説明

標本化周波数変換装置、および、信号再生装置

【課題】異なる標本化周波数の信号を切り替えて標本化周波数変換を行う際に、入力標本化周波数と出力標本化周波数の比を求める間、標本化周波数変換を実施できない。
【解決手段】標本化周波数変換の対象となる信号を入力端子102〜104を介して常時入力し、個別に設けた標本化周波数比検出回路105〜107で標本化周波数比を検出しておく。標本化周波数比選択回路108は、標本化周波数変換を行う信号を選択する出力信号選択回路109が選択した信号に対応する標本化周波数比データを補間回路111に送り、補間回路111はオーバーサンプリング回路110がオーバーサンプリング処理を施した回路に対して補間処理を行い、標本化周波数変換を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号の標本化周波数を任意の標本化周波数に変換し出力する標本化周波数変換装置、および、標本化周波数が異なる複数のデジタル信号の復調処理を行い、その中から所望のデジタル信号を選択し出力する信号再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、信号処理のデジタル化が進み、特に音声信号においては、デジタルオーディオテープ、コンパクトディスクに始まり、圧縮音声データを記録可能な光ディスク装置であるミニディスク、インターネットを用いた音楽配信、デジタルオーディオプレーヤの普及、さらには、AM/FMラジオの復調処理のデジタル化など、ほとんどの音楽ソースがデジタル化されつつある。これらの複数の音楽ソースに対応することは、コンポーネントステレオなどの信号再生装置にとって重要な機能であるが、個々の音楽ソースを見ると、データフォーマットは統一されておらず、標本化周波数をとってみても、主なものとして、32kHz、44.1kHz、48kHz、96kHzなど複数の周波数が併存している状態にある。
【0003】
周波数特性補正処理や音量調整処理などの音声処理を施すことを考えた場合、標本化周波数が異なった状態では、標本化周波数毎にフィルタ係数を変えるなどが必要となり、処理が煩雑になる。この課題に対しては、標本化周波数変換装置を用いて標本化周波数を変換し、音声処理を行う段階での標本化周波数をそろえることが有効である。標本化周波数変換装置は、入力信号の2つのサンプル間を、出力信号の標本化周波数(以下、出力標本化周波数と称す。)に応じて補間することにより標本化周波数変換を行うが、この際の補間位置を決める方法として、入力信号の標本化周波数(以下、入力標本化周波数と称す。)と出力標本化周波数の比を用いることが一般的である。
【0004】
複数の入力ソースから出力信号を選択する場合、選択の前後で入力標本化周波数が変わることが考えられる。入力標本化周波数の変動に対応する従来の方法としては、入力標本化周波数と出力標本化周波数の標本化周波数比を短い時間周期と長い時間周期でそれぞれ検出する構成を有するものがある(例えば、特許文献1参照。)。従来の標本化周波数変換装置では、周波数変動が大きいときには短い時間周期で検出した標本化周波数比用いて周波数変動に対する応答を速くし、周波数変動が小さいときには長い時間周期で検出した標本化周波数比を用いることにより精度の高い補間位置の算出を可能としている。
【特許文献1】特開平7−212190号公報(第5頁 図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の標本化周波数変換装置では、音声ソースの切り替えに伴い入力標本化周波数が変わった際に以下の課題を有している。すなわち、正しい標本化周波数比を得るためには、計測時間として短い時間周期の2倍以上の時間が必要となり、その間標本化周波数変換処理が正しく行われない空白時間が生じることとなる。
【0006】
本発明は、この点に鑑み、入力標本化周波数が切り替わった際にも空白時間なしに標本化周波数変換処理を行うことができる標本化周波数変換装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の標本化周波数変換装置は、デジタル信号を入力し入力デジタル信号として出力する複数の入力手段と、前記入力デジタル信号の標本化周波数である入力標本化周波数を示す信号を入力する複数の入力標本化周波数入力手段と、出力信号の標本化周波数である出力標本化周波数を示す信号を生成する出力標本化周波数生成手段と、前記入力標本化周波数入力手段の出力および前記出力標本化周波数生成手段の出力を入力し、前記入力標本化周波数と前記出力標本化周波数の比を検出し出力する複数の標本化周波数比検出手段と前記複数の入力手段が出力する入力デジタル信号から出力に用いるデジタル信号を選択する出力信号選択手段と、前記複数の標本化周波数比検出手段が検出する標本化周波数比から補間処理に用いる標本化周波数比を選択する標本化周波数比選択手段と、前記出力信号選択手段が出力するデジタル信号に対して前記標本化周波数比選択手段の出力する標本化周波数比を用いて補間処理を施し、前記出力信号として出力する補間手段を備える。
