説明

標本の疾病および生理学的状態の検出のためのストークスシフト放射分光法

ストークスシフト放射スペクトルを、トリプトファン、エラスチン、コラーゲン、NADHおよびフラビンなどの光活性生体分子を含む組織を含有する各種試料について測定した。この新規な手法は新たな情報を引き出すことができ、新たな情報は簡単に引き出して得られるものではなく、同じ試料の励起および/または蛍光発光スペクトルから簡単に得られるものではない。例えば、組織試料のストークスシフト分光法は、ヒトおよび動物の疾病状態を診断できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年2月5日に出願された米国特許仮出願シリアル番号60/444,869からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般的に化学分析および生物医学的診断の分野に関し、特に分子成分を決定するストークスシフトに関連した蛍光発光および吸収の利用に関する。
【背景技術】
【0003】
様々なホストでの有機分子の放射および吸収は、色彩と分散についてのNewtonの研究以来、研究されてきた。物質状態の情報は、放射スペクトルおよび吸収スペクトルを測定することにより得られてきた。40年以上の間、分光学は、生物学、化学、および固体物理学で生じる基本的な過程を理解する上で重要な役割を演じてきた。生物学に関連して、動物およびヒト組織でのトリプトファン、コラーゲン、エラスチン、NADH、およびフラビンなどの固有の蛍光物質の存在により、CWおよび時間分解蛍光発光分光学を用いて疾病組織に生じる形態変化を探る潜在的機会が提供される。
【0004】
1984年以来、蛍光発光分光学は癌、良性及び周囲組織部位を分離して診断する道具として使われてきた。典型的には、組織は与えられた波長で励起して様々な波長の光を放射し、それは組織を特徴付ける。UVから青色域(280〜520nm)の波長は、構造の変化および分子濃度に関連した、組織内のタンパク質を励起し、スペクトルのフィンガープリントを与える。組織内の粒子は、トリプトファン、コラーゲン、エラスチン、およびNADHを含む。
【0005】
有機生体分子の基礎的な動力学は、エネルギー配位座標(E−Q)ダイアグラム上に生じる。ここで、E=エネルギーおよびQ=正規化された無次元の格子変位座標である。生体分子の基底状態および励起状態に関連した電子状態、振動状態および回転状態は、E−Qダイアグラムで表される。吸収および放射遷移は、E−Qダイアグラムでの状態間の垂直遷移として生じる(図1参照)。この過程の時間展開は、無放射格子緩和および励起の間、E−Qダイアグラムに従う。基底状態および励起状態は、電子−格子結合の差により様々な平衡Q座標値で示される。電子−格子結合の差は、Huang−Rhysパラメータ、Sで表される。
【0006】
典型的には、吸収と放射のピークは、様々な波長で起る。放射帯域は励起帯域より低いエネルギーを生じる。放射ピークおよび励起ピークのシフトは、α2Shωで与えられるストークスシフトとして知られている。ストークスシフトは、放射する有機分子周囲のホスト環境の分極化に依存する。大きなシフトは、極性環境、例えば水で観察される。遷移の双極子モーメントと、励起および放射の間のホスト分子の環境との間のこの相互作用に関連したエネルギー状態の位置づけにおける動力学的変化が存在する。
【特許文献1】B. B. Dans, Feng Liu,およびR. R. Alfano. “Time-resolved fluorescence and photon migration studies in biomedical and model random media.” Rep. Prog. Phys. (1997) 60, 227-292. 英国で出版
【特許文献2】Alfano R. R., D. B. Tata, J. Cordero, P. Tomashefsky, E. W. LongoおよびM. A. Alfano, “Laser induced fluorescence spectroscopy from native cancerous and normal tissues” IEEE J. Quantum Electron, (1984) QE-20, 1507-11.
【特許文献3】Alfano R. R., Das Bidyut B., Joseph Cleary, Romulo Prudente, Edward J. Celmer, “Light sheds light on cancer-distinguishing malignant tumor from benign tissue and tumors”, The Bulletin of the New York Academy of Medicine (1991). 67. 143-150.
【特許文献4】Alfano R. R., G. C. Tang, A. Pradhan, W. Lam, “Fluorescence spectra from cancerous and normal human breast and lung tissues.” IEEE J. Quantum Electron, (1987) QE-23. 1806-11.
