説明

構造修飾されたポリマーの選択的焼結

【課題】製造される物体の機械特性を改善させ、ポリマー粉末の電磁放射を用いて選択的焼結によって三次元物体を製造する方法の改良を提供する。
【解決手段】以下の構造の少なくとも1つを有するポリマー又はコポリマーを含む粉末を用いる。(1)ポリマー又はコポリマーの主鎖中に分枝基を有し、分枝基は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の芳香族構造単位である構造。(2)ポリマー又はコポリマーの1つの末端基が修飾された構造。(3)ポリマー又はコポリマーの主鎖中に嵩高い基を有し、嵩高い基は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択されない構造。(4)主鎖と非線形結合する少なくとも1つの芳香族基を有する構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する方法であって、粉末が、ポリマー又はコポリマーを含む、方法に関する。さらに、本発明は、上記方法により製造される三次元物体、上記方法により三次元物体を製造する装置、及び上記方法における事前選択されたポリマー粉末の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1から既知であるように、電磁放射を用いた選択的焼結による三次元物体を製造する方法は、電磁放射線源を用いて層状に(layer-wise)実行され得る。このような方法において、三次元物体は、粉末層を塗布すること、及び物体の横断面に対応する位置における粉末を選択的に固化し、それらの層を互いに結着することにより層状に製造される。
【0003】
図1は、三次元物体の層状製造法を実施し得るレーザー焼結装置を例示的に示す。図1から明らかなように、装置は容器1を備える。この容器の頂部は開いており、且つ形成される物体3を支持する支持体4によって底部は制限が設けられている。容器の上縁2によって(又はその側壁によって)、作業面6は画定される。物体は、支持体4の上面に配置され、且つ電磁放射を用いて固化させることができる粉末形態の構築材料の複数の層から形成される。ここで、これらの層は支持体4の上面と平行である。そのため、支持体は、高さ調節装置を介して鉛直方向、即ち、容器1の側壁と平行に移動し得る。これにより、作業面6に対して支持体4の位置を調節することができる。
【0004】
容器1、又は作業面6の上には、固化する粉末材料11を支持体表面5又は事前に固化した層上に塗布するために塗布装置10が設けられている。また、指向性光ビーム(directed light beam)8を発光するレーザー照射装置7が作業面6の上方に配置されている。光ビーム8は、回転鏡等の屈折装置9によって作業面6に向かう屈折ビーム8’として方向付けられる。制御ユニット40は、支持体4、塗布装置10及び屈折装置9を制御する。これらの部材(items)1〜6、10及び11は、機械フレーム100内に配置されている。
【0005】
三次元物体3を製造する際、粉末材料11を、支持体4又は事前に固化した層上に層状に塗布し、物体に対応する各粉末層の位置でレーザービーム8’を用いて固化させる。層の各選択的固化後、続いて塗布される粉末層の厚み分だけ支持体を下げる。
【0006】
電磁放射を用いた選択的焼結によって三次元物体を製造する方法及び装置は多くの形態が存在し、それらを使用することができる。例えばレーザー及び/又は光ビームを用いる代わりに、マスク露光システム等の、電磁放射を選択的に送出する他のシステムを用いることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許発明第4410046号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ポリマー粉末を電磁放射を用いて選択的に焼結する方法では、これまでは製造される物体の機械特性に十分な関心が払われてこなかった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、製造される物体の機械特性を改善させる、ポリマー粉末の電磁放射を用いて選択的焼結によって三次元物体を製造する方法の改良を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の項目に概説されるような本発明の様々な態様、有益な特徴及び好ましい実施形態はそれぞれ単独で又は組み合わされて、本発明の課題の解決に寄与する。
【0011】
(1)電磁照射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する方法であって、前記粉末が、以下の構造の少なくとも1つを有するポリマー又はコポリマーを含む、電磁照射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する方法。
【0012】
(i)ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、分枝基は、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の芳香族構造単位であることを条件とする、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基を有する構造。
【0013】
(ii)ポリマー又はコポリマーの主鎖の少なくとも1つの末端基が修飾された構造。
【0014】
(iii)ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、嵩高い基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択されないことを条件とする、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基を有する構造。
【0015】
(iv)主鎖と非線形結合する少なくとも1つの芳香族基を有する構造。
【0016】
(2)固化可能な粉末材料から形成される物体の連続層を続いて、物体の横断面に対応する位置で固化する、項目(1)に記載の方法。
【0017】
(3)電磁放射をレーザーにより供給する、項目(1)又は(2)に記載の方法。
【0018】
(4)焼結の完了後に規定のおよび/又は制御された冷却工程を含む、項目(1)〜(3)のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
(5)物体の完成後に、物体を、粉末に含まれるポリマー又はコポリマーのTmよりも1℃〜50℃、より好ましくは1℃〜30℃、及びさらにより好ましくは1℃〜10℃低い温度から、粉末に含まれるポリマー又はコポリマーのTへと、0.01℃/分〜10℃/分、好ましくは0.1℃/分〜5℃/分、及びより好ましくは1℃/分〜5℃/分の冷却速度で冷却させる工程を含み、Tmは粉末に含まれるポリマー又はコポリマーの溶融温度であり、且つTはそのガラス転移温度である、項目(4)に記載の方法。
【0020】
(6)ポリマー又はコポリマーを含む粉末は、100℃〜450℃、好ましくは150℃〜400℃、及びより好ましくは250℃〜400℃の範囲の融点Tmを有する、項目(1)〜(5)のいずれか1つに記載の方法。
【0021】
(7)ポリマー又はコポリマーを含む粉末は、50℃〜300℃、好ましくは100℃〜300℃、及びより好ましくは130℃〜250℃の範囲のガラス転移温度Tを有する、項目(1)〜(6)のいずれか1つに記載の方法。
【0022】
(8)ポリマー又はコポリマーが、少なくとも10000、より好ましくは15000〜200000、及び特に15000〜100000の分子量(数平均)M、又は20000、より好ましくは30000〜500000、及び特に30000〜200000の重量平均Mを有する、項目(1)〜(7)のいずれか1つに記載の方法。
【0023】
(9)ポリマー又はコポリマーが、10〜10000、より好ましくは20〜5000、及び特に50〜1000の重合度nを有する、項目(1)〜(8)のいずれか1つに記載の方法。
【0024】
(10)ポリマー又はコポリマーが、主鎖に、好ましくは主鎖の繰り返し単位に少なくとも1つの芳香族基を含む、項目(1)〜(9)のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
(11)(iv)少なくとも1つの非線形結合する芳香族基が、主鎖の繰り返し単位中に含まれる、項目(1)〜(10)のいずれか1つに記載の方法。
【0026】
(12)(iv)非線形結合する芳香族基が独立して、1,2−及び1,3−フェニレン、1,3−キシレン、2,4’−及び3,4’−ビフェニレン、並びに2,3−及び2,7−ナフタレンの群から選択される、項目(11)に記載の方法。
【0027】
(13)(iv)ポリマー又はコポリマーが、主鎖中に、好ましくは主鎖の繰り返し単位中に、非線形結合する芳香族基及び/又は少なくとも1つの分枝基と異なる少なくとも1つの付加的な線形結合する芳香族基を含有する、項目(11)又は(12)に記載の方法。
【0028】
(14)芳香族基が互いに独立して、非置換又は置換の単環式又は多環式芳香族炭化水素から選ばれる、項目(1)〜(13)のいずれか1つに記載の方法。
【0029】
(15)(iv)線形結合する芳香族基が互いに独立して、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、4,4’−イソプロピリデンジフェニレン、4,4’−ジフェニルスルホン、1,4−、1,5−及び2,6−ナフタレン、4,4’’−p−ターフェニレン及び2,2−ビス−(4−フェニレン)プロパンから成る群から選択される、項目(13)又は(14)に記載の方法。
【0030】
(16)(i)分枝基が、少なくとも1つの置換基又は1つの側鎖を有する、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又はヘテロアレーンであり、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、分枝基が、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の芳香族構造単位である、項目(1)〜(15)のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
(17)(i)側鎖が互いに独立して、C1〜C6非分岐鎖若しくは分岐鎖又は環状アルキル又はアルコキシ基、及びアリール基から成る群から選択される、項目(16)に記載の方法。
【0032】
(18)(i)側鎖が互いに独立して、メチル、イソプロピル、tert−ブチル又はフェニルから成る群から選択される、項目(16)又は(17)に記載の方法。
【0033】
(19)(ii)主鎖の末端基を、末端アルキル、アルコキシ、エステル及び/又はアリール基で修飾する、項目(1)〜(18)のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
(20)(iii)嵩高い基が芳香族基又は非芳香族基であり、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、嵩高い基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択されない、項目(1)〜(19)のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
(21)(iii)嵩高い基が、多環式芳香族基又は非芳香族基である、項目(20)に記載の方法。
【0036】
(22)(iii)嵩高い基が、フェニレン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、フルオレン、ターフェニル、デカリン又はノルボルナンから選択される、項目(20)又は(21)に記載の方法。
【0037】
(23)少なくとも2つの異なるポリマー又はコポリマーの混合物を使用し、混和される(コ)ポリマー構成成分の少なくとも1つが、項目1に記載の構造特徴の少なくとも1つを有する、項目(1)〜(22)のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
(24)ポリマー又はコポリマーが、ポリアミド(PA)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニリデンフルオリド、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、並びに上記ポリマーの少なくとも1つを含むブロックコポリマーに基づき形成される、項目(1)〜(23)のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
(25)ポリマー又はコポリマーが、ポリアミド(PA)、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、又は上記ポリマーの少なくとも1つを含むブロックコポリマーに基づき形成される、項目(1)〜(19)のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
(26)ブロックコポリマーが好ましくは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)/ポリアリールエーテルスルホン(PAES)ジブロックコポリマー又はPAEK/PAES/PAEKトリブロックコポリマーである、項目(24)又は(25)に記載の方法。
【0041】
(27)ポリマーが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリアリールエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、又は上記ポリマーの少なくとも1つを含むコポリマーに基づき形成されるポリアリールエーテルケトン(PAEK)である、項目(1)〜(26)のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
(28)ポリアリールエーテルケトン(PAEK)が、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)ポリマー又はコポリマーに基づき形成される、項目(27)に記載の方法。
【0043】
(29)ポリアリールエーテルケトン(PAEK)に基づくポリマー又はコポリマーが、0.05kNs/m〜1.0kNs/m、好ましくは0.15kNs/m〜0.6kNs/m、及び特に0.2kNs/m〜0.45kNs/mの溶融粘度を有する、項目(1)〜(28)のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
(30)ポリアリールエーテルケトン(PAEK)ポリマー又はコポリマーが、好ましくは10〜1000、より好ましくは20〜500、及び特に40〜250の重合度nを有する、項目(24)〜(29)のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
(31)ポリエーテルケトンケトン(PEKK)ポリマー又はコポリマーが、ポリマーの主鎖中に、好ましくは主鎖の繰り返し単位中に、線形結合する芳香族基として1,4−フェニレンと、非線形結合する芳香族基として1,3−フェニレンとを含む、項目(27)〜(30)のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
(32)少なくとも1つの1,4−フェニレン単位をそれぞれ含む繰り返し単位と、1つの1,3−フェニレン単位をそれぞれ含む繰り返し単位との比率が、90/10〜10/90、好ましくは70/30〜10/90、より好ましくは60/40〜10/90である、項目(27)〜(31)のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
