概日リズム調整組成物
【課題】概日リズムを調整する。
【解決手段】以下の(i)から(vi)の1種又は2種以上を有効成分とする概日リズム調整組成物:
(i) フラボン、フラボノール、イソフラボン、フラバノン、アントシアニン及びフラバノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらの重合体もしくは誘導体;
(ii) ステロイド系サポニンまたはその誘導体;
(iii) セスキテルペノイドまたはその誘導体;
(iv) モナコリンKまたはその誘導体;
(v) リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリン、フォルスコリンまたはこれらの誘導体。
(vi) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
【解決手段】以下の(i)から(vi)の1種又は2種以上を有効成分とする概日リズム調整組成物:
(i) フラボン、フラボノール、イソフラボン、フラバノン、アントシアニン及びフラバノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらの重合体もしくは誘導体;
(ii) ステロイド系サポニンまたはその誘導体;
(iii) セスキテルペノイドまたはその誘導体;
(iv) モナコリンKまたはその誘導体;
(v) リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリン、フォルスコリンまたはこれらの誘導体。
(vi) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概日リズム(サーカディアンリズム)調整組成物に関し、詳しくは概日リズムを調整することにより、時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失、睡眠相遅延症候群等を改善する概日リズム調整組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトを含む全ての哺乳類の細胞には、「時計遺伝子」と呼ばれる生体リズムを刻むための遺伝子が存在しており、それゆえ体内時計は細胞自律的な現象であると考えられる。間脳視床下部の視交叉上核(suprachiasmatic nucleus : SCN)は、全身の細胞に存在する末梢時計を統括する機能があることから「マスタークロック」と呼ばれており一日の睡眠・覚醒等のリズムを形成する中心として働いている。時計遺伝子により制御される生体現象の一連を「概日リズム」と呼んでいる。概日リズムを刻む生体現象の例としては、睡眠・覚醒リズムの他に、食欲、性欲、体血圧および体温リズム、副腎皮質ホルモン、メラトニンおよび成長ホルモン分泌等の内分泌系リズム、免疫系リズム、自律神経リズム等が知られている(非特許文献10)。
【0003】
概日リズムは、地球の自転に伴って起こる昼夜、つまり明暗周期などの24時間の環境周期に同調できるように設定されており、ネズミなどの夜行性の動物は夜間に、ヒトなどの昼行性の動物は昼間に行動しやすくなっている。このため、ヒトは通常昼間に働くのが最も生産性が高いのだが、様々な理由により、通常とは異なる時間帯に行動することを求められる事がある。例えば、航空機により短時間に長距離を移動する渡航者は、出発地と到着地で昼間・夜間の位相のズレ(時差)を経験し、いわゆる「時差ぼけ(jet-lag)」症候群を引き起こす事が多い。時差ぼけ症候群では、概日リズムが、到着地の時間帯に徐々に調整されるまで、睡眠・覚醒リズムが乱れ、注意力・集中力が低下する。また、上記の種々のリズムも乱れ一時的な体調不全に陥ることがある。
【0004】
また、勤務時間帯が朝から夕、夕から夜中、および真夜中から早朝まで等の間を、循環する交替勤務者においては、一時的な概日リズムの乱れに起因する体調不全を起こし、その結果、勤務シフトへの交替への調整が困難になる場合がある。交替勤務者に最も多く見られる症状は、睡眠障害で、これが全身倦怠、疲労感を促進させている。また、夜間勤務自体も、自律神経、代謝リズム、内分泌リズムの低下した状態での身体活動であるため、全身倦怠、疲労を感じやすくさせている。食事の時間・回数も不規則になりがちで、消化管、内分泌器官に対する負担も大きく、自律神経の失調が生じることから、種々の消化器症状が出やすくなっている。交替勤務者では、血漿中のトリグリセライドおよびコレステロールが増加している事が報告されている(非特許文献1)また、日中勤務者では、睡眠時と覚醒時で血圧の差異が大きく、交替勤務者では差異が小さいことが報告されている(非特許文献2)。
【0005】
大規模疫学研究(文部科学省補助 運営委員長・玉腰暁子名古屋大助教授)が行った調査によると、24時間操業の工場や鉄道、ホテルなどの交替制職場で働く男性は、主に昼間働く日勤職場の男性に比べ、前立腺がんになる危険性が3.5倍、心筋梗塞などの虚血性心疾患で死亡する危険性が2.8倍高いことが報告されている。
【0006】
厚生労働省の調査では、午後10時以降の深夜業に従事する労働者がいる事業所は2割に上り、うち半数が交代勤務を導入している。労働生産性の低下といった経営上の問題だけでなく、労働者の疾病管理といった労働衛生上の観点からも、交替勤務に適応できるための製剤の開発が産業上強く求められている。
【0007】
高齢者は、概日リズムを形成するための内因性因子(例えばメラトニン)の合成低下が認められ、概日リズムの維持力の低下が懸念されている(非特許文献3)。
【0008】
また、視交叉上核(SCN)においてAVP(arginine vasopressin)およびVIP(vasoactive intestinal polypeptide)を発現している神経細胞は、リンパ液を脳内に注ぎ込むことにより時計信号を伝達していると考えられている。高齢者は、若年者に比べてAVP発現神経細胞数の発現に関する概日リズムの昼夜におけるメリハリが乏しい事が報告されている(図1参照:非特許文献4)。
【0009】
生活時間が不規則な若年者や深夜に及ぶ長時間残業を行わなければならない労働者は、しばしば就寝時刻や食事時刻が不規則になる事がきっかけで、外部環境と概日リズムにずれが生じ、体調不良になる場合がある。健康な若年被験者に交替勤務のシミュレーションを行わせた研究では、標準的な食事を食べさせた後の、血糖値、インスリンおよび脂質のレベルが生活リズムの変更により影響を受け、インスリン抵抗性および脂質代謝の変化が起こる事が報告されている(非特許文献5,6)。
【0010】
さらに先天的或いは後天的な全盲の人々は、その概日リズムの外部環境規制によらない自由進行(free running)に悩まされるケースが認められている。
【0011】
概日リズムの変調を調整するために、これまで様々な取組みがなされてきた。例えば、Czeisler Charles A & Kronauer RichardおよびMichimori Akihiroらは、十分な明るさの光を一定時間照射することで概日リズムの調整が可能であり、その方法について開示している(特許文献1,2)。また、概日リズム調整を行っている内因性ホルモンであるメラトニンあるいはメラトニン誘導体の投与が試みられている。また、最近では概日リズムを調整する新規化合物および方法の検索が行われている(特許文献3,4)。
【0012】
しかし、メラトニンには、催眠作用、内分泌系作用などの概日リズム調整以外の作用も有しており(非特許文献7)、概日リズム調整の目的で摂取すればそれらが副作用となってしまう。メラトニン誘導体や、体内でメラトニンに変換されるメラトニン前駆物質であるセロトニン、5-ヒドロキシトリプトファン、トリプトファンについても同様の副作用の問題が残る。特に、セロトニンを経口摂取すると、経口吸収性が悪く、消化器系・循環器系への悪影響が報告されている(非特許文献8,9)。また、新規化合物の安全性は証明されていない段階にある。副作用が無く、安全で、安心して摂取できる素材を摂取することによるリズム調整方法は、未だ見出されておらず強く社会から求められているのが現状である。
【0013】
光やメラトニン及びその誘導体等の他には、概日リズムを調整する可能性のある物質として、Peter McNamaraらが、レチノイン酸の概日リズム調整効果を細胞実験で示している(非特許文献10)。彼らの実験では、細胞にレチノイン酸を添加することにより、時計遺伝子の一つであるPer2の発現リズムの位相が後退することが報告されている。しかし、その他の物質による概日リズム調整効果については、ほとんど知られていない。
【特許文献1】WO9616697
【特許文献2】WO9719720
【特許文献3】特開2001-316281
【特許文献4】特開2003-335669
【特許文献5】特開2003-026573
【特許文献6】特開2003-81829
【特許文献7】特開2003-321394
【特許文献8】特開2006-8583
【非特許文献1】Postprandial hormone and metabolic responses among shift workers in Antarctica. Lund J. et al. Endocrinol, 2001;171:557-564
【非特許文献2】Impact of shift work and race/ethnicity on the diurnal rhythm of blood pressure and catecholamines. Yamasaki F. et al. Hypertension,1998;32:417-423
【非特許文献3】Vitiello MV. , Clin Corne rstone 2000;2(5):16-27;Mishima K. et al. ,Chronobiol Int 2000 May;17(3):419-32
【非特許文献4】Hoffman,M.A.,Swabb D.F.,1994. Alterations in circadian rhythmicity of the vasopressin-producing neurons of the human suprachiasmatic nucleus (SCN) with aging. Brain Res.651, 134-142
【非特許文献5】Altered postprandial hormone and metabolic responses in a simulated shift work environment. Ribeiro DCO et al. J Endocrinol, 1998;158:305-310
【非特許文献6】Postprandial hormone and metabolic responses in a simulated shift work environment. Hampton SM et al. J Endocrinol, 1996;151:259-267
【非特許文献7】Monti JM, Cardinali DP. , Biol Signals Recept 2000,9:328-39; reiter RJ., Ann Med 1998, 30:103-8
【非特許文献8】Hasler WL., Dig Dis Sci 1999 Aug; 44(8 Suppl):108S-113S;
【非特許文献9】van Zwieten PA, Blauw GJ, van Brummelen P., Cardiovasc Drugs Ther 1990 Dec;4(6):1443-7
【非特許文献10】Falcon J. , Prog Neurobiol 1999 Jun;58(2):121-62
【非特許文献11】Peter McNamara et al. Cell,105,877-889,2001
【非特許文献12】Jorge Mendoza et al. The Journal of Neuroscience 2005 25(6):1514-1522
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、概日リズムの乱れが原因で起こる生理現象(睡眠・覚醒・ホルモン分泌・体温・消化・血圧・代謝等)の変調を予防・改善・コントロールすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下の概日リズム調整組成物を提供することを目的とする。
項1. 以下の(i)から(vi)の1種又は2種以上を有効成分とする概日リズム調整組成物:
(i) フラボン、フラボノール、イソフラボン、フラバノン、アントシアニン及びフラバノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらの重合体もしくは誘導体;
(ii) ステロイド系サポニンまたはその誘導体;
(iii) セスキテルペノイドまたはその誘導体;
(iv) モナコリンKまたはその誘導体;
(v) リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリン、フォルスコリンまたはこれらの誘導体。
(vi) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
項2. 有効成分が以下の(i-1)から(vi) からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする項1記載の概日リズム調整組成物:
(i-1) ルテオリン、ゲニステイン、エピガロカテキンガレート、ケンペロール、ヘスペレチン、ケルセチン、クリシン、アピゲニン、ジオスメチン、モリン、ミリセチン、ナリンゲニン、ダイゼイン、バイオケニン A、ノビレチン、タンジェリン及びテアフラビンからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(ii-1)ユッカゲニン、ディオスゲニン、dioscin、F-gitonin、desgalactotigonin、timosaponin、ophiopogonin、サルササポゲニン、エビサルササポゲニン、スミラゲニン、ヤモゲニン、リナゲニン、ネオゴトゲニン、チゴゲニン、ネオチゴゲニン、エビスミラゲニン、ギトゲニン及びジギトゲニンからなる群から選ばれるステロイド系サポニンまたはこれらをアグリコンとするサポニンまたはこれらの誘導体;
(iii-1)farnesane, monocyclofarnesane, bicyclofarnesane, bisabolane, α,β-santalane, acorane, cadinane, himachalane, caryophyllane, cedrane, isocaryophyllane, humulane, germacrane, elemane, eudesmane, eremophilane, guaiane, ambrosane, aristrane及びdrimane からなる群から選ばれる共通骨格を有するセスキテルペノイドまたはこれらの誘導体;
(iv) モナコリンKまたはその誘導体;
(v)リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリン、フォルスコリンまたはこれらの誘導体。
(vi) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
項3. 概日リズムの調整が時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失または睡眠相遅延症候群の改善である項1または2に記載の概日リズム調整組成物。
項4. 以下の(a)〜(f)からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とするBmal1遺伝子の発現を抑制することにより概日リズムの位相を後退または前進させる概日リズム調整組成物。
(a) フラボン、イソフラボン、フラバノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(b) モナコリンK またはその誘導体;
(c) フォルスコリンまたはその誘導体;
(d)ステロイド系サポニンまたはその誘導体;
(e) セスキテルペノイドまたはその誘導体。
(f) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
項5. 有効成分が以下の(a1)、(b)、(c)、(d1)、(e1)及び(f)からなる群から選ばれる1種又は2種以上である項4記載の概日リズム調整組成物。
【0016】
(a1) ルテオリン、ゲニステイン、エピガロカテキンガレート、クリシン、アピゲニン、ジオスメチン、ダイゼイン、バイオケニンA、テアフラビンからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(b) モナコリンKまたはその誘導体;
(c) フォルスコリンまたはその誘導体;
(d1)ユッカゲニン、ディオスゲニン、dioscin、F-gitonin、desgalactotigonin、timosaponin、ophiopogonin、サルササポゲニン、エビサルササポゲニン、スミラゲニン、ヤモゲニン、リナゲニン、ネオゴトゲニン、チゴゲニン、ネオチゴゲニン、エビスミラゲニン、ギトゲニン、ジギトゲニンからなる群から選ばれるステロイド系サポニンまたはこれらをアグリコンとするサポニンまたはこれらの誘導体;
