説明

構造物の劣化検査方法、構造物及び塗料

【課題】トンネルなどの構造物に経時的に発生する亀裂を簡単かつ迅速に検査することができる構造物の劣化検査方法等を提供する。
【解決手段】構造物を構成する基体1の上に、紫外線又は青色系可視光などの励起光によって発光する蛍光色素が混入され且つ高弾性の第1塗布層2の上に、励起光の透過を阻止する遮蔽材が混入され且つ低弾性の第2塗布層3を形成する。基体1に亀裂11が発生したときには、第2塗布層3には亀裂31が発生するが、第1塗布層2は単に延びるだけであるので、励起光は亀裂31を通って第1塗布層2に到達する。よって、亀裂31の下側の第2塗布層2が青白色に発光するので、亀裂11の発生を検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築・土木などの構造物に経時的に発生する亀裂を検出するための構造物の劣化検査方法、検出用の塗料が塗装された構造物、及び塗装に用いる塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、土木構造物であるトンネルは、長年使用すると内部の覆工コンクリート面に亀裂が発生することがあり、この亀裂に劣化が進行すると壁面、天井面の崩落につながって危険である。このため、供用開始後は日常的にあるいは定期的に点検する必要がある。しかしながら通常の定期点検周期は2〜5年であるため、定期的に検査していても、天井等からコンクリートが剥落する事故が発生するという問題があった。
【0003】
例えば、近接目視検査においては、高所作業車に乗った1チーム5名以上の点検者が虫眼鏡を用いて、トンネルの壁面、天井面に顔を擦りつけるようにして亀裂を探索したり打音により探索したりしていた。そのため、1日に検査できる距離がせいぜい100m程度という効率の低いものであった。
【0004】
さらに、近接目視検査においては、
(1)長時間の車線規制や通行止めが必要であって、交通渋滞を招く。
(2)暗く狭隘な空間での作業のため作業がしづらく、また、作業者に多大な肉体的負担をかける。
(3)亀裂の発生箇所を手書きにより記録した場合には、記録に手間がかかる。また、点検者個々の判断基準が異なるので、絶対的に統一感がないものであった。
(4)煤煙や塵などが付着して発見しにくく、作業者の見落としもあって、検出精度に欠ける。
という種々の問題があった。
【0005】
特許文献1には、電磁波発生源を用い、発振周波数の異なる複数の発振素子を組み合わせたり、あるいは複数の検出器を用い、建造物に発生電磁波を照射してその透過あるいは反射像を得ることによって、建造物の表面欠陥分布のイメージングを可能とした建造物の検査方法が開示されている。これによって表面付近の剥離やひび割れの発生状況を画像化して診断することができる。
【0006】
上記検査方法においては、検出精度は上がるものの、複数の発振器や受信器を備えたり電磁波発生源を搭載したりする必要があって、装置が大がかりで高価なものになってしまい、簡便に検査することができない。さらに、という問題がある。さらに、0.3mm幅の亀裂を発見するには、速度2km/h、0.5〜1.0mmの亀裂を発見するには5〜10km/h程度の低速で車両を走行させねばならず、測定に要する時間がかかるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2には、トンネルのコンクリート覆工面を洗浄し、洗浄された覆工面に蛍光塗料である水性の浸透性塗料を塗工したのちに再洗浄し、この再洗浄された覆工面を
目視観察または可視光のカメラで撮影して、覆工面の劣化を検出するようにしたトンネル覆工面の劣化検出方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、この方法においては覆工面の洗浄を2回も必要とするうえに、亀裂の内部は乾燥しにくく蛍光塗料が浸透しにくい、また再洗浄によって蛍光塗料が洗い流されてしまうので、紫外線を照射しても十分鮮明に発光せず検出精度が劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−132915号公報
