説明

様々な可撓性を有するコンベアベルトおよびそれを組み立てる方法

【課題】ベルトの幅方向において様々な可撓性を有するコンベアベルトと、その組み立て方法を提供する。
【解決手段】幅および長さ、ならびに長手方向中心線を有するコンベアベルト10は、第1の長手方向縁部32、その反対側の第2の長手方向縁部34、および、ベルト10の全長にわたってベルトの長手方向中心線の周りに均等に配置される荷重支持領域50を有する。コンベアベルト10は、第1の長手方向縁部32と荷重支持領域50との間に配置される第1の可撓性領域40と、第2の長手方向縁部34と荷重支持領域50との間に配置される第2の可撓性領域42を有する。コンベアベルト10は、少なくとも1つの織物層60をさらに有し、織物層60は、幅方向において様々な密度を有し、第1および第2の長手方向縁部32、34と荷重支持領域50における織物層60の密度は、第1および第2の可撓性領域41、43における織物層60の密度より高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンベアベルトの分野に属する。より具体的には、本発明は、コンベアベルトの幅方向における可撓性が問題になるコンベアベルトに関し、かつ特に、ベルトパイプが形成されるときに縁部が重なり合うパイプコンベアベルトの種類に使用されるものであってよい。
【背景技術】
【0002】
ホース型ベルトコンベアまたはパイプコンベアとも呼ばれるチューブコンベアでは、機械的手段を使用することによってコンベアが搬送区間内で密閉チューブに形成される。搬送区間は、積載領域の下流側で排出領域の上流側の区間である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような種類のコンベアの使用時に、使用中ずっとこのベルトを密閉したままにしておくのは困難である。従来技術では、鋼製コード、またはベルト全体にわたって延びる織物のような他の補強物が使用される。したがって、可撓性に問題があり、ベルトを密封できるように重なり合わせるのに十分な程度に湾曲させる必要がある。
【0004】
他の種類のコンベアベルトでは、材料をコンベアベルト内に維持し、かつコンベアベルトをベルトの全長にわたって所定の位置に維持するために幅方向の可撓性が問題になることもある。
【0005】
ベルトの幅方向において領域ごとに可撓性を変えるのを可能にし、一方、製造が容易でありかつコストを最小限に抑えるコンベアベルト組み立て方法が望ましい。しかも、この組み立てでは、チューブ型コンベアベルトを適切に密封することが必要である。さらに、水平または垂直湾曲時に座屈に抵抗する管状コンベアベルトが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幅および長さ、ならびに長手方向中心線を有するコンベアベルトは、第1の長手方向縁部、およびその反対側の第2の長手方向縁部と、荷重支持領域も有する。荷重支持領域は、ベルトの全長にわたってベルトの長手方向中心線の周りに均等に配置される。コンベアベルトは、第1の可撓性領域と第2の可撓性領域も有し、第1の可撓性領域は第1の長手方向縁部と荷重支持領域との間に配置され、第2の可撓性領域は第2の長手方向縁部と荷重支持領域との間に配置される。コンベアベルトは、コンベアベルトの幅に相当する幅を有し、かつコンベアベルトの長さに相当する長さを有する少なくとも1つの織物層をさらに有し、織物層は、織物層の幅方向において様々な密度を有し、第1および第2の長手方向縁部ならびに荷重支持領域における織物層の密度は、第1および第2の可撓性領域における織物層の密度より高い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一態様による管状のコンベアベルト組立体の断面図である。
【図2】本発明の一態様による管状のコンベアベルトの断面図である。
【図3】本発明の一態様によるコンベアベルトの断面図である。
【図4】本発明の一態様によるコンベアベルトの断面図である。
【図5】本発明の一態様による管状のコンベアベルトの等角図である。
【図6】本発明の一態様によるコンベアベルトの断面図である。
【図7】本発明の一態様による管状のコンベアベルトの断面図である。
【図8】本発明の一態様による様々な密度を有する織物層の断面図である。
【図9】本発明の一態様による織物の仕様の見本を示す図である。
【図10】本発明の一態様によるコンベアベルトの断面図である。
【図11】本発明の一態様による織物の拡大詳細断面図である。
