構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法
【課題】施工後の構造物のひび割れ発生及びその劣化状況を目視により観察し、その管理を目的としたものであって、例えば鋼、コンクリート構造物等の構造物に於ける不織布貼付構造及びそのひび割れ確認工法の技術を提供する。
【解決手段】橋梁コンクリート床版7の表面7aを下地処理し、エポキシ樹脂系の接着剤9を塗布する。そして不織布8を橋梁コンクリート床版7に貼着する。橋梁コンクリート床版7にひび割れが発生すると、不織布8を構成する繊維が接着剤9との界面で付着切れを起こすと共に接着剤9を含有し成形された不織布8が橋梁コンクリート床版7の界面で付着切れを起こし接着剤9を含浸した不織布8が発色(白濁)8aする。該発色(白濁)現象8aにより橋梁コンクリート床版7の劣化進行状態や劣化度合いが目視観察可能となる。
【解決手段】橋梁コンクリート床版7の表面7aを下地処理し、エポキシ樹脂系の接着剤9を塗布する。そして不織布8を橋梁コンクリート床版7に貼着する。橋梁コンクリート床版7にひび割れが発生すると、不織布8を構成する繊維が接着剤9との界面で付着切れを起こすと共に接着剤9を含有し成形された不織布8が橋梁コンクリート床版7の界面で付着切れを起こし接着剤9を含浸した不織布8が発色(白濁)8aする。該発色(白濁)現象8aにより橋梁コンクリート床版7の劣化進行状態や劣化度合いが目視観察可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工後の構造物のひび割れ発生及びその劣化状況を目視により観察し、その管理を目的としたものであって、例えば鋼、コンクリート構造物等の構造物に於ける不織布貼付構造及びそのひび割れ確認工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種、コンクリート構造物に於けるひび割れ確認工法の例としては図14及び図15に示す特開2001−355343号公開特許公報に開示した技術がある。これについて説明すれば、コンクリート構造物の表面に接着した繊維基材1を通してコンクリート構造物の表面が目視観察可能であることを特徴とし、また繊維基材1を、接着剤または埋め込み式アンカーピンと接着剤を併用してコンクリート構造物へ接着した構成である。また、当該コンクリート構造物の補修方法は、繊維基材1をコンクリート構造物の表面に接着した後も接着した繊維基材1を通してコンクリート構造物の表面が目視観察可能とすることを特徴とし、また繊維基材1を、接着剤または埋め込み式アンカーピンと接着剤を併用してコンクリート構造物へ接着することを特徴し、埋め込み式アンカーピンを機械的固定と接着的固定とを併用して固定することを特徴とする補修方法である。
【0003】
当該従来技術に於けるコンクリート構造物に使用される繊維基材1は、繊維束2を2方向(または多方向)にシート状に配列したものである。図14において、繊維基材1は繊維束2を2方向にシート状に配列したもので、配列した繊維束2間には辺長AおよびBの空隙3があり、辺長AまたはBの少なくとも一方は2mm以上で繊維基材1の最小の幅以下である。
【0004】
図15は、当該従来技術に於けるコンクリート構造物に使用する繊維基材4の他の実施態様を示す形状図である。図15の繊維基材4は、繊維束5を3方向に配列したもので、それぞれ配列した繊維束間には辺長C、DおよびEを持つ空隙6があり、辺長C、DまたはEの少なくとも一つは2mm以上で繊維基材4の最小の幅以下である。図14および図15に示した形状の繊維基材1、4を使用することにより、繊維基材1、4をコンクリート構造物の表面に接着した後も繊維基材1、4の空隙3、6によりコンクリート構造物の表面のひび割れ等の変状を目視観察することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−355343号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術は叙上した構成であるので次の課題が存在した。すなわち、繊維基材の空隙に於いてのみコンクリート構造物の表面のクラック、ひび割れ等の変状を繊維基材同士の間に開いた狭小な空隙に於いてのみ目視観察しなければならず、白濁現象を生ずることがなくコンクリート構造物の表面のクラック、ひび割れ等の変状を予め発見することが困難であるという問題点があった。また、接着剤層を透過してコンクリート構造物の表面のクラック、ひび割れ等の変状を目視観察するので、繊維基材をコンクリート構造物の表面に接着するための接着剤は、硬化後の性状が透明又は半透明の接着剤に限定されるという問題点があった。さらに、繊維基材同士の間に開いた狭小な空隙に於いてコンクリート構造物の表面のクラック、ひび割れ等を観察するので、作業者は該コンクリート構造物に近接して観察作業を行なわなければならず、コンクリート構造物に於けるひび割れ確認作業を広範囲に実施しなければならないので多大な労力と作業工数を必要とするという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法は、施工後のひび割れの発生及び劣化状況を目視により観察すると共にその管理を目的として発明したものであって、次の構成から成立する。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物の表面に貼着するものであって、エポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に所定の面積を有しかつ該接着剤により前記構造物の表面に貼付けられる不織布とでなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物の表面に貼着するものであって、エポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に所定の面積を有しかつ含浸剤を塗布すると共に前記構造物の表面に貼付けられる不織布とでなることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明において前記不織布の目付量(g/m2)は10ないし30(g/m2)でなることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物に於けるひび割れ確認工法であって、鋼又はコンクリート構造物の表面を下地処理しエポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に、所定の面積を有した不織布を透明又は半透明の接着剤で前記構造物に貼着し、前記構造物の劣化度合を白濁現象により目視観察可能としたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物に於けるひび割れ確認工法であって、鋼又はコンクリート構造物の表面を下地処理しエポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に、さらに含浸剤を塗布すると共に所定の面積を有した不織布を前記構造物に貼着し、前記構造物の劣化度合を白濁現象により目視観察可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法は叙上した構成、作用を有するので、次の効果がある。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物の表面に貼着するものであって、エポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に所定の面積を有しかつ該接着剤により前記構造物の表面に貼付けられる不織布とでなることを特徴とする構造物に於ける不織布貼付構造を提供する。