(33)ポリマーの選択的焼結により得られる三次元物体であって、粉末中の、コポリマー、又はポリマーの配合物が電磁照射を用いて成形され、粉末に使用されるポリマー又はコポリマーが、以下の構造の少なくとも1つを有する、ポリマーの選択的焼結により得られる三次元物体。
【0048】
(i)ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、分枝基は、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の芳香族構造単位であることを条件とする、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基を有する構造。
【0049】
(ii)ポリマー又はコポリマーの主鎖の少なくとも1つの末端基が修飾された構造。
【0050】
(iii)ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、嵩高い基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択されないことを条件とする、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基を有する構造。
【0051】
(iv)主鎖と非線形結合する少なくとも1つの芳香族基を有する構造。
【0052】
(34)ポリマー又はコポリマーが項目(6)〜(32)に示されるように規定される、項目(33)に記載の三次元物体。
【0053】
(35)粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する装置であって、物体の製造の完了後に物体の規定の冷却を設定するように配置される温度制御装置を備える、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する装置。
【0054】
(36)温度制御装置を用いて設定される冷却速度が、粉末に含まれるポリマー、コポリマー又はポリマー配合物のタイプに応じて決まる、項目(35)に記載の装置。
【0055】
(37)温度制御装置が、ポリマー、コポリマー又はポリマー配合物の所定タイプに応じて設定される、項目(35)又は(36)に記載の装置。
【0056】
(38)項目(35)〜(37)のいずれか1つに記載の装置と、項目(6)〜(32)に規定される少なくとも1つのポリマー又はコポリマーを含む粉末とを備える製造システム。
【0057】
(39)選択的電磁照射焼結を用いた三次元物体の製造におけるポリマー粉末の使用であって、ポリマーを、以下の構造の少なくとも1つを有するポリマー又はコポリマーから事前選択する、選択的電磁照射焼結を用いた三次元物体の製造におけるポリマー粉末の使用方法。
【0058】
(i)ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、分枝基は、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の芳香族構造単位であることを条件とする、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基を有する構造。
【0059】
(ii)ポリマー又はコポリマーの主鎖の少なくとも1つの末端基が修飾された構造。
【0060】
(iii)ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、嵩高い基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択されないことを条件とする、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基を有する構造。
【0061】
(iv)主鎖と非線形結合する少なくとも1つの芳香族基を有する構造。
【0062】
(40)ポリマー又はコポリマーが項目(6)〜(32)のいずれかである、項目(39)に記載の使用方法。
【0063】
驚くべきことに、構造特異的に修飾されたポリマー又はコポリマーを選択的焼結プロセスに適用する場合に、高い剛性、高い圧縮強度、高い衝撃強度、高い最大引張強度及び曲げ強度、並びに高い破断伸び及び高い加熱撓み温度を含む或る特定の非常に有益な機械特性の著しい改善が、製造される三次元物体において得られることが見出された(ただし、得られる効果は上記物性に限定されるものではない)。他方で、良好な耐化学薬品性と後結晶化による低い後収縮といった相反する特徴との十分なバランスが保れることが見出された。さらに驚くべきことに、特定のプロセス条件によって、又は焼結後の冷却速度を観測することによって、上記機械特性の有意な改善及び相反する特徴との良好なバランスがもたらされることが見出された。その上、製造される三次元物体において適切とされる結晶性と低い多孔性とを共に併せて、著しく改善することができる。これは、上記特性の改善にさらに寄与する。本発明の利点は、修飾ポリアリールエーテルケトンポリマー若しくはポリアリールエーテルケトンコポリマー、又はポリアミドポリマー若しくはポリアミドコポリマーをポリマー粉末のポリマー材料としてそれぞれ使用する場合に特に実現可能である。本発明により認識される特徴の有益な組合せは、構造特異的な修飾ポリマー及びコポリマーにより、同時に与えられる多孔性が低い製造される三次元物体における結晶性を有益な範囲に設定し得ることに主に起因する。さらに、本発明の利点はまた、結晶度がそのポリマーマトリクスに関連する複合体にとって適している。かかる複合体は、それぞれのポリマー、コポリマー又はポリマー配合物のマトリクスの他に、1つ又は複数のフィラー及び/又は添加剤とを含む。
【0064】
ポリマーに関して、得られる物体における最終結晶性は概して、80%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは5%〜70%、さらにより好ましくは15%〜50%、及び特に15%〜35%である。特に、例えばポリアリールエーテルケトン(PAEK)に関して、得られる物体における最終結晶性は、5%〜45%、好ましくは10%〜40%、より好ましくは15%〜35%、さらにより好ましくは15%〜30%、及び特に20%〜25%である。特に、例えばポリアミド(PA)に関して、得られる物体における最終結晶性は、10%〜50%、好ましくは15%〜40%、より好ましくは15%〜35%、及び特に20%〜30%である。ポリマーに関する多孔性は概して、10%未満、好ましくは5%、より好ましくは3%、及び特に2%未満である。
【0065】
例えば射出成形のようなポリマーの加圧加工を伴う典型的なポリマー加工技術に対する好ましい代替法として、本発明による方法は、固化可能な粉末材料から形成される物体の連続層をその後、物体の横断面に対応する位置で電磁放射により固化する付加的なプロセスにおいて層状に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】三次元物体の層状製造のためのレーザー焼結装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
ここで、さらに好ましく且つさらに有益な実施形態及び実施例を参照することによって、より詳細に本発明を説明するが、これらは例示目的で提示されるに過ぎず、本発明の範囲を限定するように理解されるものではない。
【0068】
ポリマー粉末材料が、(i)主鎖中の少なくとも1つの分枝基、(ii)末端基の修飾、(iii)少なくとも1つの嵩高い基、及び(iv)主鎖と非線形結合する少なくとも1つの芳香族基から成る群から選択される要件(conditions)の少なくとも1つ、任意にその組合せを有するポリマー又はコポリマーを含む場合、ポリマー粉末材料によって、高い剛性、高い圧縮強度、高い衝撃強度、高い最大引張強度及び曲げ強度(flexural-strength)、並びに高い破断伸び及び高い撓みを含む或る特定の非常に有益な機械特性の著しい改善がもたらされ得ると共に、他方で、良好な耐化学薬品性と後結晶化による低い後収縮といった相反する特性との十分なバランスも保たれる。さらに、製造される物体の多孔性の減少が実現可能となり、これは、製造される物体の機械特性の改善にさらに寄与する。
【0069】
少なくとも1つのポリマーを含む粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって製造される物体は一般的に、例えば射出成形のような典型的なポリマー加工技術によって製造される物体よりも実質的に高い結晶度を有する。即ち、少なくとも1つのポリマーを含む粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する方法において、図1に例示されるようなタイプの例に関して、本発明による構造修飾されたポリマー又はコポリマーが全く使用されなければ、このように製造される物体の結晶度は高くなる傾向にある。詳細には、層状構築プロセスでは、ポリマーの融点Tmよりも約1℃〜50℃、好ましくは1℃〜30℃、さらにより好ましくは1℃〜20℃、及び最も好ましくは1℃〜10℃低い温度である高い粉末床温度が一般に用いられる。物体は典型的に、比較的高い加工温度にかなりの時間曝され、さらに通常非常に長い冷却時間を経る。構築プロセス中の物体のカールを防止するか又は最小限に抑えるには、連続層の良好な結合をもたらし、粉末粒子の不適切な溶融に起因する孔の形成を最小限に抑えるために、加工温度を粉末に含まれるポリマーの融点付近に維持しなければならない。その結果、構築プロセス全体中、粉末床の温度がポリマーの結晶化温度Tよりも高温に維持される。生じた物体自体は、Tよりも高い温度に長時間曝される可能性がある。構築プロセスの最後に、焼結装置の全ての熱源のスイッチを切ると、物体のT以下への冷却が環境への自然な熱損失に起因して始まる。ポリマー粉末の熱伝導性が低く且つ粉末床が大きいことから、この自然な熱損失には、(使用されるポリマー粉末及び加工条件に応じて、即ち適切な冷却速度を規定することなく)数時間から数日かかる可能性がある。これは、結局のところ冷却プロセス中のポリマー物体の結晶化をさらに増幅させる可能性がある。適切な制御がなければ、レーザー焼結されたポリマー物体の後結晶化さえも起こる可能性がある。結果として、本発明による制御された冷却工程がなければ、製造される物体における比較的高い結晶性及び部分的に極めて高い結晶性がもたらされる。さらに、結晶性を適切に限定しなければ、物体の関連する機械特性も悪くなるおそれがある。
【0070】
他方、本発明による選択的焼結プロセスでは、製造される物体の結晶性は、製造される物体の高い耐化学薬品性、Tを超える温度における低い後収縮、又は高い剛性に好ましい影響を与えるように常に十分に有益に調節することが可能である。このため、特性の優れたバランスを本発明によって達成することができる。
【0071】
ポリマー粉末材料から製造される材料の結晶性が適切に限定され、且つ好ましくは特定の範囲内に調節される場合、引張強度、ヤング係数及び破断伸びのような或る特定の非常に有益な機械特性の著しい改善を達成することができる。製造される物体の結晶度を限定するのに特に有効であり、且つ好ましい手段は、1)適切なタイプのポリマー材料を事前選択すること、2)事前選択された粉末に含まれるポリマーの構造特徴及び/又は修飾に関心を払うこと、及び/又は3)物体の焼結プロセスの完了後の規定の且つ/又は制御された冷却工程に関心を払うことである。
【0072】
それゆえ、本発明の好ましい実施形態によれば、焼結後に物体を完成させた後の規定の且つ/又は制御された冷却工程が好ましくは物体に適用される。規定の且つ/又は制御された冷却工程は、場合により自然(受動)冷却よりも遅い規定の徐冷によって、又は高速冷却をもたらすために能動冷却によって実現され得る。規定の且つ/又は制御された冷却工程の条件は主に、使用されるポリマー、コポリマー又はポリマー配合物のタイプ及び仕様に応じて決まるため、上記冷却工程に関する有用な設定は、実験により試験することができるが、但し、製造される物体における最終結晶性は、製造される物体が所望の機械特性を有するように制御される。
【0073】
しかしながら、物体の完成後の冷却速度は、物体のカール、即ち寸法安定性にも影響を及ぼす可能性がある。驚くべきことに、三次元物体が、低減した結晶性を有することにより上記の有益な機械特性がもたらされるだけでなく、高い寸法安定も有する、即ち三次元物体がカールしないように、冷却速度を規定することができることが見出された。
【0074】
好適なタイプのポリマー材料は、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニリデンフルオリド、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、並びに上記ポリマーの少なくとも1つを含むコポリマーから選択することができるが、この選択は上記ポリマー及びコポリマーに限定されない。例えば、好適なPAEKポリマー及びコポリマーは好ましくは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリアリールエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、及び上記ポリマーの少なくとも1つを含むコポリマーから選択される。好適なポリアミドポリマー又はコポリマーは、ポリアミドPA6T/6I、ポリ−m−キシレンアジパミド(PA MXD6)、ポリアミド6/6T、PEBAX(登録商標)系材料等のポリエーテルブロックアミドのようなポリアミドエラストマー、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド610、ポリアミド1010、ポリアミド1212、ポリアミドPA6T/66、PA4T/46、及び上記ポリマーの少なくとも1つを含むコポリマーから成る群から選択され得る。好適なポリエステルポリマー又はコポリマーは、ポリアルキレンテレフタレート(例えばPET、PBT)、及びイソフタル酸及び/又は1,4−シクロヘキサンジメチロールを有するそれらのコポリマーから成る群から選択され得る。好適なポリオレフィンポリマー又はコポリマーは、ポリエチレン及びポリプロピレンから成る群から選択され得る。好適なポリスチレンポリマー又はコポリマーは、シンジオタクチックポリスチレン及びイソタクチックポリスチレンから成る群から選択され得る。添付の特許請求の範囲に規定されるそれぞれの構造特徴は、好適な方法及び手段、構造変化、コ(ポリマー)の好適な構成成分の選択等によって検討することができる。
【0075】
本発明による選択的焼結プロセスに特に好ましいポリマー又はコポリマーは、以下の構造及び/又は修飾の少なくとも1つを有する。
【0076】
(i)ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、分枝基は、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の芳香族構造単位であることを条件とする、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基を有する構造及び/又は修飾。
【0077】
(ii)ポリマー又はコポリマーの主鎖の少なくとも1つの末端基が修飾された構造。
【0078】
(iii)ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、嵩高い基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択されないことを条件とする、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基を有する構造及び/又は修飾。
【0079】
(iv)主鎖と非線形結合する少なくとも1つの芳香族基を有する構造及び/又は修飾。
【0080】
(i)〜(iv)を以下に説明する。
【0081】
(i)「分枝基」とは、G基が、以下に示されるように、ポリマーの主鎖の部分(主鎖の部分A及び部分B)と結合する結合の他に、少なくとも1つの側鎖及び置換基Sをそれぞれ有するものを意味する。
【0082】
【化1】

