説明

構造解析装置及び構造解析方法

【課題】構造物を数値解析する構造解析装置及び構造解析方法において、構造物の設計から評価までの作業量及び時間を削減して作業効率を向上する。
【解決手段】構造物を数値解析する構造解析装置であって、上記構造物に作用する一次応力及び二次応力と上記構造物のクリープ寿命とが関連付けられた応力寿命関連データを記憶する記憶手段4と、上記応力寿命関連データに基づいて上記構造物の特性を算出する算出手段5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物を数値解析する構造解析装置及び構造解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ボイラ等に用いられるクリープ速度の低下が大きい配管(例えば高Cr鋼によって形成された配管)の寿命や許容応力を予測するために、いわゆる有限要素法を用いた構造解析を行って配管のクリープ寿命を算出し、当該クリープ寿命を用いて配管の寿命や許容応力を算出する方法が用いられている。
【0003】
例えば、実際に有限要素法を用いてボイラ配管の解析を行う場合には、まずボイラ配管を複数の要素に仮想的に分割すると共に、各要素の境界条件等を含む計算条件やボイラ配管の材料データを設定することによってボイラ配管をモデル化し、各要素に作用する応力を算出する。そして、この各要素に作用する応力の時間履歴からクリープ寿命が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−271396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の有限要素法を用いたボイラ配管の構造解析は、まずボイラ配管の設計がなされ、このボイラ配管をモデル化して行っている。このため、ボイラ配管の設計変更がなされた場合には、その都度、煩雑なモデル化作業や時間がかかる応力の時間履歴の算出を行う必要が生じる。有限要素法を用いたボイラ配管の構造解析を行う必要がある。したがって、従来のボイラ配管の構造解析は、作業効率が非常に悪い。特に、予め定められた寿命を満足する許容応力を算出する場合には、計算条件を換えて繰り返し有限要素法による構造解析を行う必要があり、極めて作業効率が悪い。
【0006】
なお、このような有限要素法を用いた構造解析は、ボイラの配管のみを解析対象とするものではなく、構造物の数値解析に広く用いられている。そして、どのような構造物に対する数値解析であっても、構造物の設計変更の度に有限要素法を用いた構造解析を行うとなると、煩雑な作業及び膨大な時間を必要とするために、設計から評価までの作業効率が非常に悪化することとなる。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、構造物を数値解析する構造解析装置及び構造解析方法において、構造物の設計から評価までの作業量及び時間を削減して作業効率を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
第1の発明は、構造物を数値解析する構造解析装置であって、上記構造物に作用する一次応力及び二次応力と上記構造物のクリープ寿命とが関連付けられた応力寿命関連データを記憶する記憶手段と、上記応力寿命関連データに基づいて上記構造物の特性を算出する算出手段とを備えるという構成を採用する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記記憶手段が、上記構造物の温度をパラメータとして複数の上記応力寿命関連データを記憶しているという構成を採用する。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記構造物を模擬したモデルを用い、上記クリープ寿命、上記一次応力及び上記二次応力がパラメータとされた有限要素法解析を行うことによって上記応力寿命関連データを作成するデータ作成手段を備えるという構成を採用する。
【0012】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記データ作成手段が、上記モデルを構成する要素のうち最も引張応力が大きく作用する要素を用い、上記クリープ寿命、上記一次応力及び上記二次応力がパラメータとされた有限要素法解析を行うという構成を採用する。
【0013】
