説明

構造体、海上移動標的及びテント

【課題】 ウレタン樹脂引布の余り部分を少なくでき、個別の筒状部材を接続するための作業時間をなくすことができる構造体の提供。
【解決手段】 細長形状の基布の片面または両面に熱融着性のウレタン樹脂を接着したウレタン樹脂引布1を重ねてウレタン樹脂の面の縁部で互いに溶着し、ウレタン樹脂引布の内部に空気を充填した密閉状態にする筒状部材10をその長手方向の一箇所以上で折り曲げることで構成される構造体であって、折り曲げられるべき箇所として、ウレタン樹脂引布の長手方向と直交する方向に部分的に溶着される部分溶着部7を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体、海上移動標的及びテントに関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は空気テントを製造販売している。この空気テントは、両面ゴム引布またはウレタン引布を立体裁断した引布部材の縁部を接着し、内部に空気を充填した密閉状態に維持出来るようにした筒状部材を多数準備しておき、これらを互いに接続することでテントの骨格となる構造体を構成している。この空気テントは、特に災害発生時における仮設テントとして使用されている(特許文献1)。
【0003】
また、レーダー反射膜体を貼設した海上移動標的についても両面ゴム引布またはウレタン引布を立体裁断した引布部材の縁部を接着し、内部に空気を充填した密閉状態に維持出来るようにした筒状部材を多数準備しておき、これらを互いに接続するとともに、垂直方向に延びる延設部についても立体裁断することで、浮き及び骨格部分を形成可能にして、一箇所の空気栓部分を介して空気を内部に導入することで所定形状を維持できるように構成された海上移動標的を製造している。
【特許文献1】特開平11−264264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のテント及び海上移動標的によれば、両面ゴム引布またはウレタン引布を立体裁断した引布部材の縁部を接着した多数の筒状部材が必要となる。このように立体裁断することは引布の余り部分が多く出るので不経済である。また、個別の筒状部材を接続するために作業時間が多くなりコスト高となる。かつまた、特に垂直方向に延びる立体裁断された延設部を接続するためには熟練を要する。
【0005】
したがって、本発明は上記の事情に鑑み、引布の余り部分を少なくでき、個別の筒状部材を接続するための作業時間をなくすことができる構造体の提供を目的としている。また、特に垂直方向に延びる延設部を接続する作業を省略できる三次元構造体の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の構造体によれば、細長形状の基布の片面または両面に熱融着性のウレタン樹脂を接着したウレタン樹脂引布を重ねて前記ウレタン樹脂の面の縁部で互いに溶着し、前記ウレタン樹脂引布の内部に空気を充填した密閉状態にする筒状部材をその長手方向の一箇所以上で折り曲げることで構成される構造体であって、前記折り曲げられるべき箇所として、前記ウレタン樹脂引布の前記長手方向と直交する方向に部分的に溶着される部分溶着部を形成したことを特徴としている。
【0007】
また、前記構造体は、前記筒状部材を3箇所折り曲げて、二等辺三角形の等辺の交点で前記二等辺三角形を構成する面と垂直に延びる延設部を有し、前記延設部は前記部分溶着部に対して直交して部分的に溶着される直交溶着部から折り曲げられる三次元構造体であり、前記延設部が互いに重なるように配置された3つ以上の前記三次元構造体と、前記重なり合う延設部同士及び前記3つ以上の二等辺三角形の重なり合う等辺同士を締結する締結部材と、前記重なり合う延設部と前記重なり合う等辺との間に張設されるレーダー反射膜体とを備える海上移動標的であることを特徴としている。
【0008】
また、前記二等辺三角形は直角三角形体であり、前記構造体を4個使用するとともに、4つ前記延設部と、前記直角三角形体の等辺とを前記締結部材により合体し、前記延設部と前記等辺との間に直角三角形の第1のレーダー反射膜体を貼設し、前記直角三角形体で囲まれる空間に直角三角形の第2のレーダー反射膜体を貼設した海上移動標的であることを特徴としている。
【0009】
そして、前記構造体は二次元構造体であり、前記二次元構造体と、2つ以上の前記二次元構造体を相互に間隔をおいて結合する結合部材と、前記結合部材及び前記二次元構造体に取り付けられ屋根及び壁を構成するシートとを備えるテントであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構造体によれば、ウレタン樹脂引布の内部に空気を充填した密閉状態にする筒状部材をその長手方向と直交する方向に部分的に溶着される溶着部を介して折り曲げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について添付の図面を参照して説明する。
