説明

構造強化樹脂物品及びその製造方法

造形多層物品の形成方法は、強化樹脂基板を熱成形温度に加熱して加熱基板とし、加熱基板の表面を造形表面部品の表面と接触させ、このとき加熱基板はその表面に、加熱基板を造形表面部品に結合するのに十分な濃度の加熱樹脂を含有し、加熱基板を約500psi(3447kPa)以下の圧力で熱成形して熱成形基板の表面と造形表面部品の表面との界面に結合を形成する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形多層物品及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
美観を必要とする用途用の構造部品は、通常、塗装金属であるか、強化熱硬化樹脂基板及び美観表面層を有する複合品である。材料コストが低い、加工が容易であるなどの理由で、強化樹脂複合品の方が金属より好ましい。しかし、熱硬化性樹脂の使用は、揮発性有機化合物(VOC)の放出をもたらす。
【0003】
強化樹脂の美観複合品を製造する一つのアプローチは2工程法で、通常の熱成形法により美観熱可塑性表面層を形成し、強化熱硬化性樹脂を表面層の後ろ側に配置し、その場で硬化して、強化された下層と美観のある表面層とを有する2層構造を生成する。強化された下層を生成するのに、多数の異なる熱硬化性複合系及び方法、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)スプレーアップ、樹脂トランスファー成形、真空インフュージョン及び種々の現場での強化発泡技術を使用できる。
【特許文献1】米国特許第3938782号明細書
【特許文献2】米国特許第3947315号明細書
【特許文献3】米国特許第4166090号明細書
【特許文献4】米国特許第4257754号明細書
【特許文献5】米国特許第5001000号明細書
【特許文献6】米国特許第5215627号明細書
【特許文献7】米国特許第5601679号明細書
【特許文献8】米国特許第6136441号明細書
【特許文献9】米国特許第6689474号明細書
【非特許文献1】Gerald L. Steele, ”Thermoforming Tooling,” DuBois and Pribble’s Plastics Mold Engineering Handbook, Fifth Edition, Chapter 9, pp. 469−498
【非特許文献2】Brister, et al., ”ZERO VOC SOLLX FILM FOR WEATHERABLE, HIGH−GLOSS, CHEMICAL AND SCRATCH RESISTANT PERFORMANCE,” Presented at the International Waterborne, High−Solids and Powder Coatings Symposium, February 6−8, 2002, New Orleans, LA, USA, pp.261−275
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の方法はそれぞれの意図した目的に適当であるものの、当業界では新規な強化樹脂の美観複合品及びかかる複合品の製造方法が必要とされている。VOC放出に関する規制が強まっているので、このような複合品及び方法がVOC放出の低減につながるならば、特に有利である。このような複合品が高い安定性と良好な熱膨張係数を有するならば、さらに有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態の、成形多層物品の形成方法は、強化樹脂基板を熱成形温度に加熱して加熱基板とし、加熱基板の表面を造形表面部品の表面と接触させ、このとき加熱基板はその表面に、加熱基板を造形表面部品に結合するのに十分な濃度の加熱樹脂を含有し、加熱基板を約500psi(3447kPa)以下の圧力で熱成形して熱成形基板の表面と造形表面部品の表面との界面に結合(ボンド)を形成する工程を含む。
【0006】
本発明の別の実施形態は上記方法で製造した物品である。
【0007】
なお、図面は本発明の種々の実施形態を示し、同じ部材は同一符号で示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明によれば、熱成形可能な表面部品(構成要素)と強化樹脂基板とを備える成形多層物品が提供され、低圧での熱成形により樹脂基板を表面部品に接合して成形多層物品を形成する。従来の方法、例えば基板材料を美観層に対して射出し、発泡することにより樹脂基板を形成する現場発泡技術とは対照的に、本発明の方法は熱成形を利用して美観層と基板とを接合する。この方法は、低VOC放出性であり、優れた物性を有する多層物品を効率よく製造する。
【0009】
用語「熱成形」とその派生語は、ここで用いる通りの普通の意味をもち、熱可塑性材料を加熱し、成形して所望の形状にする方法を包括的に記述する。熱成形方法及び装置は、DuBois and Pribble’s Plastics Mold Engineering Handbook, Fifth Edition, 1995, pp. 469−498に詳述されている。Mulcahyらの米国特許第5601679号に記載された熱成形法も使用できる。用語「層」は、便宜的に使用するもので、不規則な形状の材料並びにシートやフィルムも含む。またここで用いる用語「第1」、「第2」などは順序や重要性を意味せず、ある要素と他の要素とを区別するために使用している。また、単数表現は数量を限定するものではなく、言及する項目が少なくとも1つ存在することを示す。さらに、ここに開示した範囲はすべて上下限点を包含し、また相互に独立に組合せ可能である。
【0010】
図1に本発明の方法で得られる一例の成形多層物品110を示す。成形多層物品110は、フィルム層112と強化樹脂基板114とを備える。フィルム層112は基板114のための表面層として機能し、熱成形可能でかつ基板114と適合性であるように選択する。一実施形態では、フィルム層の外面は、適当な形状として表面設計を付与するか、光学効果を発揮しうる添加剤を含有するか、その両方とすることができる。樹脂複合基板は繊維強化樹脂からなり、最終物品に所望のスチッフネスを与えることができる。
【0011】
さらに図1に示すように、光学効果を発揮しうる添加剤を含有しうる任意の第1適合性層116を、フィルム層112と基板114との間に配置することができる。任意の第1適合性層116を用いて光学効果を得る場合、フィルム層112は透明及び/又は無色とすることができる。フィルム層112と第1適合性層116との組合せは、本明細書でしばしば美観層と称され、図1に118で示される。本発明を記述し、その特許請求の範囲を定める上での都合上、用語「表面部品」をフィルム層112及び美観層118両方を指すものとして使用する。なお、物品の特定の最終用途その他の考慮事項に応じて、フィルム層112及び/又は美観層118と関連して追加の層を設けることもできる。
【0012】
