説明

榛の木抽出物を含有する抗ウイルス組成物

本発明は榛の木(Alnus japonica)抽出物を含有する抗ウイルス組成物に関し、より詳細には、抗インフルエンザウイルス(anti-influenza virus)活性が高い榛の木の樹皮、または幹抽出物の製造方法及び前記抽出物を含有する抗インフルエンザウイルス組成物に関する。本発明による榛の木の樹皮、または幹抽出物は正常細胞に対する毒性が低く、低濃度で投与する場合にも、優れた抗インフルエンザウイルス効果を有しており、インフルエンザウイルス感染の予防及び病症改善のための食品、または医薬組成物等に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は榛の木(Alnus japonica)抽出物を含有する抗ウイルス組成物に関し、より詳細には、抗インフルエンザウイルス(anti-influenza virus)活性が高い榛の木の樹皮または幹抽出物の製造方法及び前記抽出物を含有する抗インフルエンザウイルス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鳥インフルエンザウイルスは、オルソミクソウイルス科(orthomyxoviridae)に属し、主に鶏や七面鳥等の家禽類に多くの害を与える。鳥インフルエンザウイルスは病原性に応じて高病原性、弱病原性、非病原性鳥インフルエンザウイルスの3種類に分けられ、その中で高病原性は国際獣疫事務局(OIE)でリストAに、韓国では第1種家畜伝染病と分類している。
【0003】
インフルエンザウイルスはマトリックス蛋白質とヌクレオカプシド蛋白質の抗原性に応じてA、B、C型ウイルスに分類され、宿主細胞レセプター結合、及び宿主細胞膜とウイルス外皮との融合を助け、ウイルス感染を招く血球凝集蛋白質(haemagglutinin、HA)、並びにウイルス増殖後のウイルスが細胞から出芽される時に重要な役割を果たすノイラミダーゼ(neuraminidase、NA)の抗原構造の差により、HAは16種類、そしてNAは9種類の亜型(subtype)に分類される。理論的には二つの蛋白質の組み合わせによって、合わせて144種類のウイルス亜型が存在することとなる。
【0004】
感染は、鳥類の分泌物との直接接触によって主に起き、飛沫、水、人の足、飼料車、機構、装備、卵の殻に付いた糞などによっても伝播可能である。症状は感染したウイルスの病原性により多様であるが、概して呼吸器症状、下痢及び急激な産卵率の減少として現れる。場合によっては、鶏冠など頭部にチアノーゼが現れたり、顔面に浮腫ができたり、羽毛が1ヶ所に集まる現象が現れたりもする。斃死率も病原性により0〜100%と幅があるが、ニューカッスル病、伝染性喉頭気管炎、及びマイコプラズマ感染症等とも症状が似ているため、正確な診断が必要である。
【0005】
高病原性鳥インフルエンザは、1959〜2003年まで世界に23回発病したことがあるが、多くは局地的な発生で終息した。2003年12月韓国で発生したH5N1亜型高病原性鳥インフルエンザは、日本、中国、タイ、ベトナム、インドネシア等の多くの東南アジアの国々と、ヨーロッパ、アフリカ等、30ケ国以上で発病して、世界的な発病の様相を見せた。鳥インフルエンザウイルスは人間に直接伝染できないと報告されたが、香港における1997年のH5N1人体感染事例、1999年のH9N2鳥インフルエンザウイルスの人体分離事例、及び2004年にカナダで発生したH7鳥インフルエンザウイルスの人体感染事例によって、鳥インフルエンザウイルスの公衆保健学的重要性が日ごとに増加している。世界保健機構(WHO)の報告によると、2003年から2006年6月20日まで10ケ国から228人がH5N1亜型ウイルスに感染し、この中の130人の死亡が確認されている。韓国でも1996年H9N2亜型ウイルス感染による低病原性鳥インフルエンザが発生した以後、1999年に再発生した。
【0006】
鳥インフルエンザが発生すると、多くの国では全羽殺処分しなければならなく、これによって発生国では養鶏産物を輸出できなくなるため、養鶏産業に莫大な被害を与えると共に、人体感染の危険がある場合には観光産業、運送業等の産業全般に被害が広がるため、莫大な損失を招く。
【0007】
天産物は人工的な材料を加えない自然そのままの物を意味するが、GRAS(Generally Recognized As Safe)で分類された天産物は、使用量や対象食品を規制せずに韓国内では天然添加物に分類されて、食品添加物にも使われる。外国では特別な制限なしに使用者の意思により自由に利用できる物質であり、機能性が優れて、健康食品と医薬品にも利用されている。
【0008】