第5の発明は、構造物の数値解析する構造解析方法であって、上記構造物に作用する一次応力及び二次応力と上記構造物のクリープ寿命とが関連付けられた応力寿命関連データに基づいて上記構造物の特性を算出するという構成を採用する。
【0014】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記構造物の温度をパラメータとする複数の上記応力寿命関連データを有し、上記構造物の測定温度に基づいて上記応力損傷関連データを選択し、選択された上記応力損傷関連データに基づいて上記構造物の特性を算出するという構成を採用する。
【0015】
第7の発明は、上記第5または第6の発明において、上記構造物を模擬したモデルを用い、上記クリープ寿命、上記一次応力及び上記二次応力がパラメータとされた有限要素法解析を行うことによって上記応力寿命関連データを作成するという構成を採用する。
【0016】
第8の発明は、上記第7の発明において、上記モデルを構成する要素のうち最も引張応力が大きく作用する要素を用い、上記クリープ寿命、上記一次応力及び上記二次応力がパラメータとされた有限要素法解析を行うという構成を採用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、構造物に作用する一次応力及び二次応力と構造物のクリープ寿命とが関連付けられた応力寿命関連データが予め記憶され、当該応力寿命関連データに基づいて構造物の特性が解析される。
そして、本発明によれば、応力寿命関連データを用いることによって、一次応力及び二次応力からクリープ寿命を容易に算出でき、またクリープ寿命から一次応力及び二次応力を容易に算出することができる。
なお、一次応力とは構造物(あるいは構造物の一部)に一様に加わる荷重によって発生する応力を意味する。また、二次応力とは構造物(あるいは構造物の一部)が自由な変形を拘束されることによって発生する応力を意味し、例えば固定された構造物が熱膨張する際に構造物に作用する応力である。そして、これらの一次応力及び二次応力は、簡易算出式や既存の計算プログラムを用いることによって短時間で容易に取得することが可能である。
【0018】
このように、本発明によれば、応力寿命関連データを用いることによって、構造物の特性を容易に算出することができ、構造物の設計から評価までの作業量及び時間を削減して作業効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態における構造解析装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態における構造解析装置において応力寿命関連データの作成に用いられるモデルを示す図である。
【図3】本発明の一実施形態における構造解析装置において構造物の寿命を算出するための動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態における構造解析装置において構造物の寿命を算出する際に行われる応力寿命関連データの作成工程を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態における構造解析装置において構造物の寿命を算出する際に行われる寿命の算出工程を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態における構造解析装置において構造物の許容応力を算出するための動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態における構造解析装置において構造物の許容応力を算出する際に行われる許容応力の算出工程を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る構造解析装置及び構造解析方法の一実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の構造解析装置Sの概略構成を示す機能ブロック図である。
この図に示すように、本実施形態の構造解析装置Sは、応力寿命関連データ作成部1(データ作成手段)と、構造物データ記憶部2と、計算データ記憶部3と、応力寿命関連データ記憶部4(記憶手段)と、算出部5と、操作入力部6と、出力部7とを備えている。
なお、本実施形態の構造解析装置Sは、CPU等の演算処理装置、ハードディスクドライブ等の外部記憶、メモリ等の内部記憶装置、キーボードやマウス等の入力装置、ディスプレイやプリンタ等の出力装置を備えるパーソナルコンピュータやワークステーションによって具現化される。
【0022】