【特許文献5】Yuanlong Yang, Edward J. Celmer, Margret Zurawska-Szczepaniak, R. R. Alfano, “Fundamental differences between malignant and benign breast tissues using an optical biopsy.” Photochemistry and Photobiology. 1997, 66, (4): 518-522.
【特許文献6】B. K. Ridley: “Quantum processes in semiconductors”, p237, Clarendon Press Oxford (1982).
【特許文献7】B. HendersonおよびG. F. Imbusch, “Optical spectroscopy of Inorganic Solids”, p. 197, Clarendon Press Oxford (1989).
【特許文献8】R. R. AlfanoおよびS. L. Shapiro, “Ultrafast phenomena in liquids and solids”, Scientific American (1973) 228, 42-55.
【非特許文献1】米国特許No. 4,930,516
【非特許文献2】米国特許 5,042,494
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的の一つは、蛍光発光と吸収を合わせた、ストークスシフトに関連した新規な分光学的方法を開発することである。この方法はストークスシフト分光法(SSS)と呼ばれる。
【0008】
本発明の他の目的は、癌、前癌、正常またはアテローム性動脈硬化症などの疾病状態を特徴付ける生物学的組織および細胞内の天然生体マーカーと関連した変化を、より高感度で検出する可能性を有する新規な分光学的方法を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、試料の検査方法は、a.励起光で試料を励起し、それによって放射光を発生させる工程;b.励起光の波長と周波数からなる群から選択されるパラメータを調整して励起光を変化させる工程;およびc.励起光と放射光を同期走査してスペクトルを発生させる工程を含み、励起光の調整したパラメータと放射光の調整したパラメータの間の一定間隔を同期走査の間維持し、かつ一定間隔を、本質的に試料の少なくとも一つの構成成分のストークスシフトであるように維持するものである。
【0010】
本発明の他の一実施形態によれば、試料の検査方法は、a.励起光で試料を励起し、それによって放射光を発生させる工程;b.波長と周波数からなる群から選択されるパラメータを調整して励起光を変化させる工程;c.励起光の調整したパラメータと放射光の調整したパラメータの間の一定間隔を同期走査の間維持しながら、励起光と放射光を同期走査して第1のスペクトルを発生させる工程;d.一定間隔を調整し、a)からc)の工程を少なくとも一回繰り返して少なくとも第2のスペクトルを発生させる工程を含み、かつ一定間隔を、本質的に試料の少なくとも一つの構成成分のストークスシフトであるように維持するまたは調整するものである。
【0011】
ストークスシフト放射は、吸収波長と放射波長の間の固定した波長シフト、吸収スペクトルプロファイルと放射スペクトルプロファイルのコンボリューションを与えるΔλ=λ−λで測定される。放射強度は固定したΔλ=λ−λの波長で測定され走査される。ストークスシフトΔλ=λ−λは、周波数領域ではΔν=ν−νで表すことができ、Hz、THzまたはcm−1単位で表すことができる。このようにして、組織などの物質中に含まれる重要な分子が強調されるであろう。
【0012】
ストークスシフト放射スペクトルでは、励起波長および放射波長は、励起波長と放射波長の間の固定値Δλと同期して走査される。放射強度はλで測定される。試料中の様々な分子を、励起して明らかにすることができ、固定波長で励起された蛍光発光スペクトルとは全く異なる。ストークスシフト放射強度は、試料中に存在する各分子成分に対するΔλ値に依存する。最大強度は、Δλが励起した特定分子型のストークスシフトにほぼ等しい場合に生じる。組織中の重要分子の蛍光発光ピークは、ストークスシフト放射スペクトルを用いることにより、一回の走査で得ることができる。ピーク位置は、SSスペクトルに対する複数のピークのフィットを用いて決定することができる。SSスペクトルは、癌やアテローム性動脈硬化症の検出などの疾病感知で重要な役割を演ずるであろう。
【0013】
好適な一実施形態では、少なくとも一つの光ファイバを、試料に励起光を伝播するのに、または試料からビデオシステムに走査のため励起光を伝播するのに、あるいはこれら両方に用いる。光ファイバは、内視鏡系の一部品として用いられる。
【0014】
本発明を特徴付ける新規性の各種特徴点は、添付した請求項の特徴と開示した一部の形態で指摘される。本発明、その機能の利点、およびその使用により達成される特定の目的をより理解するために、例証および記載した本発明の好適な実施形態にある図および記述事項を援用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明によれば、検査される組織は胸部、尿、結腸、胃、脳、前立腺、または婦人科系組織であってもよい。組織または細胞は、正常、癌、前癌、およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される状態であってもよい。励起波長は200nmから800nmの範囲で変化させてもよい。