一方、榛の木(Alnus japonica)は双子葉植物、ブナ目、カバノキ科、落葉高木である。韓国、日本、中国などに分布して、湿地に自生し、その高さが20mに達し、木の皮は紫褐色であり、冬芽は卵を逆さまに立てた形をした長い楕円形で、三つの稜線があって袋がある。葉は交互に成長し、楕円形、披針状の卵形、または披針形であり、両面に光沢があって、縁がノコギリの歯の形をしている。花は3〜4月に咲き、単性であり、尾状花序に付く。雄花は雄花穂状花序に付き、各苞に3〜4個ずつ入っており、花被裂片と雄ずいは4個ずつである。果穂は10月に成熟し、2〜6個ずつ付いて、長い卵の形をしており、松毬のように見える。
【0009】
榛の木抽出物と関連する従来特許としては、榛の木抽出物を含む化粧料組成物(韓国特許公開第2003−0074500号)及び榛の木抽出物と緑茶葉抽出物を利用した二日酔い解消健康飲物の製造方法(韓国特許公開第2006−0023093号)等がある。
【0010】
現在、世界的に抗ウイルス剤を開発するために多大な努力を払っており、ヒト免疫不全ウイルス−1及びB型肝炎の治療にラミブジン(lamivudine)、ヘルペスウイルス感染症治療にガンシクロビル(gancyclovir)、呼吸器多核体ウイルス(respiratory syncytial virus)及び感染症に主に使われるが、緊急時に多様なウイルス感染症に使われるリバビリン(ribavirin)等が許可されて市販されており、インフルエンザウイルスのノイラミダーゼ阻害物質として人工合成されたザナミビル(zanamivir、RelenzaR)とオセルタミビル(oseltamivir、TAMIFLU(商標))も許可されて市販中にある。しかし、A型インフルエンザウイルス治療のために許可されたアマンタジン(amantadine)と類似物質のリマンタジン(rimantadine)は耐性ウイルス出現と、副作用で最近その使用範囲が縮小され、最近H5N1鳥インフルエンザウイルスの中でオセルタミビルに対する耐性を示すウイルスも出現して、多様な抗ウイルス剤開発が急がれる。
【0011】
本発明者らは韓国特許第10−0721703号及び第10−0769050号で榛の木メタノール抽出物の抗ウイルス活性を確認した。しかし、前記特許では榛の木抽出物を高濃度で投与した場合にだけ抗ウイルス活性を示す短所があり、その利用には限界があった。
【0012】
そこで、本発明者らは正常細胞に対して毒性が低く、低濃度で投与した場合にもインフルエンザウイルスの増殖抑制効能が優れた天然物質を開発するために鋭意努力した結果、韓国産榛の木(Alnus japonica)の樹皮、または幹を30〜80℃で80〜100%エタノールで抽出した抽出物が、優れた抗インフルエンザウイルス効果を示すことを確認し、本発明の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の主な目的は、高い抗インフルエンザウイルス活性を示す榛の木(Alnus japonica)の樹皮、または幹抽出物の製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、前記方法によって製造された榛の木の樹皮または幹抽出物を含むインフルエンザウイルス感染の予防、または改善用食品組成物を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、前記方法によって製造された榛の木の樹皮、または幹抽出物を含むインフルエンザウイルス感染の予防、または治療用医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は一側面において、(a)韓国産榛の木の樹皮、または幹を80〜100%エタノールで30〜80℃で抽出する段階、及び(b)前記抽出液を同一温度で真空濃縮及び乾燥して回収する段階を含む抗インフルエンザウイルス活性を示す榛の木(Alnus japonica)の樹皮または幹抽出物の製造方法を提供する。
【0016】
本発明はまた他の側面において、前記方法によって製造された榛の木の樹皮、または幹抽出物及び食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含有するインフルエンザウイルス(influenza virus)感染の予防、または改善用食品組成物を提供する。
【0017】
本発明はさらに他の側面において、前記方法によって製造された榛の木の樹皮、または幹抽出物を有効性分で含有するインフルエンザウイルス(influenza virus)感染の予防、または治療用医薬組成物を提供する。
【0018】