応力寿命関連データ作成部1は、構造物に作用する一次応力及び二次応力と構造物のクリープ寿命とが関連付けられた応力寿命関連データを作成するものである。
具体的には、応力寿命関連データ作成部1は、いわゆる有限要素法を用いた数値解析を行い、この結果から応力寿命関連データを作成する。より詳細には、応力寿命関連データ作成部1は、数値解析の対象である構造物を模擬したモデルを作成し、一次応力、二次応力及びクリープ寿命をパラメータとする有限要素法を実行して応力寿命関連データを作成する。この際、応力寿命関連データ作成部1は、一次応力と二次応力とを変化させて得られるクリープ寿命を上記一次応力と二次応力とに関連付けることによって応力寿命関連データを作成する。
【0023】
そして、本実施形態の構造解析装置Sにおいて応力寿命関連データ作成部1は、図2に示すように、構造物を模擬したモデルとして、一次応力及び二次応力を受ける矩形モデルを用いる。なお、当然のことながら、矩形モデルは、構造物を形成する材料の物性値等を用いて作成されている。
また応力寿命関連データ作成部1は、上記矩形モデルを構成する要素のうち最も大きな引張応力が作用する要素を応力評価要素Aとし、当該応力評価要素Aに作用する一次応力及び二次応力とクリープ寿命との関係を、上述の構造物に作用する一次応力及び二次応力と構造物のクリープ寿命との関係として応力寿命関連データを作成する。
つまり、本実施形態の構造解析装置Sにおいて応力寿命関連データ作成部1は、応力寿命関連データを作成するためのみに用いられる簡易的なモデルを用い、そのモデルを構成する複数の要素のうち、最も引張応力が大きくなると想定される要素を応力評価要素Aとして数値解析することによって応力寿命関連データを作成する。
【0024】
なお、一次応力及び二次応力とクリープ寿命との関係は、構造物の温度によって大きく変化する。このため、本実施形態の構造解析装置Sにおいて応力寿命関連データ作成部1は、構造物の想定される温度変化範囲において、温度をパラメータとして複数の応力寿命関連データを作成する。
【0025】
構造物データ記憶部2は、応力寿命関連データ作成部1において応力寿命関連データを作成する際に用いる構造物に関連したパラメータや、特性算出部6において構造物の特性の算出に用いる構造物に関連したパラメータ等を構造物データとして記憶するものであり、例えば構造物を形成する材料の物性値や構造物の形状データ等を記憶する。
例えば、構造物が金属材料からなるボイラ配管である場合には、構造物データ記憶部2は、構造物データ記憶部2は、上記金属材料の密度や弾性係数を上記物性値として記憶し、構造物の形態、外径及び肉厚等を上記形状データとして記憶している。
なお、この構造物データは、予め構造物データ記憶部2に記憶されている必要はなく、必要に応じて操作入力部6を介して外部から入力される。
【0026】
計算データ記憶部3は、応力寿命関連データ作成部1において応力寿命関連データを作成する際の有限要素法に用いる計算条件や、応力算出部5において一次応力及び二次応力を算出するための演算式や、特性算出部6で構造物の特性を算出するための演算式等を計算データとして記憶する。
なお、この計算データは、予め計算データ記憶部3に記憶されている必要ななく、必要に応じて操作入力部6を介して外部から入力される。
【0027】
応力寿命関連データ記憶部4は、応力寿命関連データ作成部1において作成された応力寿命関連データを記憶するものである。
そして、本実施形態において応力寿命関連データ作成部1において、構造物の温度をパラメータとして複数の応力寿命関連データが作成されるため、応力寿命関連データ記憶部4は、構造物の温度をパラメータとして複数の応力寿命関連データを記憶することとなる。
【0028】
算出部5は、応力寿命関連データ記憶部4に記憶された応力寿命関連データに基づいて構造物の特性を算出するものである。ここで、本実施形態の構造解析装置Sにおいて算出部5は、操作入力部1等からの指令に基づいて、構造物の特性として構造物の寿命及び許容応力を算出可能とされている。
【0029】
操作入力部6は、本実施形態の構造解析装置Sに対して指令の入力を行うものであり、上述のキーボードやマウスの他、例えば外部から必要な情報をダウンロードするための通信装置を用いることもできる。
出力部7は、算出部5の算出結果や応力寿命関連データを視覚化して表示するものであり、上述のディスプレイやプリンタが用いられる。
【0030】
