説明

構造物

【課題】複数のICタグを容易に埋設し、また容易に交換することが可能な構造物を提供する。
【解決手段】複数のICタグが埋設された構造物であって、当該構造物内に埋設されて両端部が露出された管状部材を備え、前記複数のICタグは連結線により連結されてICタグ連結体をなし、前記管状部材内に挿通されて、前記管状部材の前記両端部から前記ICタグ連結体の前記連結線が引き出し可能な状態で納められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のICタグが埋設された構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のICタグが埋設された構造物としては、例えば、視覚障害者用のナビゲーションシステム用に、歩行者道のような歩道の土中に直接埋め込まれていることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008―518314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の歩道のように、ICタグが直接埋設されていると、例えば、ICタグが破損した場合には、歩道を掘り起こしてICタグを交換しなければならないため、作業が繁雑であり、多大な労力を費やさなければならないという課題がある。
また、ナビゲーションシステムのように、膨大な数のICタグを互いに適宜間隔を隔てて配置しなければならない場合には、ICタグの埋設作業も繁雑であり、多大な労力を費やさなければならないという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数のICタグを容易に埋設し、また容易に交換することが可能な構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の構造物は、複数のICタグが埋設された構造物であって、当該構造物内に埋設されて両端部が露出された管状部材を備え、前記複数のICタグは連結線により連結されてICタグ連結体をなし、前記管状部材内に挿通されて、前記管状部材の前記両端部から前記ICタグ連結体の前記連結線が引き出し可能な状態で納められていることを特徴とする構造物である。
【0007】
このような構造物によれば、構造物内に埋設される複数のICタグは連結線により連結されてICタグ連結体をなし、両端部が露出されて構造物内に埋設された管状部材にICタグ連結体を挿通することにより、複数のICタグを容易に配置することが可能である。また、ICタグ連結体が挿通された管状部材を構造部に埋設することにより、容易に複数のICタグを構造物内に埋設することが可能である。このとき、ICタグは直接埋設されていないので、管状部材内を移動可能であり、またICタグ連結体の連結線が管状部材の露出された端部から引き出し可能な状態で納められているので、引き出し可能な状態の連結線を引っ張ることにより埋設されているICタグを取り出すことが可能である。このとき、一方の端部側にて、管状部材から引き出した連結線に新たなICタグ連結体を繋いで、他方の端部側にて連結線を引っ張ると、ICタグを容易に交換することが可能である。
【0008】
かかる構造物であって、前記ICタグ連結体は、前記複数のICタグが等間隔に配置されていることが望ましい。
このような構造物によれば、ICタグ連結体が有する各ICタグが等間隔に配置されているので、管状部材内に複数のICタグを等間隔で容易に配置することが可能である。また、埋設されたICタグが有する情報に基づいて制御する場合には、埋設された各ICタグが等間隔に配置されていることを前提として制御することができるので、制御が容易である。
【0009】
かかる構造物であって、前記ICタグ連結体が挿通された前記管状部材は、所定方向に沿って配置されるとともに、前記所定方向と交差する交差方向に並べて複数設けられていることが望ましい。
このような構造物によれば、ICタグ連結体が挿通された管状部材は、複数設けられているので、より多くのICタグを埋設することが可能である。また、ICタグ連結体が挿通された複数の管状部材は、所定方向に沿って配置されるとともに、所定方向と交差する交差方向に並べて複数設けられているので、ICタグを線状に連ねるだけでなく、所定領域内に分散して配置することが可能である。
【0010】
かかる構造物であって、前記ICタグ連結体が挿通された複数の前記管状部材は、前記交差方向に等間隔で配置されていることが望ましい。