【0016】
トリプトファン、NADH、およびフラビンの生体分子を検査するため、これらの分子の試料をSigma Companyから得た。組織はIRB(アイルランド)のNational Disease Research Interchange (NDRI)から提供された。新鮮で、分光測定以前に化学的処理も冷凍もされていなかった。
【0017】
トリプトファン、NADHおよびフラビンを含む混合溶液を、試験測定のため調製した。この混合溶液中の各成分の濃度は、各成分の蛍光発光強度が同等となるように調整した。
【0018】
ストークスシフト放射スペクトルは、同期走査モードを選択して、自動二元ランプ系分光光度計(Mediciscience Technology Corp. CD scanner)を用いて行った。励起モノクロメータと放射モノクロメータの間の波長間隔は、Δλ=λ−λ=10,20,30,...200nmまたはΔν=ν−νで調整した。対応するΔλ値またはΔν値にしたがって値を計算する。
【0019】
波長シフトΔλ(nm)、周波数シフトΔν(THz)および周波数シフトΔν(cm−1)の間の関係を、表1に示す。(1THz)=33.3564cm−1
【0020】
【表1】

【0021】
トリプトファン、NADHおよびフラビンの生体分子溶液の放射および吸収スペクトルを合わせて測定し、図2に示す。各分子に関連した吸収ピークおよび放射ピークの曲線は異なる。この違いをストークスシフト(SS)と呼ぶ。周波数領域でのSS分光学(図10参照)では、吸収A(ν)スペクトルと放射I(ν)スペクトルの重なり領域を測定する(図10参照)。
【0022】
【数1】

【0023】
Δλの範囲は、重なり分解の測定と2つのスペクトルの相関を与える。様々な分子についての測定したストークスシフト値Δλ=λ−λを以下の表2に示す。
【0024】
表2.蛍光発光スペクトルおよび吸収スペクトルによる重要な生体分子の吸収ピーク、放射ピークおよびストークスシフト
【0025】
【表2】

【0026】
注:便宜上Δλ空間のストークスシフトを測定するのが一般的なやり方である。しかしながら、周波数シフトの方が正確なSSスペクトルを与える。
【0027】
本発明に係る調整したパラメータが波長であるならば、維持または調整された一定間隔は、約40nmから145nmの範囲内、好ましくは約40nmから120nmである。調整されたパラメータが周波数の場合、一定間隔は約5THzから500THzまたは150cm−1から15,000cm−1の範囲内、好ましくは10THzから500THzまたは300cm−1から15,000cm−1である。
【0028】
図3に、10nmから100nmの様々なΔλ値を有するトリプトファン溶液のストークスシフト放射スペクトルを示す。放射強度はΔλで変化する。Δλがストークスシフトに等しい場合、放射強度は最大となる。図3では、最大放射強度は(SS)Δλ=70nmであり、これは波長空間で測定した表2に示した結果と一致する。本発明によれば、Δλ値は、Δλ値は、5〜50nm、5〜100THz、または50〜3000cm−1の範囲内で漸増するように調整してもよい。
【0029】
図4に、様々なΔλ値を有する水中のトリプトファン、NADHとフラビンからなる混合溶液のストークスシフト放射スペクトルを示す。各分子成分についての放射ピークが、放射スペクトルのストークスシフトに見られた。Δλ値を有する各種分子についてのピーク振幅は、各分子成分に関連する。最大強度は、(SS)Δλが励起した特定の分子のストークスシフトにほぼ等しい場合に生じる。この混合溶液については、ストークスシフトは、トリプトファンおよびNADHに対してそれぞれほぼ80nmと120nmであり、フラビンに対して140、80nmである。混合溶液からのこれらの結果は、表2に示した各分子成分単独を含む溶液からの結果よりもやや大きい。
【0030】
図5に、様々な波長で励起した正常な胸部組織の検査用蛍光発光スペクトルを示す。蛍光発光ピーク位置から、様々な励起波長に関連したトリプトファン、コラーゲン、およびNADHが認められる。
【0031】
様々なΔλ値を有する正常な胸部組織のストークスシフト放射スペクトルを、図6に示す。放射ピーク強度はΔλ値で変化し、最大強度のΔλ値は、様々な分子成分の存在のため異なる。図6のスペクトル曲線は、図5に示した一般的な蛍光発光曲線よりも組織内の分子に対してより高感度である。
【0032】
図7に、胸部組織についてΔλ〜50nmを有するストークスシフトスペクトルの計算した複数曲線フィットを示す。フィットさせたピーク位置を以下の表3に示す。
【0033】
表3.S.Sから胸部ストークスシフトスペクトルの複数曲線フィットに用いたパラメータ(Δλ=50nm)
【0034】
【表3】

【0035】
放射波長=励起波長+50nm
【0036】
様々なΔλ値を有するスペクトルについては、ストークスシフトは分子成分の存在(トリプトファン、NADH、コラーゲン、フラビンおよびポルフィリン)に依存するため、曲線ピークフィットはほぼ等しい。
【0037】
図8に、正常組織および癌組織のSS曲線を示す。図8に示したように、組織試料が癌か、前癌か、または正常であるかを決定するのに、組織試料のスペクトルの少なくとも二つの波長または周波数での強度間の比と既知条件の別の組織試料の同様の強度間の比とを比較してもよい。さらに、組織試料のスペクトルの少なくとも一つの波長または周波数でのピーク位置と既知条件の別の組織試料のピーク位置を比較してもよい。例えば、I290/I340のピーク振幅の比またはこれら2つの曲線の第1ピークのピーク位置のいずれかの差は、in vivoでの組織の正常部位から顕著な癌を診断する方法を与える。通常、癌はI290/I340値の比が高く、一方、正常組織はI290/I340値の比が小さい。さらに、SSスペクトルの正常組織の第1ピークの位置は288.08±0.80であり、癌については291.49±1.60にシフトする。正常組織と異常組織(例えば癌組織)の第1ピークの位置の波長差(Δλ)は、典型的には1nmより大きい。この差はタンパク質の変化を反映する。SSスペクトル(図8)は、一般的な蛍光発光スペクトル(図12参照)よりも成分を強調している。