このような構成としたので構造物表面全体のありのままの状態を把握できる効果がある。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物の表面に貼着するものであって、エポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に所定の面積を有しかつ含浸剤を塗布すると共に前記構造物の表面に貼付けられる不織布とでなることを特徴とする構造物に於ける不織布貼付構造を提供する。
このような構成としたので構造物表面全体のありのままの状態を把握でき、特に浸透性に優れた含浸剤を不織布に含浸させると共に該不織布を構造物に貼付したので不織布が構造物に固着しやすいという効果がある。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、前記不織布の目付量(g/m2)は10ないし30(g/m2)でなることを特徴とする請求項1記載の構造物に於ける不織布貼付構造を提供する。
このような構成としたので請求項1に記載の発明の効果に加えて厚みの薄い不織布を採用したので、ひび割れ等の発生を敏感に反応でき視認性を向上させることができることと、接着剤の使用量を減じることでコストを縮減できるという効果がある。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物の表面を下地処理しエポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に、所定の面積を有した不織布を透明又は半透明の接着剤で前記構造物に貼着し、前記構造物の劣化度合を白濁現象により目視観察可能としたことを特徴とする構造物に於けるひび割れ確認工法を提供する。
このような構成としたので、構造物に発生したひび割れ部に密着している接着剤が白濁することでひび割れが顕在化するので、構造物のひび割れを容易に遠方から目視確認できるという効果がある。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物の表面を下地処理しエポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に、さらに含浸剤を塗布すると共に所定の面積を有した不織布を前記構造物に貼着し、前記構造物の劣化度合を白濁現象により目視観察可能としたことを特徴とする構造物に於けるひび割れ確認工法を提供する。
このような構成としたので、構造物に発生したひび割れ部に密着している接着剤が白濁することでひび割れが顕在化するので、構造物のひび割れを容易に遠方から目視確認でき、特に含浸剤を塗布し、かつ不織布を構造物に貼着したので安定して目視確認できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法の実施の形態であって、各シートについて不織布の目付量(g/m2)による視認性の評価を示す図である。
【図2】本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造を示す垂直断面図である。
【図3】本発明に係る構造物としてのコンクリート構造物の場合で含浸剤を塗布しないときの施工手順を示す図面である。
【図4】本発明に係る構造物としての橋梁コンクリート床版に於けるひび割れ特性区分を示す図である。
【図5】本発明に係る構造物としての橋梁コンクリート床版に於いて不織布が該コンクリート床版の界面で付着切れを起こしひび割れ発生に伴う白濁現象を示す垂直断面図である。
【図6】本発明に係る構造物に於けるコンクリート構造物の場合であって含浸剤を塗布しない場合の不織布貼付構造の垂直断面を示す模式図である。
【図7】本発明に係る構造物に於けるコンクリート構造物の場合であって含浸剤を塗布しない場合の不織布貼付構造の斜視を示す模式図である。
【図8】本発明に係る構造物としてのコンクリート構造物の場合であって含浸剤を塗布した場合の不織布貼付構造の断面を示す模式図である。
【図9】本発明に係る構造物としてのコンクリート構造物の場合であって含浸剤を塗布した場合の不織布貼付構造の斜視を示す模式図である。
【図10】本発明に係る構造物としてのコンクリート構造物の場合で含浸剤を塗布したときの施工手順を示す図面である。
【図11】構造物として実施例を示すものであって、鋼材、つまり鋼構造物の疲労による劣化期間の定義を説明する図面である。
【図12】本発明に係る構造物としての鋼構造物の場合であって含浸剤を塗布しないときの施工手順を示す図面である。
【図13】本発明に係る構造物としての鋼構造物の場合であって含浸剤を塗布したときの施工手順を示す図面である。
【図14】従来の技術に於けるコンクリート構造物に使用する繊維基材の一つの実施を示す平面図である。
【図15】従来の技術に於けるコンクリート構造物に使用する繊維基材の他の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法に於ける実施の形態を説明する。
【0021】
この発明で採用する不織布は、例えばポリエステル繊維材で構成され所定の面積を備えている。該不織布はポリエステル繊維材と、ポリエチレン材料とを混合した材料やポリエチレン材料、ポリプロピレン等の材料でも構成される。使用する不織布の種類としては、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布などがあり、好ましくは、スパンボンド不織布である。
【0022】
該不織布の目付量(g/m2)は実験によれば図1に示すように10〜30(g/m2)の範囲のものが適用され、図1に示す不織布に於ける目付量(g/m2)による視認性の評価から明らかなようにシートNo1に示す第1製品ないしシートNo4に示す第4製品ともに含浸性及び透過性に優れると共に視認性に優れていることが判明した。シートNo5に示す第5製品は視認性の評価に於いてやや低下する傾向が見られた。第5製品もそれに次いで適用範囲とされる、しかし目付量が50(g/m2)以上になると含浸性や透過性が悪くなり、シートNo6に示す第6製品は視認性の評価に於いて低下する傾向が見られ本発明の適用外となる。ここで視認性とは対象物の存在又は形状の見やすさの程度(JISZ8113)をいう。好ましい目付量の範囲は、ひび割れの視認性に好ましくかつ優れる目付量(g/m2)は10〜30(g/m2)である。尚、目付量(g/m2)が10(g/m2)未満の不織布については、不織布自体の製造が困難となる。