(e1) farnesane, monocyclofarnesane, bicyclofarnesane, bisabolane, α,β-santalane, acorane, cadinane, himachalane, caryophyllane, cedrane, isocaryophyllane, humulane, germacrane, elemane, eudesmane, eremophilane, guaiane, ambrosane, aristrane, drimane からなる群から選ばれる共通骨格を有するセスキテルペノイドまたはこれらの誘導体;
(f) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
項6. 概日リズムの調整が時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失、睡眠相遅延症候群からなる群から選ばれるいずれかの改善である項4または5記載の概日リズム調整組成物。
項7. 以下の(g)〜(h)の1種又は2種以上を有効成分とするBmal1遺伝子の発現を促進することにより概日リズムの位相を後退または前進させる概日リズム調整組成物。
(g) フラバノン、フラボノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(h) リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリンまたはその誘導体。
項8. 有効成分が(g1)および(h)からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする項7記載の概日リズム調整組成物。
【0017】
(g1)ケンペロール、ヘスペレチン、ケルセチン、モリン、ミリセチン、ナリンゲニン、ノビレチン、タンジェリンからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(h)リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリンまたはその誘導体からなる群の少なくとも1つ
項9. 概日リズムの調整が時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失、睡眠相遅延症候群の改善である項7または8記載の概日リズム調整組成物。
【発明の効果】
【0018】
以上に述べたことから、本発明により提供される概日リズム調整組成物は、時差ぼけ等の概日リズム変調を調整するために顕著に有効である事が明らかである。また、有効成分であるフラボノイド類、ステロイド系サポニン類、セスキテルペノイド類、カロテノイド類、モナコリンKおよびその他の化合物類およびそれらを有効成分として含む植物抽出物または菌体抽出物は、安全性が高く、副作用がほとんどないので、本発明の概日リズム調整組成物は使用上の問題がなく、有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明による概日リズム調整組成物の適用される対象者としては、
1)概日リズム障害に陥る危険のある者、即ち交代勤務者、海外渡航者など
2)睡眠相遅延症候群(delayed phase sleep syndrome)等の心理的不眠症の者
3)概日リズム障害に陥りやすい高齢者
4)不規則な生活行動が原因で概日リズム障害に陥ってしまう若年者および長時間残業者
5)失明等により概日リズムの非同期化している者
が想定され得るが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明に至る過程で、本発明者らは、20種類程度ある時計遺伝子の中で最も重要なものの一つであるBmal1のプロモーター領域にレポーター遺伝子を連結した遺伝子構築物を用いて、概日リズム全体をモニタリングし、投与物質の概日リズムに与える影響を評価するスクリーニング試験系を確立した。この試験系を用いて、種々の物質を投与し、概日リズムを調整する効果のあるものを探索した。
【0021】
概日リズムを調整する効果のあった物質(有効成分)の例を以下に列挙するが、これらに限定されるものではない。これら1)〜6)は、単独で摂取してもよく、2種以上を併用してもよい。
1)フラボノイド類
フラボノイド類として、フラボン、フラボノール、イソフラボン、フラバノン、アントシアニン、フラバノール及びこれらの重合体または誘導体が含まれる。フラボノイド類は、単独で用いてもよく、2種以上のフラボノイド類を併用してもよい。具体例としては、ルテオリン、ゲニステイン、エピガロカテキンガレート、ケンペロール、ヘスペレチン、ケルセチン、クリシン、アピゲニン、ジオスメチン、モリン、ミリセチン、ナリンゲニン、ダイゼイン、バイオケニン A、ノビレチン、タンジェリン、テアフラビン及びこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体を挙げる事が出来る。これらの物質を有効成分とするものであれば、植物抽出物の形態をとるものでも良い。
【0022】
これらの物質を有効成分とする抽出物の由来となる植物の具体例を以下に列挙するが、これらの例に限定されるものではない。
【0023】
キク科のヨモギ、春菊、紅花、カモミール、キャットニップ、キキョウ科のキキョウ、スイカズラ科のエルダーフラワー、エルダーベリー、スイカズラ、ツバキ科の紅茶、緑茶、烏龍茶、マテ茶、ブドウ科のブドウ、アカネ科のクチナシ、コーヒー、オギリ科のカカオ、タデ科のそば、ユキノシタ科のカシス、アカショウマ、甘茶、ユキノシタ、オオバコ科のサイリウム、オオバコ、ゴマ科のデビルズクロウ、ナス科のアシュワガンダ、トマト、ツツジ科のブルーベリー、ビルベリー、クランベリー、イネ科の赤米、紫とうもろこし、大麦、クワ科のマルベリー、ホップ、クワ、バラ科のラズベリー、プラム、エゾイチゴ、セイヨウキイチゴ、メドウスイート、甜茶、リンゴ、桃の花および蕾、マメ科のエンジュ、小豆、大豆、タマリンド,ミモザ、レッドクローバー、ヤマイモ科の紫ヤマイモ、ワイルドヤム、カキ科のカキ、バショウ科のバナナ、ヒルガオ科のヤマカワラムラサキイモ、サツマイモ、アオイ科のローゼル、ハイビスカス、ゼニアオイ、シソ科のミント、ローズマリー、赤シソ、エゴマ、アブラナ科の赤キャベツ、ブロッコリー、カブ、ミカン科のレモン、ミカン、シークワサー、chuan chen、イチョウ科のイチョウ、グミ科のサジー、ユリ科のたまねぎ、トケイソウ科のパッションフラワー、モクセイ科のオリーブ、ジャスミン、キョウチクトウ科のラフマ、ベンケイソウ科のカンカ、セリ科のセロリ、にんじん、バースニップ、フトモモ科のユーカリ、チョウジ。
2)ステロイド系サポニン類
ステロイド系サポニンまたはその誘導体から選ばれる1種または2種以上の混合物を概日リズムを調整するための有効成分として使用することができる。
【0024】
具体例としては、ユッカゲニン、ディオスゲニン、dioscin、F-gitonin、desgalactotigonin、timosaponin、ophiopogonin、サルササポゲニン、エビサルササポゲニン、スミラゲニン、ヤモゲニン、リナゲニン、ネオゴトゲニン、チゴゲニン、ネオチゴゲニン、エビスミラゲニン、ギトゲニン、ジギトゲニン及びこれらをアグリコンとするサポニンまたはこれらの誘導体を挙げる事が出来る。これらの物質を有効成分とするものであれば、植物抽出物の形態をとるものでも良い。これらの物質を有効成分とする抽出物の由来となる植物の具体例を以下に列挙するが、これらの例に限定されるものではない。
【0025】
ユリ科のユッカ、知母、麦門冬等の根茎、ハナスゲの根、サンキライ、キンコウカ、イワギボウシ、トチノキ科のトチノキの葉や実、リュウゼツラン科のNolina recurvata、キク科のキンセンカ(マリーゴールド)の花、ヤマノイモ科のヤマノイモ、マメ科のフェヌグリークの種皮。
3)セスキテルペノイド類
セスキテルペノイドまたはその誘導体からなる群の少なくとも1種または2種以上の混合物を概日リズムを調整するための有効成分として使用することができる。具体例としては、セスキテルペノイドの共通骨格が、farnesane, monocyclofarnesane, bicyclofarnesane, bisabolane, α,β-santalane, acorane, cadinane, himachalane, caryophyllane, cedrane, isocaryophyllane, humulane, germacrane, elemane, eudesmane, eremophilane, guaiane, ambrosane, aristrane, drimane であるものまたはこれらの誘導体を挙げる事が出来る。具体的な物質名では、アンブロシン、ビサボロール、β-カジネン、カリオフィレン、セドロール、ドリメノール、グアイオール、フムレン、ニバレノール、トリコデルミン、トリコテシン、α、β-オイデスモール、β−エレメン、エレモール、ケシルアルコール、α-シペロン、α-サントニン、ジンギベレン、ヒサポリン、ファルネソール、ネロリドール、アブシジン酸、ツルメロン、アトラクチロン、アラントラクトン、ヒネソール、セリネン等を挙げる事が出来る。これらの物質を有効成分とするものであれば、植物抽出物の形態をとるものでも良い。これらの物質を有効成分とする抽出物の由来となる植物の具体例を以下に列挙するが、これらの例に限定されるものではない。
【0026】
キク科のニトベギク、シナカ(santonica)、ソウジュツ、ビャクジュツ、カミツレ、シソ科のラベンダー、オミナエシ科のかのこ草、フトモモ科のチョウジ、セリ科のセロリ、バンレイシ科のイランイラン、マツ科のマツ、スギ科のスギ、ハマビシ科のユソウボク、アサ科のホップ、カヤツリグサ科の香附子、ショウガ科の生姜、ウコン、バラ科のバラ、イネ科のシトロネラ、レモングラス、ウマノスズクサ科のサイシン、オモダカ科のタクシャ。
4)菌体などに含まれる化合物
モナコリンKまたはそれを有効成分とする菌体抽出物が挙げられる。
具体例としては、紅麹抽出物が挙げられるが、この例に限定されるものではない。
5)その他の化合物
シリマリン、フォルスコリン、リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノールまたはこれらの誘導体が挙げられる。これらの化合物は、単独で、或いは2種以上を混合して概日リズムを調整するための有効成分として使用することができる。
【0027】
これらの化合物は純粋な化合物を使用してもよく、植物抽出物の形態をとるものでも良い。
【0028】
これらの化合物を含む抽出物の由来となる植物の具体例を以下に列挙するが、これらの例に限定されるものではない。
【0029】
キク科のMilk Thistle(マリアアザミ)、タラゴン、シソ科のコレウスフォルスコリン、バジル、ツツジ科のブルーベリー,ナス科のナス,イバラ科のウメ,ミカン科のミカン、パイナップル科のパイナップル、ブドウ科のブドウの果皮、マメ科のピーナッツの薄皮、タデ科のコジョウコン、フトモモ科のオールスパイス、クローブ、クスノキ科のシナモン、ショウガ科のターメリック、ニクズク科のナツメグ、ラン科のバニラ、クスノキ科のローレル、アカネ科のノニ、ナス科のベラドンナ。
6)セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
上で掲げた概日リズムを調整する効果のある物質には、Bmal1の発現を抑制する物質と促進する物質があった。発現を抑制する物質も促進する物質の何れも、概日リズムをコントロールする目的で使用すれば、有効である。以下にその使用方法の一例を示す。以下の使用方法では、時計遺伝子のプロモーターにレポーター遺伝子(例えばGFPなどの蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼなどの遺伝子)を連結した遺伝子構築物を、通常プラスミドとして用いて形質転換した組換え培養細胞を使用し、該培養細胞の培地に概日リズムを調整する物質を添加して、概日リズムを調整する。概日リズムを調整する物質としては、概日リズムの位相を遅らせる物質と、概日リズムの位相を進める物質のいずれも使用することができる。
【0030】
(A) Bmal1の発現を抑制することにより概日リズムの位相を遅らせる例
図2の矢印の位置(発現量/位相の転換点)で抑制成分を培地に添加すると、時計遺伝子の発現が一時的に抑制される。しばらくすると、時計遺伝子の発現は通常の状態に戻る。一時的に抑制されていた影響を受け、位相が後退する。
【0031】
なお、図2において縦軸はBmal1遺伝子の発現量、横軸は時間を表す。
【0032】
(B)Bmal1の発現を促進することにより概日リズムの位相を進める例
図3の矢印の位置(即ち、Bmal1の発現量が増加する時期)で促進成分を添加すると、時計遺伝子の発現が一時的に促進される。少量添加した場合や、作用時間が短い場合は、図のAで示したグラフのように、発現が一時的に加速された影響で、位相が前進する。大量に添加した場合や作用時間が長い場合には、図のBで示したグラフのように、発現促進による影響が、元のリズムの上限ピークを過ぎて発現が減少し始める時刻の後も継続され、発現が減少し始める時刻を遅らせ、その影響で位相が後退する。
【0033】
体内では、当該促進成分を摂取した量や代謝速度などの要因により、位相を前進させるか、後退させるかが変わってくる。これらは、例えば動物に促進成分を経口投与した時の行動量の変化を測定する方法などにより、どちらになるかを見極める事が可能である。また、当業者であれば、促進成分の動物試験での結果から、ヒトでは促進成分をどれくらい摂取すれば、目的とする概日リズム調整効果を得られるかを容易に推測する事が出来る。図3の縦軸はBmal1遺伝子の発現量、横軸は時間を表す。
【0034】
(C)Bmal1の発現を抑制することにより概日リズムの位相を進める例
図4の矢印の位置(即ち、Bmal1の発現量が低下する時期)で抑制成分を添加すると、時計遺伝子の発現減少が一時的に加速される。一時的に減少が加速された影響で、位相が前進する。なお、図3の縦軸はBmal1遺伝子の発現量、横軸は時間を表す。
【0035】
(D)Bmal1の発現促進と発現抑制を併用することにより概日リズムのメリハリを強める例
図5の「促進物質」および「「抑制物質」で示された矢印の位置で該当する物質を添加する。
【0036】
概日リズムの振幅が拡大され、メリハリの強いリズムに改善される。
【0037】
高齢者などのように昼夜のメリハリの小さい人の概日リズムの改善が期待できる。
図5の縦軸はBmal1遺伝子の発現量、横軸は時間を表す。
【0038】
明石らの研究報告(Makoto Akashi, Toru Takumi. Nature structural & molecular biology; 2005, (12) 5: 441-448)をもとに、マウスにおけるBmal1の発現リズムと外部環境との関連性を図6に示した。マウスの活動期である暗期開始1〜3時間後にBmal1の発現量の上限ピークが訪れ、休息期である明期開始1〜3時間後にBmal1の発現量の下限ピークが訪れる。
【0039】
マウスでは活動が盛んな暗期の始まりの1〜3時間に、行動量及び摂餌量が最も多くなることが知られている(非特許文献12)。この時、Bmal1の発現量は上昇途中で、ピークに到達しようとしている位相にあたる。このタイミングで発現を抑制する物質を摂取すれば位相を遅らせる事が出来、同じタイミングで発現を一時的に促進する物質を摂取すれば位相を進める事が出来ると考えられる。また、Bmal1の発現量が上限ピークを過ぎ、減少していく位相にあたる暗期後半から明期初めに、発現を抑制する物質を摂取すれば減少を加速させることにより位相を進める事が出来、同じタイミングで発現を促進する物質を摂取すれば位相を遅らせる事が出来ると考えられる。
【0040】
ヒトでは明期の始まりに当たる明け方にBmal1の発現量の下限ピークが訪れ、暗期の始まりに当たる夕方に、Bmal1の発現量の上限ピークが訪れると考えられている。従って、Bmal1の発現量が下限ピークを過ぎる朝方の、増加を始めるタイミングで発現を抑制する物質を摂取すれば位相を遅らせる事が出来、同じタイミングで発現を一時的に促進する物質を摂取すれば位相を進める事が出来ると考えられる。また、Bmal1の発現量が上限ピークを過ぎる夜の、減少を始めるタイミングで発現を抑制する物質を摂取すれば位相を進める事が出来、同じタイミングで発現を促進する物質を摂取すれば位相を遅らせる事が出来ると考えられる。図6の縦軸はBmal1遺伝子の発現量、横軸は時間を表す。
【0041】
交替勤務者は、勤務時間帯に合わせて睡眠時間帯を前後させることで身体状態を勤務時間帯に適合させようとする。その場合、睡眠時間帯を遅らせたい時には、概日リズムの位相を遅らせる物質を摂取し、睡眠時間帯を早めたい時には、概日リズムの位相を進める物質を摂取すれば、より簡単に、楽に、短日数で概日リズムを意図する状態に調整する事が可能である。図7に、摂取する物質の種類とタイミングの一例を示したが、この例に限定されるものではない。
【0042】
本発明の製剤の形態としては、例えば顆粒剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、ドリンク剤、懸濁剤、注射剤等をあげる事が出来る。これらの剤型を製造するには各種の製剤製造用物質、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤等を使用することができる。