さらに、第1タイ層120を基板114と任意の第1適合性層116(又は任意の第1適合性層116を使用しない場合はフィルム層112)との間に配置することができる。タイ層120は層間結合を増強するために用いる。タイ層が存在しない場合、任意の第1適合性層116がフィルム層112と基板114との間の結合を増強する作用をすることもある。
【0013】
任意のバランス層122を強化樹脂基板114のフィルム層112とは反対側の側面上に配置することができる。バランス層122の目的は、強化樹脂基板114のフィルム層112とは反対側の側面上に、フィルム層112の熱膨張係数に合致する層を形成することにある。任意の第2のタイ層124を基板114とバランス層122との間に配置することができる。さらに、第2の適合性層(図示せず)をバランス層122とタイ層124又は基板114との間に配置することができる。なお、物品110は、物品の最終用途によって決められる任意所望の形状とすることができる。
【0014】
本発明の方法によれば、強化樹脂基板を1操作で、低圧で熱成形し、表面部品に接合する。低圧は、約500ポンド/平方インチ(psi)(3447kPa)未満の圧力、好ましくは約1psi(6.9kPa)〜約500psi(3447kPa)、より好ましくは約1psi(6.9kPa)〜約250psi(1235kPa)、特に好ましくは約10psi(69kPa)〜約100psi(690kPa)である。熱成形により達成される結合(ボンド)は隣接する層の分子が物理的に絡まり合い、層間に相互貫入をつくりだすことによって形成されると考えられる。こうして形成された界面は強く、両層とよく一体化される。したがって強化樹脂基板は、結合に用いられる表面区域に十分な濃度の樹脂を含有するのが望ましい。補助的な追加の熱可塑性樹脂を表面区域に、追加の熱可塑性樹脂シートの形態で、例えばタイ層の形態で追加することができる。追加の樹脂は、加熱されると、界面区域における樹脂濃度を高め、良好な結合を促進する。勿論、所望に応じて、任意の2層間に接着剤を使用してさらに追加の結合を達成してもよい。
【0015】
さらに詳しくは、一実施形態では、まず最初に表面部品及び強化樹脂基板を別々の層として製造する。表面部品は、最終多層物品の形状に実質的に対応する形状に形成する。造形は、成形(モールディング)、熱成形など当業界で周知の手段によればよい。例えば、表面部品を形成するのに用いる熱成形可能な材料のフィルムもしくはシートを凹状金型壁面に置く。金型は代表的には熱伝導率の高い金属、例えばアルミニウム製である。クランプフレームを付勢してシートを所定位置に機械的に保持する。選択位置での、例えばシンク部分以外の位置での表面加熱を避けるのに、適当な熱シールド、例えばアルミニウム箔を使用することができる。次に金型内の熱成形可能な材料を、例えば熱成形オーブン内の赤外線ヒータにより、加熱する。頂部及び底部ヒータを用いることができる。真空をかけてシートを金型壁面に対して所定位置に吸引するか、或いは正の空気圧を用いてシートを金型壁面内に押し込むか、その両方を行うことができる。良好な表面仕上げを得るために、真空に引くための開口を、最適な表面仕上げを必要とする部品の区域からずらすのが好ましい。熱成形可能なシートの美観区域が金型壁面の平滑表面と接触するように、真空開口を金型壁面の周縁のまわりに配置することができる。
【0016】
所望の形状が得られたら、熱成形した表面部品を、代表的には金型を介しての冷却により、その熱可塑性温度より低い温度に冷却する。一実施形態では、金型を約100°F(37.8℃)〜約270°F(132℃)に維持することができる。所望に応じて、熱成形した表面部品を次に金型本体又は金型壁面から取り外すことができる。金型から抜くことは残留応力を減らしたりなくしたりするのに役立つ。熱成形表面部品の真空開口に隣接する区域は、若干の表面傷や欠陥をもつおそれがあり、トリミングして、例えばレーザトリミング、水ジェットトリミング、トリムプレストリミングなどによりトリミングして表面欠陥のない最終的な熱成形表面部品を得る。次に熱成形表面部品を同じ金型内に再配置するか、新しい金型壁面内又は上に配置することができる。一実施形態では、表面部品を熱成形し、成形ツール上に留める。
【0017】
次に、樹脂複合基板材料のシートを表面部品の金型壁面とは反対側の側面に隣接して配置することができる。この配置の前後、好ましくは配置前に、樹脂複合基板材料のシートを、「軟化」もしくは「加工」温度、即ち、シートを熱成形表面部品に低圧で、即ち約500psi(3.45MPa)以下で同時に熱成形かつ接着するのを可能にする温度、に達するのに十分な温度及び時間加熱する。以下に説明する基板材料にとっての代表的な加工温度は約500〜700°F(約260〜371℃)である。特定の圧力及び時間は、基板材料及び表面部品に選んだ材料、基板材料を加熱する目標温度、熱成形表面部品を冷却する目標温度、及び所望のサイクル時間に依存し、特別な実験を行うことなく当業者が容易に求めることができる。
【0018】
本発明の方法の1つの有利な効果として、表面部品を保持する冷却金型壁面が、熱成形及び接合工程の間、熱成形表面部品の温度を樹脂複合基板材料の軟化もしくは加工温度より低い温度に維持するのに役立つ。したがって、表面部品は最初に、美観表面が成形ツールと接触しないように、例えば凸状ツールで熱成形することができる。次に、表面部品を冷却し、所望に応じてマスクし、冷却された(例えば室温の)凹状ツールに配置し、その背後で基板を熱成形することができる。美観表面は、冷却された凹状成形ツールに隣接しているので、加熱基板のように高い温度に達しない。このことは、熱成形表面部品の美観表面を保存するのに有効である。
【0019】
図2に示すように、加熱樹脂複合基板材料を熱成形表面部品に押しつけるのにマッチドツール・プロセスを用いることができる。このプロセスでは、任意のバランス層8をメス型ツール14内に配置することができる。熱成形表面部品9をオス成形ツール12に配置し、またクランプ16を用いて、加熱基板材料10をオス成形ツール12及びメス成形ツール14に対する所定位置に保持する。オス成形ツール12及びメス成形ツール14は、「マッチ」する、即ち互いに嵌合するような形状とされている。このプロセスは、メス及びオス成形ツールの相対位置を入れ替えて実施することもできる。オス成形ツール12及びメス成形ツール14はさらに、真空引き及び/又は温度調節のための複数の孔18及び20を含んでもよい。オス成形ツール12及びメス成形ツール14の周囲にはストッパ(スペーサ)22及び24がそれぞれ配置されている。ストッパは、成形基板の厚さを決めるのに用いられる。ストッパ22及び24は成形区域の外側に位置する。
【0020】
オス成形ツール12及びメス成形ツール14を、ストッパ22,24を介して低い圧力で相互に物理的に接触させ、この接触を、加熱基板材料10を所望形状に熱成形するとともに基板材料を熱成形表面部品9に接着するのに十分な時間維持する。空気圧の差を利用して加熱基板10を熱成形表面部品9に接触させることができる。例えば、加熱基板10が適度な気孔率を有する場合、基板10を介してオス成形ツール12と表面部品9の表面及び金型キャビティ(両者とも無孔質である)との間に圧力勾配、例えば真空を確立することができる。
