに、その入力されたMIDIデータ110により指定される音源から音源信号を出力するMIDI音源ボード51が接続されている。また、CPU45には、上記出力された音源信号を入力してアンプ16により増幅可能な信号に変換する音声制御回路52と、曲データ100に含まれるジャンルデータ150(後述の図6参照)により特定されるジャンルの背景映像を示す背景映像データを読み出すCD−ROMプレーヤ53とが接続されている。
【0035】
また、CPU45には、CD−ROMプレーヤ53から読み出された背景映像データ、及びRAM49から読み出された曲データ100に含まれる歌詞テロップデータ140(後述の図6参照)を入力し、モニタ13の表示画面に表示される背景映像中に歌詞テロップがスーパーインポーズされた映像を作成したり、曲の進行にしたがって歌詞テロップの色を変えたりする映像制御を行う映像制御回路54が接続されている。
【0036】
さらに、CPU45には、受光部38により受光された光信号をデジタル信号に変換する変換回路55と、制御装置20の前面パネルに設けられた各種ボタン及びキー(前述のテンキー21、選曲ボタン22等)を押したときに点灯するLED(前述の選曲番号表示体23、予約曲数表示体24等)と、上記LEDへ表示信号を出力する表示回路56と、上記各種ボタン及びキーを押したときに発生するスイッチング信号を入力する入力回路57とが接続されている。
【0037】
<曲データ>
曲データの主要構成について図6を参照して説明する。図6(a)は、サーバー58から制御装置20へ送信される曲データの主要構成を示す説明図である。曲データ100は、曲の演奏部分を示すMIDIデータ110、歌詞テロップ(字幕)を示す歌詞テロップデータ140、及び曲のジャンルを示すジャンルデータ150などから構成されている。MIDIデータ110の先頭には、図6(b)に示すように、曲の始まりをカウントするための曲カウントデータ120を付加することができる。曲カウントデータ120としては、例えば、ドラムの音を出すためのMIDI音源を指定するMIDIデータ#1(後述の図6(c)参照)が用いられる。
【0038】
MIDIデータの構成について図6を参照して説明する。図6(c)は、曲データ100中のMIDIデータ110の演奏部分の構成を示す説明図である。MIDIデータ110は、この例では、図6(c)に示すように、電子ドラムの音源を指定するMIDIデータ#1、キーボードの音源を指定するMIDIデータ#2、エレキベースギターの音源を指定するMIDIデータ#3、エレキギターの音源を指定するMIDIデータ#4、音源から音源信号を出力させることを指定するノートONデータ112、音の強さ(音源信号の出力レベル)を指定するレベルデータ114、及び音源から音源信号を出力させないことを指定するノートOFFデータ116などのデータから構成される。
【0039】
楽器の音源を指定するMIDIデータ、例えばエレキギターの音源を指定するMIDIデータ#4を削除した場合は、MIDIデータ110は、図6(d)に示すデータ構成となる。これにより、曲データが、エレキギター演奏パートを除いたマイナスワン再生状態で再生される。また、MIDIデータ110には、図6(e)に示すように、例えばMIDIデータ#4により発生するエレキギターの音をミュートするためのミュートデータ118を付加することができる。この場合も、上記同様、曲データはエレキギター演奏パートを除いたマイナスワン状態で再生される。
【0040】
<データテーブル>
ここで、データテーブル78について図7を参照して説明する。本実施形態では、一例として、上記のようなマイナスワン再生状態での再生を実現するために、各フォンジャック82,83,84,85のいずれに各楽器が接続されたかどうかを自動検出し、その検出結果に応じて上述したMIDIデータの削除処理が行われる。データテーブル78は、上記処理を行うために、上記楽器接続ボード8の拡張I/Oポート88により検知された検知データに基づいて、削除すべきMIDIデータを設定するためのものである。図7において、D0〜D7は、図3に示すように、拡張I/Oポート88の検知ポートP00〜P07に対応するCPU45の入力ポートをそれぞれ示し、そのうちの入力ポートD4〜D7は、楽器接続ボード8に上記楽器以外の楽器を接続するための予備の検知ポートP04〜P07にそれぞれ対応する入力ポートである。本実施形態では、この入力ポートD4〜D7は用いないため、Xで表されているが、そのXは、どんな値でもよい。