【0038】
図9に、コラーゲンのSSスペクトルを示す。
【0039】
図10に、(Δν)average=74THzでのTHzのSSスペクトルを示す。
【0040】
図11に、数組のLEDを用いて、様々な励起波長で組織を励起し、例えばCCDまたはCMOSなどのビデオシステムを用いて、励起光と放射光の波長間の一定間隔を有する様々な波長での放射を検出するのを示す。複数のスペクトル通過帯域フィルタが、同期走査工程で励起光を濾波するのに用いられる。同期走査工程で励起光と放射光を記録するビデオシステムは、CCD、CMOS、PMT、光検出器およびアバランシュダイオードであってもよく、PMTが好ましい。
【0041】
CCDまたはCMOSビデオシステムは、同期走査工程で励起光と放射光を記録するのに用いられる。
【0042】
図12に、300nmで励起した正常胸部組織および癌胸部組織の蛍光発光スペクトルを示す。I340nm/I440nm値の比は、癌組織および正常組織について27.92および5.49である。SSと蛍光発光方法とは一致する。図12から、蛍光発光のプロファイル構造は少ない。コラーゲンやNADHなどの一部の成分の蛍光発光ピークは明らかに現われていなかった。図8および図10を図12と比較すると、SSスペクトルは、たとえ50nmの固定Δλ値で走査したとしても、成分のより多くの構造を有している。
【0043】
一般的な蛍光発光スペクトルでは、励起波長は走査中固定される。試料が一分子成分以上を含む場合、蛍光発光スペクトルは図5や図12に示したように一回の走査ですべてのピークを示すことができない。組織の様々な蛍光発光ピークを励起するのに様々な励起波長が必要となる。固定波長で励起した蛍光発光スペクトルとは異なり、ストークスシフトスペクトルの励起波長および放射波長は、励起波長(周波数)と放射波長(周波数)の間の固定値Δλまたは(Δν)で同期走査される。この方法によれば、一回の走査後、組織中に存在する様々な分子からの最も強い蛍光発光ピークを得ることができる(図8参照)。走査中、励起波長と放射波長が変化するので、Δλ値が特定分子のストークスシフトに等しい場合、励起波長と放射波長は、存在する特定分子の吸収ピークと放射ピークで示される。最大ストークスシフト振幅は、組織および細胞内の様々なおのおのの光活性生体分子に達する。
【0044】
本発明は、実施例のみに示される上記実施形態に限定されるものでなく、添付した特許請求の範囲で規定された保護の範囲内で各種方法に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】吸収遷移および放射遷移と緩和過程を示す有機分子のエネルギー配位座標ダイアグラムである。
【図2】トリプトファン、NADHおよびフラビンの吸収スペクトル、放射スペクトルおよびストークスシフト(SS)を示す。
【図3】様々なΔλ値についてのトリプトファンのストークスシフト放射スペクトルを示す。
【図4】様々なΔλ値を有するトリプトファン、NADHとフラビンを含む混合溶液のストークスシフト放射スペクトルを示す。
【図5】様々な励起波長で励起した正常な胸部組織の蛍光発光スペクトルを示す。
【図6】プロファイルのそれぞれに記したように様々なΔλ値を有する正常な胸部組織のストークスシフト放射スペクトルを示す。
【図7】マイクロソフトオフィスの“Origin”ソフトウエアを用いて正常な胸部組織のストークスシフト放射の曲線をフィットさせたものを示す。
【図8】癌組織および正常組織のストークスシフト(“SS”)スペクトルを示す。
【図9】コラーゲンのSSスペクトルを示す。
【図10a】正常組織および癌組織に対する(Δν)average=74THzでのTHzの周波数領域における吸収A(ν)スペクトルと放射I(ν)スペクトルの重なりを例示しているSSスペクトルである。
【図10b】正常組織および癌組織に対する周波数領域(ν)におけるSSスペクトルである。
【図11】数組のLED(λおよび光検出器)を用いて、組織を励起し、固定したΔλ=λ−λ(I=1,2,...n)で配置した(λ’)の放射を検出するフィルタを示す。
【図12】300nmで励起した正常胸部組織および癌胸部組織(図8で使用したのと同じ組織)の蛍光発光スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.励起光で試料を励起し、それによって放射光を発生させる工程;
b.励起光の波長と周波数からなる群から選択されるパラメータを調整して励起光を変化させる工程;および
c.励起光と放射光を同期走査してスペクトルを発生させる工程を含み、
励起光の調整したパラメータと放射光の調整したパラメータの間の一定間隔を同期走査の間維持し、かつ
前記一定間隔を、本質的に試料の少なくとも一つの構成成分のストークスシフトであるように維持することを特徴とする試料の検査方法。
【請求項2】