さらに、本発明は前記方法によって製造された榛の木の樹皮、または抽出物のインフルエンザウイルス感染の予防、または治療するための使用を提供する。
【0019】
さらに、本発明はまた、前記方法によって製造された榛の木の樹皮、または抽出物を利用したインフルエンザウイルス感染の予防、または治療方法を提供する。
【0020】
本発明において、前記インフルエンザウイルスは、好ましくはヒトインフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、馬インフルエンザウイルス及び鳥インフルエンザウイルスから構成された群から選択されることを特徴とし、望ましくは、前記鳥インフルエンザウイルスは、KBNP−0028(寄託番号KCTC 10866BP)であることを特徴とする。
【0021】
本発明の他の特徴及び具現例は、次の詳細な説明及び添付された特許請求の範囲からより一層明白になるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は一側面において、(a)韓国産榛の木の樹皮、または幹を80〜100%エタノールで30〜80℃で抽出する段階、及び(b)前記抽出液を同一温度で真空濃縮及び乾燥して回収する段階を含む抗インフルエンザウイルス活性を示す榛の木(Alnus japonica)の樹皮または幹抽出物の製造方法に関する。
【0023】
本発明の一実施形態では榛の木の樹皮、または幹を粉末化した後、エタノール、または水を加えて、熱水抽出、冷浸抽出、還流冷却抽出または超音波抽出等の抽出法を使って抽出した後、遠心分離して、榛の木の樹皮、または幹抽出物を取得した。
【0024】
本発明では鳥インフルエンザウイルスで感染したSPF発育卵に榛の木の樹皮、または幹抽出物含有組成物を添加して培養した後、平板血球凝集検査を行った結果、榛の木の樹皮、または幹抽出物含有組成物が低い投与濃度でも優れた抗インフルエンザウイルス効果を有することを確認した。
【0025】
本発明はさらに他の側面において、前記方法によって製造された榛の木の樹皮、または幹抽出物を有効性分で含有するインフルエンザウイルス(influenza virus)感染の予防、または治療用医薬組成物に関する。
【0026】
本発明において、前記インフルエンザウイルスは、好ましくはヒトインフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、馬インフルエンザウイルス及び鳥インフルエンザウイルスから構成された群から選択されることを特徴とし、望ましくは、前記鳥インフルエンザウイルスは、KBNP−0028(寄託番号KCTC 10866BP)であることを特徴とすることができる。
【0027】
本発明の榛の木の樹皮、または幹抽出物は天然物質であるため、毒性が全くなく、医薬品として持続的に多量に使うことができる。
【0028】
本発明の榛の木の樹皮、または幹抽出物を含む組成物は、既に使われている抗ヒスタミン剤、消炎鎮痛剤、抗ガン剤及び抗生剤などの薬剤と共に製剤化することができ、併用することで使用することができる。
【0029】
本発明の組成物の薬学的投与形態は、これらの薬学的許容可能な塩の形態において使用してもよく、単独で、または他の薬学的活性化合物と混合するだけでなく、適正な集合として使用してもよい。
【0030】
本発明による抽出物を含む医薬組成物は、各々通常の方法により散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口型剤形、外用剤、座剤及び滅菌注射溶液の形態で剤形化して使われる。抽出物を含む組成物に含まれる担体、賦形剤及び希釈剤としてはラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムポスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、未晶質セルロース、ポリビニールピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
【0031】