【0041】
たとえば、エレキギター4のみを接続した場合は、エレキギター4のフォンプラグ4aを接続するフォンジャック85に対応する検知ポートP03の入力レベルがローレベルからハイレベルに変化する。この結果、当該検知ポートP03に対応するCPU45の入力ポートD3では「1」が検出され、その他の楽器に対応した入力ポートD0,D1,D2では「0」が検出される結果、削除すべきMIDIデータを指定する指定データは、X8Hになる(図7中の矢印で示す段のデータ参照)。このように、CPU45は、エレキギター4のみが接続された場合に、図7のテーブルを用いて指定データX8Hを検出し、これによって楽器接続ボード8にエレキギター4が接続されたと判定するとともに、削除する対象となるMIDIデータがMIDIデータ#4であると認識する。その他の楽器(エレキベースギター、キーボード、電子ドラム)がそれぞれ単体で接続された場合や複数の楽器が接続された場合も、上記同様、CPU45は、図7のテーブルを用いて指定データを検出するとともに、削除対象となるMIDIデータを認識する(詳細な説明は省略)。
【0042】
<リモコン>
リモコン60の構成について、その外観を示す図8を参照して説明する。図8に示すように、リモコン60の上部には、選曲番号をバックライト付きの液晶で表示する選曲番号表示部61が設けられており、その下には、上記制御装置20のカラオケ切替ボタン35と同じ作用をするカラオケ切替ボタン62と、制御装置20の入力切替ボタン36と同じ作用をする外部映像ボタン63と、サーバー58が用意しているテレビゲームを行う状態に切り替えるゲームボタン64とが設けられている。
【0043】
また、それらボタンの下には、曲間や曲の再生終了後に拍手や歓声の音を再生するように設定するための拍手ボタン65と、制御装置20の上記フラットキー29及びシャープキー31とそれぞれ同じ機能のフラットキー66及びシャープキー67とが設けられており、それらの下には、テンキー68と、選曲ボタン69と、演奏停止ボタン70と、歌い直しボタン71と、取り消しボタン72と、割り込みボタン73とが設けられている。さらに、割り込みボタン73の右には、ボーカルメロディーの音量を小さくするマイナスボタン74と、音量を大きくするプラスボタン75とが設けられている。そして、上記各ボタンを押すと、どのボタンが押されたかを示す光信号が、リモコン60の上部に設けられた送信窓76から発信される。
【0044】
<本実施形態の特徴>
以上の基本構成において、本実施形態の特徴は、エレキギター演奏パートを除いたマイナスワン再生状態で演奏者がエレキギター4を演奏しているとき、演奏者自らの意思でマイナスワン再生状態による演奏を中止できるようにしたことである。すなわち、カラオケ楽曲の再生サービスを利用する場合には、通常、複数の人物が一緒に同室して楽しむ場合が多い。エレキギター演奏者が上記のようにマイナスワン再生状態で自分のエレキギター4の演奏を行うとき、上手な演奏であれば、同室者にとっては心地よくまたライブ感によって高い娯楽性を得ることができるが、下手な演奏であれば、同室者にとっては苦痛を伴う。そこで、カラオケ装置10に楽器演奏の採点機能を設け、エレキギター4の演奏の採点値が低い場合には、マイナスワン再生状態の中止を促す表示が行われる。以下、その詳細を図9を用いて説明する。
【0045】
カラオケ装置10による楽曲再生時にCPU45により実行される処理内容を、図9に示す。図9において、このフローは、カラオケ装置10の利用者が、制御装置20の電源ボタン39を押して制御装置20の電源を立ち上げると、開始される。制御装置20の電源を立ち上がりに連動して、アンプ16、楽器接続ボード8及びモニタ13,14の電源が立ち上がる。なお、前述したように、この例では、カラオケ装置10の利用者は、楽器接続ボード8にエレキギター4を接続して演奏する場合を例にとって説明する。すなわち、利用者がエレキギター4のフォンプラグ4aを楽器接続ボード8のフォンジャック85に接続することで、拡張I/Oポート88の検知ポートP03に現れる電圧がローレベルからハイレベルに変化する。
