構造発色体
【課題】光の反射、干渉、回折、散乱などの物理現象を利用して発色する構造発色体において、装飾効果をより一層向上させることができる構造発色体を提供する。
【解決手段】互いに異なる色に構造発色する複数の構造発色部を組み合わせて構造発色体を構成する。
【解決手段】互いに異なる色に構造発色する複数の構造発色部を組み合わせて構造発色体を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の反射、干渉、回折、散乱などの物理現象を利用して発色する構造発色体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の構造発色体は、種々の構造のものが知られている。例えば、従来の構造発色体として、特許文献1に記載されたものがある。図14は、特許文献1に記載された従来の構造発色体の断面図である。
【0003】
図14において、従来の構造発色体101は、光透過性を有する構成体102と、複数の微細構成体103とを有している。複数の微細構成体103は、構成体102と屈折率が異なる材料で構成され、構成体102中に規則的に配置されている。また、複数の微細構成体103は、x方向の軸に対して角度θ1傾斜した複数の仮想線A1のそれぞれに沿って、一定のピッチP1で配置されている。
【0004】
前記構成を有する従来の構造発色体101において、構成体102の材料として平均屈折率1.62のポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、微細構成体103の材料として平均屈折率1.53のナイロン6(Ny6)を用い、微細構成体103の平均直径D1を0.19μmとし、ピッチP1を0.28とし、角度θ1を32°とし、入射光L1を入射角α1=45°で照射して、受光角度β1=45°で目視により観察した場合、構造発色体101は紫青色に発色して見える。また、受光角度β1を変えて目視により構造発色体101を観察した場合には、構造発色体101は、紫青色から赤緑色に変化して見える。
【0005】
従来の構造発色体101によれば、顔料や染料などの色素を使用せずに色を表現することができるので、色素塗布工程を無くして製造工程の短縮を図ることができるとともに、有機溶剤系塗料を使う必要がないのでCO2の削減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−151271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の構造発色体101を、カメラやテレビジョンなどの電化製品の外装部品などとして使用する場合には、その装飾効果が限定的である。すなわち、従来の構造発色体101においては、複数の微細構成体103の配置ピッチP1を変化させることで、赤色や黄色などの任意の色に発色させることが原理的に可能である。しかしながら、構造発色体101を任意の色に発色させるためには、配置ピッチP1を非常に高精度(光の波長以下)に調整する必要がある。従って、構造発色体101を任意の色に発色させること(例えば、青色と緑色の中間色を表現すること)は容易ではない。また、前記従来の構造発色体101においては、単一色を表現することは可能であるものの、部分的に異なる色を表現することはできない。
【0008】
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、光の反射、干渉、回折、散乱などの物理現象を利用して発色する構造発色体において、装飾効果をより一層向上させることができる構造発色体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、互いに異なる色に構造発色する複数の構造発色部を組み合わせて構成された、構造発色体を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、前記それぞれの構造発色部は、多数のセルで構成されている、第1態様に記載の構造発色体を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、前記複数の構造発色部は、赤色に構造発色する赤色セルの群と、緑色に構造発色する緑色セルの群と、青色に構造発色する青色セルの群とを含む、第2態様に記載の構造発色体を提供する。
【0012】
本発明の第4態様によれば、前記複数の構造発色部は、可視光を反射しないセル群又は可視光を全反射するセル群を含む、第2又は3態様に記載の構造発色体を提供する。
【0013】
本発明の第5態様によれば、前記それぞれのセルは、同一形状で且つ同一サイズである、第2〜4態様のいずれか1つに記載の構造発色体を提供する。
【0014】
本発明の第6態様によれば、前記それぞれのセルは、互いに重なることなく、隙間無く隣接して配置されている、第2〜5態様のいずれか1つに記載の構造発色体を提供する。
【0015】
本発明の第7態様によれば、互いに隣接する前記セルの間に非構造発色部を有する、第2〜6態様のいずれか1つに記載の構造発色体を提供する。
【0016】
本発明の第8態様によれば、前記非構造発色部の高さが、前記セルよりも高い、第7態様に記載の構造発色体を提供する
【0017】
本発明の第9態様によれば、前記非構造発色部は、可視光を反射しない構造を有している、第7態様に記載の構造発色体を提供する。
【0018】
本発明の第10態様によれば、構造発色体に対して凹凸反転形状を有する金型を用いて樹脂成形された、第1〜9態様のいずれか1つに記載の構造発色体を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の構造発色体によれば、互いに異なる色に構造発色する複数の構造発色部を組み合わせて構成されているので、例えば、ブラウン管テレビが赤色、緑色、青色の3色の蛍光体により多様な色の表現ができるのと同様に、各構造発色部の面積比率を変えることにより、多彩な色(中間色を含む3色以上の色)を表現することができる。これにより、装飾効果をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる構造発色体の単一セルの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる構造発色体の平面図である。
【図3A】図2の構造発色体の一部を製造する工程を模式的に示す図である。
【図3B】図3Aに続く工程を示す図である。
【図3C】図3Bに続く工程を示す図である。
