構造物の外装材および該外装材を用いた外装構造
【課題】 光触媒等の親水層を表面に設けた外装材を構造物に施工した場合において水膜の連続性を確保し、散水による洗浄効果や放熱効果を発揮できる外装材および該外装材を備えてなる外装構造を提供する。
【解決手段】 表面3および外周端面5に親水層を形成したパネル状の外装材1であって、親水層のうち、少なくとも表面上縁部3a及び外周上端面5aの親水層の親水性を表面中央部の親水性と同等若しくはそれ以上にした。
また、親水層を、光触媒層又は珪素化合物層によって形成した。
【解決手段】 表面3および外周端面5に親水層を形成したパネル状の外装材1であって、親水層のうち、少なくとも表面上縁部3a及び外周上端面5aの親水層の親水性を表面中央部の親水性と同等若しくはそれ以上にした。
また、親水層を、光触媒層又は珪素化合物層によって形成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等の構造物の外装材に関し、特に、表面に親水層を設けた外装材および該外装材を用いた外装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外装材に親水性皮膜を施し、該親水性皮膜を施した外装材を設置した構造物に散水して外装材を洗浄する方法や、外装材表面の水の蒸発効果により、都市温暖化対策、省エネルギーをはかる提案がなされている。
このような提案の一つとして、特許文献1(特表2003-525744号公報)には、表面の少なくとも一部に、光触媒及び/又は親水性のコーティングを有する基体であって、このコーティングされた表面に水を分配する装置と組み合わせていることを特徴とする、表面の少なくとも一部に光触媒及び/又は親水性のコーティングを有する基体がある。
この提案は、外装材を清浄に維持するのに必要な清掃の頻度を、未処理の外装材または水の分配を伴わない外装材と比較して減少させることを目的としており、清掃の間隔をあけること、洗剤使用量の削減、コーティングに対する機械的負担の減少による耐久性の向上という効果を見込んでいる。
【0003】
また、他の提案として特許文献2(特開2002-201727号公報)では、構造物壁面または屋根面の所定領域に、水膜を保持することのできる親水性の層を形成し、この親水性の層形成領域に水を供給し、蒸発に伴う潜熱により周辺空気および構造物を冷却することを特徴とする都市空間の冷却方法が提案されている。
この提案においては、光触媒効果による超親水性により、水膜が非常に薄く形成でき、従来からある構造物への散水方法と比較して、蒸発効率がよく、給水量が非常に少なくてすむ利点があるとしている。
【0004】
上記、従来例の共通点は、外装材表面を親水化し、均一な水膜を形成することにより、洗浄、あるいは放熱の効果を得ようとしている点である。
【特許文献1】特表2003−525744号公報
【特許文献2】特開2002−201727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外装材の洗浄あるいは放熱効果を得るためには、外装材表面での均一な水膜形成が必要である。この点、従来例にも示されるように、外装材表面に光触媒などの親水性皮膜を形成することが有用であることが知られており、パネル体単体での要素試験では良好な結果が再現できることもわかっている。
【0006】
しかしながら、建築構造物等の外装材として用いる場合には、複数の単体パネルを構造物表面に貼り付ける必要があり、必ず目地部が存在する。したがって、目地部ごとに散水装置を組み合わせる場合を除いて、目地部分、特に横目地を超えての水膜の連続性が確保されなければ先行文献の示す効果は期待できない。
【0007】
一般に、目地部にはシーリング材が充填される。シーリング材は、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系などの合成樹脂を素材として製造され、撥水性を有する。そのため、目地上部のパネル部分で均一な水膜が形成されている場合でも、目地のシーリング材の部分で撥水され、水流が筋状になってしまう。そして、ここで形成される筋状の水流は、必ずしも等間隔に形成されるわけではなく、目地下部のパネル部分で均一な水膜の形成は困難である。
【0008】
この点は、シーリング材を充填しない場合、あるいはシーリング材のレベルをパネル表面よりも低く設定した場合でも、目地部を通過した後水膜が確実に広がらなければ同様である。すなわち、このような場合でも、均一な水膜が形成されたパネルの下部で水滴が落下して目地下部のパネル上部、より詳しくは、パネル表面上部と上端部からなる隅部近傍に到達して、パネル表面で筋状の水流を形成する。
筋状の水流が発生すると、前記放熱効果が計画通りに得られないばかりか、水流のある部分とない部分とで汚れの程度が異なり、美観を著しく損なう。
【0009】
このように、従来技術はパネル単体においては有用であるが、これを建築物等の構造物の壁面に設置したときには、必ずしも期待した効果が得られていないのが現状である。
つまり、従来例には親水性を施した複数の外装材を構造物表面に施工した場合において、構造物表面全体で均一な水膜を形成できるようにするにはいかなる手段を講ずべきかという課題が残されていた。
【0010】
本発明はかかる課題を解決するためになされたもので、光触媒等の親水層を表面に設けた外装材を構造物に施工した場合において水膜の連続性を確保し、散水による洗浄効果や放熱効果を発揮できる外装材および該外装材を備えてなる外装構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る構造物の外装材は、表面および外周端面に親水層を形成したパネル状の外装材であって、前記親水層のうち、少なくとも表面上縁部及び外周上端面の親水層の親水性を表面中央部の親水性と同等若しくはそれ以上にしたことを特徴とするものである。
パネル状外装材の表面上縁部とは、パネル状外装材を構造物の表面に設置したときに、上側に配置される一部分であって、その表面部分の全幅方向に亘る部分である。また、パネル状外装材の外周上端面とは、パネル状外装材を構造物の表面に設置したときに、上側に配置される一部分であって、パネル状外装材の厚み部分をいう。
また、構造物の外装材とは、例えば壁材、屋根材等をいう。
【0012】
(2)また、上記(1)における親水層は、光触媒層又は珪素化合物層からなることを特徴とするものである。
【0013】
(3)また、上記(1)または(2)における外装材の外周上端面に全幅に亘る溝部を形成したことを特徴とするものである。
【0014】
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のものにおいて、外装材の少なくとも表面上縁部と外周上端面とで形成される角部が、面取り形状もしくは円弧状に形成されることを特徴とするものである。
【0015】