【0023】
当該不織布はシートNo1ないしシートNo5に係るものはいずれも本発明が所期する効果が示現できた。尚、不織布はいずれもスパンボンド不織布で構成する。
【0024】
次に本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造について図2に基づき説明する。
(1)先ず、構造物に含浸剤を塗布しない場合について説明する。構造物としてのコンクリート構造物であって、その一種である例えば橋梁コンクリート床版7の表面7aを下地処理する。下地処理の方法としては橋梁コンクリート床版7の表面7aつまり被着面を研削機によりサンダー処理する。そして当該橋梁コンクリート床版7の表面7aに接着剤を塗布し所定の面を有した不織布8を貼付ける。このことから該橋梁コンクリート床版7の表面7aとこれに付着し、かつ所定の面積を有した不織布8を接着剤9で付着強度を向上させることができる。ここで該接着剤9は透明又は半透明でなる。
【0025】
かかる構成について模式図で表示すれば図6及び図7のようになる。図6は不織布貼付構造の垂直断面を示す模式図、図7は不織布貼付構造の斜視方向を示す模式図である。
ここで接着剤9は例えば変性脂肪族ポリアミン系の2液混合型エポキシ樹脂又は脂環式ポリアミン+脂肪族ポリアミン系の2液混合型エポキシ樹脂で構成され半透明又は透明でなる。橋梁コンクリート床版7の表面7aへの使用量(kg/m2)は例えば0.15〜0.3(kg/m2)となる。
以上説明したように構造物としてのコンクリート構造物の現場での施工手順を図3に示すフローチャートで明らかにすれば次とおりである。すなわち第1ステップとして橋梁コンクリート床版7の表面7aをサンダー等で下地処理する。第2ステップとしてエポキシ樹脂系の接着剤9を塗布する。第3ステップとして不織布8を橋梁コンクリート床版7に貼付する。
【0026】
ここで上述した本発明に係る橋梁コンクリート床版7のひび割れ確認工法を使用して実際にひび割れ確認する場合について図4及び図5に基づきコンクリート構造物としての橋梁コンクリート床版7のひび割れ特性区分やコンクリート構造物としての橋梁コンクリート床版7の補強・補修工法の適用時期等について説明する。
【0027】
図4は森北出版株式会社発行の題名「道路橋床版 設計・施工と維持管理」(松井繁之編著)による橋梁コンクリート床版7のひび割れ特性区分を示す図であって、新設から長年月経過後に当該コンクリート構造物すなわち橋梁コンクリート床版7が劣化する場合を考察した図である。劣化ランクすなわち損傷度判定区分としては図4に示すように大概して新設時の健全な状態から潜伏期、進展期、加速期及び劣化期の5段階に区分される。
【0028】
そして、橋梁コンクリート床版7のひび割れ状態を確定する因子としては第1に平均ひび割れ間隔(I)、第2にひび割れ密度(δ)、第3にひび割れ幅(W)、第4にひび割れパターンである。つまり損傷度判定区分が新設時の健全な状態であれば、上述した因子はそれぞれI≧1.0m、δ≦1m/m2、ヘアークラック、一方向ひび割れとなり、橋梁コンクリート床版の表面状態は一般に良好であると判断される。次いで、損傷度判定区分が健全な状態(0)から時間を経れば潜伏期(1)となり、上述した因子はそれぞれI=0.6〜1.0m、δ=1〜3m/m2、主なひび割れがW≦0.1mm、一方向又は二方向ひび割れとなり、この時点でひび割れの視認性があり橋梁コンクリート床版7の表面状態は一般に良好であると判断される。
【0029】
ここに於いて図5に示すようにコンクリート構造物つまり橋梁コンクリート床版7にひび割れ7bが発生すると、不織布8を構成する繊維が接着剤9との界面つまり接着剤9の界面で付着切れを起こすと共に接着剤9を含有し成形された不織布8が橋梁コンクリート床版7の界面で付着切れを起こし接着剤9を含浸した不織布8が橋梁コンクリート床版7のひび割れ7bの発生及び進展により不織布8が発色(白濁)8aする。そして本発明によれば不織布8の発色(白濁)現象8aによりコンクリート構造物つまり橋梁コンクリート床版7の劣化進行状態や劣化度合いが目視観察可能となる。
【0030】
さらに、図4に示すように前記潜伏期(1)から時間を経れば進展期(2)に入り上述した因子はそれぞれI=0.4〜0.6m、δ=3〜5m/m2、主なひび割れがW=0.1〜0.2mm、二方向のひび割れとなる。この時点でコンクリート構造物の表面は水漏れや遊離石灰滲出現象を呈する。
【0031】
次に進展期(2)から時間を経れば図4に示すように加速期(3)に入る。上述した因子はそれぞれI=0.2〜0.4m、δ=5〜7m/m2、主なひび割れがW=0.2mm、格子状のひび割れとなり、橋梁コンクリート床版10の表面は進展期(2)に加えて亀甲状ひび割れ現象を呈する。
【0032】
最後に加速期(3)から時間を経れば図4に示すように劣化期(4)となり上述した因子はそれぞれI≦0.2、δ≧7m/m2、主なひび割れがW≧0.2mm、格子状のひび割れは加速期(3)に加えて橋梁コンクリート床版7の舗装の陥没や欠落現象を呈し、該橋梁コンクリート床版7の寿命が終わる。
【0033】
(2)次に、構造物に含浸剤を塗布した場合について図8及び図9に示す模式図で説明する。構造物としてのコンクリート構造物であって、その一種である例えば橋梁コンクリート床版7の表面7aを下地処理する。下地処理の方法としては橋梁コンクリート床版7の表面7aつまり被着面を研削機によりサンダー処理する。そして当該橋梁コンクリート床版7の表面7aに接着剤9を塗布する。次に接着剤9の上面に含浸剤10を塗布する。そして所定の面を有した不織布8を貼付ける。ここで含浸剤10はアクリルシリコン系樹脂、シリコン系樹脂やアクリルゴム系樹脂からなる群の中から選ばれる1種の含浸剤を適用する。この含浸剤10は浸透性が極めて高く不織布8に迅速に浸透する。このことから該橋梁コンクリート床版7の表面7aとこれに付着し、かつ所定の面積を有した不織布8は含浸剤10と混然一体となり該不織布8は橋梁コンクリート床版7の表面7aに付着強度を向上させた状態で固着できた。ここで該接着剤9は透明又は半透明でなる。
以上説明したように構造物としてのコンクリート構造物の現場での施工手順は図10に示すフローチャートで明らかにすれば次のとおりである。すなわち第1ステップとして橋梁コンクリート床版7の表面7aをサンダー等で下地処理する。第2ステップとしてエポキシ樹脂系の接着剤9を塗布する。第3ステップとして含浸剤10を接着剤9の上面に塗布する。第4ステップとして含浸剤10を塗布した上に不織布8を橋梁コンクリート床版7に貼付する。