【0046】
図9において、まず、ステップS10において、CPU45は、カラオケ楽曲データの再生状態に係わるフラグFをF=0に初期化する。なお、F=0は、複数の楽器演奏パートを含むカラオケ楽曲データをエレキギター演奏パートを除いたマイナスワン再生状態で再生することを示しており、F=1は、カラオケ楽曲データを、すべての演奏パートを含む通常再生状態で再生することを示している。
【0047】
その後、ステップS15において、CPU45は、検知ポートPO0〜PO3で検知した楽器種類を、拡張I/Oポート88を介して入力ポートD0ないしD7から指定データとして読み込む。その後、ステップS20に移る。
(図11削除してください)
【0048】
ステップS20では、CPU45は、上記ステップS15で読み込んだデータに基づいてROM47に記憶されている上記データテーブル78から指定データを検索する。この例では、前述のように検知ポートP03に現れる電圧がローレベルからハイレベルに変化していることから、CPU45によって、検知ポートP03に対応する入力ポートD3からデータ「1」が検出される。この結果、CPU45は、データテーブル78から入力ポートD3のデータが「1」であり、かつ他の入力ポートD0,D1及びD2のデータが「0」の場合に対応する、指定データX8Hを取得する。この指定データX8Hは、データテーブル78に示すように、エレキギターのMIDI音源を指定するMIDIデータ#4を削除することを指定する。ステップS20が終了したら、ステップS25に移る。
【0049】
ステップS25では、CPU45は、上記ステップS20で検索された指定データ(この例では指定データX8H)をRAM46に一時保存する。その後、ステップS30に移る。
【0050】
ステップS30では、CPU45は、利用者による選曲が終了したか否かを判定する。例えば、利用者が歌いたい曲の選曲番号をリモコン60のテンキー68により入力すると、その押す毎にテンキー68に対応する数字がリモコン60の選曲番号表示部61及び制御装置20の選曲番号表示部23に順次表示される。続いて、最後の数字のテンキー68を押してから選曲ボタン69を押すと、選曲が終了する。選曲が終了するまでは判定が満たされず(ステップS30:NO)、ループ待機する。選曲が終了した場合は判定が満たされ(ステップS30:YES)、ステップS35に移る。
【0051】
ステップS35では、CPU45は、ステップS30での選曲結果に対応し、上記選曲番号を示す選曲番号データをRAM46に一時保存するとともに、LANボード50を介し、上記選曲番号に対応する曲データ100の送信を要求するリクエスト信号を、LAN回線15を介してサーバー58へ送信する。これにより、サーバー58は、図示しない記憶装置から上記リクエスト信号に示される選曲番号に対応する曲データ100を検索して読み出し、その読み出された曲データ100を、LAN回線15を介して制御装置20に送信する。ステップS35が終了したら、ステップS40に移る。
【0052】
ステップS40では、CPU45は、LANボード50を介し、サーバー58からLAN回線15を介して送信された曲データ100を受信する。その後、ステップS45に移る。
【0053】
ステップS45では、CPU45は、上記ステップS40で受信した曲データ100をRAM49に一時保存させる。その後、ステップS50に移る。
【0054】
ステップS50では、CPU45は、上記ステップS45でRAM46に記憶されている指定データ(前述の例では指定データX8H)を読み出す。その後、ステップS55に移る。
【0055】
ステップS55では、CPU45は、前述のステップS45でRAM49に記憶されているMIDIデータ110の読み出しを開始する。その後、ステップS60に移る。
【0056】
