説明

構造物の破損検知システム

【課題】 構造物の変位量を検出し、この変位量に基づいて構造物が破損するおそれがあるか否かを判断することのできる構造物の破損検知システムを提供する。
【解決手段】 支持柱2および屋根支持梁3に取付けられ屋根支持梁3構造物の変位量を検出する加速度センサ5と、加速度センサ5の検出値が入力される破損検知装置6とを備え、破損検知装置6は、支持柱2および屋根支持梁3が破損する限度となる変形量に基づいてあらかじめしきい値を設定し、加速度センサ5による検出値をしきい値と比較して、検出値がしきい値を超えたか否かを判断し、しきい値を超えたと判断した場合に支持柱2および屋根支持梁3が破損するおそれがあるものと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造物の破損検知システムに係り、特に、パイプなどの構造物の変位量を検出し、この変位量に基づいて構造物が破損するおそれがあるか否かを判断することを可能とした構造物の破損検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、自動車の駐車場などにおいて、駐車券の発券機や精算機が設置されており、これら発券機や精算機を風雨などから保護するため、パイプなどの構造物を設置して屋根などを形成するようになっている。この場合に、台風などの影響で、強風が吹いた際に、構造物が折れ曲がり、発券機などの周囲にいた駐車場利用者が負傷してしまうことがあった。
【0003】
そのため、従来から、道路などに設置された照明やポール、標識などの破損を検知する手段として、例えば、カメラにより所定の周期で撮像された画像に、検出領域設定部により、各検知領域を設定し、その中の昼夜判定領域について昼夜判定部が画像処理して、昼夜を判定し、この判定結果が夜のときに、照明破損検知部が照明破損検出領域を画像処理して、照明の破損を検出し、昼夜判定の結果が昼のときに、ポール・標識破損検知部により、ポール・標識破損検知領域を画像処理してポール及び標識の破損を検出し、さらにガードレール破損検知部によりガードレール破損検知領域を画像処理してガードレールの破損を検出するようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−266136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の技術においては、対象物をカメラにより撮影し、この撮影された画像を画像処理することにより、対象物の破損を検出するものであるため、システムが大掛かりとなり、設備コストが高くなってしまうという問題を有している。しかも、前記従来の技術においては、対象物の破損を検出することは可能であるが、対象物の周囲にいる人物に対して、対象物の破損による危険が迫っていることを有効に知らせることができず、十分に安全を図ることができないという問題を有している。
【0006】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、構造物の変位量を検出し、この変位量に基づいて構造物が破損するおそれがあるか否かを判断することのできる構造物の破損検知システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係る構造物の破損検知システムは、構造物に取付けられ前記構造物の変位量を検出する検出装置と、
前記検出装置の検出値が入力される破損検知装置と、を備え、
前記破損検知装置は、前記構造物が破損する限度となる変形量に基づいてあらかじめしきい値を設定し、前記検出装置による検出値を前記しきい値と比較して、前記検出値が前記しきい値を超えたか否かを判断し、前記しきい値を超えたと判断した場合に前記構造物が破損するおそれがあるものと判断することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記破損検知装置により前記しきい値を超えたと判断して前記構造物が破損するおそれがあるものと判断した場合に、外部に警報する警報装置をさらに備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2において、前記構造物が破損する限度となるしきい値の他に、前記構造物が破損する限度より少ない変位量に応じたしきい値を段階的に設定し、前記破損検知装置は、前記検出装置による検出値が前記各しきい値を超えたか否かを判断することにより、前記構造物が破損するおそれがあるか否かを判断することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記検出装置は、加速度センサであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、破損検知装置により、構造物が破損する限度となる変形量に基づいてあらかじめしきい値を設定し、検出装置による検出値をしきい値と比較して、検出値がしきい値を超えたか否かを判断し、しきい値を超えたと判断した場合に構造物が破損するおそれがあるものと判断するようにしているので、適切に構造物が破