【実施例】
【0034】
次に本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法に於ける実施例として、構造物として鋼構造物7A、つまり鋼材を適用した場合について説明する。基本的にコンクリート構造物と鋼構造物とはその劣化度合、その構成及び劣化度合は略同一であり実施の形態で説明した図面を利用して説明する。
【0035】
図11は鋼材つまり鋼構造物7Aの疲労による劣化期間の定義を示す図であって、新設から長年月経過後に当該鋼材すなわち鋼構造物が劣化する場合を考察した図である。劣化ランクすなわち損傷度判定区分としては図11に示すように大概して潜伏期から、進展期、加速期及び劣化期の5段階に区分される。そして鋼材のひび割れ状態を判断する期間決定の主要因としては疲労損傷が設計限界(疲労確率2.3%)に達するまで、すなわち潜伏期には疲労累積損傷度応力頻度を検討する。疲労損傷が累積し、亀裂が点検で確認できるまで、すなわち進展期には疲労設計限界値、継手形状、疲労等級を検討する。疲労亀裂が進展し鋼板を貫通するまで、すなわち加速期には応力集中係数、亀裂進展速度を検討する。亀裂が進展して部材が破断するまで、すなわち劣化期には疲労破壊、脆性破壊、組成破壊を検討する。
【0036】
これらを総合判断して鋼構造物のひび割れを確認する。そして図5に示す構造物としてのコンクリート床版7と同様に鋼構造物7Aにひび割れが発生すると、不織布8を構成する繊維が接着剤9との界面つまり接着剤9の界面で付着切れを起こすと共に接着剤9を含有し成形された不織布8が鋼材、つまり鋼構造物7Aの界面で付着切れを起こし接着剤9を含浸した不織布8が鋼材7Aのひび割れ7bの発生及び進展により不織布8が発色(白濁)8aする。そして本発明によれば不織布8の発色(白濁)現象8aにより鋼構造物7Aつまり鋼材の劣化進行状態や劣化度合いが目視観察可能となる。
【0037】
次に本発明に係る構造物、つまり鋼構造物に於ける不織布貼付構造について説明する。
(1)先ず、構造物に含浸剤を塗布しない場合について説明する。図6及び図7において構造物としての鋼構造物7Aであって、その表面7aを下地処理する。下地処理の方法としては表面7aつまり被着面を研削機によりサンダー処理する。そして鋼構造物7Aの表面7aに接着剤を塗布し所定の面を有した不織布8を貼付ける。このことから該鋼構造物7Aの表面7aとこれに付着し、かつ所定の面積を有した不織布8を接着剤9で付着強度を向上させることができる。ここで該接着剤9は透明又は半透明でなる。
【0038】
かかる構成について模式図で表せば図8及び図9のようになる。図8は不織布貼付構造の垂直断面を示す模式図、図9は不織布貼付構造の斜視方向を示す模式図である。
ここで接着剤9は例えば変性脂肪族ポリアミン系の2液混合型エポキシ樹脂又は脂環式ポリアミン+脂肪族ポリアミン系の2液混合型エポキシ樹脂で構成され半透明又は透明でなる。橋梁コンクリート床版7の表面7aへの使用量(kg/m2)は例えば0.15〜0.3(kg/m2)となる。
【0039】
以上説明したように構造物としての鋼構造物7Aの現場での施工手順を図12に示すフローチャートに明らかにすれば次とおりである。すなわち第1ステップとして鋼構造物7Aの塗装表面7aを下地処理し、塗装面をウェス等で清掃する。第2ステップとしてエポキシ樹脂系の接着剤9を塗布する。第3ステップとして不織布8を橋梁コンクリート床版7に貼付する。
【0040】
(2)次に、構造物に含浸剤を塗布した場合について説明する。模式図8及び模式図9において構造物としての鋼構造物7Aであって、その表面7aを下地処理する。下地処理の方法としては表面7aつまり被着面を研削機によりサンダー処理する。そして鋼構造物7Aの表面7aに接着剤を塗布し接着剤9の上面に含浸剤10を塗布する。ここで含浸剤10はアクリルシリコン系樹脂、シリコン系樹脂やアクリルゴム系樹脂からなる群の中から選ばれる1種の含浸剤を適用する。そして所定の面を有した不織布8を貼付ける。このことから該鋼構造物7Aの表面7aとこれに付着し、かつ所定の面積を有した不織布8は含浸剤10と混然一体となり該不織布8は橋梁コンクリート床版7の表面7aに付着強度を向上させた状態で固着できた。ここで該接着剤9は透明又は半透明でなる。
以上説明したように構造物としての鋼構造物の現場での施工手順は図13に示フローチャートで明らかにすれば次のとおりである。すなわち第1ステップとして鋼構造物7Aの表面7aを下地処理し塗装面をウェス等で清掃する。第2ステップとしてエポキシ樹脂系の接着剤9を塗布する。第3ステップとして含浸剤10を接着剤9の上面に塗布する。第4ステップとして含浸剤10を塗布した上に不織布8を鋼構造物7Aに貼付する。
【0041】
尚、実施例に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法は
上述の構成・作用であり外の構成・作用については実施の形態で説明したものと略同一でありその説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法は、三面水路や水路トンネル、地下構造物、下水処理施設又は薬液貯留槽等各種の水利構造物等でなるコンクリート構造物や鋼構造物の表面に適用する。
【符号の説明】
【0043】
7 コンクリート構造物(橋梁コンクリート床版)
7a コンクリート構造物(橋梁コンクリート床版)の表面
7b コンクリート構造物(橋梁コンクリート床版)のひび割れ
7A 鋼構造物
8 不織布
8a 不織布の発色(白濁)
9 接着剤
10 含浸剤
11 不織布
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工後の構造物のひび割れ発生及びその劣化状況を目視により観察し、その管理を目的としたものであって、例えば鋼、コンクリート構造物等の構造物に於ける不織布貼付構造及びそのひび割れ確認工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種、コンクリート構造物に於けるひび割れ確認工法の例としては図14及び図15に示す特開2001−355343号公開特許公報に開示した技術がある。これについて説明すれば、コンクリート構造物の表面に接着した繊維基材1を通してコンクリート構造物の表面が目視観察可能であることを特徴とし、また繊維基材1を、接着剤または埋め込み式アンカーピンと接着剤を併用してコンクリート構造物へ接着した構成である。また、当該コンクリート構造物の補修方法は、繊維基材1をコンクリート構造物の表面に接着した後も接着した繊維基材1を通してコンクリート構造物の表面が目視観察可能とすることを特徴とし、また繊維基材1を、接着剤または埋め込み式アンカーピンと接着剤を併用してコンクリート構造物へ接着することを特徴し、埋め込み式アンカーピンを機械的固定と接着的固定とを併用して固定することを特徴とする補修方法である。
【0003】