【0008】
また、本発明の標本化周波数変換装置は、デジタル信号を入力し入力デジタル信号として出力する複数の入力手段と、前記入力デジタル信号の標本化周波数である入力標本化周波数を示す信号を入力する複数の入力標本化周波数入力手段と、前記複数の入力標本化周波数入力手段が出力する入力標本化周波数を示す信号から一つの入力標本化周波数を示す信号を選択する入力標本化周波数選択手段と、出力信号の標本化周波数である出力標本化周波数を示す信号を生成する出力標本化周波数生成手段と、前記入力標本化周波数選択手段の出力と前記出力標本化周波数生成手段の出力を入力し、前記入力標本化周波数と前記出力標本化周波数の比を検出し出力する標本化周波数比検出手段と、前記標本化周波数比検出手段が検出した標本化周波数比を、前記入力デジタル信号毎に記憶する複数の記憶手段と、前記複数の入力手段が出力する入力デジタル信号から出力に用いるデジタル信号を選択し、出力する出力信号選択手段と、前記複数の記憶手段が記憶する標本化周波数比から補間処理に用いる標本化周波数比を選択する標本化周波数比選択手段と、前記出力信号選択手段が出力するデジタル信号に対して前記標本化周波数比選択手段の出力する標本化周波数比を用いて補間処理を施し、前記出力信号として出力する補間手段を備える。
【0009】
また、上記の標本化周波数変換装置にて、周波数比検出手段は周波数検出完了信号を出力し、標本化周波数比選択手段は、前記周波数検出完了信号がディスエブルの際には、固定値を標本化周波数比として出力することを特徴とする。
【0010】
また、上記の標本化周波数変換装置にて、入力標本化周波数入力手段は、複数の信号復調部の動作クロックを入力し、前記動作クロックを分周して入力標本化周波数を示す信号を生成することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の信号再生装置は、入力信号を入力し、前記入力信号に応じた復調処理を施し、入力デジタル信号として出力する複数の信号復調部と、前記入力デジタル信号の標本化周波数である入力標本化周波数を示す信号を入力する複数の入力標本化周波数入力部と、出力デジタル信号の標本化周波数である出力標本化周波数を示す信号を生成する出力標本化周波数生成部と、前記入力標本化周波数入力部の出力および前記出力標本化周波数生成部の出力を入力し、前記入力デジタル信号のおのおのの標本化周波数と前記出力標本化周波数の比を検出し出力する複数の標本化周波数比検出部と、前記複数の信号復調部が出力する入力デジタル信号から出力に用いるデジタル信号を選択する出力信号選択部と、前記複数の標本化周波数比検出部が検出する標本化周波数比から補間処理に用いる標本化周波数比を選択する標本化周波数比選択部と、前記出力信号選択部が出力する信号に対して前記標本化周波数比選択部の出力する標本化周波数比を用いて補間処理を施し、前記出力デジタル信号として出力する補間部と、前記補間部が出力するデジタル信号をデジタルアナログ変換して出力するデジタルアナログ変換部を備える。
【0012】
また、発明の信号再生装置は、入力信号を入力し、前記入力信号に応じた復調処理を施し、入力デジタル信号として出力する複数の信号復調部と、前記入力デジタル信号の標本化周波数である入力標本化周波数を示す信号を入力する複数の入力標本化周波数入力部と、前記複数の入力標本化周波数入力部が出力する入力標本化周波数を示す信号から一つの入力標本化周波数を示す信号を選択する入力標本化周波数選択部と、出力音声信号の標本化周波数である出力標本化周波数を示す信号を生成する出力標本化周波数生成部と、前記入力標本化周波数選択部の出力と前記出力標本化周波数生成部の出力を入力し、前記入力標本化周波数と前記出力標本化周波数の比を検出し出力する標本化周波数比検出部と、前記標本化周波数比検出部が検出した標本化周波数比を、前記入力デジタル信号毎に記憶する複数の記憶部と、前記複数の信号復調部が出力する入力デジタル信号から出力に用いるデジタル信号を選択し、出力する出力信号選択部と、前記複数の記憶部が記憶する標本化周波数比から補間処理に用いる標本化周波数比を選択する標本化周波数比選択部と、前記出力信号選択部が出力するデジタル信号に対して前記標本化周波数比選択部の出力する標本化周波数比を用いて補間処理を施し、前記出力信号として出力する補間部と、前記補間部が出力するデジタル信号をデジタルアナログ変換して出力するデジタルアナログ変換部を備える。
【0013】
また、上記の信号再生装置にて、周波数比検出部は周波数検出未完了信号を出力し、標本化周波数比選択部は、前記周波数検出未完了信号がイネーブルの際には、固定値を標本化周波数比として出力することを特徴とする。
【0014】