このような構造物によれば、ICタグ連結体が挿通された複数の管状部材が交差方向に等間隔で配置されているので、構造物内に複数のICタグを交差方向に等間隔にて容易に配置することが可能である。また、埋設されたICタグが有する情報に基づいて制御する場合には、埋設された各ICタグが交差方向に等間隔に配置されていることを前提として制御することができるので、制御が容易である。
【0011】
かかる構造物であって、前記ICタグは、所定量の移動が許容されて前記連結線にて連結されており、前記管状部材内には、前記連結線が、前記管状部材に沿う一方側に引っ張られたとき前記ICタグ連結体の移動が許容され、他方側に引っ張られたときに前記所定量の範囲内で前記ICタグの移動が規制され前記連結線の移動が許容される規制部材が、前記ICタグに対応させて設けられていることが望ましい。
このような構造物によれば、管状部材内には、連結線が、管状部材に沿う一方側に引っ張られたとき移動が許容され、他方側に引っ張られたときに所定量の範囲内でICタグの移動が規制され連結線の移動が許容される規制部材が、ICタグに対応させて設けられているので、複数のICタグが連結されたICタグ連結体を一方側に引っ張って規制部材を通過した後に他方側に引っ張ることにより各ICタグを所定の規制部材に規制される位置に配置させることが可能である。このとき、ICタグは、所定量の移動が許容されて連結線にて連結されているので、1つのICタグが規制部材に規制される位置にて全てのICタグが位置決めされてしまうことを防止することが可能である。
【0012】
かかる構造物であって、前記所定量は、前記ICタグ連結体における前記ICタグ同士の間隔と、各々の前記ICタグに対応する前記規制部材同士の間隔との誤差を許容する量であることが望ましい。
このような構造物によれば、ICタグ連結体におけるICタグ同士は、当該ICタグ同士の間隔と、各々のICタグに対応する規制部材同士の間隔との誤差を許容する量の移動が許容されるように連結されているので、各々のICタグをそれぞれ対応する規制部材にて位置決めして所望の位置に配置することが可能である。
【0013】
かかる構造物であって、当該構造物は、前記所定方向に沿う鉄筋を備えた鉄筋コンクリート造であり、前記管状部材は、前記所定方向に沿って配置された前記鉄筋が当該構造物の表面側にて重ならないように配置されていることが望ましい。
このような構造物によれば、管状部材は、当該管状部材と同様に所定方向に沿って配置された鉄筋が当該構造物の表面側にて重ならないように配置されているので、鉄筋コンクリート造の構造物に埋設されたICタグとの通信を構造物の表面側から行うことが可能である。
【0014】
かかる構造物であって、当該構造物の表面に対して凹設され、前記管状部材の端部が露出される収容部と、前記収容部を開閉自在に覆って前記構造物の表面を構成する蓋部材と、を有していることが望ましい。
このような構造物によれば、構造物の表面に対し凹設され、管状部材の端部が露出している収容部は、蓋部材により覆われているので、収容部内には露出している管状部材の端部及びICタグ連結体の連結線を覆って収容部外に露出させないことが可能である。また、蓋部材は開閉自在なので、必要に応じて蓋部材を開放してICタグを交換することが可能である。さらに、蓋部材は収容部を覆って構造物の表面を構成するので、蓋部材も含めて一体となった構造物を構成することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のICタグを容易に埋設し、また容易に交換することが可能な構造物を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る構造物の使用例を示すイメージ図である。
【図2】本発明に係る構造物の一例を説明するための平断面図である。
【図3】本発明に係る構造物の一例を説明するための縦断面図である。
【図4】本発明に係る構造物のメンテナンスピットを示す縦断面図である。
【図5】本発明に係る構造物に設けられた規制部材を説明するための縦断面図である。
【図6】本発明に係る構造物のメンテナンスボックスを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る構造物の使用例を示すイメージ図である。図1においては、ICタグ20の符号の記載を一部省略している。
【0018】
本実施形態の構造物は、たとえば、複数の部材が仕分けられて管理された倉庫等の床として使用される。具体的には、例えば、複数種類の部材が種類毎に仕分けされて収容された複数のバケットが、倉庫内の所定の位置に配置されており、各バケットが配置された位置には、その位置を特定可能な位置情報が設定されている。倉庫内には、作業者の指令に基づいて倉庫内の所定の位置に指定された部材を搬送する搬送ロボットが稼働しており、倉庫の床には、複数のICタグが倉庫の全領域に埋設されている。
