概日リズム調整用キット及び概日リズムの調整方法
【課題】概日リズムを調整することができる概日リズム調整用キット等を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の概日リズム調整用キットは、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤と、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤とを備えたことを特徴としている。本発明の概日リズムの調整方法は、脊柱動物に対して、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤を昼に投与し、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤を夜に投与することを特徴としている。
【解決手段】本発明の概日リズム調整用キットは、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤と、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤とを備えたことを特徴としている。本発明の概日リズムの調整方法は、脊柱動物に対して、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤を昼に投与し、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤を夜に投与することを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概日リズム調整用キット及び概日リズムの調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の細胞に存在する「時計遺伝子」は、「概日リズム」と称される約24時間の周期性を生体において維持する機能を有していることが知られている。即ち、時計遺伝子は、地球の自転に伴って起こる明暗などの約24時間周期の環境サイクルに生体が適応できるように概日リズムを制御している。時計遺伝子としては、複数の種類が知られており、例えば、昼に発現が活性化されるPeriod、Cryや、夜に発現が活性化されるBmal1、Clockなどが知られている。
【0003】
また、時計遺伝子は、概日リズムを刻む生体現象を制御しており、該生体現象としては、睡眠及び覚醒、血圧及び体温の上下、副腎皮質ホルモン、メラトニン、若しくは成長ホルモン等の分泌量の変動等が知られている。
さらに、時計遺伝子は、全身の細胞の概日リズムを統括すべく、中枢組織としての視床下部の視交叉上核(suprachiasmatic nucleus : SCN)を制御するだけでなく、末梢組織の各細胞が概日リズムを刻むように末梢組織細胞をも直接的に制御する。
【0004】
近年、時計遺伝子が概日リズムを制御する機構が知られるようになり、該機構としては、例えば、上述したBmal1及びClockの遺伝子産物の2量体(BMAL/CLOCK複合体)が、E−box配列に結合してPeriod及びCryの転写を活性化し、該活性化によって増加したPERIOD及びCRYが複合体を形成して核内に移行し、BMAL/CLOCK複合体を抑制するため、Period及びCryの転写が減少するというフィードバック機構が知られている。そして、該フィードバック機構により、約24時間周期の概日リズムが生み出されることが知られている。従って、各時計遺伝子の発現を活性化又は抑制させ、各時計遺伝子の発現リズムの振幅をそれぞれ増大させることにより、本来のリズムを刻むように概日リズムを調整できると考えられている。
【0005】
従来、時計遺伝子の発現を活性化し得る時計遺伝子の発現活性化剤としては、具体的には、例えば、特定のアルキレンジオキシベンゼン誘導体を含むものが知られている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、斯かる時計遺伝子の発現活性化剤は、光照射によって活性化されたPeriod1遺伝子の発現を維持するものであり、直接的にPeriod1遺伝子の発現を活性化又は抑制できるものではない。また、斯かる時計遺伝子の発現活性化剤は、Period遺伝子に作用するものであり、概日リズムに関わる時計遺伝子のフィードバック機構において最も中心的な役割を担うとされているBmal1遺伝子の発現を直接的に活性化させ、Bmal1遺伝子の発現リズムの振幅を増大させるものではない。従って、概日リズムを必ずしも十分に調整できるものではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−335669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これに対して、時計遺伝子の発現が活性化されるときに該発現をより活性化させる発現活性化剤だけでは、時計遺伝子の発現リズムの振幅を必ずしも十分に増大させることができないことから、時計遺伝子の発現が抑制されるときに該発現をより抑制する抑制剤によって時計遺伝子の発現リズムの振幅をさらに増大させ、概日リズムを調整することが考えられる。
そこで、時計遺伝子の発現を活性化する活性化剤とその発現を抑制する抑制剤とを備え、概日リズムを十分に調整できる概日リズム調整用キットが要望されている。
【0009】
本発明は、上記要望点等に鑑み、概日リズムを調整することができる概日リズム調整用キットを提供することを課題とする。また、本発明は、概日リズムを調整することができる概日リズムの調整方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る概日リズム調整用キットは、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤と、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤とを備えたことを特徴としている。
【0011】
上記構成からなる概日リズム調整用キットによれば、前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤によって、時計遺伝子としてのBmal1遺伝子の発現を夜に活性化できる。また、前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤によって、Bmal1遺伝子の発現を昼に抑制できる。従って、Bmal1遺伝子の発現リズムの振幅を増大させることができる。また、Bmal1遺伝子の発現リズムの振幅を増大させることにより、Bmal1遺伝子以外の時計遺伝子の発現リズムの振幅が増大し得る。これにより、概日リズムを調整することができる。
【0012】
本発明に係る概日リズムの調整方法は、脊柱動物に対して、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤を昼に投与し、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤を夜に投与することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の概日リズム調整用キット及び概日リズムの調整方法は、概日リズムを調整することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1及び2の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図2】実施例3及び4の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図3】実施例5の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図4】実施例6〜8の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図5】実施例9〜11の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図6】実施例12〜14の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図7】実施例15の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図8】比較例1の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図9】実施例16の夜用Bmal1遺伝子抑制剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図10】実施例17〜20の夜用Bmal1遺伝子抑制剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図11】比較例2〜5の夜用Bmal1遺伝子抑制剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図12】比較例6〜8の夜用Bmal1遺伝子抑制剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る概日リズム調整用キットの実施形態について以下に説明する。
【0016】
本実施形態の概日リズム調整用キットは、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤と、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤とを備えたものである。
【0017】
前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤は、昼に投与することによりBmal1遺伝子の発現を活性化するものである。「昼」は、日の出から日の入りまでの時間帯である。
一方、前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤は、夜に投与することによりBmal1遺伝子の発現を抑制するものである。「夜」は、日の入りから日の出までの時間帯である。
【0018】
前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤は、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEのうちの少なくとも1種を含むものである。前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤は、概日リズムをより確実に調整できるという点で、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、及びビタミンEのうちの少なくとも2種を含むことが好ましく、3種を含むことがより好ましい。