次に、本実施形態の構造解析装置Sの動作(構造解析方法)について説明する。なお、本実施形態の構造解析装置Sの動作説明として、構造物の寿命を算出する際の動作と、構造物の許容応力を算出する際の動作について説明する。
【0031】
本実施形態の構造解析装置Sにおいて構造物の寿命を算出する場合には、図3のフローチャートに示すように、応力寿命関連データの作成工程(ステップS1)と、寿命の算出工程(ステップS2)とを行う。
【0032】
応力寿命関連データの作成工程(ステップS1)では、応力寿命関連データ作成部1によって有限要素法を用いた応力寿命関連データの作成が行われる。
以下に図4を参照して、応力寿命関連データの作成工程(ステップS1)のより詳細な説明をする。
【0033】
応力寿命関連データ作成部1は、構造物データ記憶部2に記憶された構造物データ及び計算データ記憶部3に記憶された計算データに基づいて、構造物を模擬した簡易モデルとして上述した図2に示す矩形モデルを作成する(ステップS1a)。
ここで、応力寿命関連データ作成部1は、構造物データ記憶部2に記憶された構造物データ、計算データ記憶部3に記憶された計算データ、さらには操作入力部5から入力される要素サイズ等の指令に基づいて上記矩形モデルを作成する。
【0034】
また、応力寿命関連データ作成部1は、上記モデルを用いたクリープ解析における温度の設定(ステップS1b)と、モデルに作用する一次応力及び二次応力の設定(ステップS1b)を行う。この際、応力寿命関連データ作成部1は、例えば操作入力部6から入力される温度値、一次応力値、及び二次応力値を記憶することによって、上記温度の設定と一次応力及び二次応力の設定を行う。
なお、クリープ損傷は温度に対する依存度が大きい。このため、応力寿命関連データ作成部1は、ステップS1bにおいて設定された温度に基づいて、ステップS1aにおいて作成したモデルの補正を行う。具体的には、応力寿命関連データ作成部1は、ステップS1bにおいて設定された温度に基づいて、モデルに組み込まれた物性値(密度や弾性係数)を変更することによってモデルの補正を行う。
【0035】
続いて、応力寿命関連データ作成部1は、ステップS1aで作成したモデルと、ステップS1bで設定された温度と、ステップS1cで設定された一次応力及び二次応力とを用いてクリープ解析を行う(ステップS1d)。ここで、応力寿命関連データ作成部1は、ステップS1aで作成したモデルを構成する要素のうち、最も大きな引張応力が作用する要素を応力評価要素Aとし、当該応力評価要素Aに対してクリープ解析を行う。
なお、最も大きな引張応力が作用する要素、すなわち応力評価要素Aは、上記モデルの形状や固定条件、またモデルの二次応力が作用する位置等によって容易に特定することができる。
【0036】
クリープ解析を行うことによって、応力評価要素Aにおけるクリープ損傷度の時間変化が解析結果として得られる。そして、応力寿命関連データ作成部1は、上記クリープ損傷度の時間変化に基づいて応力評価要素Aのクリープ寿命を決定する(ステップS1e)。例えば、応力寿命関連データ作成部1は、構造物データ記憶部2に記憶された、または操作入力部6を介して入力される閾値を上記クリープ損傷度が超えるまでの時間を応力評価要素Aのクリープ寿命と決定する。
そして、応力寿命関連データ作成部1は、このように決定したクリープ寿命を、当該クリープ寿命の算出に用いた一次応力と二次応力とに関連付けて記憶する。
【0037】
続いて、応力寿命関連データ作成部1は、ステップS1cにおいて設定した一次応力及び二次応力を変更するか否かの判定を行う(ステップS1f)。
具体的には、応力寿命関連データ作成部1は、予め計算データ記憶部3に記憶された一次応力と二次応力との組み合わせに対して全てクリープ寿命の関連付けが完了しているかを判定し、完了していない場合に一次応力及び二次応力を変更すると判定し、完了している場合に一次応力及び二次応力を変更しないと判定する。
【0038】
そして、応力寿命関連データ作成部1は、一次応力及び二次応力を変更すると判定した場合には、一次応力及び二次応力を変更するべく、再びステップS1cの一次応力及び二次応力の設定を行い、さらには上記クリープ解析(ステップS1d)及びステップ(ステップS1e)を行う。
このようにステップS1cからステップS1eを一次応力と二次応力とを変更しながら繰り返し行うことによって、一次応力と二次応力との組み合わせに対して全てクリープ寿命の関連付けが完了し、一定の温度に依存した応力寿命関連データが作成される。
【0039】