製剤化する場合には通常使う充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を使って調製することができる。経口投与のための固形剤には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形剤は前記抽出物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、カルシウムカルボネート(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)、またはラクトース(lactose)、ゼラチン等を混ぜて調製される。また、単なる賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も使われる。経口投与のための液状製剤としては懸濁剤、内容液剤、乳剤、及びシロップ剤等があるが、よく使われる単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に種々の賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤等が含まれる。非経口投与のための製剤には滅菌された水溶液、非水生溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、座剤が含まれる。非水生溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポルエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステル等が使われる。座剤の基剤としては、ウィテプゾール(witepsol)、マークロゴル、ツイーン(tween)60、カカオ脂、ラウリン脂、及びグリセロールゼラチン(glycerol gelatine)などが使われる。
【0032】
本発明の抽出物の望ましい投与量は、患者の状態及び体重、病気の程度、薬品形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適切に選択できる。しかし、望ましい効果を得るため、本発明の抽出物は1日0.01〜200mg/kg、望ましくは0.1〜100mg/kg投与する。投与は1日に1回投与してもよく、数回に分けて経口投与してもよい。前記投与量は如何なる面からも本発明の範囲を限定するのではない。
【0033】
本発明の抽出物はネズミ、ハツカネズミ、家畜、人間などのほ乳動物に多様な経路で投与される。全ての投与方式は予想され、例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内膜、または脳血管内へ注射することによって投与される。
【0034】
本発明はまた他の側面において、前記方法によって製造された榛の木の樹皮、または幹抽出物及び食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含有するインフルエンザウイルス(influenza virus)感染の予防、または改善用食品組成物に関する。
【0035】
本発明において、前記インフルエンザウイルスは、好ましくはヒトインフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、馬インフルエンザウイルス及び鳥インフルエンザウイルスから構成された群から選択されることを特徴とし、望ましくは、前記鳥インフルエンザウイルスは、KBNP−0028(寄託番号KCTC 10866BP)であることを特徴とすることができる。
【0036】
本発明の抽出物を含有する組成物または薬学的に許容可能なその塩は、多様な機能性食品及び健康機能性食品の製造時、食品の主成分または添加剤及び補助剤として使われる。
【0037】
本発明において「機能性食品」とは、一般食品に本発明の抽出物を添加することによって一般食品の機能性を向上させた食品を意味する。機能性は物性と生理機能性とに大きく分けられ、本発明の抽出物を一般食品に添加する場合、一般食品の物性及び生理機能性が向上し、本発明はこのような向上した機能を有する食品を包括的に「機能性食品」と定義する。
【0038】
前記以外に本発明の抽出物は種々の栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレート等)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭酸化剤等を含有することができる。その他に、本発明の抽出物は、天然果物ジュース及び果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。このような成分は、独立的に、または組み合わせて使える。このような添加剤の割合は、さほど重要なことではないが、本発明の抽出物100重量部当たり0.01〜20重量部の範囲で選択されるのが一般的である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を通して、本発明をより一層詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、下記実施例は他の形態で変形されるため、本発明の範囲がこれらの実施例によって、制限されると解釈されないのは当業界で通常の知識を有する者には自明であろう。
【0040】
《実施例1:榛の木抽出物の製造》
1−1:抽出溶媒及び温度毎の抽出物の製造
ギョンドン市場(ソウル所在)で購入した韓国産榛の木の樹皮を常温で24時間乾燥させて細切及び破砕した。前記細切及び破砕させた榛の木の切片1kgに95%エタノール10リットルを加えて、各40℃、60℃及び80℃で8時間還流抽出するか、水10リットルを加えて、100℃で4時間還流抽出してから、真空ろ過した後、上澄液を回収して、榛の木の有用性分を溶出した。前記溶出された成分を真空で24時間乾燥させて榛の木の粉末100gを得た。これを99.9%のDMSO(dimethyl sulfoxide)溶液に20mg/mLになるよう溶解して、下記実験に使った。
【0041】
比較実験のために韓国特許第10−0721703号及び第10−0769050号(榛の木抽出物を含有する抗ウイルス組成物)の実施例1の製造方法によって製造された榛の木の樹皮抽出物を対照群として実験した。
【0042】
1−2:榛の木原料別抽出物の製造
ギョンドン市場で購入した韓国産榛の木の樹皮、幹及び中国延辺市場で購入した中国産榛の木の樹皮を常温で24時間乾燥させて細切及び破砕した。前記細切及び破砕させた榛の木の切片1kgに各80%、95%エタノール10リットルを加えて、40℃で還流抽出してから、真空ろ過した後、上澄液を回収して、真空の有用性分を溶出した。前記溶出された成分を真空で24時間乾燥させて、100gの榛の木の粉末を取得し、これを99.9%のDMSO(dimethyl sulfoxide)溶液に20mg/mLになるよう溶解して下記実験に使った。
【0043】
《実施例2:榛の木抽出物の抗ウイルス効果検査》
2−1:KBNP−0028の製造
実験に使った鳥インフルエンザウイルスは、2000年韓国内で分離したA/chicken/Korea/SNU0028/2000(H9N2)ウイルスをニワトリ胚で継代してクローニングした、増殖性の優れたKBNP−0028(韓国特許出願番号2006−0026591)を使った。即ち、SNU0028[A/chicken/Korea/SNU0028/00(H9N2);国立獣医科学検疫院分離申告、2005年5月9日]は、斃死及び産卵低下を示す肉用種鶏から分離したH9N2亜型の低病原性鳥インフルエンザウイルスで、前記ウイルスは2000年1月28日韓国全羅北道に所在する肉用種鶏農場から分離した。その分離方法は、感染鶏の腎臓と器官試料を乳剤にし燐酸緩衝溶液に浮遊して、直径0.45μmのろ過紙にろ過した後、各試料をSPF発育卵(Sunrise Co., NY)3個の尿膜腔(allantoic cavity)に接種してから、37℃で培養した後、尿膜液(allantoic fluid)を得た。前記尿膜液20μLとSPF発育卵(Sunrise Co., NY)を孵化させた鶏から抽出した0.1%鶏赤血球20μLをガラス平板に滴下後、混合して、平板血球凝集検査を行った。
【0044】
その結果、腎臓と気管試料を接種して得た全尿膜液は血球凝集塊を形成し、H9N2特異プライマーを利用したRT−PCR及び塩基配列分析でウイルスを同定(金ミンチョル、2002年度ソウル大学大学院修士学位論文)して−70℃で保存し、このうち、気管試料から分離したウイルスを実験に使った。
【0045】
発育卵高生産性ワクチン株を選抜するために、前記分離したSNU0028を0.05〜0.5 HAU/mL濃度で、燐酸緩衝溶液で希釈し、200μLの量で10〜11日齢SPF種卵(Sunrise Co., NY)に尿膜腔経路で接種して、3日間37℃で培養した。毎日午前と午後に検卵を介して、3日になる前に死んだ発育卵は廃棄した。3日間生存した発育卵は4℃で12〜24時間保管した後、尿膜液を回収し、各々に対してその体積と血球凝集力価を測定し、量が最も多くかつ血球凝集力価が高い尿膜液を同様な方法で発育卵に接種して、19代継代して血球凝集力価が高く、尿膜液収穫量が高くて、生産性が増加したものを分離してKBNP−0028と命名し、これを韓国大田市儒城区オウンドンに位置する遺伝子銀行に2005年10月26日付で寄託した(寄託番号KCTC 10866BP)。
【0046】
2−2:種卵小片培養
10〜11日齢のSPF種卵(Sunrise Co., NY)の卵殻を70%エタノールで洗浄した後、ニワトリ胚と全ての体液を除去した。卵殻の内面に付いた絨毛尿膜が落ちないように横約8mm×縦約8mmの大きさで切って、24ウェル培養容器に1個ずつ入れた。培養培地は199培地(GIBCO-BRL, NY, USA)とF10培地(GIBCO-BRL, NY, USA)を1:1で混合した後、重炭酸ソーダ0.075%及びゲンタマイシン(gentamicin)100μg/mLを添加して製造した。
【0047】
前記10〜11日齢のSPF発育卵(Sunrise Co., NY)に前記実施例2−1で製造されたKBNP−0028尿膜液原液を4〜10倍に希釈し、種卵小片の絨毛尿膜面に100μLを添加した後、37℃で30分間培養して、ウイルスを感染させた。前記培養培地1,000μLを添加して、実施例1−1及び1−2の榛の木抽出物を濃度毎に各々6個ずつウェルに添加した後、ウイルス感染液を37℃で7日間培養した。
【0048】
2−3:抗ウイルス効果検査
前記2−2で7日間培養された各濃度毎の榛の木抽出物が添加されたウイルス感染液の培養液を採取して、平板血球凝集検査を行った。培養液25μLと洗浄鶏赤血球(0.1%)25μLをガラス板の上に同量添加し、混和して、ガラス板を上下左右に動かして、2分以内血球凝集塊の形成有無でウイルスの増殖有無を確認した。
【0049】
【表1】

【0050】
その結果、表1に示されたように、陰性対照群である100℃水抽出物の場合には、400μg/mL濃度では6個の実験群中1個の血球凝集塊が形成されて部分的な抗ウイルス効果が示されたが、100μg/mL及び50μg/mL濃度では6個の実験群中6個全てに血球凝集塊が形成されて、ウイルス増殖を抑制できないことが分かった。
【0051】
一方、80℃で抽出した95%エタノール抽出物の場合、6個の実験群中血球凝集塊が形成されるものがなく、200μg/mL濃度までは完璧にウイルスの増殖を抑制し、100μg/mL濃度では6個の実験群中2個の血球凝集塊が形成されて、部分的な抗ウイルス効果が示され、50μg/mL濃度では6個の実験群中5個の血球凝集塊が形成されて、抗ウイルス効果が僅かであることが分かった。60℃で抽出した95%エタノール抽出物の場合、80℃で抽出した95%エタノール抽出物の場合と同様な実験値を示すことを確認した。40℃で抽出した95%エタノール抽出物の場合、200μg/mL濃度までは80℃で抽出した95%エタノール抽出物及び60℃で抽出した95%エタノール抽出物の場合と同様な実験値で6個の実験群中血球凝集塊が形成されるものがなく、ウイルスの増殖を完璧に抑制することを確認し、100μg/mL濃度では6個の実験群中1個の血球凝集塊が形成され、50μg/mL濃度では6個の実験群中3個の血球凝集塊が形成されて、低い濃度でも高い抗ウイルス効果を示すことを確認した。
【0052】
100μg/mLの濃度を基準に、溶媒毎の抗ウイルス活性は、40℃、95%エタノール抽出物>80℃、95%エタノール抽出物及び60℃、95%エタノール抽出物>100℃、水抽出物の順に示された。従って、抗ウイルス組成物のための榛の木抽出物では40℃で抽出した95%エタノール抽出物が最も適していることと判断された。
【0053】
ウイルス増殖抑制効果が最も優れた抽出温度である40℃における榛の木の原料及び抽出溶媒による抗ウイルス効果を比較するために表2の条件で前記のような実験を行った。
【0054】
【表2】

【0055】
その結果、表2に示したように、榛の木の部位毎の抗ウイルス活性では韓国産樹皮80%エタノール抽出物及び95%エタノール抽出物が、韓国産榛の木の幹80%エタノール抽出物及び95%エタノール抽出物より優秀であることが明らかになって、抗ウイルス組成物のための榛の木の抽出物の部位としては樹皮が適切であることが分かった。
【0056】
原産地別に比較すると、樹皮80%エタノール抽出物の場合、中国産と韓国産の活性が似ていることが明らかになり、樹皮95%エタノール抽出物の場合、韓国産が中国産より優秀なことが明らかになり、韓国産樹皮抽出物の抽出溶媒毎の活性を比較すると、80%エタノール抽出物より95%エタノール抽出物の活性が優れていることが明らかになった。
【0057】
以上の結果から、40℃で抽出した韓国産樹皮95%エタノール抽出物が最も優秀な抗ウイルス活性を示すことが分かった。
【0058】
本発明の榛の木抽出物を含む医薬組成物の製剤例を説明するか、本発明はこれに限定されず単に具体的な説明に過ぎない。
【0059】
《製剤例1:散剤の製造》
榛の木抽出物20mg
乳糖100mg
タルク10mg
前記成分を混合して気密パックに充填して散剤を製造した。
【0060】
《製剤例2:錠剤の製造》
榛の木抽出物10mg
トウモロコシ澱粉100mg
乳糖100mg
ステアリン酸マグネシウム2mg
前記成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法により打錠して錠剤を製造した。