(5)また、本発明に係る構造物の外装構造は、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の外装材を設置してなる外装構造であって、少なくとも上下に配置された外装材同士の接続目地部のシーリング高さを外装材表面よりも低くして、少なくとも目地下部の外装材の外周上端面に露出部分を設けてなることを特徴とするものである。
【0016】
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、少なくとも最上部の外装材の外周上端面又は表面上縁部と外周上端面とで形成される角部に直接又は間接に散水する散水手段を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、表面および外周端面に親水層を形成したパネル状の外装材であって、前記親水層のうち、少なくとも表面上縁部及び外周上端面の親水層の親水性を表面中央部の親水性と同等若しくはそれ以上にし、目地部に親水層を露出させたので、光触媒等の親水層を表面に設けた外装材を構造物に施工した場合において水膜の連続性が確保され、散水による洗浄効果や放熱効果を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[実施の形態1]
図1は本発明の一実施の形態に係る外装材の説明図である。図1に示すように、本実施の形態に係る外装材1は、表面3および外周端面5に親水層を形成したパネル状の外装材であって、親水層のうち、少なくとも表面上縁部3a及び外周上端面5aの親水層の親水性を表面3の中央部分(表面3のうち周縁部を除いた部分)の親水性と同等若しくはそれ以上にしたものである。
【0019】
構造物の外装材1とは、例えば建築物等の壁、屋根等の表面に貼り付ける部材をいう。
外装材1は、例えば図1に示すように表面が矩形状をしており、設置状態で上側に配置される部分が後方に延出して外周上端面5aを形成している(図1において影を付けた部分)。外周上端面5aの後端部はさらに上方に延出して取付部7を形成している。この例では、取付部7は外装材1の上下に設けられている。
外周上端面5aは、外装材を形成する素材によもよるが、折り曲げ、溶接など、いずれの方法で形成してもよく、その曲率、角度についても任意に選択可能である。
【0020】
外装材1の表面上縁部3aとは、外装材1の表面3の周縁部の一部であって外装材1を構造物の表面に設置したときに上側に配置される部分である(図1において影を付けた部分)。
本実施の形態の外装材1は、前述したように、表面上縁部3a及び外周上端面5aの親水層の親水性を表面3の中央部分の親水性と同等若しくはそれ以上にしたことが特徴であり、以下においては、親水層及び親水性を高くすることの意義について説明する。
【0021】
親水層とは、例えば光触媒層のように供給された水が膜状に濡れ拡がる性質を有する層である。このような親水層としては、酸化チタンに代表される光触媒や珪素化合物をコーティングして光触媒層又は珪素化合物層としたものが好ましい。また、多孔質材料、例えばセメント系発泡材、鉱物系発泡材または樹脂系発泡材、有機粉体などをコーティングしてもよい。
なお、光触媒を使用する場合には、それ単独ではなく、他の保水成分を適切に配合するとよりよい。なお、保水成分は、無機系であれば光触媒で分解されないため、より望ましい。
親水性の管理は、親水材料の密度、表面粗さ、滴下水の接触角などで行えばよい。
親水性を高くするには、親水材料の密度を高くしたり、表面粗さを粗くするなど、滴下水の接触角が小さくなるようにする。
なお、親水層をポストコーティングにより形成する場合には、概して外周部分のコーティングは、表面中央部よりも薄くなることが多いため、少なくとも表面上縁部3aと外周上端面5aについては、表面中央部の親水性と等しいか、それよりも高い親水性を確保するように留意する必要がある。
【0022】
上記のように構成された本実施の形態においては、外周上端面5aおよびこれと連続する表面上縁部3aの親水性を表面3の中央部分の親水性と同等若しくはそれ以上にしたので、外装材1を構造物に目地部を介して複数設置したときに、目地部の上方の外装材1から外周上端面5aおよび表面上縁部3aと外周上端面5aとの角部に滴下した水滴は、当該角部の表面張力と外周上端面5aの親水性により、外周上端面5aで水膜が水平方向に広がる。前記角部の表面張力は、散水開始時には撥水的に作用して表面3に水膜が流下することを妨げるため、上端面にのみ給水される場合、当該角部の接触角が大きくなって水膜が厚くなり、角部表面張力が限界に達した部分から局所的に水流が流下してしまい、表面3に水膜を広げることができない。しかし、目地部では、表面張力が作用する当該角部にも水滴が滴下するため、その作用を廃して滴下部分から親水化し、最終的に外周上端面5aの水膜が当該角部の全長にわたって引き寄せられる。そして、この外周上端面5aと連続する表面上縁部3aの親水性が高いことからその水膜がそのまま維持されて、外装材1の表面全体に水膜が形成される。その結果、外装材1の洗浄、放熱の効果を確実に得ることができる。
【0023】
なお、外装材1の外周上端面5aに供給される水量が少ない場合には、供給された水が外周上端面5aで保持され、露出する外周上端面全体が水膜に覆われた後、外装材1の表面に向かって膜状になって流下する。
【0024】
外周上端面5aにおいて水平方向全体に水膜が形成されるのをより確実にするために、図2(a)に示すように、外装材1の外周上端面5に外周上端面全幅に渡る溝部9を形成するのが好ましい。溝部9を形成することにより、図2(b)に示すように、上端面では水が一旦貯留されるので、上端部の全幅からの流下が行われることになる。
【0025】
なお、溝部の例としては、図2に示したものの他、図3に示すように、溝部の底面を表面側から後方に向かって下方に傾斜する傾斜面とするもの(図3(a))、表面側の溝壁が表面側から後方に向かって急な傾斜部を形成してなるもの(図3(b))、表面側の溝壁が厚みを有するもの(図3(c))、表面側の溝壁が円弧状のもの(図3(d))がある。
【0026】
また、前記角部に直接水滴が滴下しない条件では、表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部は、面取り形状もしくは円弧状に形成されることが望ましい。外周上端面5aの水平部や溝部に供給された水は前記角部において表面張力によって盛り上がり、限界を超えた部分で局所的に角部を超えて表面へ流出する。外周上端面5a上部に散水装置を取り付けて散水した場合など、外周上端面5aの露出面積、即ち、散水の滞水面積は目地部と比べて大きいため、当該部分の滞留水量は、目地部と比べて大幅に増加する。外周上端面5aに水膜形成後、散水を継続すると、水量が多い場合(吐水圧が高い場合)には、水面上で、水が跳ね返され、散水は球状になって飛散し、少量散水の場合、外周上端面5aに形成された水膜端部(外周上端面5aと表面上縁部3aとの角部)の表面張力の限界まで滞留水が増加し、限界を超えた部分から局所的に流下し、局所からの流出量と散水量とがバランスした段階で、他の部分へ流下しなくなり、外装材の表面全体に水膜を形成することは困難である。そのとき、表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部が面取り形状もしくは円弧状に形成されていると、角部において、作用する表面張力が小さくなるため、外周上端面5aの水膜が流出しやすくなり、水が表面全体に流下するようになる。