ステップS60では、CPU45は、ステップS50で読み出した指定データ(この例では指定データX8H)に基づき、上記ステップS55で読み出されこの時点で処理対象としているMIDIデータが上記指定データで指定されたMIDIデータ(この例では、エレキギター4のMIDI音源を指定するMIDIデータ#4)であるか否かを判定する。上記指定されたMIDIデータであれば判定が満たされ(ステップS60:YES)、ステップS65に移る。上記指定されたMIDIデータでなければ判定が満たされず(ステップS60:NO)、後述のステップS75に移る。
【0057】
ステップS65では、CPU45は、マイナスワン再生に関するフラグFがF=1であるか否かを判定する。F=0の場合はステップS65の判定が満たされず(ステップS65:NO)、ステップS70に移る。F=1の場合はステップS65の判定が満たされ、後述のステップS75へ移る。
【0058】
ステップS70では、CPU45は、この時点での処理対象のMIDIデータの削除を行う。これにより、後述のようにステップS55〜ステップS140が繰り返されるとき、ステップS50でエレキギター4のMIDI音源を指定するMIDIデータ#4を含むデータが読み出されたときに限り、当該MIHDIデータ#4が削除される(前述の図6(d)参照)。なお、削除に代えて、前述の図6(e)に示したようにミュートするためのデータ118の付加を行ってもよい。この結果、エレキギターの楽曲パートを除いたマイナスワン状態でのカラオケ楽曲データの再生を実現することができる。ステップS70が終了したら、ステップS75に移る。
【0059】
ステップS75では、CPU45は、ステップS55で読み出された後にステップS60〜ステップS70の処理を経たMIDIデータ110を、図示しないシーケンサを介して、CPU45に内蔵されたタイマのカウントにしたがってMIDI音源ボード51に書き込む。なお、ステップS70でMIDIデータが削除された場合は(書き込み対象がないため)実質的にこの手順は省略される。ステップS75が終了したら、ステップS80に移る。
【0060】
ステップS80では、CPU45は、MIDI音源ボード51に制御信号を出力し、上記ステップS75で書き込んだMIDIデータに対応した音源信号を、MIDI音源ボード51から出力させる。MIDI音源ボード51から出力される音源信号は、音声制御回路52へ出力されるとともに、アンプ16により増幅可能な音楽信号に変換され、この変換された音楽信号は、音声出力端子41からアンプ16へ出力される。また、マイクロフォン17,18から入力された音声信号は、アンプ16に内蔵されたミキシング回路9において上記音楽信号とミキシングされる。このとき、エレキギター4のフォンプラグ4aから出力された演奏信号は、楽器接続ボード8及び出力端子87、及び制御装置20を介してミキシング回路9に入力され、上記音声信号及び音楽信号とミキシングされる。そして、そのミキシングされたミキシング信号は、アンプ16に内蔵された図示しない増幅回路により増幅された後にスピーカ11及びスピーカ12へ出力され、両スピーカによって再生される。ステップS80が終了すると、ステップS85に移る。
【0061】
ステップS85では、CPU45は、演奏者の演奏によりエレキギター4から出力され、フォンプラグ4aにより楽器接続ボード8に入力されたギター演奏信号(ギター音)に基づき、演奏者によるエレキギター4の演奏を公知の手法により採点する。なお、この採点は所定の時間区分ごとに行われる。その後、ステップS90に移る。
【0062】
ステップS90では、CPU45は、上記フラグFがF=0であるか否かを判定する。F=0の場合は判定が満たされ(ステップS90:YES)、ステップS95に移る。F=1の場合は判定が満たされず(ステップS90:NO)、後述のステップS115に移る。
【0063】
ステップS95では、CPU45は、ステップS85で行われたエレキギター4の演奏の採点値が、予め定めた所定の第1しきい値よりも低い得点であるか否かを判定する。採点値が上記第1しきい値よりも低かった場合には判定が満たされ(ステップS95:YES)、ステップS100に移る。一方、例えば演奏者の演奏が比較的上手で採点値が所定の第1しきい値と同じかそれよりも高かった場合には判定が満たされず(ステップS95:NO)、後述のステップS140に移る。
