説明

構築物や建築物への防つる付設構造及び防つるシート

【課題】 防つるシート13と支柱11の間に侵入した水が貯留しない防つる付設構造を提供する。
【解決手段】 この防つる付設構造は、構築物等である支柱11の外表面に、モノフィラメント1が集積されてなる粗目構造体よりなる排水材12、つる忌避剤を付着させた防つるシート13及び緊締帯3が順に積層され、排水材12及び防つるシート13は、緊締帯3によって、支柱11の外表面に圧着しているものである。防つるシート13と支柱11の間に侵入した雨水は、排水材12を通って下方に排水される。排水材12は、モノフィラメント1同士が交差して形成された融着部2を多数持ち、各融着部2におけるモノフィラメント1の重合本数は2〜5本であり、粗目構造体の厚み方向における融着部の数が1〜2個となっている場合、押し潰されにくく、当初の空隙を維持するため、排水性能が低下しにくい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土地の上に定着する構築物や建築物(以下、まとめて「構築物等」という。)の外表面に、つる植物が這い登るの防止するための付設構造に関し、特に構築物等の外表面に、排水材と防つるシートとを止着した防つる付設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘデラやポトス等のつる植物は、茎から根を出して生育し、構築物等に張り付いて這い登る性質を持っている。つる植物が這い登った構築物等は、つる植物によって損傷を受ける恐れがあるため、それを取り除く維持管理が必要となる。
【0003】
一方、つる植物の生育を抑制するために、シートにつる忌避剤(根忌避剤でもある。)を含浸又は付着させた防つるシートが知られている(特許文献1)。したがって、構築物等の外表面に、防つるシートを当接させておけば、つる植物が構築物等に張り付いて這い登るのを防止することができると考えられる。
【0004】
たとえば、構築物等の支柱に、つる植物が這い登るのを防止するためには、支柱の根元に防つるシートを巻回しておけばよいと考えられる。そして、防つるシートを固定するために、防つるシートの上から、緊締帯で縛るか又は緊締帯を鋲着して、緊締帯を圧着させておけばよいと考えられる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−335762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、緊締帯を圧着させておくと、防つるシートと支柱の間に侵入した水が緊締部に貯留するということがあった。水が貯留すると、支柱が錆びたり又は腐る恐れがあり、構築物等に損傷を与えるという欠点があった。そこで、本発明は、防つるシートと支柱の間に侵入した水が貯留しないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、本発明は、防つるシートと支柱の間に排水材を挟着したものである。すなわち、本発明は、構築物や建築物の外表面に、モノフィラメント構造体よりなる排水材、つる忌避剤を付着させた防つるシート及び緊締帯が順に積層され、該排水材及び該防つるシートは、該緊締帯によって、該構築物や建築物の外表面に圧着していることを特徴とする構築物や建築物への防つる付設構造に関するものである。
【0008】
まず、本発明で用いる排水材12について説明する。この排水材12は、図1に示す如くモノフィラメントが集積されてなる粗目構造体よりなる。図1中、白色部の線状物がモノフィラメント1であり、黒色部が空隙である。したがって、モノフィラメント1が集積されてなり、多数の空隙を持つ粗目構造体となっている。そして、この粗目構造により排水材12として機能を発揮するものである。
【0009】
モノフィラメント1の径は、0.5〜1mm程度である。モノフィラメント1の径が0.5mm未満になると、モノフィラメント1の剛性が低下して、緊締帯3によって構築物等の外表面に圧着されたとき、押し潰され易くなり、排水性能が低下するので好ましくない。また、モノフィラメント1の径が1mmを超えると、剛性が高くなりすぎて、支柱11等に巻回しにくくなるので、好ましくない。モノフィラメント1を構成する素材としては、従来公知の合成樹脂が用いられ、たとえばポリプロピレン等が用いられる。
【0010】