【0083】
好ましくは、Gは脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又はヘテロアレーンである。側鎖又は置換基「S」はそれぞれ、溶融中のポリマー鎖の移動度に影響を与えるため、製造される物体の最終結晶性に好適に作用することが可能である。好ましくは、置換基は互いに独立して、C1〜C6非分岐鎖若しくは分岐鎖又は環状アルキル又はアルコキシ基、及びアリール基から成る群から選択され、ここでは、メチル、イソプロピル、tert−ブチル又はフェニルが特に好ましい。さらに、得られるポリマー又はコポリマーの(任意に脱保護後の)さらなる誘導体化、例えばグラフトコポリマーの合成をそれぞれ可能とする側鎖又は置換基Sが好ましい。分枝基の上記の実例は1つの分枝基を示しているに過ぎない。しかしながら、特に分枝基がポリマーの繰り返し単位の一部である場合には、より多くの分枝基がポリマー中に存在し得る。構造単位(G−S)はまた、上記に示される主鎖の部分A及び/又は部分Bの単一要素であっても複数要素であってもよい。ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、分枝基は、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の芳香族構造単位である。
【0084】
(ii)「ポリマー又はコポリマーの主鎖の少なくとも1つの末端基が修飾された構造」とは、以下に示されるように、末端基R及び/又はRを用いたポリマーの主鎖の一端又は両端X及びYの誘導体化された構造を意味する。
【0085】

