構造物における腐食の進行の監視箇所の特定方法、構造物における腐食の進行の監視方法
【課題】構造物に含まれる金属部材に急激に腐食が進行した場合であっても、その進行を手間をかけずに検知する。
【解決手段】金属部材からなる監視対象部位を含んでなる構造物における監視対象部位の腐食の進行の監視方法は、腐食が進行した場合に、監視対象部位において作用する応力が他の部位に比べて早期に金属部材の許容応力度を超える部位を監視すべき箇所として特定し(STEP3)、特定した監視すべき箇所の腐食の進行を監視する。
【解決手段】金属部材からなる監視対象部位を含んでなる構造物における監視対象部位の腐食の進行の監視方法は、腐食が進行した場合に、監視対象部位において作用する応力が他の部位に比べて早期に金属部材の許容応力度を超える部位を監視すべき箇所として特定し(STEP3)、特定した監視すべき箇所の腐食の進行を監視する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物における腐食の進行の監視箇所の特定方法及び腐食の進行の監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所における洪水吐や取水のためのゲートは鋼製であるため、腐食が発生し、時間とともに、部材の板厚が徐々に減少する。板厚が減少すると、この部分に作用する応力が増加することとなり、破壊に通じる虞があるため、補修作業を行う必要がある。このため、従来は、定期的(例えば、6年ごと)にゲート各部の板厚を測定し、補修作業の要否を判定していた。
【0003】
また、例えば、特許文献1などに記載されているように、金属部材の腐食を予測して余寿命を予測し、この結果に基づき補修作業の要否を判定することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8―122221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、腐食の進行は必ずしも一定の割合で進行するわけではなく、急速に腐食が進行することもある。上記のように定期的に板厚を測定する方法では、測定後に急速に腐食が進行した場合には、次の測定までの間、腐食が進行した部分に過度の応力が作用するおそれがある。また、測定の間隔を短くすることも考えられるが、安全性を高めるために、ゲートの各部において板厚を計測する必要があり、点検作業に非常に手間がかかる。
また、特許文献1記載の方法では、腐食の急激な進行は予測できない。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、構造物に含まれる金属部材に急激に腐食が進行した場合であっても、その進行を手間をかけずに検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属部材からなる監視対象部位を含んでなる構造物における前記監視対象部位の腐食の進行を監視すべき箇所の特定方法であって、腐食が進行した場合に、前記監視対象部位において作用する応力が、他の部位に比べて早期に前記金属部材の許容応力度を超える一又は複数の部位を、数値計算により特定し、前記特定した部位を前記監視すべき箇所として特定する監視箇所特定ステップを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、金属部材からなる監視対象部位を含んでなる構造物における前記監視対象部位の腐食の進行の監視方法であって、腐食が進行した場合に、前記監視対象部位において作用する応力が、他の部位に比べて早期に前記金属部材の許容応力度を超える一又は複数の部位を、数値計算により特定し、前記特定した部位を前記監視すべき箇所として特定する監視箇所特定ステップと、前記特定した監視すべき箇所の腐食の進行を監視する監視ステップとを備えることを特徴とする。
【0009】
上記の構造物における腐食の進行の監視方法において、前記監視箇所特定ステップで特定した監視すべき箇所において、作用する応力が前記金属部材の許容応力度を超えるような腐食の進行度合いを数値解析により求める腐食進行度算出ステップを備え、前記監視ステップでは、前記監視すべき箇所について前記求めた腐食の進行度合いを超えるか否かを監視してもよい。
【0010】
また、前記監視箇所特定ステップでは、前記構造物の設計情報に基づいて、所定の割合で腐食が進行した場合の複数通りの腐食の進行状態における前記構造物の解析モデルを設定し、前記解析モデルに作用する応力を数値解析し、他の部位に比べて早期に前記応力が許容応力度を超える部位を前記監視すべき箇所として特定してもよい。