【0027】
このような角部の例としては、図12に示したようなものがある。図12(1)は表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部を面取りして面取り形状部8を形成したものであり、外周上端面5aに溜まる水は角部において斜面に接するために流下し易くなる。この図では面取り面の外周上端面5aとのなす角αを135°としているが、90°以上であれば任意に設定してよい。
図12(2)は面取り形状部8における面取り面の中間に折り曲げ部を設けて多角形としたものである。
図12(3)は表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部を円弧状にして円弧状部10を形成したものである。角部を円弧状とする場合は円弧の半径を6mm以上とすると良い。さらに好ましくは8mm以上の曲率半径とする。図12(4)〜(6)は外周上端面5aに溝を設けながら表面上端縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部を面取り形状もしくは円弧状とした例である。このように表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部において外周上端面5aに対して90°以上の角度で表面上縁部3aへ連続する形状とすることで、外周上端面5aと表面上縁部3aとの角部に作用する表面張力を緩和し、表面全体へ水が流下するようにできる。
面取り寸法はパネル厚さによって任意に決定してよいが、5mm以上とすることが好ましい。
散水部に供する上端面の大きさは表面の水膜形成状況を確認して任意に定めてよいが、散水量が幅1mあたり100ml〜2000ml/分程度の範囲であれば、角部を除いた滞留面の奥行きが、15mmから50mm程度が好ましく、より望ましくは、35±10mm程度である。
【0028】
なお、上記の例で示した取付部7は、上下に設けられ、全幅に亘って延出するものであったが、図4(a)に示すように、取付部7は全幅に延出することなく一部であってもよい。
また、図4(b)に示すように、上下に加えて両側にも設けてもよい。この場合、図4(c)に示すように、取付部7は全幅に亘らず一部であってもよい。
【0029】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の形態2に係る外装構造11の説明図であり、実施の形態1で説明した外装材1を設置した構造物の表面の一部を示している。図6は図5の矢視A−A断面図である。
本実施の形態の外装構造11は、実施の形態1で説明した外装材1を構造部の表面に複数設置したものであって、外装材同士を横目地13及び縦目地16を介して接続すると共に、上下の外装材同士を接続する横目地13におけるシーリング15(シーリング15はバックアップ材14の上に設置されている。)の高さ(目地深さ)を外装材1の表面3よりも低くし、横目地下方の外装材1の外周上端面5aに露出部分を設けてなるものである。ここで、目地深さは特に限定しないが、5〜15mm程度が望ましい。
なお、横目地13と縦目地16の交差部は、図5に示すように縦目地16と同様の処理とする。
【0030】
上記のような本実施の形態においては、横目地13の上方の外装材1から滴下した水が親水性を有する外装材1の外周上端面5aにおいて水膜となって水平方向に広がることができる。そして、広がった水膜が外装材1の外周上端面5aから表面上縁部3aへ膜状になって流下し、外装材1の表面全体に水膜が形成される(図6において、水の流れを矢印で示している。)。その結果、実施の形態1で述べたように、外装材1の洗浄、放熱の効果を確実に得ることができる。
また、降雨等による表面付着水があった場合にも、これを均一な水膜として維持できるので、筋状の水流発生に伴う筋状の汚れが発生するのを防止できる。
【0031】
なお、外装材1として図2、図3に示したような外装材上端面5aに溝部9を形成したものを用いる場合には、シーリング15が溝部9を埋め尽くさないような高さにする必要がある。
また、上記の実施の形態においては、横目地13と縦目地16の交差部について、縦目地16と同様のシーリング高さにした例を示したが、交差部を横目地13と同様のシーリング高さの深目地にするのが好ましい。交差部を深目地にすることで、交差部において水膜が切断されることなく横方向に広がるので、よりスムーズな水膜形成が実現できる。
また、縦目地16全体を横目地13と同様の深目地にしてもよい。このようにすれば、縦横で目地の深さを変えなくて済むので、施工性が良くなる。
【0032】
[実施の形態3]
図7は本発明の実施の形態3に係る構造物の外装構造の説明図である。
本実施の形態に係る構造物の外装構造は、実施の形態2で示した外装構造における少なくとも最上部の外装材1の外周上端面5aに散水する散水手段としての導水管17を備えたものである。
導水管17は、吐水口が所定間隔で設けられたパイプあるいはホースによって構成する。導水管17からの吐水は、図7に示すように、外周上端面5aに連続する外装材1の取付部7に向くようにする。取付部7に当った水は、図8に示すように、外周上端面5aで水平方向に広がって、広がった状態で表面上縁部3aに至り、外装材1の表面全体に水膜を形成する。
図7の例では、導水管17は、外装材1の取付部7に図示しない固定具にて取付けられている。
【0033】
なお、導水管17の配置方法は、外装構造の最上部にある外装材1の外周上端面5aに水膜を形成できるのであれば、その配置方法、吐水形式を問わない。例えば、図9に示すように、外装材1の外周上端面5aに直接吐水するようにしてもよい。また、導水管17の配置に関しては、図7、図9に示すように外装材1の外周上端面5aの直上に配置してもよいし、あるいは図10に示すように、外装材1の外周上端面5aの斜め上方に配置して、吐水方向を外周上端面5a、若しくは、外周上端面5aと表面上縁部3aとの角部に向かって斜め下方にしてもよい。なお、図10に示した例では、導水管17は上部仕上外装材19の下方に配置されている。
【0034】
また、導水管17は少なくとも最上部の外装材1の外周上端面5aに散水できるように配置することが必要である。最上部の外装材1の外周上端面5aに散水できるようにすれば、最上部に散水した水が最下部まで流下するので他に導水管を設ける必要がなく、設備が簡単でコストも抑制できる。
もっとも、パネル単位または横目地単位で導水管を設けるようにしてもよい。
【0035】
本実施の形態においては、外装構造における少なくとも最上部の外装材1の外周上端面5aに散水する導水管17を設けたので、雨水に頼ることなく確実に外装表面に水膜を形成でき、外装材1の洗浄、放熱の効果を確実に得ることができる。