(X)−ポリマーの主鎖−(Y)
(R−ポリマーの主鎖−(R
【0086】
ここで、n、mは互いに独立して、0又は整数、好ましくは1であり、n及びmは同時に0をとらない。n、mで示されるように、末端基には複数の修飾が存在し得る。本実施形態では、修飾されていない末端基X及びYがそれぞれ種結晶として作用する可能性があるため、望ましくない過剰な結晶化を誘起するおそれがあることが問題とされる。したがって、結晶化を阻害するために、ポリマー又はコポリマーの末端基X及びYの少なくとも1つを誘導体化することができ、このようにして、製造される物体の結晶性を制限する。好ましくは、末端基R及びRは独立して、アルキル基、アルコキシ基、エステル基及び/又はアリール基から選択される。例えば、R及びRは互いに独立して、分岐又は非分岐C1〜C6アルキル基、好ましくはメチル、イソプロピル又はtert−ブチル;分岐又は非分岐C1〜C6アルコキシ基、好ましくはメトキシ、イソプロピルオキシ、t−ブチルオキシ;置換又は非置換C1〜C6脂肪族エステル基、好ましくはメチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル又はtert−ブチルエステル;置換又は非置換芳香族エステル基、好ましくは安息香酸エステル及び置換又は非置換アリール基、好ましくはフェニル、ナフチル、アントラセニルから成る群から選択される。末端基はまた、好ましくはポリマーのTを超える温度における互いの化学反応、例えば、重縮合、求電子置換若しくは求核置換、又はカップリング反応によって鎖伸張をもたらすように選択され得る。これによりさらに、モル質量の増大による物体における最終結晶性の低減がもたらされる。
【0087】
(iii)「嵩高い基」とは、例えば、環構造内にヘテロ原子を含有し得る、シクロヘキシルのようなシクロアルキル、又はデカリン若しくはノルボルナンのような多環式シクロアルキルを意味する。嵩高い基のさらなる例は、フェニレンのような芳香族化合物、又は縮合多環式芳香族化合物若しくはヘテロ芳香族化合物、例えば、ナフタレン若しくはアントラセン、フルオレン及びフルオレン誘導体、又はビフェニレン若しくはターフェニレンのような多核芳香族炭化水素である。嵩高い基は、ポリマー鎖内の剛性の棒状セグメントに相当し、このため、結晶化を阻害し、製造される物体におけるより低い最終結晶性に寄与する。嵩高い基の選択は、ポリマー又はコポリマーのタイプに応じて決まる。例えば、ポリエチレン等の脂肪族ポリマーの場合には、既に、1つのフェニレン単位が嵩高い基を表し得るが、本質的にフェニレン単位を含有するポリアリールエーテルケトンの場合にはフェニレンを嵩高い基とみなすことはできない。ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、構造特徴(iii)による実施形態に関して、嵩高い基とは、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択されるものではない。
【0088】
(iv)「非線形結合する芳香族基」とは、互いに非線形に配置されるように主鎖部分を結合させる、即ち、主鎖部分間の角度が180°ではない芳香族基を意味する。
【0089】
ポリマーの主鎖における非線形結合する芳香族基の組込みによって、製造される物体における最終結晶性を制御するように低減させることができ、それにより、ヤング係数、引張強度及び破断伸びのような有益な機械特性が得られる。さらに、非線形結合する芳香族基の組込みによって、特に有益な温度範囲内となるようにポリマーの融点を下げることができ、また製造される物体が特に有益な加熱撓み温度を有するようにガラス転移温度を設定することもできる。
【0090】
以下に示されるようにそれぞれ120°及び60°の角度でポリマーの主鎖の部分Aと部分Bとが共に結合するため、非線形結合する芳香族基は例えば1,3−フェニレン及び1,2−フェニレンである。
【0091】
【化2】

【0092】
さらに、好ましい非線形芳香族基は例えば、1,3−キシレン、2,4’−及び3,4’−ビフェニレン、並びに2,3−及び2,7−ナフタレンである。
【0093】
非線形結合基とは異なり、線形結合する芳香族基は、180°の角度で主鎖部分同士が結合する。例えば、以下に示されるように概略的に示されるポリマーの主鎖の部分Aと部分Bとが180°の角度で結合するため、1,4−フェニレンは線形結合する芳香族基を表す。
【0094】
【化3】

【0095】
縮合芳香族化合物から成る線形結合基は、2つの異なる様式で主鎖部分と線形結合することができ、これは、ナフタレンを用いて例示的に説明されるが、例えばアントラセン又はフェナントレン等の他の縮合芳香族化合物についても有効である。例えば、1,4−ナフタレン形態のナフタレンは、ポリマーの主鎖の部分Aと部分Bとを180°の角度で結合し得る。代替的に、ナフタレンは、1,5−ナフタレン又は2,6−ナフタレンの形態でも線形結合させることができ、このとき、概略的に示される主鎖の部分Aと部分Bとは互いに平行に配置される。
【0096】
【化4】

【0097】
非線形結合する芳香族基及び線形結合する芳香族基のそれぞれの上記の例示的な図は、1つの非線形結合する芳香族基及び線形結合する芳香族基をそれぞれ示しているに過ぎない。しかしながら、特に非線形結合基又は線形結合基が、ポリマーの繰り返し単位の構成成分である場合には、より多くの非線形結合する芳香族基及び線形結合する芳香族基がそれぞれポリマー中に存在し得る。
【0098】
構造特徴(iv)により、非線形結合する芳香族基と線形結合する芳香族基との組合せが可能である。
【0099】
さらに、粉末中に含まれるポリマーの好適に設定される分子量が、製造される物体における結晶性の有意な低減に寄与することができ、さらに、製造される物体における或る特定の非常に有益な機械特性の有意な改善がもたらされる。このため、分子量M(平均数)は好ましくは、少なくとも10000、より好ましくは15000〜200000、及び特に15000〜100000に設定され、又はM(重量平均)は好ましくは、少なくとも20000、及びより好ましくは30000〜500000、及び特に30000〜200000に設定される。
【0100】
分子量に関する上述のような類似の説明は、ポリマー又はコポリマーの溶融粘度についても当てはまる。溶融粘度は、ポリマー又はコポリマーの分子量が大きいと、その溶融粘度も大きくなるというような、ポリマー又はコポリマーの分子量との相関関係を有する。このため、例えばポリアリールエーテルケトン及びそれらのコポリマーの好ましい溶融粘度は、概して、0.05kNs/m〜1.0kNs/m、好ましくは0.15kNs/m〜0.6kNs/m、及び特に0.2kNs/m〜0.45kNs/mの範囲である。溶融粘度は、米国特許出願公開第2006/0251878号明細書の指示に従い、毛細管粘度計において、400℃及び1000s−1の剪断速度で求めることができる。
【0101】
ポリマー又はコポリマーは、少なくとも2つの異なるポリマー又はコポリマーの配合物が使用される混合物(配合物)中で合金成分と混和することができる。このような配合物では、配合物の少なくとも1つの構成成分が、製造される物体の最終結晶性を低減させる成分であることが好ましい。
【0102】
特に製造される物体における結晶性及びその機械特性である望ましい結果のために、ポリマー又はコポリマーに含まれる構造特徴(i)及び(iii)の包括的な要件を超えて、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)には以下の限定が適用される:
特徴(i)に関して:分枝基が、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の芳香族構造単位であり、且つ、
特徴(iii)に関して:嵩高い基が、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択されない。
【0103】
他のタイプのポリマー、特にポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニリデンフルオリド、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、又は上記ポリマーの少なくとも1つを含むコポリマーでは、ポリアリールエーテルケトンに関して為された限定は適用されないものとする。
【0104】
以下では、電磁照射を用いた選択的焼結プロセスに適用可能な事前選択に適する、ポリマー材料又はコポリマー材料の幾つかの有意な構造特性又は修飾を、PAEKポリマー及びコポリマーを用いて例示的に説明する。以下に説明される構造特性又は修飾を同様に他のタイプのポリマー又はコポリマーにも適用することができることは、当業者にとって明らかである。
【0105】
下記式は、レーザー焼結される物体を製造するのに好ましいPAEK又はPAESポリマー及びコポリマーの一般構造を示しており、低い結晶性を得るための、好ましくは単独又は組み合わせである構造特性を以下でさらに説明する。
【0106】
【化5】

【0107】
Ar、Ar及びArは線形結合又は非線形結合する、非置換又は置換の単環式又は多環式芳香族炭化水素を示し、Rf、Rf、RfがHであっても関係なく、置換基Rf、Rf、Rfは任意に、互いに独立して、C1〜C6直鎖、分岐鎖又は環状アルキル及びアルコキシ基、並びにアリール基、好ましくはMe、i−Pr、t−Bu、Ph(非置換Ar、Ar及びArの場合、Rf、Rf、Rf=Hである)から成る群から選択され、各Ar、Ar及びArは、1つ又は複数のRf、Rf、Rf置換基をそれぞれ有し得る。
【0108】
X=O及び/又はS
Y=CO及び/又はSO
Z=SO、CO、O及び/又はS
aは、0より大きい小さい整数であり、好ましくは12より小さく、より好ましくは1〜6、及び特に1〜3である。
bは、0より大きい小さい整数であり、好ましくは12より小さく、より好ましくは1〜6、及び特に1〜3である。
cは、0又は小さい整数であり、好ましくは12より小さく、より好ましくは1〜6、及び特に1〜3である。
nは重合度を示す。
【0109】
上記一般式中、指数a、b及びcはそれぞれ、ポリマーの繰り返し単位又はコポリマーの繰り返し単位におけるそれぞれの単位の数を示し、同じ種類の1つ又は複数の単位(例えばaの指数を有する単位)は、異なる種類の単位(例えば、b及び/又はcの指数を有する単位)の間に位置していてもよい。繰り返し単位におけるそれぞれの単位の位置は、PAEK誘導体の略号に由来し得る。
【0110】
本発明によるPAEKポリマーの以下の例を用いることにより、PAEKポリマー若しくはコポリマー又はPAESポリマー若しくはコポリマーの上記一般式を明確にする。このため、本発明によるPAEKを用いた一実施形態では、Arが非置換4,4’’−p−ターフェニレンであり、X=O及びa=1であり、Arが非置換1,4−フェニレンであり、YがOであり、b=1であり、且つArが非置換1,4−フェニレンであり、ZがCOであり且つc=1である。このPAEKについては下記構造式で表される。
【0111】
【化6】