【0061】
《製剤例3:カプセル剤の製造》
榛の木抽出物20mg
結晶性セルロース13.3mg
ラクトース65.8mg
マグネシウムステアレート0.9mg
通常のカプセル剤製造方法により前記成分を混合してゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造した。
【0062】
《製剤例4:注射剤の製造》
榛の木抽出物10mg
マンニトール180mg
注射用滅菌蒸溜水2,974mg
NaHPO・12HO26mg
通常の注射剤の製造方法により1アンプル当(3mL)前記成分含有量で製造した。
【0063】
《製剤例5:液剤の製造》
榛の木抽出物20mg
異性化糖10g
マンニトール5g
精製水適量
通常の液剤の製造方法により精製水に各々の成分を加えて溶解させ、レモン香を適量加え、前記成分を混合した後、精製水を加え、全体100mLに調節した後、茶瓶に充填し滅菌させて液剤を製造した。
【0064】
[産業上利用の可能性]
以上詳細に説明した通り、本発明による榛の木の樹皮または幹抽出物は正常細胞である絨毛尿膜細胞(漿尿膜細胞)(chorioallantoic cells)に対する毒性が低く、低濃度で投与する場合にも抗ウイルス効果が優れているため、これを含む組成物はインフルエンザウイルス感染の予防及び治療に有用である。
【0065】
以上、発明内容の特定の部分を詳細に記述したが、当業界における通常の知識を有する者には、このような具体的技術は単に望ましい実施様態に過ぎず、これによって、本発明の範囲が制限されるのではない点は明白であろう。従って、本発明の実質的な範囲は添付された請求項とそれらの等価物によって定義される。本発明の単純な変形乃至変更はこの分野の通常の知識を有する者に容易に利用でき、このような変形や変更は全て本発明の領域に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)韓国産榛の木の樹皮、または幹を80〜100%エタノールで30〜80℃で抽出する段階、及び
(b)前記抽出液を同一温度で真空濃縮及び乾燥して回収する段階、
を含む抗インフルエンザウイルス活性を示す榛の木の樹皮または幹抽出物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法によって製造された榛の木の樹皮、または幹抽出物及び食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含有するインフルエンザウイルス感染の予防、または改善用食品組成物。
【請求項3】
前記インフルエンザウイルスは、ヒトインフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、馬インフルエンザウイルス及び鳥インフルエンザウイルスから構成された群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記鳥インフルエンザウイルスは、KBNP−0028(寄託番号KCTC 10866BP)であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の方法によって製造された榛の木の樹皮、または幹抽出物を有効性分として、含有するインフルエンザウイルス感染の予防、または治療用医薬組成物。
【請求項6】
前記インフルエンザウイルスは、ヒトインフルエンザウイルス、豚インフルエンザウイルス、馬インフルエンザウイルス及び鳥インフルエンザウイルスから構成された群から選択されることを特徴とする請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記鳥インフルエンザウイルスは、KBNP−0028(寄託番号KCTC 10866BP)であることを特徴とする請求項6に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−506430(P2011−506430A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537853(P2010−537853)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/007172
【国際公開番号】WO2009/075488
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(508033465)アールエヌエル バイオ カンパニー リミテッド (12)
【Fターム(参考)】