【図12】本発明の一態様によるコンベアベルトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の様々な態様が図1〜図12に示されている。図1〜図12は正確な縮尺ではなく、同じ構成部材には同じ参照番号が付されている。本発明の一態様によれば、コンベアベルトシステム20で使用されるコンベアベルト10は、幅12および長さ14、ならびに長手方向中心線16を有している。
【0009】
コンベアベルト幅12は、4つの領域、重なり領域30と、第1の可撓性領域40と、第2の可撓性領域42と、荷重支持領域50とで構成されている。コンベアベルト10は、第1の長手方向縁部32とその反対側の第2の長手方向縁部34とを有し、使用時には、第1の長手方向縁部32と第2の長手方向縁部34が重なり合って重なり領域30を形成して、ベルト10を管状に形成する。コンベアベルトはさらに、少なくとも1つの織物層60を有する。
【0010】
本発明の一態様によれば、織物層60は、ベルトの長さ14に相当する長さ61と、ベルト幅12に相当する幅62とを有している。織物層は、ベルトの幅62に沿って様々な密度を有している。
【0011】
荷重支持領域50は、ベルトの全長にわたってベルトの長手方向中心線16の周りに均等に配置されている。
【0012】
第1の可撓性領域40は、第1の長手方向縁部32と荷重支持領域50との間に配置され、第2の可撓性領域42は、第2の長手方向縁部34と荷重支持領域50との間に配置されている。
【0013】
本発明の一態様によれば、第1および第2の長手方向縁部32/34ならびに荷重支持領域50における織物層60(より高い密度を有する領域68)の密度は、第1および第2の可撓性領域40/42における織物層60(より低い密度を有する領域63)の密度より高い。
【0014】
本発明の一態様によれば、第1の可撓性領域40および第2の可撓性領域42はそれぞれ、ベルトの長手方向中心線16の周りに均等に分散されている。
【0015】
第1の可撓性領域40および第2の可撓性領域42はそれぞれ、ベルトの幅の方向に対応する幅を有しており、第1の可撓性領域の幅41は、第2の可撓性領域の幅43にほぼ等しい。
【0016】
他の実施形態によれば、第1の可撓性領域の幅41は第2の可撓性領域の幅43と異なる。
【0017】
第1の長手方向縁部32および第2の長手方向縁部34はそれぞれ、ベルトの幅の方向に対応する幅を有しており、第1の長手方向縁部の幅33は、第2の長手方向縁部の幅35にほぼ等しい。本発明の他の態様によれば、第1の長手方向縁部の幅33は第2の長手方向縁部の幅35と異なる。
【0018】
本発明の他の態様によれば、第1の可撓性領域40および第2の可撓性領域42はそれぞれ、ベルトの幅12の5%から35%の間の幅を有する。本発明の他の態様によれば、各可撓性領域は10%〜30%であってよく、他の実施形態では、各可撓性領域は15%〜25%であってよい。
【0019】
本発明の他の態様では、重なり領域30は幅36を有しており、重なり領域の幅36は、ベルトの幅12の5%から10%の間である。本発明の他の態様では、重なり領域はベルトの幅の10%から20%の間であってよい。
【0020】
本発明の他の態様では、荷重支持領域50はベルトの幅12の65%から80%の間の幅を有する。本発明の他の実施形態では、荷重支持領域はベルトの幅の50%から85%の間であってよい。
【0021】
従来のコンベアベルトは、塩化ポリビニルなどの可撓性マトリクス内に埋め込まれた補強織物から成る。補強織物は、複数の縦糸90に複数の横糸91を織り合わせることによって織られる。縦糸はベルトの長手方向または走行方向に延びており、横糸は縦糸に直角に配置されている。
【0022】
織りパターンを変えることによって織物層60の密度を変えることができる。織物の1インチ(2.54cm)当たりの末端数(epi)を変えることによって織物層60の密度を変えることができる(図11参照)。1インチ(2.54cm)当たりの末端数(epi)は、1インチ(2.54cm)内の縦糸の数を指す。織物の幅方向における織物のepiを変えることによって、ベルト構造は、従来使用されているのと同じ簡素な組み立て技術を使用して所望の可撓性領域を得ることができる。
【0023】
異なる領域に配置される複数の織物層によって、ベルトの幅方向における密度を変えることもできる。たとえば、ベルトの全幅にわたる織物層60があってよく、非可撓性領域にのみ追加の織物層65があってよい。
【0024】