一方、応力寿命関連データ作成部1は、ステップS1fにおいて一次応力及び二次応力を変更しないと判定した場合には、続いて温度の変更を行うか否かの判定を行う(ステップS1g)。
具体的には、応力寿命関連データ作成部1は、予め計算データ記憶部3に記憶された全ての設定温度候補に対して応力寿命関連データが作成されているかを判定し、作成されていない場合に温度を変更すると判定し、作成されている場合に温度を変更しないと判定する。
【0040】
そして、応力寿命関連データ作成部1は、温度を変更すると判定した場合には、温度を変更するべく、再びステップS1bの温度の設定を行い、さらには、上記一次応力及び二次応力の設定(ステップS1c)、クリープ解析(ステップS1d)及びステップ(ステップS1e)を行う。
このようにステップS1bからステップS1fを温度を変更しながら繰り返し行うことによって、全ての設定温度候補に対して応力寿命関連データが作成される。
【0041】
このように全ての設定温度候補に対して応力寿命関連データが作成されることによって、応力寿命関連データの作成工程(ステップS1)が完了する。
なお、上述の工程で、作成された応力寿命関連データは、応力評価要素Aに対するものである。しかしながら、応力評価要素Aは、最も引張応力が作用する要素であるため、構造物の最も損傷しやすい箇所であると捉えることができる。したがって、上述のようにして作成された応力寿命関連データは、構造物における一次応力及び二次応力とクリープ寿命との関係を示すものとして考えることができる。よって、本実施形態においては、上述のようにして作成された応力寿命関連データを構造物に対する応力寿命関連データであるとして応力損傷度関連データ記憶部4に記憶する。
【0042】
続いて、図3に示すように寿命の算出工程(ステップS2)が行われる。
寿命の算出工程(ステップS2)では、算出部5によってステップS1で作成された応力寿命関連データに基づいて構造物の寿命が算出される。
以下に図5を参照して、寿命の算出工程(ステップS2)のより詳細な説明をする。
【0043】
本寿命の算出工程では、まず最初に形状寸法設定が行われる(ステップS2a)。
具体的には、操作入力部6を介して入力される構造物の形状寸法が、例えば構造物データ記憶部2に記憶されることによって形状寸法設定が行われる。
なお、構造物がボイラ配管である場合には、例えば、ボイラ配管の形態(直管やエルボ管等の形態)、外径、肉厚等の形状寸法として設定される。
【0044】
続いて、本寿命の算出工程では、構造物に作用する外力の設定が行われる(ステップS2b)。
具体的には、操作入力部6を介して入力される構造物に作用する外力が、例えば構造物データ記憶部2に記憶されることによって外力の設定が行われる。
なお、構造物がボイラ配管である場合には、例えば、ボイラ配管に流体が流れた場合におけるボイラ配管の内圧が外力として設定される。
【0045】
続いて、算出部5によって構造物に作用する一次応力及び二次応力が算出される(ステップS2c)。
具体的には、算出部5は、ステップS2aで設定された形状寸法、ステップS2bで設定された外力、及び計算データ記憶部3に記憶された計算データを用いて構造物に作用する一次応力及び二次応力を算出する。
【0046】
例えば、構造物が直管のボイラ配管である場合には下式(1)に示される簡易式によって一次応力を近似的に算出することができ、また構造物がエルボ管のボイラ配管である場合には下式(2)に示される簡易式によって一次応力を近似的に算出することができる。なお、下式(1),(2)において、σが一次応力、pが内圧、rが平均半径(=(外径−肉厚)/2)、tが肉厚、Rが曲率半径を示す。また、構造物がボイラ配管である場合において二次応力は、既存の算出プログラムにて容易に算出することができる。したがって、構造物がボイラ配管である場合には、下式(1),(2)及び算出プログラムを計算データとして計算データ記憶部3に記憶させておき、これらを用いて一次応力及び二次応力を算出することができる。
【0047】
【数1】

【0048】
【数2】

【0049】
続いて、本寿命の算出工程では、温度の設定が行われる(ステップS2e)。
具体的には、構造物の設計後において構造物の使用温度が想定され、当該使用温度が操作入力部6を介して入力され、この入力された使用温度が例えば構造物データ記憶部2に記憶されることによって温度の設定が行われる。
【0050】
続いて、算出部5によって、構造物のクリープ寿命が算出される(ステップS2e)。