前記試料のスペクトルと既知条件の別の試料のスペクトルを比較する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料が、組織と細胞からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試料が組織であって、かつ前記方法が、前記組織試料のスペクトルの少なくとも二つの波長または周波数での強度間の比と既知条件の別の組織試料の同様の強度間の比とを比較し、それによって前記組織試料が癌、前癌、または正常であるかを決定する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも二つの波長または周波数での強度間比が、約290nmと約340nmの波長での強度間比であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
癌組織試料に対する約290nmと約340nmの波長での強度間比が、正常組織試料に対するそれらの強度間比より高いことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が組織であって、かつ前記方法が、前記組織試料のスペクトルの少なくとも一つの波長または周波数でのピーク位置と既知条件の別の組織試料のピーク位置を比較し、それによって前記組織試料が癌、前癌、または正常であるかを決定する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つの波長が約290nmであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記調整したパラメータが波長であって、かつ前記一定間隔が約40nmから145nmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記一定間隔が約40nmから120nmであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記一定間隔が約50nmであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記調整したパラメータが周波数であって、かつ前記一定間隔が約5THzから500THzであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記一定間隔が約10THzから500THzであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記一定間隔が約150cm−1から15,000cm−1であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記一定間隔が約300cm−1から15,000cm−1であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記組織が、胸部、尿、結腸、胃、脳、前立腺、腎臓、肝臓、および婦人科系組織からなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項17】
前記組織が、トリプトファン、NADH、フラビンおよびコラーゲンの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記試料が、正常、癌、前癌およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される状態にあることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が、細菌、ウイルスおよび他の生物学的複合種からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記励起光の波長が、200nmから800nmの範囲で変化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
スペクトル通過帯域フィルタを、同期走査工程で前記励起光を濾波するのに用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項22】
光検出器、CCD、CMOS、およびアバランシュダイオードからなる群から選択されるビデオシステムを、同期走査工程で前記励起光と前記放射光を記録するのに用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記ビデオシステムがCCDであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
複数のLEDを、前記励起光を発生するのに用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記励起光の少なくとも一部が、前記試料を励起する前に、少なくとも一つの光ファイバを通って伝播することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記光ファイバが内視鏡の部品であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記放射光の少なくとも一部が、前記放射光を走査する前に、少なくとも一つの光ファイバを通って伝播することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記光ファイバが内視鏡の部品であることを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
a.励起光で試料を励起し、それによって放射光を発生させる工程;
b.波長と周波数からなる群から選択されるパラメータを調整して励起光を変化させる工程;
c.励起光の調整したパラメータと放射光の調整したパラメータの間の一定間隔を同期走査の間維持しながら、励起光と放射光を同期走査して第1のスペクトルを発生させる工程;
d.前記一定間隔を調整し、前記a)からc)の工程を少なくとも一回繰り返して少なくとも第2のスペクトルを発生させる工程を含み、かつ
前記一定間隔を、本質的に試料の少なくとも一つの構成成分のストークスシフトであるように維持するまたは調整することを特徴とする試料の検査方法。
【請求項30】
前記試料のスペクトルと既知条件の別の試料のスペクトルを比較する工程をさらに含むことを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記試料が、組織と細胞からなる群から選択されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記組織が、胸部、尿、結腸、胃および婦人科系組織からなる群から選択されることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記組織が、トリプトファン、NADH、フラビンおよびコラーゲンの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記試料が、正常、癌、前癌およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される状態にあることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記調整したパラメータが波長であって、前記励起光の波長が、200nmから800nmの範囲で変化することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記調整したパラメータが波長であって、かつ前記一定間隔が10〜145nmの範囲内で維持または調整されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項37】
前記調整したパラメータが波長であって、かつ前記d)の調整工程での一定間隔の変化が、5〜50nmの範囲内で漸増することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項38】
前記調整したパラメータが周波数であって、かつ前記一定間隔がΔν=5〜500THzの範囲内で維持または調整されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項39】
前記調整したパラメータが周波数であって、かつ前記d)の調整工程での一定間隔の変化が、5〜100THzの範囲内で漸増することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項40】
前記調整したパラメータが周波数であって、かつ前記一定間隔がΔν=150cm−1〜15,000cm−1の範囲内で維持または調整されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項41】
前記調整したパラメータが周波数であって、かつ前記d)の調整工程での一定間隔の変化が、50〜3000cm−1の範囲内で漸増することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項42】
スペクトル通過帯域フィルタを、同期走査工程で前記励起光を濾波するのに用いることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項43】
CCD、CMOS、PMT、および光検出器からなる群から選択されるビデオシステムを、同期走査工程で前記励起光と前記放射光を記録するのに用いることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項44】
複数のLEDを、前記励起光を発生するのに用いることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項45】
前記励起光の少なくとも一部が、前記試料を励起する前に、少なくとも一つの光ファイバを通って伝播することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項46】
前記光ファイバが内視鏡の部品であることを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記放射光の少なくとも一部が、前記放射光を走査する前に、少なくとも一つの光ファイバを通って伝播することを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項48】
前記光ファイバが内視鏡の部品であることを特徴とする請求項47に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−521473(P2007−521473A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502987(P2006−502987)
【出願日】平成16年1月23日(2004.1.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/001998
【国際公開番号】WO2004/072295
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(503161626)リサーチ ファウンデーション オブ シティ ユニバーシティ オブ ニューヨーク (4)
【出願人】(591019704)
【出願人】(505294492)
【Fターム(参考)】