【特許文献2】特開2002−267432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上記した従来の問題点に鑑み、トンネルなどの構造物に経時的に発生する亀裂を簡単かつ迅速に検出することができる構造物の劣化検査方法、検出用の塗料が塗装された構造物、及び塗装に用いる塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するためになされた本発明に係る構造物の劣化検査方法は、構造物を構成する基体の上に、励起光によって発光する蛍光色素が混入され且つ高弾性の第1塗布層を形成し、この第1塗布層の上に、励起光の透過を阻止する遮蔽材が混入され且つ低弾性の第2塗布層を形成したのちに、当該構造物に励起光を照射して、前記塗布層形成後に基体に発生した亀裂に追従して発生した第2塗布層の亀裂部分が発光することで基体に発生した亀裂を検出することを特徴とするものである。また、本発明に係る塗装構成は構造物を構成する基体の上に、ひとたび仕上げてしまえば人為的な事故や火災による塗装構成の物理的、化学的損傷や事後保全による改修工事等で塗装構成が除去されることを除き長期的に機能するものである。
【0012】
上記した発明において、構造物に励起光を照射しつつCCDカメラで撮影し、撮影画像から画像処理データを得て、過去の本発明により得られた画像処理データと比較して劣化の進行度合いを数値化し、その数値変動を見ることにより劣化の進行程度を管理するようにすることができる。
【0013】
また、本発明の構造物は、構造物を構成する基体の上に、励起光によって発光する蛍光色素が混入され且つ高弾性の第1塗布層が形成され、この第1塗布層の上に、励起光の透過を阻止する遮蔽材が混入され且つ低弾性の第2塗布層が形成されており、励起光を照射することによって前記塗布層形成後に基体に発生した亀裂に追従して発生した第2塗布層の亀裂部分が発光することで基体に発生した亀裂の検出を可能としたことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の塗料は、構造物を構成する基体の上に、励起光によって発光する蛍光色素が混入され且つ高弾性の第1塗布層を形成するための第1塗料と、この第1塗布層の上に、励起光の透過を阻止する遮蔽材が混入され且つ低弾性の第2塗布層を形成するための第2塗料とからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構造物の劣化検査方法は、構造物を構成する基体の上に、紫外線又は青色系可視光などの励起光によって発光する蛍光色素が混入され且つ高弾性で亀裂追従性のある柔軟な第1塗布層が形成され、この第1塗布層の上に、前記励起光線の透過を阻止する遮蔽材が混入され且つ低弾性で亀裂追従性のない硬脆な第2塗布層が形成されているので、亀裂の発生しない正常な状態では、励起光を照射しても第2塗布層によって励起光が第1塗布層に到達するのを阻止するので、第1塗布層が発光することはない。
【0016】
しかし、基体に亀裂が発生した場合には低弾性で硬脆な第2塗布層には亀裂が発生するが、第1塗布層は弾性、延性を有するため亀裂を発生することなく下地亀裂に追従して延びることができる。このため励起光を照射したときには第2塗布層の亀裂の間を通って励起光が第1塗布層に到達するので、第1塗布層は第2塗布層に形成された亀裂に対応して発光することとなり、これによって構造物に亀裂が発生したことを検出することができる。
【0017】
本発明の構造物の劣化検査方法は、暗所においても単に紫外線又は青色系可視光などを発生する光源を照射するだけで亀裂を検出することができる。亀裂の可視化を可能としたことにより、亀裂の撮影、画像処理データの取得が容易となるので、管理者が管理しやすくなり、点検効率を従来の10倍あるいはこれ以上に上げることができる。さらには亀裂発生部位が発光するので、暗くて狭隘な箇所においても作業性が劣ることはない。また、作業者による亀裂の見落としが大幅に低減するという顕著な効果を奏することができる。
【0018】
また、本発明に係る劣化検査方法は、亀裂によって発光する部位をCCDカメラで撮影してこの撮影画像から画像処理データを得て、このデータを定期的に蓄積して比較することにより、基体に生じた亀裂の進行具合を定量的に把握することができる。
【0019】
また、本発明に係る構造物は、基体の上に前記したような第1塗布層が形成され、この第1塗布層の上に前記したような第2塗布層が形成されているので、紫外線又は青色系可視光などを照射することによって基体に発生した亀裂を簡単に検出することができる。
【0020】
また、本発明に係る塗料は、蛍光色素が混入された第1塗料と、励起光の透過を阻止する遮蔽材が混入された第2塗料とからなるので、基体の上に第1塗料を塗布して高弾性で柔軟な第1塗布層を形成し、この第1塗布層の上に低弾性で硬脆な第2塗布層を形成することができる。これによって、基体に亀裂が発生したときに第1塗布層には亀裂を生じさせることなく第2塗布層にのみ亀裂を生じさせて、第1塗布層が外部に露出されるので、励起光を照射することにより第1塗布層を基体の亀裂に対応させて発光させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】基体に亀裂が発生していないときの第1塗布層と第2塗布層の断面構造を示す説明図である。