【図4A】単一セルの形状の第1変形例を示す図である。
【図4B】単一セルの形状の第2変形例を示す図である。
【図4C】単一セルの形状の第3変形例を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる構造発色体の構成を示す説明図である。
【図6A】本発明の第2実施形態にかかる構造発色体の基本構成を模式的に示す斜視図である。
【図6B】図6AのA−A断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる構造発色体を異なる視野角から見たときの、視線と非構造発色部の立壁との関係を示す説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる構造発色体を手で触れたときの様子を示す説明図である。
【図9】金型に溝を形成するための加工装置の構成を示す斜視図である。
【図10】図9の加工装置が備える3軸工具ユニットの斜視図である。
【図11】図9の加工装置を用いて、金型に溝を加工する動作を示す模式説明図である。
【図12A】本発明の第2実施形態にかかる構造発色体の模式断面図である。
【図12B】図12Aの構造発色体を加工するための金型の模式断面図である。
【図13】赤色セルの加工時おける、工具の移動タイミングを示す説明図である。
【図14】従来の構造発色体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態にかかる構造発色体の構造について説明する。本発明の第1実施形態にかかる構造発色体は、互いに異なる色に構造発色する複数(ここでは一例として3つ)の構造発色部を組み合わせて構成されている。各構造発色部は、多数の単一セルで構成されている。図1は、本発明の第1実施形態にかかる構造発色体の単一セルを示す斜視図である。
【0023】
図1において、破線で囲まれた部分に位置する単一セル1は、光の反射、干渉、回折、散乱などの物理現象を利用して単一色に構造発色するように構成されている。具体的には、単一セル1は、構造発色体の基材に、複数の所定深さ寸法の溝を所定のピッチで規則的に形成した構造を有し、前記複数の溝により特定の波長の光を反射、干渉、回折、散乱等させることで構造発色するよう構成されている。この種の単一セル1においては、前記溝の配置ピッチを変化させることで、単一セル1を任意の色に発色させることが可能である。なお、単一セル1の構造は、前記構造に限定されるものではなく、単一色に構造発色する構造であれば他の構造であってもよい。
【0024】
また、単一セル1は、本第1実施形態にかかる構造発色体を1つの画面であると仮定した場合、1画素に相当する部分である。このため、単一セル1のサイズは、構造発色体のサイズに対して小さければ小さい程、いわゆる解像度を高くすることにつながるので好ましい。具体的には、単一セル1のサイズは、250μm角以下であることが好ましい。本第1実施形態においては、単一セル1は、約30μm角のサイズであるものとする。
【0025】
なお、屋外に設置するような巨大な構造物の外装部品として本構造発色体を使用する場合には、単一セル1のサイズが大きくても(例えば、10mm角であっても)、装飾性に支障は無いと考えられる。一方、単一セル1のサイズが可視光の波長よりも小さい場合には、構造発色体は構造発色しない。このため、単一セル1のサイズは、約1μm以上とする。
【0026】
図2は、図1の単一セル1を多数組み合わせて構成した本第1実施形態にかかる構造発色体の平面図である。図3A〜図3Cは、図2の構造発色体を製造する工程を模式的に示す図である。ここで、単一セル1のサイズは、前述したように、本構造発色体の全体のサイズに対して非常に小さく設定されている。このため、図3A〜図3Cでは、図2の点a1,b1,c1,d1を結ぶ実線で囲まれた領域を拡大して示すようにしている。
【0027】
本第1実施形態にかかる構造発色体は、以下のようにして製造される。
まず、図2に示す所望の図柄を、赤色、緑色、及び青色の3色に色分解する。
次いで、前記色分解により得られた情報に基づいて、赤色に構造発色する単一セルである赤色セルR、緑色に構造発色する単一セルである緑色セルG、及び青色に構造発色する単一セルである青色セルBをどの位置に形成するかを設計する。
【0028】
次いで、図3A〜図3Cに示すように、赤色セルR、緑色セルG、及び青色セルBを、それぞれ順に、前記設計した位置に形成する。なお、点a1,b1,c1,d1を結ぶ実線で囲まれた領域以外の領域についても、図3A〜図3Cに示すようにして、赤色セルR、緑色セルG、及び青色セルBを形成することは言うまでもない。また、赤色セルR、緑色セルG、及び青色セルBの形成順序は、特に限定されるものではなく、どのような順序で形成されてもよい。
【0029】
前記のようにして、複数の構造発色部として、赤色に構造発色する赤色セルRの群と、緑色に構造発色する緑色セルGの群と、青色に構造発色する青色セルBの群とを有する、本第1実施形態にかかる構造発色体が製造される。
【0030】
本第1実施形態によれば、塗料や染料などの色素を使用することなく、赤色セルR、緑色セルG、及び青色セルBの3色のセルを組み合わせて構造発色体を構成するようにしているので、それらのセルの面積比率を変えることにより、多彩な色(中間色を含む3色以上の色)を表現することができる。これにより、装飾効果をより一層向上させることができる。これは、例えば、ブラウン管テレビが赤色、緑色、青色の3色の蛍光体により多様な色の表現ができるのと同様である。なお、本第1実施形態において、赤色セルR、緑色セルG、及び青色セルBは、互いに重ならないように形成される。
【0031】
なお、本発明は前記第1実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記第1実施形態では、赤色セルR、緑色セルG、及び青色セルBの3色のセルを組み合わせて構造発色体を構成する例について説明したが、本発明はこれに限定さない。例えば、前記3色以外の色に構造発色するセルや、黒色を表現するのに都合の良い可視光を反射しないセル、白色を表現するのに都合の良い可視光を全反射するセルなどを用いて構造発色体を構成してもよい。これにより、装飾効果をより一層向上させることができる。また、3色のセルを組み合わせる必要はなく、2色のセルを組み合わせて構造発色体を構成するようにしてもよい。これにより、製造コストを抑えることができる。
【0032】