【0019】
図1に示すように、倉庫の床10に埋設された複数のICタグ20は、互いに適宜間隔を隔てて埋設されており、各ICタグ20には、所定の規則性を有して、埋設されている位置が特定可能な位置情報が記憶されたICチップ(不図示)とアンテナ(不図示)とが設けられている。
【0020】
搬送ロボット30には、当該搬送ロボット30の位置が含まれる所定の領域内に埋設されているICタグ20に記憶されている位置情報を、非接触にて読み取ることが可能なアンテナと受送信部、及び、読み取った位置情報に基づいて搬送ロボット30の動作を制御する制御部を備えている。
【0021】
この制御部は、ICタグ20との通信を制御してICタグ20の情報を取得する制御、取得した位置情報からICタグ20が割り振られている規則性に基づいて搬送ロボット30の進行方向を決定する制御、決定された進行方向に搬送ロボット30を進行させる制御、等各種の制御を実行可能である。
【0022】
また、ICタグ20及び搬送ロボット30が備えるアンテナ(不図示)は、それぞれ、銅箔を平面コイル状に配線して形成されており、搬送ロボット30にて発生された高周波信号が、アンテナを介して高周波磁界として誘起され、この高周波磁界は、ICタグ20のアンテナを介して吸収されて整流されICタグ20を駆動する直流電力源となる。
【0023】
そして、例えば搬送ロボット30は、作業者により所望の部材の種類の情報や所望の部材が収納されている位置の情報と、その部材を搬送する先の位置の情報とを含む指令が入力されると、所定領域内の床10に埋設されているICタグ20の情報を取得しつつ取得した位置情報に基づいて移動し、指定された部材が収納されている場所に移動する。移動した場所では、指定された部材を保持するとともに、ICタグ20の情報を取得しつつ取得した位置情報に基づいて移動して、指令にて指定された搬送すべき位置に保持した部材を搬送する。
【0024】
本発明の構造物は、例えば上記のような倉庫の床10に用いられる。
【0025】
本実施形態の床10は、図1に示すように、上下2段に、鉄筋11、12が縦横に配設された鉄筋コンクリート造の床スラブ10aの上面に防塵塗装をなす床仕上げ材10bが施されている。
【0026】
図2は、本発明に係る構造物の一例を説明するための平断面図である。図3は、本発明に係る構造物の一例を説明するための縦断面図である。図2、図3においては、縦筋11、横筋12、ICタグ20、ロープ21、ICタグ連結体22、パイプ15の符号の記載を一部省略している。
【0027】
床スラブ10aには、図2に示すように、倉庫の奥行き方向(所定方向)の両端部において、左右方向(交差方向)に沿って溝状に形成された収容部としてのメンテナンスピット16が形成されている。このメンテナンスピット16には、当該メンテナンスピット16を覆う蓋部材17(図4)が開閉自在に設けられている。この蓋部材17は、閉止した状態にて床スラブ10aの上面と同じ平面をなすように形成されている。
【0028】
床スラブ10aには、上面側にて格子状をなすように配置された鉄筋11、12のうち、奥行き方向に沿って配設された各鉄筋11間に左右方向に間隔を隔てて樹脂製の管状部材としてのパイプ15が埋設されている。より具体的には、図2、図3に示すように、床スラブ10aには、上下に間隔を隔てて奥行き方向に沿う鉄筋(以下、縦筋という)11が、左右方向に互いに間隔を隔てて複数設けられており、上側の縦筋11の上側と、下側の縦筋11の下側には、各々鉄筋同士がほぼ直交して接触するように左右方向に延びる鉄筋(以下、横筋という)12が配設されている。このとき、縦筋11同士の間隔と横筋12同士の間隔とはほぼ等しく配置されており、縦筋11と横筋12とはほぼ正方形状の格子状をなしている。ここで使用されるパイプ15は、床スラブ10a内に埋設されるため、打設されるコンクリートの重量が作用しても、中空の形状が維持される剛性を有している。
【0029】
図4は、本発明に係る構造物のメンテナンスピットを示す縦断面図である。
【0030】
上側に配置された複数の縦筋11のうち隣接する2本の縦筋11間における左右方向のほぼ中央に、各々パイプ15が奥行き方向に沿うように配設され、上側に配置されて交差する横筋12の下側にて当該横筋12に接触するように配置されて横筋12に固定されている。また、パイプ15の両端部15a、15bは、図4に示すように、倉庫の奥行き方向の両端部に設けられたメンテナンスピット16内に突出している。