【0012】
図1(a)は、基布3の片面に熱溶着性のウレタン樹脂を塗設及び圧縮して積層したウレタン樹脂引布1の溶着工程を示す外観斜視図、(b)は溶着後の筒状部材10の平面図である。先ず、図1(a)においてウレタン樹脂引布1は、基布3の表面に熱溶着性のウレタン樹脂4を積層して専用の製造装置を用いて長尺のシート体を得た後にロール状に巻かれて準備される。このように形成されたウレタン樹脂引布1は、ウレタン樹脂4と基布3の間の実接着強度は小さくても、基布3がウレタン樹脂4から脱離することがなくなる結果、見掛け上大きい接着強度が得られることになる。また、図では片面にウレタン樹脂層4を形成したウレタン樹脂引布1について図示しているが、両面にウレタン樹脂層4を形成したウレタン樹脂引布1であっても良いことは言うまでもない。
【0013】
上記のように準備されたロール状のシート体を細長い形状に切断するとともに、図示のように折り曲げて重ねることでウレタン樹脂面4が突き当てるようにして縁部を、矢印方向に回転駆動される高周波溶着装置200のローラ510、51の間を通過させつつ矢印方向に移動することでウレタン樹脂を溶着して連続溶着した溶着部5を得る。ここで、同一寸法の2枚分のウレタン樹脂引布1を重ねて上記の溶着部5を得るようにしても良いことになる。以上のようにロール状のシート体を細長い形状に切断することから、従来のように立体裁断する際に発生する無駄部分を大幅に削減することができるようになる。
【0014】
以上のように縁部に溶着部5を形成することで、図1(b)に示したような内部を密閉した筒状部材10を得るとともに、縁部5の一部に空気栓6を設けることで内部に空気を送り込み膨らませることが可能となる。また、未使用時には内部から空気を抜くように構成することができる。
【0015】
また、図1(b)において、全長寸法Lを有する筒状部材10はその長手方向に沿うように折り曲げて、3辺以上の辺を有する多角形体を有した構造体となるように長手方向と直交する方向に部分的に溶着される破線図示の部分溶着部7、7を形成している。各部分溶着部7は筒状部材10をこの部分から簡単に折り曲げることで二次元構造体を得ることが可能となるので、例えば後述する仮設テントの骨格部材を一つの筒状部材10から構成することができるようになる。
【0016】
また三次元構造体として筒状部材10を3箇所折り曲げて、二等辺三角形の等辺の交点で二等辺三角形を構成する面と垂直に延びる延設部を構成するために部分溶着部7に対して直交して部分的に溶着される直角溶着部を設けるようにしても良い。
【0017】
図2は、溶着後の筒状部材10を一部破断して図示した外観斜視図である。本図において、既に説明済みの構成または部品については同様の符号を附して説明を割愛すると、筒状部材10の端部10aには、紐を含む締結部材9、9が固定されている。また、この端部10aから距離L1分離間した部位に上記の部分溶着部7が間に間隙7aを形成するように溶着形成されている。さらに距離L2分離間した部位に上記の部分溶着部7が、また距離L3分離間した部位に上記の部分溶着部7が図示のように溶着形成されている。この間隙7aを介して空気の出入りが行われる。
【0018】
一方、他端10bからは距離L4分離間した部位には、上記の部分溶着部7と直交する直交溶着部8が間に間隙8aを有するように溶着形成されている。また、この直交溶着部8の近くには上記の締結部材9を結び付ける貫通孔を固定した鳩目部材11が図示のように溶着を含む方法で固定されている。
【0019】
図3は、図2に図示したように準備された筒状部材10を折り曲げることで構造体とする手順を図示した外観斜視図である。本図において、先ず端部10aを持って矢印D1方向に折り曲げてから締結部材9を鳩目部材11に結び付けることで、多角形体として直角三角形体を形成し内部に中空平面Pを形成した状態にする。この後、直交溶着部8を折り曲げることで上記の中空平面Pに対して直交した延設部Rを得ることで、三次元構造体の筒状部材10を得る。
【0020】
次に、海上移動標的100を完成するために、図4(a)に示した4つの筒状部材10の延設部Rを互いに向き合わせる様子を図示した外観斜視図と図4(b)の完成後の外観斜視図を参照して述べる。図4(a)に図示したように4個分の構造体の各延設部Rを集合させて締結部材20で纏めて固定する。この後、中空平面Pの等辺を締結部材により合体し、延設部Rと等辺との間に直角三角形の第1のレーダー反射膜体22を貼設するように締結部材で固定し、さらに直角三角形体で囲まれる中空空間Pに直角三角形の第2のレーダー反射膜体23を貼設して海上移動標的が完成する。また、必要に応じて倒れ防止用の補強部材21を固定して海上移動標的を完成する。また、中空平面Pを120度の二等辺三角形となるように構成することで、3つの筒状部材10を用いて海上移動標的100を完成することも出来る。
【0021】