【0019】
前記ビタミンB6は、ピリドキシン、ピリドキサール、若しくはピリドキサミン、又は、これらの塩若しくはリン酸エステルである。
前記塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
前記ビタミンB6としては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、ピリドキシン又はその塩が好ましく、ピリドキシン塩酸塩がより好ましい。
【0020】
前記ビタミンCは、L−アスコルビン酸又はその誘導体である。L−アスコルビン酸誘導体は、分子内にL−アスコルビン酸構造を有し、生体内においてL−アスコルビン酸を生成するものである。
【0021】
前記L−アスコルビン酸誘導体としては、水溶性L−アスコルビン酸誘導体、又は油溶性L−アスコルビン酸誘導体などが挙げられる。
【0022】
前記水溶性L−アスコルビン酸誘導体としては、リン酸L−アスコルビン酸ナトリウムやリン酸L−アスコルビン酸マグネシウムなどのリン酸L−アスコルビン酸塩、アスコルビン酸グルコシドなどが挙げられる。
前記油溶性L−アスコルビン酸誘導体としては、テトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル、ジパルミチン酸L−アスコルビル、ステアリン酸L−アスコルビル、L−アスコルビン酸−2リン酸−6パルミチン酸などが挙げられる。
【0023】
前記ビタミンCとしては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、L−アスコルビン酸誘導体が好ましく、油溶性L−アスコルビン酸誘導体がより好ましく、テトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル、又はジパルミチン酸L−アスコルビルがさらに好ましい。
【0024】
前記ビタミンDは、エルゴカルシフェロール、又は、コレカルシフェロールである。
【0025】
前記ビタミンDとしては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、エルゴカルシフェロールが好ましい。
【0026】
前記ビタミンEは、α−トコフェロール又はその誘導体である。α−トコフェロール誘導体は、分子内にα−トコフェロール構造を有し、生体内においてα−トコフェロールを生成するものである。なお、前記ビタミンEにおけるα−トコフェロールは、d体であってもl体であってもよい。
【0027】
前記α−トコフェロール誘導体としては、例えば、α−トコフェロール酢酸エステルなどのα−トコフェロールエステル誘導体が挙げられる。
【0028】
前記ビタミンEとしては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、α−トコフェロール誘導体が好ましく、α−トコフェロール酢酸エステルがより好ましい。
【0029】
前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤としては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、少なくともビタミンCを含むものが好ましい。同様の理由により、上述したビタミンのうち少なくとも2種を含むものが好ましい。また、少なくともビタミンCを含み且つ上述したビタミンのうち少なくとも2種を含むものがさらに好ましい。
【0030】
前記少なくとも2種のビタミンを含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤としては、具体的には例えば、ビタミンB6とビタミンCとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものが挙げられる。
また、例えば、ビタミンB6とビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとビタミンEとの混合物を含むもの、又は、ビタミンB6とビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものなどが挙げられる。
【0031】
具体的には、前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤としては、ビタミンB6とビタミンCとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものがより好ましく、ビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、又はビタミンCとビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものがさらに好ましい。
【0032】
より具体的には、前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤としては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、ピリドキシン又はその塩(ビタミンB6)と油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)との混合物を含むもの、油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とエルゴカルシフェロール(ビタミンD)との混合物を含むもの、油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むもの、ピリドキシン又はその塩(ビタミンB6)と油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むもの、又は、油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とエルゴカルシフェロール(ビタミンD)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むものがより好ましい。
【0033】
前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤においては、複数種のビタミンが含まれる場合、各ビタミンの含有量の比が、特に限定されず適宜設定されている。
【0034】
前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤は、少なくともビタミンAを含むものであり、概日リズムをより確実に調整できるという点で、好ましくは、ビタミンAと、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、又はビタミンEとを含むものが好ましい。
なお、前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤に含まれ得る前記ビタミンB6、前記ビタミンC、前記ビタミンD、又は前記ビタミンEは、上述したものと同様のものである。
【0035】
前記ビタミンAは、レチノール、レチナール、レチノイン酸、又は、これらの誘導体である。レチノール、レチナール、又はレチノイン酸の誘導体は、分子内にレチノール、レチナール、又はレチノイン酸の構造を有し、生体内においてレチノール、レチナール、又はレチノイン酸を生成するものである。レチノール誘導体としては、例えば、パルミチン酸レチノール、βカロテン等が挙げられる。
【0036】
前記ビタミンAとしては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、レチノール誘導体が好ましく、パルミチン酸レチノールがより好ましい。
【0037】
前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤としては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、ビタミンAとビタミンB6との混合物を含むもの、ビタミンAとビタミンCとの混合物を含むもの、ビタミンAとビタミンDとの混合物を含むもの、又は、ビタミンAとビタミンEとの混合物を含むものが好ましい。
【0038】
前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤としては、レチノール誘導体(ビタミンA)とピリドキシン又はその塩(ビタミンB6)との混合物を含むもの、レチノール誘導体(ビタミンA)と油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)との混合物を含むもの、レチノール誘導体(ビタミンA)とエルゴカルシフェロール(ビタミンD)との混合物を含むもの、又は、レチノール誘導体(ビタミンA)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むものがより好ましい。
【0039】
前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤においては、複数種のビタミンが含まれる場合、各ビタミンの含有量の比が、特に限定されず適宜設定されている。
【0040】
前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤及び前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤は、それぞれ必要に応じて、適宜、溶媒、界面活性剤等を含み得る。
また、前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤及び前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤は、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧料、食品などに配合されて使用され得る。
【0041】
次に、本発明に係る概日リズムの調整方法の実施形態について説明する。
【0042】
本実施形態の概日リズムの調整方法は、脊柱動物に対して、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤を昼に投与し、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤を夜に投与するものである。