(式中、nは重合度を示す)
【0112】
PAEKポリマー又はコポリマーでは、通常の1,4−フェニレンに加えて、p−ターフェニレンと同様に、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択される基のようなより嵩高い基を選択してもよい。
【0113】
PAEKポリマーに関する以下の2つの例において、PEKK及びPEKEKKは、線形結合する芳香族基を有するPAEKポリマーに関する例である。このため例えば、PEKKについて、Arは非置換1,4−フェニレンであり、XはOであり且つa=1であり、Arは非置換1,4−フェニレンであり、YはCOであり、且つb=2及びc=0である。PEKKについては下記構造式で表される。
【0114】
【化7】

【0115】
(式中、nは重合度を示す)。さらなる例であるPEKEKKにおいて、Arは非置換1,4−フェニレンであり、XはOであり且つa=2であり、Arは非置換1,4−フェニレンであり、YはCOであり、且つb=3及びc=0である。PEKEKKについては下記構造式で表される。
【0116】
【化8】

(式中、nは重合度を示す)
【0117】
以下の例は、本発明により適用されるPAEKポリマー、即ち、非線形結合単位を有するPEKKコポリマーを示す。このPEKKコポリマーは、2つの異なる繰り返し単位(下記構造式中の繰り返し単位A及び繰り返し単位Bを参照)を有する。
【0118】
【化9】

【0119】
繰り返し単位Aでは、Arが非置換1,4−フェニレンであり、XがOであり且つa=1であり、Arが非置換1,4−フェニレンであり、YがCOであり、b=2及びc=0である。繰り返し単位Bでは、Arが非置換1,4−フェニレンであり、XがOであり且つa=1であり、Arが非置換1,3−フェニレンであり、YがCOであり且つb=1であり、且つArが1,4−フェニレンであり、ZがCOであり且つcが1である。合成に応じて、繰り返し単位A及び繰り返し単位Bは、コポリマーの主鎖中に、厳密に交互に、統計学的に又はブロック状に配置され得る。このPEKKコポリマーの重合度nは、n及びnの合計から得られる。
【0120】
上記のPEKKコポリマーの選択的焼結において、驚くべきことに、製造される物体の最終結晶性が下がるにつれて、1,3−フェニレン単位の含有量が増えることが見出された(実施例1と実施例2とを比較)。さらに、PEKKコポリマー中の1,3−フェニレン単位の含有量を増大させることにより、コポリマーの融点を下げることができることが見出された。このような融点の低下は、レーザー焼結の加工手順(procedural processing)に有益である。これにより、プロセスチャンバの温度を低く選択することができるため、エネルギー効率の良い焼結プロセスが可能となる。したがって、繰り返し単位A中の1,4−フェニレン単位Arと、繰り返し単位B中の1,3−フェニレン単位Arとの比率は、好ましくは90/10〜10/90、より好ましくは70/30〜10/90、及び特に60/40〜10/90である。かかるPEKKコポリマーは、例えば、ジフェニルエーテル、並びにそれぞれ1,4−フェニレン単位を有するモノマーとしてのテレフタル酸及びテレフタル酸塩化物、及びそれぞれ1,3−フェニレン単位を有するモノマーとしてのイソフタル酸及びイソフタル酸塩化物の芳香族求電子置換によって得ることができる。
【0121】
さらに、ケトン基Yの量とエーテル基又はチオエーテル基の量との比率は好ましくは1:4〜4:1である。この比率範囲内では、製造される物体における最終結晶性がかなり低減され得る。
【0122】
芳香族炭化水素Ar、Ar及びArの所要空間が大きいほど、芳香族炭化水素は剛性の棒状セグメントのように挙動し、製造される物体の最終結晶性は下がる。それゆえ、線形結合する芳香族基に関して、芳香族炭化水素基Ar、Ar及びArはそれぞれ独立して、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、4,4’−イソプロピリデンジフェニレン、4,4’−ジフェニルスルホン、1,4−、1,5−及び2,6−ナフタレン、4,4’’−p−ターフェニレン、並びに2,2−ビス−(4−フェニレン)プロパンから成る群から選択され、且つ非線形結合する芳香族基については、それぞれ独立して、1,2−及び1,3−フェニレン、1,3−キシレン、2,4’−及び3,4’−ビフェニレン、並びに2,3−及び2,7−ナフタレンから成る群から選択されることが好ましい。
【0123】
ポリアリールエーテルケトンの場合、分枝基は、置換基Rf、Rf、Rfを有する芳香族炭化水素Ar、Ar及びArにより提供され得る。この場合、芳香族化合物の結合が線形又は非線形であるかは問題にされない。
【0124】
また、好適なコポリマーを使用することで、選択的焼結プロセス後の製造される物体の低結晶性を達成するようにポリマーを適用することができる可能性がある。PAEKでは、上述したPEKKコポリマーに加えて、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)を有するコポリマーが好ましく、特に好ましくはポリアリールエーテルケトン(PAEK)/ポリアリールエーテルスルホン(PAES)ジブロックコポリマー又はPAEK/PAES/PAEK−トリブロックコポリマー、より特にポリエーテルケトン(PEK)/ポリエーテルスルホン(PES)ジブロックコポリマー又はPEK/PES/PEK−トリブロックコポリマーである。ポリアリールエーテルスルホン成分の量が多いほど、製造される物体の結晶性が低くなることが見出された。ここで、スルホン基Zの量とケト基Yの量との比率は好ましくは50:50〜10:90である。この比率範囲内では、電磁放射を用いた選択的焼結によって三次元物体を製造する装置におけるポリマーの加工に適する、ポリマー材料のガラス転移温度(T)及び融点(T)を調節することができる。選択的焼結プロセスに好適な加工温度を提供するには、上記PEK/PESコポリマーが好ましくは180℃よりも高いT及び300℃〜430℃の溶融温度Tを有する。
【0125】
ポリマー又はコポリマーの主鎖の末端基は、合成に使用されるモノマーの種類及び重合の種類に応じて決まる。以下に、異なる末端基を有する異なる種類のPAEKをもたらす2つの異なる種類のPAEK合成スキームを示す。
【0126】
PAEKは、2つの方法において、即ち芳香族求電子置換(Friedel−Craftsアシル化)又は芳香族求核置換によって通常合成することができる。例えば、PAEKの求核合成では、1,4−ビスヒドロキシベンゼンを4,4’−ジハロゲン化ベンゾフェノン成分と重合する。
【0127】
xHO-Ph-OH + (y+1)Hal-Ph-CO-Ph-Hal →
Hal-Ph-CO-Ph-[O-Ph-O]x[Ph-CO-Ph]y-Hal
(式中、HalはF、Cl、Brであり、且つx及びyは、ポリマー中に組み込まれるモノマーの数を示す)
【0128】
上記例PEEKにおけるPAEK主鎖は、重合後に、主鎖の片側末端(図示せず)又は両端(図示)においてハロゲン残基で、最も好適にはフッ素で、任意に代替的には塩素又は臭素で末端封止されてもよく、又は末端封止されなくてもよい(図示せず)。これはジハロゲン化ケトン単位が部分的にジハロゲン化芳香族スルホンで置換され得る、PAEK又はポリエーテルスルホン(PAES)コポリマーの合成にも当てはまる。芳香族ビスヒドロキシ成分も同様に、部分的に又は完全にビスチオール成分で置換され得る。
【0129】
例えば、ポリマーのハロゲン置換された末端を、フェノールによる停止反応により誘導体化してもよい。
【0130】
2Ph-OH + Hal-Ph-CO-Ph-[O-Ph-O]x[Ph-CO-Ph]y-Hal →
Ph-O-Ph-CO-Ph-[O-Ph-O]x[Ph-CO-Ph]y-O-Ph
好ましくは、上記式中のHalはFである。
【0131】
ジハロゲン化(dihaloginated)ケトン単位が部分的にジハロゲン化芳香族スルホン単位で置換される、PAEK又はポリエーテルスルホン(PAES)コポリマーの合成についても同じことが当てはまる。芳香族ビスヒドロキシ成分を、ビスチオール成分で部分的に又は完全に置換することもできる。
【0132】
芳香族求電子置換反応によるPAEKポリマー又はコポリマーの合成の場合、ジアシル芳香物質、例えば、芳香族二酸、又は好ましくは芳香族二酸塩化物又は芳香族二酸無水物を、ビス芳香族エーテル又はチオエーテル成分と重合する。例えばPEKKでは、これにより、主鎖の片側末端(図示せず)又は両端(図示)にフェニル基を有するか又はいずれの末端にもフェニル基を有しない(図示せず)PEKKポリマー又はコポリマーがもたらされ得る。
【0133】
xRAOC-Ph-CORA + (y+1)Ph-O-Ph →
Ph-O-Ph-[OC-Ph-CO]x[Ph-O-Ph]y-H
(式中、RはCl又は−OHであり、且つx及びyは、ポリマー中に組み込まれるモノマーの数を示す)
【0134】
代替的に、例えば芳香族一酸塩化物を用いた単一モノマー経路による合成を適用してもよい。
【0135】
例えば、ポリマーの末端におけるフェニル基を、安息香酸クロリドによる停止反応によって誘導体化してもよい。
【0136】
2Ph-COCl + Ph-O-Ph-[OC-Ph-CO]x[Ph-O-Ph]y-H →
Ph-CO-Ph-O-Ph-[OC-Ph-CO]x[Ph-O-Ph]y-OC-Ph
【0137】
求核置換反応又は芳香族置換反応が選択されるかにかかわらず、ポリマーの結晶化を遅らせるためには、例えば、PAEKポリマーが下記式を有するように、好ましくは末端基を置換することができる。
【0138】
−U−[PAEK]−U−R
(式中、Uは連結部位、例えばNH、O、CO、CO−O−、SO、単結合、−(CH(式中、kは1〜6等であり、且つ左側構造部位及び右側構造部位Rは同じ構造基であっても異なる構造基であってもよく、通常、構造部位Rは同じである。
【0139】
好ましくは、Rは、非置換又は置換の脂肪族又は芳香族炭化水素残基の群から選択される。Uは、ポリマー又はコポリマーの末端との直接反応によって形成され得る。例えば、単官能性ヒドロキシ化合物はUとしてOを形成し得るか、又は停止試薬の置換基として導入され得る。例えば、HO−Ph−COO−tert−ブチルはUとしてCOOを形成し得る。
【0140】
さらに、製造される三次元物体の結晶性を適切に調節するために結晶化速度の増大が必要であれば、ハロゲン化末端基を有するポリアリールエーテルケトンを、例えばNaOPhSONa又はNaOPhCOPhOPhSONa等のフェノキシド塩のようなイオン性末端基で末端封止することができる。例えばHClによるフェノキシド塩のその後の酸性化により、多少低い核形成効果を示す−SOH末端基がもたらされる。
【0141】
さらに、以下に(重ねて例示として)、ここではPAポリマー及びコポリマーを用い、ポリマー材料又はコポリマー材料のさらなる有意な構造特徴又は修飾を記載する。これは、電磁照射を用いた選択的焼結プロセスに適用可能な事前選択に好適である。以下に記載する構造特徴又は修飾をさらに他のタイプのポリマーにも適用し得ることは、当業者にとって明らかである。
【0142】
下記式は、レーザー焼結物体を製造するのに好ましい、一部が芳香族であるPAポリマー及びコポリマーの一般構造を示しており、低い結晶性を得るために必要な構造特性を以下でさらに説明する。
【0143】
【化10】