ベルト10は内側表面17および外側表面18を有し、本発明の他の態様では、ベルト10は、外側表面18上に外側織物補強層70を有している。本発明の一実施形態では、外側織物補強層70は重なり領域30、第1および第2の可撓性領域40/42、ならびに荷重支持領域50を覆っている。他の実施形態では、形成されたベルトの直径80が250mm以下であるとき、外側織物補強層70は第1および第2の可撓性領域40/42ならびに荷重支持領域50を覆うが、重なり領域30は覆わない。他の実施形態では、形成されたベルトの直径80は250mm以下であるとき、外側織物補強層70は第1および第2の可撓性領域40/42を部分的に覆い、かつ荷重支持領域50を覆うが、重なり領域30は覆わない。
【0025】
本発明の他の態様では、直径80が250mmより大きいとき、ベルト10はさらに、内側表面17上に内側織物補強層72を有し、内側織物補強層72は第1および第2の可撓性領域40/42および荷重支持領域50を覆う。本発明の他の態様では、直径80が250mmより大きいとき、ベルト10はさらに、内側表面17上に内側織物補強層72を有し、内側織物補強層72は第1および第2の可撓性領域40/42を部分的に覆い、かつ荷重支持領域50を覆う。織物補強層70および/または72の被覆量は、管状形の最大直径80および/または搬送システムにおけるカーブの数やきつさのような様々な動作条件を受け入れるようにベルトの全体的な剛性を調整するために、臨機応変に調整することができる。
【0026】
本発明の一態様によれば、第1の長手方向縁部32と第2の長手方向縁部34における織物層は密度および幅が等しい。本発明の他の態様によれば、第1の長手方向縁部32と第2の長手方向縁部34における織物層は密度も幅も等しくない。
【0027】
本発明について、管状コンベアベルトの組み立てに関して説明したが、本発明を他のコンベアベルトに適用することもできる。幅方向の可撓度が問題になるあらゆるコンベアベルトにおいて、上述の織物(織物の幅方向における織りパターンまたはepiによって密度を変えることができる)を構成し、使用して、このようなベルトの組み立てを簡略化することができる。従来、組み立て全体にわたって多くの異なるサイズの織物層を形成することのような、ずっと多くの製造ステップが実施されている。このため、多大な労力がかかるだけでなく、各層がベルトの長さに沿ってずれる可能性があるため品質の低下を招くことがあった。このようなずれが生じると可撓性領域がずれることがあり、したがって、ベルトが不適切に摩耗するか、あるいはベルト経路に沿って位置ずれする恐れがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅および長さ、ならびに長手方向中心線を有するコンベアベルトであって、
第1の長手方向縁部、およびその反対側の第2の長手方向縁部と、
前記ベルトの全長にわたって前記ベルトの長手方向中心線の周りに均等に配置された荷重支持領域と、
前記第1の長手方向縁部と前記荷重支持領域との間に配置された第1の可撓性領域、および、前記第2の長手方向縁部と前記荷重支持領域との間に配置された第2の可撓性領域と、
前記コンベアベルトの幅に相当する幅を有し、かつ前記コンベアベルトの長さに相当する長さを有し、織物層の幅方向において様々な密度を有する少なくとも1つの織物層と、を有し、
前記第1および第2の長手方向縁部ならびに前記荷重支持領域における前記織物層の密度は、前記第1および第2の可撓性領域における前記織物層の密度より高いコンベアベルト。
【請求項2】
前記第1の可撓性領域および前記第2の可撓性領域は、前記ベルトの長手方向中心線の周りに均等に分散されている、請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項3】
前記第1の可撓性領域および前記第2の可撓性領域はそれぞれ、前記ベルトの幅の方向に対応する幅を有し、前記第1の可撓性領域の幅は前記第2の可撓性領域の幅に概ね等しい、請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項4】
前記第1の可撓性領域および前記第2の可撓性領域はそれぞれ、前記ベルトの幅の方向に対応する幅を有し、前記第1の可撓性領域の幅は前記第2の可撓性領域の幅とは異なる、請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項5】
前記第1の可撓性領域および前記第2の可撓性領域はそれぞれ、前記ベルトの幅の方向に対応する幅を有し、前記第1の可撓性領域の幅は前記ベルトの幅の5%から35%の間である、請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項6】
前記第1の可撓性領域および前記第2の可撓性領域はそれぞれ、前記ベルトの幅の方向に対応する幅を有し、前記第1の可撓性領域の幅は前記ベルトの幅の10%から30%の間である、請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項7】
前記第1の可撓性領域および前記第2の可撓性領域はそれぞれ、前記ベルトの幅の方向に対応する幅を有し、前記第1の可撓性領域の幅は前記ベルトの幅の15%から25%の間である、請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項8】
前記第1の長手方向縁部および前記第2の長手方向縁部はそれぞれ、前記ベルトの幅の方向に対応する幅を有し、前記第1の長手方向縁部の幅は前記第2の可撓性領域の幅に概ね等しい、請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項9】
前記第1の長手方向縁部および前記第2の長手方向縁部はそれぞれ、前記ベルトの幅の方向に対応する幅を有し、前記第1の長手方向縁部の幅は前記第2の可撓性領域の幅と異なる、請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項10】
重なり領域をさらに有し、使用時に、前記第1の長手方向縁部および前記第2の長手方向縁部が重なり合って前記重なり領域を形成して前記ベルトを管形状に形成する、請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項11】
前記重なり領域は幅を有し、前記重なり領域の幅は前記ベルトの幅の5%から10%の間である、請求項10に記載のコンベアベルト。
【請求項12】
前記重なり領域は幅を有し、前記重なり領域の幅は前記ベルトの幅の10%から20%の間である、請求項10に記載のコンベアベルト。
【請求項13】
前記荷重支持領域は、前記ベルトの幅の方向に対応する幅を有し、前記荷重支持領域の幅は前記ベルトの幅の65%から80%の間である、請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項14】
前記荷重支持領域は、前記ベルトの幅の方向に対応する幅を有し、前記荷重支持領域の幅は前記ベルトの幅の50%から85%の間である、請求項1に記載のコンベアベルト。
【請求項15】
長さおよび幅を有し、コンベアベルトの幅方向に変わる可撓度がより高い少なくとも1つの領域と前記可撓度がより低い少なくとも1つの領域とをさらに有するコンベアベルトを組み立てる方法であって、
織物が、前記コンベアベルトのより低い可撓度を有する領域に対応する、より高い密度を有する少なくとも1つの領域と、前記コンベアベルトのより高い可撓度を有する領域に対応する、より低い密度を有する少なくとも1つの領域とを有するような織りパターンによって、前記コンベアベルトの長さおよび幅に相当する長さおよび幅を有する織物を織ることと、
標準的な材料を使用するとともに、前記織物を織物層として使用して前記コンベアベルトを組み立てることとを含む、コンベアベルトを組み立てる方法。
【請求項16】
前記織物の様々な密度は、前記織物の幅方向における1インチ(2.54cm)当たりの末端数を変えることによって得られる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記織物の様々な密度は、前記織物の幅方向における糸の向きまたは織りパターンを変えることによって得られる、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記織物の様々な密度は、前記織物の幅方向における長手方向の糸のサイズ、種類、または撚りレベルを変えることによって得られる、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−79675(P2011−79675A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223538(P2010−223538)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(507375203)ヴェーヤンス テクノロジーズ、 インコーポレイテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Veyance Technologies, Inc.
【Fターム(参考)】