【0043】
即ち、前記概日リズムの調整方法においては、脊柱動物に対して、日の出から日の入りまでの昼に前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤を投与し、日の入りから日の出までの夜に前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤を投与する。
前記概日リズムの調整方法においては、昼に前記活性化剤を投与することにより夜にBmal1遺伝子の発現を活性化させ、夜に前記抑制剤を投与することにより昼にBmal1遺伝子の発現を抑制させることができる。Bmal1遺伝子の発現を夜に活性化し昼に抑制することにより、Bmal1遺伝子の発現リズムの振幅を増大させることができる。該振幅が増大することにより、時計遺伝子としてのPeriod遺伝子やCry遺伝子の発現リズムの振幅が増大され得ることから、概日リズムを調整することができる。
【0044】
前記脊柱動物としては、夜にBmal1遺伝子の発現が活性化し昼にBmal1遺伝子の発現が抑制される動物であれば特に限定されず、例えば、魚類動物、は虫類動物、鳥類動物、哺乳類動物などが挙げられる。
前記哺乳類動物としては、例えば、昼行性哺乳類動物としてのヒト、チンパンジー、ローランドゴリラ、イエネコ、ニホンザル、ウサギ、ヤギ等が挙げられる。また、例えば、夜行性哺乳類動物としてのマウス、ラット等が挙げられる。
【0045】
前記概日リズムの調整方法においては、前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤を日の出から正午の間に投与することが好ましく、例えば、ヒトであれば起床時から4時間までの間に投与することが好ましい。
前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤を日の出から正午の間に投与することにより、投与から約12時間後にBmal1遺伝子の発現がより活性化され、日の入りから夜半においてBmal1遺伝子の発現がより確実に活性化されることから、概日リズムがより十分に調整されるという利点がある。
なお、正午は、太陽が南中又は北中するときであり、夜半は、正午の12時間後である。
【0046】
前記概日リズムの調整方法においては、前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤を日の入りから夜半の間に投与することが好ましく、例えば、ヒトであれば日の入りから就寝時までの間に投与することが好ましい。
前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤を日の入りから夜半の間に投与することにより、投与から約12時間後にBmal1遺伝子の発現がより抑制され、日の出から正午においてBmal1遺伝子の発現がより確実に抑制されることから、概日リズムがより十分に調整されるという利点がある。
【0047】
前記概日リズムの調整方法においては、例えば、生体外において又は生体において、前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤及び前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤により概日リズムを調整することができる。
【0048】
具体的には、生体外での概日リズムの調整方法としては、例えば、生体組織の細胞が所定期間培養された培地に対して、Bmal1遺伝子の発現が抑制されるときに前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤を添加し、さらに、Bmal1遺伝子の発現が活性化されるときに前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤を添加する方法を実施することができる。斯かる方法によれば、細胞におけるBmal1遺伝子の発現を24時間の間に交互に活性化及び抑制させることができ、細胞の概日リズムを調整することができる。
細胞におけるBmal1遺伝子発現の程度は、例えば、Bmal1遺伝子の下流にルシフェラーゼ遺伝子が連結した遺伝子を含む細胞を用いて、リアルタイムリポーターアッセイ等を採用し、ルシフェラーゼ発光量を測定することにより評価できる。
このような生体外での概日リズムの調整方法は、比較的簡便に実施できることから、例えば、後述する生体での概日リズムの調整方法における、Bmal1遺伝子の活性化剤又は抑制剤の最適濃度を決定する目的で予備実験的に実施することができる。
【0049】
一方、生体での概日リズムの調整方法においては、例えば、所定の体内組織に対して、昼に前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤を含有させる処置を施し、さらに、夜に前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤を含有させる処置を施す方法を実施することができる。
より具体的には、該方法においては、例えば、皮膚の表皮組織に前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤及び前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤をそれぞれ昼及び夜に、塗布などにより含有させる方法を実施することができる。
斯かる方法によれば、表皮組織などの組織の細胞におけるBmal1遺伝子の発現を夜に活性化し、昼に抑制して、Bmal1遺伝子の発現の振幅を増大させることにより、概日リズムを調整することができる。
【0050】
前記概日リズムの調整方法は、ヒトの生体又はヒト以外の脊柱動物の生体において実施することができる。好ましくは、ヒトの生体において、具体的には例えば美容上の目的で、非治療的に実施する。なお、ヒト以外の脊柱動物は、Bmal1遺伝子の発現が夜に活性化する動物であれば、必ずしも昼行性の動物でなくてもよい。
前記概日リズムの調整方法は、ヒトへの医療行為を除くものであり、具体的には例えば、ヒトの皮膚に塗布して皮膚細胞の概日リズム調整し、皮膚のくすみを抑制したり、皮膚のハリを維持したりする皮膚の美容方法に適用できる。
【0051】
前記概日リズムの調整方法においては、前記概日リズム調整用キットが備える昼用Bmal1遺伝子活性化剤及び夜用Bmal1遺伝子抑制剤を希釈などによって適宜適当な濃度に調整して使用することができる。希釈するための液としては、特に限定されるものではなく、例えば、水、生理食塩水、細胞培養用液体培地などを用いることができる。
【0052】
具体的には、前記発現活性化方法においては、上述したビタミン類の合計量の濃度が好ましくは0.0001〜10質量%となるように、より好ましくは0.001〜1質量%となるように希釈等して使用する。
【0053】
本発明の概日リズム調整用キット及び概日リズムの調整方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の実施形態に限定されるものではない。また、本発明では、一般の概日リズム調整用キット及び概日リズムの調整方法において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【実施例】
【0054】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
[事前準備]
まず、下記に示す油溶性のビタミン類のそれぞれを予めエタノールに溶かして3質量%濃度のエタノール溶液を調製しておいた。
ビタミンC:ジパルミチン酸L−アスコルビル(L−アスコルビン酸誘導体)
ビタミンC:テトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル
(L−アスコルビン酸誘導体)
ビタミンD:エルゴカルシフェロール
ビタミンE:酢酸dl−α−トコフェロール(α−トコフェロール誘導体)
ビタミンA:パルミチン酸レチノール
一方、ビタミンB6としてのピリドキシン塩酸塩を純水に溶解させて3質量%の水溶液を調製しておいた。
【0056】
<昼用Bmal1遺伝子活性化剤の製造>
(実施例1)
以下のようにして、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
即ち、10%牛胎児血清(Gibco)を添加したDulbecco’s modification of Eagle’s medium (Gibco)培地(以下、「10%牛胎仔血清含有DMEM」という)を希釈用溶媒として用い、上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液を0.1質量%濃度に希釈し、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0057】
(実施例2)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度の昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0058】
(実施例3)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のテトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度の昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0059】
(実施例4)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度の昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0060】
(実施例5)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度の昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0061】
(実施例6)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0062】
(実施例7)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0063】
(実施例8)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0064】
(実施例9)
上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、エルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0065】