【実施例1】
【0036】
本発明に係る外装構造を実際に制作して、その効果を確認した。製作した外装構造は以下に示す仕様である。
外装材は亜鉛アルミ合金鍍金鋼板を基材とし、外形寸法1000mm×1000mm、板厚1.6mmとした。また、奥行き寸法は35mmである。
外周端面材が外周全てに設けられ、上下の取付部7は連続体とし、側面の取付部はピース構造とした。なお、側部の取付部は、隣接する外装材の取付部と干渉しないように上下の高さが異なる高さになるように調整した。
外装材表面には、酸化チタンと珪素化合物を含有する表面親水層を形成し、表面中央部の水の接触角はいずれも10度以下であり、表面上縁部及び外周上端面の親水層の水の接触角はいずれも表面中央部より小さくなるように設定されている。
上下左右の目地幅は25mmの間隔を保持して設けられ、変性シリコーンによるシール処理を行った。シーリングは、外周上端面をおよそ10mm露出させる位置で仕上げた。
【0037】
散水用の導水管として、外装材の最上部の目地上部に、直径24mmのホースを設置した。当該ホースには20mm間隔で直径0.5mmの吐水口が設けられ、吐水口の向きは、外装材の外周上端面の露出部分へ向くようにした。散水量は幅1mあたり200ml/分とした。
【0038】
図11は、上記実施例1に示した外装構造と、外装材の外周上端面に親水層を形成していないもの(以下、「従来例」という)との比較を示す写真である。
散水方法は、実施例1に示す導水管を、外装材表面の上部に配置し、吐水口を外装材正面よりやや上に向けて散水したものである。
図11における左側の4面のパネルが実施例であり、右側の4面パネルが従来例である。
図11に示すように、下側2面のパネルにおいては表面全面に水膜が形成されている。これに対して、左側のものは筋状の流下になっている。このように、本発明によれば、目地部の下方の外装材においても水膜が確実に形成されることが実証された。
【0039】
なお、上側の2面については筋状の水流になっているが、図11は、散水開始から間もない状態であり、時間の経過とともに、上側の2面のパネルの水の筋は消え、下側の2面と同様の水膜が形成された。
【実施例2】
【0040】
図13、図14は実施例2の説明図であり、図において図6、図7に示した図中の部分と同一部分には同一の符号が付してある。実施例2においては、表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部を面取り形状としたパネルを散水部パネルとし、該散水部パネルの下方へ設置した一般部パネルは表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部を90°とした例である。
外装材の材質仕様や上下左右の目地幅、シール処理は実施例1と同様であるが、外装材の寸法は外形寸法1200mm×1500mm、板厚1.6mm、奥行き寸法は50mmとした。
また、最上部の散水機能を設けた散水部パネルは表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部を面取り形状とした。面取り寸法は15mmとし、面取り面の外周上端面5aおよび表面上縁部3aとのなす角はそれぞれ等しく135°とした。散水用の導水管17は外形15mmの樹脂製パイプに0.5〜1mmの吐水口が20mm以下の間隔で開けてある。吐水口は散水部パネルの上端面に向けて配置されている。また、開口部下部や中間階に散水装置を設ける場合、図14に示すように、最上部のパネルと同一のパネル上部構造とすることで、標準化できる。
この外装構造においても、図15に写真で示すように、パネル幅1m当りに100ml/分程度の少量の散水でパネルの表面全体に水膜を形成することができた。なお、図15の写真には、パネル全体に水膜が形成されているため、周囲の景色がパネル表面に映り込んでいる状態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1に係る外装材の説明図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る外装材の一部の形状を説明する説明図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る外装材の一部の形状を説明する説明図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る外装材の他の態様の説明図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る外装構造の説明図である。
【図6】図5の矢視A−A断面図である。
【図7】本発明の実施形態3に係る外装構造の説明図である。
【図8】図7に示した外装構造の使用状態の説明図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る外装構造の他の態様の説明図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る外装構造の他の態様の説明図である。
【図11】本発明の実施例1の効果を説明する写真である。
【図12】本発明の実施形態1に係る外装材における表面上縁部と外周上端面とで形成される角部の態様の説明図である。
【図13】本発明の実施例2の外装材の説明図である。
【図14】本発明の実施例2の外装材の説明図である。
【図15】本発明の実施例2の効果を説明する写真である。
【符号の説明】
【0042】
1 外装材、3 表面、3a 表面上縁部、5a 外周上端面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等の構造物の外装材に関し、特に、表面に親水層を設けた外装材および該外装材を用いた外装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外装材に親水性皮膜を施し、該親水性皮膜を施した外装材を設置した構造物に散水して外装材を洗浄する方法や、外装材表面の水の蒸発効果により、都市温暖化対策、省エネルギーをはかる提案がなされている。
このような提案の一つとして、特許文献1(特表2003-525744号公報)には、表面の少なくとも一部に、光触媒及び/又は親水性のコーティングを有する基体であって、このコーティングされた表面に水を分配する装置と組み合わせていることを特徴とする、表面の少なくとも一部に光触媒及び/又は親水性のコーティングを有する基体がある。
この提案は、外装材を清浄に維持するのに必要な清掃の頻度を、未処理の外装材または水の分配を伴わない外装材と比較して減少させることを目的としており、清掃の間隔をあけること、洗剤使用量の削減、コーティングに対する機械的負担の減少による耐久性の向上という効果を見込んでいる。
【0003】
また、他の提案として特許文献2(特開2002-201727号公報)では、構造物壁面または屋根面の所定領域に、水膜を保持することのできる親水性の層を形成し、この親水性の層形成領域に水を供給し、蒸発に伴う潜熱により周辺空気および構造物を冷却することを特徴とする都市空間の冷却方法が提案されている。
この提案においては、光触媒効果による超親水性により、水膜が非常に薄く形成でき、従来からある構造物への散水方法と比較して、蒸発効率がよく、給水量が非常に少なくてすむ利点があるとしている。
【0004】
上記、従来例の共通点は、外装材表面を親水化し、均一な水膜を形成することにより、洗浄、あるいは放熱の効果を得ようとしている点である。
【特許文献1】特表2003−525744号公報
【特許文献2】特開2002−201727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
外装材の洗浄あるいは放熱効果を得るためには、外装材表面での均一な水膜形成が必要である。この点、従来例にも示されるように、外装材表面に光触媒などの親水性皮膜を形成することが有用であることが知られており、パネル体単体での要素試験では良好な結果が再現できることもわかっている。
【0006】
しかしながら、建築構造物等の外装材として用いる場合には、複数の単体パネルを構造物表面に貼り付ける必要があり、必ず目地部が存在する。したがって、目地部ごとに散水装置を組み合わせる場合を除いて、目地部分、特に横目地を超えての水膜の連続性が確保されなければ先行文献の示す効果は期待できない。
【0007】
一般に、目地部にはシーリング材が充填される。シーリング材は、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系などの合成樹脂を素材として製造され、撥水性を有する。そのため、目地上部のパネル部分で均一な水膜が形成されている場合でも、目地のシーリング材の部分で撥水され、水流が筋状になってしまう。そして、ここで形成される筋状の水流は、必ずしも等間隔に形成されるわけではなく、目地下部のパネル部分で均一な水膜の形成は困難である。
【0008】
この点は、シーリング材を充填しない場合、あるいはシーリング材のレベルをパネル表面よりも低く設定した場合でも、目地部を通過した後水膜が確実に広がらなければ同様である。すなわち、このような場合でも、均一な水膜が形成されたパネルの下部で水滴が落下して目地下部のパネル上部、より詳しくは、パネル表面上部と上端部からなる隅部近傍に到達して、パネル表面で筋状の水流を形成する。
筋状の水流が発生すると、前記放熱効果が計画通りに得られないばかりか、水流のある部分とない部分とで汚れの程度が異なり、美観を著しく損なう。
【0009】
このように、従来技術はパネル単体においては有用であるが、これを建築物等の構造物の壁面に設置したときには、必ずしも期待した効果が得られていないのが現状である。
つまり、従来例には親水性を施した複数の外装材を構造物表面に施工した場合において、構造物表面全体で均一な水膜を形成できるようにするにはいかなる手段を講ずべきかという課題が残されていた。
【0010】
本発明はかかる課題を解決するためになされたもので、光触媒等の親水層を表面に設けた外装材を構造物に施工した場合において水膜の連続性を確保し、散水による洗浄効果や放熱効果を発揮できる外装材および該外装材を備えてなる外装構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明に係る構造物の外装材は、表面および外周端面に親水層を形成したパネル状の外装材であって、前記親水層のうち、少なくとも表面上縁部及び外周上端面の親水層の親水性を表面中央部の親水性と同等若しくはそれ以上にしたことを特徴とするものである。
パネル状外装材の表面上縁部とは、パネル状外装材を構造物の表面に設置したときに、上側に配置される一部分であって、その表面部分の全幅方向に亘る部分である。また、パネル状外装材の外周上端面とは、パネル状外装材を構造物の表面に設置したときに、上側に配置される一部分であって、パネル状外装材の厚み部分をいう。
また、構造物の外装材とは、例えば壁材、屋根材等をいう。
【0012】
(2)また、上記(1)における親水層は、光触媒層又は珪素化合物層からなることを特徴とするものである。
【0013】
(3)また、上記(1)または(2)における外装材の外周上端面に全幅に亘る溝部を形成したことを特徴とするものである。
【0014】
(4)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のものにおいて、外装材の少なくとも表面上縁部と外周上端面とで形成される角部が、面取り形状もしくは円弧状に形成されることを特徴とするものである。
【0015】
(5)また、本発明に係る構造物の外装構造は、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の外装材を設置してなる外装構造であって、少なくとも上下に配置された外装材同士の接続目地部のシーリング高さを外装材表面よりも低くして、少なくとも目地下部の外装材の外周上端面に露出部分を設けてなることを特徴とするものである。
【0016】
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、少なくとも最上部の外装材の外周上端面又は表面上縁部と外周上端面とで形成される角部に直接又は間接に散水する散水手段を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、表面および外周端面に親水層を形成したパネル状の外装材であって、前記親水層のうち、少なくとも表面上縁部及び外周上端面の親水層の親水性を表面中央部の親水性と同等若しくはそれ以上にし、目地部に親水層を露出させたので、光触媒等の親水層を表面に設けた外装材を構造物に施工した場合において水膜の連続性が確保され、散水による洗浄効果や放熱効果を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[実施の形態1]
図1は本発明の一実施の形態に係る外装材の説明図である。図1に示すように、本実施の形態に係る外装材1は、表面3および外周端面5に親水層を形成したパネル状の外装材であって、親水層のうち、少なくとも表面上縁部3a及び外周上端面5aの親水層の親水性を表面3の中央部分(表面3のうち周縁部を除いた部分)の親水性と同等若しくはそれ以上にしたものである。
【0019】
構造物の外装材1とは、例えば建築物等の壁、屋根等の表面に貼り付ける部材をいう。
外装材1は、例えば図1に示すように表面が矩形状をしており、設置状態で上側に配置される部分が後方に延出して外周上端面5aを形成している(図1において影を付けた部分)。外周上端面5aの後端部はさらに上方に延出して取付部7を形成している。この例では、取付部7は外装材1の上下に設けられている。
外周上端面5aは、外装材を形成する素材によもよるが、折り曲げ、溶接など、いずれの方法で形成してもよく、その曲率、角度についても任意に選択可能である。
【0020】