粗目構造体は、モノフィラメント1同士が交差して形成された融着部2を多数持ち、この融着部2によって、形態安定性が維持されている。融着部2は、モノフィラメント1が2〜5本重合して形成されている。融着部2におけるモノフィラメント1の重合本数が5本を超えると、粗目構造体の厚さが厚くなって、押し潰され易くなったり、或いは剛性が高くなりすぎたり、或いは空隙が小さくなって排水性能が低下する恐れがあるので、好ましくない。
【0011】
粗目構造体の平面方向における融着部2の数は、3〜10個/cm2である。融着部2の数が3個/cm2未満になると、融着部2の数が少なすぎて、形態安定性が低下する恐れがある。また、融着部2の数が10個/cm2を超えると、粗目構造体の剛性が高くなりすぎたり、或いは空隙が小さくなって排水性能が低下する恐れがあるので、好ましくない。
【0012】
粗目構造体の厚み方向における融着部2の数は、1〜2個である。融着部2の数が2個を超えると、粗目構造体の厚さが厚くなって、押し潰され易くなったり、又は剛性が高くなるので好ましくない。粗目構造体の厚みは約2mm程度であるのが最も好ましい。なお、厚みは、面積が10cm2の加圧子を用いて、9.8kPaの圧力を負荷して測定したものである。
【0013】
次に、本発明で用いるつる忌避剤を付着させた防つるシート13について説明する。この防つるシート13は、不織布、編織物又は紙等のシート基材に、つる忌避剤を付着させたものである。シート基材としては、高強度で安価な不織布を用いるのが好ましい。不織布としては、ポリエステル長繊維が集積されてなるポリエステルスパンボンド不織布を用いるのが好ましい。ポリエステル長繊維は耐候性に優れていると共に、強度の点でも優れているからである。耐候性を向上させるために、さらにポリエステル長繊維中にカーボンブラック粉末を混練しておくのが好ましい。カーボンブラックは紫外光の吸収能に優れているため、カーボンブラック粉末が混練されたポリエステル長繊維は、紫外線に対する劣化が抑制される。したがって、カーボンブラック粉末が混練されているポリエステル長繊維を構成繊維とするスパンボンド不織布につる忌避剤を含有させた防つるシート13は、それ単独で構築物や建築物の外表面に当接して使用することも可能である。
【0014】
つる忌避剤としては、従来公知の薬剤を用いることができるが、特にクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルを用いるのが好ましい。クロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルは、バイエル社より商品名「プリベントールB2」として市販されているので、容易に入手しうるものである。
【0015】
シート基材につる忌避剤を付着させることにより、防つるシート13が得られるわけであるが、つる忌避剤の付着量は、シート基材100質量部に対して、10〜20質量部であるのが好ましい。付着方法としては、シート基材につる忌避剤を含有する溶液を含浸及び/又は塗布し乾燥すればよい。特に、多量のつる忌避剤をシート基材に付着させるには、つる忌避剤を含有するバインダー溶液をシート基材に含浸させた後乾燥し、さらにその後、つる忌避剤を含有する塗工液を塗布する方法を採用するのが好ましい。バインダー溶液としては、ポリエステル系樹脂が溶解又は分散されているものが用いられる。また、塗工液としては、アクリル系樹脂が溶解又は分散されているものが用いられる。
【0016】
次に、本発明で用いる緊締帯3としては、防つるシート13及び排水材12を構築物等の外表面に圧着できるものであれば、どのようなものでも用いられる。たとえば、金属製紐,金属製帯,プラスチック製紐又はプラスチック製帯等が用いられる。また、金属製プレートやプラスチック製プレートのような幅広のものであっても、緊締帯3として用いられる。
【0017】
以上説明したモノフィラメントが集積されてなる粗目構造体よりなる排水材12、つる忌避剤を付着させた防つるシート13及び緊締帯3を用いて、本発明に係る防つる付設構造が得られる。この防つる付設構造の具体例は、図2及び図3で示した構造となっている。図2は、構築物等の一例である支柱11に、防つる付設構造を適用した概略図である。図3は、図2のAで示した箇所の部分拡大断面図である。図3は、支柱11の外表面に、排水材12、防つるシート13及び緊締帯3の順に積層された防つる付設構造を示したものである。そして、緊締帯3によって、排水材12及び防つるシート13は、支柱11の外表面に圧着し固定されているのである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る防つる付設構造は、構築物等の外表面と防つるシートの間に、モノフィラメントが集積されてなる粗目構造体よりなる排水材が挟着されているので、雨水が構築物等の外表面と防つるシートの間に侵入しても、緊締部に貯留されることなく、排水材を通って下方に排水される。したがって、緊締部に雨水が貯留して、構築物等が錆びたり又は腐ったりするのを防止しうるという効果を奏する。