【0021】
別の実施形態では、図3に示すように、追従性圧力伝達媒体を用いて、加熱樹脂複合基板材料を熱成形表面部品に押しつけることができる。このプロセスでは、熱成形表面部品9をオス成形ツール30に当接し、加熱樹脂複合基板材料26を圧力ボックス28と成形ツール30との間に配置する。成形ツール30はオス成形ツールとして図示したが、メス成形ツールとしてもよい。クランプ34を用いて、基板シートを圧力ボックス28及び成形ツール30に対して所定位置に保持することができる。メンブラン36、具体的には非透過性メンブランを圧力ボックス28の開口に張り渡す。加熱基板材料26に隣接する側面とは反対の側面26Bからメンブラン26に圧力をかける。また真空を利用して加熱基板材料26を熱成形表面部品9と接触状態に引くことができる。
【0022】
タイ層を表面部品と基板との間に配置してもよい。タイ層の導入は、熱成形及び接合の直前にタイ層を表面部品と基板との間の界面に挿入することによって行うのが好都合である。タイ層の使用は、界面での樹脂の量を増加するか、表面部品と基板との間の適合性を改良するか、又はその両方により、表面部品と基板との間の結合を増強することができ、特に表面部品と基板とが異なる樹脂からなる場合に、そうである。タイ層樹脂の粘度は、強化樹脂基板の樹脂の粘度より大きくても、同等でも、小さくてもよい。一実施形態では、タイ層樹脂の粘度は強化樹脂基板の樹脂の粘度より大きい。
【0023】
さらに別の実施形態では、任意のバランス層を強化樹脂基板の表面部品とは反対側の側面上に配置することができる。実施にあたっては、任意のバランス層を強化樹脂基板と関連させるのは、強化樹脂基板を熱成形表面部品に熱成形し接合する前でも後でもよい。第2の適合性樹脂層を基板とバランス層との間に配置するか、タイ層を基板とバランス層との界面に配置することができる。或いは、第2適合性層が基板とバランス層との間に配置されている場合、さらにタイ層を基板と第2適合性樹脂層との界面に配置することができる。必要なら、追加の層、例えば接着層を使用してもよい。
【0024】
上述したプロセスにおいて、表面部品はフィルム層でも美観層でもよい。表面部品には追加の層、例えば接着層が存在してもよい。美観層を用いる場合、基板の表面と第1適合性層のフィルム層とは反対側の表面との界面に相互貫入結合を形成するように、美観層の第1適合性層を強化樹脂基板と接して配置することができる。この場合、タイ層を基板と第1適合性層との界面に存在させることができる。
【0025】
特定の実施形態では、美観層を、金型、例えば凹状金型の表面に隣接する第1適合性層とともに熱成形することができる。次に美観層を冷却し、凹状金型から取り外し、凹状金型に対応する形状を有する凸状金型上に配置し、フィルム層が凸状金型と接触するようにする。次に、加熱基板材料を第1適合性樹脂層と凸状金型にマッチするツール又は上述したような圧力ボックスのダイアフラムとの間の所定位置に配置し、その後、基板を第1適合性層に接合し熱成形する。タイ層を基板と第1適合性層との界面に配置することができる。このプロセスを用いることで、フィルム層の表面が加熱された金型壁面に接触しないので、極めて滑らかな表面を有するフィルム層を有する物品を生成することができる。美観層の代わりにフィルム層を単独で使用してもよく、その際タイ層があってもなくてもよい。
【0026】
基板を熱成形して多層物品を生成した後、例えばレーザトリミング、水ジェットトリミング、トリムプレス・トリミングなどにより多層物品をトリミングしてほぼ最終形状の所望物品とすることができる。
【0027】
上述した熱成形方法の細部は例示の目的で示したに過ぎない。熱成形フィルム及び/又は基板層を造形するのに、種々多様な熱成形方法を用いることができる。
【0028】
フィルム層、樹脂複合基板、任意の第1適合性樹脂層、任意の第2適合性樹脂層、任意のタイ層及び任意のバランス層として用いるのに適当な材料は、熱成形可能な材料であり、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性及び/又は熱硬化性ポリマーの混和性、不混和性もしくは相溶化ブレンドを含有することができる。適当なポリマー、ブレンド、アロイ及び共重合体には、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(PTT)、ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)、ポリ(ブチレンナフタレート)(PBN)、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノール−コ−エチレンテレフタレート)(PETA)、及びポリ(1,4−シクロヘキサンジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート)(PCCD)、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、PC/ABS(ABSはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、PC/ASA(ASAはアクリル−スチレン−アクリロニトリル樹脂)、PC/PBT、PC/PET、PC/ポリエーテルイミド、ポリエステル/ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド、ポリフェニレンエーテル/ポリエステルなど、並びに上述したポリマー、ブレンド、アロイもしくは共重合体の1種以上を含む組合せがある。
【0029】
前述したように、熱成形可能なフィルム及びバランス層に用いる樹脂は同じか類似である。一実施形態では、熱成形可能なフィルム樹脂は透明で、物品に耐候性及び/又は耐UV性の望ましい特性を付与できる。このような特性を有する具体的な樹脂はアリーレートポリエステル樹脂である。ここで用いる用語「アリーレートポリエステル樹脂」は、ジフェノール残基及び芳香族ジカルボン酸残基から誘導されたアリーレートポリエステル単位を含有する樹脂である。一実施形態では、ジフェノール残基は、式(1)の置換又は非置換1,3−ジヒドロキシベンゼンから誘導される。
【0030】
【化1】

式中のRはC1−12アルキル単位又はハライドであり、nは0〜3である。1,3−ジヒドロキシベンゼンは通称レゾルシノールとも言う。
【0031】
適当なジカルボン酸残基の例には、単環芳香族ジカルボン酸、多環芳香族ジカルボン酸などから誘導された芳香族ジカルボン酸残基がある。適当な単環芳香族ジカルボン酸の例にはイソフタル酸、テレフタル酸など及びこれらの混合物がある。適当な多環芳香族ジカルボン酸の例には、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸のようなナフタレンジカルボン酸、などがある。上述したジカルボン酸の1種以上を含む組合せを使用してもよい。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような非芳香族ジカルボン酸を芳香族ジカルボン酸と組み合わせて用いてもよい。
【0032】
一実施形態では、芳香族ジカルボン酸残基は、式(2)示すイソフタル酸及びテレフタル酸残基(ITR)の混合物から誘導される。
【0033】
【化2】

したがって、具体的なアリーレートポリエステル単位は式(3)のレゾルシノールポリエステル単位である。
【0034】
【化3】

(式中のR及びnは前記定義の通り)
別の実施形態では、アリーレートポリエステル樹脂は、式(4)で示すように、アリーレートポリエステル含有ブロックセグメントを、有機カーボネートブロックセグメントと組み合わせて含有するブロックコポリエステルカーボネートである。
【0035】
【化4】

式中のR及びnは前記定義の通り、xは1以上、yは1以上、Rは二価の有機基である。二価の有機基の60モル%以上は、芳香族ジヒドロキシ化合物、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」)、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、フルオレノンビスフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、スピロビインダンビスフェノールなどから誘導される。
【0036】
一実施形態では、x:yのモル比は約10:90〜90:10である。高レベルの耐引きかき性及び/又は耐薬品性が望ましい場合、アリーレートポリエステル含有ブロックが、フィルム層の約50モル%〜約100モル%を構成することができ、残部がポリカーボネート単位である。特定の実施形態では、アリーレートポリエステル含有ブロックがレゾルシノール(式中のn=0)と、イソフタル酸対テレフタル酸残基のモル比が約0.25〜4.0:1であるイソフタル酸及びテレフタル酸の混合物から誘導され、またポリカーボネートブロックはRがビスフェノールAから誘導される。
【0037】
このようなブロックコポリエステルカーボネートを製造する方法は既知であり、例えば欧州特許出願EP01124878号に開示されている。
【0038】
第1及び第2適合性樹脂層及びタイ層は、フィルム層及び樹脂複合基板と適合性となるように選択した材料を含有する。ここで用いる用語「適合性」は、2つの層が熱成形により接合でき、互いに悪影響しないことを意味する。タイ層に用いる適合性材料の具体例には、ポリカーボネート;ポリエステル、例えばイソテレフタレートレゾルシノール、PET、PBT、PTT、PEN、PBN、PETA及びPCCD;ポリエーテルイミド;ポリアミド;ポリアルキレンアレーンジオエート;ポリアクリロニトリル含有樹脂、例えばABS、ASA又はアクリロニトリル−(エチレン−ポリプロピレンジアミン変性)−スチレン(AES);フェニレンスルフィド;ポリメチルメタクリレート(PMMA);コポリエステルカーボネート;ポリ(アルキレンジカルボキシレート)など、又はこれらのポリマーの1種以上を含有する組合せがある。一実施形態では、タイ層はフィルム層からの樹脂と基板層からの樹脂とのブレンドを含有する。
【0039】
ポリカーボネート及びポリカーボネートとポリエステルとのブレンドを、適合性層及びタイ層に用いるのが有利であり、特に上述したようなアリーレートポリエステル樹脂を含有するフィルム層と組み合わせる場合にそうである。周知のように、ポリカーボネートは式(5)示す繰返し構造単位を有する。
【0040】
【化5】

式中のRは前記定義の通り。適当なポリカーボネート樹脂には、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂、例えばビスフェノールAから誘導された単位を含有する樹脂、及び分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂がある。一実施形態では、適合性樹脂層はPCCDとポリカーボネートとの透明なブレンドを含有する。本発明者は、このブレンドの使用により、延性及び接着性に優れた層を、フィルム層とポリカーボネートを含有するタイ層又は基板との間に形成できることを確かめた。PCCD/PCブレンドは明澄性、物性及び機械的特性に優れている。一実施形態では、このブレンドが約20〜100重量%のPCCD及び約80〜0重量%のポリカーボネートを含有する。
【0041】
別の実施形態では、ポリエステル及び2種以上のポリエステルのブレンドを、適合性層及び/又はタイ層に用いるのが有利であり、特に上述したようなアリーレートポリエステル樹脂を含有するフィルム層と組み合わせる場合にそうである。例えば、タイ層に用いるのに適当なブレンドは、ブレンドの全重量に基づいて、約10〜約50重量%のPBT、PET、グリコール化ポリ(エチレンテレフタレート)(PETg)、ポリ(シアノテレフタリデン)(PCT)及び約50〜約90重量%のアリーレートポリエステル樹脂、具体的には上述したようなレゾルシノールポリエステル樹脂、及び約50〜約90重量%のレゾルシノールアリーレート単位を含有する樹脂を含有する。
【0042】
熱成形可能なフィルム層、適合性層及び/又はタイ層は、それぞれ、成形、押出、塗工、キャスティング、真空蒸着などの方法で生成することができる。これらの層は接着剤を用いて接着するか、積層するか、その両方を行うことができる。美観層及び/又はバランス層がフィルムの形態である場合、適合性樹脂層及び/又はタイ層は、固有引張強さが比較的弱いそのフィルムの取り扱いを容易にする補強部として役立つ。
【0043】
或いはまた、熱成形可能なフィルム層及び第1適合性層は、同時射出成形、同時押出、重ね成形、塗工などにより積層体の形態に製造することができる。例えば、フィルム層及び第1適合性層(及び他の任意層)を別々の押出機から別々のシートダイを通して、高熱時に互いに接触した状態で押し出し、次いでローラ間に通して単一シートにすることができる。別の実施形態では、フィルム層、適合性樹脂層及び/又はタイ層及び他の任意層を構成する材料のポリマー溶融物(複数)を同時押出アダプター/フィードブロックを通して一緒にし、互いに接触させ、次いで単一又は多数マニホールドダイに通すことができる。アダプター/フィードブロックは、別々の層を形成する溶融物を中心層の溶融物上に接着層として設層するように構成されている。同時押出後、得られた溶融物の多層長尺物を、下流に連結した押出ダイにて所望の形状、即ち充実シート又は多壁パネルに形成することができる。次に溶融物をカレンダーリング(充実シート)又は真空サイジング(多壁パネル)により既知の態様で制御された条件下で冷却し、その後所定の長さに切断する。所望に応じて、サイジング又はカレンダーリング後に、応力低減を目的としてアニールオーブンを設けることができる。
【0044】
一実施形態では、フィルム層又は美観層の厚さは、基板の微小な表面欠点をカバーするのに十分となるように選択し、結果として耐久性の高グレードのクラスA仕上げとする。このような仕上げは自動車用途に特に有用である。別の実施形態では、フィルム層は厚さ約5ミル(0.13mm)〜約20ミル(0.51mm)とすることができる。タイ層は厚さ約10ミル(0.25mm)〜約55ミル(1.4mm)とすることができる。別の実施形態では、美観層は厚さ約15ミル(0.38mm)〜約125ミル(3.18mm)、好ましくは約30ミル(0.76mm)〜約90ミル(2.3mm)とすることができる。
【0045】
強化基板樹脂層は、熱成形可能で、かつフィルム層及び/又はタイ層と適合性である樹脂もしくは樹脂ブレンド、アロイ又は共重合体を含有する。適当な熱可塑性樹脂の具体例には、ポリカーボネート及びポリエステル樹脂、例えばレゾルシノールイソテレフタレート、PET、PBT、PTT、PEN、PBN、PETA及びPCCD;更新可能な農業その他の資源、例えば植物又は動物材料、バイオマス(即ちポリ乳酸から形成されたもの)などから得られるポリエステル、並びにこれらの熱可塑性ポリエステル樹脂の1種以上を含有する組合せがある。ポリエステルとポリカーボネートとのブレンドを使用してもよい。
【0046】
熱成形可能な樹脂もしくは樹脂ブレンドに加えて、基板は強化成分、例えば繊維状強化材料を含有する。強化成分は、部分的には、所望のスチッフネスを基板に付与するように選択される。適当な繊維材料はガラス、例えばEガラス、Sガラス、玄武岩など、炭素、セラミックス、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドなど、又はこれらの繊維材料の1種以上を含有する組合せを含有することができる。繊維は、長さ約0.25インチ(6.35mm)〜約1.5インチ(38.1mm)、より好ましくは約0.50インチ(12.7mm)〜約0.75インチ(19.05mm)とすることができる。直径約1〜約150μm、特に約50〜約100μmの繊維を用いることができる。繊維は製織してもよいし、例えば密なマットの形態で樹脂内にランダム配向で分布してもよい。一実施形態では、ガラス繊維を用いる。樹脂と適合性のサイジング剤も使用できる。
【0047】
繊維対ポリマーの比並びに最終的な多層生成物を形成するのに用いる基板の量は、コスト、性能及びスチッフネスの個々の必要条件を満たすように、広い範囲で変えることができ、繊維の特定のタイプ及び寸法並びに樹脂材料に依存する。一実施形態では、基板は、基板材料の全重量に基づいて、約15〜約70重量%のガラス繊維及び約30〜約85重量%の樹脂を含有することができ、特に基板材料の全重量に基づいて、約20〜約55重量%のガラス繊維及び約45〜約80重量%の樹脂を含有することができる。一実施形態では、基板は厚さ約50ミル(1.3mm)〜約1000ミル(25.4mm)、好ましくは約75ミル(1.9mm)〜約250ミル(6.35mm)とすることができる。
【0048】
基板の製造には、既知の方法、例えばWiggins Teape法を用いることができる。この方法及び類似の方法では、樹脂材料及び任意の添加剤を計量し、インペラー付き混合槽に入れる。繊維及び熱可塑性樹脂バインダーを分散し、混合物を分配マニホールドを介してヘッドボックスにポンプ移送する。ヘッドボックスは製紙に用いられるタイプの機械のワイヤ区分の上に位置する。分散混合物は真空を利用して移動ワイヤスクリーンを通過し、樹脂で含浸された均一な繊維ウェブを連続的に生成する。湿潤ウェブをドライヤに通して、水分を減らすとともに、熱可塑性樹脂バインダーを溶融する。スクリム層をウェブの片側又は両側に貼り付けて、強化樹脂シートの取り扱いを一層容易にすることもできる。次にシートをテンションロールに通し、所望のサイズに連続的に切断する(ギロチンカッター)。この方法で製造した基板は、望ましくは強度/重量比が高く、衝撃特性に優れ、耐薬品性に優れており、また経済的に製造できる。一実施形態では、基板の気孔率は、熱成形法によりフィルム層又はタイ層を基板に接合する際に保持される。
【0049】
物品の特定の最終用途に応じて、フィルム層、適合性樹脂層、タイ層、基板及び/又はバランス層は、視覚効果を付与又は増強するための添加剤を含有してもよい。視覚効果添加剤は、第1適合性樹脂層に存在する場合に特に有効である。このような添加剤には、顔料、装飾材料、例えば金属鱗片、染料及び発光化合物があるが、これらに限らない。適当な視覚効果添加剤の具体例には、金属酸化物、例えば二酸化チタン、酸化鉄;金属水酸化物;金属鱗片、例えばアルミニウム鱗片;クロム酸塩、例えばクロム酸鉛;硫化物;硫酸塩;炭酸塩;カーボンブラック;シリカ;タルク;白土;フタロシアニンブルー及びグリーン、オルガノレッド;オルガノマルーンその他の有機顔料及び染料がある。不透明とするために、着色剤を、例えば層の全重量に基づいて約5重量%以下の量使用してもよい。例えば、Solvent Yellow163を約0.35重量%の量使用して黄色いタイ層を形成することができる。
【0050】
一実施形態では、高温で安定な顔料、即ち350℃程度の温度で実質的に劣化も変質もしない着色剤を使用する。高温で安定である適当な顔料の例には、Solvent Yellow 93, Solvent Yellow 163, Solvent Yellow 114, Disperse Yellow 54, Solvent Violet 36, Solvent Violet 13, Solvent Red 195, Solvent Red 179, Solvent Red 135, Solvent Orange 60, Solvent Green 3, Solvent Blue 97, Solvent Blue 104, Solvent Blue 104, Solvent Blue 101, Macrolex Yellow E2R, Disperse Yellow 201, Disperse Red 60, Diaresin Red K, Colorplast Red LB, Pigment Yellow 183, Pigment Yellow 138, Pigment Yellow 110, Pigment Violet 29, Pigment Red 209, Pigment Red 209, Pigment Red 202, Pigment Red 178, Pigment Red 149, Pigment Red 122, Pigment Orange 68, Pigment Green 7, Pigment Green 36, Pigment Blue 60, Pigment Blue 15:4, Pigment Blue 15:3, Pigment Yellow 53, Pigment Yellow 184, Pigment Yellow 119, Pigment White 6, Pigment Red 101, Pigment Green 50, Pigment Green 17, Pigment Brown 24, Pigment Blue 29, Pigment Blue 28, Pigment Black 7, モリブデン酸鉛、クロム酸鉛、硫化セリウム、カドミウムスルホセレナイド、硫化カドミウムなど、並びにこれらの顔料の1種以上を含有する組合せがある。
【0051】
フィルム層、タイ層、基板及び/又はバランス層には、やはり物品の特定の最終用途に応じて、他の添加剤が存在してもよい。例えば、これらの層は耐光堅牢性化合物、耐光堅牢性酸化防止剤及び/又は耐光堅牢性オゾナント、具体的には、ジドデシル−3,3’−チオジプロピオネート、トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N’−β,β’−ナフタレン−4−フェニレンジアミン、4,4’−メチレン−ビス(ジブチルジチオカルバメート)、2,2,4−トリメチル−1,2−ヒドロキノリンなどを含有することができる。
【0052】
他の添加剤には、例えば耐衝撃性改良剤、紫外線吸収剤、難燃剤、充填剤、安定剤、エステル交換防止剤、接着促進剤、具体的にはビスフェノール誘導体、アミノシランもしくはその誘導体、及び離型剤がある。紫外線吸収剤の例には、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、シアノアクリレート、ジベンゾイルレゾルシノール、ベンゾキサジノンなど、並びにヒンダードアミン光安定剤(HALS)、具体的には2−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、エチル−2,2−ジフェニル−1−シアノアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクチルオキシ)ビス−4,6−(2’,4’−ジメチルフェニル)トリアジン、2−エチル−2’−エトキシオキサルアニド、ビス[2−ヒドロキシ−5−メチル−3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]−メタンなどがある。上述した添加剤の1種以上を含有する組合せを使用してもよい。このような添加剤はフィルム層に特に有用である。
【0053】
本明細書に開示された材料及び方法を用いて形成される物品は、航空機、自動車、トラック、軍用車両(自動車、航空機、水上車両を含む)、スクータ、オートバイ用の外装又は内装部品、例えばパネル、クォーターパネル、ロッカーパネル、垂直パネル、水平パネル、トリム、ピラー、センターポスト、フェンダー、ドア、デッキリッド、トランクリッド、フード、ボンネット、ルーフ、バンパー、ファシア、グリル、ミラーハウジウング、ピラーアップリケ、クラッディング、ボディ側部モールディング、ホイールカバー、ハブキャップ、ドアハンドル、スポイラー、ウィンドウフレーム、ヘッドランプベゼル、ヘッドランプ、テイルランプ、テイルランプハウジング、テイルランプベゼル、ナンバープレートエンクロージャ、ルーフラック、ランニングボードなど;野外車両及び装置用のエンクロージャ、ハウジング、パネル又は部品;風力タービンブレード又はハウジング;電気又は遠隔通信装置用のエンクロージャ;屋外用家具;航空機部品;ボート及び海洋装置の部品(例えばトリム、エンクロージャ又はハウジング);船外モータハウジング;測深器ハウジング、個人向け船舶;ジェットスキー;プール;スパ;浴槽;シンク、シャワー基部、シャワー周辺具、浴室壁;ステップ;ステップカバー;建築又は土木用途品(例えば窓ガラス、ルーフ、窓、床、装飾窓仕上げ又は処理);写真、絵画、ポスター又はディスプレー品用の処理済みガラスカバー;光学レンズ;眼科レンズ;矯正用眼科レンズ;インプラント用眼科レンズ;壁パネル又はドア;カウンタートップ;保護グラフィック;屋外又は屋内サイン;現金自動支払機(ATM)用のエンクロージャ、ハウジング、パネル又は部品;芝生又は庭トラクター、芝刈り機、その他の工具(芝生又は庭工具)用のエンクロージャ、ハウジング、パネル又は部品;窓又はドアトリム;スポーツ用具又は玩具の部品;スノーモービル用のエンクロージャ、ハウジング、パネル又は部品;レクリエーション用車両(RV)パネル又は部品;遊具の部品;くつひも;プラスチックと木を組合せた物品;ゴルフコースマーカー;ユーティリティピットカバー;コンピュータハウジング;デスクトップコンピュータハウジング;携帯コンピュータハウジング;ノート型コンピュータハウジング;手持ちコンピュータハウジング;モニターハウジング;プリンターハウジング;キーボード;ファックス機ハウジング;複写機ハウジング;電話機ハウジング;電話機ベゼル;携帯電話ハウジング;無線送信機ハウジング;無線受信機ハウジング;照明器具;照明用具;反射器;ネットワークインターフェース装置ハウジング、変圧器ハウジング;冷暖房機ハウジング;公共輸送用の仕上げ材又は座席;列車、地下鉄又はバス用の仕上げ材又は座席;メーターハウジング;アンテナハウジング;衛星受信アンテナ用の仕上げ材;個人保護具の被覆したヘルメットその他の部品;被覆した合成又は天然繊維;被覆した写真フィルム又は写真プリント;被覆した塗装物品;被覆した着色物品;被覆した蛍光物品;被覆した発泡物品として、またその他の用途に有用である。本発明はさらに、上記物品に追加の二次加工操作、例えば成形、金型内デコレーション、塗料オーブンでの焼成、積層及び/又は熱成形など(これらに限らない)を加えることを想定している。
【0054】
本発明の実施形態による物品は、物品が耐候性及び/又は塗料様外観をもつのが望ましい種々の構造用途に有用であり、このような用途は、例えば、(a)熱、太陽、薬品などに曝露されての適正な予想寿命、(b)耐引きかき性、光沢及び/又は表面摩耗抵抗、(c)高グロス及びその保持、(d)イメージの深さ及び/又は色均一性、(e)耐ガソリン性、耐溶剤性及び/又は耐酸スポット性、(f)満足な硬度及び/又は耐摩耗性、(g)良好な耐UV性、(h)耐水性及び耐湿気曝露性、(h)少なくとも1つのカラー層、即ち基板又は他の層全体にわたるほぼ一様な着色、(i)物品の基板又は他の層全体にわたる金属化材料/粒子のほぼ均一な分布、及び/又は(j)真空成形装置、押出装置及び/又は射出成形機などの容易に入手できる工業的装置を用いて物品を製造できること、を必要とする用途である。
【0055】
本明細書で引用した文献はすべてその全体を援用する。
【実施例】
【0056】
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。以下の実施例において、フィルム層はアリーレートポリエステル含有ブロックセグメントを有機カーボネートブロックセグメントと組み合わせて含有するブロックコポリエステルカーボネートからなり(LEXAN(登録商標)SLXフィルム、GE Advanced Materials社から市販)、また基板層はガラス強化積層体である(AZLOY(登録商標)又はAZMET(登録商標)、Azdel社(米国ノースカロライナ州シェルビイ)から市販)。積層体は、PC、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド、ポリエーテルイミド(ULTEM、GEプラスチックス社製)PBT、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、及びPC/PBTブレンドのような樹脂を含有することができる。LEXAN(登録商標)SLXフィルムは、単一又は多数マニホールドダイを用いて押し出す。AZLOY(登録商標)は、ニードルマット、連続マット又は同時押出積層法を用いてシート化する。
実施例1:SLX及びAZLOYのマッチドツール成形
美観表面がツールと接触しないように注意しながら、LEXAN(登録商標)SLXフィルムをシート化し、最終物品の「スキン」に熱成形する。熱成形したフィルムを次にマッチドツールのメス成形部分の上に置く。AZLOY(登録商標)シートを、タイ層としてのLEXANポリカーボネートフィルムと共に、又はポリカーボネートフィルムなしで、熱成形オーブンで約450°F(232℃)〜約650°F(343℃)に予熱し、マッチドツールのオス成形部分に移送する。上下定盤を接近させ、約1psi(7kPa)〜500psi(3447kPa)未満の圧力を加える。造形した多層構造をツールから取り出し、余分な部分をトリミングする。
実施例2:SLX及びAZLOYのプレッシャーアシスト成形
美観表面がツールと接触しないように注意しながら、LEXAN(登録商標)SLXフィルムをシート化し、最終物品の「スキン」に熱成形する。熱成形したフィルムを次に排気用の孔を設けたマッチドツールのメス成形部分の上に置く。AZLOY(登録商標)シートを、タイ層としてのLEXANポリカーボネートフィルムと共に、又はポリカーボネートフィルムなしで、熱成形オーブンで約450°F(232℃)〜約650°F(343℃)に予熱し、定盤上の圧力ボックスのダイヤフラムに移送する。上下定盤を接近させ、約1psi(7kPa)〜500psi(3447kPa)の圧力をブラッダーに加える。ツールを通して約0〜約14.7psi(101kPa)の真空に引き、確実に完全排気する。多層構造をツールから取り出し、余分な部分をトリミングする。
実施例3:SLX及びAZLOYのシングルマッチドツール成形
実施例3は、フィルム熱成形ツール及び1組のマッチドツールの代わりに、1組のマッチドツールだけを使用する以外は、実施例1と同様である。LEXAN(登録商標)SLXフィルムをシート化し、最終物品の美観部品に熱成形する。実施例1とは違って、美観側がツール表面と接触する状態でSLXを形成する。フィルムを、ぴったりはまったままとなるように、部材上に残す。フィルムがツール上にある状態で、必要に応じて過剰なフィルムをトリミング除去する。AZLOY(登録商標)シートを、タイ層としてのLEXANポリカーボネートフィルムと共に、又はポリカーボネートフィルムなしで、熱成形オーブンで約450°F(232℃)〜約650°F(343℃)に加熱し、マッチドツールに移送する。上下定盤を接近させ、約1psi(7kPa)〜500psi(3447kPa)未満の圧力を加える。最終的な造形した多層構造をツールから取り出し、余分な部分をトリミングする。
実施例4:SLX及びAZLOYのプレッシャーアシスト成形
実施例4は、フィルム熱成形ツール及び圧力ボックス付きの第2ツールの代わりに、圧力ボックス付きのツールだけを使用する以外は、実施例2と同様である。LEXAN(登録商標)SLXフィルムをシート化し、最終物品の美観部品に熱成形する。実施例2とは違って、美観側がツール表面と接触する状態でSLXを形成する。フィルムを、ぴったりはまったままとなるように、部材上に残す。フィルムがツール上にある状態で、必要に応じて過剰なフィルムをトリミング除去する。排気に必要ならツールに孔を設ける。AZLOY(登録商標)シートを、タイ層としてのLEXANポリカーボネートフィルムと共に、又はポリカーボネートフィルムなしで、熱成形オーブンで約450°F(232℃)〜約650°F(343℃)に加熱し、ツールに移送する。上下定盤を接近させ、約1psi(7kPa)〜500psi(3447kPa)の圧力をブラッダーに加える。ツールを通して約0〜約14.7psi(101kPa)の真空に引き、確実に完全排気する。複合構造をツールから取り出し、余分な部分をトリミングする。
実施例5:SLX及びAZLOY多層物品を形成する3工程プロセス
美観表面がツールと接触しないように注意しながら、LEXAN(登録商標)SLXフィルムをシート化し、最終物品の美観部品に熱成形する。この美観部品を、だいたい最終物品の形状になるように、トリミングする。また、プレッシャーアシスト法又はマッチドツール法いずれかを用いて、熱成形オーブンで約450°F(232℃)〜約650°F(343℃)に加熱することにより、AZLOY(登録商標)を最終物品の形状に形成する。これら2つの部品を必要に応じてトリミングし、2部品間に接着剤を塗工する。接着剤を活性化するのに必要なら熱と圧力を加えて、最終物品を形成する。
【0057】
表面の特性は、E. Brister et al., ”Zero VOC SOLLX Film for Weatherable, High−gloss, Chemical and Scratch Resistant Performance,” Proceedings of the 29th International Waterborne, High−Solids, and Powder Coatings, February 2002, pp.261−275に記載されているように、BYK Gardner Wavescan試験機を用いて測定した。この装置は1mm未満から30mmまでの範囲にわたって30mmの増量ずつ光イメージの反射を測定する。値が小さいほど表面が良好である。
【0058】
上述したプロセス及び比較例を用いて製造した種々の物品についてのウェーブスキャンの結果を図4に示す。図4から明らかなように、市販のアクリル/FRPシステム(曲線A)については、別の市販のアクリル/FRPシステム(曲線B)より全体として高い数値が得られる。高圧力下でLEXAN(登録商標)SLX美観フィルムを基板(XENOY樹脂)上に圧縮成形した別の比較例からのデータを曲線Cに示す。従来技術にしたがって、ポリカーボネート美観フィルム(IMD LEXAN(登録商標)SLX、GEプラスチックス社製)を熱成形フィルムの後ろに射出成形した別の比較例について、良好な結果が得られる(曲線D)。実施例4にしたがってLEXAN(登録商標)SLX美観フィルムをAZLOY基板上に設けた物品についても優れた結果が得られる(曲線E)。実施例2にしたがってLEXAN(登録商標)SLX美観フィルムをAZLOY基板上に設けた物品についても優れた結果が得られる(曲線E)。したがって、本発明の方法で優れた美観特性を有する物品が得られることが明らかである。
【0059】
以上、本発明を例示の実施形態について説明したが、当業者であれば、本発明の要旨から逸脱することなく、種々の変更を加えたり、その要素を均等物に置き換えたりできることが理解できるはずである。さらに、本発明の要旨から逸脱することなく、特定の状況や材料が本発明の教示に合うように種々の改変を加えることもできる。したがって、本発明は、ここに発明を実施するための最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は特許請求の範囲に入るすべての実施形態を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】強化樹脂製の美観複合物品の線図である。