具体的には、算出部5は、ステップS2cで算出した一次応力及び二次応力と、ステップS2dで設定された温度と、応力寿命関連データ記憶部4が記憶する応力寿命関連データとに基づいて構造物のクリープ寿命を算出する。
より詳細には、算出部5は、ステップS2dで設定された温度に基づいて、複数の応力寿命関連データから1つの応力寿命関連データを選択し、さらに選択して応力寿命関連データを参照し、ステップS2cで算出した一次応力と二次応力とに関連付けられたクリープ寿命を抽出する。
なお、応力寿命関連データにステップS2cで算出された一次応力及び二次応力あるいは、ステップS2eで設定された温度と完全に一致する値が含まれていない可能性もある。この場合には、算出部5は、内挿法(線形補間等)を用いて応力寿命関連データに含まれない値を算出する。なお、当該内挿法を行うためのプログラムは計算データとして、予め計算データ記憶部3に記憶されていれば良い。
【0051】
そして、上述のようにして算出された構造物のクリープ寿命が、構造物の寿命として算出部5から出力され、出力部7によって可視化される。
【0052】
次に、本実施形態の構造解析装置Sにおいて構造物の許容応力を算出する場合には、図6のフローチャートに示すように、応力寿命関連データの作成工程(ステップS1)と、許容応力の算出工程(ステップS2)とを行う。
【0053】
構造物の許容応力を算出する場合における応力寿命関連データの作成工程(ステップS1)と、上述した構造物の寿命を算出する場合の応力寿命関連データの作成工程(ステップS1)は同一であるため、ここではその説明を省略する。
【0054】
許容応力の算出工程(ステップS2)は、応力寿命関連データ記憶部4に記憶された応力寿命関連データに基づいて構造物の許容応力を算出する工程である。
以下に図7を参照して、許容応力の算出工程(ステップS2)のより詳細な説明をする。
【0055】
まず最初に形状寸法設定(ステップS3a)、外力の設定(ステップS3b)及び温度の設定(ステップS3c)が行われる。なお、本許容応力の算出工程における形状寸法設定(ステップS3a)、外力の設定(ステップS3b)及び温度の設定(ステップS3c)は、上述の寿命の算出工程(ステップS2)における形状寸法設定(ステップS2a)、外力の設定(ステップS2b)及び温度の設定(ステップS2d)と同様である。
【0056】
続いて、寿命の設定が行われる(ステップS3d)。
具体的には、操作入力部6を介して入力される構造物の寿命が、例えば構造物データ記憶部2に記憶されることによって寿命の設定が行われる。
【0057】
続いて、算出部5によって、ステップS3dにおいて設定された寿命を満足する一次応力及び二次応力が算出される(ステップS3e)。
具体的には、算出部5は、応力寿命関連データから、ステップS3dにおいて設定された寿命を満足する一次応力及び二次応力を抽出する。そして、単純には、抽出した一次応力及び二次応力のうち、最も大きな値が許容応力となる。
【0058】
なお、応力寿命関連データから一次応力の許容応力と二次応力の許容応力との関係を予め算出しておき、この関係から一次応力の許容応力あるいは二次応力の許容応力を算出するようにしても良い。
【0059】
例えば、構造物がボイラ配管である場合には、一次応力の許容応力σと二次応力σの許容応力との関係は、係数a,bが温度の従属変数とされた下式(3)によって示すことができる。
【0060】
【数3】

【0061】
このため、応力寿命関連データから上式(1)を予め算出して、例えば計算データ記憶部3に記憶しておくことによって、一次応力の許容応力と二次応力の許容応力との一方から他方を算出することが可能となる。したがって、ステップS3dにおいて一次応力の許容応力あるいは二次応力の許容応力のいずれかのみを抽出すれば良くなる。
【0062】
以上のような本実施形態の構造解析装置S及び構造解析方法によれば、構造物の形状設計がなされる前に応力寿命関連データが取得され、構造物の形状設計後においては、予め取得された応力寿命関連データに基づいて構造物の特性が解析される。
したがって、構造物の形状設計後は、応力寿命関連データを用いることによって、一次応力及び二次応力からクリープ寿命を容易に算出でき、またクリープ寿命から一次応力及び二次応力を容易に算出することができる。
このように本実施形態の構造解析装置S及び構造解析方法によれば、応力寿命関連データを用いることによって、構造物の特性を容易に算出することができ、構造物の設計から評価までの作業量及び時間を削減して作業効率を向上させることが可能となる。