【0031】
床スラブ10a内に埋設されたパイプ15の中には、複数のICタグ20が、連結線としての非金属性のロープ21により連結されたICタグ連結体22が挿通されている。ICタグ連結体22において各ICタグ20は、例えば、格子状をなす鉄筋の縦筋11間の間隔とほぼ等間隔にて設けられており、各々ICタグ20はロープ21の長さ方向において所定範囲で移動可能に取り付けられている。このため、各々のICタグ20は図2に示すように、格子状の鉄筋11、12がなす各四辺形の中央に位置するように配置されるように設定され、四辺形状の各格子の内接円となる領域が、各ICタグ20と搬送ロボット30の受送信部とが通信可能領域とほぼ一致している。
【0032】
図5は、本発明に係る構造物に設けられた規制部材を説明するための縦断面図である。
【0033】
パイプ15の内部には、パイプ15の内周面から突出されたICタグ20の位置を規制する規制部材18が設けられている。規制部材18は、パイプ15の断面における中央に向かうとともにパイプ15の長手方向における、いずれか一方の端部15a側に向かって傾斜している。図5の例では、規制部材18は、パイプ15の断面における中央に向かうとともにパイプ15の長手方向における、右側の端部15a側に向かって傾斜している。
【0034】
そして、パイプ15の他方の端部15b側から挿通されたICタグ連結体22を一方の端部15a側に引っ張って移動させることが可能であり、他方の端部15b側に引っ張ることにより、規制部材18より一方の端部15a側に移動していたICタグ20が規制部材18にて他方の端部15b側への移動が規制されてICタグ20が位置決めされるように構成されている。また、本実施形態のパイプ15には、パイプ15が埋設されたときに、内部に設けられた規制部材18の上方に位置する部位に、内部に規制部材18が存在することを示す規制部材位置表示部15cが設けられている。
【0035】
各ICタグ連結体22のロープ21は、メンテナンスピット16内に突出しているパイプ15の両端部15a、15bから、それぞれ突出し、メンテナンスピット16内に設けられたロープ保持部19に保持されており、メンテナンスピット16の上は蓋部材17にて閉塞されている。
【0036】
このような床スラブ10aの施工方法は、まず、複数のICタグ20を、埋設する鉄筋11、12にて形成される格子のピッチに合わせてロープ21にて連結し、複数のICタグ連結体22を形成しておく。このとき、各ICタグ20は、鉄筋11、12がなす格子のピッチ誤差、ロープ21に取り付けられるICタグ20の取り付け誤差、パイプ15に設けられた規制部材18のピッチ誤差等を許容できる程度に、ロープ21の長手方向に移動可能に取り付けておく。
【0037】
次に、床スラブ10aの端に設けられたメンテナンスピット16の間隔より僅かに長いパイプ15にICタグ連結体22を挿通し、ロープ21の両端部21aをパイプ15の両端部15a、15bから突出させるとともに、パイプ15内に引き込まれないようにテープ等で仮止めしておく。
【0038】
次に、床スラブ10a及びメンテナンスピット16を施工するための型枠を施工現場に配設し、内部に鉄筋11、12を配設する。このとき、メンテナンスピット16が設けられている側に両端部15a、15bが位置するように、縦筋11間に、ICタグ連結体22が挿通されているパイプ15を配設する。
【0039】
その後、コンクリートを打設し、養生した後、型枠を取り外す。
そして、パイプ15の両端部15a、15bのロープ21の仮止めを外し、一方の端部15a側にロープ21を引っ張った後に、各ICタグ20が規制部材18に当接されるように他方の端部15b側に引っ張ってICタグ20の位置を調整し、調整後のロープ21をメンテナンスピット16内のロープ保持部19に保持させる。最後にメンテナンスピット16に蓋部材17を取り付けて床スラブ10aが完成し、床スラブ10a及び蓋部材17の表面に床仕上げ材10bを施して床10が完成する。
【0040】
このような床10によれば、床10の内部に埋設される複数のICタグ20はロープ21により連結されてICタグ連結体22をなし、両端部21aが突出されて床10内に埋設されたパイプ15に挿通されているので、ICタグ連結体22をパイプ15に挿通することにより、複数のICタグ20を容易に配置することが可能である。このとき、ICタグ20は、直接埋設されていないので、パイプ15内を移動可能であり、ICタグ連結体22のロープ21が、パイプ15の吐出された端部15a、15bから突出しているので、突出しているロープ21を引っ張ることにより埋設されているICタグ20を取り出すことが可能である。このとき、他方の端部15b側に突出したロープ21に新たなICタグ連結体22を繋いで、一方の端部15a側に突出したロープ21を引っ張ると、ICタグ20を容易に交換することが可能である。