【図2】基体に亀裂が発生したときの第1塗布層の発光状態を説明する断面図である。
【図3】紫外線を受けて発光している亀裂部分の平面写真である。
【図4】紫外線を受けて発光している亀裂部分の平面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
図1は、基体に亀裂の発生していないときの第1塗布層と第2塗布層の断面構造を示す図、図2は基体に亀裂の発生したときの第1塗布層の発光状態を説明する断面図であって、1は構造物を構成する基体、2は基体1の上側に形成された第1塗布層、3は第1塗布層の上側に形成された第2塗布層である。
【0023】
基体1は、コンクリート、セラミックスなどの亀裂の発生しやすい硬脆なものである。
第1塗布層2は、基体1に亀裂が発生したときにも破断することなく亀裂の拡幅に対応して延びることができる高弾性、高延性にして柔軟性を有することが必要である。そして、その中には紫外線などの励起光によって発光する蛍光色素が混入されている。また、第2塗布層3は、基体1に亀裂が発生したときにこれに追従して亀裂を発生させることができる低弾性、低延性にして硬脆なものであることが必要である。そして、この中には励起光を吸収したり散乱したりする遮蔽材が混入されている。
【0024】
図1に示す亀裂発生のない通常の状態においては、励起光は第2塗布層3内の遮蔽材により透過を妨げられるので、下層の第1塗布層2まで到達せず、よって、第1塗布層2は発光することはない。
【0025】
しかしながら、図2に示すごとく、基体1に亀裂11が発生した場合には、上層である硬脆な第2塗布層3は共に亀裂31を発生するが、下層である柔軟な第1塗布層2は破断することなく単に延びるだけで亀裂が発生しないことが重要である。亀裂31の発生によって励起光は亀裂31内を通過可能となる。励起光は亀裂31の下側の第1塗布層2に到達するので、この部分は蛍光色素によって発光することができる。発光は青白色を呈するので、暗所においても作業者は容易に亀裂を発見することができる。なお、亀裂31は、基体1に発生した亀裂11から2、3mmずれて発生することがあるが、亀裂11の発生の有無や亀裂の延長、全長を検出することができるので、亀裂の日常点検における精度には何ら差し支えはない。
【0026】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
基体1としては、例えば、セメントモルタル、スレート板、石膏ボード、押し出し成形板、コンクリート、金属、ガラス、磁器タイル、プラスチック、セラミックス等の比較的硬脆で亀裂の発生しやすいものが挙げられる。
【0027】
構造物としては、例えば、トンネル、橋梁などがあげられる。また、建材、建物外装、建物内装などの建築資材やタービンブレード等の機械部品なども本発明の構造物に含むものとする。構造物には、亀裂が発生すると安全性、機能、美観などが低下したり損なわれたりするものが挙げられる。
【0028】
第1塗布層2は、大きい延性を有する高弾性であって、基体に亀裂が発生したときにも破断することなく、亀裂の拡幅に対応して延びることが必要である。このような第1塗布層2を形成するための第1塗料として、エチレン酢酸ビニルコポリマー系、アクリルポリマー系、酢酸ビニルホモポリマー系、ポリウレタン系、SBR系の水性弾性塗料および各種の水性エマルジョン塗料(酢酸ビニル系、スチレン−ブタジエン系およびアクリル系等の水性弾性塗料)を適宜使用すればよい。これらの塗料は可塑剤を添加することによって延性、弾性を調製することができる。可塑剤として、フタル酸エステル、リン酸エステルグリコール類、エポキシ系可塑剤などが挙げられる。なお、第1塗料には、耐候性、耐熱性、難燃性等を有する添加剤を構造物の機能に合わせて適宜添加することができるが、添加によって延性を低下させないことが重要である。この第1塗料として、市販の弾性塗料を用いることができる。
【0029】
上記の弾性塗料には、割れの発生を困難とするための弾性フィラーを添加することができる。弾性フィラーとして、ウレタン系チップ、エチレン−酢酸ビニルコポリマー系チップ、ゴム系チップ等を用いることができる。
【0030】
ここで、第1塗布層2は、励起光の照射によって発光する蛍光色素が混入されていることが必要である。蛍光色素が混入されていない場合には、励起光が照射されても発光することができない。なお、励起光として、紫外線又は波長が500nm以下の青色系可視光を用いることができる。波長が500nmを超えて長い場合には、蛍光色素を発光させることができない。紫外線の光源として、紫外線ランプや紫外線LEDなどを用いることができ、青色系可視光の光源として、青色のLEDライトを用いることができる。