また、図3A〜図3Cでは、各セルR,G,Bの形状をそれぞれ正方形として示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図4Aに示すように、三角形であってもよい。また、図4Bに示すように、六角形であってもよい。さらに、図4Cに示すように、円形であってもよい。なお、各セルR,G,Bは、それぞれ同一形状及び同一サイズであることが好ましい。これにより、各セルR,G,Bを組み合わせて中間色を表現することが容易となるとともに、設計変更が容易となるので汎用性を向上させることができる。また、各セルR,G,Bは、図4A及び図4Bに示すように、互いに重なることなく、隙間無く隣接して配置することができる形状であることが好ましい。これにより、発色効率を高くすることができる。
【0033】
また、前記第1実施形態では、多数の単一セル1により構造発色部を構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、1つの単一セル1により構造発色部を構成してもよい。この場合でも、従来の構造発色体よりも装飾効果は高くなる。
【0034】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態にかかる構造発色体について説明する。図5は、本発明の第2実施形態にかかる構造発色体の構成を示す説明図である。図6Aは、本発明の第2実施形態にかかる構造発色体の基本構成を示す斜視図であり、図6Bは、図6AのA−A断面図である。本第2実施形態にかかる構造発色体が、前記第1実施形態の構造発色体と異なる点は、互いに隣接する単一セル1の間に非構造発色部2が設けられている点である。
【0035】
例えば、前記第1実施形態のように、構造発色体の基材に複数の溝を所定のピッチで形成(加工)することにより単一セル1を形成する場合、特に、互いに異なる色に構造発色する単一セル同士の境界部分において、未加工部分(溝が形成されていない部分)が生じてしまうことが有り得る。この未加工部分がランダムに発生すると、装飾効果が低下するおそれがある。
【0036】
このため、本第2実施形態にかかる構造発色体においては、図5及び図6Aに示すように、未加工部分である非構造発色部2を各単一セル1の全周に意図的に設けるようにしている。これにより、未加工部分がランダムに発生することによる装飾効果の低下を抑えることができる。また、各単一セル1がそれぞれ独立した構成となることにより、個々の色の滲みが少なくなり、単色としての色の純度が高くなる。従って、高度な色表現が可能となり、装飾効果を一層向上させることができる。
【0037】
また、本第2実施形態において、非構造発色部2の頂部2aを、可視光を反射しないように構成すれば、単一セル1の構造発色がより効果的に見え、装飾効果をより一層向上させることができる。
【0038】
また、本第2実施形態において、非構造発色部2は、図6Bに示すように、頂部2aが単一セル1よりも高くなるように形成されている。これにより、図7に示すように、本第2実施形態にかかる構造発色体を斜め方向から見た場合、非構造発色部2の立壁の高さにより、単一セル1が見える位置と、見えない位置とが発生する。すなわち、視野角βが小さい位置では単一セル1が見える一方、視野角βが大きい位置では非構造発色部2の立壁に遮られて単一セル1が見えなくなる。従って、非構造発色部2の立壁の高さを調整することにより、単一セル1が見える視野角βを制御することができる。これにより、高度な色表現が可能となり、装飾効果をより一層向上させることができる。
【0039】
また、非構造発色部2の立壁は、図8に示すように、本第2実施形態にかかる構造発色体の表面を手で触った場合に、単一セル1に手が直接触れることを防ぐのに役立つ。これにより、単一セル1が傷ついたり、汚れたりすることを抑えて、長期間の使用による装飾効果の低下を抑えることができる。
【0040】
本第2実施形態にかかる構造発色体は、当該構造発色体に対して凹凸反転形状を有する金型を用いて樹脂成形することにより製造することができる。金型を用いることで、多数の構造発色体を、容易に得ることができるとともに安価に製造することができる。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、構造発色体の基材に対して直接加工することにより、本第2実施形態にかかる構造発色体を製造しても良い。
【0041】
次に、本第2実施形態にかかる構造発色体の製造に用いる金型の製造方法について説明する。図9は、金型に溝を形成するための加工装置の構成を示す斜視図である。図10は、図9の加工装置が備える3軸工具ユニットの斜視図である。
【0042】
なお、本第2実施形態にかかる構造発色体は、例えば約30μm角の微細な単一セル1を多数組み合わせることにより構成されているので、金型への溝の加工には、例えばナノメートルオーダーの加工精度が求められる。以下に説明する加工装置10を用いて金型の溝を機械的に加工することは、加工時間の増大や工具の摩耗などの問題があるため、必ずしも好ましくはないが、設計変更が容易であるなどの利点がある。
【0043】
図9に示す加工装置10は、例えば1nmの分解能で動作可能な4軸(X,Y,Z,θ)制御の超精密加工装置である。加工装置10は、3軸工具ユニット20と、被加工物11に対して3軸工具ユニット20を互いに直交する3軸(X,Y,Z軸)方向に相対移動させる各テーブル12〜14とを備えている。各テーブルは、3軸工具ユニット20をX軸方向に移動させるX軸テーブル12と、3軸工具ユニット20をY軸方向に移動させるY軸テーブル13と、3軸工具ユニット20をZ軸方向に移動させるZ軸テーブル14とで構成されている。また、加工装置10は、被加工物11に対して3軸工具ユニット20を相対的に円運動させる回転ステージ15を備えている。3軸工具ユニット20、各テーブル12〜14、及び回転ステージ15は、制御部16に接続され、制御部16により、それらの動作を制御される。制御部16は、各テーブル12〜14及び回転ステージ15が所定の位置に到達したとき、予め記憶されたプログラムに基づいて、3軸工具ユニット20に所定の動作をさせるように構成されている。加工装置10の溝加工動作は、3軸工具ユニット20によって行われる。
【0044】
3軸工具ユニット20は、加工装置10と同様に、例えば1nmの分解能で動作可能に構成されている。3軸工具ユニット20は、図10に示すように、互いに直交する3軸(u,v,w)方向に動作するアクチュエータとしての圧電素子21〜23を備えている。これら3つの圧電素子21〜23の交点には、ツールホルダ24を介して工具(例えばダイヤモンド工具)25が取り付けられている。また、3軸工具ユニット20は、各圧電素子21〜23の動作変位を測長することを目的として、3つのギャップセンサ26〜28を備えている。各ギャップセンサ26〜28は、具体的には、工具25が取り付けられているツールホルダ24の変位を測長する。3つのギャップセンサ26〜28は、それらの延長線が一点に交わるように配置され、その交点に工具25の先端が位置している。また、3つのギャップセンサ26〜28は、アッベ誤差が最小となるように配置されている。
【0045】
図11は、前記構成を有する加工装置10を用いて、金型に溝を加工する動作を模式的に示している。なお、金型の溝が、単一セル1の互いに隣接する溝間の凸部の形成に用いられ、金型の互いに隣接する溝間の凸部が、単一セル1の溝の形成に用いられることは言うまでもない。
【0046】
図11に示すように金型に溝を加工するには、例えば、次のような動作を行えばよい。
なお、金型への溝の加工動作は、予め記憶されたNCプログラムに基づいて、制御部16の制御の下で行われる。
【0047】
まず、Y軸テーブル13を駆動して、工具25を、溝加工始点位置の上方までY軸方向に移動させる。
次いで、Z軸テーブル14を駆動して、工具25を、金型と接触するまで下降させる。
次いで、Y軸テーブル13を駆動して、工具25を溝加工終点位置までY軸方向に移動させる。これにより、金型に一本の溝が形成される。
次いで、Z軸テーブル14を逆駆動して、工具25を溝加工終点位置の上方に退避させる。
次いで、Y軸テーブル13を駆動して、工具25を元の位置に戻す。
次いで、X軸テーブル12を駆動して、工具25を所定距離、X軸方向に移動させる。なお、前記所定距離が、単一セル1が発色する色に影響を与えることは言うまでもない。
以下、前記動作を繰り返すことで、金型に、単一セル1を形成するための複数本の溝が形成される。
【0048】
なお、前記のようにして形成される金型の溝の両端、すなわち、工具25の入口側(溝加工始点側)と出口側(溝加工終点側)には、図11に示すように、幅W1、W2のつなぎ目が生じる。これらのつなぎ目の幅W1、W2は、加工装置10による加工においては、約5μm程度である。例えば、前記第1実施形態のように、単一セル1同士が非構造発色部2を介さず隣接する構成の構造発色体においては、これらのつなぎ目が装飾効果を低下させるおそれがある。
【0049】
以下に、前記つなぎ目を生じさせない加工方法について説明する。
【0050】
図12Aは、本発明の第2実施形態にかかる構造発色体の模式断面図である。図12Bは、図12Aの構造発色体を加工するための金型の模式断面図である。図12A及び図12Bから分かるように、金型30は、構造発色体の単一セル1に対応する位置に凸部31R,31B,又は31Gを有し、非構造発色部2に対応する位置に凹部32を有するように形成されている。凸部31Rは、赤色セルRを加工するものであり、凸部31Bは、青色セルBを加工するものであり、凸部31Gは、緑色セルGを加工するものである。なお、凹部32の加工方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、シェーパー加工、エンドミル加工などの機械加工や、レーザ加工などを利用することができる。
【0051】
図13は、赤色セルRの加工時おける、工具25の移動タイミング(ここでは、Y軸テーブル13及びZ軸テーブル14の駆動タイミング)を示す説明図である。図13から分かるように、工具25を上下動させる位置は、凹部31に対応する位置としている。これにより、工具25が凸部31Rを加工している間は、工具25の高さを一定にすることができ、工具25が上下動した痕跡、すなわちつなぎ目を無くすことができる。
【0052】
なお、前記では、金型に溝を加工するのに、超精密機械加工装置である加工装置10を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、レーザ加工や,半導体のリソグラフィ技術を応用した加工技術を用いてもよい。
【0053】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明にかかる構造発色体は、装飾効果をより一層向上させることができるので、例えば、テレビジョンやカメラなどの電化製品の外装部品等として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 単一セル
2 頂部
10 加工装置
11 被加工物
12 X軸テーブル
13 Y軸テーブル
14 Z軸テーブル
15 回転ステージ
21〜23 圧電素子
24 ツールホルダ
25 工具
26〜28 ギャップセンサ
30 金型
31R,31B,31G 凸部
32 凹部
R 赤色セル
G 緑色セル
B 青色セル
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の反射、干渉、回折、散乱などの物理現象を利用して発色する構造発色体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の構造発色体は、種々の構造のものが知られている。例えば、従来の構造発色体として、特許文献1に記載されたものがある。図14は、特許文献1に記載された従来の構造発色体の断面図である。
【0003】
図14において、従来の構造発色体101は、光透過性を有する構成体102と、複数の微細構成体103とを有している。複数の微細構成体103は、構成体102と屈折率が異なる材料で構成され、構成体102中に規則的に配置されている。また、複数の微細構成体103は、x方向の軸に対して角度θ1傾斜した複数の仮想線A1のそれぞれに沿って、一定のピッチP1で配置されている。
【0004】
前記構成を有する従来の構造発色体101において、構成体102の材料として平均屈折率1.62のポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、微細構成体103の材料として平均屈折率1.53のナイロン6(Ny6)を用い、微細構成体103の平均直径D1を0.19μmとし、ピッチP1を0.28とし、角度θ1を32°とし、入射光L1を入射角α1=45°で照射して、受光角度β1=45°で目視により観察した場合、構造発色体101は紫青色に発色して見える。また、受光角度β1を変えて目視により構造発色体101を観察した場合には、構造発色体101は、紫青色から赤緑色に変化して見える。