【0144】
K、L=C2〜C20直鎖又は環状アルキル基、非置換又は置換のAr及びArは線形結合するか又は非線形結合する非置換又は置換の単環式又は多環式芳香族炭化水素であり、Rf、Rf、Rf及び/又はRfがHであっても関係なく、
置換基Rf、Rf、Rf、Rfは任意に、互いに独立して、C1〜C6直鎖、分岐鎖又は環状アルキル及びアルコキシ基、並びにアリール基から成る群から選択され、好ましくはMe、i−Pr、t−Bu、Phから選択され、ここで、K、L、Ar及びArの各々はそれぞれ、1つ又は複数の置換基Rf、Rf、Rf、Rfを有し(K、L、Ar及びArが置換されていなければ、このときRf、Rf、Rf、Rf=Hである)、
T、U、V、W=−NH−CO−又は−CO−NH−であり、
dは0より大きい小さい整数であり、好ましくは12より小さく、より好ましくは1〜6、特に1〜3であり、
e、f及びgは、0又は小さい整数、好ましくは12より小さく、より好ましくは1〜6、及び特に1〜3であり、
nは重合度を示す。
【0145】
上記一般式中、指数d、e、f及びgはそれぞれ、ポリマーのそれぞれの繰り返し単位又はコポリマーのそれぞれの繰り返し単位の数を示し、同一種類の1つ又は複数の単位(例えばdの指数を有する単位)が、別の種類の単位(例えば、e、f及び/又はgの指数を有する単位)の間に位置していてもよい。
【0146】
本発明により使用されるポリアミドポリマーの以下の例は、ポリアミドポリマーに関する上記一般式を明確にするものである。
【0147】
本発明により使用されるPA6−3−Tポリアミドポリマーは以下の繰り返し単位を有する。
【0148】
【化11】

【0149】
繰り返し単位Aでは(上記一般式中)、Kは、Rf=メチルであり、Tが−NH−CO−であり且つd=1であり、e=0であり、Arが非置換1,4−フェニレンであり、Vが−CO−NH−であり且つf=1及びg=0である、2位で二置換され且つ4位で一置換されたn−ヘキサン鎖である。テレフタル酸と反応する置換ヘキサンジアミンには2つの可能性があるため、これにより第2の繰り返し単位Bが生じる。繰り返し単位Bでは(上記一般式中)、Kは、Rf=メチルであり、Tが−NH−CO−であり且つd=1であり、e=0であり、Arが非置換の1,4−フェニレンであり、Vが−CO−NH−であり且つf=1及びg=0である、2位で二置換され且つ4位で一置換されたn−ヘキサン鎖である。
【0150】
本発明により適用されるポリアミドポリマーPA 6T/6I及びPA MXD6についての以下の2つの例は、非線形結合する芳香族基を有するポリアミドポリマーの例である。
【0151】
ポリアミドPA 6T/6Iコポリマーは、2つの異なる繰り返し単位(下記構造式中の繰り返し単位A及び繰り返し単位Bを参照)を有する。
【0152】
【化12】

【0153】
繰り返し単位Aでは(上記一般式中)、Kは非置換のn−ヘキサン鎖であり、Tは−NH−CO−であり且つd=1であり、e=0であり、Arは非置換1,4−フェニレンであり、Vは−CO−NH−であり且つf=1及びg=0である。繰り返し単位Bでは(上記一般式中)、Kは非置換n−ヘキサン鎖であり、Tは−NH−CO−であり且つd=1であり、e=0であり、Arは非置換1,3−フェニレンであり、Vは−CO−NH−であり且つf=1及びg=0である。このPAコポリマーの重合度nは、nとnとの合計から得られる。
【0154】
以下の例は、本発明により適用されるさらなるポリアミド、即ち、主鎖中に非線形結合単位を有するポリ−m−キシレンアジパミド(ポリアミドMXD6)を示す。上記一般式中、ポリアミドMXD6に関して、Kは非置換n−ブタン鎖であり、Tは−CO−NH−であり且つd=1であり、e=0であり、Arは非置換1,3−キシレンであり、Vは−NH−CO−であり且つf=1及びg=0であり、下記構造式がMXD6に関するものとなる。
【0155】
【化13】