(実施例10)
上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0066】
(実施例11)
上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0067】
(実施例12)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0068】
(実施例13)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0069】
(実施例14)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0070】
(実施例15)
上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0071】
(比較例1)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度の比較用の昼用Bmal1遺伝子活性化剤を調製した。
【0072】
<夜用Bmal1遺伝子抑制剤の製造>
一方、上述のごとく事前準備したビタミン類の溶液を用いて、それぞれの夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0073】
(実施例16)
上記の10%牛胎仔血清含有DMEMを希釈用溶媒として用い、上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液を0.1質量%濃度に希釈し、夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0074】
(実施例17)
上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液と、上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0075】
(実施例18)
上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液と、上記のジパルミチン酸アルコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0076】
(実施例19)
上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0077】
(実施例20)
上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液と、上記の酢酸α−トコフェロール(DL混合体 ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0078】
(比較例2)
パルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液に代えて、上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液を用いた点以外は、実施例16と同様にして、0.1質量%濃度の比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0079】
(比較例3)
パルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液に代えて、上記のジパルミチン酸アルコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例16と同様にして、0.1質量%濃度の比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0080】
(比較例4)
パルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液に代えて、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例16と同様にして、0.1質量%濃度の比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0081】
(比較例5)
パルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液に代えて、上記の酢酸α−トコフェロール(DL混合体 ビタミンE)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例16と同様にして、0.1質量%濃度の比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0082】
(比較例6)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0083】
(比較例7)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記の酢酸α−トコフェロール(DL混合体 ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0084】
(比較例8)
上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、上記の酢酸α−トコフェロール(DL混合体 ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0085】
<Bmal1遺伝子の発現活性化能又は発現抑制能の評価>
上記した各実施例及び各比較例の昼用Bmal1遺伝子活性化剤及び夜用Bmal1遺伝子抑制剤のそれぞれについて、下記のリアルタイムリポーターアッセイにより、時計遺伝子としてのBmal1遺伝子の発現活性化性能又は発現抑制能を評価した。
【0086】
リアルタイムリポーターアッセイの詳細
マウスの時計遺伝子Bmal1プロモーター領域の下流にルシフェラーゼ遺伝子が連結した遺伝子を安定的に発現するマウス由来繊維芽細胞NIH3T3(以下、「NIH3T3−Bmal−Luc」という)を、35mm培養ディシュに約2.5×105個 播種した。その後、上述した10%牛胎仔血清含有DMEM中にて2日間培養を行った。
そして、時計遺伝子Bmal1を同調させるべく培地中にデキサメタゾン(Sigma社製)を加え、100nM濃度デキサメタゾン/DMEMにおいて2時間培養した。その後、培地を、0.1mM濃度のD−Luciferin(TOYOBO社製)を含む10%牛胎仔血清含有DMEMに交換し、リアルタイムリポーターアッセイ用発光測定装置(製品名「Kronos Dio AB−2550」 ATTO社製)により、各発現活性化剤を用いたものについて遺伝子の発現を測定した。測定条件は、測定時間1分、計測間隔10分とした。
詳しくは、昼用Bmal1遺伝子活性化剤については、計測約24時間後のルシフェラーゼ発光量が下限ピークをむかえたタイミングで、各発現活性化剤を所定濃度となるように各ディシュに添加し、その後、ルシフェラーゼ発光量の経時変化を測定し、各活性化剤のBmal1遺伝子の発現活性化性能を調べた。
一方、夜用Bmal1遺伝子抑制剤については、計測約36時間後のルシフェラーゼ発光量が上限ピークをむかえたタイミングで、各発現活性化剤を所定濃度となるように各ディシュに添加し、その後、ルシフェラーゼ発光量の経時変化を測定し、各抑制剤のBmal1遺伝子の発現抑制能を調べた。
陰性対照(コントロール)においては、各活性化剤又は抑制剤を添加しない点以外は、上記と同様の操作を行った。
【0087】
上記測定においては、各実施例及び各比較例において製造した活性化剤又は抑制剤を上述した10%牛胎仔血清含有DMEMにより希釈して使用した。また、上記測定における各剤の濃度は、細胞毒性が認められない範囲に設定した。詳しくは、下記の通りに濃度を設定した。
ビタミン類:各0.005質量%(単独の場合は、0.010質量%濃度あり)
なお、実施例2の昼用Bmal1遺伝子活性化剤(ビタミンC[ジパルミチン酸L−アスコルビル]0.010%濃度)においては、細胞毒性が認められたため、上記の評価を実施できなかった。
【0088】
昼用Bmal1遺伝子活性化剤について、実施例1〜15及び比較例1の評価結果をグラフに表したものを図1〜図8に示す。なお、図1〜図8において、縦軸の値は、陰性対照(コントロール)におけるルシフェラーゼ発光量の最大値を1としたときのルシフェラーゼ発光量の相対値を示している。
【0089】
さらに、陰性対照(コントロール)のルシフェラーゼ発光量の最大値を1としたとき、各実施例及び比較例におけるルシフェラーゼ発光量の最大値を相対値で表した一覧表を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
また、夜用Bmal1遺伝子抑制剤について、実施例16〜20、及び比較例2〜8の評価結果をグラフに表したものを図9〜図12に示す。なお、図9〜図12において、縦軸の値は、陰性対照(コントロール)におけるルシフェラーゼ発光量の最小値を1としたときのフェラーゼ発光量の相対値を示している。
【0092】
さらに、陰性対照(コントロール)のルシフェラーゼ発光量の最小値を1としたとき、各実施例及び比較例におけるルシフェラーゼ発光量の最小値を相対値で表した一覧表を表2に示す。
【0093】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の概日リズム調整用キットは、概日リズムを調整するために好適に使用できる。具体的には、例えば、皮膚表皮細胞などの外胚葉性の細胞、肝臓細胞などの内胚葉性の細胞、心臓細胞などの中胚葉性の細胞における概日リズムを調整するために好適に使用できる。より具体的には、例えば、皮膚外用剤に配合されて皮膚細胞の概日リズムを調整するために使用される。
概日リズムを調製することにより、加齢、時差ぼけ、若しくは交代勤務などによる概日リズムの乱れ、又は、睡眠相後退症候群や非24時間睡眠覚醒症候群といった睡眠障害を改善できることが期待できる。また、皮膚細胞の概日リズムを調整することにより、具体的には例えば、皮膚のハリを維持する、皮膚のくすみを抑制する、表皮におけるターンオーバーを正常化する、皮膚のシワを抑制する、又は、ニキビや目の下のくまを抑制すること等が期待できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概日リズム調整用キット及び概日リズムの調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の細胞に存在する「時計遺伝子」は、「概日リズム」と称される約24時間の周期性を生体において維持する機能を有していることが知られている。即ち、時計遺伝子は、地球の自転に伴って起こる明暗などの約24時間周期の環境サイクルに生体が適応できるように概日リズムを制御している。時計遺伝子としては、複数の種類が知られており、例えば、昼に発現が活性化されるPeriod、Cryや、夜に発現が活性化されるBmal1、Clockなどが知られている。