次に、仮設テント200を得るための説明を、図5(a)の、4つの筒状部材10の延設部Rを互いに向き合わせる様子を図示した外観斜視図、図5(b)の完成後の仮設テントの外観斜視図を参照して述べる。
【0022】
本図において、筒状部材10は多角形体として三角形体を形成しており、図示のように4個分使用する。4個の延設部Rを締結部材20で合体して屋根骨格部分を構成し、屋根骨格部分を取付基部として屋根用の屋根膜体25を前面から裏面にかけて貼設し、2個の前記三角形体で囲まれる空間に側壁を覆う側壁膜体26を夫々貼設して完成することができる。また側壁膜体26は、面ファスナー(不図示)を介して容易に着脱可能に設けられるとともに、側壁を接合面として複数分が増設できるように構成される。
【0023】
以上から、例えば災害発生時において体育館内に仮設テント100を家族単位で設け、家族の増減に応じて仮設可能になるとともに、プライバーシー保護が可能になる。
【0024】
最後に、二次元構造体を用いた仮設テント200も構成可能となる。図6(a)は天幕を下ろした状態、(b)は天幕を半開きにした状態、(c)は側壁を開いた状態を示した別実施形態の完成後の仮設テント200の使用状態を図示した外観斜視図である。
図示のように二次元構造体として準備される筒状部材10を左右壁面を構成する骨格部材として用い、これらの間を天井屋根部分で直線状の筒状部材で固定することで図5を参照して述べた仮設テントを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は、ウレタン樹脂引布の溶着工程を示す外観斜視図、(b)は溶着後の筒状部材10の平面図である。
【図2】溶着後の筒状部材10を一部破断して図示した外観斜視図である。
【図3】筒状部材10を折り曲げることで構造体とする手順を図示した外観斜視図である。
【図4】(a)は、4つの筒状部材10の延設部Rを互いに向き合わせる様子を図示した外観斜視図、(b)は完成後の海上移動標的の外観斜視図である。
【図5】(a)は、4つの筒状部材10の延設部Rを互いに向き合わせる様子を図示した外観斜視図、(b)は完成後の仮設テントの外観斜視図である。
【図6】(a)は天幕を下ろした状態、(b)は天幕を半開きにした状態、(c)は側壁を開いた状態を示した別実施形態の完成後の仮設テントの使用状態を図示した外観斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ウレタン樹脂引布
3 基布
4 ウレタン樹脂(層)
5 溶着部
7 部分溶着部
8 直交溶着部
10 筒状部材
R 延設部
100 海上移動標的
200 仮設テント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長形状の基布の片面または両面に熱融着性のウレタン樹脂を接着したウレタン樹脂引布を重ねて前記ウレタン樹脂の面の縁部で互いに溶着し、前記ウレタン樹脂引布の内部に空気を充填した密閉状態にする筒状部材を、その長手方向の一箇所以上で折り曲げることで構成される構造体であって、
前記折り曲げられるべき箇所として、前記ウレタン樹脂引布の前記長手方向と直交する方向に部分的に溶着される部分溶着部を形成したことを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記構造体は、前記筒状部材を3箇所折り曲げて、二等辺三角形の等辺の交点で前記二等辺三角形を構成する面と垂直に延びる延設部を有し、前記延設部は前記部分溶着部に対して直交して部分的に溶着される直交溶着部から折り曲げられる三次元構造体であり、
前記延設部が互いに重なるように配置された3つ以上の前記三次元構造体と、
前記重なり合う延設部同士及び前記3つ以上の二等辺三角形の重なり合う等辺同士を締結する締結部材と、
前記重なり合う延設部と前記重なり合う等辺との間に張設されるレーダー反射膜体とを備えることを特徴とする海上移動標的。
【請求項3】
前記二等辺三角形は直角三角形体であり、前記構造体を4個分使用するとともに、
4つの前記延設部と、前記直角三角形体の等辺とを前記締結部材により合体し、
前記延設部と前記等辺との間に直角三角形の第1のレーダー反射膜体を貼設し、
前記直角三角形体で囲まれる空間に直角三角形の第2のレーダー反射膜体を貼設したことを特徴とする請求項2に記載の海上移動標的。
【請求項4】
前記構造体は二次元構造体であり、
前記二次元構造体と、
2つ以上の前記二次元構造体を相互に間隔をおいて結合する結合部材と、
前記結合部材及び前記二次元構造体に取り付けられ屋根及び壁を構成するシートとを備えることを特徴とするテント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−92313(P2009−92313A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263747(P2007−263747)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】