外装材1の表面上縁部3aとは、外装材1の表面3の周縁部の一部であって外装材1を構造物の表面に設置したときに上側に配置される部分である(図1において影を付けた部分)。
本実施の形態の外装材1は、前述したように、表面上縁部3a及び外周上端面5aの親水層の親水性を表面3の中央部分の親水性と同等若しくはそれ以上にしたことが特徴であり、以下においては、親水層及び親水性を高くすることの意義について説明する。
【0021】
親水層とは、例えば光触媒層のように供給された水が膜状に濡れ拡がる性質を有する層である。このような親水層としては、酸化チタンに代表される光触媒や珪素化合物をコーティングして光触媒層又は珪素化合物層としたものが好ましい。また、多孔質材料、例えばセメント系発泡材、鉱物系発泡材または樹脂系発泡材、有機粉体などをコーティングしてもよい。
なお、光触媒を使用する場合には、それ単独ではなく、他の保水成分を適切に配合するとよりよい。なお、保水成分は、無機系であれば光触媒で分解されないため、より望ましい。
親水性の管理は、親水材料の密度、表面粗さ、滴下水の接触角などで行えばよい。
親水性を高くするには、親水材料の密度を高くしたり、表面粗さを粗くするなど、滴下水の接触角が小さくなるようにする。
なお、親水層をポストコーティングにより形成する場合には、概して外周部分のコーティングは、表面中央部よりも薄くなることが多いため、少なくとも表面上縁部3aと外周上端面5aについては、表面中央部の親水性と等しいか、それよりも高い親水性を確保するように留意する必要がある。
【0022】
上記のように構成された本実施の形態においては、外周上端面5aおよびこれと連続する表面上縁部3aの親水性を表面3の中央部分の親水性と同等若しくはそれ以上にしたので、外装材1を構造物に目地部を介して複数設置したときに、目地部の上方の外装材1から外周上端面5aおよび表面上縁部3aと外周上端面5aとの角部に滴下した水滴は、当該角部の表面張力と外周上端面5aの親水性により、外周上端面5aで水膜が水平方向に広がる。前記角部の表面張力は、散水開始時には撥水的に作用して表面3に水膜が流下することを妨げるため、上端面にのみ給水される場合、当該角部の接触角が大きくなって水膜が厚くなり、角部表面張力が限界に達した部分から局所的に水流が流下してしまい、表面3に水膜を広げることができない。しかし、目地部では、表面張力が作用する当該角部にも水滴が滴下するため、その作用を廃して滴下部分から親水化し、最終的に外周上端面5aの水膜が当該角部の全長にわたって引き寄せられる。そして、この外周上端面5aと連続する表面上縁部3aの親水性が高いことからその水膜がそのまま維持されて、外装材1の表面全体に水膜が形成される。その結果、外装材1の洗浄、放熱の効果を確実に得ることができる。
【0023】
なお、外装材1の外周上端面5aに供給される水量が少ない場合には、供給された水が外周上端面5aで保持され、露出する外周上端面全体が水膜に覆われた後、外装材1の表面に向かって膜状になって流下する。
【0024】
外周上端面5aにおいて水平方向全体に水膜が形成されるのをより確実にするために、図2(a)に示すように、外装材1の外周上端面5に外周上端面全幅に渡る溝部9を形成するのが好ましい。溝部9を形成することにより、図2(b)に示すように、上端面では水が一旦貯留されるので、上端部の全幅からの流下が行われることになる。
【0025】
なお、溝部の例としては、図2に示したものの他、図3に示すように、溝部の底面を表面側から後方に向かって下方に傾斜する傾斜面とするもの(図3(a))、表面側の溝壁が表面側から後方に向かって急な傾斜部を形成してなるもの(図3(b))、表面側の溝壁が厚みを有するもの(図3(c))、表面側の溝壁が円弧状のもの(図3(d))がある。
【0026】
また、前記角部に直接水滴が滴下しない条件では、表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部は、面取り形状もしくは円弧状に形成されることが望ましい。外周上端面5aの水平部や溝部に供給された水は前記角部において表面張力によって盛り上がり、限界を超えた部分で局所的に角部を超えて表面へ流出する。外周上端面5a上部に散水装置を取り付けて散水した場合など、外周上端面5aの露出面積、即ち、散水の滞水面積は目地部と比べて大きいため、当該部分の滞留水量は、目地部と比べて大幅に増加する。外周上端面5aに水膜形成後、散水を継続すると、水量が多い場合(吐水圧が高い場合)には、水面上で、水が跳ね返され、散水は球状になって飛散し、少量散水の場合、外周上端面5aに形成された水膜端部(外周上端面5aと表面上縁部3aとの角部)の表面張力の限界まで滞留水が増加し、限界を超えた部分から局所的に流下し、局所からの流出量と散水量とがバランスした段階で、他の部分へ流下しなくなり、外装材の表面全体に水膜を形成することは困難である。そのとき、表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部が面取り形状もしくは円弧状に形成されていると、角部において、作用する表面張力が小さくなるため、外周上端面5aの水膜が流出しやすくなり、水が表面全体に流下するようになる。
【0027】
このような角部の例としては、図12に示したようなものがある。図12(1)は表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部を面取りして面取り形状部8を形成したものであり、外周上端面5aに溜まる水は角部において斜面に接するために流下し易くなる。この図では面取り面の外周上端面5aとのなす角αを135°としているが、90°以上であれば任意に設定してよい。
図12(2)は面取り形状部8における面取り面の中間に折り曲げ部を設けて多角形としたものである。
図12(3)は表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部を円弧状にして円弧状部10を形成したものである。角部を円弧状とする場合は円弧の半径を6mm以上とすると良い。さらに好ましくは8mm以上の曲率半径とする。図12(4)〜(6)は外周上端面5aに溝を設けながら表面上端縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部を面取り形状もしくは円弧状とした例である。このように表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部において外周上端面5aに対して90°以上の角度で表面上縁部3aへ連続する形状とすることで、外周上端面5aと表面上縁部3aとの角部に作用する表面張力を緩和し、表面全体へ水が流下するようにできる。
面取り寸法はパネル厚さによって任意に決定してよいが、5mm以上とすることが好ましい。
散水部に供する上端面の大きさは表面の水膜形成状況を確認して任意に定めてよいが、散水量が幅1mあたり100ml〜2000ml/分程度の範囲であれば、角部を除いた滞留面の奥行きが、15mmから50mm程度が好ましく、より望ましくは、35±10mm程度である。