【0005】
従来の構造発色体101によれば、顔料や染料などの色素を使用せずに色を表現することができるので、色素塗布工程を無くして製造工程の短縮を図ることができるとともに、有機溶剤系塗料を使う必要がないのでCO2の削減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−151271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の構造発色体101を、カメラやテレビジョンなどの電化製品の外装部品などとして使用する場合には、その装飾効果が限定的である。すなわち、従来の構造発色体101においては、複数の微細構成体103の配置ピッチP1を変化させることで、赤色や黄色などの任意の色に発色させることが原理的に可能である。しかしながら、構造発色体101を任意の色に発色させるためには、配置ピッチP1を非常に高精度(光の波長以下)に調整する必要がある。従って、構造発色体101を任意の色に発色させること(例えば、青色と緑色の中間色を表現すること)は容易ではない。また、前記従来の構造発色体101においては、単一色を表現することは可能であるものの、部分的に異なる色を表現することはできない。
【0008】
従って、本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、光の反射、干渉、回折、散乱などの物理現象を利用して発色する構造発色体において、装飾効果をより一層向上させることができる構造発色体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、互いに異なる色に構造発色する複数の構造発色部を組み合わせて構成された、構造発色体を提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、前記それぞれの構造発色部は、多数のセルで構成されている、第1態様に記載の構造発色体を提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、前記複数の構造発色部は、赤色に構造発色する赤色セルの群と、緑色に構造発色する緑色セルの群と、青色に構造発色する青色セルの群とを含む、第2態様に記載の構造発色体を提供する。
【0012】
本発明の第4態様によれば、前記複数の構造発色部は、可視光を反射しないセル群又は可視光を全反射するセル群を含む、第2又は3態様に記載の構造発色体を提供する。
【0013】
本発明の第5態様によれば、前記それぞれのセルは、同一形状で且つ同一サイズである、第2〜4態様のいずれか1つに記載の構造発色体を提供する。
【0014】
本発明の第6態様によれば、前記それぞれのセルは、互いに重なることなく、隙間無く隣接して配置されている、第2〜5態様のいずれか1つに記載の構造発色体を提供する。
【0015】
本発明の第7態様によれば、互いに隣接する前記セルの間に非構造発色部を有する、第2〜6態様のいずれか1つに記載の構造発色体を提供する。
【0016】
本発明の第8態様によれば、前記非構造発色部の高さが、前記セルよりも高い、第7態様に記載の構造発色体を提供する
【0017】
本発明の第9態様によれば、前記非構造発色部は、可視光を反射しない構造を有している、第7態様に記載の構造発色体を提供する。
【0018】
本発明の第10態様によれば、構造発色体に対して凹凸反転形状を有する金型を用いて樹脂成形された、第1〜9態様のいずれか1つに記載の構造発色体を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の構造発色体によれば、互いに異なる色に構造発色する複数の構造発色部を組み合わせて構成されているので、例えば、ブラウン管テレビが赤色、緑色、青色の3色の蛍光体により多様な色の表現ができるのと同様に、各構造発色部の面積比率を変えることにより、多彩な色(中間色を含む3色以上の色)を表現することができる。これにより、装飾効果をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる構造発色体の単一セルの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる構造発色体の平面図である。
【図3A】図2の構造発色体の一部を製造する工程を模式的に示す図である。
【図3B】図3Aに続く工程を示す図である。
【図3C】図3Bに続く工程を示す図である。
【図4A】単一セルの形状の第1変形例を示す図である。
【図4B】単一セルの形状の第2変形例を示す図である。
【図4C】単一セルの形状の第3変形例を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる構造発色体の構成を示す説明図である。
【図6A】本発明の第2実施形態にかかる構造発色体の基本構成を模式的に示す斜視図である。
【図6B】図6AのA−A断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる構造発色体を異なる視野角から見たときの、視線と非構造発色部の立壁との関係を示す説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態にかかる構造発色体を手で触れたときの様子を示す説明図である。
【図9】金型に溝を形成するための加工装置の構成を示す斜視図である。
【図10】図9の加工装置が備える3軸工具ユニットの斜視図である。
【図11】図9の加工装置を用いて、金型に溝を加工する動作を示す模式説明図である。
【図12A】本発明の第2実施形態にかかる構造発色体の模式断面図である。
【図12B】図12Aの構造発色体を加工するための金型の模式断面図である。
【図13】赤色セルの加工時おける、工具の移動タイミングを示す説明図である。
【図14】従来の構造発色体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態にかかる構造発色体の構造について説明する。本発明の第1実施形態にかかる構造発色体は、互いに異なる色に構造発色する複数(ここでは一例として3つ)の構造発色部を組み合わせて構成されている。各構造発色部は、多数の単一セルで構成されている。図1は、本発明の第1実施形態にかかる構造発色体の単一セルを示す斜視図である。
【0023】