【0019】
また、排水材として、モノフィラメント同士が交差して形成された融着部を多数持ち、各融着部におけるモノフィラメントの重合本数は2〜5本であると共に、粗目構造体の厚み方向における融着部の数が1〜2個であるものを採用すると、排水材が構築物等の外表面に強く圧着されても、押し潰されにくく、当初の空隙がそのまま維持されるので、排水性能が低下しにくいという効果を奏する。
【0020】
また、防つるシートとして、カーボンブラック粉末が混練されたポリエステル長繊維よりスパンボンド不織布に、クロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルよりなるつる忌避剤を付着させたものを用いると、防つる性に優れると共に、耐候性及び強度に優れており、長期間の使用に耐え得るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明で用いる排水材の一例を示す平面図である。
【図2】構築物等に本発明の一例に係る付設構造が適用されている状態を示した概略図である。
【図3】図2のAを拡大しその断面を示した部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 モノフィラメント
2 融着部
3 緊締帯
11 支柱
12 排水材
13 防つるシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築物や建築物の外表面に、モノフィラメントが集積されてなる粗目構造体よりなる排水材、つる忌避剤を付着させた防つるシート及び緊締帯が順に積層され、該排水材及び該防つるシートは、該緊締帯によって、該構築物や建築物の外表面に圧着していることを特徴とする構築物や建築物への防つる付設構造。
【請求項2】
排水材は、モノフィラメントが集積されてなる粗目構造体であって、該モノフィラメント同士が交差して形成された融着部を多数持ち、各融着部における該モノフィラメントの重合本数は2〜5本であると共に、該粗目構造体の厚み方向における該融着部の数が1〜2個である請求項1記載の構築物や建築物への防つる付設構造。
【請求項3】
粗目構造体の平面方向における融着部の数が、3〜10個/cm2である請求項2記載の構築物や建築物への防つる付設構造。
【請求項4】
モノフィラメントがポリプロピレンモノフィラメントである請求項2記載の構築物や建築物への防つる付設構造。
【請求項5】
モノフィラメントの径が0.5〜1mmである請求項2記載の構築物や建築物への防つる付設構造。
【請求項6】
粗目構造体の厚さが2mmである請求項2記載の構築物や建築物への防つる付設構造。
【請求項7】
防つるシートが、不織布にクロロトリルオキシプロピオン酸ポリグリコールエステルよりなるつる忌避剤を付着させたものである請求項1記載の構築物や建築物への防つる付設構造。
【請求項8】
不織布がポリエステルスパンボンド不織布である請求項7記載の構築物や建築物への防つる付設構造。
【請求項9】
不織布を構成している長繊維中に、カーボンブラック粉末が混練されている請求項7記載の構築物や建築物への防つる付設構造。
【請求項10】
構築物や建築物の外表面に当接するためのシートであって、該シートは、カーボンブラック粉末が混練されているポリエステル長繊維を構成繊維とするスパンボンド不織布につる忌避剤を含有させたことを特徴とする防つるシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−65566(P2012−65566A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211636(P2010−211636)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【出願人】(000204192)太陽工業株式会社 (174)
【Fターム(参考)】