また、前記監視ステップでは、前記監視すべき箇所の前後の面の変位を測定することで腐食の進行を監視してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、腐食が進行した際に作用する応力が許容応力を超え易い部位を特定し、この部位について監視することとしたため、急激に腐食が進行した場合であっても、腐食の進行を検出することができ、また、腐食の進行の監視を手間をかけずに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ゲートの各部に作用する応力が許容応力を超えるような腐食の進行状態をシミュレーションにより求める方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】数値解析モデルの一例を示す図である。
【図3A】数値解析により得られた設計時における各部に作用する応力を示すグラフである。
【図3B】数値解析により得られた10年後における各部に作用する応力を示すグラフである。
【図3C】数値解析により得られた20年後における各部に作用する応力を示すグラフである。
【図3D】数値解析により得られた30年後における各部に作用する応力を示すグラフである。
【図4】ゲートにおける先行して作用する応力が許容応力度を超える部位を示す図である。
【図5】ゲートにおける測定対象部位を示す図である。
【図6】各パターンにおける測定対象部位に作用する応力を示すグラフである。
【図7】監視システムの構成を示す図である。
【図8】監視システムにより、ゲートの監視を行う方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の腐食の進行の監視方法の一実施形態を図面を参照しながら説明する。以下の説明では、水力発電所のゲートにおいて腐食の進行を監視する場合を例として説明する。
本実施形態の腐食の進行の監視方法は、腐食の進行によりゲートの各部に作用する応力が許容応力を超えるような腐食の進行状態をシミュレーションし、このシミュレーションの結果に基づき腐食の進行を監視すべき部位を特定し、特定した部位について監視を行う。まず、ゲートの各部に作用する応力が許容応力を超えるような腐食の進行状態をシミュレーションし、このシミュレーションの結果に基づき腐食の進行を監視すべき部位を特定する方法を図1に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0014】
まず、STEP1において、例えば、ゲートが設置されてから0年後、10年後、20年後、30年後など、複数通りの適宜な期間が経過した後の腐食の進行状態を想定して、図2に示すような数値解析モデルを設定する。なお、各数値解析モデルにおける腐食の進行状況は、設計当初の状況から、例えば、10年後には各部において1mm板厚が減少し、20年後には各部において2mm減少するというように、全体に均一に腐食が生じるものとして設定してもよいし、例えば、過去にゲートの腐食の進行状況を測定した結果がある場合には、測定により得られたゲートの各部における腐食の進行状況に基づき、単位期間当たりの各部の腐食の進行速度を計算し、計算により得られた各部の腐食の進行速度に基づいて、ゲートが設置されてから10年後、20年後、30年後などの数値解析モデルを設定してもよい。
次に、STEP2において、各数値解析モデルについて例えば、有限要素法などの解析手法により数値解析を行い、ゲートの各部に作用する応力を解析する。
【0015】
次に、STEP3において、各数値解析モデルの数値解析の結果に基づいて、腐食の進行により作用する応力が先行して許容応力度を超える部位を特定する。図3A〜図3Dは、数値解析により得られた各設定期間の経過後の各部に作用する応力を示すグラフであり、また、図4は、ゲートにおける先行して作用する応力が許容応力度を超える部位を示す図である。図3A〜図3D及び図4に示すように、設計時、及び、10年後を想定した数値解析モデルでは、許容応力度を超える応力は発生していないが、20年後を想定した数値解析モデルにおける下脚内側フランジ下部において、許容応力度を変える応力が発生し、次に、30年後を想定して数値解析モデルにおける下脚外側フランジ上部及び下脚内側フランジ下部に許容応力度を超える応力が発生している。このようにして、図5に示すように、ゲートの各部における腐食の進行により、他の部位に比べて先行してその部位に作用する応力が許容応力度を超えるような部位(以下、測定対象部位という。特許請求の範囲における監視すべき箇所に対応)を一又は複数特定する。なお、本実施形態では、測定対象部位を複数特定するため、30年後を想定した数値解析モデルについても数値解析を行っているが、測定対象部位を一のみ特定する場合には、30年後を想定した数値解析モデルについては解析を行う必要はない。