(式中、nは重合度を示す)
【0156】
ポリアミドの場合、分枝基は、置換基Rf、Rf、Rf及びRfの1つ又は複数で置換される、脂肪族残基K及びL、並びに/又は芳香族炭化水素Ar及びArにより提供され得る。
【0157】
ポリアミドの場合、嵩高い基は芳香族基又は非芳香族基から選択される。特に、フェニレン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、フルオレン、ターフェニル、デカリン又はノルボルナンから成る群から選択される構造単位を検討する必要がある。
【0158】
他のポリマーにおいても、ポリアミドについて挙げられるような嵩高い基に関する類似体の検討が適用される。
【0159】
PAEKポリマー及びコポリマーに関して、またPA(コ)ポリマーに関して説明される構造特徴は、他の既に例示的に言及されたポリマー材料又はコポリマー材料にも適用することができる。当業者は、対応する構造修飾が、製造される三次元物体における結晶性を低下させる効果を伴って為され得ることを理解するであろう。
【0160】
さらに、粉末は、それぞれのポリマー、コポリマー又は配合物のマトリクスの他に1つ又は複数のフィラー及び/又は添加剤を含む複合粉末であってもよい。フィラーは、製造される物体の機械特性をさらに改善するのに使用され得る。例えば、炭素繊維、ガラス繊維、Kevlar(ケブラー(登録商標))繊維、カーボンナノチューブ、又は好ましくは低いアスペクト比を有するフィラー(ガラスビーズ、アルミニウム顆粒等)又は二酸化チタン等の鉱物フィラー等のフィラーを、少なくとも1つのポリマー又はコポリマーを含む粉末中に組み込んでもよい。さらに、粉末の加工性を改善するプロセス(processing)添加物、例えば、Aerosilシリーズの1つ(例えばAerosil R974、Aerosil R812、Aerosil 200)等の易流動性剤、又は熱安定剤、酸化安定剤、顔料(カーボンブラック、グラファイト等))のような他の機能性添加剤を使用してもよい。
【0161】
本発明の結果から、一般に、ポリマー又はコポリマーの以下の構造特徴又は修飾が製造される物体の結晶性を低減するため、例えば、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニリデンフルオリド、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、及び前述のポリマーのうちの1つを含むコポリマーの中から、特定タイプのポリマー又はコポリマーが事前選択される場合に特に好ましいと考えられる。
【0162】
すなわち、
a)以下の構造特徴及び/又は修飾の少なくとも1つを有するポリマー又はコポリマーの事前選択がなされるのが好ましい。
【0163】
(i)ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、分枝基は、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の芳香族構造単位であることを条件とする、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基;
(ii)ポリマー又はコポリマーの主鎖の少なくとも1つの末端基の修飾;
(iii)ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、嵩高い基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択されないことを条件とする、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基;
(iv)主鎖と非線形結合する少なくとも1つの芳香族基;
b)比較的大きい分子質量M若しくはM又は或る特定の溶融粘度を使用
c)長い鎖長又は高い重合度nを使用
d)少なくとも2つの異なるポリマー又はコポリマーの混和による混合又は配合。
【0164】
以下の実施例は、本発明を例示しているに過ぎず、本発明の範囲を何ら限定するようにみなされるものではない。実施例及び変更形態、又はそれらの他の等価物は、本発明の全開示を鑑みて当該技術分野に精通する者にとって明らかであろう。
【実施例】
【0165】
Satorius density determination set YDK 01を用いてKern 770−60秤によりISO 1183に従い、製造される三次元物体の密度を測定した。100%結晶性のポリマーの理論密度、非晶質ポリマーの理論密度、及び製造される高分子物体の結晶性が分かる場合には、物体の多孔性を密度から求めることができる。製造される物体における結晶性は、DIN 53765に従い動的示差走査熱量測定(DCC又はDSC)を用いて測定することができる。
【0166】
代替的に、結晶性は広角X線散乱(WAXS)測定によって求めることができる。この手法も当業者により既知である。ポリマーの理論密度値が分からなければ、多孔性をマイクロコンピュータ断層撮影(micro-computerthomography)測定によって求めることもできる。好適な装置は、例えばSCANCO Medical AG(Bruettisellen, Switzerland)により供給されるμ−CT40である。この手法は当業者により既知である。
【0167】
以下の実施例は、例示に過ぎず、限定するようにみなされるものではない。
【0168】
参考例
48μmの平均粒径分布を有する構造修飾されたPEEK(Victrex Plc社(Thornton Cleveleys, Lancashire FY5 4QD, Great Britain)より購入)から製造した粉末(PEEKポリマーは、M=23000及びM=65000の分子質量、並びに0.15kNs/mの溶融粘度を有する)を、オーブン内においてガラス転移温度より高い温度で熱処理する。
【0169】
0.45g/cmの容積密度を有するPEEK粉末を、高温利用のためEOS社によって改良したレーザー焼結装置タイプP700において加工した。プロセスチャンバの温度は335℃であった。
【0170】
レーザー焼結プロセスを終了した後に、335℃〜PEEKのT(145℃)まで後加熱することによって冷却速度を制御した。冷却速度は0.3℃/分の最大平均を示した。
【0171】
製造した三次元成型品(parts)は以下の特性を示した:
密度=1.316g/cm
結晶性(DSC)=52%
多孔性(密度/結晶性により算出)=1.4%
引張強度試験(ASTM D638、Type I):
ヤング係数=4500MPa
引張強度=44MPa
破断伸び=1.04%
実施例1(本発明による)
100μm未満の平均粒径分布を有し得る、構造式:
【化14】

を有する構造修飾されたPAEKから作製可能な粉末を、オーブン内においてガラス転移温度より高い温度で熱処理する。
【0172】
PAEK粉末を、高温利用のためEOS社によって改良したレーザー焼結装置タイプP700において加工した。プロセスチャンバの温度は、例えばPAEK粉末の融点よりも10℃低い温度である。
【0173】
レーザー焼結プロセスを終了した後に、冷却速度が0.3℃/分の最大平均を示すように、プロセスチャンバの温度〜PAEKのTまで後加熱することによって冷却速度を制御した。
【0174】
実施例2(本発明による)
50μmの平均粒径分布を有する、構造式:
【化15】

を有する構造修飾されたPEEKから作製可能な粉末(PEEKポリマーは分子量M=32000及びM=65000を有する)を、オーブン内においてガラス転移温度より高い温度で熱処理する。
【0175】
PEEK粉末を、高温利用のためEOS社によって改良したレーザー焼結装置タイプP700において加工した。プロセスチャンバの温度は例えば335℃であった。
【0176】
レーザー焼結プロセスを終了した後に、冷却速度が0.3℃/分の最大平均を示すように、335℃〜PEEKのT(約145℃)まで後加熱することによって冷却速度を制御した。
【0177】
実施例3(本発明による)
100μm未満の平均粒径分布を有し得る、構造式:
【化16】

を有するポリアミドPA6−3−Tから作製可能な粉末を、オーブン内においてガラス転移温度より高い温度で熱処理する。
【0178】
ポリアミド粉末を、高温利用のためEOS社によって改良したレーザー焼結装置タイプP700において加工した。プロセスチャンバの温度は、例えばポリアミドの融点よりも5℃低い温度である。
【0179】
レーザー焼結プロセスを終了した後に、冷却速度が0.3℃/分の最大平均を示すように、プロセスチャンバの温度〜ポリアミドのTまで後加熱することによって冷却速度を制御した。
【0180】
実施例4(本発明による)
150μm未満の平均粒径分布を有し得る、構造式:
【化17】

(R=ブチル、ヘキシル又はオクチルであり、
n、m=1000個のC原子当たり短鎖分岐の割合が15個〜30個となるような整数である)
を有する構造修飾されたポリエチレンPE−LLD(直鎖低密度)から作製可能な粉末を作製した。
【0181】
具体的には、PE−LLD粉末を、EOS社のレーザー焼結装置タイプP390において加工した。プロセスチャンバの温度は、例えばPE−LLD粉末の融点よりも5℃低い温度である。
【0182】
レーザー焼結プロセスを終了した後に、冷却速度が0.2℃/分の最大平均を示すように、40℃におけるプロセスチャンバの冷却速度を制御した。
【0183】
実施例5(本発明による)
150μm未満の平均粒径分布を有し得る、構造式:
【化18】