【0003】
また、時計遺伝子は、概日リズムを刻む生体現象を制御しており、該生体現象としては、睡眠及び覚醒、血圧及び体温の上下、副腎皮質ホルモン、メラトニン、若しくは成長ホルモン等の分泌量の変動等が知られている。
さらに、時計遺伝子は、全身の細胞の概日リズムを統括すべく、中枢組織としての視床下部の視交叉上核(suprachiasmatic nucleus : SCN)を制御するだけでなく、末梢組織の各細胞が概日リズムを刻むように末梢組織細胞をも直接的に制御する。
【0004】
近年、時計遺伝子が概日リズムを制御する機構が知られるようになり、該機構としては、例えば、上述したBmal1及びClockの遺伝子産物の2量体(BMAL/CLOCK複合体)が、E−box配列に結合してPeriod及びCryの転写を活性化し、該活性化によって増加したPERIOD及びCRYが複合体を形成して核内に移行し、BMAL/CLOCK複合体を抑制するため、Period及びCryの転写が減少するというフィードバック機構が知られている。そして、該フィードバック機構により、約24時間周期の概日リズムが生み出されることが知られている。従って、各時計遺伝子の発現を活性化又は抑制させ、各時計遺伝子の発現リズムの振幅をそれぞれ増大させることにより、本来のリズムを刻むように概日リズムを調整できると考えられている。
【0005】
従来、時計遺伝子の発現を活性化し得る時計遺伝子の発現活性化剤としては、具体的には、例えば、特定のアルキレンジオキシベンゼン誘導体を含むものが知られている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、斯かる時計遺伝子の発現活性化剤は、光照射によって活性化されたPeriod1遺伝子の発現を維持するものであり、直接的にPeriod1遺伝子の発現を活性化又は抑制できるものではない。また、斯かる時計遺伝子の発現活性化剤は、Period遺伝子に作用するものであり、概日リズムに関わる時計遺伝子のフィードバック機構において最も中心的な役割を担うとされているBmal1遺伝子の発現を直接的に活性化させ、Bmal1遺伝子の発現リズムの振幅を増大させるものではない。従って、概日リズムを必ずしも十分に調整できるものではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−335669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これに対して、時計遺伝子の発現が活性化されるときに該発現をより活性化させる発現活性化剤だけでは、時計遺伝子の発現リズムの振幅を必ずしも十分に増大させることができないことから、時計遺伝子の発現が抑制されるときに該発現をより抑制する抑制剤によって時計遺伝子の発現リズムの振幅をさらに増大させ、概日リズムを調整することが考えられる。
そこで、時計遺伝子の発現を活性化する活性化剤とその発現を抑制する抑制剤とを備え、概日リズムを十分に調整できる概日リズム調整用キットが要望されている。
【0009】
本発明は、上記要望点等に鑑み、概日リズムを調整することができる概日リズム調整用キットを提供することを課題とする。また、本発明は、概日リズムを調整することができる概日リズムの調整方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る概日リズム調整用キットは、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤と、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤とを備えたことを特徴としている。
【0011】
上記構成からなる概日リズム調整用キットによれば、前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤によって、時計遺伝子としてのBmal1遺伝子の発現を夜に活性化できる。また、前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤によって、Bmal1遺伝子の発現を昼に抑制できる。従って、Bmal1遺伝子の発現リズムの振幅を増大させることができる。また、Bmal1遺伝子の発現リズムの振幅を増大させることにより、Bmal1遺伝子以外の時計遺伝子の発現リズムの振幅が増大し得る。これにより、概日リズムを調整することができる。
【0012】
本発明に係る概日リズムの調整方法は、脊柱動物に対して、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤を昼に投与し、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤を夜に投与することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の概日リズム調整用キット及び概日リズムの調整方法は、概日リズムを調整することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1及び2の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図2】実施例3及び4の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図3】実施例5の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図4】実施例6〜8の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図5】実施例9〜11の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図6】実施例12〜14の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図7】実施例15の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図8】比較例1の昼用Bmal1遺伝子活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図9】実施例16の夜用Bmal1遺伝子抑制剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図10】実施例17〜20の夜用Bmal1遺伝子抑制剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図11】比較例2〜5の夜用Bmal1遺伝子抑制剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図12】比較例6〜8の夜用Bmal1遺伝子抑制剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る概日リズム調整用キットの実施形態について以下に説明する。
【0016】
本実施形態の概日リズム調整用キットは、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤と、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤とを備えたものである。
【0017】
前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤は、昼に投与することによりBmal1遺伝子の発現を活性化するものである。「昼」は、日の出から日の入りまでの時間帯である。
一方、前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤は、夜に投与することによりBmal1遺伝子の発現を抑制するものである。「夜」は、日の入りから日の出までの時間帯である。
【0018】
前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤は、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEのうちの少なくとも1種を含むものである。前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤は、概日リズムをより確実に調整できるという点で、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、及びビタミンEのうちの少なくとも2種を含むことが好ましく、3種を含むことがより好ましい。
【0019】
前記ビタミンB6は、ピリドキシン、ピリドキサール、若しくはピリドキサミン、又は、これらの塩若しくはリン酸エステルである。
前記塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
前記ビタミンB6としては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、ピリドキシン又はその塩が好ましく、ピリドキシン塩酸塩がより好ましい。
【0020】
前記ビタミンCは、L−アスコルビン酸又はその誘導体である。L−アスコルビン酸誘導体は、分子内にL−アスコルビン酸構造を有し、生体内においてL−アスコルビン酸を生成するものである。
【0021】
前記L−アスコルビン酸誘導体としては、水溶性L−アスコルビン酸誘導体、又は油溶性L−アスコルビン酸誘導体などが挙げられる。
【0022】
前記水溶性L−アスコルビン酸誘導体としては、リン酸L−アスコルビン酸ナトリウムやリン酸L−アスコルビン酸マグネシウムなどのリン酸L−アスコルビン酸塩、アスコルビン酸グルコシドなどが挙げられる。
前記油溶性L−アスコルビン酸誘導体としては、テトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル、ジパルミチン酸L−アスコルビル、ステアリン酸L−アスコルビル、L−アスコルビン酸−2リン酸−6パルミチン酸などが挙げられる。
【0023】
前記ビタミンCとしては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、L−アスコルビン酸誘導体が好ましく、油溶性L−アスコルビン酸誘導体がより好ましく、テトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル、又はジパルミチン酸L−アスコルビルがさらに好ましい。
【0024】
前記ビタミンDは、エルゴカルシフェロール、又は、コレカルシフェロールである。
【0025】
前記ビタミンDとしては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、エルゴカルシフェロールが好ましい。
【0026】
前記ビタミンEは、α−トコフェロール又はその誘導体である。α−トコフェロール誘導体は、分子内にα−トコフェロール構造を有し、生体内においてα−トコフェロールを生成するものである。なお、前記ビタミンEにおけるα−トコフェロールは、d体であってもl体であってもよい。
【0027】
前記α−トコフェロール誘導体としては、例えば、α−トコフェロール酢酸エステルなどのα−トコフェロールエステル誘導体が挙げられる。
【0028】
前記ビタミンEとしては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、α−トコフェロール誘導体が好ましく、α−トコフェロール酢酸エステルがより好ましい。
【0029】
前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤としては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、少なくともビタミンCを含むものが好ましい。同様の理由により、上述したビタミンのうち少なくとも2種を含むものが好ましい。また、少なくともビタミンCを含み且つ上述したビタミンのうち少なくとも2種を含むものがさらに好ましい。
【0030】
前記少なくとも2種のビタミンを含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤としては、具体的には例えば、ビタミンB6とビタミンCとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものが挙げられる。
また、例えば、ビタミンB6とビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとビタミンEとの混合物を含むもの、又は、ビタミンB6とビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものなどが挙げられる。
【0031】
具体的には、前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤としては、ビタミンB6とビタミンCとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものがより好ましく、ビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、又はビタミンCとビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものがさらに好ましい。
【0032】
より具体的には、前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤としては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、ピリドキシン又はその塩(ビタミンB6)と油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)との混合物を含むもの、油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とエルゴカルシフェロール(ビタミンD)との混合物を含むもの、油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むもの、ピリドキシン又はその塩(ビタミンB6)と油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むもの、又は、油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とエルゴカルシフェロール(ビタミンD)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むものがより好ましい。
【0033】
前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤においては、複数種のビタミンが含まれる場合、各ビタミンの含有量の比が、特に限定されず適宜設定されている。
【0034】
前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤は、少なくともビタミンAを含むものであり、概日リズムをより確実に調整できるという点で、好ましくは、ビタミンAと、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、又はビタミンEとを含むものが好ましい。
なお、前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤に含まれ得る前記ビタミンB6、前記ビタミンC、前記ビタミンD、又は前記ビタミンEは、上述したものと同様のものである。
【0035】
前記ビタミンAは、レチノール、レチナール、レチノイン酸、又は、これらの誘導体である。レチノール、レチナール、又はレチノイン酸の誘導体は、分子内にレチノール、レチナール、又はレチノイン酸の構造を有し、生体内においてレチノール、レチナール、又はレチノイン酸を生成するものである。レチノール誘導体としては、例えば、パルミチン酸レチノール、βカロテン等が挙げられる。
【0036】
前記ビタミンAとしては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、レチノール誘導体が好ましく、パルミチン酸レチノールがより好ましい。
【0037】
前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤としては、概日リズムをより確実に調整できるという点で、ビタミンAとビタミンB6との混合物を含むもの、ビタミンAとビタミンCとの混合物を含むもの、ビタミンAとビタミンDとの混合物を含むもの、又は、ビタミンAとビタミンEとの混合物を含むものが好ましい。
【0038】
前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤としては、レチノール誘導体(ビタミンA)とピリドキシン又はその塩(ビタミンB6)との混合物を含むもの、レチノール誘導体(ビタミンA)と油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)との混合物を含むもの、レチノール誘導体(ビタミンA)とエルゴカルシフェロール(ビタミンD)との混合物を含むもの、又は、レチノール誘導体(ビタミンA)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むものがより好ましい。
【0039】
前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤においては、複数種のビタミンが含まれる場合、各ビタミンの含有量の比が、特に限定されず適宜設定されている。
【0040】
前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤及び前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤は、それぞれ必要に応じて、適宜、溶媒、界面活性剤等を含み得る。
また、前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤及び前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤は、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧料、食品などに配合されて使用され得る。
【0041】
次に、本発明に係る概日リズムの調整方法の実施形態について説明する。
【0042】
本実施形態の概日リズムの調整方法は、脊柱動物に対して、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤を昼に投与し、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤を夜に投与するものである。
【0043】
即ち、前記概日リズムの調整方法においては、脊柱動物に対して、日の出から日の入りまでの昼に前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤を投与し、日の入りから日の出までの夜に前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤を投与する。
前記概日リズムの調整方法においては、昼に前記活性化剤を投与することにより夜にBmal1遺伝子の発現を活性化させ、夜に前記抑制剤を投与することにより昼にBmal1遺伝子の発現を抑制させることができる。Bmal1遺伝子の発現を夜に活性化し昼に抑制することにより、Bmal1遺伝子の発現リズムの振幅を増大させることができる。該振幅が増大することにより、時計遺伝子としてのPeriod遺伝子やCry遺伝子の発現リズムの振幅が増大され得ることから、概日リズムを調整することができる。
【0044】
前記脊柱動物としては、夜にBmal1遺伝子の発現が活性化し昼にBmal1遺伝子の発現が抑制される動物であれば特に限定されず、例えば、魚類動物、は虫類動物、鳥類動物、哺乳類動物などが挙げられる。
前記哺乳類動物としては、例えば、昼行性哺乳類動物としてのヒト、チンパンジー、ローランドゴリラ、イエネコ、ニホンザル、ウサギ、ヤギ等が挙げられる。また、例えば、夜行性哺乳類動物としてのマウス、ラット等が挙げられる。
【0045】
前記概日リズムの調整方法においては、前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤を日の出から正午の間に投与することが好ましく、例えば、ヒトであれば起床時から4時間までの間に投与することが好ましい。
前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤を日の出から正午の間に投与することにより、投与から約12時間後にBmal1遺伝子の発現がより活性化され、日の入りから夜半においてBmal1遺伝子の発現がより確実に活性化されることから、概日リズムがより十分に調整されるという利点がある。
なお、正午は、太陽が南中又は北中するときであり、夜半は、正午の12時間後である。
【0046】
前記概日リズムの調整方法においては、前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤を日の入りから夜半の間に投与することが好ましく、例えば、ヒトであれば日の入りから就寝時までの間に投与することが好ましい。
前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤を日の入りから夜半の間に投与することにより、投与から約12時間後にBmal1遺伝子の発現がより抑制され、日の出から正午においてBmal1遺伝子の発現がより確実に抑制されることから、概日リズムがより十分に調整されるという利点がある。
【0047】
前記概日リズムの調整方法においては、例えば、生体外において又は生体において、前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤及び前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤により概日リズムを調整することができる。
【0048】
具体的には、生体外での概日リズムの調整方法としては、例えば、生体組織の細胞が所定期間培養された培地に対して、Bmal1遺伝子の発現が抑制されるときに前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤を添加し、さらに、Bmal1遺伝子の発現が活性化されるときに前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤を添加する方法を実施することができる。斯かる方法によれば、細胞におけるBmal1遺伝子の発現を24時間の間に交互に活性化及び抑制させることができ、細胞の概日リズムを調整することができる。
細胞におけるBmal1遺伝子発現の程度は、例えば、Bmal1遺伝子の下流にルシフェラーゼ遺伝子が連結した遺伝子を含む細胞を用いて、リアルタイムリポーターアッセイ等を採用し、ルシフェラーゼ発光量を測定することにより評価できる。
このような生体外での概日リズムの調整方法は、比較的簡便に実施できることから、例えば、後述する生体での概日リズムの調整方法における、Bmal1遺伝子の活性化剤又は抑制剤の最適濃度を決定する目的で予備実験的に実施することができる。
【0049】
一方、生体での概日リズムの調整方法においては、例えば、所定の体内組織に対して、昼に前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤を含有させる処置を施し、さらに、夜に前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤を含有させる処置を施す方法を実施することができる。
より具体的には、該方法においては、例えば、皮膚の表皮組織に前記昼用Bmal1遺伝子活性化剤及び前記夜用Bmal1遺伝子抑制剤をそれぞれ昼及び夜に、塗布などにより含有させる方法を実施することができる。
斯かる方法によれば、表皮組織などの組織の細胞におけるBmal1遺伝子の発現を夜に活性化し、昼に抑制して、Bmal1遺伝子の発現の振幅を増大させることにより、概日リズムを調整することができる。
【0050】
前記概日リズムの調整方法は、ヒトの生体又はヒト以外の脊柱動物の生体において実施することができる。好ましくは、ヒトの生体において、具体的には例えば美容上の目的で、非治療的に実施する。なお、ヒト以外の脊柱動物は、Bmal1遺伝子の発現が夜に活性化する動物であれば、必ずしも昼行性の動物でなくてもよい。
前記概日リズムの調整方法は、ヒトへの医療行為を除くものであり、具体的には例えば、ヒトの皮膚に塗布して皮膚細胞の概日リズム調整し、皮膚のくすみを抑制したり、皮膚のハリを維持したりする皮膚の美容方法に適用できる。
【0051】
前記概日リズムの調整方法においては、前記概日リズム調整用キットが備える昼用Bmal1遺伝子活性化剤及び夜用Bmal1遺伝子抑制剤を希釈などによって適宜適当な濃度に調整して使用することができる。希釈するための液としては、特に限定されるものではなく、例えば、水、生理食塩水、細胞培養用液体培地などを用いることができる。
【0052】
具体的には、前記発現活性化方法においては、上述したビタミン類の合計量の濃度が好ましくは0.0001〜10質量%となるように、より好ましくは0.001〜1質量%となるように希釈等して使用する。
【0053】
本発明の概日リズム調整用キット及び概日リズムの調整方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の実施形態に限定されるものではない。また、本発明では、一般の概日リズム調整用キット及び概日リズムの調整方法において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【実施例】
【0054】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
[事前準備]
まず、下記に示す油溶性のビタミン類のそれぞれを予めエタノールに溶かして3質量%濃度のエタノール溶液を調製しておいた。
ビタミンC:ジパルミチン酸L−アスコルビル(L−アスコルビン酸誘導体)
ビタミンC:テトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル
(L−アスコルビン酸誘導体)
ビタミンD:エルゴカルシフェロール
ビタミンE:酢酸dl−α−トコフェロール(α−トコフェロール誘導体)
ビタミンA:パルミチン酸レチノール
一方、ビタミンB6としてのピリドキシン塩酸塩を純水に溶解させて3質量%の水溶液を調製しておいた。
【0056】
<昼用Bmal1遺伝子活性化剤の製造>
(実施例1)
以下のようにして、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
即ち、10%牛胎児血清(Gibco)を添加したDulbecco’s modification of Eagle’s medium (Gibco)培地(以下、「10%牛胎仔血清含有DMEM」という)を希釈用溶媒として用い、上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液を0.1質量%濃度に希釈し、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0057】
(実施例2)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度の昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0058】
(実施例3)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のテトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度の昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0059】
(実施例4)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度の昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0060】
(実施例5)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度の昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0061】
(実施例6)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0062】
(実施例7)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0063】
(実施例8)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0064】
(実施例9)
上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、エルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0065】
(実施例10)
上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0066】
(実施例11)
上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0067】
(実施例12)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0068】
(実施例13)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0069】
(実施例14)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0070】
(実施例15)
上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、昼用Bmal1遺伝子活性化剤を製造した。
【0071】
(比較例1)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度の比較用の昼用Bmal1遺伝子活性化剤を調製した。
【0072】
<夜用Bmal1遺伝子抑制剤の製造>
一方、上述のごとく事前準備したビタミン類の溶液を用いて、それぞれの夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0073】
(実施例16)
上記の10%牛胎仔血清含有DMEMを希釈用溶媒として用い、上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液を0.1質量%濃度に希釈し、夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0074】
(実施例17)
上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液と、上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0075】
(実施例18)
上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液と、上記のジパルミチン酸アルコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0076】
(実施例19)
上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0077】
(実施例20)
上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液と、上記の酢酸α−トコフェロール(DL混合体 ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0078】
(比較例2)
パルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液に代えて、上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液を用いた点以外は、実施例16と同様にして、0.1質量%濃度の比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0079】
(比較例3)
パルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液に代えて、上記のジパルミチン酸アルコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例16と同様にして、0.1質量%濃度の比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0080】
(比較例4)
パルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液に代えて、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例16と同様にして、0.1質量%濃度の比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0081】
(比較例5)
パルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液に代えて、上記の酢酸α−トコフェロール(DL混合体 ビタミンE)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例16と同様にして、0.1質量%濃度の比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0082】
(比較例6)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0083】
(比較例7)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記の酢酸α−トコフェロール(DL混合体 ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0084】
(比較例8)
上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、上記の酢酸α−トコフェロール(DL混合体 ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の重量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例16と同様に希釈することにより、比較用の夜用Bmal1遺伝子抑制剤を製造した。
【0085】
<Bmal1遺伝子の発現活性化能又は発現抑制能の評価>
上記した各実施例及び各比較例の昼用Bmal1遺伝子活性化剤及び夜用Bmal1遺伝子抑制剤のそれぞれについて、下記のリアルタイムリポーターアッセイにより、時計遺伝子としてのBmal1遺伝子の発現活性化性能又は発現抑制能を評価した。
【0086】
リアルタイムリポーターアッセイの詳細
マウスの時計遺伝子Bmal1プロモーター領域の下流にルシフェラーゼ遺伝子が連結した遺伝子を安定的に発現するマウス由来繊維芽細胞NIH3T3(以下、「NIH3T3−Bmal−Luc」という)を、35mm培養ディシュに約2.5×105個 播種した。その後、上述した10%牛胎仔血清含有DMEM中にて2日間培養を行った。
そして、時計遺伝子Bmal1を同調させるべく培地中にデキサメタゾン(Sigma社製)を加え、100nM濃度デキサメタゾン/DMEMにおいて2時間培養した。その後、培地を、0.1mM濃度のD−Luciferin(TOYOBO社製)を含む10%牛胎仔血清含有DMEMに交換し、リアルタイムリポーターアッセイ用発光測定装置(製品名「Kronos Dio AB−2550」 ATTO社製)により、各発現活性化剤を用いたものについて遺伝子の発現を測定した。測定条件は、測定時間1分、計測間隔10分とした。
詳しくは、昼用Bmal1遺伝子活性化剤については、計測約24時間後のルシフェラーゼ発光量が下限ピークをむかえたタイミングで、各発現活性化剤を所定濃度となるように各ディシュに添加し、その後、ルシフェラーゼ発光量の経時変化を測定し、各活性化剤のBmal1遺伝子の発現活性化性能を調べた。
一方、夜用Bmal1遺伝子抑制剤については、計測約36時間後のルシフェラーゼ発光量が上限ピークをむかえたタイミングで、各発現活性化剤を所定濃度となるように各ディシュに添加し、その後、ルシフェラーゼ発光量の経時変化を測定し、各抑制剤のBmal1遺伝子の発現抑制能を調べた。
陰性対照(コントロール)においては、各活性化剤又は抑制剤を添加しない点以外は、上記と同様の操作を行った。
【0087】
上記測定においては、各実施例及び各比較例において製造した活性化剤又は抑制剤を上述した10%牛胎仔血清含有DMEMにより希釈して使用した。また、上記測定における各剤の濃度は、細胞毒性が認められない範囲に設定した。詳しくは、下記の通りに濃度を設定した。
ビタミン類:各0.005質量%(単独の場合は、0.010質量%濃度あり)
なお、実施例2の昼用Bmal1遺伝子活性化剤(ビタミンC[ジパルミチン酸L−アスコルビル]0.010%濃度)においては、細胞毒性が認められたため、上記の評価を実施できなかった。
【0088】
昼用Bmal1遺伝子活性化剤について、実施例1〜15及び比較例1の評価結果をグラフに表したものを図1〜図8に示す。なお、図1〜図8において、縦軸の値は、陰性対照(コントロール)におけるルシフェラーゼ発光量の最大値を1としたときのルシフェラーゼ発光量の相対値を示している。
【0089】
さらに、陰性対照(コントロール)のルシフェラーゼ発光量の最大値を1としたとき、各実施例及び比較例におけるルシフェラーゼ発光量の最大値を相対値で表した一覧表を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
また、夜用Bmal1遺伝子抑制剤について、実施例16〜20、及び比較例2〜8の評価結果をグラフに表したものを図9〜図12に示す。なお、図9〜図12において、縦軸の値は、陰性対照(コントロール)におけるルシフェラーゼ発光量の最小値を1としたときのフェラーゼ発光量の相対値を示している。
【0092】
さらに、陰性対照(コントロール)のルシフェラーゼ発光量の最小値を1としたとき、各実施例及び比較例におけるルシフェラーゼ発光量の最小値を相対値で表した一覧表を表2に示す。
【0093】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の概日リズム調整用キットは、概日リズムを調整するために好適に使用できる。具体的には、例えば、皮膚表皮細胞などの外胚葉性の細胞、肝臓細胞などの内胚葉性の細胞、心臓細胞などの中胚葉性の細胞における概日リズムを調整するために好適に使用できる。より具体的には、例えば、皮膚外用剤に配合されて皮膚細胞の概日リズムを調整するために使用される。
概日リズムを調製することにより、加齢、時差ぼけ、若しくは交代勤務などによる概日リズムの乱れ、又は、睡眠相後退症候群や非24時間睡眠覚醒症候群といった睡眠障害を改善できることが期待できる。また、皮膚細胞の概日リズムを調整することにより、具体的には例えば、皮膚のハリを維持する、皮膚のくすみを抑制する、表皮におけるターンオーバーを正常化する、皮膚のシワを抑制する、又は、ニキビや目の下のくまを抑制すること等が期待できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤と、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤とを備えた概日リズム調整用キット。
【請求項2】
脊柱動物に対して、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤を昼に投与し、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤を夜に投与する概日リズムの調整方法。
【請求項1】
ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤と、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤とを備えた概日リズム調整用キット。
【請求項2】
脊柱動物に対して、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも1種を含む昼用Bmal1遺伝子活性化剤を昼に投与し、少なくともビタミンAを含む夜用Bmal1遺伝子抑制剤を夜に投与する概日リズムの調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−56867(P2013−56867A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197388(P2011−197388)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000112266)ピアス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000112266)ピアス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】
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