【0028】
なお、上記の例で示した取付部7は、上下に設けられ、全幅に亘って延出するものであったが、図4(a)に示すように、取付部7は全幅に延出することなく一部であってもよい。
また、図4(b)に示すように、上下に加えて両側にも設けてもよい。この場合、図4(c)に示すように、取付部7は全幅に亘らず一部であってもよい。
【0029】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の形態2に係る外装構造11の説明図であり、実施の形態1で説明した外装材1を設置した構造物の表面の一部を示している。図6は図5の矢視A−A断面図である。
本実施の形態の外装構造11は、実施の形態1で説明した外装材1を構造部の表面に複数設置したものであって、外装材同士を横目地13及び縦目地16を介して接続すると共に、上下の外装材同士を接続する横目地13におけるシーリング15(シーリング15はバックアップ材14の上に設置されている。)の高さ(目地深さ)を外装材1の表面3よりも低くし、横目地下方の外装材1の外周上端面5aに露出部分を設けてなるものである。ここで、目地深さは特に限定しないが、5〜15mm程度が望ましい。
なお、横目地13と縦目地16の交差部は、図5に示すように縦目地16と同様の処理とする。
【0030】
上記のような本実施の形態においては、横目地13の上方の外装材1から滴下した水が親水性を有する外装材1の外周上端面5aにおいて水膜となって水平方向に広がることができる。そして、広がった水膜が外装材1の外周上端面5aから表面上縁部3aへ膜状になって流下し、外装材1の表面全体に水膜が形成される(図6において、水の流れを矢印で示している。)。その結果、実施の形態1で述べたように、外装材1の洗浄、放熱の効果を確実に得ることができる。
また、降雨等による表面付着水があった場合にも、これを均一な水膜として維持できるので、筋状の水流発生に伴う筋状の汚れが発生するのを防止できる。
【0031】
なお、外装材1として図2、図3に示したような外装材上端面5aに溝部9を形成したものを用いる場合には、シーリング15が溝部9を埋め尽くさないような高さにする必要がある。
また、上記の実施の形態においては、横目地13と縦目地16の交差部について、縦目地16と同様のシーリング高さにした例を示したが、交差部を横目地13と同様のシーリング高さの深目地にするのが好ましい。交差部を深目地にすることで、交差部において水膜が切断されることなく横方向に広がるので、よりスムーズな水膜形成が実現できる。
また、縦目地16全体を横目地13と同様の深目地にしてもよい。このようにすれば、縦横で目地の深さを変えなくて済むので、施工性が良くなる。
【0032】
[実施の形態3]
図7は本発明の実施の形態3に係る構造物の外装構造の説明図である。
本実施の形態に係る構造物の外装構造は、実施の形態2で示した外装構造における少なくとも最上部の外装材1の外周上端面5aに散水する散水手段としての導水管17を備えたものである。
導水管17は、吐水口が所定間隔で設けられたパイプあるいはホースによって構成する。導水管17からの吐水は、図7に示すように、外周上端面5aに連続する外装材1の取付部7に向くようにする。取付部7に当った水は、図8に示すように、外周上端面5aで水平方向に広がって、広がった状態で表面上縁部3aに至り、外装材1の表面全体に水膜を形成する。
図7の例では、導水管17は、外装材1の取付部7に図示しない固定具にて取付けられている。
【0033】
なお、導水管17の配置方法は、外装構造の最上部にある外装材1の外周上端面5aに水膜を形成できるのであれば、その配置方法、吐水形式を問わない。例えば、図9に示すように、外装材1の外周上端面5aに直接吐水するようにしてもよい。また、導水管17の配置に関しては、図7、図9に示すように外装材1の外周上端面5aの直上に配置してもよいし、あるいは図10に示すように、外装材1の外周上端面5aの斜め上方に配置して、吐水方向を外周上端面5a、若しくは、外周上端面5aと表面上縁部3aとの角部に向かって斜め下方にしてもよい。なお、図10に示した例では、導水管17は上部仕上外装材19の下方に配置されている。
【0034】
また、導水管17は少なくとも最上部の外装材1の外周上端面5aに散水できるように配置することが必要である。最上部の外装材1の外周上端面5aに散水できるようにすれば、最上部に散水した水が最下部まで流下するので他に導水管を設ける必要がなく、設備が簡単でコストも抑制できる。
もっとも、パネル単位または横目地単位で導水管を設けるようにしてもよい。
【0035】
本実施の形態においては、外装構造における少なくとも最上部の外装材1の外周上端面5aに散水する導水管17を設けたので、雨水に頼ることなく確実に外装表面に水膜を形成でき、外装材1の洗浄、放熱の効果を確実に得ることができる。
【実施例1】
【0036】
本発明に係る外装構造を実際に制作して、その効果を確認した。製作した外装構造は以下に示す仕様である。
外装材は亜鉛アルミ合金鍍金鋼板を基材とし、外形寸法1000mm×1000mm、板厚1.6mmとした。また、奥行き寸法は35mmである。
外周端面材が外周全てに設けられ、上下の取付部7は連続体とし、側面の取付部はピース構造とした。なお、側部の取付部は、隣接する外装材の取付部と干渉しないように上下の高さが異なる高さになるように調整した。
外装材表面には、酸化チタンと珪素化合物を含有する表面親水層を形成し、表面中央部の水の接触角はいずれも10度以下であり、表面上縁部及び外周上端面の親水層の水の接触角はいずれも表面中央部より小さくなるように設定されている。
上下左右の目地幅は25mmの間隔を保持して設けられ、変性シリコーンによるシール処理を行った。シーリングは、外周上端面をおよそ10mm露出させる位置で仕上げた。
【0037】
散水用の導水管として、外装材の最上部の目地上部に、直径24mmのホースを設置した。当該ホースには20mm間隔で直径0.5mmの吐水口が設けられ、吐水口の向きは、外装材の外周上端面の露出部分へ向くようにした。散水量は幅1mあたり200ml/分とした。
【0038】
図11は、上記実施例1に示した外装構造と、外装材の外周上端面に親水層を形成していないもの(以下、「従来例」という)との比較を示す写真である。
散水方法は、実施例1に示す導水管を、外装材表面の上部に配置し、吐水口を外装材正面よりやや上に向けて散水したものである。
図11における左側の4面のパネルが実施例であり、右側の4面パネルが従来例である。
図11に示すように、下側2面のパネルにおいては表面全面に水膜が形成されている。これに対して、左側のものは筋状の流下になっている。このように、本発明によれば、目地部の下方の外装材においても水膜が確実に形成されることが実証された。
【0039】
なお、上側の2面については筋状の水流になっているが、図11は、散水開始から間もない状態であり、時間の経過とともに、上側の2面のパネルの水の筋は消え、下側の2面と同様の水膜が形成された。
【実施例2】
【0040】