【0064】
ステップS100では、CPU45は、モニタ13,14に表示制御信号を出力し、エレキギター4の演奏者に対し、カラオケ楽曲のマイナスワン再生状態での再生を中止するように促す表示を行わせる。その後、ステップS105に移る。
【0065】
ステップS105では、CPU45は、上記ステップS100で上記マイナスワン再生状態の中止を促す表示がモニタ13,14で実行されてから以降の所定期間における、エレキギター4のフォンプラグ4aにより入力される演奏信号の入力レベルが、予め定められた所定の第2しきい値よりも低いか否かを判定する。演奏信号の入力レベルが第2しきい値より低かった場合は、判定が満たされ(ステップS105:YES)、ステップS110に移る。演奏信号の入力レベルが第2しきい値以上であった場合には判定が満たされず(ステップS105:NO)、後述のステップS140に移る。
【0066】
ステップS110では、CPU45は、上記フラグFを1とする。すなわち、マイナスワン再生状態での再生から通常再生状態での再生へと設定を切り替える。その後、ステップS140に移る。
【0067】
一方、ステップS115では、CPU45は、上記ステップS85で行われたエレキギター4の演奏の採点値が、上記第1しきい値よりも高い得点であるか否かを判定する。採点値が上記第1しきい値よりも高かった場合にはステップS115の判定が満たされ(ステップS115:YES)、ステップS120に移る。一方、採点値が上記所定の第1しきい値以下であった場合にはステップS115の判定が満たされず(ステップS115:NO)、後述のステップS140に移る。
【0068】
ステップS120では、CPU45は、モニタ13,14に表示制御信号を出力し、エレキギター4の演奏者に対し、カラオケ楽曲の再生をマイナスワン再生状態の再生へ促す表示を行わせる。その後、ステップS125に移る。
【0069】
ステップS125では、CPU45は、上記ステップS120で上記マイナスワン再生状態での再生を促す表示がモニタ13,14で実行されてから以降の所定期間における、演奏者によるエレキギター4の演奏を、フォンプラグ4aにより楽器接続ボード8に入力されたギター演奏信号(ギター音)に基づき公知の手法により採点する。その後、ステップS130に移る。
【0070】
ステップS130では、CPU45は、上記ステップS120におけるエレキギター4の演奏の採点値が所定の第3しきい値(上記第1しきい値と同じ値でもよいし、別の値でもよい)以上の得点であるか否かを判定する。上記採点値が第3しきい値以上であった場合には、判定が満たされ(ステップS130:YES)、ステップS135に移る。一方、上記採点値が第3しきい値未満であった場合には、ステップS130の判定が満たされず(ステップS130:NO)、後述のステップS140に移る。
【0071】
ステップS135では、CPU45は、上記フラグFを0とする。すなわち、通常再生状態での再生からマイナスワン再生状態での再生へ設定を切り替える。その後、ステップS140に移る。
【0072】
ステップS140では、CPU45は、曲データ100の再生が終了したか(言い換えれば、ステップS55でのMIDIデータの読み出しが曲データ100の最後のMIDIデータまで終了したか)否かを判定する。曲データ100の再生が終了するまでは判定が満たされず(ステップS140:NO)、上記ステップS50に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0073】
以上のようにして、ステップS50〜ステップS140の繰り返しが行われるとき、F=0の場合にはステップS70でのMIDIデータの削除(又はミュート)によりステップS80でマイナスワン再生状態での再生が行われ、ステップS85で採点が行われる。このとき、例えば演奏者の演奏が比較的上手であった場合には、ステップS95を経てステップS140へ移行して再びステップS50からの手順が繰り返され、マイナスワン再生状態が継続される。例えば演奏者の演奏があまり上手でなかった場合には、ステップS95を経てステップS100でマイナスワン状態の再生の中止を促す表示が行われる。