損するおそれがあるか否かを判断することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、破損検知装置がしきい値を超えたと判断して構造物が破損するおそれがあるものと判断した場合に、警報装置により外部に警報するようにしているので、構造物の周囲にいる人物に注意を促すことができ、構造物が破損した場合でも、周囲の人物の安全を確保することができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、構造物が破損する限度となるしきい値の他に、構造物が破損する限度より少ない変位量に応じたしきい値を段階的に設定し、破損検知装置により、検出装置による検出値が各しきい値を超えたか否かを判断することにより、構造物が破損するおそれがあるか否かを判断するようにしているので、より正確に構造物が破損するおそれがあるか否かを判断することができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、検出装置を加速度センサとしているので、構造物の変位量を適正に検出することができ、構造物の破損のおそれを適正に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る構造物の破損検知システムの実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る構造物の破損検知システムの実施形態における検出電圧と屋根支持梁の曲がり量との相関テーブルを示す説明図である。
【図3】本発明に係る構造物の破損検知システムの実施形態における検出電圧値としきい値との関係を示す説明図である。
【図4】本発明に係る構造物の破損検知システムの実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る構造物の破損検知システムの実施形態における検出電圧値と複数のしきい値との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る構造物の破損検知システムの実施形態を示す概略構成図であり、本実施形態においては、本発明に係る構造物の破損検知システムを駐車場の精算機部分に設置されてる屋根構造物に適用した場合の例について説明する。
【0018】
本実施形態においては、駐車場の出口には、精算機1が設置されており、精算機1の設置部分の後方には、ほぼ垂直に立設された支持柱2が立設されている。支持柱2の先端部には、精算機1の前面側に延在する屋根支持梁3が一体に設けられており、屋根支持梁3の上部には、屋根板4が取付けられている。そして、この屋根板4により、精算機1を雨風などから保護するようになっている。
【0019】
また、本実施形態においては、屋根支持梁3の先端部には、検出装置としての加速度センサ5が取付けられており、この加速度センサ5は、例えば、強風などにより支持柱2あるいは屋根支持梁3に曲げ力が加わった場合に、屋根支持梁3の先端部の変位量に応じた電圧値を出力するものである。また、精算機1の内部には、破損検知装置6が設けられている。破損検知装置6には、加速度センサ5からの検出電圧が入力されるように構成されており、破損検知装置6には、警報装置7が接続されている。そして、破損検知装置6は、加速度センサ5による検出電圧値が一定のしきい値を超えたか否かを判断し、一定のしきい値を超えたと判断して、支持柱2および屋根支持梁3が破損されるおそれあると判断した場合に、警報装置7から警報を発するように構成されている。
【0020】
ここで、加速度センサ5による検出電圧値が低い場合は、支持柱2あるいは屋根支持梁3の曲がりによる変位量が少なく、加速度センサ5による検出電圧値が高い場合は、支持柱2あるいは屋根支持梁3の曲がりによる変位量が大きくなっていることを示している。そのため、図2に示すように、加速度センサ5による検出電圧と屋根支持梁3の曲がり量との関係を表した相関テーブルをあらかじめ測定などにより作成しておく。そして、支持柱2または屋根支持梁3が破損する限界の変位量に対応する出力電圧値を設定し、これをしきい値として設定しておく。そして、図3に示すように、破損検知装置6は、加速度センサ5からの検出電圧値がしきい値を超えたか否かを判断するように構成されている。
【0021】
なお、支持柱2または屋根支持梁3が破損する限界の変位量は、支持柱2および屋根支持梁3の材質、直径寸法、長さ寸法、さらには支持柱2や屋根支持梁3が中空円筒状のパイプにより構成されている場合はその肉厚寸法などにより異なり、これら支持柱2および屋根支持梁3の材質などに応じて適宜設定されるものである。
【0022】
次に、本実施形態の作用について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0023】
本実施形態においては、加速度センサ5により変位量を検出し、加速度センサ5により検出された検出電圧値を破損検知装置6に送る(ST1)。破損検知装置6により、加速度センサ5による検出電圧値がしきい値を超えたか否か判断する(ST2)。
【0024】