また、発明の信号再生装置は、入力標本化周波数入力部は、複数の信号復調部の動作クロックを入力し、前記動作クロックを分周して入力標本化周波数を示す信号を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の標本化周波数変換装置によれば、複数のデジタル入力信号に対しておのおのに対応する標本化周波数比を検出する標本化周波数比検出手段を設け、常にそれぞれの標本化周波数比を検出しておくことにより、任意のタイミングで出力に用いる入力信号を切り替えた場合にも即座に最適な標本化周波数比を得ることができ、その結果、入力標本化周波数の変更に伴う標本化周波数変換の空白期間を解消することができる。
【0016】
また、1つの標本化周波数比検出手段を用い、各入力信号の標本化周波数比を順次求めて個別の記憶手段に記憶しておくことにより、より少ない回路規模で即座に最適な標本化周波数比を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下の実施の形態では特に必要な時以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0018】
(実施の形態1)
本実施の形態では、3つの入力信号を入力し、標本化周波数変換処理を施し、1つの出力信号を得る標本化周波数変換装置を例として説明する。
【0019】
図1において、101は出力標本化周波数を示す信号、たとえば出力標本化周波数をA分周(Aは自然数)した信号を入力する入力端子、102〜104は任意の標本化周波数をもつ入力信号を入力する入力端子、105〜107は、入力端子101から入力した信号と入力端子102〜104から入力した信号の周波数比を求める標本化周波数比検出回路、108は標本化周波数比検出回路105〜107が出力する標本化周波数比データから、一つの信号を選択し出力する標本化周波数比選択回路、109は入力端子102〜104から入力する信号の中から、標本化周波数変換する信号を選択する出力信号選択回路、110は出力信号選択回路109が出力する信号をオーバーサンプリング処理し出力するオーバーサンプリング回路、111はオーバーサンプリング回路110が出力する信号に対し、標本化周波数比選択回路108が出力する標本化周波数比データに基づいて補間処理(たとえば直線補間)を施し、出力端子112から出力する補間回路である。図2は入力端子102〜104が入力する信号を示すタイミングチャートである。
【0020】
以下、本実施の形態における標本化周波数変換装置の動作について説明する。入力端子101には、出力標本化周波数を分周した信号を入力する。たとえば、出力標本化周波数を48kHz、分周比を8192とした場合、5.859375Hzの信号を入力する。入力端子102〜104には任意の標本化周波数を持つ信号が入力される。たとえば、入力端子102には標本化周波数が32kHz、入力端子103には標本化周波数が44.1kHz、入力端子104には標本化周波数が48kHzの信号が入力される。入力信号の形態は、たとえば、図2に示す形態をとる。2チャンネルのデータをシリアル転送する例を示しており、201は標本化周波数と同じ周波数のワードクロック、202は標本化周波数の64倍の周波数を持つビットクロック、203はビットクロック202の立ち下がりエッジ毎に更新されるシリアルデータである。ワードクロック201がHighの期間に片方のチャンネルのデータを、Lowの期間に他方のチャンネルのデータを転送する。ビットクロック202の周波数を標本化周波数の64倍とした場合、入力端子102〜104に入るビットクロックは、それぞれ2048kHz、2822.4kHz、3072kHzとなる。
【0021】
標本化周波数比検出回路105〜107は、入力端子101から入力する信号1周期あたりのビットクロックのエッジの数を求め、標本化周波数比データとして出力する。たとえば、入力端子102からの信号を入力する標本化周波数比検出回路105は、標本化周波数比として349525前後の数値を出力する(2048000÷5.859375=349525.33、小数点以下は次回の周波数比検出に繰り入れる。また、入力標本化周波数の揺らぎにより数値は前後する)。同様に標本化周波数比検出回路106は481689前後、標本化周波数比検出回路107は524288前後の値を出力する。
【0022】
標本化周波数比検出回路105〜107が出力する標本化周波数比データは標本化周波数比選択回路108に入り、標本化周波数比選択回路108は入力した標本化周波数比データから一つを選択し、出力する。この選択は、出力信号選択回路109による信号の選択に連動して行う。すなわち、出力信号選択回路109が外部に出力すべき入力信号を入力端子102〜105から入力する入力信号の中から選択し、標本化周波数比選択回路108は出力信号選択回路109によって選択された信号に対応する標本化周波数比データを出力する。
【0023】