図1において、破線で囲まれた部分に位置する単一セル1は、光の反射、干渉、回折、散乱などの物理現象を利用して単一色に構造発色するように構成されている。具体的には、単一セル1は、構造発色体の基材に、複数の所定深さ寸法の溝を所定のピッチで規則的に形成した構造を有し、前記複数の溝により特定の波長の光を反射、干渉、回折、散乱等させることで構造発色するよう構成されている。この種の単一セル1においては、前記溝の配置ピッチを変化させることで、単一セル1を任意の色に発色させることが可能である。なお、単一セル1の構造は、前記構造に限定されるものではなく、単一色に構造発色する構造であれば他の構造であってもよい。
【0024】
また、単一セル1は、本第1実施形態にかかる構造発色体を1つの画面であると仮定した場合、1画素に相当する部分である。このため、単一セル1のサイズは、構造発色体のサイズに対して小さければ小さい程、いわゆる解像度を高くすることにつながるので好ましい。具体的には、単一セル1のサイズは、250μm角以下であることが好ましい。本第1実施形態においては、単一セル1は、約30μm角のサイズであるものとする。
【0025】
なお、屋外に設置するような巨大な構造物の外装部品として本構造発色体を使用する場合には、単一セル1のサイズが大きくても(例えば、10mm角であっても)、装飾性に支障は無いと考えられる。一方、単一セル1のサイズが可視光の波長よりも小さい場合には、構造発色体は構造発色しない。このため、単一セル1のサイズは、約1μm以上とする。
【0026】
図2は、図1の単一セル1を多数組み合わせて構成した本第1実施形態にかかる構造発色体の平面図である。図3A〜図3Cは、図2の構造発色体を製造する工程を模式的に示す図である。ここで、単一セル1のサイズは、前述したように、本構造発色体の全体のサイズに対して非常に小さく設定されている。このため、図3A〜図3Cでは、図2の点a1,b1,c1,d1を結ぶ実線で囲まれた領域を拡大して示すようにしている。
【0027】
本第1実施形態にかかる構造発色体は、以下のようにして製造される。
まず、図2に示す所望の図柄を、赤色、緑色、及び青色の3色に色分解する。
次いで、前記色分解により得られた情報に基づいて、赤色に構造発色する単一セルである赤色セルR、緑色に構造発色する単一セルである緑色セルG、及び青色に構造発色する単一セルである青色セルBをどの位置に形成するかを設計する。
【0028】
次いで、図3A〜図3Cに示すように、赤色セルR、緑色セルG、及び青色セルBを、それぞれ順に、前記設計した位置に形成する。なお、点a1,b1,c1,d1を結ぶ実線で囲まれた領域以外の領域についても、図3A〜図3Cに示すようにして、赤色セルR、緑色セルG、及び青色セルBを形成することは言うまでもない。また、赤色セルR、緑色セルG、及び青色セルBの形成順序は、特に限定されるものではなく、どのような順序で形成されてもよい。
【0029】
前記のようにして、複数の構造発色部として、赤色に構造発色する赤色セルRの群と、緑色に構造発色する緑色セルGの群と、青色に構造発色する青色セルBの群とを有する、本第1実施形態にかかる構造発色体が製造される。
【0030】
本第1実施形態によれば、塗料や染料などの色素を使用することなく、赤色セルR、緑色セルG、及び青色セルBの3色のセルを組み合わせて構造発色体を構成するようにしているので、それらのセルの面積比率を変えることにより、多彩な色(中間色を含む3色以上の色)を表現することができる。これにより、装飾効果をより一層向上させることができる。これは、例えば、ブラウン管テレビが赤色、緑色、青色の3色の蛍光体により多様な色の表現ができるのと同様である。なお、本第1実施形態において、赤色セルR、緑色セルG、及び青色セルBは、互いに重ならないように形成される。
【0031】
なお、本発明は前記第1実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記第1実施形態では、赤色セルR、緑色セルG、及び青色セルBの3色のセルを組み合わせて構造発色体を構成する例について説明したが、本発明はこれに限定さない。例えば、前記3色以外の色に構造発色するセルや、黒色を表現するのに都合の良い可視光を反射しないセル、白色を表現するのに都合の良い可視光を全反射するセルなどを用いて構造発色体を構成してもよい。これにより、装飾効果をより一層向上させることができる。また、3色のセルを組み合わせる必要はなく、2色のセルを組み合わせて構造発色体を構成するようにしてもよい。これにより、製造コストを抑えることができる。
【0032】
また、図3A〜図3Cでは、各セルR,G,Bの形状をそれぞれ正方形として示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図4Aに示すように、三角形であってもよい。また、図4Bに示すように、六角形であってもよい。さらに、図4Cに示すように、円形であってもよい。なお、各セルR,G,Bは、それぞれ同一形状及び同一サイズであることが好ましい。これにより、各セルR,G,Bを組み合わせて中間色を表現することが容易となるとともに、設計変更が容易となるので汎用性を向上させることができる。また、各セルR,G,Bは、図4A及び図4Bに示すように、互いに重なることなく、隙間無く隣接して配置することができる形状であることが好ましい。これにより、発色効率を高くすることができる。
【0033】
また、前記第1実施形態では、多数の単一セル1により構造発色部を構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、1つの単一セル1により構造発色部を構成してもよい。この場合でも、従来の構造発色体よりも装飾効果は高くなる。
【0034】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態にかかる構造発色体について説明する。図5は、本発明の第2実施形態にかかる構造発色体の構成を示す説明図である。図6Aは、本発明の第2実施形態にかかる構造発色体の基本構成を示す斜視図であり、図6Bは、図6AのA−A断面図である。本第2実施形態にかかる構造発色体が、前記第1実施形態の構造発色体と異なる点は、互いに隣接する単一セル1の間に非構造発色部2が設けられている点である。
【0035】
例えば、前記第1実施形態のように、構造発色体の基材に複数の溝を所定のピッチで形成(加工)することにより単一セル1を形成する場合、特に、互いに異なる色に構造発色する単一セル同士の境界部分において、未加工部分(溝が形成されていない部分)が生じてしまうことが有り得る。この未加工部分がランダムに発生すると、装飾効果が低下するおそれがある。