【0016】
次に、STEP4において、上記特定された各測定対象部位の限界板厚を求める。まず、上記のシミュレーションにおいて、測定対象部位に許容応力度を越えるような応力が作用した数値解析モデルにおける腐食による板厚の減少量よりも、わずかに板厚の減少量を小さくした複数通りのパターンを設定する。そして、設定した各パターンについて数値解析を行い、測定対象部位に作用する応力を算出する。図6は、各パターンにおける測定対象部位に作用する応力を示すグラフである。同図に示すように、各測定対象部位について、作用する応力が許容応力度を超えるような板厚を限界板厚として設定する。
【0017】
以下、上記のようにして求められた測定対象部位及び各測定対象部位の限界板厚に基づいて、ゲートの腐食の進行を監視する監視システムについて説明する。図7は、監視システム10の構成を示す図である。同図に示すように、監視システム10は、ゲートの各測定対象部位1の前後に設置された対となるレーザ変位計20と、レーザ変位計20における測定結果を受信可能な監視端末30とにより構成される。
【0018】
各レーザ変位計20は、それぞれ測定対象部位の前面又は後面に生じた変位を測定し、測定結果は監視端末30へ送信される。
監視端末30は、板厚算出部31と、腐食判定部32と、警報部33とを備える。
板厚算出部31は、レーザ変位計20で測定された各測定対象部位1の前面及び後面の変位に基づき、測定対象部位1の板厚を算出する。
【0019】
腐食判定部32には、上記設定された各測定対象部位1の限界板厚が記録されており、板厚算出部31により算出された測定対象部位1の板厚が、対応する部位の限界板厚以下となった場合に、許容応力度と作用する応力とが等しい程度まで腐食が進行していると判定する。
警報部33は、腐食判定部32により測定対象部位1の腐食の進行が激しいと判定された場合に、その旨画面表示する。
【0020】
以下、監視システム10により、ゲートの監視を行う方法を図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
STEP11において、常時、レーザ変位計20により各測定対象部位1の両面の変位を測定する。レーザ変位計20による測定結果は監視端末30へ送信される。
次に、STEP12において監視端末30は、板厚算出部31により、レーザ変位計20から受信した測定結果に基づき、各測定対象部位1の板厚を算出する。
【0021】
次に、STEP13において、腐食判定部32により、上記板厚算出部31により算出された各測定対象部位1の板厚と、限界板厚とを比較する。STEP13において、測定対象部位1の板厚が限界板厚よりも大きい場合には、安全であると判定して、STEP11に戻る。また、STEP13において、測定対象部位1の板厚が限界板厚よりも小さい場合には、腐食の進行が激しいと判定し、STEP14において、腐食の進行が激しい部位がある旨の表示をするとともに、その測定対象部位1の位置を表示する。このように警報部に表示された情報に基づき、作業員が腐食の進行が激しいと判定された部位の補修作業、又は、ゲートの取替作業を行う。
【0022】
以上説明したように、本実施形態によれば、数値解析により、腐食が進行した際に作用する応力が許容応力を超え易い部位を特定し、この部位について監視することとしたため、急激に腐食が進行した場合であっても、その進行を検出することができ、安全性を向上することができる。
【0023】
また、腐食が進行した際に作用する応力が許容応力を超え易い部位にのみ、レーザ変位計20を設置すればよいので測定にコストや手間をかけずに、腐食の進行を検知することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、静止状態のゲートの応力を数値解析により求めているが、これに限らず、例えば、ゲートを開く際の張力などを考慮して数値解析を行ってもよい。
また、本実施形態では、ゲートの腐食の進行を監視するものとしたが、これに限らず、鋼材などからなる腐食の発生しやすい部位を含む構造物であれば本発明を適用できる。
【0025】
また、本実施形態では、レーザ変位計により常時板厚を測定をするものとしたが、板厚の測定方法はこれに限られず、その他周知の方法を用いることができる。また、必ずしも常時、板厚を測定する必要はなく、適宜な間隔で測定することとしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 測定対象部位
10 監視システム
20 レーザ変位計
30 監視端末
31 板厚算出部
32 腐食判定部
33 警報部
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物における腐食の進行の監視箇所の特定方法及び腐食の進行の監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所における洪水吐や取水のためのゲートは鋼製であるため、腐食が発生し、時間とともに、部材の板厚が徐々に減少する。板厚が減少すると、この部分に作用する応力が増加することとなり、破壊に通じる虞があるため、補修作業を行う必要がある。このため、従来は、定期的(例えば、6年ごと)にゲート各部の板厚を測定し、補修作業の要否を判定していた。
【0003】
また、例えば、特許文献1などに記載されているように、金属部材の腐食を予測して余寿命を予測し、この結果に基づき補修作業の要否を判定することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8―122221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、腐食の進行は必ずしも一定の割合で進行するわけではなく、急速に腐食が進行することもある。上記のように定期的に板厚を測定する方法では、測定後に急速に腐食が進行した場合には、次の測定までの間、腐食が進行した部分に過度の応力が作用するおそれがある。また、測定の間隔を短くすることも考えられるが、安全性を高めるために、ゲートの各部において板厚を計測する必要があり、点検作業に非常に手間がかかる。
また、特許文献1記載の方法では、腐食の急激な進行は予測できない。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、構造物に含まれる金属部材に急激に腐食が進行した場合であっても、その進行を手間をかけずに検知することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属部材からなる監視対象部位を含んでなる構造物における前記監視対象部位の腐食の進行を監視すべき箇所の特定方法であって、腐食が進行した場合に、前記監視対象部位において作用する応力が、他の部位に比べて早期に前記金属部材の許容応力度を超える一又は複数の部位を、数値計算により特定し、前記特定した部位を前記監視すべき箇所として特定する監視箇所特定ステップを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、金属部材からなる監視対象部位を含んでなる構造物における前記監視対象部位の腐食の進行の監視方法であって、腐食が進行した場合に、前記監視対象部位において作用する応力が、他の部位に比べて早期に前記金属部材の許容応力度を超える一又は複数の部位を、数値計算により特定し、前記特定した部位を前記監視すべき箇所として特定する監視箇所特定ステップと、前記特定した監視すべき箇所の腐食の進行を監視する監視ステップとを備えることを特徴とする。
【0009】
上記の構造物における腐食の進行の監視方法において、前記監視箇所特定ステップで特定した監視すべき箇所において、作用する応力が前記金属部材の許容応力度を超えるような腐食の進行度合いを数値解析により求める腐食進行度算出ステップを備え、前記監視ステップでは、前記監視すべき箇所について前記求めた腐食の進行度合いを超えるか否かを監視してもよい。
【0010】
また、前記監視箇所特定ステップでは、前記構造物の設計情報に基づいて、所定の割合で腐食が進行した場合の複数通りの腐食の進行状態における前記構造物の解析モデルを設定し、前記解析モデルに作用する応力を数値解析し、他の部位に比べて早期に前記応力が許容応力度を超える部位を前記監視すべき箇所として特定してもよい。
また、前記監視ステップでは、前記監視すべき箇所の前後の面の変位を測定することで腐食の進行を監視してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、腐食が進行した際に作用する応力が許容応力を超え易い部位を特定し、この部位について監視することとしたため、急激に腐食が進行した場合であっても、腐食の進行を検出することができ、また、腐食の進行の監視を手間をかけずに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ゲートの各部に作用する応力が許容応力を超えるような腐食の進行状態をシミュレーションにより求める方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】数値解析モデルの一例を示す図である。
【図3A】数値解析により得られた設計時における各部に作用する応力を示すグラフである。
【図3B】数値解析により得られた10年後における各部に作用する応力を示すグラフである。
【図3C】数値解析により得られた20年後における各部に作用する応力を示すグラフである。
【図3D】数値解析により得られた30年後における各部に作用する応力を示すグラフである。
【図4】ゲートにおける先行して作用する応力が許容応力度を超える部位を示す図である。
【図5】ゲートにおける測定対象部位を示す図である。
【図6】各パターンにおける測定対象部位に作用する応力を示すグラフである。
【図7】監視システムの構成を示す図である。
【図8】監視システムにより、ゲートの監視を行う方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の腐食の進行の監視方法の一実施形態を図面を参照しながら説明する。以下の説明では、水力発電所のゲートにおいて腐食の進行を監視する場合を例として説明する。
本実施形態の腐食の進行の監視方法は、腐食の進行によりゲートの各部に作用する応力が許容応力を超えるような腐食の進行状態をシミュレーションし、このシミュレーションの結果に基づき腐食の進行を監視すべき部位を特定し、特定した部位について監視を行う。まず、ゲートの各部に作用する応力が許容応力を超えるような腐食の進行状態をシミュレーションし、このシミュレーションの結果に基づき腐食の進行を監視すべき部位を特定する方法を図1に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0014】
まず、STEP1において、例えば、ゲートが設置されてから0年後、10年後、20年後、30年後など、複数通りの適宜な期間が経過した後の腐食の進行状態を想定して、図2に示すような数値解析モデルを設定する。なお、各数値解析モデルにおける腐食の進行状況は、設計当初の状況から、例えば、10年後には各部において1mm板厚が減少し、20年後には各部において2mm減少するというように、全体に均一に腐食が生じるものとして設定してもよいし、例えば、過去にゲートの腐食の進行状況を測定した結果がある場合には、測定により得られたゲートの各部における腐食の進行状況に基づき、単位期間当たりの各部の腐食の進行速度を計算し、計算により得られた各部の腐食の進行速度に基づいて、ゲートが設置されてから10年後、20年後、30年後などの数値解析モデルを設定してもよい。
次に、STEP2において、各数値解析モデルについて例えば、有限要素法などの解析手法により数値解析を行い、ゲートの各部に作用する応力を解析する。
【0015】
次に、STEP3において、各数値解析モデルの数値解析の結果に基づいて、腐食の進行により作用する応力が先行して許容応力度を超える部位を特定する。図3A〜図3Dは、数値解析により得られた各設定期間の経過後の各部に作用する応力を示すグラフであり、また、図4は、ゲートにおける先行して作用する応力が許容応力度を超える部位を示す図である。図3A〜図3D及び図4に示すように、設計時、及び、10年後を想定した数値解析モデルでは、許容応力度を超える応力は発生していないが、20年後を想定した数値解析モデルにおける下脚内側フランジ下部において、許容応力度を変える応力が発生し、次に、30年後を想定して数値解析モデルにおける下脚外側フランジ上部及び下脚内側フランジ下部に許容応力度を超える応力が発生している。このようにして、図5に示すように、ゲートの各部における腐食の進行により、他の部位に比べて先行してその部位に作用する応力が許容応力度を超えるような部位(以下、測定対象部位という。特許請求の範囲における監視すべき箇所に対応)を一又は複数特定する。なお、本実施形態では、測定対象部位を複数特定するため、30年後を想定した数値解析モデルについても数値解析を行っているが、測定対象部位を一のみ特定する場合には、30年後を想定した数値解析モデルについては解析を行う必要はない。
【0016】
次に、STEP4において、上記特定された各測定対象部位の限界板厚を求める。まず、上記のシミュレーションにおいて、測定対象部位に許容応力度を越えるような応力が作用した数値解析モデルにおける腐食による板厚の減少量よりも、わずかに板厚の減少量を小さくした複数通りのパターンを設定する。そして、設定した各パターンについて数値解析を行い、測定対象部位に作用する応力を算出する。図6は、各パターンにおける測定対象部位に作用する応力を示すグラフである。同図に示すように、各測定対象部位について、作用する応力が許容応力度を超えるような板厚を限界板厚として設定する。
【0017】
以下、上記のようにして求められた測定対象部位及び各測定対象部位の限界板厚に基づいて、ゲートの腐食の進行を監視する監視システムについて説明する。図7は、監視システム10の構成を示す図である。同図に示すように、監視システム10は、ゲートの各測定対象部位1の前後に設置された対となるレーザ変位計20と、レーザ変位計20における測定結果を受信可能な監視端末30とにより構成される。
【0018】
各レーザ変位計20は、それぞれ測定対象部位の前面又は後面に生じた変位を測定し、測定結果は監視端末30へ送信される。
監視端末30は、板厚算出部31と、腐食判定部32と、警報部33とを備える。
板厚算出部31は、レーザ変位計20で測定された各測定対象部位1の前面及び後面の変位に基づき、測定対象部位1の板厚を算出する。
【0019】
腐食判定部32には、上記設定された各測定対象部位1の限界板厚が記録されており、板厚算出部31により算出された測定対象部位1の板厚が、対応する部位の限界板厚以下となった場合に、許容応力度と作用する応力とが等しい程度まで腐食が進行していると判定する。
警報部33は、腐食判定部32により測定対象部位1の腐食の進行が激しいと判定された場合に、その旨画面表示する。
【0020】
以下、監視システム10により、ゲートの監視を行う方法を図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
STEP11において、常時、レーザ変位計20により各測定対象部位1の両面の変位を測定する。レーザ変位計20による測定結果は監視端末30へ送信される。
次に、STEP12において監視端末30は、板厚算出部31により、レーザ変位計20から受信した測定結果に基づき、各測定対象部位1の板厚を算出する。
【0021】
次に、STEP13において、腐食判定部32により、上記板厚算出部31により算出された各測定対象部位1の板厚と、限界板厚とを比較する。STEP13において、測定対象部位1の板厚が限界板厚よりも大きい場合には、安全であると判定して、STEP11に戻る。また、STEP13において、測定対象部位1の板厚が限界板厚よりも小さい場合には、腐食の進行が激しいと判定し、STEP14において、腐食の進行が激しい部位がある旨の表示をするとともに、その測定対象部位1の位置を表示する。このように警報部に表示された情報に基づき、作業員が腐食の進行が激しいと判定された部位の補修作業、又は、ゲートの取替作業を行う。
【0022】
以上説明したように、本実施形態によれば、数値解析により、腐食が進行した際に作用する応力が許容応力を超え易い部位を特定し、この部位について監視することとしたため、急激に腐食が進行した場合であっても、その進行を検出することができ、安全性を向上することができる。
【0023】
また、腐食が進行した際に作用する応力が許容応力を超え易い部位にのみ、レーザ変位計20を設置すればよいので測定にコストや手間をかけずに、腐食の進行を検知することができる。
【0024】
なお、本実施形態では、静止状態のゲートの応力を数値解析により求めているが、これに限らず、例えば、ゲートを開く際の張力などを考慮して数値解析を行ってもよい。
また、本実施形態では、ゲートの腐食の進行を監視するものとしたが、これに限らず、鋼材などからなる腐食の発生しやすい部位を含む構造物であれば本発明を適用できる。
【0025】
また、本実施形態では、レーザ変位計により常時板厚を測定をするものとしたが、板厚の測定方法はこれに限られず、その他周知の方法を用いることができる。また、必ずしも常時、板厚を測定する必要はなく、適宜な間隔で測定することとしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 測定対象部位
10 監視システム
20 レーザ変位計
30 監視端末
31 板厚算出部
32 腐食判定部
33 警報部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部材からなる監視対象部位を含んでなる構造物における前記監視対象部位の腐食の進行を監視すべき箇所の特定方法であって、
腐食が進行した場合に、前記監視対象部位において作用する応力が、他の部位に比べて早期に前記金属部材の許容応力度を超える一又は複数の部位を、数値計算により特定し、前記特定した部位を前記監視すべき箇所として特定する監視箇所特定ステップを備えることを特徴とする構造物における腐食の進行の監視箇所の特定方法。
【請求項2】