当該従来技術に於けるコンクリート構造物に使用される繊維基材1は、繊維束2を2方向(または多方向)にシート状に配列したものである。図14において、繊維基材1は繊維束2を2方向にシート状に配列したもので、配列した繊維束2間には辺長AおよびBの空隙3があり、辺長AまたはBの少なくとも一方は2mm以上で繊維基材1の最小の幅以下である。
【0004】
図15は、当該従来技術に於けるコンクリート構造物に使用する繊維基材4の他の実施態様を示す形状図である。図15の繊維基材4は、繊維束5を3方向に配列したもので、それぞれ配列した繊維束間には辺長C、DおよびEを持つ空隙6があり、辺長C、DまたはEの少なくとも一つは2mm以上で繊維基材4の最小の幅以下である。図14および図15に示した形状の繊維基材1、4を使用することにより、繊維基材1、4をコンクリート構造物の表面に接着した後も繊維基材1、4の空隙3、6によりコンクリート構造物の表面のひび割れ等の変状を目視観察することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−355343号公開特許公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術は叙上した構成であるので次の課題が存在した。すなわち、繊維基材の空隙に於いてのみコンクリート構造物の表面のクラック、ひび割れ等の変状を繊維基材同士の間に開いた狭小な空隙に於いてのみ目視観察しなければならず、白濁現象を生ずることがなくコンクリート構造物の表面のクラック、ひび割れ等の変状を予め発見することが困難であるという問題点があった。また、接着剤層を透過してコンクリート構造物の表面のクラック、ひび割れ等の変状を目視観察するので、繊維基材をコンクリート構造物の表面に接着するための接着剤は、硬化後の性状が透明又は半透明の接着剤に限定されるという問題点があった。さらに、繊維基材同士の間に開いた狭小な空隙に於いてコンクリート構造物の表面のクラック、ひび割れ等を観察するので、作業者は該コンクリート構造物に近接して観察作業を行なわなければならず、コンクリート構造物に於けるひび割れ確認作業を広範囲に実施しなければならないので多大な労力と作業工数を必要とするという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法は、施工後のひび割れの発生及び劣化状況を目視により観察すると共にその管理を目的として発明したものであって、次の構成から成立する。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物の表面に貼着するものであって、エポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に所定の面積を有しかつ該接着剤により前記構造物の表面に貼付けられる不織布とでなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物の表面に貼着するものであって、エポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に所定の面積を有しかつ含浸剤を塗布すると共に前記構造物の表面に貼付けられる不織布とでなることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明において前記不織布の目付量(g/m2)は10ないし30(g/m2)でなることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物に於けるひび割れ確認工法であって、鋼又はコンクリート構造物の表面を下地処理しエポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に、所定の面積を有した不織布を透明又は半透明の接着剤で前記構造物に貼着し、前記構造物の劣化度合を白濁現象により目視観察可能としたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物に於けるひび割れ確認工法であって、鋼又はコンクリート構造物の表面を下地処理しエポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に、さらに含浸剤を塗布すると共に所定の面積を有した不織布を前記構造物に貼着し、前記構造物の劣化度合を白濁現象により目視観察可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法は叙上した構成、作用を有するので、次の効果がある。
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物の表面に貼着するものであって、エポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に所定の面積を有しかつ該接着剤により前記構造物の表面に貼付けられる不織布とでなることを特徴とする構造物に於ける不織布貼付構造を提供する。
このような構成としたので構造物表面全体のありのままの状態を把握できる効果がある。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物の表面に貼着するものであって、エポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に所定の面積を有しかつ含浸剤を塗布すると共に前記構造物の表面に貼付けられる不織布とでなることを特徴とする構造物に於ける不織布貼付構造を提供する。
このような構成としたので構造物表面全体のありのままの状態を把握でき、特に浸透性に優れた含浸剤を不織布に含浸させると共に該不織布を構造物に貼付したので不織布が構造物に固着しやすいという効果がある。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、前記不織布の目付量(g/m2)は10ないし30(g/m2)でなることを特徴とする請求項1記載の構造物に於ける不織布貼付構造を提供する。
このような構成としたので請求項1に記載の発明の効果に加えて厚みの薄い不織布を採用したので、ひび割れ等の発生を敏感に反応でき視認性を向上させることができることと、接着剤の使用量を減じることでコストを縮減できるという効果がある。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物の表面を下地処理しエポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に、所定の面積を有した不織布を透明又は半透明の接着剤で前記構造物に貼着し、前記構造物の劣化度合を白濁現象により目視観察可能としたことを特徴とする構造物に於けるひび割れ確認工法を提供する。
このような構成としたので、構造物に発生したひび割れ部に密着している接着剤が白濁することでひび割れが顕在化するので、構造物のひび割れを容易に遠方から目視確認できるという効果がある。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、鋼又はコンクリート構造物の表面を下地処理しエポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に、さらに含浸剤を塗布すると共に所定の面積を有した不織布を前記構造物に貼着し、前記構造物の劣化度合を白濁現象により目視観察可能としたことを特徴とする構造物に於けるひび割れ確認工法を提供する。
このような構成としたので、構造物に発生したひび割れ部に密着している接着剤が白濁することでひび割れが顕在化するので、構造物のひび割れを容易に遠方から目視確認でき、特に含浸剤を塗布し、かつ不織布を構造物に貼着したので安定して目視確認できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法の実施の形態であって、各シートについて不織布の目付量(g/m2)による視認性の評価を示す図である。
【図2】本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造を示す垂直断面図である。
【図3】本発明に係る構造物としてのコンクリート構造物の場合で含浸剤を塗布しないときの施工手順を示す図面である。
【図4】本発明に係る構造物としての橋梁コンクリート床版に於けるひび割れ特性区分を示す図である。
【図5】本発明に係る構造物としての橋梁コンクリート床版に於いて不織布が該コンクリート床版の界面で付着切れを起こしひび割れ発生に伴う白濁現象を示す垂直断面図である。
【図6】本発明に係る構造物に於けるコンクリート構造物の場合であって含浸剤を塗布しない場合の不織布貼付構造の垂直断面を示す模式図である。
【図7】本発明に係る構造物に於けるコンクリート構造物の場合であって含浸剤を塗布しない場合の不織布貼付構造の斜視を示す模式図である。
【図8】本発明に係る構造物としてのコンクリート構造物の場合であって含浸剤を塗布した場合の不織布貼付構造の断面を示す模式図である。
【図9】本発明に係る構造物としてのコンクリート構造物の場合であって含浸剤を塗布した場合の不織布貼付構造の斜視を示す模式図である。
【図10】本発明に係る構造物としてのコンクリート構造物の場合で含浸剤を塗布したときの施工手順を示す図面である。
【図11】構造物として実施例を示すものであって、鋼材、つまり鋼構造物の疲労による劣化期間の定義を説明する図面である。
【図12】本発明に係る構造物としての鋼構造物の場合であって含浸剤を塗布しないときの施工手順を示す図面である。
【図13】本発明に係る構造物としての鋼構造物の場合であって含浸剤を塗布したときの施工手順を示す図面である。
【図14】従来の技術に於けるコンクリート構造物に使用する繊維基材の一つの実施を示す平面図である。
【図15】従来の技術に於けるコンクリート構造物に使用する繊維基材の他の実施例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法に於ける実施の形態を説明する。
【0021】
この発明で採用する不織布は、例えばポリエステル繊維材で構成され所定の面積を備えている。該不織布はポリエステル繊維材と、ポリエチレン材料とを混合した材料やポリエチレン材料、ポリプロピレン等の材料でも構成される。使用する不織布の種類としては、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、スパンレース不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布などがあり、好ましくは、スパンボンド不織布である。
【0022】
該不織布の目付量(g/m2)は実験によれば図1に示すように10〜30(g/m2)の範囲のものが適用され、図1に示す不織布に於ける目付量(g/m2)による視認性の評価から明らかなようにシートNo1に示す第1製品ないしシートNo4に示す第4製品ともに含浸性及び透過性に優れると共に視認性に優れていることが判明した。シートNo5に示す第5製品は視認性の評価に於いてやや低下する傾向が見られた。第5製品もそれに次いで適用範囲とされる、しかし目付量が50(g/m2)以上になると含浸性や透過性が悪くなり、シートNo6に示す第6製品は視認性の評価に於いて低下する傾向が見られ本発明の適用外となる。ここで視認性とは対象物の存在又は形状の見やすさの程度(JISZ8113)をいう。好ましい目付量の範囲は、ひび割れの視認性に好ましくかつ優れる目付量(g/m2)は10〜30(g/m2)である。尚、目付量(g/m2)が10(g/m2)未満の不織布については、不織布自体の製造が困難となる。
【0023】
当該不織布はシートNo1ないしシートNo5に係るものはいずれも本発明が所期する効果が示現できた。尚、不織布はいずれもスパンボンド不織布で構成する。
【0024】
次に本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造について図2に基づき説明する。
(1)先ず、構造物に含浸剤を塗布しない場合について説明する。構造物としてのコンクリート構造物であって、その一種である例えば橋梁コンクリート床版7の表面7aを下地処理する。下地処理の方法としては橋梁コンクリート床版7の表面7aつまり被着面を研削機によりサンダー処理する。そして当該橋梁コンクリート床版7の表面7aに接着剤を塗布し所定の面を有した不織布8を貼付ける。このことから該橋梁コンクリート床版7の表面7aとこれに付着し、かつ所定の面積を有した不織布8を接着剤9で付着強度を向上させることができる。ここで該接着剤9は透明又は半透明でなる。
【0025】
かかる構成について模式図で表示すれば図6及び図7のようになる。図6は不織布貼付構造の垂直断面を示す模式図、図7は不織布貼付構造の斜視方向を示す模式図である。
ここで接着剤9は例えば変性脂肪族ポリアミン系の2液混合型エポキシ樹脂又は脂環式ポリアミン+脂肪族ポリアミン系の2液混合型エポキシ樹脂で構成され半透明又は透明でなる。橋梁コンクリート床版7の表面7aへの使用量(kg/m2)は例えば0.15〜0.3(kg/m2)となる。
以上説明したように構造物としてのコンクリート構造物の現場での施工手順を図3に示すフローチャートで明らかにすれば次とおりである。すなわち第1ステップとして橋梁コンクリート床版7の表面7aをサンダー等で下地処理する。第2ステップとしてエポキシ樹脂系の接着剤9を塗布する。第3ステップとして不織布8を橋梁コンクリート床版7に貼付する。
【0026】
ここで上述した本発明に係る橋梁コンクリート床版7のひび割れ確認工法を使用して実際にひび割れ確認する場合について図4及び図5に基づきコンクリート構造物としての橋梁コンクリート床版7のひび割れ特性区分やコンクリート構造物としての橋梁コンクリート床版7の補強・補修工法の適用時期等について説明する。
【0027】
図4は森北出版株式会社発行の題名「道路橋床版 設計・施工と維持管理」(松井繁之編著)による橋梁コンクリート床版7のひび割れ特性区分を示す図であって、新設から長年月経過後に当該コンクリート構造物すなわち橋梁コンクリート床版7が劣化する場合を考察した図である。劣化ランクすなわち損傷度判定区分としては図4に示すように大概して新設時の健全な状態から潜伏期、進展期、加速期及び劣化期の5段階に区分される。
【0028】
そして、橋梁コンクリート床版7のひび割れ状態を確定する因子としては第1に平均ひび割れ間隔(I)、第2にひび割れ密度(δ)、第3にひび割れ幅(W)、第4にひび割れパターンである。つまり損傷度判定区分が新設時の健全な状態であれば、上述した因子はそれぞれI≧1.0m、δ≦1m/m2、ヘアークラック、一方向ひび割れとなり、橋梁コンクリート床版の表面状態は一般に良好であると判断される。次いで、損傷度判定区分が健全な状態(0)から時間を経れば潜伏期(1)となり、上述した因子はそれぞれI=0.6〜1.0m、δ=1〜3m/m2、主なひび割れがW≦0.1mm、一方向又は二方向ひび割れとなり、この時点でひび割れの視認性があり橋梁コンクリート床版7の表面状態は一般に良好であると判断される。
【0029】
ここに於いて図5に示すようにコンクリート構造物つまり橋梁コンクリート床版7にひび割れ7bが発生すると、不織布8を構成する繊維が接着剤9との界面つまり接着剤9の界面で付着切れを起こすと共に接着剤9を含有し成形された不織布8が橋梁コンクリート床版7の界面で付着切れを起こし接着剤9を含浸した不織布8が橋梁コンクリート床版7のひび割れ7bの発生及び進展により不織布8が発色(白濁)8aする。そして本発明によれば不織布8の発色(白濁)現象8aによりコンクリート構造物つまり橋梁コンクリート床版7の劣化進行状態や劣化度合いが目視観察可能となる。
【0030】
さらに、図4に示すように前記潜伏期(1)から時間を経れば進展期(2)に入り上述した因子はそれぞれI=0.4〜0.6m、δ=3〜5m/m2、主なひび割れがW=0.1〜0.2mm、二方向のひび割れとなる。この時点でコンクリート構造物の表面は水漏れや遊離石灰滲出現象を呈する。
【0031】
次に進展期(2)から時間を経れば図4に示すように加速期(3)に入る。上述した因子はそれぞれI=0.2〜0.4m、δ=5〜7m/m2、主なひび割れがW=0.2mm、格子状のひび割れとなり、橋梁コンクリート床版10の表面は進展期(2)に加えて亀甲状ひび割れ現象を呈する。
【0032】
最後に加速期(3)から時間を経れば図4に示すように劣化期(4)となり上述した因子はそれぞれI≦0.2、δ≧7m/m2、主なひび割れがW≧0.2mm、格子状のひび割れは加速期(3)に加えて橋梁コンクリート床版7の舗装の陥没や欠落現象を呈し、該橋梁コンクリート床版7の寿命が終わる。
【0033】
(2)次に、構造物に含浸剤を塗布した場合について図8及び図9に示す模式図で説明する。構造物としてのコンクリート構造物であって、その一種である例えば橋梁コンクリート床版7の表面7aを下地処理する。下地処理の方法としては橋梁コンクリート床版7の表面7aつまり被着面を研削機によりサンダー処理する。そして当該橋梁コンクリート床版7の表面7aに接着剤9を塗布する。次に接着剤9の上面に含浸剤10を塗布する。そして所定の面を有した不織布8を貼付ける。ここで含浸剤10はアクリルシリコン系樹脂、シリコン系樹脂やアクリルゴム系樹脂からなる群の中から選ばれる1種の含浸剤を適用する。この含浸剤10は浸透性が極めて高く不織布8に迅速に浸透する。このことから該橋梁コンクリート床版7の表面7aとこれに付着し、かつ所定の面積を有した不織布8は含浸剤10と混然一体となり該不織布8は橋梁コンクリート床版7の表面7aに付着強度を向上させた状態で固着できた。ここで該接着剤9は透明又は半透明でなる。
以上説明したように構造物としてのコンクリート構造物の現場での施工手順は図10に示すフローチャートで明らかにすれば次のとおりである。すなわち第1ステップとして橋梁コンクリート床版7の表面7aをサンダー等で下地処理する。第2ステップとしてエポキシ樹脂系の接着剤9を塗布する。第3ステップとして含浸剤10を接着剤9の上面に塗布する。第4ステップとして含浸剤10を塗布した上に不織布8を橋梁コンクリート床版7に貼付する。
【実施例】
【0034】
次に本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法に於ける実施例として、構造物として鋼構造物7A、つまり鋼材を適用した場合について説明する。基本的にコンクリート構造物と鋼構造物とはその劣化度合、その構成及び劣化度合は略同一であり実施の形態で説明した図面を利用して説明する。
【0035】
図11は鋼材つまり鋼構造物7Aの疲労による劣化期間の定義を示す図であって、新設から長年月経過後に当該鋼材すなわち鋼構造物が劣化する場合を考察した図である。劣化ランクすなわち損傷度判定区分としては図11に示すように大概して潜伏期から、進展期、加速期及び劣化期の5段階に区分される。そして鋼材のひび割れ状態を判断する期間決定の主要因としては疲労損傷が設計限界(疲労確率2.3%)に達するまで、すなわち潜伏期には疲労累積損傷度応力頻度を検討する。疲労損傷が累積し、亀裂が点検で確認できるまで、すなわち進展期には疲労設計限界値、継手形状、疲労等級を検討する。疲労亀裂が進展し鋼板を貫通するまで、すなわち加速期には応力集中係数、亀裂進展速度を検討する。亀裂が進展して部材が破断するまで、すなわち劣化期には疲労破壊、脆性破壊、組成破壊を検討する。
【0036】
これらを総合判断して鋼構造物のひび割れを確認する。そして図5に示す構造物としてのコンクリート床版7と同様に鋼構造物7Aにひび割れが発生すると、不織布8を構成する繊維が接着剤9との界面つまり接着剤9の界面で付着切れを起こすと共に接着剤9を含有し成形された不織布8が鋼材、つまり鋼構造物7Aの界面で付着切れを起こし接着剤9を含浸した不織布8が鋼材7Aのひび割れ7bの発生及び進展により不織布8が発色(白濁)8aする。そして本発明によれば不織布8の発色(白濁)現象8aにより鋼構造物7Aつまり鋼材の劣化進行状態や劣化度合いが目視観察可能となる。
【0037】
次に本発明に係る構造物、つまり鋼構造物に於ける不織布貼付構造について説明する。
(1)先ず、構造物に含浸剤を塗布しない場合について説明する。図6及び図7において構造物としての鋼構造物7Aであって、その表面7aを下地処理する。下地処理の方法としては表面7aつまり被着面を研削機によりサンダー処理する。そして鋼構造物7Aの表面7aに接着剤を塗布し所定の面を有した不織布8を貼付ける。このことから該鋼構造物7Aの表面7aとこれに付着し、かつ所定の面積を有した不織布8を接着剤9で付着強度を向上させることができる。ここで該接着剤9は透明又は半透明でなる。
【0038】
かかる構成について模式図で表せば図8及び図9のようになる。図8は不織布貼付構造の垂直断面を示す模式図、図9は不織布貼付構造の斜視方向を示す模式図である。
ここで接着剤9は例えば変性脂肪族ポリアミン系の2液混合型エポキシ樹脂又は脂環式ポリアミン+脂肪族ポリアミン系の2液混合型エポキシ樹脂で構成され半透明又は透明でなる。橋梁コンクリート床版7の表面7aへの使用量(kg/m2)は例えば0.15〜0.3(kg/m2)となる。
【0039】
以上説明したように構造物としての鋼構造物7Aの現場での施工手順を図12に示すフローチャートに明らかにすれば次とおりである。すなわち第1ステップとして鋼構造物7Aの塗装表面7aを下地処理し、塗装面をウェス等で清掃する。第2ステップとしてエポキシ樹脂系の接着剤9を塗布する。第3ステップとして不織布8を橋梁コンクリート床版7に貼付する。
【0040】
(2)次に、構造物に含浸剤を塗布した場合について説明する。模式図8及び模式図9において構造物としての鋼構造物7Aであって、その表面7aを下地処理する。下地処理の方法としては表面7aつまり被着面を研削機によりサンダー処理する。そして鋼構造物7Aの表面7aに接着剤を塗布し接着剤9の上面に含浸剤10を塗布する。ここで含浸剤10はアクリルシリコン系樹脂、シリコン系樹脂やアクリルゴム系樹脂からなる群の中から選ばれる1種の含浸剤を適用する。そして所定の面を有した不織布8を貼付ける。このことから該鋼構造物7Aの表面7aとこれに付着し、かつ所定の面積を有した不織布8は含浸剤10と混然一体となり該不織布8は橋梁コンクリート床版7の表面7aに付着強度を向上させた状態で固着できた。ここで該接着剤9は透明又は半透明でなる。
以上説明したように構造物としての鋼構造物の現場での施工手順は図13に示フローチャートで明らかにすれば次のとおりである。すなわち第1ステップとして鋼構造物7Aの表面7aを下地処理し塗装面をウェス等で清掃する。第2ステップとしてエポキシ樹脂系の接着剤9を塗布する。第3ステップとして含浸剤10を接着剤9の上面に塗布する。第4ステップとして含浸剤10を塗布した上に不織布8を鋼構造物7Aに貼付する。
【0041】
尚、実施例に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法は
上述の構成・作用であり外の構成・作用については実施の形態で説明したものと略同一でありその説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る構造物に於ける不織布貼付構造及び構造物に於けるひび割れ確認工法は、三面水路や水路トンネル、地下構造物、下水処理施設又は薬液貯留槽等各種の水利構造物等でなるコンクリート構造物や鋼構造物の表面に適用する。
【符号の説明】
【0043】
7 コンクリート構造物(橋梁コンクリート床版)
7a コンクリート構造物(橋梁コンクリート床版)の表面
7b コンクリート構造物(橋梁コンクリート床版)のひび割れ
7A 鋼構造物
8 不織布
8a 不織布の発色(白濁)
9 接着剤
10 含浸剤
11 不織布
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼又はコンクリート構造物の表面に貼着するものであって、エポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に所定の面積を有しかつ該接着剤により前記構造物の表面に貼付けられる不織布とでなることを特徴とする構造物に於ける不織布貼付構造。
【請求項2】
鋼又はコンクリート構造物の表面に貼着するものであって、エポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に所定の面積を有しかつ含浸剤を塗布すると共に前記構造物の表面に貼付けられる不織布とでなることを特徴とする構造物に於ける不織布貼付構造。
【請求項3】
前記不織布の目付量(g/m2)は10ないし30(g/m2)でなることを特徴とする請求項1又は2記載の構造物に於ける不織布貼付構造。
【請求項4】
鋼又はコンクリート構造物の表面を下地処理しエポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に、所定の面積を有した不織布を透明又は半透明の接着剤で前記構造物に貼着し、前記構造物の劣化度合を白濁現象により目視観察可能としたことを特徴とする構造物に於けるひび割れ確認工法。
【請求項5】
鋼又はコンクリート構造物の表面を下地処理しエポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に、さらに含浸剤を塗布すると共に所定の面積を有した不織布を前記構造物に貼着し、前記構造物の劣化度合を白濁現象により目視観察可能としたことを特徴とする構造物に於けるひび割れ確認工法。
【請求項1】
鋼又はコンクリート構造物の表面に貼着するものであって、エポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に所定の面積を有しかつ該接着剤により前記構造物の表面に貼付けられる不織布とでなることを特徴とする構造物に於ける不織布貼付構造。
【請求項2】
鋼又はコンクリート構造物の表面に貼着するものであって、エポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に所定の面積を有しかつ含浸剤を塗布すると共に前記構造物の表面に貼付けられる不織布とでなることを特徴とする構造物に於ける不織布貼付構造。
【請求項3】
前記不織布の目付量(g/m2)は10ないし30(g/m2)でなることを特徴とする請求項1又は2記載の構造物に於ける不織布貼付構造。
【請求項4】
鋼又はコンクリート構造物の表面を下地処理しエポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に、所定の面積を有した不織布を透明又は半透明の接着剤で前記構造物に貼着し、前記構造物の劣化度合を白濁現象により目視観察可能としたことを特徴とする構造物に於けるひび割れ確認工法。
【請求項5】
鋼又はコンクリート構造物の表面を下地処理しエポキシ樹脂系の接着剤を前記構造物の表面に塗布した後に、さらに含浸剤を塗布すると共に所定の面積を有した不織布を前記構造物に貼着し、前記構造物の劣化度合を白濁現象により目視観察可能としたことを特徴とする構造物に於けるひび割れ確認工法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−117356(P2012−117356A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89819(P2011−89819)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】
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