【0031】
蛍光色素とは、本願においては蛍光顔料と蛍光染料とを総称していう。蛍光顔料として、蓄光材、蛍光材が挙げられ、蛍光染料として、蛍光増白材が挙げられる。蓄光材は、紫外線や青色系可視光などの励起光が消失した後も発光を続けるものであって、この蓄光材として、アルミナ系酸化物の無機顔料を使用することができるし、各種希土類系蓄光材(アルミン酸ストロンチウム+ユーロピウム、ネオジムドープ、アルミン酸カルシウム+ユーロピウム,ジスプロシウムドープなど)や、硫化亜鉛+銅ドープなどを用いることができる。
【0032】
また、蛍光材とは、励起光に刺激されて蛍光を発光し、刺激を停止すると発光が止まるものであって、この蛍光材として、それ自体が蛍光性を有する有機物及び無機物、更には蛍光染料を熱硬化性樹脂中に溶解して硬化及び粉砕した顔料等の如く、従来一般に使用されている顔料が全て使用できる。例えば、フルオレセイン系、スチルベンゼン系、各種希土類蛍光材や、バリウム、ストロンチウム、亜鉛などの硫化物が例示される。
【0033】
蛍光増白材とは、太陽光線の中の紫外線を選択的に吸収し、これを目に見える紫〜青色の可視光に変え、放射させる能力を持ったものであって、この蛍光増白材として、例えば、ジアミノスチルベンジルスルホン酸誘導体系、ビススチリルビフェニル誘導体系、クマリン誘導体系、ピラゾロン誘導体系、ビスベンゾオキサゾール誘導体系、ナフタルイミド誘導体系等の一般的な蛍光増白材を使用することができる。
【0034】
柔軟で高延性な第1塗布層2に対して、第2塗布層3は、低延性、低弾性で硬脆なものであって、基体1に亀裂が発生したときに第2塗布層3にも亀裂が発生することが必要である。このような第2塗布層3を形成する第2塗料として、例えばカルボキシル基、エポキシ基、水酸基及びアルコキシシリル基等をビヒクル成分とする塗料、あるいは基体樹脂に硬化剤の配合比率を大きくしたり、顔料含有濃度を高くしたり、さらには架橋性官能基量を多くして架橋点を多くするなどの手法によって得られる塗料を用いることができる。
【0035】
ビヒクル成分を第1塗料と同じものとして、硬化剤の添加料を多くしたり、可塑剤の添加料を低減したりすることによっても、低弾性塗布層を得ることができる。硬化剤として、エポキシ基、アゾリジン基,オキサゾリン基、ヒドラジン基,イソシアネート基等のものをビヒクルに対応させて適宜選択して使用することができる。また、第2塗料にも、耐候性、耐熱性、難燃性、耐摩耗性、親水性等を有する添加剤を構造物の機能に合わせて適宜添加することができる。これによっても塗布層を低延性で硬脆なものとすることができる。また、第2塗料として、市販の硬質塗料を用いることができる。
【0036】
第2塗布層3には、励起光の透過を遮蔽する遮蔽材が混入されていることが必要である。遮蔽材として紫外線吸収剤、紫外線散乱剤などを用いることができる。紫外線吸収剤として、メトキシケイヒ酸オクチル、オキシベンゼン、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタンなどが例示される。紫外線散乱剤として、酸化チタンや酸化亜鉛が挙げられる。これらの紫外線吸収剤、紫外線散乱剤は、青色系可視光を遮蔽する効果をも有することがある。
【0037】
第1塗料及び第2塗料を塗布する方法として、例えば、噴霧コート法、ローラーコート法、刷毛塗り法、ディッピング法などの各種の方法を構造物の形状に対応して適宜選択することができる。塗布後は、常温乾燥、または40〜200°Cで加熱乾燥することで塗布層を形成することができる。
【0038】
第1塗布層2は、亀裂が発生しないことが重要であるので、弾力を持たせるためにはある程度の厚みを必要とする。また、第2塗布層3は耐摩耗性、耐衝撃性等を向上させるためにある程度の厚みを必要とする。所定の膜厚を得るために、塗装、乾燥工程を複数回繰り返すことができる。
【実施例】
【0039】
基体1として、トンネルの構造部材であるコンクリートからなる基板を用いた。第1塗料として、水性のアクリルエマルジョンに可塑剤を多量添加して延性を増加させ、これに蛍光材として硫化亜鉛を添加したものを用いた。また、第2塗料として水性のアクリルエマルジョンに硬化剤を添加して延性を低下させ、これに紫外線吸収剤としてオキシベンゼンを添加したものを用いた。
【0040】
基体1の表面に先ず第1塗料の塗布−乾燥を3回繰り返して第1塗布層2を形成したうえに、この上に、第2塗料の塗布−乾燥を3回繰り返して第2塗布層3を形成した。こうして準備した試験片を外力により屈折させて基体1に亀裂を発生させた。これに暗所において紫外線を照射したところ図3、4に示すようなうねった線状の青白光が出現された。線状の発光は基体1に発生した亀裂に対応して発せられていることを確認した。