【0063】
また、本発明によれば、構造物の温度をパラメータとして複数の応力寿命関連データが記憶されている。
このため、構造物の使用温度に応じて、正確に構造物の特性を算出することができる。
【0064】
また、本発明によれば、有限要素法を用いて応力寿命関連データの作成を行うが、構造物の設計前に有限要素法を用いているため、例えば構造物の設計を行っている間に有限要素法を行うことができ、作業を効率化させることが可能となる。
【0065】
また、本発明によれば、応力寿命関連データを作成する際の有限要素法において、モデルを構成する要素のうち、最も大きな引張応力が作用する要素である応力評価要素Aのみデータを参照するという構成を採用する。したがって、より短時間で応力寿命関連データを作成することができる。
また、本構成を採用することによって、応力評価要素Aにおいて算出されるデータが変化しない程度にモデルを簡易化することができるため、モデル作成の作業量を低減させることが可能となる。
【0066】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、構造物の温度をパラメータとして、複数の応力寿命関連データを記憶する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば構造物が変化のない一定の温度環境で用いられるものである場合には、単一の応力寿命関連データのみを記憶しても良い。
【0068】
また、上記実施形態においては、応力寿命関連データを作成する際に、有限要素法を用いた。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の方法によって応力寿命関連データを作成しても良い。
【符号の説明】
【0069】
S……構造解析装置、1……応力寿命関連データ作成部(データ作成手段)、2……構造物データ記憶部、3……計算データ記憶部、4……応力寿命関連データ記憶部(記憶手段)、5……算出部(算出手段)、6……操作入力部、7……出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を数値解析する構造解析装置であって、
前記構造物に作用する一次応力及び二次応力と前記構造物のクリープ寿命とが関連付けられた応力寿命関連データを記憶する記憶手段と、
前記応力寿命関連データに基づいて前記構造物の特性を算出する算出手段と
を備えることを特徴とする構造解析装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記構造物の温度をパラメータとして複数の前記応力寿命関連データを記憶していることを特徴とする請求項1記載の構造解析装置。
【請求項3】
前記構造物を模擬したモデルを用い、前記クリープ寿命、前記一次応力及び前記二次応力がパラメータとされた有限要素法解析を行うことによって前記応力寿命関連データを作成するデータ作成手段を備えることを特徴とする請求項1または2記載の構造解析装置。
【請求項4】
前記データ作成手段は、前記モデルを構成する要素のうち最も引張応力が大きく作用する要素を用い、前記クリープ寿命、前記一次応力及び前記二次応力がパラメータとされた有限要素法解析を行うことを特徴とする請求項3記載の構造解析装置。
【請求項5】
構造物の数値解析する構造解析方法であって、
前記構造物に作用する一次応力及び二次応力と前記構造物のクリープ寿命とが関連付けられた応力寿命関連データに基づいて前記構造物の特性を算出する
ことを特徴とする構造解析方法。
【請求項6】
前記構造物の温度をパラメータとする複数の前記応力寿命関連データを有し、前記構造物の測定温度に基づいて前記応力損傷関連データを選択し、選択された前記応力損傷関連データに基づいて前記構造物の特性を算出することを特徴とする請求項5記載の構造解析方法。
【請求項7】
前記構造物を模擬したモデルを用い、前記クリープ寿命、前記一次応力及び前記二次応力がパラメータとされた有限要素法解析を行うことによって前記応力寿命関連データを作成することを特徴とする請求項5または6記載の構造解析方法。
【請求項8】
前記モデルを構成する要素のうち最も引張応力が大きく作用する要素を用い、前記クリープ寿命、前記一次応力及び前記二次応力がパラメータとされた有限要素法解析を行うことを特徴とする請求項7記載の構造解析方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate