構造躯体の補強方法および補強済構造躯体
【課題】構造躯体の荷重に対する耐力を高めることができる構造躯体の補強方法および補強済構造躯体を提供する。
【解決手段】布基礎1の補強方法は、まず、布基礎1の立ち上がり部12の側面12aに複数の通し孔13を横に並列して水平に開ける。そして、各通し孔13に、基部11よりも長い第1鉄筋4を通し、これらの第1鉄筋4に複数の第2鉄筋6を垂直に交差して組む。その後に、第1鉄筋4および第2鉄筋6よりも高い位置で、第1鉄筋4および第2鉄筋6と布基礎1とを囲むように型枠を設置する。最後に、型枠内にコンクリート2を流し込んで基部11の上面11aよりも広く増し打ちする。このように布基礎1を補強することによって補強済布基礎3が出来上がる。
【解決手段】布基礎1の補強方法は、まず、布基礎1の立ち上がり部12の側面12aに複数の通し孔13を横に並列して水平に開ける。そして、各通し孔13に、基部11よりも長い第1鉄筋4を通し、これらの第1鉄筋4に複数の第2鉄筋6を垂直に交差して組む。その後に、第1鉄筋4および第2鉄筋6よりも高い位置で、第1鉄筋4および第2鉄筋6と布基礎1とを囲むように型枠を設置する。最後に、型枠内にコンクリート2を流し込んで基部11の上面11aよりも広く増し打ちする。このように布基礎1を補強することによって補強済布基礎3が出来上がる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、例えば布基礎のような基部と立ち上がり部とを備える構造躯体の補強方法および補強済構造躯体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物のリフォームを行うときに地盤の支持力が不足する場合には、リフォーム前に杭打ち等の地盤補強工事を行うことが考えられる。しかし、その場合には、曳き家工事をしなければならず、あるいは床下での杭打ち工事となり費用的に現実的ではない。そこで、リフォーム前に床下でコンクリート製の基礎(構造躯体)を補強する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の補強方法を簡単に説明すると、最初に、基礎の立ち上がり部の側面に溝を横方向に長く形成する。次に、この溝に鉄筋を配置し、さらにこの鉄筋と垂直に交差するように別の鉄筋を配置する。最後に、これらの鉄筋や溝を覆うように立ち上がり部の側面にモルタルを増し打ちしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−185549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の補強方法では基礎の立ち上がり部を補強しているだけで、基部に荷重がかかるようなリフォーム(屋上バルコニー設置、エレベータ設置等)に対しては十分な耐力を確保できなかった。
【0006】
本件発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、構造躯体の荷重に対する耐力を高めることができる構造躯体の補強方法および補強済構造躯体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するために以下のような構造躯体の補強方法と補強済構造躯体を採用した。
【0008】
本件発明の構造躯体の補強方法は、コンクリートで形成され、基部と、この基部の上面から起立した立ち上がり部とを備える構造躯体の補強方法であって、
前記立ち上がり部の側面に複数の通し孔を横に並列して水平に開け、各通し孔に前記基部よりも長い鉄筋を通し、当該複数の鉄筋よりも高い位置で当該複数の鉄筋と前記構造躯体とを囲むように型枠を設置し、この型枠内にコンクリートを流し込んで前記基部の上面よりも広く増し打ちしたことを特徴とする。
【0009】
ここで、通し孔に鉄筋を通した後に、鉄筋と通し孔との間に形成されている隙間をモルタルで塞ぐことが好ましい。さらに、このモルタルには無収縮モルタルを使用することがより好ましい。
【0010】
また、各通し孔に鉄筋を通した後に、当該複数の鉄筋に別の複数の鉄筋を垂直に交差するように組んでも良い。この場合には、その後に、これらの鉄筋よりも高い位置でこれら
の鉄筋と構造躯体とを囲むように型枠を設置する。また、型枠内にコンクリートを流し込む前に、立ち上がり部の側面の鉄筋の近傍または基部の少なくとも一方にアンカー材を固定したり、基部の少なくとも上面に目荒らし加工を施しても良い。
【0011】
また、立ち上がり部の側面に複数の通し孔を開ける前に、立ち上がり部に既に通されている基礎鉄筋の位置を鉄筋探知器を用いて探知し、当該基礎鉄筋の位置以外の部分に前記複数の通し孔を開けることが好ましい。
【0012】
鉄筋探知器が、立ち上がり部の側面から基部の上面にかけての範囲をなぞって基礎鉄筋を探知するものである場合には、立ち上がり部の側面と基部の上面との間に形成されている入隅部に、鉄筋探知器を摺動させる摺動用部材をあてがって配置することが好ましい。
【0013】
また、本件発明の補強済構造躯体は、コンクリートで形成され、基部と、この基部の上面から起立した立ち上がり部とを有する構造躯体を本件発明の補強方法により補強して得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本件発明の構造躯体の補強方法および補強済構造躯体は、構造躯体の基部の上面よりも広くなるようにコンクリートを増し打ちしたことにより、補強後の構造躯体においては基部にかかる荷重を分散させることが可能になる。よって、本件発明の構造躯体の補強方法および補強済構造躯体は、構造躯体の荷重に対する耐力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本件発明の一実施の形態の布基礎の補強方法を示す模式図である。
【図2】同実施の形態の構造躯体の補強方法を示すフローチャートである。
【図3】同実施の形態の通し孔開け工程と打ち込み孔開け工程の説明図である。
【図4】同実施の形態の目荒らし工程の説明図である。
【図5】同実施の形態の鉄筋通し工程の説明図である。
【図6】同実施の形態のモルタル埋め工程の説明図である。
【図7】同実施の形態のアンカー材固定工程の説明図である。
【図8】同実施の形態の鉄筋組み工程の説明図である。
【図9】同実施の形態の型枠設置工程の説明図である。
【図10】同実施の形態の補強済布基礎の斜視図である。
【図11】図2に鉄筋探知工程が入った補強方法を示すフローチャートである。
【図12】摺動用部材を用いて鉄筋探知を行うときの説明図である。
【図13】別の摺動用部材を用いて鉄筋探知を行うときの説明図である。
【図14】別の摺動用部材を用いて鉄筋探知を行うときの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本件発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0017】
図1は、本件発明の一実施の形態の構造躯体(布基礎)の補強方法を示す模式図である。本実施の形態では構造躯体として布基礎を挙げて、その補強方法について説明する。図1の(a)に布基礎1を示す。この布基礎1は周知のようにコンクリートにより断面逆T字状に形成されており、基部11と、立ち上がり部12とを備えている。基部11は布基礎1の土台となる部分であり地中に埋設されている。立ち上がり部12は、基部11の上面11aに起立して形成されている。
【0018】
図1の(b)に補強済布基礎3(補強済構造躯体)を示す。この補強済布基礎3は、布基礎1を本実施の形態の補強方法で補強することによって得られる。この補強方法を簡単
に説明すると、布基礎1に対して基部11の上面11aよりも広くなるようにコンクリート2を増し打ちすることである。この補強作業は、作業者が建物の床下に潜って行う。以下に、布基礎1の補強方法について具体的に説明する。
【0019】
図2は、布基礎1の補強方法を示すフローチャートである。布基礎1の補強方法は、以下の(1)〜(9)の工程を備えている。各工程について順に説明する。
(1)通し孔開け工程
(2)打ち込み孔開け工程
(3)目荒らし工程
(4)鉄筋通し工程
(5)モルタル埋め工程
(6)アンカー材固定工程
(7)鉄筋組み工程
(8)型枠設置工程
(9)コンクリート増し打ち工程
【0020】
(1)通し孔開け工程(図3参照)
通し孔開け工程では、布基礎1の周囲を掘削して基部11の上面11aと立ち上がり部12を露出させる。そして、立ち上がり部12の側面12aに、複数の鉄筋用の通し孔13を開ける。具体的には、複数の通し孔13を側面12aの横方向に並列して水平に開ける。各通し孔13の大きさは、使用する鉄筋の太さに応じて任意に設定する。また、各通し孔13の設置位置は、コンクリートの増し打ち範囲に応じて任意に設定する。
【0021】
(2)打ち込み孔開け工程(図3参照)
打ち込み孔開け工程では、立ち上がり部12の側面12aの各通し孔13の間(各通し孔13の近傍)に、アンカー材用の打ち込み孔14(凹部)を形成する。各打ち込み孔14の大きさは、使用するアンカー材の太さに応じて任意に設定する。各打ち込み孔14の位置は側面12aの横方向に並列するのが好ましい。各打ち込み孔14は必ずしも各通し孔13の間に形成する必要はなく、各通し孔13の近傍であれば良い。例えば、各通し孔13の上部近傍や下部近傍に打ち込み孔14を形成しても良い。
【0022】
(3)目荒らし工程(図4参照)
目荒らし工程では、基部11の上面11aに目荒らし加工を施す。具体的には、基部11の上面11aを凸凹にする。なお、目荒らし加工は、基部11の上面11aの他に側面11bに施しても良い。
【0023】
(4)鉄筋通し工程(図5参照)
鉄筋通し工程では、各通し孔13に第1鉄筋4を通す。第1鉄筋4の長さはコンクリートを増し打ちする範囲に応じて任意に設定するが、少なくとも基部11の短手方向(図5の左右方向)よりも長く設定する。また、基部11の外側(図5の左側)にコンクリートを増し打ちするスペースが少ない場合は、内側(図5の右側)に第1鉄筋4を長く配置するようにする。
【0024】
(5)モルタル埋め工程(図6参照)
モルタル埋め工程では、立ち上がり部12の側面12aにおいて第1鉄筋4と通し孔13との間に形成されている隙間をモルタルMで塞ぐ。このモルタルMには無収縮モルタルを使用する。
【0025】
(6)アンカー材固定工程(図7参照)
アンカー材固定工程では、各打ち込み孔14にアンカー材5を打ち込んで、アンカー材
5を立ち上がり部12の側面12aに固定する。
【0026】
(7)鉄筋組み工程(図8参照)
鉄筋組み工程では、複数の第1鉄筋4に複数の第2鉄筋6を垂直に交差して組む。具体的には、複数の第1鉄筋4に対して複数の第2鉄筋6を垂直に交差するように載せて交差部分を針金を用いて固定する。なお、複数の第1鉄筋4に対して第2の鉄筋6を上側から組んだり下側から組んだりしても良い。
【0027】
(8)型枠設置工程(図9参照)
型枠設置工程では、組まれた第1鉄筋4および第2鉄筋6と布基礎1とを囲むように型枠7を設置する。このときに型枠7の高さは、第1鉄筋4および第2鉄筋6よりも高い位置に設定する。
【0028】
(9)コンクリート増し打ち工程(図9〜図10参照)
コンクリート増し打ち工程では、型枠7内にコンクリート2を流し込み、第1鉄筋4と第2鉄筋6を覆うようにして基部11の上面11aよりも広く増し打ちする。その結果、図10に示すように補強済布基礎3が出来上がる。
【0029】
このように本実施の形態の布基礎1の補強方法では、基部11の上面11aよりも広くなるようにコンクリート2を増し打ちして補強した。これにより、補強後の基部21の上面21aの面積、つまり、建物を支持する面積が広くなる。このため、図1の(a)と(b)で比較して示すように基部21にかかる荷重(矢印)を補強前に比べて分散させることが可能になる。よって、本実施の形態の布基礎1の補強方法は、布基礎の荷重に対する耐力を高めることができる。言い換えると、地盤支持力がより小さな地盤でも建物を支持することができる。
【0030】
また、本実施の形態の布基礎1の補強方法では、第1鉄筋4と通し孔13との間に形成されている隙間をモルタルMで塞ぐようにした。これにより、第1鉄筋4は立ち上がり部12に固定される。したがって、その後の各工程(アンカー材固定工程、鉄筋組み工程、型枠設置工程、コンクリート増し打ち工程)を行う際に第1鉄筋4がぐらついて作業の妨げとなるのを防ぐことができる。よって、本実施の形態の布基礎1の補強方法は、布基礎1の補強作業の作業効率を向上することができる。また、モルタルに無収縮モルタルを使用したので第1鉄筋4が立ち上がり部12にしっかりと固定され、布基礎1の補強作業の作業効率をさらに向上することができる。
【0031】
また、第1鉄筋4の近傍にアンカー材5を固定したので、布基礎1にコンクリート2(増し打ち部分)をより一体化させることができ、布基礎の荷重に対する耐力をさらに高めることができる。なお、アンカー材固定工程は必要に応じてコンクリート増し打ち工程の前に行えば良い。また、アンカー材5は、立ち上がり部12の他に、基部11の上面11aや側面11bに固定しても良い。また、立ち上がり部12と基部11の双方にアンカー材5を固定しても良い。この場合には、布基礎の荷重に対する耐力をよりいっそう高めることができる。また、複数の第1鉄筋4に複数の第2鉄筋6を垂直に交差するように組んだので増し打ち部分がしっかりと補強され、布基礎の荷重に対する耐力をさらに高めることができる。なお、鉄筋組み工程は必要に応じて鉄筋通し工程の後に行えば良い。
【0032】
また、基部11の上面11aに目荒らし加工を施したことにより、図10に示すようにコンクリート2が基部11にしっかりと接着されるので、コンクリート2の脱落を防止するとともに荷重に対する耐力をより高めることができる。さらに、基部11の側面11bにも目荒らし加工を施せばコンクリート2の接着力が向上し、コンクリート2の脱落防止と荷重に対する耐力をさらに高めることができる。なお、目荒らし工程は、少なくともコ
ンクリート増し打ち工程の前に行えば良い。また、目荒らし加工は必ずしも行う必要はなく、現場の状況に応じて行って良い。
【0033】
また、本実施の形態の補強済布基礎3は、布基礎1を本実施の形態の補強方法で補強して得られたので、布基礎の荷重に対する耐力を高めることができる。さらに、補強済布基礎3は、上記で説明した補強方法と同じ効果を得ることができる。
【0034】
以上、本件発明にかかる実施の形態を例示したが、この実施の形態は本件発明の内容を限定するものではない。また、本件発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0035】
例えば、本実施の形態では、布基礎に本件発明の補強方法を適用したが、布基礎以外の基部と立ち上がり部を備える構造躯体に本件発明の補強方法を適用してもよい。例えば、べた基礎の立ち上がり部や独立基礎の立ち上がり部、耐力壁、梁などの建物の構造躯体や、土木構造物や工作物などにおける構造躯体に本件発明の補強方法を適用してもよい。
【0036】
また、補強前の布基礎1には複数の鉄筋(基礎鉄筋)が通されている。基礎鉄筋の位置は図面から予めわかっているので、通し孔開け工程では、立ち上がり部12の側面12aにおいて基礎鉄筋の位置以外の部分に複数の通し孔13を開けるようにする。
【0037】
しかし、施工状況によっては、基礎鉄筋の位置が図面通りに施工されていない場合もある。そこで、図11のフローチャートに示すように通し孔開け工程の前に鉄筋探知工程を設けることが好ましい。
【0038】
鉄筋探知工程では、布基礎1に通されている基礎鉄筋の実際の位置を探知する。通し孔開け工程では、立ち上がり部12の側面12aにおいて基礎鉄筋の実際の位置以外の部分に複数の通し孔13を開ける。これにより、その後の鉄筋通し工程において各通し孔13に第1鉄筋4を通すときに基礎鉄筋と干渉するのを確実に防ぐことができ、補強作業をスムーズに行うことができる。
【0039】
布基礎1に通されている基礎鉄筋の位置を探知するには、図12に示す鉄筋探知器101を用いる。この鉄筋探知器101は周知のものであり、布基礎1の表面をなぞって基礎鉄筋102の位置を探知するものである。
【0040】
この鉄筋探知器101は、例えば探知面の左右側に磁気強度を測定する磁極(センサー)が配置され、双方の磁極の間にローラが配置されている。さらに鉄筋探知器101には、ローラの回転を距離に変換するエンコーダを備えている。その他の鉄筋探知器としては、探知面の中央部に磁極が配置され、磁極の左右側にローラが配置されたものでも良い。
【0041】
また双方の磁極には、検知磁極により検出した磁気データを演算処理して磁気強度を表示するメータが接続されている。このメータと前記エンコーダとにはレコーダが接続されている。このレコーダは、探知開始からの距離に対応した磁気強度の変化を記録紙に記録するものである。
【0042】
この鉄筋探知器101を用いて、立ち上がり部12に通されている基礎鉄筋102を探知するときには、図12の矢印方向で示すように立ち上がり部12の側面12aから基部11の上面11aにかけての範囲をローラでなぞる。磁極が基礎鉄筋102を通過したときには磁気強度が上昇する。記録紙には、探知開始からの距離に対応した磁気強度の変化が記録され、磁気強度が大きい位置が基礎鉄筋102の位置になる。
【0043】
鉄筋探知器101が上記のように探知する面をなぞるものである場合には、鉄筋探知器101の大きさの制約から、立ち上がり部12の根元部分の基礎鉄筋102の位置を探知することができない。そこで、立ち上がり部12の側面12aと基部11の上面11aとの間に形成されている入隅部103に、鉄筋探知器101を摺動させる摺動用部材をあてがって配置することが好ましい。
【0044】
摺動用部材としては、例えば図12〜図14に示すような摺動用部材201〜203が挙げられる。図12の摺動用部材201は、クリアファイル等で形成されたL字型の柔らかいプラスチック製板からなるものである。図13の摺動用部材202は、断面三角形状に形成されたものである。図14の摺動用部材203は、図13の摺動用部材202の上面を凹曲面状に形成したものである。
【0045】
鉄筋探知器101は、これらの摺動用部材201〜203を用いることにより、ローラが入隅部103をスムーズになぞることが可能になるため、ローラが空転してエラーが発生することはない。したがって、立ち上がり部12の根元部分の基礎鉄筋102を容易に探知することが可能になる。よって、鉄筋通し工程において各通し孔13に第1鉄筋4を通すときに基礎鉄筋と干渉するのをより確実に防ぐことができ、補強作業をよりスムーズに行うことができる。
【0046】
また、これらの摺動用部材201〜203を使用すれば、特殊な小型鉄筋探知器を使用しなくても立ち上がり部12の根元部分の基礎鉄筋102の位置を探知できるので、鉄筋探知の低コスト化を図ることもできる。
【0047】
なお、基礎鉄筋の探知範囲は増し打ちする基礎部分の全体を検知することが好ましい。逆に増し打ちする必要が無い部分(例えば、リフォームによる荷重増加が軽微な部分、構造計算上荷重を負担しない桁平行方向の基礎)は必ずしも探知しなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように本件発明の構造躯体の補強方法および補強済構造躯体は、構造躯体の荷重に対する耐力を高めることができる。したがって、本件発明の構造躯体の補強方法および補強済構造躯体を、構造躯体の補強技術分野で十分に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 布基礎(構造躯体)
2 コンクリート
3 補強済布基礎(補強済構造躯体)
4 第1鉄筋
5 アンカー材
6 第2鉄筋
7 型枠
11 基部
11a 基部の上面
11b 基部の側面
12 立ち上がり部
12a 立ち上がり部の側面
13 通し孔
101 鉄筋探知器
102 基礎鉄筋
103 入隅部
201 摺動用部材
202 摺動用部材
203 摺動用部材
M モルタル
【技術分野】
【0001】
本件発明は、例えば布基礎のような基部と立ち上がり部とを備える構造躯体の補強方法および補強済構造躯体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物のリフォームを行うときに地盤の支持力が不足する場合には、リフォーム前に杭打ち等の地盤補強工事を行うことが考えられる。しかし、その場合には、曳き家工事をしなければならず、あるいは床下での杭打ち工事となり費用的に現実的ではない。そこで、リフォーム前に床下でコンクリート製の基礎(構造躯体)を補強する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の補強方法を簡単に説明すると、最初に、基礎の立ち上がり部の側面に溝を横方向に長く形成する。次に、この溝に鉄筋を配置し、さらにこの鉄筋と垂直に交差するように別の鉄筋を配置する。最後に、これらの鉄筋や溝を覆うように立ち上がり部の側面にモルタルを増し打ちしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−185549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の補強方法では基礎の立ち上がり部を補強しているだけで、基部に荷重がかかるようなリフォーム(屋上バルコニー設置、エレベータ設置等)に対しては十分な耐力を確保できなかった。
【0006】
本件発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、構造躯体の荷重に対する耐力を高めることができる構造躯体の補強方法および補強済構造躯体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するために以下のような構造躯体の補強方法と補強済構造躯体を採用した。
【0008】
本件発明の構造躯体の補強方法は、コンクリートで形成され、基部と、この基部の上面から起立した立ち上がり部とを備える構造躯体の補強方法であって、
前記立ち上がり部の側面に複数の通し孔を横に並列して水平に開け、各通し孔に前記基部よりも長い鉄筋を通し、当該複数の鉄筋よりも高い位置で当該複数の鉄筋と前記構造躯体とを囲むように型枠を設置し、この型枠内にコンクリートを流し込んで前記基部の上面よりも広く増し打ちしたことを特徴とする。
【0009】
ここで、通し孔に鉄筋を通した後に、鉄筋と通し孔との間に形成されている隙間をモルタルで塞ぐことが好ましい。さらに、このモルタルには無収縮モルタルを使用することがより好ましい。
【0010】
また、各通し孔に鉄筋を通した後に、当該複数の鉄筋に別の複数の鉄筋を垂直に交差するように組んでも良い。この場合には、その後に、これらの鉄筋よりも高い位置でこれら
の鉄筋と構造躯体とを囲むように型枠を設置する。また、型枠内にコンクリートを流し込む前に、立ち上がり部の側面の鉄筋の近傍または基部の少なくとも一方にアンカー材を固定したり、基部の少なくとも上面に目荒らし加工を施しても良い。
【0011】
また、立ち上がり部の側面に複数の通し孔を開ける前に、立ち上がり部に既に通されている基礎鉄筋の位置を鉄筋探知器を用いて探知し、当該基礎鉄筋の位置以外の部分に前記複数の通し孔を開けることが好ましい。
【0012】
鉄筋探知器が、立ち上がり部の側面から基部の上面にかけての範囲をなぞって基礎鉄筋を探知するものである場合には、立ち上がり部の側面と基部の上面との間に形成されている入隅部に、鉄筋探知器を摺動させる摺動用部材をあてがって配置することが好ましい。
【0013】
また、本件発明の補強済構造躯体は、コンクリートで形成され、基部と、この基部の上面から起立した立ち上がり部とを有する構造躯体を本件発明の補強方法により補強して得られることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本件発明の構造躯体の補強方法および補強済構造躯体は、構造躯体の基部の上面よりも広くなるようにコンクリートを増し打ちしたことにより、補強後の構造躯体においては基部にかかる荷重を分散させることが可能になる。よって、本件発明の構造躯体の補強方法および補強済構造躯体は、構造躯体の荷重に対する耐力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本件発明の一実施の形態の布基礎の補強方法を示す模式図である。
【図2】同実施の形態の構造躯体の補強方法を示すフローチャートである。
【図3】同実施の形態の通し孔開け工程と打ち込み孔開け工程の説明図である。
【図4】同実施の形態の目荒らし工程の説明図である。
【図5】同実施の形態の鉄筋通し工程の説明図である。
【図6】同実施の形態のモルタル埋め工程の説明図である。
【図7】同実施の形態のアンカー材固定工程の説明図である。
【図8】同実施の形態の鉄筋組み工程の説明図である。
【図9】同実施の形態の型枠設置工程の説明図である。
【図10】同実施の形態の補強済布基礎の斜視図である。
【図11】図2に鉄筋探知工程が入った補強方法を示すフローチャートである。
【図12】摺動用部材を用いて鉄筋探知を行うときの説明図である。
【図13】別の摺動用部材を用いて鉄筋探知を行うときの説明図である。
【図14】別の摺動用部材を用いて鉄筋探知を行うときの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本件発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0017】
図1は、本件発明の一実施の形態の構造躯体(布基礎)の補強方法を示す模式図である。本実施の形態では構造躯体として布基礎を挙げて、その補強方法について説明する。図1の(a)に布基礎1を示す。この布基礎1は周知のようにコンクリートにより断面逆T字状に形成されており、基部11と、立ち上がり部12とを備えている。基部11は布基礎1の土台となる部分であり地中に埋設されている。立ち上がり部12は、基部11の上面11aに起立して形成されている。
【0018】
図1の(b)に補強済布基礎3(補強済構造躯体)を示す。この補強済布基礎3は、布基礎1を本実施の形態の補強方法で補強することによって得られる。この補強方法を簡単
に説明すると、布基礎1に対して基部11の上面11aよりも広くなるようにコンクリート2を増し打ちすることである。この補強作業は、作業者が建物の床下に潜って行う。以下に、布基礎1の補強方法について具体的に説明する。
【0019】
図2は、布基礎1の補強方法を示すフローチャートである。布基礎1の補強方法は、以下の(1)〜(9)の工程を備えている。各工程について順に説明する。
(1)通し孔開け工程
(2)打ち込み孔開け工程
(3)目荒らし工程
(4)鉄筋通し工程
(5)モルタル埋め工程
(6)アンカー材固定工程
(7)鉄筋組み工程
(8)型枠設置工程
(9)コンクリート増し打ち工程
【0020】
(1)通し孔開け工程(図3参照)
通し孔開け工程では、布基礎1の周囲を掘削して基部11の上面11aと立ち上がり部12を露出させる。そして、立ち上がり部12の側面12aに、複数の鉄筋用の通し孔13を開ける。具体的には、複数の通し孔13を側面12aの横方向に並列して水平に開ける。各通し孔13の大きさは、使用する鉄筋の太さに応じて任意に設定する。また、各通し孔13の設置位置は、コンクリートの増し打ち範囲に応じて任意に設定する。
【0021】
(2)打ち込み孔開け工程(図3参照)
打ち込み孔開け工程では、立ち上がり部12の側面12aの各通し孔13の間(各通し孔13の近傍)に、アンカー材用の打ち込み孔14(凹部)を形成する。各打ち込み孔14の大きさは、使用するアンカー材の太さに応じて任意に設定する。各打ち込み孔14の位置は側面12aの横方向に並列するのが好ましい。各打ち込み孔14は必ずしも各通し孔13の間に形成する必要はなく、各通し孔13の近傍であれば良い。例えば、各通し孔13の上部近傍や下部近傍に打ち込み孔14を形成しても良い。
【0022】
(3)目荒らし工程(図4参照)
目荒らし工程では、基部11の上面11aに目荒らし加工を施す。具体的には、基部11の上面11aを凸凹にする。なお、目荒らし加工は、基部11の上面11aの他に側面11bに施しても良い。
【0023】
(4)鉄筋通し工程(図5参照)
鉄筋通し工程では、各通し孔13に第1鉄筋4を通す。第1鉄筋4の長さはコンクリートを増し打ちする範囲に応じて任意に設定するが、少なくとも基部11の短手方向(図5の左右方向)よりも長く設定する。また、基部11の外側(図5の左側)にコンクリートを増し打ちするスペースが少ない場合は、内側(図5の右側)に第1鉄筋4を長く配置するようにする。
【0024】
(5)モルタル埋め工程(図6参照)
モルタル埋め工程では、立ち上がり部12の側面12aにおいて第1鉄筋4と通し孔13との間に形成されている隙間をモルタルMで塞ぐ。このモルタルMには無収縮モルタルを使用する。
【0025】
(6)アンカー材固定工程(図7参照)
アンカー材固定工程では、各打ち込み孔14にアンカー材5を打ち込んで、アンカー材
5を立ち上がり部12の側面12aに固定する。
【0026】
(7)鉄筋組み工程(図8参照)
鉄筋組み工程では、複数の第1鉄筋4に複数の第2鉄筋6を垂直に交差して組む。具体的には、複数の第1鉄筋4に対して複数の第2鉄筋6を垂直に交差するように載せて交差部分を針金を用いて固定する。なお、複数の第1鉄筋4に対して第2の鉄筋6を上側から組んだり下側から組んだりしても良い。
【0027】
(8)型枠設置工程(図9参照)
型枠設置工程では、組まれた第1鉄筋4および第2鉄筋6と布基礎1とを囲むように型枠7を設置する。このときに型枠7の高さは、第1鉄筋4および第2鉄筋6よりも高い位置に設定する。
【0028】
(9)コンクリート増し打ち工程(図9〜図10参照)
コンクリート増し打ち工程では、型枠7内にコンクリート2を流し込み、第1鉄筋4と第2鉄筋6を覆うようにして基部11の上面11aよりも広く増し打ちする。その結果、図10に示すように補強済布基礎3が出来上がる。
【0029】
このように本実施の形態の布基礎1の補強方法では、基部11の上面11aよりも広くなるようにコンクリート2を増し打ちして補強した。これにより、補強後の基部21の上面21aの面積、つまり、建物を支持する面積が広くなる。このため、図1の(a)と(b)で比較して示すように基部21にかかる荷重(矢印)を補強前に比べて分散させることが可能になる。よって、本実施の形態の布基礎1の補強方法は、布基礎の荷重に対する耐力を高めることができる。言い換えると、地盤支持力がより小さな地盤でも建物を支持することができる。
【0030】
また、本実施の形態の布基礎1の補強方法では、第1鉄筋4と通し孔13との間に形成されている隙間をモルタルMで塞ぐようにした。これにより、第1鉄筋4は立ち上がり部12に固定される。したがって、その後の各工程(アンカー材固定工程、鉄筋組み工程、型枠設置工程、コンクリート増し打ち工程)を行う際に第1鉄筋4がぐらついて作業の妨げとなるのを防ぐことができる。よって、本実施の形態の布基礎1の補強方法は、布基礎1の補強作業の作業効率を向上することができる。また、モルタルに無収縮モルタルを使用したので第1鉄筋4が立ち上がり部12にしっかりと固定され、布基礎1の補強作業の作業効率をさらに向上することができる。
【0031】
また、第1鉄筋4の近傍にアンカー材5を固定したので、布基礎1にコンクリート2(増し打ち部分)をより一体化させることができ、布基礎の荷重に対する耐力をさらに高めることができる。なお、アンカー材固定工程は必要に応じてコンクリート増し打ち工程の前に行えば良い。また、アンカー材5は、立ち上がり部12の他に、基部11の上面11aや側面11bに固定しても良い。また、立ち上がり部12と基部11の双方にアンカー材5を固定しても良い。この場合には、布基礎の荷重に対する耐力をよりいっそう高めることができる。また、複数の第1鉄筋4に複数の第2鉄筋6を垂直に交差するように組んだので増し打ち部分がしっかりと補強され、布基礎の荷重に対する耐力をさらに高めることができる。なお、鉄筋組み工程は必要に応じて鉄筋通し工程の後に行えば良い。
【0032】
また、基部11の上面11aに目荒らし加工を施したことにより、図10に示すようにコンクリート2が基部11にしっかりと接着されるので、コンクリート2の脱落を防止するとともに荷重に対する耐力をより高めることができる。さらに、基部11の側面11bにも目荒らし加工を施せばコンクリート2の接着力が向上し、コンクリート2の脱落防止と荷重に対する耐力をさらに高めることができる。なお、目荒らし工程は、少なくともコ
ンクリート増し打ち工程の前に行えば良い。また、目荒らし加工は必ずしも行う必要はなく、現場の状況に応じて行って良い。
【0033】
また、本実施の形態の補強済布基礎3は、布基礎1を本実施の形態の補強方法で補強して得られたので、布基礎の荷重に対する耐力を高めることができる。さらに、補強済布基礎3は、上記で説明した補強方法と同じ効果を得ることができる。
【0034】
以上、本件発明にかかる実施の形態を例示したが、この実施の形態は本件発明の内容を限定するものではない。また、本件発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0035】
例えば、本実施の形態では、布基礎に本件発明の補強方法を適用したが、布基礎以外の基部と立ち上がり部を備える構造躯体に本件発明の補強方法を適用してもよい。例えば、べた基礎の立ち上がり部や独立基礎の立ち上がり部、耐力壁、梁などの建物の構造躯体や、土木構造物や工作物などにおける構造躯体に本件発明の補強方法を適用してもよい。
【0036】
また、補強前の布基礎1には複数の鉄筋(基礎鉄筋)が通されている。基礎鉄筋の位置は図面から予めわかっているので、通し孔開け工程では、立ち上がり部12の側面12aにおいて基礎鉄筋の位置以外の部分に複数の通し孔13を開けるようにする。
【0037】
しかし、施工状況によっては、基礎鉄筋の位置が図面通りに施工されていない場合もある。そこで、図11のフローチャートに示すように通し孔開け工程の前に鉄筋探知工程を設けることが好ましい。
【0038】
鉄筋探知工程では、布基礎1に通されている基礎鉄筋の実際の位置を探知する。通し孔開け工程では、立ち上がり部12の側面12aにおいて基礎鉄筋の実際の位置以外の部分に複数の通し孔13を開ける。これにより、その後の鉄筋通し工程において各通し孔13に第1鉄筋4を通すときに基礎鉄筋と干渉するのを確実に防ぐことができ、補強作業をスムーズに行うことができる。
【0039】
布基礎1に通されている基礎鉄筋の位置を探知するには、図12に示す鉄筋探知器101を用いる。この鉄筋探知器101は周知のものであり、布基礎1の表面をなぞって基礎鉄筋102の位置を探知するものである。
【0040】
この鉄筋探知器101は、例えば探知面の左右側に磁気強度を測定する磁極(センサー)が配置され、双方の磁極の間にローラが配置されている。さらに鉄筋探知器101には、ローラの回転を距離に変換するエンコーダを備えている。その他の鉄筋探知器としては、探知面の中央部に磁極が配置され、磁極の左右側にローラが配置されたものでも良い。
【0041】
また双方の磁極には、検知磁極により検出した磁気データを演算処理して磁気強度を表示するメータが接続されている。このメータと前記エンコーダとにはレコーダが接続されている。このレコーダは、探知開始からの距離に対応した磁気強度の変化を記録紙に記録するものである。
【0042】
この鉄筋探知器101を用いて、立ち上がり部12に通されている基礎鉄筋102を探知するときには、図12の矢印方向で示すように立ち上がり部12の側面12aから基部11の上面11aにかけての範囲をローラでなぞる。磁極が基礎鉄筋102を通過したときには磁気強度が上昇する。記録紙には、探知開始からの距離に対応した磁気強度の変化が記録され、磁気強度が大きい位置が基礎鉄筋102の位置になる。
【0043】
鉄筋探知器101が上記のように探知する面をなぞるものである場合には、鉄筋探知器101の大きさの制約から、立ち上がり部12の根元部分の基礎鉄筋102の位置を探知することができない。そこで、立ち上がり部12の側面12aと基部11の上面11aとの間に形成されている入隅部103に、鉄筋探知器101を摺動させる摺動用部材をあてがって配置することが好ましい。
【0044】
摺動用部材としては、例えば図12〜図14に示すような摺動用部材201〜203が挙げられる。図12の摺動用部材201は、クリアファイル等で形成されたL字型の柔らかいプラスチック製板からなるものである。図13の摺動用部材202は、断面三角形状に形成されたものである。図14の摺動用部材203は、図13の摺動用部材202の上面を凹曲面状に形成したものである。
【0045】
鉄筋探知器101は、これらの摺動用部材201〜203を用いることにより、ローラが入隅部103をスムーズになぞることが可能になるため、ローラが空転してエラーが発生することはない。したがって、立ち上がり部12の根元部分の基礎鉄筋102を容易に探知することが可能になる。よって、鉄筋通し工程において各通し孔13に第1鉄筋4を通すときに基礎鉄筋と干渉するのをより確実に防ぐことができ、補強作業をよりスムーズに行うことができる。
【0046】
また、これらの摺動用部材201〜203を使用すれば、特殊な小型鉄筋探知器を使用しなくても立ち上がり部12の根元部分の基礎鉄筋102の位置を探知できるので、鉄筋探知の低コスト化を図ることもできる。
【0047】
なお、基礎鉄筋の探知範囲は増し打ちする基礎部分の全体を検知することが好ましい。逆に増し打ちする必要が無い部分(例えば、リフォームによる荷重増加が軽微な部分、構造計算上荷重を負担しない桁平行方向の基礎)は必ずしも探知しなくても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように本件発明の構造躯体の補強方法および補強済構造躯体は、構造躯体の荷重に対する耐力を高めることができる。したがって、本件発明の構造躯体の補強方法および補強済構造躯体を、構造躯体の補強技術分野で十分に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 布基礎(構造躯体)
2 コンクリート
3 補強済布基礎(補強済構造躯体)
4 第1鉄筋
5 アンカー材
6 第2鉄筋
7 型枠
11 基部
11a 基部の上面
11b 基部の側面
12 立ち上がり部
12a 立ち上がり部の側面
13 通し孔
101 鉄筋探知器
102 基礎鉄筋
103 入隅部
201 摺動用部材
202 摺動用部材
203 摺動用部材
M モルタル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートで形成され、基部と、この基部の上面から起立した立ち上がり部とを備える構造躯体の補強方法であって、
前記立ち上がり部の側面に複数の通し孔を横に並列して水平に開け、各通し孔に前記基部よりも長い鉄筋を通し、当該複数の鉄筋よりも高い位置で当該複数の鉄筋と前記構造躯体とを囲むように型枠を設置し、この型枠内にコンクリートを流し込んで前記基部の上面よりも広く増し打ちしたことを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項2】
請求項1に記載の構造躯体の補強方法において、
前記通し孔に前記鉄筋を通した後に、前記鉄筋と前記通し孔との間に形成されている隙間をモルタルで塞ぐことを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項3】
請求項2に記載の構造躯体の補強方法において、
前記モルタルに無収縮モルタルを使用したことを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の構造躯体の補強方法において、
前記各通し孔に前記鉄筋を通した後に、当該複数の鉄筋に別の複数の鉄筋を垂直に交差するように組み、その後に、これらの鉄筋よりも高い位置でこれらの鉄筋と前記構造躯体とを囲むように前記型枠を設置することを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の構造躯体の補強方法において、
前記型枠内にコンクリートを流し込む前に、前記立ち上がり部の側面の前記鉄筋の近傍または前記基部の少なくとも一方にアンカー材を固定したことを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の構造躯体の補強方法において、
前記型枠内にコンクリートを流し込む前に、前記基部の少なくとも上面に目荒らし加工を施したことを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の構造躯体の補強方法において、
前記立ち上がり部の側面に前記複数の通し孔を開ける前に、前記立ち上がり部に既に通されている基礎鉄筋の位置を鉄筋探知器を用いて探知し、当該基礎鉄筋の位置以外の部分に前記複数の通し孔を開けることを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項8】
請求項7に記載の構造躯体の補強方法において、
前記鉄筋探知器が、前記立ち上がり部の側面から前記基部の上面にかけての範囲をなぞって前記基礎鉄筋を探知するものである場合には、前記立ち上がり部の側面と前記基部の上面との間に形成されている入隅部に、前記鉄筋探知器を摺動させる摺動用部材をあてがって配置することを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項9】
コンクリートで形成され、基部と、この基部の上面から起立した立ち上がり部とを有する構造躯体を、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の補強方法により補強して得られることを特徴とする補強済構造躯体。
【請求項1】
コンクリートで形成され、基部と、この基部の上面から起立した立ち上がり部とを備える構造躯体の補強方法であって、
前記立ち上がり部の側面に複数の通し孔を横に並列して水平に開け、各通し孔に前記基部よりも長い鉄筋を通し、当該複数の鉄筋よりも高い位置で当該複数の鉄筋と前記構造躯体とを囲むように型枠を設置し、この型枠内にコンクリートを流し込んで前記基部の上面よりも広く増し打ちしたことを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項2】
請求項1に記載の構造躯体の補強方法において、
前記通し孔に前記鉄筋を通した後に、前記鉄筋と前記通し孔との間に形成されている隙間をモルタルで塞ぐことを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項3】
請求項2に記載の構造躯体の補強方法において、
前記モルタルに無収縮モルタルを使用したことを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の構造躯体の補強方法において、
前記各通し孔に前記鉄筋を通した後に、当該複数の鉄筋に別の複数の鉄筋を垂直に交差するように組み、その後に、これらの鉄筋よりも高い位置でこれらの鉄筋と前記構造躯体とを囲むように前記型枠を設置することを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の構造躯体の補強方法において、
前記型枠内にコンクリートを流し込む前に、前記立ち上がり部の側面の前記鉄筋の近傍または前記基部の少なくとも一方にアンカー材を固定したことを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の構造躯体の補強方法において、
前記型枠内にコンクリートを流し込む前に、前記基部の少なくとも上面に目荒らし加工を施したことを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の構造躯体の補強方法において、
前記立ち上がり部の側面に前記複数の通し孔を開ける前に、前記立ち上がり部に既に通されている基礎鉄筋の位置を鉄筋探知器を用いて探知し、当該基礎鉄筋の位置以外の部分に前記複数の通し孔を開けることを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項8】
請求項7に記載の構造躯体の補強方法において、
前記鉄筋探知器が、前記立ち上がり部の側面から前記基部の上面にかけての範囲をなぞって前記基礎鉄筋を探知するものである場合には、前記立ち上がり部の側面と前記基部の上面との間に形成されている入隅部に、前記鉄筋探知器を摺動させる摺動用部材をあてがって配置することを特徴とする構造躯体の補強方法。
【請求項9】
コンクリートで形成され、基部と、この基部の上面から起立した立ち上がり部とを有する構造躯体を、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の補強方法により補強して得られることを特徴とする補強済構造躯体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−72646(P2012−72646A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187297(P2011−187297)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】
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