【0041】
以上のようにして構造物を検査して検出された亀裂をCCDカメラにて撮影して、撮影画像から画像処理データを得て、この画像処理データを数値化して、過去に取得した数値と比較することにより、劣化の進行程度を把握して管理することができる。例えば、自走可能な車両あるいは自走可能な車両に連結された車両に紫外線などの励起光源を搭載してトンネル内を照射しつつ、照射部分をCCDカメラにて撮影して記録を行うことで、測定精度は従来のレーザー照射検査には及ばないが、検査速度をレーザー検査と同等もしくはそれ以上に速くすることができる。使用する機材は紫外線を発するLEDライトとCCDカメラと作業車の位置データを記録する装置で足りるので、検査車両を安価に製造することができる。なお、車両に搭載されたCCDカメラでは距離を測ることができないので、画像処理に必要なパラメータとしてトンネルの断面形状の入力が必要となる。
【0042】
例えば、画像処理データを単位面積当り(例えばトンネル長方向1mごと)について、亀裂により発光している部分を白色、それ以外の部分を黒色というドットデータで取り込むと、白色のドットデータの合計がおおよそ亀裂部分の面積となる。仮に入口から20〜21mの間で白色のドットデータが15000で、1年後の次回の測定データが20000だとすると5000ドット分亀裂が増加していると判断される。その測定結果を検討し、変動量が多い部分を重点的に近接目視検査を行うというように、より詳細な点検計画を立てることが可能である。したがって、本発明方法は、レーザー計測によって作成される3次元データとは比較にならないほど簡便にして安価に行うことができる。また、専用ソフトウェアを用いることで、これら従来の3次元データの取得も可能となる。
【0043】
以上に述べたように、本発明は、作業者が介在するアナログ的な点検とCCDカメラを用いたデジタル的な点検の2種を行うことができるという大きな利点を有し、トンネル等の構造物に発生する亀裂を迅速、簡便に検査できるものとして、産業の発達に寄与するところ大なるものである。従来の日常点検における遠望目視では得られ難かった構造物の劣化・変状も本発明に係る技術での遠望目視方法、すなわち、構造物に紫外線又は青色系可視光などを発生する光源を照射しながら点検者が双眼鏡などで遠望するだけで亀裂を検出することができる方法によって構造物の劣化が検出できる可能性が大幅に向上する。
【0044】
従来通りのアナログ的な点検方法で見落としのないデジタルデータを得ることも、得られたデジタルデータを元にアナログ的な詳細点検の準備資料に資することもでき、状況や予算等、必要に応じて手法を変えられることも大なる成果といえる。天災時等、危急の点検を要する場合にも、人為的な差異なく結果を数値化できるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 基体、2 第1塗布層、3 第2塗布層、11 基体の亀裂、31 第2塗布層の亀裂、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を構成する基体の上に、励起光によって発光する蛍光色素が混入され且つ高弾性の第1塗布層を形成し、この第1塗布層の上に、励起光の透過を阻止する遮蔽材が混入され且つ低弾性の第2塗布層を形成したのちに、当該構造物に励起光を照射して、前記塗布層形成後に基体に発生した亀裂を検出することを特徴とする構造物の劣化検査方法。
【請求項2】
構造物に励起光を照射しつつCCDカメラで撮影し、撮影画像から画像処理データを得て、過去の画像処理データと比較して劣化の進行度合いを数値化し、その数値変動を見ることにより劣化の進行程度を管理するようにした請求項1に記載の構造物の劣化検査方法。
【請求項3】
構造物を構成する基体の上に、励起光によって発光する蛍光色素が混入され且つ高弾性の第1塗布層が形成され、この第1塗布層の上に、励起光の透過を阻止する遮蔽材が混入され且つ低弾性の第2塗布層が形成されており、励起光を照射することによって前記塗布層形成後に基体に発生した亀裂の検出を可能としたことを特徴とする構造物。
【請求項4】
構造物を構成する基体の上に、励起光によって発光する蛍光色素が混入され且つ高弾性の第1塗布層を形成するための第1塗料と、この第1塗布層の上に、励起光の透過を阻止する遮蔽材が混入され且つ低弾性の第2塗布層を形成するための第2塗料とからなることを特徴とする塗料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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