【0074】
このとき、演奏者がこの表示に従わずそのまま演奏を続けた場合はステップS105からステップS140へ移行して再びステップS50からの手順が繰り返され、マイナスワン再生状態でのあまり上手でない演奏が継続される結果、マイナスワン状態の再生の中止を促す表示が継続して(繰り返し)行われる。一方、上記表示に従う形で、演奏者が同室者に配慮してエレキギター4の演奏を停止したりエレキギター4を小さい音で弾くようにすると、ステップS105を経てステップS110でF=1となり、ステップS140から再びステップS50からの手順が繰り返されるとき、マイナスワン再生状態ではなく通常再生状態へ切り替えられる。
【0075】
このようにして通常再生状態へ切り替えられると、ステップS50からステップS55、ステップS60、ステップS65、ステップS75を経てステップS80で通常再生状態での再生が行われ、ステップS85で再び採点が行われる。ここで、前述のように演奏者の演奏があまり上手でない等により通常再生状態となったものであるが、その後演奏者が得意とする楽曲(あるいは演奏部分)である等により演奏が比較的上手であった場合には、ステップS90、ステップS115を経てステップS120でマイナスワン状態の再生を促す表示が行われる。
【0076】
このとき、演奏者がこの表示に従う形で同室者に配慮してマイナスワン状態への切り替えることを決意した場合には、上記比較的上手な演奏をそのまま続けることでステップS125を経てステップS130の判定が満たされ、ステップS135でF=0となり、ステップS140から再びステップS50からの手順が繰り返されるとき、通常再生状態ではなくマイナスワン再生状態へ切り替えられる。一方、上記表示にもかかわらずマイナスワン状態への切り替えを意図しない場合には、エレキギター4の演奏を停止したりエレキギター4を小さい音で弾くようにすると、ステップS125での採点結果が悪くなってステップS130からステップS140へ移行して再びステップS50からの手順が繰り返され、通常状態での再生が続行される。
【0077】
以上のようにして、演奏者の演奏が上手であるか下手であるか、及び、そのときの表示による勧告に従って再生状態の切り替えを行うか行わないか、に応じて、手順の流れが適宜に切り替えられながら、ステップS50〜ステップS140が繰り返される。そして、曲データ100の再生が終了すると、ステップS140の判定が満たされ(ステップS140:YES)ることで、このフローが終了する。
【0078】
なお、以上のフローにおいて、上記ステップS60、ステップS65、ステップS70の手順が各請求項に記載のマイナスワン切替手段として機能し、上記ステップS80の手順がカラオケ楽曲再生手段として機能し、上記ステップS85、ステップS125の手順が楽器演奏採点手段として機能する。また、上記ステップS90、ステップS95、ステップS100、ステップS105、ステップS110、ステップS115、ステップS120、ステップS130、及びステップS135の手順が、マイナスワン制御手段を構成する。また、ステップS15及びステップS20が、楽器識別手段として機能する。
【0079】
以上説明したように、本実施形態のカラオケ装置10は、カラオケ楽曲データをマイナスワン再生状態で再生する機能を備え、上記の例ではエレキギターの演奏パートを除いたマイナスワン再生状態で再生することができる。これにより、エレキギター4を演奏する演奏者(利用者)は、当該マイナスワン再生状態で再生されるカラオケ楽曲に合わせて、上記除かれたエレキギター演奏パートを自らのエレキギター4で演奏して、当該エレキギター4の練習を行ったり、カラオケ楽曲全体のアンサンブルを楽しむことができる。
【0080】
そして、カラオケ装置10は、楽器演奏の採点機能を備えている。演奏者のエレキギター4からの演奏信号が入力されると、そのエレキギター演奏の採点を行う。そして、その採点値が上記第1しきい値よりも低かった場合には、モニタ13,14において、マイナスワン再生状態での再生の中止を促す表示が行われる(図9のステップS100参照)。これにより、演奏者は、自分のエレキギター4の演奏が同室者に対し苦痛を与えているかもしれない可能性を認識することができる。