そして、破損検知装置6により、加速度センサ5による検出電圧値がしきい値を超えたと判断した場合には(ST2:YES)、警報装置7により、支持柱2および屋根支持梁3が破損されるおそれがあると判断する(ST3)。そして、破損検知装置6により警報装置7を動作させて、精算機1の周囲に支持柱2および屋根支持梁3が破損されるおそれがあり危険である旨警告を行うようになっている(ST4)。
【0025】
このとき、支持柱2および屋根支持梁3が破損する限界となるしきい値の他に、例えば、図5に示すように、支持柱2および屋根支持梁3が破損する限度より少ない変位量に応じた電圧値を第2しきい値、第3しきい値として段階的に設定し、例えば、最も小さい電圧値である第3しきい値を3回超えた場合に、支持柱2および屋根支持梁3が破損のおそれがあると判断し、第2しきい値を2回超えた場合に、支持柱2および屋根支持梁3が破損のおそれがあると判断するようにしてもよい。この場合に、各しきい値を超えた回数を総合して破損のおそれがあるか否かを判断するようにしてもよい。
【0026】
以上述べたように本実施形態においては、加速度センサ5により検出される支持柱2および屋根支持梁3の変位に応じた電圧値に基づいて、破損検知装置6により支持柱2および屋根支持梁3が破損するおそれがあるか否かを判断するようにしているので、適切に構造物が破損するおそれがあるか否かを判断することができる。また、本実施形態においては、構造物が破損するおそれがある場合に、警報装置7により周囲に警報するようにしているので、構造物の周囲にいる人物に注意を促すことができ、構造物が破損した場合でも、周囲の人物の安全を確保することができる。
【0027】
なお、前記実施形態においては、屋根支持梁3の先端部に加速度センサ5を設置するようにしているが、例えば、屋根支持梁3の中途部、支持柱2の上端部、支持柱2の中途部などに加速度センサ5を設置するようにしてもよい。例えば、屋根支持梁3の先端部および支持柱2の上端部に加速度センサ5を設置した場合には、屋根支持梁3の加速度センサ5による検出電圧値と、支持柱2の加速度センサ5による検出電圧値とに基づいて、支持柱2の変位量と屋根支持梁3の変位量とを別個に検出することができ、より正確に支持柱2および屋根支持梁3の破損のおそれがあるか否かを判断することができる。
【0028】
また、前記実施形態においては、本発明に係る構造物の破損検知システムを駐車場の精算機1付近に設置される屋根構造物に適用した場合の例について説明したが、これに限定されるものではなく、その他、構造物であれば、いずれの構造物についても適用することが可能である。
【0029】
さらに、前記実施形態においては、検知装置として加速度センサ5を用いるようにしているが、その他、例えば、歪みセンサなど構造物の変位量が検出可能なセンサであれば、いずれの検出装置を用いるようにしてもよい。
【0030】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 精算機
2 支持柱
3 屋根支持梁
4 屋根板
5 加速度センサ
6 破損検知装置
7 警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に取付けられ前記構造物の変位量を検出する検出装置と、
前記検出装置の検出値が入力される破損検知装置と、を備え、
前記破損検知装置は、前記構造物が破損する限度となる変位量に基づいてあらかじめしきい値を設定し、前記検出装置による検出値を前記しきい値と比較して、前記検出値が前記しきい値を超えたか否かを判断し、前記しきい値を超えたと判断した場合に前記構造物が破損するおそれがあるものと判断することを特徴とする構造物の破損検知システム。
【請求項2】
前記破損検知装置により前記しきい値を超えたと判断して前記構造物が破損するおそれがあるものと判断した場合に、外部に警報する警告装置をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の構造物の破損検知システム。
【請求項3】
前記構造物が破損する限度となるしきい値の他に、前記構造物が破損する限度より少ない変位量に応じたしきい値を段階的に設定し、
前記破損検知装置は、前記検出装置による検出値が前記各しきい値を超えたか否かを判断することにより、前記構造物が破損するおそれがあるか否かを判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の構造物の破損検知システム。
【請求項4】
前記検出装置は、加速度センサであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の構造物の破損検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−12868(P2012−12868A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151631(P2010−151631)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】