【図2】マッチドツール熱成形法の線図である。
【図3】メンブランアシスト真空/圧力熱成形法の線図である。
【図4】本発明による物品の表面特性を示すウェーブスキャン測定結果のグラフである。
【符号の説明】
【0061】
8 バランス層
9 熱成形表面部品
10 加熱基板材料
12 オス成形ツール
14 メス成形ツール
16 クランプ
110 物品
112 フィルム層
114 強化樹脂基板
116 第1適合性樹脂層
118 美観層
120 タイ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化樹脂基板を熱成形温度に加熱して加熱基板とし、
加熱基板の表面を造形表面部品の表面と接触させ、このとき加熱基板はその表面に、加熱基板を造形表面部品に結合するのに十分な濃度の加熱樹脂を含有し、
加熱基板を約500psi(3447kPa)以下の圧力で熱成形して熱成形基板の表面と造形表面部品の表面との界面に結合を形成する
工程を含む物品の形成方法。
【請求項2】
タイ層を前記界面に配置する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
造形表面部品がフィルム層を含み、前記界面が熱成形基板の表面とフィルム層の表面との間にある、請求項1記載の方法。
【請求項4】
タイ層を前記界面に配置する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
造形表面部品がフィルム層及び第1適合性層を含み、前記界面が熱成形基板の表面と第1適合性層のフィルム層とは反対側の表面との間にある、請求項1記載の方法。
【請求項6】
タイ層を前記界面に配置する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
造形表面部品を金型での熱成形により形成する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
熱成形した表面部品を金型で冷却し、次いで金型から外さずに加熱基板と接触させる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
さらに、加熱基板との接触前に、熱成形した表面部品を金型から取り出し、熱成形した表面部品を第2金型内又は上に配置する工程を含む、請求項7記載の方法。
【請求項10】
造形表面部品の加熱基板とは反対側の表面が金型壁面に隣接し、これにより造形表面部品を熱成形温度より低い温度に維持する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
熱成形を約1psi(6.9kPa)〜約500psi(3447kPa)の圧力で行う、請求項1記載の方法。
【請求項12】
熱成形を約10psi(69kPa)〜約100psi(690kPa)の圧力で行う、請求項1記載の方法。
【請求項13】
加熱基板の造形表面部品とは反対側の表面が追従性圧力伝達媒体に接触しており、前記媒体を通して熱成形圧力を伝達することにより加熱基板を熱成形する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
加熱基板の造形表面部品とは反対側の表面が金型壁面に隣接し、前記金型壁面を介して熱成形圧力を伝達することにより加熱基板を熱成形する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
さらに、バランス層を加熱基板のフィルム層とは反対側の側面に隣接して配置する工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
表面部品又は基板が、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレン−アクリル、アクリル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、アリーレートポリエステル、又はこれらの樹脂の1種以上を含むブレンド、アロイ又は共重合体を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
表面部品がアリーレートポリエステルの単位を有するポリマーを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項18】
表面部品がアリーレートポリエステル単位を含有するフィルム層及び美観効果を与える添加剤を含有する第1適合性層を含む、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記フィルム層がアリーレートポリエステル含有ブロックセグメントを有機カーボネートブロックセグメントと組み合わせて含有するブロックコポリエステルカーボネートを含有し、前記第1適合性層が着色剤を含有する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
強化樹脂基板を熱成形して造形強化樹脂基板とし、
表面部品を、強化樹脂基板の形状とほぼ合致する形状に熱成形し、
造形強化樹脂基板の表面と表面部品の表面とを界面で接合する
工程を含む物品の形成方法。
【請求項21】
接合を熱成形又は接着剤の使用により行う、請求項20記載の方法。
【請求項22】
請求項1記載の方法で製造した物品。
【請求項23】
請求項20記載の方法で製造した物品。
【請求項24】
造形表面部品と強化樹脂基板とを備え、前記強化樹脂基板が熱成形により前記表面部品に界面で成形・接合された、成形多層物品。
【請求項25】
表面部品がフィルム層及び第1適合性層を含み、前記界面が基板と適合性層のフィルム層とは反対側の側面との間にある、請求項24記載の物品。
【請求項26】
表面部品又は基板が、ポリカーボネート、アクリロニトリル−スチレン−アクリル、アクリル、アクリロニトリル−スチレン−スチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、アリーレートポリエステル、又はこれらの樹脂の1種以上を含むブレンド、アロイ又は共重合体を含有する、請求項24記載の物品。
【請求項27】
フィルム層の第1適合性層とは反対側の表面が、耐候性レゾルシノールポリエステル樹脂を含有し、クラスA仕上げを有する、請求項24記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−520378(P2007−520378A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551153(P2006−551153)
【出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/000984
【国際公開番号】WO2005/095087
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】