【0036】
このため、本第2実施形態にかかる構造発色体においては、図5及び図6Aに示すように、未加工部分である非構造発色部2を各単一セル1の全周に意図的に設けるようにしている。これにより、未加工部分がランダムに発生することによる装飾効果の低下を抑えることができる。また、各単一セル1がそれぞれ独立した構成となることにより、個々の色の滲みが少なくなり、単色としての色の純度が高くなる。従って、高度な色表現が可能となり、装飾効果を一層向上させることができる。
【0037】
また、本第2実施形態において、非構造発色部2の頂部2aを、可視光を反射しないように構成すれば、単一セル1の構造発色がより効果的に見え、装飾効果をより一層向上させることができる。
【0038】
また、本第2実施形態において、非構造発色部2は、図6Bに示すように、頂部2aが単一セル1よりも高くなるように形成されている。これにより、図7に示すように、本第2実施形態にかかる構造発色体を斜め方向から見た場合、非構造発色部2の立壁の高さにより、単一セル1が見える位置と、見えない位置とが発生する。すなわち、視野角βが小さい位置では単一セル1が見える一方、視野角βが大きい位置では非構造発色部2の立壁に遮られて単一セル1が見えなくなる。従って、非構造発色部2の立壁の高さを調整することにより、単一セル1が見える視野角βを制御することができる。これにより、高度な色表現が可能となり、装飾効果をより一層向上させることができる。
【0039】
また、非構造発色部2の立壁は、図8に示すように、本第2実施形態にかかる構造発色体の表面を手で触った場合に、単一セル1に手が直接触れることを防ぐのに役立つ。これにより、単一セル1が傷ついたり、汚れたりすることを抑えて、長期間の使用による装飾効果の低下を抑えることができる。
【0040】
本第2実施形態にかかる構造発色体は、当該構造発色体に対して凹凸反転形状を有する金型を用いて樹脂成形することにより製造することができる。金型を用いることで、多数の構造発色体を、容易に得ることができるとともに安価に製造することができる。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、構造発色体の基材に対して直接加工することにより、本第2実施形態にかかる構造発色体を製造しても良い。
【0041】
次に、本第2実施形態にかかる構造発色体の製造に用いる金型の製造方法について説明する。図9は、金型に溝を形成するための加工装置の構成を示す斜視図である。図10は、図9の加工装置が備える3軸工具ユニットの斜視図である。
【0042】
なお、本第2実施形態にかかる構造発色体は、例えば約30μm角の微細な単一セル1を多数組み合わせることにより構成されているので、金型への溝の加工には、例えばナノメートルオーダーの加工精度が求められる。以下に説明する加工装置10を用いて金型の溝を機械的に加工することは、加工時間の増大や工具の摩耗などの問題があるため、必ずしも好ましくはないが、設計変更が容易であるなどの利点がある。
【0043】
図9に示す加工装置10は、例えば1nmの分解能で動作可能な4軸(X,Y,Z,θ)制御の超精密加工装置である。加工装置10は、3軸工具ユニット20と、被加工物11に対して3軸工具ユニット20を互いに直交する3軸(X,Y,Z軸)方向に相対移動させる各テーブル12〜14とを備えている。各テーブルは、3軸工具ユニット20をX軸方向に移動させるX軸テーブル12と、3軸工具ユニット20をY軸方向に移動させるY軸テーブル13と、3軸工具ユニット20をZ軸方向に移動させるZ軸テーブル14とで構成されている。また、加工装置10は、被加工物11に対して3軸工具ユニット20を相対的に円運動させる回転ステージ15を備えている。3軸工具ユニット20、各テーブル12〜14、及び回転ステージ15は、制御部16に接続され、制御部16により、それらの動作を制御される。制御部16は、各テーブル12〜14及び回転ステージ15が所定の位置に到達したとき、予め記憶されたプログラムに基づいて、3軸工具ユニット20に所定の動作をさせるように構成されている。加工装置10の溝加工動作は、3軸工具ユニット20によって行われる。
【0044】
3軸工具ユニット20は、加工装置10と同様に、例えば1nmの分解能で動作可能に構成されている。3軸工具ユニット20は、図10に示すように、互いに直交する3軸(u,v,w)方向に動作するアクチュエータとしての圧電素子21〜23を備えている。これら3つの圧電素子21〜23の交点には、ツールホルダ24を介して工具(例えばダイヤモンド工具)25が取り付けられている。また、3軸工具ユニット20は、各圧電素子21〜23の動作変位を測長することを目的として、3つのギャップセンサ26〜28を備えている。各ギャップセンサ26〜28は、具体的には、工具25が取り付けられているツールホルダ24の変位を測長する。3つのギャップセンサ26〜28は、それらの延長線が一点に交わるように配置され、その交点に工具25の先端が位置している。また、3つのギャップセンサ26〜28は、アッベ誤差が最小となるように配置されている。
【0045】
図11は、前記構成を有する加工装置10を用いて、金型に溝を加工する動作を模式的に示している。なお、金型の溝が、単一セル1の互いに隣接する溝間の凸部の形成に用いられ、金型の互いに隣接する溝間の凸部が、単一セル1の溝の形成に用いられることは言うまでもない。
【0046】
図11に示すように金型に溝を加工するには、例えば、次のような動作を行えばよい。
なお、金型への溝の加工動作は、予め記憶されたNCプログラムに基づいて、制御部16の制御の下で行われる。
【0047】
まず、Y軸テーブル13を駆動して、工具25を、溝加工始点位置の上方までY軸方向に移動させる。
次いで、Z軸テーブル14を駆動して、工具25を、金型と接触するまで下降させる。
次いで、Y軸テーブル13を駆動して、工具25を溝加工終点位置までY軸方向に移動させる。これにより、金型に一本の溝が形成される。
次いで、Z軸テーブル14を逆駆動して、工具25を溝加工終点位置の上方に退避させる。
次いで、Y軸テーブル13を駆動して、工具25を元の位置に戻す。
次いで、X軸テーブル12を駆動して、工具25を所定距離、X軸方向に移動させる。なお、前記所定距離が、単一セル1が発色する色に影響を与えることは言うまでもない。
以下、前記動作を繰り返すことで、金型に、単一セル1を形成するための複数本の溝が形成される。
【0048】