図13、図14は実施例2の説明図であり、図において図6、図7に示した図中の部分と同一部分には同一の符号が付してある。実施例2においては、表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部を面取り形状としたパネルを散水部パネルとし、該散水部パネルの下方へ設置した一般部パネルは表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部を90°とした例である。
外装材の材質仕様や上下左右の目地幅、シール処理は実施例1と同様であるが、外装材の寸法は外形寸法1200mm×1500mm、板厚1.6mm、奥行き寸法は50mmとした。
また、最上部の散水機能を設けた散水部パネルは表面上縁部3aと外周上端面5aとで形成される角部を面取り形状とした。面取り寸法は15mmとし、面取り面の外周上端面5aおよび表面上縁部3aとのなす角はそれぞれ等しく135°とした。散水用の導水管17は外形15mmの樹脂製パイプに0.5〜1mmの吐水口が20mm以下の間隔で開けてある。吐水口は散水部パネルの上端面に向けて配置されている。また、開口部下部や中間階に散水装置を設ける場合、図14に示すように、最上部のパネルと同一のパネル上部構造とすることで、標準化できる。
この外装構造においても、図15に写真で示すように、パネル幅1m当りに100ml/分程度の少量の散水でパネルの表面全体に水膜を形成することができた。なお、図15の写真には、パネル全体に水膜が形成されているため、周囲の景色がパネル表面に映り込んでいる状態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態1に係る外装材の説明図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る外装材の一部の形状を説明する説明図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る外装材の一部の形状を説明する説明図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る外装材の他の態様の説明図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る外装構造の説明図である。
【図6】図5の矢視A−A断面図である。
【図7】本発明の実施形態3に係る外装構造の説明図である。
【図8】図7に示した外装構造の使用状態の説明図である。
【図9】本発明の実施形態3に係る外装構造の他の態様の説明図である。
【図10】本発明の実施形態3に係る外装構造の他の態様の説明図である。
【図11】本発明の実施例1の効果を説明する写真である。
【図12】本発明の実施形態1に係る外装材における表面上縁部と外周上端面とで形成される角部の態様の説明図である。
【図13】本発明の実施例2の外装材の説明図である。
【図14】本発明の実施例2の外装材の説明図である。
【図15】本発明の実施例2の効果を説明する写真である。
【符号の説明】
【0042】
1 外装材、3 表面、3a 表面上縁部、5a 外周上端面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および外周端面に親水層を形成したパネル状の外装材であって、
前記親水層のうち、少なくとも表面上縁部及び外周上端面の親水層の親水性を表面中央部の親水性と同等若しくはそれ以上にしたことを特徴とする構造物の外装材。
【請求項2】
親水層は光触媒層又は珪素化合物層からなることを特徴とする請求項1に記載の構造物の外装材。
【請求項3】
外装材の外周上端面に全幅に亘る溝部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の構造物の外装材。
【請求項4】
外装材の少なくとも表面上縁部と外周上端面とで形成される角部が、面取り形状もしくは円弧状に形成されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の構造物の外装材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の外装材を設置してなる外装構造であって、少なくとも上下に配置された外装材同士の接続目地部のシーリング高さを外装材表面よりも低くして、少なくとも目地下部の外装材の外周上端面に露出部分を設けてなることを特徴とする構造物の外装構造。
【請求項6】
少なくとも最上部の外装材の外周上端面又は表面上縁部と外周上端面とで形成される角部に直接又は間接に散水する散水手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載の構造物の外装構造。
【請求項1】
表面および外周端面に親水層を形成したパネル状の外装材であって、
前記親水層のうち、少なくとも表面上縁部及び外周上端面の親水層の親水性を表面中央部の親水性と同等若しくはそれ以上にしたことを特徴とする構造物の外装材。
【請求項2】
親水層は光触媒層又は珪素化合物層からなることを特徴とする請求項1に記載の構造物の外装材。
【請求項3】
外装材の外周上端面に全幅に亘る溝部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の構造物の外装材。
【請求項4】
外装材の少なくとも表面上縁部と外周上端面とで形成される角部が、面取り形状もしくは円弧状に形成されることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の構造物の外装材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の外装材を設置してなる外装構造であって、少なくとも上下に配置された外装材同士の接続目地部のシーリング高さを外装材表面よりも低くして、少なくとも目地下部の外装材の外周上端面に露出部分を設けてなることを特徴とする構造物の外装構造。
【請求項6】
少なくとも最上部の外装材の外周上端面又は表面上縁部と外周上端面とで形成される角部に直接又は間接に散水する散水手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載の構造物の外装構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図11】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図11】
【図15】
【公開番号】特開2006−177146(P2006−177146A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341011(P2005−341011)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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