【0041】
また、ICタグ連結体22が有する各ICタグ20が等間隔に配置されているので、パイプ15内に複数のICタグ20を等間隔にて容易に配置することが可能である。また、埋設されたICタグ20が有する情報に基づいて制御する場合には、埋設された各ICタグ20が等間隔に配置されていることを前提として制御することができるので、制御が容易である。特に、ICタグ20が有する位置情報に基づいて位置制御を行う場合には、より簡単な制御にて、より正確な位置制御を行うことが可能である。
【0042】
また、ICタグ連結体22が挿通されたパイプ15は、複数設けられているので、より多くのICタグ20を容易に埋設することが可能である。また、ICタグ連結体22が挿通された複数のパイプ15は奥行き方向に沿って配置されるとともに、奥行き方向と交差する左右方向に並べて設けられているので、ICタグ20を線状に連ねるだけでなく、床10全領域内に分散して配置することが可能である。
【0043】
このとき、ICタグ連結体22が挿通された複数のパイプ15を左右方向に等間隔で配置することにより、床スラブ10a内に複数のICタグ20を左右方向に等間隔で容易に配置することが可能である。また、埋設されたICタグ20が有する情報に基づいて制御する場合には、埋設された各ICタグ20が左右方向に等間隔に配置されていることを前提として制御することができるので、制御が容易である。特に、パイプ15が沿わされている奥行き方向と、複数のパイプ15が並べられた交差方向とのいずれにも等間隔にてICタグ20が配置されていると、より制御が容易であり、かつ、正確に制御することが可能である。
【0044】
また、パイプ15内には、ロープ21が、パイプ15に沿う一方側に引っ張られたとき移動が許容され、他方側に引っ張られたときに移動が規制される規制部材18が、ICタグ20に対応させて設けられているので、複数のICタグ20が連結されたICタグ連結体22を一方側に引っ張って規制部材18を通過した後に他方側に引っ張ることにより各ICタグ20を規制部材18に規制される位置に配置させることが可能である。このとき、ICタグ20は、ICタグ20同士の間隔と、各々のICタグ20に対応する規制部材18同士の間隔との誤差を許容する量の移動が許容されるように連結されているので、1つのICタグ20が規制部材18に規制される位置にて全てのICタグ20が位置決めされてしまうことを防止し、各々のICタグ20をそれぞれ対応する規制部材18にて位置決めして所望の位置に配置することが可能である。
【0045】
また、パイプ15は、当該パイプ15と並ぶ鉄筋11、12が当該床10の表面側にて重ならないように配置されているので、鉄筋コンクリート造の床スラブ10aに埋設されたICタグ20との通信を床10の表面側から行うことが可能である。
【0046】
また、パイプ15の端部15a、15bが収容される開放されたメンテナンスピット16は開放されている部位が蓋部材17にて閉塞されているので、パイプ15の端部15a、15b及びICタグ連結体22のロープ21を覆って外部に露出させないことが可能である。また、蓋部材17は開放可能なので、必要に応じて蓋部材17を開放してICタグ20を交換することが可能である。また、メンテナンスピット16は、床スラブ10aの表面に対して凹設されているので、床スラブ10a内に埋設されて、端部15a、15bがメンテナンスピット16内に突出するパイプ15を屈曲させることなく、ほぼ直線状に配置して両端部15a、15bをメンテナンスピット16内に突出させることが可能である。このため、パイプ15が、当該パイプ15内に挿通されたICタグ連結体22の移動の妨げになることを防止することが可能なので、ICタグ連結体22をパイプ15内にて容易に移動させることが可能である。
【0047】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0048】
図6は、本発明に係る構造物のメンテナンスボックスを示す縦断面図である。
【0049】
上記実施形態においては、倉庫の端に溝状のメンテナンスピット16を設けた例について説明したが、これに限らず、図6に示すように、床10等に設けた、蓋部材51を有する箱状のメンテナンスボックス50内に、パイプ15の端部15a、15bとロープ21の端部21aとを突出させ、ロープ保持部19にロープ21の端部21aを保持してもよい。