【0081】
そして、本実施形態では、演奏者が上記認識によりエレキギター4の演奏を中止する場合に備え、上記中止を促す表示が実行された以降の所定期間における演奏信号のレベルが上記第2しきい値よりも低い場合には、マイナスワン再生状態での再生から通常再生状態での再生へと設定を自動的に切り替える(ステップS110参照)。これにより、エレキギター4の演奏者は、前述したように、例えばエレキギター4の演奏を中止するかほとんど演奏しないようにすることで、自らの意思でマイナスワン再生状態によるエレキギター4の演奏を中止し、同室者に対する気遣いを実行することができる。
【0082】
以上のようにして、本実施形態においては、エレキギター4の演奏者に対し同室者への配慮を喚起しつつ、演奏者の自らの意思でマイナスワン演奏を中止するかどうかを決定させることができる。したがって、演奏者及び同室者双方の利便性を向上することができる。
【0083】
一方、上述したように、エレキギター4の演奏者の演奏が上手であれば、同室者にとってはその演奏は心地よく、ライブ感により高い娯楽性を得ることができる。したがって、可能な限りその演奏は継続するほうが好ましい。そこで、本実施形態では特に、通常再生状態で再生されるエレキギター4の演奏パートと楽音が重複するように演奏者が自らのエレキギター4の演奏を行っている場合において、エレキギター4の演奏の採点値が上記第2しきい値よりも高かった場合には、モニタ13,14において、マイナスワン再生状態での再生を促す表示が行われる(ステップS120参照)。これにより、演奏者に対し、自分のエレキギター4の演奏により同室者を喜ばすためには、マイナスワン再生状態としたほうがよいかもしれない、という認識を与えることができる。
【0084】
そして、演奏者が当該認識によりマイナスワン再生状態に切り替える場合に備え、本実施形態においては、上記マイナスワン再生状態での再生を促す表示が実行された以降の所定期間における演奏信号のレベルが上記第3しきい値以上である場合には、通常再生状態での再生からマイナスワン再生状態での再生へと設定を自動的に切り替える(ステップS135参照)。これにより、演奏者は、前述したように、例えばその上手なエレキギター4の演奏を継続して実行することで、自らの意思でマイナスワン再生状態による再生に切り替え、同室者に対するさらなる気遣いを実行することができる。
【0085】
また、本実施形態では特に、図9のステップS15及びステップS20の処理により、楽器演奏者の楽器(この例ではエレキギター4)が接続されたこと、及び、接続された当該楽器の種類(この例ではエレキギター4)が検出され、これによって、複数の楽器演奏パートのうち当該検出された楽器(この例ではエレキギター4)の演奏パートを除いたマイナスワン再生状態での再生へ設定が切り替えられる。
【0086】
これにより、前述したように、演奏者がエレキギター4の演奏を開始しようとして自らのエレキギター4を接続するだけで、カラオケ楽曲データの再生の設定が、当該エレキギターの演奏パートを除いたマイナスワン再生状態に自動的に切り替えられる(図9のステップS60及びステップS70参照)。したがって、エレキギター演奏者は、マイナスワン再生状態へ切り替えるための設定を手動で行う必要が無くなり、操作労力を低減することができる。
【0087】
なお、上述のように、マイナスワンの対象となる楽器(上記の例ではエレキギター4)を楽器接続ボード8への接続により自動的に検出するのにも限られない。すなわち、リモコン60により手動により当該楽器を設定するようにしてもよい。
【0088】
また、以上は、本発明の楽音演奏装置でマイナスワン再生状態のときに演奏パートが削除又はミュートされる楽器の例として、エレキギター4を例にとって説明したが、本発明はこれに限られず、エレキドラム、キーボード、エレキベースギターなどその他の楽器も可能である。
【0089】
なお、以上において、図3等の各図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0090】