金属部材からなる監視対象部位を含んでなる構造物における前記監視対象部位の腐食の進行の監視方法であって、
腐食が進行した場合に、前記監視対象部位において作用する応力が、他の部位に比べて早期に前記金属部材の許容応力度を超える一又は複数の部位を、数値計算により特定し、前記特定した部位を前記監視すべき箇所として特定する監視箇所特定ステップと、
前記特定した監視すべき箇所の腐食の進行を監視する監視ステップとを備えることを特徴とする構造物における腐食の進行の監視方法。
【請求項3】
請求項2記載の腐食の進行の監視方法であって、
前記監視箇所特定ステップで特定した監視すべき箇所において、作用する応力が前記金属部材の許容応力度を超えるような腐食の進行度合いを数値解析により求める腐食進行度算出ステップを備え、
前記監視ステップでは、前記監視すべき箇所について前記求めた腐食の進行度合いを超えるか否かを監視することを特徴とする構造物における腐食の進行の監視方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の腐食の進行の監視方法であって、
前記監視箇所特定ステップでは、
前記構造物の設計情報に基づいて、所定の割合で腐食が進行した場合の複数通りの腐食の進行状態における前記構造物の解析モデルを設定し、前記解析モデルに作用する応力を数値解析し、他の部位に比べて早期に前記応力が許容応力度を超える部位を前記監視すべき箇所として特定することを特徴とする構造物における腐食の進行の監視方法。
【請求項5】
請求項2から4のうち何れか1項に記載の腐食の進行の監視方法であって、
前記監視ステップでは、
前記監視すべき箇所の前後の面の変位を測定することで腐食の進行を監視することを特徴とする構造物における腐食の進行の監視方法。
【請求項1】
金属部材からなる監視対象部位を含んでなる構造物における前記監視対象部位の腐食の進行を監視すべき箇所の特定方法であって、
腐食が進行した場合に、前記監視対象部位において作用する応力が、他の部位に比べて早期に前記金属部材の許容応力度を超える一又は複数の部位を、数値計算により特定し、前記特定した部位を前記監視すべき箇所として特定する監視箇所特定ステップを備えることを特徴とする構造物における腐食の進行の監視箇所の特定方法。
【請求項2】
金属部材からなる監視対象部位を含んでなる構造物における前記監視対象部位の腐食の進行の監視方法であって、
腐食が進行した場合に、前記監視対象部位において作用する応力が、他の部位に比べて早期に前記金属部材の許容応力度を超える一又は複数の部位を、数値計算により特定し、前記特定した部位を前記監視すべき箇所として特定する監視箇所特定ステップと、
前記特定した監視すべき箇所の腐食の進行を監視する監視ステップとを備えることを特徴とする構造物における腐食の進行の監視方法。
【請求項3】
請求項2記載の腐食の進行の監視方法であって、
前記監視箇所特定ステップで特定した監視すべき箇所において、作用する応力が前記金属部材の許容応力度を超えるような腐食の進行度合いを数値解析により求める腐食進行度算出ステップを備え、
前記監視ステップでは、前記監視すべき箇所について前記求めた腐食の進行度合いを超えるか否かを監視することを特徴とする構造物における腐食の進行の監視方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の腐食の進行の監視方法であって、
前記監視箇所特定ステップでは、
前記構造物の設計情報に基づいて、所定の割合で腐食が進行した場合の複数通りの腐食の進行状態における前記構造物の解析モデルを設定し、前記解析モデルに作用する応力を数値解析し、他の部位に比べて早期に前記応力が許容応力度を超える部位を前記監視すべき箇所として特定することを特徴とする構造物における腐食の進行の監視方法。
【請求項5】
請求項2から4のうち何れか1項に記載の腐食の進行の監視方法であって、
前記監視ステップでは、
前記監視すべき箇所の前後の面の変位を測定することで腐食の進行を監視することを特徴とする構造物における腐食の進行の監視方法。
【図1】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2012−58209(P2012−58209A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204768(P2010−204768)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】
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