【0043】
本発明の概日リズム調整組成物は、食品に添加することもできる。食品に添加される際は、食品の形態は固体であっても、半固体であっても液体であってもよい。例えば、洋菓子、和菓子、スナック菓子、アイスクリーム、アイスミルクなどの冷菓、嗜好性飲料(例えば、清涼飲料、炭酸飲料(サイダー、ラムネ等)、薬味飲料、アルコール性飲料、粉末ジュースなど)、乳製品(牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム等)、氷菓、菓子類(あんこ、羊羹、饅頭、チョコレート、ガム、ゼリー、寒天、杏仁豆腐、ケーキ、カステラ、クッキー、煎餅、スナック菓子等)、パン、餅、水産煉製品(蒲鉾、ちくわ等)、畜肉加工品(ソーセージ、ハム等)、果実加工品(ジャム、マーマレード、果実ソース等)、調味料(ドレッシング、マヨネーズ、味噌等)、麺類(うどん、そば等)、漬物、および蓄肉、魚肉、果実の瓶詰、缶詰類などの食品に含まれる形態であり得る。
【0044】
本発明の概日リズム調整組成物を食品に添加するには特別な工程を必要とせず、食品の製造工程の初期において原料と共に添加するか、製造工程中に添加するか、あるいは製造工程の終期に添加する。添加方式は混和、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布等通常の方法を食品の種類および性状に応じて選択する。本発明の食品は、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0045】
本発明の概日リズム調整組成物は、摂取量に依存してリズムの調整を行うことができ、リズムの変調の程度により、摂取量或いは摂取のタイミングを変更すれば、リズム調整を行うことができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0047】
実施例1
(1)時計遺伝子Bmal1の発現に関与する物質を同定するためのスクリーニング系を構築し、候補物質 のスクリーニングを行った。具体的な手順は以下の通りである。
(2)ルシフェラーゼ発光ベクターpGL3 basic(Promega社製)に、時計遺伝子hBmal1のプロモーター領域を組み込んで、組換えベクターを作製した。次に、この組換えベクターを培養細胞(マウス由来 繊維芽細胞 NIH-3T3)にトランスフェクトした。
(3)前記の組換えベクターは、Bmal1のプロモーター領域とルシフェラーゼ(発光性酵素)をコードする領域を持つ。従って、Bmal1のプロモーター領域にBmal1遺伝子の転写因子が結合すると、ルシフェラーゼが発現するため、培養細胞が発光する。この原理を利用して、発光量を計測することで、時計遺伝子Bmal1の発現リズムを推定することができる。
(4)次に、前記培養細胞を用いて候補物質の探索(スクリーニング)を行った。スクリーニングの開始時には、50%の血清を加えた培地で2時間培養することにより刺激を与え、各細胞のリズムの位相を同調させた。その後15分毎にルシフェラーゼ発光量を計測した。発光量の計測には、極微弱発光計測装置(浜松ホトニクス株式会社製)を用いた。
(5)候補物質の効果を見るために、前記のスクリーニング試験開始後、ルシフェラーゼ発光量が、下限ピークを過ぎ、上昇を開始するタイミングで候補物質添加した。試験物質の溶媒であるDMSOまたは水を同じタイミングで添加し、発光量の変化を比較した。候補物質は、DMSOまたは水に、10mM/Lまたは10mg/mlの濃度で溶解したものを、500倍に希釈になるように添加した。
(6)候補物質としてイソフラボンの1種であるゲニステインをDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図2の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。ゲニステインまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図8に示した。図8の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(counter per minutes:cpm)を示している。
(7)ゲニステイン溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に抑制され、その後再び発現を開始したが、一時的に抑制されていた影響で位相が後退した。
【0048】
実施例2
(1)候補物質としてモナコリンKを有効成分とする菌体抽出物の1種である紅麹をDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図2の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。紅麹または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図9に示した。図9の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)紅麹溶液を500倍に希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に抑制され、その後再び発現を開始したが、一時的に抑制されていた影響で位相が後退した。
【0049】
実施例3
(1)候補物質としてシリマリンを有効成分とするMilk Thistleの抽出物をDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図3の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。Milk Thistle抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図10に示した。図10の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)Milk Thistle抽出物を500倍に希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が飛躍的に促進され、その後も発現量が減少するのを抑制し続ける影響で、位相を後退させた。
【0050】
実施例4
(1)候補物質としてノビレチンおよびタンジエリンを有効成分とする柑橘系植物の1種であるChuan chenの抽出物をDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図3の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。Chuan chen抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図11に示した。図11の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)Chuan chen抽出物を500倍に希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が飛躍的に促進され、その後も発現量が減少するのを抑制し続ける効果により、位相を後退させた。
【0051】
実施例5
(1)候補物質としてフラボノールの1種であるケンペロールをDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図5の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。ケンペロールまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図12に示した。図12の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)ケンペロール溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が飛躍的に促進させ、リズムの振幅を大きくさせた。
【0052】
(位相の前進効果)
(1)培地に有効成分を添加した後、一定時間後に有効成分を添加していない培地と取り替えることにより図3の説明のような概日リズムの調整効果が確認される。
【0053】
(2)培地に有効成分を添加するのをBmal1の発現量が、上限ピークを過ぎ、下降を開始するタイミングにすることにより、図4の説明のような概日リズムの調整効果が確認される。
【0054】
実施例 6
(1)候補物質としてフラバノンの1種であるヘスペレチンを10mM/Lの濃度でDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図5の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。 ヘスペレチンまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図13に示した。図13の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)へスペレチン溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に促進されるリズム調整効果を示した。
【0055】
実施例 7
(1)候補物質としてEugenolを10mM/Lの濃度でDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図5の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。Eugenolまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図14に示した。図14の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)Eugenol溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に促進されるリズム調整効果を示した。
【0056】
実施例 8
(1)候補物質として有効成分がリスベラトロールであるブドウ果皮抽出物をDMSOに10mg/mlとなるように溶解した溶液を用いたところ、図5の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。 リスベラトロール含有ブドウ果皮抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図15に示した。図15の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)リスベラトロール含有ブドウ果皮抽出物溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に促進されるリズム調整効果を示した。
【0057】
実施例 9
(1)候補物質としてスコポレチンをDIMSOに10mM/Lの濃度で溶解した溶液を用いたところ、図5の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。スコポレチンまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図16に示した。図16の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)スコポレチン溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に促進されるリズム調整効果を示した。
【0058】
実施例 10
(1)候補物質の効果を見るために、前記のスクリーニング試験開始後、ルシフェラーゼ発光量が、上限ピークを過ぎ、下昇する途中のタイミングで候補物質添加した。試験物質の溶媒であるDMSOを同じタイミングで添加し、発光量の変化を比較した。候補物質は、DMSOに、10mM/Lまたは10mg/mlの濃度で溶解したものを、500倍に希釈になるように添加した。
(2)候補物質としてステロイド系サポニンの1種であるユッカゲニン(ユッカサポニン)を有効成分とするユッカエキスをDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図4の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。ユッカエキスまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図17に示した。図17の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(3)ユッカエキス溶液を500倍に希釈となるように添加すると、Bmal1の発現が一時的に抑制されるため発現の減少速度が一時的に加速され、その影響で発現リズムの位相が前進した。
【0059】
実施例 11
(1)候補物質としてフォルスコリンを有効成分とするコレウスフォルスコリ抽出物をDMSOに10mg/mlの濃度で溶解した溶液を用いたところ、図4の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。フォルスコリン含有コレウスフォルスコリ抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図18に示した。図18の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(3)コレウスフォルスコリ抽出物溶液を500倍に希釈となるように添加すると、Bmal1の発現が一時的に抑制されるため発現の減少速度が一時的に加速され、その影響で発現リズムの位相が前進した。
【0060】
実施例 12
(1)候補物質としてフラバノ−ルの1種であるエピガロカテキンガレート10mM/Lの濃度でDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図4の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。エピガロカテキンガレートまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図19に示した。図19の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)エピガロカテキンガレート溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に抑制されるため発現の減少速度が一時的に加速され、その影響で発現リズムの位相が前進した。
【0061】
実施例13
(1)候補物質としてセスキテルペノイドの1種を有効成分とするニトベギクエキスを10mg/mlの濃度でDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図4の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。ニトベギクエキスまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図20に示した。図20の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)ニトベギクエキスを500倍に希釈となるように添加すると、Bmal1の発現が一時的に抑制されるため発現の減少速度が一時的に加速され、その影響で発現リズムの位相が前進した。
【0062】
実施例14
(1)候補物質としてフラボンの1種であるChrysinを10mM/Lの濃度でDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図4の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。Chrysinまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図21に示した。図21の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)Chrysinを500倍に希釈となるように添加すると、Bmal1の発現が一時的に抑制されるため発現の減少速度が一時的に加速され、その影響で発現リズムの位相が前進した。
【0063】
実施例15
(1)候補物質としてセロリ種子からエタノールを溶媒として抽出した生成物を10mg/mlの濃度でDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図4の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。セロリ種子抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図22に示した。図22の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)セロリ種子抽出物を500倍に希釈となるように添加すると、Bmal1の発現が一時的に抑制されるため発現の減少速度が一時的に加速され、その影響で発現リズムの位相が前進した。
【0064】
(位相の前進または後退効果の動物投与による判定方法)
(1)赤外線センサーによるマウスにおける行動量の変化測定モデルを用いて、投与物質の概日リズムの調整効果が確認される。また、同一物質の投与量による効果の変化も確認される。
【0065】
以下に試験方法の一例を挙げるが、この方法に限定されるものではない。
(2)24時間周期の明暗サイクル下で飼育したマウスは、夜行性である事から明期に低く暗期に高い行動量を示す。この明暗サイクルの位相を進めるか遅らせて位相シフトを起し、これを新規明暗サイクルとする。新規明暗サイクルにした直後は、概日リズムが新規明暗サイクルと同調できておらず、特に位相前進の際は2週間程度たってようやく新規明暗サイクルに再同調することもある。
(3)例えば、明暗サイクルを8時間前進させた直後では、以前の明暗サイクルに非常に近い位相で行動リズムを示しており、その結果新規暗期の総行動量は、以前の暗期の総行動量の約半分程度となる。その後、行動リズムの位相が同調するに従って暗期の行動量は増加し、約2週間で以前の暗期の総行動量とほぼ同じになり、再同調が完了する。
(4)この新暗期の開始直後に、毎日概日リズム調整効果のある有効成分を投与し続けることで、再同調するまでの期間をどれだけ短縮できるかにより概日リズム調整効果を判定できる。
(5)同一物質を同じタイミングで摂取しても、ある投与量では位相を前進させ、ある投与量では後退させるなど作用効果が変わる可能性があるが、投与量を変化させて行動量を測定することにより、その物質に求める概日リズム調整効果を得るための最適量を判定する事が出来る。
【0066】
実施例16
(1)時計遺伝子Bmal1の発現に関与する物質のin vivo におけるリズム調整効果を測定するために、候補物質としてフラバノンの1種であるヘスペレチンをマウスに摂取させて、行動リズムに与える影響を確かめた。
(2)C57 Black6 Jマウス 8週齢、♂を日本エスエルシー株式会社から購入し、CONTエサ(オリエンタル酵母工業株式会社製、実験動物飼育用飼料 MF)を食べさせながら、明期12h、暗期12hの明暗サイクルに十分に順応させて、行動量のサーカディアンリズムを形成させた。
(3)その後、明暗サイクルを消失させ、恒暗条件で飼育を続け、その間にA群(8匹)には、CONTエサを引き続き食べさせ、B群(8匹)には、 実験用飼料にヘスペレチンをやや高濃度に混合したエサを、C群(8匹)には実験用飼料にヘスペレチンをやや低濃度に混合したエサを、それぞれ自由摂食させた。
【0067】
恒暗条件で飼育すると光による時刻の手がかりはなくなるが、行動のリズムは消失せず、その行動リズムは、動物が本来持っている体内時計により形成されていると考えられている。
(4)赤外線センサーを用いた自発行動量測定装置(バイオテックス社製)を用いて、1分間毎の行動量をカウントし、記録した。
(5)CONT食のA群は、恒暗条件にした後も、どの個体もほとんど行動リズムに変化が見られなかった。やや高濃度にヘスペレチンを混合した餌のB群およびやや低濃度にヘスペレチンを混合した餌のC群では、行動リズムが大きく変化する個体が多く見られた。行動リズムが変化した個体は、いずれも、行動開始の時刻が徐々に早くなっていた。これは時計遺伝子が形成する体内時計の位相をヘスペレチンの時計遺伝子発現促進効果により前進させたためと考えられた。
【0068】
実施例17
(1)時計遺伝子Bmal1の発現に関与する物質のin vivo におけるリズム調整効果を測定するために、候補物質としてフラバノンの1種であるヘスペレチンをヒトに摂取させて、健常者の体温リズムに与える影響を確かめた。体温の変化には日内リズムがあり、午前中から上昇を続け、昼過ぎにピークを迎え、夕方から夜にかけて下降するリズムが一般的であることが良く知られている。
(2)ヘスペレチンのリズム調整効果を見るために、健常人男性(45歳、男性)に通常の就寝時刻(0:30)よりも2時間遅くまで夜更かしをさせ、2:30に就寝させた。翌朝通常の起床時刻よりも2時間遅い9:30に起床、10:00 に朝食摂取をさせ、睡眠時間量は同じだが、通常の行動リズムより2時間後退させる「夜更かし」負荷を与え、サーカデイアンリズムの位相をわざと後退させた。なお、夜更かしを実施する日の入浴時間および夕食の時間は、通常通りとした。
(3)この負荷試験の間、市販の鼓膜温測定器(オムロン けんおんくんMC-510)を用いて、30分毎に鼓膜温を3回測定し、平均値をその時刻の鼓膜温とした。
(4)「夜更かし」負荷をかけた翌日に鼓膜温を測定しながら、起床2時間後にあたる朝11:30にカプセルに入れたヘスペレチンを摂取した日と、同じ負荷をかけただけの日の鼓膜温の変化を比較した。なお、夜更かしの翌日は日光や運動による影響を避けるため外出せず、なるべく室内の同じ場所で過ごすようにさせた。また、昼食は通常より2時間遅い14:00に、夕食は通常通りの時刻の19:30に摂取させた。昼食および夕食の内容は、試験日間で量および内容になるべく差がないように配慮した。
(6)夜更かし負荷をかけた日を「平日」、その翌日に何も摂取しなかった日を「夜更かし翌日」、夜更かし負荷の翌日にヘスペレチンを摂取した日を「翌日朝ヘスペレチン摂取」とした。
【0069】
「平日」は、一般的に知られている通りの「午前中から上昇、昼過ぎにピーク、夕方から夜にかけて下降」の体温変化のリズムを示した。負荷をかけただけの「夜更かし翌日」は、通常の日に見られる午前および午後に見られる鼓膜温の上昇がなく、ずっと低値を示した後、夕方になってようやく鼓膜温の上昇が始まるなど温度変化のリズムの位相が大きく後退していた。負荷をかけた翌日、ヘスペレチンを摂取する「翌日朝ヘスペレチン摂取」では、鼓膜温の上昇が摂取後から始まり、「平日」と完全に同じではないが、かなり近い温度変化のリズムの位相に戻すことができた。
【0070】
これは時計遺伝子が形成する体内時計の位相を、ヘスペレチンの時計遺伝子発現促進効果により前進させたためと考えられた。
【0071】
実施例 18
(1)時計遺伝子Bmal1の発現に関与する物質のin vivo におけるリズム調整効果を測定するために、候補物質としてフラバノンの1種であるヘスペレチンをヒトに摂取させて、高齢者の体温リズムに与える影響を確かめた。高齢者では、健常者に見られような「午前中から上昇、昼過ぎにピーク、夕方から夜にかけて下降」の体温変化の明確なリズムがなく、変化の振幅の小さなメリハリのない体温変化のリズムになることが良く知られている。
(2)ヘスペレチンのリズム調整効果を見るために、高齢者男性( 75歳、男性)に通常の生活リズムで過ごさせ、起床2時間後の9:00にヘスペレチン入りのカプセルまたはプラセボ入りカプセルを摂取させた。この間に、市販の鼓膜温測定器(オムロン けんおんくんMC-510)を用いて、30分毎に鼓膜温を3回測定し、平均値をその時刻の鼓膜温とした。
(3)ヘスペレチンを摂取した日を「ヘスペレチン」、プラセボを摂取した日を「プラセボ」とした。
(4)プラセボを摂取した日の「プラセボ」では、高齢者に多く見られる朝、昼、夜で変化が小さく、ピークがはっきりしないメリハリの小さな(振幅の小さな)鼓膜温の変化リズムであったが、ヘスペレチンを摂取した日の「ヘスペレチン」では、午前中から鼓膜温の上昇が始まり、昼過ぎにピークがあり、夕方から夜にかけて下降する健常者とほとんど変わらない明確なメリハリのある鼓膜温の変化リズムを示した。
【0072】
これは時計遺伝子が形成する体内時計の発現リズムの振幅を、ヘスペレチンの時計遺伝子発現促進効果により増幅させたためと考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】高齢者は、若年者に比べてAVP発現神経細胞数の発現に関する概日リズムの昼夜におけるメリハリが乏しい事の報告された図。
【図2】(A)Bmal1の発現を抑制することにより概日リズムの位相を遅らせる例
【図3】(B)Bmal1の発現を促進することにより概日リズムの位相を進めるまたは遅らせる例
【図4】(C)Bmal1の発現を抑制することにより概日リズムの位相を進める例
【図5】(D)Bmal1の発現促進と発現抑制を併用することにより概日リズムのメリハリを強める例
【図6】マウスにおけるBmal1の発現リズムと外部環境との関連性
【図7】交替勤務者が、概日リズムの位相を進め、或いは遅らせる際の摂取する物質の種類とタイミングの一例を示す。
【図8】ゲニステインまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図9】紅麹または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図10】Milk Thistle抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図11】Chuan chen抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比 較
【図12】ケンペロールまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図13】ヘスペレチンまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図14】Eugenolまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図15】リスベラトロールまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図16】スコポレチンまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図17】ユッカサポニンまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図18】フォルスコリンまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図19】エピガロカテキンガレートまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図20】ニトベギクエキスまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図21】Chrysinまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図22】セロリ種子抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【技術分野】
【0001】
本発明は、概日リズム(サーカディアンリズム)調整組成物に関し、詳しくは概日リズムを調整することにより、時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失、睡眠相遅延症候群等を改善する概日リズム調整組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトを含む全ての哺乳類の細胞には、「時計遺伝子」と呼ばれる生体リズムを刻むための遺伝子が存在しており、それゆえ体内時計は細胞自律的な現象であると考えられる。間脳視床下部の視交叉上核(suprachiasmatic nucleus : SCN)は、全身の細胞に存在する末梢時計を統括する機能があることから「マスタークロック」と呼ばれており一日の睡眠・覚醒等のリズムを形成する中心として働いている。時計遺伝子により制御される生体現象の一連を「概日リズム」と呼んでいる。概日リズムを刻む生体現象の例としては、睡眠・覚醒リズムの他に、食欲、性欲、体血圧および体温リズム、副腎皮質ホルモン、メラトニンおよび成長ホルモン分泌等の内分泌系リズム、免疫系リズム、自律神経リズム等が知られている(非特許文献10)。
【0003】
概日リズムは、地球の自転に伴って起こる昼夜、つまり明暗周期などの24時間の環境周期に同調できるように設定されており、ネズミなどの夜行性の動物は夜間に、ヒトなどの昼行性の動物は昼間に行動しやすくなっている。このため、ヒトは通常昼間に働くのが最も生産性が高いのだが、様々な理由により、通常とは異なる時間帯に行動することを求められる事がある。例えば、航空機により短時間に長距離を移動する渡航者は、出発地と到着地で昼間・夜間の位相のズレ(時差)を経験し、いわゆる「時差ぼけ(jet-lag)」症候群を引き起こす事が多い。時差ぼけ症候群では、概日リズムが、到着地の時間帯に徐々に調整されるまで、睡眠・覚醒リズムが乱れ、注意力・集中力が低下する。また、上記の種々のリズムも乱れ一時的な体調不全に陥ることがある。
【0004】
また、勤務時間帯が朝から夕、夕から夜中、および真夜中から早朝まで等の間を、循環する交替勤務者においては、一時的な概日リズムの乱れに起因する体調不全を起こし、その結果、勤務シフトへの交替への調整が困難になる場合がある。交替勤務者に最も多く見られる症状は、睡眠障害で、これが全身倦怠、疲労感を促進させている。また、夜間勤務自体も、自律神経、代謝リズム、内分泌リズムの低下した状態での身体活動であるため、全身倦怠、疲労を感じやすくさせている。食事の時間・回数も不規則になりがちで、消化管、内分泌器官に対する負担も大きく、自律神経の失調が生じることから、種々の消化器症状が出やすくなっている。交替勤務者では、血漿中のトリグリセライドおよびコレステロールが増加している事が報告されている(非特許文献1)また、日中勤務者では、睡眠時と覚醒時で血圧の差異が大きく、交替勤務者では差異が小さいことが報告されている(非特許文献2)。
【0005】
大規模疫学研究(文部科学省補助 運営委員長・玉腰暁子名古屋大助教授)が行った調査によると、24時間操業の工場や鉄道、ホテルなどの交替制職場で働く男性は、主に昼間働く日勤職場の男性に比べ、前立腺がんになる危険性が3.5倍、心筋梗塞などの虚血性心疾患で死亡する危険性が2.8倍高いことが報告されている。
【0006】
厚生労働省の調査では、午後10時以降の深夜業に従事する労働者がいる事業所は2割に上り、うち半数が交代勤務を導入している。労働生産性の低下といった経営上の問題だけでなく、労働者の疾病管理といった労働衛生上の観点からも、交替勤務に適応できるための製剤の開発が産業上強く求められている。
【0007】
高齢者は、概日リズムを形成するための内因性因子(例えばメラトニン)の合成低下が認められ、概日リズムの維持力の低下が懸念されている(非特許文献3)。
【0008】
また、視交叉上核(SCN)においてAVP(arginine vasopressin)およびVIP(vasoactive intestinal polypeptide)を発現している神経細胞は、リンパ液を脳内に注ぎ込むことにより時計信号を伝達していると考えられている。高齢者は、若年者に比べてAVP発現神経細胞数の発現に関する概日リズムの昼夜におけるメリハリが乏しい事が報告されている(図1参照:非特許文献4)。
【0009】
生活時間が不規則な若年者や深夜に及ぶ長時間残業を行わなければならない労働者は、しばしば就寝時刻や食事時刻が不規則になる事がきっかけで、外部環境と概日リズムにずれが生じ、体調不良になる場合がある。健康な若年被験者に交替勤務のシミュレーションを行わせた研究では、標準的な食事を食べさせた後の、血糖値、インスリンおよび脂質のレベルが生活リズムの変更により影響を受け、インスリン抵抗性および脂質代謝の変化が起こる事が報告されている(非特許文献5,6)。
【0010】
さらに先天的或いは後天的な全盲の人々は、その概日リズムの外部環境規制によらない自由進行(free running)に悩まされるケースが認められている。
【0011】
概日リズムの変調を調整するために、これまで様々な取組みがなされてきた。例えば、Czeisler Charles A & Kronauer RichardおよびMichimori Akihiroらは、十分な明るさの光を一定時間照射することで概日リズムの調整が可能であり、その方法について開示している(特許文献1,2)。また、概日リズム調整を行っている内因性ホルモンであるメラトニンあるいはメラトニン誘導体の投与が試みられている。また、最近では概日リズムを調整する新規化合物および方法の検索が行われている(特許文献3,4)。
【0012】
しかし、メラトニンには、催眠作用、内分泌系作用などの概日リズム調整以外の作用も有しており(非特許文献7)、概日リズム調整の目的で摂取すればそれらが副作用となってしまう。メラトニン誘導体や、体内でメラトニンに変換されるメラトニン前駆物質であるセロトニン、5-ヒドロキシトリプトファン、トリプトファンについても同様の副作用の問題が残る。特に、セロトニンを経口摂取すると、経口吸収性が悪く、消化器系・循環器系への悪影響が報告されている(非特許文献8,9)。また、新規化合物の安全性は証明されていない段階にある。副作用が無く、安全で、安心して摂取できる素材を摂取することによるリズム調整方法は、未だ見出されておらず強く社会から求められているのが現状である。
【0013】
光やメラトニン及びその誘導体等の他には、概日リズムを調整する可能性のある物質として、Peter McNamaraらが、レチノイン酸の概日リズム調整効果を細胞実験で示している(非特許文献10)。彼らの実験では、細胞にレチノイン酸を添加することにより、時計遺伝子の一つであるPer2の発現リズムの位相が後退することが報告されている。しかし、その他の物質による概日リズム調整効果については、ほとんど知られていない。
【特許文献1】WO9616697
【特許文献2】WO9719720
【特許文献3】特開2001-316281
【特許文献4】特開2003-335669
【特許文献5】特開2003-026573
【特許文献6】特開2003-81829
【特許文献7】特開2003-321394
【特許文献8】特開2006-8583
【非特許文献1】Postprandial hormone and metabolic responses among shift workers in Antarctica. Lund J. et al. Endocrinol, 2001;171:557-564
【非特許文献2】Impact of shift work and race/ethnicity on the diurnal rhythm of blood pressure and catecholamines. Yamasaki F. et al. Hypertension,1998;32:417-423
【非特許文献3】Vitiello MV. , Clin Corne rstone 2000;2(5):16-27;Mishima K. et al. ,Chronobiol Int 2000 May;17(3):419-32
【非特許文献4】Hoffman,M.A.,Swabb D.F.,1994. Alterations in circadian rhythmicity of the vasopressin-producing neurons of the human suprachiasmatic nucleus (SCN) with aging. Brain Res.651, 134-142
【非特許文献5】Altered postprandial hormone and metabolic responses in a simulated shift work environment. Ribeiro DCO et al. J Endocrinol, 1998;158:305-310
【非特許文献6】Postprandial hormone and metabolic responses in a simulated shift work environment. Hampton SM et al. J Endocrinol, 1996;151:259-267
【非特許文献7】Monti JM, Cardinali DP. , Biol Signals Recept 2000,9:328-39; reiter RJ., Ann Med 1998, 30:103-8
【非特許文献8】Hasler WL., Dig Dis Sci 1999 Aug; 44(8 Suppl):108S-113S;
【非特許文献9】van Zwieten PA, Blauw GJ, van Brummelen P., Cardiovasc Drugs Ther 1990 Dec;4(6):1443-7
【非特許文献10】Falcon J. , Prog Neurobiol 1999 Jun;58(2):121-62
【非特許文献11】Peter McNamara et al. Cell,105,877-889,2001
【非特許文献12】Jorge Mendoza et al. The Journal of Neuroscience 2005 25(6):1514-1522
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、概日リズムの乱れが原因で起こる生理現象(睡眠・覚醒・ホルモン分泌・体温・消化・血圧・代謝等)の変調を予防・改善・コントロールすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下の概日リズム調整組成物を提供することを目的とする。
項1. 以下の(i)から(vi)の1種又は2種以上を有効成分とする概日リズム調整組成物:
(i) フラボン、フラボノール、イソフラボン、フラバノン、アントシアニン及びフラバノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらの重合体もしくは誘導体;
(ii) ステロイド系サポニンまたはその誘導体;
(iii) セスキテルペノイドまたはその誘導体;
(iv) モナコリンKまたはその誘導体;
(v) リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリン、フォルスコリンまたはこれらの誘導体。
(vi) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
項2. 有効成分が以下の(i-1)から(vi) からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする項1記載の概日リズム調整組成物:
(i-1) ルテオリン、ゲニステイン、エピガロカテキンガレート、ケンペロール、ヘスペレチン、ケルセチン、クリシン、アピゲニン、ジオスメチン、モリン、ミリセチン、ナリンゲニン、ダイゼイン、バイオケニン A、ノビレチン、タンジェリン及びテアフラビンからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(ii-1)ユッカゲニン、ディオスゲニン、dioscin、F-gitonin、desgalactotigonin、timosaponin、ophiopogonin、サルササポゲニン、エビサルササポゲニン、スミラゲニン、ヤモゲニン、リナゲニン、ネオゴトゲニン、チゴゲニン、ネオチゴゲニン、エビスミラゲニン、ギトゲニン及びジギトゲニンからなる群から選ばれるステロイド系サポニンまたはこれらをアグリコンとするサポニンまたはこれらの誘導体;
(iii-1)farnesane, monocyclofarnesane, bicyclofarnesane, bisabolane, α,β-santalane, acorane, cadinane, himachalane, caryophyllane, cedrane, isocaryophyllane, humulane, germacrane, elemane, eudesmane, eremophilane, guaiane, ambrosane, aristrane及びdrimane からなる群から選ばれる共通骨格を有するセスキテルペノイドまたはこれらの誘導体;
(iv) モナコリンKまたはその誘導体;
(v)リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリン、フォルスコリンまたはこれらの誘導体。
(vi) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
項3. 概日リズムの調整が時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失または睡眠相遅延症候群の改善である項1または2に記載の概日リズム調整組成物。
項4. 以下の(a)〜(f)からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とするBmal1遺伝子の発現を抑制することにより概日リズムの位相を後退または前進させる概日リズム調整組成物。
(a) フラボン、イソフラボン、フラバノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(b) モナコリンK またはその誘導体;
(c) フォルスコリンまたはその誘導体;
(d)ステロイド系サポニンまたはその誘導体;
(e) セスキテルペノイドまたはその誘導体。
(f) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
項5. 有効成分が以下の(a1)、(b)、(c)、(d1)、(e1)及び(f)からなる群から選ばれる1種又は2種以上である項4記載の概日リズム調整組成物。
【0016】
(a1) ルテオリン、ゲニステイン、エピガロカテキンガレート、クリシン、アピゲニン、ジオスメチン、ダイゼイン、バイオケニンA、テアフラビンからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(b) モナコリンKまたはその誘導体;
(c) フォルスコリンまたはその誘導体;
(d1)ユッカゲニン、ディオスゲニン、dioscin、F-gitonin、desgalactotigonin、timosaponin、ophiopogonin、サルササポゲニン、エビサルササポゲニン、スミラゲニン、ヤモゲニン、リナゲニン、ネオゴトゲニン、チゴゲニン、ネオチゴゲニン、エビスミラゲニン、ギトゲニン、ジギトゲニンからなる群から選ばれるステロイド系サポニンまたはこれらをアグリコンとするサポニンまたはこれらの誘導体;
(e1) farnesane, monocyclofarnesane, bicyclofarnesane, bisabolane, α,β-santalane, acorane, cadinane, himachalane, caryophyllane, cedrane, isocaryophyllane, humulane, germacrane, elemane, eudesmane, eremophilane, guaiane, ambrosane, aristrane, drimane からなる群から選ばれる共通骨格を有するセスキテルペノイドまたはこれらの誘導体;
(f) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
項6. 概日リズムの調整が時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失、睡眠相遅延症候群からなる群から選ばれるいずれかの改善である項4または5記載の概日リズム調整組成物。
項7. 以下の(g)〜(h)の1種又は2種以上を有効成分とするBmal1遺伝子の発現を促進することにより概日リズムの位相を後退または前進させる概日リズム調整組成物。
(g) フラバノン、フラボノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(h) リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリンまたはその誘導体。
項8. 有効成分が(g1)および(h)からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする項7記載の概日リズム調整組成物。
【0017】
(g1)ケンペロール、ヘスペレチン、ケルセチン、モリン、ミリセチン、ナリンゲニン、ノビレチン、タンジェリンからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(h)リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリンまたはその誘導体からなる群の少なくとも1つ
項9. 概日リズムの調整が時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失、睡眠相遅延症候群の改善である項7または8記載の概日リズム調整組成物。
【発明の効果】
【0018】
以上に述べたことから、本発明により提供される概日リズム調整組成物は、時差ぼけ等の概日リズム変調を調整するために顕著に有効である事が明らかである。また、有効成分であるフラボノイド類、ステロイド系サポニン類、セスキテルペノイド類、カロテノイド類、モナコリンKおよびその他の化合物類およびそれらを有効成分として含む植物抽出物または菌体抽出物は、安全性が高く、副作用がほとんどないので、本発明の概日リズム調整組成物は使用上の問題がなく、有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明による概日リズム調整組成物の適用される対象者としては、
1)概日リズム障害に陥る危険のある者、即ち交代勤務者、海外渡航者など
2)睡眠相遅延症候群(delayed phase sleep syndrome)等の心理的不眠症の者
3)概日リズム障害に陥りやすい高齢者
4)不規則な生活行動が原因で概日リズム障害に陥ってしまう若年者および長時間残業者
5)失明等により概日リズムの非同期化している者
が想定され得るが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明に至る過程で、本発明者らは、20種類程度ある時計遺伝子の中で最も重要なものの一つであるBmal1のプロモーター領域にレポーター遺伝子を連結した遺伝子構築物を用いて、概日リズム全体をモニタリングし、投与物質の概日リズムに与える影響を評価するスクリーニング試験系を確立した。この試験系を用いて、種々の物質を投与し、概日リズムを調整する効果のあるものを探索した。
【0021】
概日リズムを調整する効果のあった物質(有効成分)の例を以下に列挙するが、これらに限定されるものではない。これら1)〜6)は、単独で摂取してもよく、2種以上を併用してもよい。
1)フラボノイド類
フラボノイド類として、フラボン、フラボノール、イソフラボン、フラバノン、アントシアニン、フラバノール及びこれらの重合体または誘導体が含まれる。フラボノイド類は、単独で用いてもよく、2種以上のフラボノイド類を併用してもよい。具体例としては、ルテオリン、ゲニステイン、エピガロカテキンガレート、ケンペロール、ヘスペレチン、ケルセチン、クリシン、アピゲニン、ジオスメチン、モリン、ミリセチン、ナリンゲニン、ダイゼイン、バイオケニン A、ノビレチン、タンジェリン、テアフラビン及びこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体を挙げる事が出来る。これらの物質を有効成分とするものであれば、植物抽出物の形態をとるものでも良い。
【0022】
これらの物質を有効成分とする抽出物の由来となる植物の具体例を以下に列挙するが、これらの例に限定されるものではない。
【0023】
キク科のヨモギ、春菊、紅花、カモミール、キャットニップ、キキョウ科のキキョウ、スイカズラ科のエルダーフラワー、エルダーベリー、スイカズラ、ツバキ科の紅茶、緑茶、烏龍茶、マテ茶、ブドウ科のブドウ、アカネ科のクチナシ、コーヒー、オギリ科のカカオ、タデ科のそば、ユキノシタ科のカシス、アカショウマ、甘茶、ユキノシタ、オオバコ科のサイリウム、オオバコ、ゴマ科のデビルズクロウ、ナス科のアシュワガンダ、トマト、ツツジ科のブルーベリー、ビルベリー、クランベリー、イネ科の赤米、紫とうもろこし、大麦、クワ科のマルベリー、ホップ、クワ、バラ科のラズベリー、プラム、エゾイチゴ、セイヨウキイチゴ、メドウスイート、甜茶、リンゴ、桃の花および蕾、マメ科のエンジュ、小豆、大豆、タマリンド,ミモザ、レッドクローバー、ヤマイモ科の紫ヤマイモ、ワイルドヤム、カキ科のカキ、バショウ科のバナナ、ヒルガオ科のヤマカワラムラサキイモ、サツマイモ、アオイ科のローゼル、ハイビスカス、ゼニアオイ、シソ科のミント、ローズマリー、赤シソ、エゴマ、アブラナ科の赤キャベツ、ブロッコリー、カブ、ミカン科のレモン、ミカン、シークワサー、chuan chen、イチョウ科のイチョウ、グミ科のサジー、ユリ科のたまねぎ、トケイソウ科のパッションフラワー、モクセイ科のオリーブ、ジャスミン、キョウチクトウ科のラフマ、ベンケイソウ科のカンカ、セリ科のセロリ、にんじん、バースニップ、フトモモ科のユーカリ、チョウジ。
2)ステロイド系サポニン類
ステロイド系サポニンまたはその誘導体から選ばれる1種または2種以上の混合物を概日リズムを調整するための有効成分として使用することができる。
【0024】
具体例としては、ユッカゲニン、ディオスゲニン、dioscin、F-gitonin、desgalactotigonin、timosaponin、ophiopogonin、サルササポゲニン、エビサルササポゲニン、スミラゲニン、ヤモゲニン、リナゲニン、ネオゴトゲニン、チゴゲニン、ネオチゴゲニン、エビスミラゲニン、ギトゲニン、ジギトゲニン及びこれらをアグリコンとするサポニンまたはこれらの誘導体を挙げる事が出来る。これらの物質を有効成分とするものであれば、植物抽出物の形態をとるものでも良い。これらの物質を有効成分とする抽出物の由来となる植物の具体例を以下に列挙するが、これらの例に限定されるものではない。
【0025】
ユリ科のユッカ、知母、麦門冬等の根茎、ハナスゲの根、サンキライ、キンコウカ、イワギボウシ、トチノキ科のトチノキの葉や実、リュウゼツラン科のNolina recurvata、キク科のキンセンカ(マリーゴールド)の花、ヤマノイモ科のヤマノイモ、マメ科のフェヌグリークの種皮。
3)セスキテルペノイド類
セスキテルペノイドまたはその誘導体からなる群の少なくとも1種または2種以上の混合物を概日リズムを調整するための有効成分として使用することができる。具体例としては、セスキテルペノイドの共通骨格が、farnesane, monocyclofarnesane, bicyclofarnesane, bisabolane, α,β-santalane, acorane, cadinane, himachalane, caryophyllane, cedrane, isocaryophyllane, humulane, germacrane, elemane, eudesmane, eremophilane, guaiane, ambrosane, aristrane, drimane であるものまたはこれらの誘導体を挙げる事が出来る。具体的な物質名では、アンブロシン、ビサボロール、β-カジネン、カリオフィレン、セドロール、ドリメノール、グアイオール、フムレン、ニバレノール、トリコデルミン、トリコテシン、α、β-オイデスモール、β−エレメン、エレモール、ケシルアルコール、α-シペロン、α-サントニン、ジンギベレン、ヒサポリン、ファルネソール、ネロリドール、アブシジン酸、ツルメロン、アトラクチロン、アラントラクトン、ヒネソール、セリネン等を挙げる事が出来る。これらの物質を有効成分とするものであれば、植物抽出物の形態をとるものでも良い。これらの物質を有効成分とする抽出物の由来となる植物の具体例を以下に列挙するが、これらの例に限定されるものではない。
【0026】
キク科のニトベギク、シナカ(santonica)、ソウジュツ、ビャクジュツ、カミツレ、シソ科のラベンダー、オミナエシ科のかのこ草、フトモモ科のチョウジ、セリ科のセロリ、バンレイシ科のイランイラン、マツ科のマツ、スギ科のスギ、ハマビシ科のユソウボク、アサ科のホップ、カヤツリグサ科の香附子、ショウガ科の生姜、ウコン、バラ科のバラ、イネ科のシトロネラ、レモングラス、ウマノスズクサ科のサイシン、オモダカ科のタクシャ。
4)菌体などに含まれる化合物
モナコリンKまたはそれを有効成分とする菌体抽出物が挙げられる。
具体例としては、紅麹抽出物が挙げられるが、この例に限定されるものではない。
5)その他の化合物
シリマリン、フォルスコリン、リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノールまたはこれらの誘導体が挙げられる。これらの化合物は、単独で、或いは2種以上を混合して概日リズムを調整するための有効成分として使用することができる。
【0027】
これらの化合物は純粋な化合物を使用してもよく、植物抽出物の形態をとるものでも良い。
【0028】
これらの化合物を含む抽出物の由来となる植物の具体例を以下に列挙するが、これらの例に限定されるものではない。
【0029】
キク科のMilk Thistle(マリアアザミ)、タラゴン、シソ科のコレウスフォルスコリン、バジル、ツツジ科のブルーベリー,ナス科のナス,イバラ科のウメ,ミカン科のミカン、パイナップル科のパイナップル、ブドウ科のブドウの果皮、マメ科のピーナッツの薄皮、タデ科のコジョウコン、フトモモ科のオールスパイス、クローブ、クスノキ科のシナモン、ショウガ科のターメリック、ニクズク科のナツメグ、ラン科のバニラ、クスノキ科のローレル、アカネ科のノニ、ナス科のベラドンナ。
6)セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
上で掲げた概日リズムを調整する効果のある物質には、Bmal1の発現を抑制する物質と促進する物質があった。発現を抑制する物質も促進する物質の何れも、概日リズムをコントロールする目的で使用すれば、有効である。以下にその使用方法の一例を示す。以下の使用方法では、時計遺伝子のプロモーターにレポーター遺伝子(例えばGFPなどの蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼなどの遺伝子)を連結した遺伝子構築物を、通常プラスミドとして用いて形質転換した組換え培養細胞を使用し、該培養細胞の培地に概日リズムを調整する物質を添加して、概日リズムを調整する。概日リズムを調整する物質としては、概日リズムの位相を遅らせる物質と、概日リズムの位相を進める物質のいずれも使用することができる。
【0030】
(A) Bmal1の発現を抑制することにより概日リズムの位相を遅らせる例
図2の矢印の位置(発現量/位相の転換点)で抑制成分を培地に添加すると、時計遺伝子の発現が一時的に抑制される。しばらくすると、時計遺伝子の発現は通常の状態に戻る。一時的に抑制されていた影響を受け、位相が後退する。
【0031】
なお、図2において縦軸はBmal1遺伝子の発現量、横軸は時間を表す。
【0032】
(B)Bmal1の発現を促進することにより概日リズムの位相を進める例
図3の矢印の位置(即ち、Bmal1の発現量が増加する時期)で促進成分を添加すると、時計遺伝子の発現が一時的に促進される。少量添加した場合や、作用時間が短い場合は、図のAで示したグラフのように、発現が一時的に加速された影響で、位相が前進する。大量に添加した場合や作用時間が長い場合には、図のBで示したグラフのように、発現促進による影響が、元のリズムの上限ピークを過ぎて発現が減少し始める時刻の後も継続され、発現が減少し始める時刻を遅らせ、その影響で位相が後退する。
【0033】
体内では、当該促進成分を摂取した量や代謝速度などの要因により、位相を前進させるか、後退させるかが変わってくる。これらは、例えば動物に促進成分を経口投与した時の行動量の変化を測定する方法などにより、どちらになるかを見極める事が可能である。また、当業者であれば、促進成分の動物試験での結果から、ヒトでは促進成分をどれくらい摂取すれば、目的とする概日リズム調整効果を得られるかを容易に推測する事が出来る。図3の縦軸はBmal1遺伝子の発現量、横軸は時間を表す。
【0034】
(C)Bmal1の発現を抑制することにより概日リズムの位相を進める例
図4の矢印の位置(即ち、Bmal1の発現量が低下する時期)で抑制成分を添加すると、時計遺伝子の発現減少が一時的に加速される。一時的に減少が加速された影響で、位相が前進する。なお、図3の縦軸はBmal1遺伝子の発現量、横軸は時間を表す。
【0035】
(D)Bmal1の発現促進と発現抑制を併用することにより概日リズムのメリハリを強める例
図5の「促進物質」および「「抑制物質」で示された矢印の位置で該当する物質を添加する。
【0036】
概日リズムの振幅が拡大され、メリハリの強いリズムに改善される。
【0037】
高齢者などのように昼夜のメリハリの小さい人の概日リズムの改善が期待できる。
図5の縦軸はBmal1遺伝子の発現量、横軸は時間を表す。
【0038】
明石らの研究報告(Makoto Akashi, Toru Takumi. Nature structural & molecular biology; 2005, (12) 5: 441-448)をもとに、マウスにおけるBmal1の発現リズムと外部環境との関連性を図6に示した。マウスの活動期である暗期開始1〜3時間後にBmal1の発現量の上限ピークが訪れ、休息期である明期開始1〜3時間後にBmal1の発現量の下限ピークが訪れる。
【0039】
マウスでは活動が盛んな暗期の始まりの1〜3時間に、行動量及び摂餌量が最も多くなることが知られている(非特許文献12)。この時、Bmal1の発現量は上昇途中で、ピークに到達しようとしている位相にあたる。このタイミングで発現を抑制する物質を摂取すれば位相を遅らせる事が出来、同じタイミングで発現を一時的に促進する物質を摂取すれば位相を進める事が出来ると考えられる。また、Bmal1の発現量が上限ピークを過ぎ、減少していく位相にあたる暗期後半から明期初めに、発現を抑制する物質を摂取すれば減少を加速させることにより位相を進める事が出来、同じタイミングで発現を促進する物質を摂取すれば位相を遅らせる事が出来ると考えられる。
【0040】
ヒトでは明期の始まりに当たる明け方にBmal1の発現量の下限ピークが訪れ、暗期の始まりに当たる夕方に、Bmal1の発現量の上限ピークが訪れると考えられている。従って、Bmal1の発現量が下限ピークを過ぎる朝方の、増加を始めるタイミングで発現を抑制する物質を摂取すれば位相を遅らせる事が出来、同じタイミングで発現を一時的に促進する物質を摂取すれば位相を進める事が出来ると考えられる。また、Bmal1の発現量が上限ピークを過ぎる夜の、減少を始めるタイミングで発現を抑制する物質を摂取すれば位相を進める事が出来、同じタイミングで発現を促進する物質を摂取すれば位相を遅らせる事が出来ると考えられる。図6の縦軸はBmal1遺伝子の発現量、横軸は時間を表す。
【0041】
交替勤務者は、勤務時間帯に合わせて睡眠時間帯を前後させることで身体状態を勤務時間帯に適合させようとする。その場合、睡眠時間帯を遅らせたい時には、概日リズムの位相を遅らせる物質を摂取し、睡眠時間帯を早めたい時には、概日リズムの位相を進める物質を摂取すれば、より簡単に、楽に、短日数で概日リズムを意図する状態に調整する事が可能である。図7に、摂取する物質の種類とタイミングの一例を示したが、この例に限定されるものではない。
【0042】
本発明の製剤の形態としては、例えば顆粒剤、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、ドリンク剤、懸濁剤、注射剤等をあげる事が出来る。これらの剤型を製造するには各種の製剤製造用物質、例えば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤等を使用することができる。
【0043】
本発明の概日リズム調整組成物は、食品に添加することもできる。食品に添加される際は、食品の形態は固体であっても、半固体であっても液体であってもよい。例えば、洋菓子、和菓子、スナック菓子、アイスクリーム、アイスミルクなどの冷菓、嗜好性飲料(例えば、清涼飲料、炭酸飲料(サイダー、ラムネ等)、薬味飲料、アルコール性飲料、粉末ジュースなど)、乳製品(牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム等)、氷菓、菓子類(あんこ、羊羹、饅頭、チョコレート、ガム、ゼリー、寒天、杏仁豆腐、ケーキ、カステラ、クッキー、煎餅、スナック菓子等)、パン、餅、水産煉製品(蒲鉾、ちくわ等)、畜肉加工品(ソーセージ、ハム等)、果実加工品(ジャム、マーマレード、果実ソース等)、調味料(ドレッシング、マヨネーズ、味噌等)、麺類(うどん、そば等)、漬物、および蓄肉、魚肉、果実の瓶詰、缶詰類などの食品に含まれる形態であり得る。
【0044】
本発明の概日リズム調整組成物を食品に添加するには特別な工程を必要とせず、食品の製造工程の初期において原料と共に添加するか、製造工程中に添加するか、あるいは製造工程の終期に添加する。添加方式は混和、混練、溶解、浸漬、散布、噴霧、塗布等通常の方法を食品の種類および性状に応じて選択する。本発明の食品は、当業者に公知の方法に従って調製され得る。
【0045】
本発明の概日リズム調整組成物は、摂取量に依存してリズムの調整を行うことができ、リズムの変調の程度により、摂取量或いは摂取のタイミングを変更すれば、リズム調整を行うことができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明する。
【0047】
実施例1
(1)時計遺伝子Bmal1の発現に関与する物質を同定するためのスクリーニング系を構築し、候補物質 のスクリーニングを行った。具体的な手順は以下の通りである。
(2)ルシフェラーゼ発光ベクターpGL3 basic(Promega社製)に、時計遺伝子hBmal1のプロモーター領域を組み込んで、組換えベクターを作製した。次に、この組換えベクターを培養細胞(マウス由来 繊維芽細胞 NIH-3T3)にトランスフェクトした。
(3)前記の組換えベクターは、Bmal1のプロモーター領域とルシフェラーゼ(発光性酵素)をコードする領域を持つ。従って、Bmal1のプロモーター領域にBmal1遺伝子の転写因子が結合すると、ルシフェラーゼが発現するため、培養細胞が発光する。この原理を利用して、発光量を計測することで、時計遺伝子Bmal1の発現リズムを推定することができる。
(4)次に、前記培養細胞を用いて候補物質の探索(スクリーニング)を行った。スクリーニングの開始時には、50%の血清を加えた培地で2時間培養することにより刺激を与え、各細胞のリズムの位相を同調させた。その後15分毎にルシフェラーゼ発光量を計測した。発光量の計測には、極微弱発光計測装置(浜松ホトニクス株式会社製)を用いた。
(5)候補物質の効果を見るために、前記のスクリーニング試験開始後、ルシフェラーゼ発光量が、下限ピークを過ぎ、上昇を開始するタイミングで候補物質添加した。試験物質の溶媒であるDMSOまたは水を同じタイミングで添加し、発光量の変化を比較した。候補物質は、DMSOまたは水に、10mM/Lまたは10mg/mlの濃度で溶解したものを、500倍に希釈になるように添加した。
(6)候補物質としてイソフラボンの1種であるゲニステインをDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図2の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。ゲニステインまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図8に示した。図8の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(counter per minutes:cpm)を示している。
(7)ゲニステイン溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に抑制され、その後再び発現を開始したが、一時的に抑制されていた影響で位相が後退した。
【0048】
実施例2
(1)候補物質としてモナコリンKを有効成分とする菌体抽出物の1種である紅麹をDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図2の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。紅麹または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図9に示した。図9の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)紅麹溶液を500倍に希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に抑制され、その後再び発現を開始したが、一時的に抑制されていた影響で位相が後退した。
【0049】
実施例3
(1)候補物質としてシリマリンを有効成分とするMilk Thistleの抽出物をDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図3の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。Milk Thistle抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図10に示した。図10の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)Milk Thistle抽出物を500倍に希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が飛躍的に促進され、その後も発現量が減少するのを抑制し続ける影響で、位相を後退させた。
【0050】
実施例4
(1)候補物質としてノビレチンおよびタンジエリンを有効成分とする柑橘系植物の1種であるChuan chenの抽出物をDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図3の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。Chuan chen抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図11に示した。図11の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)Chuan chen抽出物を500倍に希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が飛躍的に促進され、その後も発現量が減少するのを抑制し続ける効果により、位相を後退させた。
【0051】
実施例5
(1)候補物質としてフラボノールの1種であるケンペロールをDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図5の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。ケンペロールまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図12に示した。図12の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)ケンペロール溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が飛躍的に促進させ、リズムの振幅を大きくさせた。
【0052】
(位相の前進効果)
(1)培地に有効成分を添加した後、一定時間後に有効成分を添加していない培地と取り替えることにより図3の説明のような概日リズムの調整効果が確認される。
【0053】
(2)培地に有効成分を添加するのをBmal1の発現量が、上限ピークを過ぎ、下降を開始するタイミングにすることにより、図4の説明のような概日リズムの調整効果が確認される。
【0054】
実施例 6
(1)候補物質としてフラバノンの1種であるヘスペレチンを10mM/Lの濃度でDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図5の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。 ヘスペレチンまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図13に示した。図13の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)へスペレチン溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に促進されるリズム調整効果を示した。
【0055】
実施例 7
(1)候補物質としてEugenolを10mM/Lの濃度でDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図5の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。Eugenolまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図14に示した。図14の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)Eugenol溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に促進されるリズム調整効果を示した。
【0056】
実施例 8
(1)候補物質として有効成分がリスベラトロールであるブドウ果皮抽出物をDMSOに10mg/mlとなるように溶解した溶液を用いたところ、図5の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。 リスベラトロール含有ブドウ果皮抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図15に示した。図15の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)リスベラトロール含有ブドウ果皮抽出物溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に促進されるリズム調整効果を示した。
【0057】
実施例 9
(1)候補物質としてスコポレチンをDIMSOに10mM/Lの濃度で溶解した溶液を用いたところ、図5の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。スコポレチンまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図16に示した。図16の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)スコポレチン溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に促進されるリズム調整効果を示した。
【0058】
実施例 10
(1)候補物質の効果を見るために、前記のスクリーニング試験開始後、ルシフェラーゼ発光量が、上限ピークを過ぎ、下昇する途中のタイミングで候補物質添加した。試験物質の溶媒であるDMSOを同じタイミングで添加し、発光量の変化を比較した。候補物質は、DMSOに、10mM/Lまたは10mg/mlの濃度で溶解したものを、500倍に希釈になるように添加した。
(2)候補物質としてステロイド系サポニンの1種であるユッカゲニン(ユッカサポニン)を有効成分とするユッカエキスをDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図4の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。ユッカエキスまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図17に示した。図17の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(3)ユッカエキス溶液を500倍に希釈となるように添加すると、Bmal1の発現が一時的に抑制されるため発現の減少速度が一時的に加速され、その影響で発現リズムの位相が前進した。
【0059】
実施例 11
(1)候補物質としてフォルスコリンを有効成分とするコレウスフォルスコリ抽出物をDMSOに10mg/mlの濃度で溶解した溶液を用いたところ、図4の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。フォルスコリン含有コレウスフォルスコリ抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図18に示した。図18の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(3)コレウスフォルスコリ抽出物溶液を500倍に希釈となるように添加すると、Bmal1の発現が一時的に抑制されるため発現の減少速度が一時的に加速され、その影響で発現リズムの位相が前進した。
【0060】
実施例 12
(1)候補物質としてフラバノ−ルの1種であるエピガロカテキンガレート10mM/Lの濃度でDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図4の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。エピガロカテキンガレートまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較を図19に示した。図19の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)エピガロカテキンガレート溶液を500倍希釈となるように添加することで、Bmal1の発現が一時的に抑制されるため発現の減少速度が一時的に加速され、その影響で発現リズムの位相が前進した。
【0061】
実施例13
(1)候補物質としてセスキテルペノイドの1種を有効成分とするニトベギクエキスを10mg/mlの濃度でDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図4の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。ニトベギクエキスまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図20に示した。図20の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)ニトベギクエキスを500倍に希釈となるように添加すると、Bmal1の発現が一時的に抑制されるため発現の減少速度が一時的に加速され、その影響で発現リズムの位相が前進した。
【0062】
実施例14
(1)候補物質としてフラボンの1種であるChrysinを10mM/Lの濃度でDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図4の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。Chrysinまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図21に示した。図21の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)Chrysinを500倍に希釈となるように添加すると、Bmal1の発現が一時的に抑制されるため発現の減少速度が一時的に加速され、その影響で発現リズムの位相が前進した。
【0063】
実施例15
(1)候補物質としてセロリ種子からエタノールを溶媒として抽出した生成物を10mg/mlの濃度でDMSOに溶解した溶液を用いたところ、図4の説明のような概日リズムの調整に顕著な効果が見られた。セロリ種子抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化を図22に示した。図22の横軸は、時間(分)、縦軸は発光量(cpm)を示している。
(2)セロリ種子抽出物を500倍に希釈となるように添加すると、Bmal1の発現が一時的に抑制されるため発現の減少速度が一時的に加速され、その影響で発現リズムの位相が前進した。
【0064】
(位相の前進または後退効果の動物投与による判定方法)
(1)赤外線センサーによるマウスにおける行動量の変化測定モデルを用いて、投与物質の概日リズムの調整効果が確認される。また、同一物質の投与量による効果の変化も確認される。
【0065】
以下に試験方法の一例を挙げるが、この方法に限定されるものではない。
(2)24時間周期の明暗サイクル下で飼育したマウスは、夜行性である事から明期に低く暗期に高い行動量を示す。この明暗サイクルの位相を進めるか遅らせて位相シフトを起し、これを新規明暗サイクルとする。新規明暗サイクルにした直後は、概日リズムが新規明暗サイクルと同調できておらず、特に位相前進の際は2週間程度たってようやく新規明暗サイクルに再同調することもある。
(3)例えば、明暗サイクルを8時間前進させた直後では、以前の明暗サイクルに非常に近い位相で行動リズムを示しており、その結果新規暗期の総行動量は、以前の暗期の総行動量の約半分程度となる。その後、行動リズムの位相が同調するに従って暗期の行動量は増加し、約2週間で以前の暗期の総行動量とほぼ同じになり、再同調が完了する。
(4)この新暗期の開始直後に、毎日概日リズム調整効果のある有効成分を投与し続けることで、再同調するまでの期間をどれだけ短縮できるかにより概日リズム調整効果を判定できる。
(5)同一物質を同じタイミングで摂取しても、ある投与量では位相を前進させ、ある投与量では後退させるなど作用効果が変わる可能性があるが、投与量を変化させて行動量を測定することにより、その物質に求める概日リズム調整効果を得るための最適量を判定する事が出来る。
【0066】
実施例16
(1)時計遺伝子Bmal1の発現に関与する物質のin vivo におけるリズム調整効果を測定するために、候補物質としてフラバノンの1種であるヘスペレチンをマウスに摂取させて、行動リズムに与える影響を確かめた。
(2)C57 Black6 Jマウス 8週齢、♂を日本エスエルシー株式会社から購入し、CONTエサ(オリエンタル酵母工業株式会社製、実験動物飼育用飼料 MF)を食べさせながら、明期12h、暗期12hの明暗サイクルに十分に順応させて、行動量のサーカディアンリズムを形成させた。
(3)その後、明暗サイクルを消失させ、恒暗条件で飼育を続け、その間にA群(8匹)には、CONTエサを引き続き食べさせ、B群(8匹)には、 実験用飼料にヘスペレチンをやや高濃度に混合したエサを、C群(8匹)には実験用飼料にヘスペレチンをやや低濃度に混合したエサを、それぞれ自由摂食させた。
【0067】
恒暗条件で飼育すると光による時刻の手がかりはなくなるが、行動のリズムは消失せず、その行動リズムは、動物が本来持っている体内時計により形成されていると考えられている。
(4)赤外線センサーを用いた自発行動量測定装置(バイオテックス社製)を用いて、1分間毎の行動量をカウントし、記録した。
(5)CONT食のA群は、恒暗条件にした後も、どの個体もほとんど行動リズムに変化が見られなかった。やや高濃度にヘスペレチンを混合した餌のB群およびやや低濃度にヘスペレチンを混合した餌のC群では、行動リズムが大きく変化する個体が多く見られた。行動リズムが変化した個体は、いずれも、行動開始の時刻が徐々に早くなっていた。これは時計遺伝子が形成する体内時計の位相をヘスペレチンの時計遺伝子発現促進効果により前進させたためと考えられた。
【0068】
実施例17
(1)時計遺伝子Bmal1の発現に関与する物質のin vivo におけるリズム調整効果を測定するために、候補物質としてフラバノンの1種であるヘスペレチンをヒトに摂取させて、健常者の体温リズムに与える影響を確かめた。体温の変化には日内リズムがあり、午前中から上昇を続け、昼過ぎにピークを迎え、夕方から夜にかけて下降するリズムが一般的であることが良く知られている。
(2)ヘスペレチンのリズム調整効果を見るために、健常人男性(45歳、男性)に通常の就寝時刻(0:30)よりも2時間遅くまで夜更かしをさせ、2:30に就寝させた。翌朝通常の起床時刻よりも2時間遅い9:30に起床、10:00 に朝食摂取をさせ、睡眠時間量は同じだが、通常の行動リズムより2時間後退させる「夜更かし」負荷を与え、サーカデイアンリズムの位相をわざと後退させた。なお、夜更かしを実施する日の入浴時間および夕食の時間は、通常通りとした。
(3)この負荷試験の間、市販の鼓膜温測定器(オムロン けんおんくんMC-510)を用いて、30分毎に鼓膜温を3回測定し、平均値をその時刻の鼓膜温とした。
(4)「夜更かし」負荷をかけた翌日に鼓膜温を測定しながら、起床2時間後にあたる朝11:30にカプセルに入れたヘスペレチンを摂取した日と、同じ負荷をかけただけの日の鼓膜温の変化を比較した。なお、夜更かしの翌日は日光や運動による影響を避けるため外出せず、なるべく室内の同じ場所で過ごすようにさせた。また、昼食は通常より2時間遅い14:00に、夕食は通常通りの時刻の19:30に摂取させた。昼食および夕食の内容は、試験日間で量および内容になるべく差がないように配慮した。
(6)夜更かし負荷をかけた日を「平日」、その翌日に何も摂取しなかった日を「夜更かし翌日」、夜更かし負荷の翌日にヘスペレチンを摂取した日を「翌日朝ヘスペレチン摂取」とした。
【0069】
「平日」は、一般的に知られている通りの「午前中から上昇、昼過ぎにピーク、夕方から夜にかけて下降」の体温変化のリズムを示した。負荷をかけただけの「夜更かし翌日」は、通常の日に見られる午前および午後に見られる鼓膜温の上昇がなく、ずっと低値を示した後、夕方になってようやく鼓膜温の上昇が始まるなど温度変化のリズムの位相が大きく後退していた。負荷をかけた翌日、ヘスペレチンを摂取する「翌日朝ヘスペレチン摂取」では、鼓膜温の上昇が摂取後から始まり、「平日」と完全に同じではないが、かなり近い温度変化のリズムの位相に戻すことができた。
【0070】
これは時計遺伝子が形成する体内時計の位相を、ヘスペレチンの時計遺伝子発現促進効果により前進させたためと考えられた。
【0071】
実施例 18
(1)時計遺伝子Bmal1の発現に関与する物質のin vivo におけるリズム調整効果を測定するために、候補物質としてフラバノンの1種であるヘスペレチンをヒトに摂取させて、高齢者の体温リズムに与える影響を確かめた。高齢者では、健常者に見られような「午前中から上昇、昼過ぎにピーク、夕方から夜にかけて下降」の体温変化の明確なリズムがなく、変化の振幅の小さなメリハリのない体温変化のリズムになることが良く知られている。
(2)ヘスペレチンのリズム調整効果を見るために、高齢者男性( 75歳、男性)に通常の生活リズムで過ごさせ、起床2時間後の9:00にヘスペレチン入りのカプセルまたはプラセボ入りカプセルを摂取させた。この間に、市販の鼓膜温測定器(オムロン けんおんくんMC-510)を用いて、30分毎に鼓膜温を3回測定し、平均値をその時刻の鼓膜温とした。
(3)ヘスペレチンを摂取した日を「ヘスペレチン」、プラセボを摂取した日を「プラセボ」とした。
(4)プラセボを摂取した日の「プラセボ」では、高齢者に多く見られる朝、昼、夜で変化が小さく、ピークがはっきりしないメリハリの小さな(振幅の小さな)鼓膜温の変化リズムであったが、ヘスペレチンを摂取した日の「ヘスペレチン」では、午前中から鼓膜温の上昇が始まり、昼過ぎにピークがあり、夕方から夜にかけて下降する健常者とほとんど変わらない明確なメリハリのある鼓膜温の変化リズムを示した。
【0072】
これは時計遺伝子が形成する体内時計の発現リズムの振幅を、ヘスペレチンの時計遺伝子発現促進効果により増幅させたためと考えられた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】高齢者は、若年者に比べてAVP発現神経細胞数の発現に関する概日リズムの昼夜におけるメリハリが乏しい事の報告された図。
【図2】(A)Bmal1の発現を抑制することにより概日リズムの位相を遅らせる例
【図3】(B)Bmal1の発現を促進することにより概日リズムの位相を進めるまたは遅らせる例
【図4】(C)Bmal1の発現を抑制することにより概日リズムの位相を進める例
【図5】(D)Bmal1の発現促進と発現抑制を併用することにより概日リズムのメリハリを強める例
【図6】マウスにおけるBmal1の発現リズムと外部環境との関連性
【図7】交替勤務者が、概日リズムの位相を進め、或いは遅らせる際の摂取する物質の種類とタイミングの一例を示す。
【図8】ゲニステインまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図9】紅麹または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図10】Milk Thistle抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図11】Chuan chen抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比 較