なお、前記のようにして形成される金型の溝の両端、すなわち、工具25の入口側(溝加工始点側)と出口側(溝加工終点側)には、図11に示すように、幅W1、W2のつなぎ目が生じる。これらのつなぎ目の幅W1、W2は、加工装置10による加工においては、約5μm程度である。例えば、前記第1実施形態のように、単一セル1同士が非構造発色部2を介さず隣接する構成の構造発色体においては、これらのつなぎ目が装飾効果を低下させるおそれがある。
【0049】
以下に、前記つなぎ目を生じさせない加工方法について説明する。
【0050】
図12Aは、本発明の第2実施形態にかかる構造発色体の模式断面図である。図12Bは、図12Aの構造発色体を加工するための金型の模式断面図である。図12A及び図12Bから分かるように、金型30は、構造発色体の単一セル1に対応する位置に凸部31R,31B,又は31Gを有し、非構造発色部2に対応する位置に凹部32を有するように形成されている。凸部31Rは、赤色セルRを加工するものであり、凸部31Bは、青色セルBを加工するものであり、凸部31Gは、緑色セルGを加工するものである。なお、凹部32の加工方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、シェーパー加工、エンドミル加工などの機械加工や、レーザ加工などを利用することができる。
【0051】
図13は、赤色セルRの加工時おける、工具25の移動タイミング(ここでは、Y軸テーブル13及びZ軸テーブル14の駆動タイミング)を示す説明図である。図13から分かるように、工具25を上下動させる位置は、凹部31に対応する位置としている。これにより、工具25が凸部31Rを加工している間は、工具25の高さを一定にすることができ、工具25が上下動した痕跡、すなわちつなぎ目を無くすことができる。
【0052】
なお、前記では、金型に溝を加工するのに、超精密機械加工装置である加工装置10を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、レーザ加工や,半導体のリソグラフィ技術を応用した加工技術を用いてもよい。
【0053】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明にかかる構造発色体は、装飾効果をより一層向上させることができるので、例えば、テレビジョンやカメラなどの電化製品の外装部品等として有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 単一セル
2 頂部
10 加工装置
11 被加工物
12 X軸テーブル
13 Y軸テーブル
14 Z軸テーブル
15 回転ステージ
21〜23 圧電素子
24 ツールホルダ
25 工具
26〜28 ギャップセンサ
30 金型
31R,31B,31G 凸部
32 凹部
R 赤色セル
G 緑色セル
B 青色セル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる色に構造発色する複数の構造発色部を組み合わせて構成された、構造発色体。
【請求項2】
前記それぞれの構造発色部は、多数のセルで構成されている、請求項1に記載の構造発色体。
【請求項3】
前記複数の構造発色部は、赤色に構造発色する赤色セルの群と、緑色に構造発色する緑色セルの群と、青色に構造発色する青色セルの群とを含む、請求項2に記載の構造発色体。
【請求項4】
前記複数の構造発色部は、可視光を反射しないセル群又は可視光を全反射するセル群を含む、請求項2又は3に記載の構造発色体。
【請求項5】
前記それぞれのセルは、同一形状で且つ同一サイズである、請求項2〜4のいずれか1つに記載の構造発色体。
【請求項6】
前記それぞれのセルは、互いに重なることなく、隙間無く隣接して配置されている、請求項2〜5のいずれか1つに記載の構造発色体。
【請求項7】
互いに隣接する前記セルの間に非構造発色部を有する、請求項2〜6のいずれか1つに記載の構造発色体。
【請求項8】
前記非構造発色部の高さが、前記セルよりも高い、請求項7に記載の構造発色体。
【請求項9】
前記非構造発色部は、可視光を反射しない構造を有している、請求項7に記載の構造発色体。
【請求項10】
構造発色体に対して凹凸反転形状を有する金型を用いて樹脂成形された、請求項1〜9のいずれか1つに記載の構造発色体。
【請求項1】
互いに異なる色に構造発色する複数の構造発色部を組み合わせて構成された、構造発色体。
【請求項2】
前記それぞれの構造発色部は、多数のセルで構成されている、請求項1に記載の構造発色体。
【請求項3】
前記複数の構造発色部は、赤色に構造発色する赤色セルの群と、緑色に構造発色する緑色セルの群と、青色に構造発色する青色セルの群とを含む、請求項2に記載の構造発色体。
【請求項4】
前記複数の構造発色部は、可視光を反射しないセル群又は可視光を全反射するセル群を含む、請求項2又は3に記載の構造発色体。
【請求項5】
前記それぞれのセルは、同一形状で且つ同一サイズである、請求項2〜4のいずれか1つに記載の構造発色体。
【請求項6】
前記それぞれのセルは、互いに重なることなく、隙間無く隣接して配置されている、請求項2〜5のいずれか1つに記載の構造発色体。
【請求項7】
互いに隣接する前記セルの間に非構造発色部を有する、請求項2〜6のいずれか1つに記載の構造発色体。
【請求項8】
前記非構造発色部の高さが、前記セルよりも高い、請求項7に記載の構造発色体。
【請求項9】
前記非構造発色部は、可視光を反射しない構造を有している、請求項7に記載の構造発色体。
【請求項10】
構造発色体に対して凹凸反転形状を有する金型を用いて樹脂成形された、請求項1〜9のいずれか1つに記載の構造発色体。
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図1】
【図2】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図1】
【図2】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−264708(P2010−264708A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119584(P2009−119584)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
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