(R=メチルであり、
n、m=1000個のC原子当たり短鎖分岐の割合が15個〜30個となるような整数である)
を有する構造修飾されたポリエチレンPE−HD(高密度)から作製可能な粉末を作製した。
【0184】
具体的には、PE−HD粉末を、EOS社のレーザー焼結装置タイプP390において加工した。プロセスチャンバの温度は、例えばPE−HD粉末の融点よりも5℃低い温度である。
【0185】
レーザー焼結プロセスを終了した後に、冷却速度が0.3℃/分の最大平均を示すように、40℃におけるプロセスチャンバの冷却速度を制御した。
【0186】
実施例6(本発明による)
少なくとも1つの1,4−フェニレン単位をそれぞれ含有する繰り返し単位と、少なくとも1つの1,3−フェニレン単位をそれぞれ含有する繰り返し単位との比率が80:20であり、融点が367℃であり、且つ平均粒径d50=55μmである、熱処理したPEKK粉末(タイプPEKK−C、OPM社(Enfield, CT, USA)から購入)を、高温利用のためEOSによって改良したレーザー焼結装置タイプP700において加工した。プロセスチャンバの温度は343℃であった。冷却速度は0.3K/分の最大平均を示した。
【0187】
レーザー焼結した成型品は平均して以下の特性を有していた。
【0188】
密度:1.246g/cm
引張強度(ISO 527−2):
ヤング係数:4200MPa
引張強度:39MPa
破断伸び:1.0%
【0189】
実施例7(本発明による)
少なくとも1つの1,4−フェニレン単位をそれぞれ含有する繰り返し単位と、少なくとも1つの1,3−フェニレン単位をそれぞれ含有する繰り返し単位との比率が60:40であり、融点が297℃であり、且つ平均粒径d50=60μmである、熱処理したPEKK粉末(Typ PEKK−SP、OPM社(Enfield, CT, USA)から購入)を、高温利用のためEOSによって改良したレーザー焼結装置タイプP700において加工した。プロセスチャンバの温度は286℃であった。286℃〜250℃における平均冷却速度は、0.3K/分よりも速かった。250℃〜Tでは、自然な熱損失により平均冷却速度を定めた。
【0190】
レーザー焼結した成型品は平均して以下の特性を有していた。
【0191】
密度:1.285g/cm
引張強度(ISO 527−2):
ヤング係数:3900MPa
引張強度:69MPa
破断伸び:1.9%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁照射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する方法であって、該粉末が、以下の構造の少なくとも1つを有するポリマー又はコポリマーを含む、電磁照射を用いた選択的焼結によって粉末から三次元物体を製造する方法。
(i)前記ポリマー又は前記コポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、該分枝基は、該ポリマー又は該コポリマーの該主鎖中の芳香族構造単位であることを条件とする、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基を有する構造。
(ii)前記ポリマー又は前記コポリマーの前記主鎖の少なくとも1つの末端基が修飾された構造。
(iii)前記ポリマー又は前記コポリマーの前記主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、該嵩高い基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択されないことを条件とする、前記ポリマー又は前記コポリマーの前記主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基を有する構造。
(iv)前記主鎖と非線形結合する少なくとも1つの芳香族基を有する構造。
【請求項2】
固化可能な粉末材料から形成される前記三次元物体の連続層を続いて、該三次元物体の横断面に対応する位置で固化し、且つ/又は、
前記電磁照射をレーザーによって供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼結後に規定の且つ/又は制御された冷却工程を含み、前記粉末に含まれる前記ポリマー又は前記コポリマーのTよりも1℃〜50℃低い温度から、該粉末に含まれる該ポリマー又は該コポリマーのTへと、0.01℃/分〜10℃/分の冷却速度で冷却する工程を前記三次元物体の完成後に該三次元物体に適用し、Tは該粉末に含まれる該ポリマー又は該コポリマーの融点であり、且つTはそのガラス転移温度である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粉末が、
100℃〜450℃の範囲の融点T
50℃〜300℃の範囲のガラス転移温度T
少なくとも10000の数平均M又は少なくとも20000の重量平均M、及び
10〜10000の重合度n、
の群から選択される特徴の少なくとも1つを有するポリマー又はコポリマーを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー又は前記コポリマーが、
芳香族基が、前記主鎖の繰り返し単位中に存在すること、及び
前記芳香族基が互いに独立して、非置換又は置換の単環式又は多環式芳香族炭化水素をから選択され、該芳香族基が互いに独立して、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、4,4’−イソプロピリデンジフェニレン、4,4’−ジフェニルスルホン、1,4−、1,5−及び2,6−ナフタレン、4,4’’−p−ターフェニレンから成る群から選択されること、
の群から選択される特徴の少なくとも1つを有する少なくとも1つの芳香族基を含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
修飾により、(iv)前記非線形結合する芳香族基が、
少なくとも1つの前記非線形結合する芳香族基が、前記主鎖の繰り返し単位中に含まれ、該非線形結合する芳香族基(複数可)が、1,2−及び1,3−フェニレン、1,3−キシレン、2,4’−及び3,4’−ビフェニレン、並びに2,3−及び2,7−ナフタレンの群から選択されること、及び
前記ポリマー又は前記コポリマーが、前記主鎖中の該主鎖の前記繰り返し単位中に、前記非線形結合する芳香族基及び/又は少なくとも1つの分枝基と異なる少なくとも1つの付加的な線形結合する芳香族基を含有し、該線形結合する芳香族基が互いに独立して、1,4−フェニレン、4,4’−ビフェニレン、4,4’−イソプロピリデンジフェニレン、4,4’−ジフェニルスルホン、1,4−、1,5−及び2,6−ナフタレン、4,4’’−p−ターフェニレン及び2,2−ビス−(4−フェニレン)プロパンから成る群から選択されること、
の群から選択される特徴の少なくとも1つを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(i)前記分枝基が、少なくとも1つの置換基又は1つの側鎖を有する、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又はヘテロアレーンであり、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、該分枝基が、前記ポリマー又は前記コポリマーの該主鎖中の芳香族構造単位であり、該側鎖が互いに独立して、C1〜C6非分岐鎖若しくは分岐鎖又は環状アルキル又はアルコキシ基、及びアリール基から成る群から選択され、該側鎖が互いに独立して、メチル、イソプロピル、tert−ブチル又はフェニルから成る群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(ii)前記主鎖の前記末端基を、末端アルキル、アルコキシ、エステル及び/又はアリール基で修飾する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
(iii)前記嵩高い基が芳香族基又は非芳香族基であり、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、該嵩高い基が、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択されず、該嵩高い基が多環式芳香族基又は非芳香族基であり、より好ましくは該嵩高い基が、フェニレン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、フルオレン、ターフェニル、デカリン又はノルボルナンから選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー又は前記コポリマーが、ポリアミド(PA)、ポリアリールエーテルケトン(PAKE)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド(polyphenylinesulfide)、ポリビニリデンフルオリド、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、及び前記ポリマーの少なくとも1つを含むブロックコポリマーに基づき形成され、好ましくは前記ポリマー又は前記コポリマーが、ポリアミド(PA)、ポリアリールエーテルケトン(PAKE)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、又は前記ポリマーの少なくとも1つを含むブロックコポリマーに基づき形成され、該ブロックコポリマーが好ましくは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)/ポリアリールエーテルスルホン(PAES)ジブロックコポリマー又はPAEK/PAES/PAEKトリブロックコポリマーである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリアリールエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、又は前記ポリマーの少なくとも1つを含むコポリマーに基づき形成されるポリアリールエーテルケトン(PAEK)、好ましくは0.05kNs/m〜1.0kNs/mの溶融粘度、及び/又は好ましくは10〜1000の重合度nを有するポリアリールエーテルケトン(PAEK)に基づくポリマー又はコポリマーである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリエーテルケトンルケトン(PEKK)ポリマー又はコポリマーが、該ポリマーの主鎖中に、好ましくは該主鎖の繰り返し単位中に、前記線形結合する芳香族基として1,4−フェニレンと、前記非線形結合する芳香族基として1,3−フェニレンとを含み、好ましくは、少なくとも1つの1,4−フェニレン単位をそれぞれ含む繰り返し単位と、1つの1,3−フェニレン単位をそれぞれ含む繰り返し単位との比率が、90/10〜10/90、好ましくは70/30〜10/90、より好ましくは60/40〜10/90である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電磁放射を用いて粉末形態のポリマー、コポリマー又はポリマーの配合物の選択的焼結により得られる三次元物体であって、該粉末に使用される該ポリマー又は該コポリマーが、以下の構造の少なくとも1つを有する、電磁放射を用いて粉末形態のポリマー、コポリマー又はポリマーの配合物の選択的焼結により得られる三次元物体。
(i)前記ポリマー又は前記コポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、該分枝基は、該ポリマー又は該コポリマーの該主鎖中の芳香族構造単位であることを条件とする、前記ポリマー又は前記コポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基を有する構造。
(ii)前記ポリマー又は前記コポリマーの前記主鎖の少なくとも1つの末端基が修飾された構造。
(iii)前記ポリマー又は前記コポリマーの前記主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、該嵩高い基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択されないことを条件とする、前記ポリマー又は前記コポリマーの前記主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基を有する構造。
(iv)前記主鎖と非線形結合する少なくとも1つの芳香族基を有する構造。
【請求項14】
前記ポリマー又は前記コポリマーが、請求項4〜12のいずれか一項に記載のポリマー又はコポリマーである、請求項13に記載の三次元物体。
【請求項15】
粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって該粉末から三次元物体を製造する装置であって、該三次元物体の製造の完了後の該三次元物体の冷却設定を制御する温度制御装置を備える、粉末の電磁放射を用いた選択的焼結によって該粉末から三次元物体を製造する装置。
【請求項16】
前記温度制御装置を用いて設定される冷却速度が、前記粉末に含まれるポリマー、コポリマー又はポリマー配合物のタイプに応じて決まり、且つ/又は
前記温度制御装置が、ポリマー、コポリマー又はポリマー配合物の所定タイプに応じて設定される、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の装置と、請求項4〜12に規定される少なくとも1つのポリマー又はコポリマーを含む粉末とを備える製造システム。
【請求項18】
選択的電磁照射焼結を用いた三次元物体の製造におけるポリマー粉末の使用方法であって、該ポリマーを、以下の構造の少なくとも1つを有するポリマー又はコポリマーから事前選択する、選択的電磁照射焼結を用いた三次元物体の製造におけるポリマー粉末の使用方法。
(i)ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、該分枝基は、該ポリマー又は該コポリマーの該主鎖中の芳香族構造単位であることを条件とする、ポリマー又はコポリマーの主鎖中の少なくとも1つの分枝基を有する構造。
(ii)前記ポリマー又は前記コポリマーの前記主鎖の少なくとも1つの末端基が修飾された構造。
(iii)前記ポリマー又は前記コポリマーの前記主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基であって、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)を使用する場合、該嵩高い基は、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン及びCH−又はイソプロピリデンと結合した芳香族基から成る群から選択されないことを条件とする、前記ポリマー又は前記コポリマーの前記主鎖中の少なくとも1つの嵩高い基を有する構造。
(iv)前記主鎖と非線形結合する少なくとも1つの芳香族基を有する構造。
【請求項19】
前記ポリマー又は前記コポリマーが請求項4〜12のいずれか一項に記載のポリマー又はコポリマーである、請求項18に記載の使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−6057(P2010−6057A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−120514(P2009−120514)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(503267906)イーオーエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング イレクトロ オプティカル システムズ (50)
【Fターム(参考)】