【図12】ケンペロールまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図13】ヘスペレチンまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図14】Eugenolまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図15】リスベラトロールまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図16】スコポレチンまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図17】ユッカサポニンまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図18】フォルスコリンまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図19】エピガロカテキンガレートまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図20】ニトベギクエキスまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図21】Chrysinまたは溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【図22】セロリ種子抽出物または溶媒のDMSOのみを添加した際の培養細胞の発光量の変化の比較
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)から(vi)の1種又は2種以上を有効成分とする概日リズム調整組成物:
(i) フラボン、フラボノール、イソフラボン、フラバノン、アントシアニン及びフラバノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらの重合体もしくは誘導体;
(ii) ステロイド系サポニンまたはその誘導体;
(iii) セスキテルペノイドまたはその誘導体;
(iv) モナコリンKまたはその誘導体;
(v) リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリン、フォルスコリンまたはこれらの誘導体。
(vi) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
【請求項2】
有効成分が以下の(i-1)から(vi) からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする請求項1記載の概日リズム調整組成物:
(i-1) ルテオリン、ゲニステイン、エピガロカテキンガレート、ケンペロール、ヘスペレチン、ケルセチン、クリシン、アピゲニン、ジオスメチン、モリン、ミリセチン、ナリンゲニン、ダイゼイン、バイオケニン A、ノビレチン、タンジェリン及びテアフラビンからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(ii-1)ユッカゲニン、ディオスゲニン、dioscin、F-gitonin、desgalactotigonin、timosaponin、ophiopogonin、サルササポゲニン、エビサルササポゲニン、スミラゲニン、ヤモゲニン、リナゲニン、ネオゴトゲニン、チゴゲニン、ネオチゴゲニン、エビスミラゲニン、ギトゲニン及びジギトゲニンからなる群から選ばれるステロイド系サポニンまたはこれらをアグリコンとするサポニンまたはこれらの誘導体;
(iii-1)farnesane, monocyclofarnesane, bicyclofarnesane, bisabolane, α,β-santalane, acorane, cadinane, himachalane, caryophyllane, cedrane, isocaryophyllane, humulane, germacrane, elemane, eudesmane, eremophilane, guaiane, ambrosane, aristrane及びdrimane からなる群から選ばれる共通骨格を有するセスキテルペノイドまたはこれらの誘導体;
(iv) モナコリンKまたはその誘導体;
(v)リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリン、フォルスコリンまたはこれらの誘導体。
(vi) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
【請求項3】
概日リズムの調整が時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失または睡眠相遅延症候群の改善である請求項1または2に記載の概日リズム調整組成物。
【請求項4】
以下の(a)〜(f)からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とするBmal1遺伝子の発現を抑制することにより概日リズムの位相を後退または前進させる概日リズム調整組成物。
(a) フラボン、イソフラボン、フラバノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(b) モナコリンK またはその誘導体;
(c) フォルスコリンまたはその誘導体;
(d)ステロイド系サポニンまたはその誘導体;
(e) セスキテルペノイドまたはその誘導体。
(f) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
【請求項5】
有効成分が以下の(a1)、(b)、(c)、(d1)、(e1)及び(f)からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項4記載の概日リズム調整組成物。
(a1) ルテオリン、ゲニステイン、エピガロカテキンガレート、クリシン、アピゲニン、ジオスメチン、ダイゼイン、バイオケニンA、テアフラビンからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(b) モナコリンKまたはその誘導体;
(c) フォルスコリンまたはその誘導体;
(d1)ユッカゲニン、ディオスゲニン、dioscin、F-gitonin、desgalactotigonin、timosaponin、ophiopogonin、サルササポゲニン、エビサルササポゲニン、スミラゲニン、ヤモゲニン、リナゲニン、ネオゴトゲニン、チゴゲニン、ネオチゴゲニン、エビスミラゲニン、ギトゲニン、ジギトゲニンからなる群から選ばれるステロイド系サポニンまたはこれらをアグリコンとするサポニンまたはこれらの誘導体;
(el) farnesane, monocyclofarnesane, bicyclofarnesane, bisabolane, α,β-santalane, acorane, cadinane, himachalane, caryophyllane, cedrane, isocaryophyllane, humulane, germacrane, elemane, eudesmane, eremophilane, guaiane, ambrosane, aristrane, drimane からなる群から選ばれる共通骨格を有するセスキテルペノイドまたはこれらの誘導体;
(f) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
【請求項6】
概日リズムの調整が時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失、睡眠相遅延症候群からなる群から選ばれるいずれかの改善である請求項4または5記載の概日リズム調整組成物。
【請求項7】
以下の(g)〜(h)の1種又は2種以上を有効成分とするBmal1遺伝子の発現を促進することにより概日リズムの位相を後退または前進させる概日リズム調整組成物。
(g) フラバノン、フラボノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(h) リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリンまたはその誘導体。
【請求項8】
有効成分が(g1)および(h)からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする請求項7記載の概日リズム調整組成物。
(g1)ケンペロール、ヘスペレチン、ケルセチン、モリン、ミリセチン、ナリンゲニン、ノビレチン、タンジェリンからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(h)リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリンまたはその誘導体からなる群の少なくとも1つ
【請求項9】
概日リズムの調整が時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失、睡眠相遅延症候群の改善である請求項7または8記載の概日リズム調整組成物。
【請求項1】
以下の(i)から(vi)の1種又は2種以上を有効成分とする概日リズム調整組成物:
(i) フラボン、フラボノール、イソフラボン、フラバノン、アントシアニン及びフラバノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらの重合体もしくは誘導体;
(ii) ステロイド系サポニンまたはその誘導体;
(iii) セスキテルペノイドまたはその誘導体;
(iv) モナコリンKまたはその誘導体;
(v) リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリン、フォルスコリンまたはこれらの誘導体。
(vi) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
【請求項2】
有効成分が以下の(i-1)から(vi) からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする請求項1記載の概日リズム調整組成物:
(i-1) ルテオリン、ゲニステイン、エピガロカテキンガレート、ケンペロール、ヘスペレチン、ケルセチン、クリシン、アピゲニン、ジオスメチン、モリン、ミリセチン、ナリンゲニン、ダイゼイン、バイオケニン A、ノビレチン、タンジェリン及びテアフラビンからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(ii-1)ユッカゲニン、ディオスゲニン、dioscin、F-gitonin、desgalactotigonin、timosaponin、ophiopogonin、サルササポゲニン、エビサルササポゲニン、スミラゲニン、ヤモゲニン、リナゲニン、ネオゴトゲニン、チゴゲニン、ネオチゴゲニン、エビスミラゲニン、ギトゲニン及びジギトゲニンからなる群から選ばれるステロイド系サポニンまたはこれらをアグリコンとするサポニンまたはこれらの誘導体;
(iii-1)farnesane, monocyclofarnesane, bicyclofarnesane, bisabolane, α,β-santalane, acorane, cadinane, himachalane, caryophyllane, cedrane, isocaryophyllane, humulane, germacrane, elemane, eudesmane, eremophilane, guaiane, ambrosane, aristrane及びdrimane からなる群から選ばれる共通骨格を有するセスキテルペノイドまたはこれらの誘導体;
(iv) モナコリンKまたはその誘導体;
(v)リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリン、フォルスコリンまたはこれらの誘導体。
(vi) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
【請求項3】
概日リズムの調整が時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失または睡眠相遅延症候群の改善である請求項1または2に記載の概日リズム調整組成物。
【請求項4】
以下の(a)〜(f)からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とするBmal1遺伝子の発現を抑制することにより概日リズムの位相を後退または前進させる概日リズム調整組成物。
(a) フラボン、イソフラボン、フラバノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(b) モナコリンK またはその誘導体;
(c) フォルスコリンまたはその誘導体;
(d)ステロイド系サポニンまたはその誘導体;
(e) セスキテルペノイドまたはその誘導体。
(f) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
【請求項5】
有効成分が以下の(a1)、(b)、(c)、(d1)、(e1)及び(f)からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項4記載の概日リズム調整組成物。
(a1) ルテオリン、ゲニステイン、エピガロカテキンガレート、クリシン、アピゲニン、ジオスメチン、ダイゼイン、バイオケニンA、テアフラビンからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(b) モナコリンKまたはその誘導体;
(c) フォルスコリンまたはその誘導体;
(d1)ユッカゲニン、ディオスゲニン、dioscin、F-gitonin、desgalactotigonin、timosaponin、ophiopogonin、サルササポゲニン、エビサルササポゲニン、スミラゲニン、ヤモゲニン、リナゲニン、ネオゴトゲニン、チゴゲニン、ネオチゴゲニン、エビスミラゲニン、ギトゲニン、ジギトゲニンからなる群から選ばれるステロイド系サポニンまたはこれらをアグリコンとするサポニンまたはこれらの誘導体;
(el) farnesane, monocyclofarnesane, bicyclofarnesane, bisabolane, α,β-santalane, acorane, cadinane, himachalane, caryophyllane, cedrane, isocaryophyllane, humulane, germacrane, elemane, eudesmane, eremophilane, guaiane, ambrosane, aristrane, drimane からなる群から選ばれる共通骨格を有するセスキテルペノイドまたはこれらの誘導体;
(f) セロリ種子からエタノールまたはグリセリンにより抽出される生成物
【請求項6】
概日リズムの調整が時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失、睡眠相遅延症候群からなる群から選ばれるいずれかの改善である請求項4または5記載の概日リズム調整組成物。
【請求項7】
以下の(g)〜(h)の1種又は2種以上を有効成分とするBmal1遺伝子の発現を促進することにより概日リズムの位相を後退または前進させる概日リズム調整組成物。
(g) フラバノン、フラボノールからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(h) リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリンまたはその誘導体。
【請求項8】
有効成分が(g1)および(h)からなる群から選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする請求項7記載の概日リズム調整組成物。
(g1)ケンペロール、ヘスペレチン、ケルセチン、モリン、ミリセチン、ナリンゲニン、ノビレチン、タンジェリンからなる群から選ばれるフラボノイドまたはこれらをアグリコンとする配糖体またはこれらの誘導体;
(h)リスベラトロール、スコポレチン、オイゲノール、シリマリンまたはその誘導体からなる群の少なくとも1つ
【請求項9】
概日リズムの調整が時差ぼけ、交替勤務による変調、生活リズムの変調、高齢者の昼夜リズムの消失、睡眠相遅延症候群の改善である請求項7または8記載の概日リズム調整組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2008−266319(P2008−266319A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85116(P2008−85116)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)
【Fターム(参考)】
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