【0050】
上記実施形態においては、パイプ15及びロープ21の両端部15a、15b、21aを、メンテナンスピット16内またはメンテナンスボックス50内に突出させた例について説明したが、パイプ15及びロープ21の両端部15a、15b、21aは、必ずしも突出していなくともよい。すなわち、ロープ21の両端部21aが、パイプ15の端部15a、15bから引き出し可能な状態に納められていればパイプ15から突出していなくともよい。また、パイプ15の両端部15a、15bも、ICタグ連結体22のロープ21の端部21aを引き出し可能な状態に納めることが可能であれば突出していなくとも、メンテナンスピット16及びメンテナンスボックス50の内面と同一面にて端部15a、15bが露出していたり、内面より窪んだ状態にて露出していてもよい。
【0051】
上記実施形態においては、構造物を倉庫の床10としたが、これに限らず、各種建物の壁や天井などであっても構わない。
【符号の説明】
【0052】
10 床、10a 床スラブ、10b 仕上げ材、11 縦筋(鉄筋)、
12 横筋(鉄筋)、15 パイプ、15a 一方の端部、15b 他方の端部、
15c 規制部材位置表示部、16 メンテナンスピット、17 蓋部材、
18 規制部材、19 ロープ保持部、20 ICタグ、21 ロープ、
21a ロープの端部、22 ICタグ連結体、30 搬送ロボット、
50 メンテナンスボックス、51 蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のICタグが埋設された構造物であって、
当該構造物内に埋設されて両端部が露出された管状部材を備え、
前記複数のICタグは連結線により連結されてICタグ連結体をなし、前記管状部材内に挿通されて、前記管状部材の前記両端部から前記ICタグ連結体の前記連結線が引き出し可能な状態で納められていることを特徴とする構造物。
【請求項2】
請求項1に記載の構造物であって、
前記ICタグ連結体は、前記複数のICタグが等間隔に配置されていることを特徴とする構造物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の構造物であって、
前記ICタグ連結体が挿通された前記管状部材は、所定方向に沿って配置されるとともに、前記所定方向と交差する交差方向に並べて複数設けられていることを特徴とする構造物。
【請求項4】
請求項3に記載の構造物であって、
前記ICタグ連結体が挿通された複数の前記管状部材は、前記交差方向に等間隔で配置されていることを特徴とする構造物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の構造物であって、
前記ICタグは、所定量の移動が許容されて前記連結線にて連結されており、
前記管状部材内には、前記連結線が、前記管状部材に沿う一方側に引っ張られたとき前記ICタグ連結体の移動が許容され、他方側に引っ張られたときに前記所定量の範囲内で前記ICタグの移動が規制され前記連結線の移動が許容される規制部材が、前記ICタグに対応させて設けられていることを特徴とする構造物。
【請求項6】
請求項5に記載の構造物であって、
前記所定量は、前記ICタグ連結体における前記ICタグ同士の間隔と、各々の前記ICタグに対応する前記規制部材同士の間隔との誤差を許容する量であることを特徴とする構造物。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の構造物であって、
当該構造物は、前記所定方向に沿う鉄筋を備えた鉄筋コンクリート造であり、
前記管状部材は、前記所定方向に沿って配置された前記鉄筋が当該構造物の表面側にて重ならないように配置されていることを特徴とする構造物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の構造物であって、
当該構造物の表面に対して凹設され、前記管状部材の端部が露出される収容部と、
前記収容部を開閉自在に覆って前記構造物の表面を構成する蓋部材と、を有していることを特徴とする構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−137880(P2012−137880A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288750(P2010−288750)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】