また、図9に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0091】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0092】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0093】
4 エレキギター
10 カラオケ装置(楽音演奏装置)
13,14 モニタ(表示手段)
20 制御装置
45 CPU
51 MIDI音源ボード
78 データテーブル
82〜85 フォンジャック(演奏信号入力手段)
100 楽曲データ
110 MIDIデータ
P01〜P03 検知ポート
#1〜#4 MIDIデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の楽器演奏パートを含むカラオケ楽曲データを再生する通常再生状態と、
当該複数の楽器演奏パートのうち所望の1つの楽器演奏パートを除いて再生するマイナスワン再生状態と、を切り替えて設定可能なマイナスワン切替手段と、
前記マイナスワン切替手段での設定に応じ、前記マイナスワン再生状態又は前記通常再生状態で前記カラオケ楽曲データを再生するカラオケ楽曲再生手段と、
楽器演奏者の楽器の演奏により前記楽器から出力される演奏信号を入力する演奏信号入力手段と、
前記カラオケ楽曲再生手段による前記カラオケ楽曲データの再生時において前記演奏信号入力手段により入力された前記演奏信号に基づき、前記楽器の演奏の採点を行う楽器演奏採点手段と、
前記楽器演奏者に対し、前記マイナスワン再生状態での再生の継続又は中止を促す表示を実行可能な表示手段と、
前記カラオケ楽曲再生手段により前記マイナスワン再生状態で前記カラオケ楽曲データの再生が行われているとき、前記楽器演奏採点手段による採点値が所定の第1しきい値よりも低い場合には、前記マイナスワン再生状態での再生の中止を促す表示を行うように、前記表示手段を制御し、かつ、当該中止を促す表示が実行された以降の所定期間における、前記演奏信号入力手段により入力される前記演奏信号のレベルが、所定の第2しきい値よりも低い場合には、前記マイナスワン再生状態での再生から前記通常再生状態での再生へ設定を切り替えるように、前記マイナスワン切替手段を制御する、マイナスワン制御手段と、
を有することを特徴とする楽音演奏装置。
【請求項2】
請求項1記載の楽音演奏装置において、
前記マイナスワン制御手段は、
前記カラオケ楽曲再生手段により前記通常再生状態で前記カラオケ楽曲データの再生が行われているとき、前記楽器演奏採点手段による採点値が所定の第1しきい値以上である場合には、前記マイナスワン再生状態での再生を促す表示を行うように、前記表示手段を制御し、かつ、当該マイナスワン再生状態での再生を促す表示が実行された以降の所定期間における、前記楽器演奏採点手段による採点値が所定の第3しきい値以上である場合には、前記通常再生状態での再生から前記マイナスワン再生状態での再生へ設定を切り替えるように、前記マイナスワン切替手段を制御する、
ことを特徴とする楽音演奏装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の楽音演奏装置において、
前記演奏信号入力手段に前記楽器演奏者の前記楽器が接続されたこと、及び、接続された当該楽器の種類、を検出する楽器識別手段をさらに有し、
前記マイナスワン制御手段は、
前記楽器識別手段により前記楽器の接続及び当該楽器の種類が検出された場合に、複数の楽器演奏パートのうち当該検出された楽器の前記楽器演奏パートを除いたマイナスワン再生状態での再生へ設定を切り替えるように、前記マイナスワン切替手段を制御する
ことを特徴とする楽音演奏装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−44777(P2013−44777A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180322(P2011−180322)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】