出力信号選択回路109の出力はオーバーサンプリング回路110にて、たとえば256倍オーバーサンプリング処理を施され、補間回路111に入る。補間回路111は標本化周波数比選択回路108が出力する標本化周波数比データをもとにオーバーサンプリング回路110が出力する2つの連続するデータサンプル間を直線補間し、出力標本化周波数に標本化周波数変換された信号を生成し、出力端子112を介して出力する。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態によれば、異なる標本化周波数の入力信号をそれぞれ入力する複数の入力端子と、各入力端子毎に標本化周波数比検出回路を設け、標本化周波数変換する信号の切り替えに連動して標本化周波数比データを切り替えることにより、標本化周波数比検出回路での周波数比の計測時間を待つことなく、標本化周波数変換処理を実施することができる。
【0025】
なお、本実施の形態では、補間回路111が行う補間処理を直線補間としたが、一次関数で近似した一次補間など、他の補間方法を用いてもかまわない。
【0026】
(実施の形態2)
本実施の形態は、実施の形態1に比べて回路規模を小さくすることが可能な標本化周波数変換装置について説明する。入力信号の数は、実施の形態1と同様に3つである。
【0027】
図3は、本実施の形態における標本化周波数変換装置のブロック図である。図3において、301は出力標本化周波数を示す信号を入力する入力端子、302〜304は任意の標本化周波数の信号を入力する入力端子、305は入力端子302〜304から入力する信号から一つを選択し出力する被測定信号選択回路、306は入力端子301が入力した信号と被測定信号選択回路305が出力する信号の標本化周波数比を検出する標本化周波数比検出回路、307は標本化周波数比検出回路306が出力する標本化周波数比データを記憶回路308〜310のいずれに記憶するかを選択する記憶選択回路、308〜310は標本化周波数比データを記憶する記憶回路、311は記憶回路308〜310のうち一つに記憶されている標本化周波数比データを選択し読みだす読出選択回路、312は読出選択回路311の出力と標本化周波数比検出回路306の出力のいずれか一方を選択し出力する標本化周波数比選択回路、313は入力端子302〜304から入力する信号の中から、標本化周波数変換する信号を選択する出力信号選択回路、314は出力信号選択回路313が出力する信号をオーバーサンプリング処理し出力するオーバーサンプリング回路、315はオーバーサンプリング回路314が出力する信号に対し、標本化周波数比選択回路312が出力する標本化周波数比データに基づいて補間処理を施し、出力端子316から出力する補間回路である。
【0028】
以下、本実施の形態における標本化周波数変換装置の動作について説明する。入力端子301は、図1の入力端子101と同様に出力標本化周波数を分周した信号を入力する。また、入力端子302〜304は、図1の入力端子102〜104と同様に、異なる標本化周波数をもつ信号を入力する。被測定信号選択回路305は入力信号302〜304が入力する信号の中の、入力標本化周波数の逓倍の周波数を持つ信号(ビットクロック)を入力し、一つを選択し出力する。標本化周波数比検出回路306は、出力標本化周波数を分周した信号と入力標本化周波数の逓倍の周波数を持つ信号から、標本化周波数比を求める。記憶選択回路307は標本化周波数比検出回路306が出力する標本化周波数比データを、記憶回路308から310のいずれかに記憶する。
【0029】
被測定信号選択回路305と記憶選択手段307の動作について、詳細に説明する。被測定信号選択回路305は、標本化周波数変換装置が行う標本化周波数変換処理に先立ち以下の処理を行う。初めに、入力端子302から入力するビットクロックを選択し、標本化周波数比検出回路306に送り、この結果得られる標本化周波数比データを記憶回路308に記憶する。続いて、入力端子303から入力するビットクロックを選択し、この結果得られる標本化周波数比データを記憶回路309に記憶する。最後に、入力端子304から入力するビットクロックを選択し、この結果得られる標本化周波数比データを記憶回路310に記憶する。これらの処理により、各入力端子302〜304から入力する信号の標本化周波数比データをあらかじめ準備しておき、標本化周波数変換処理に備える。また、被測定信号選択回路305は、記憶回路308〜310への標本化周波数比データの格納が完了した以降は、出力信号選択回路313に連動して標本化周波数比検出回路306に出力する信号を選択する。たとえば、出力信号選択回路313が入力端子303から入力する信号を選択する場合、被測定信号選択回路305も入力端子303から入力する信号を選択する。
【0030】
読出選択回路311は、記憶回路308〜310に記憶された標本化周波数比データの中から、出力信号選択回路313が出力する信号に対応した標本化周波数比データを記憶手段308〜310のいずれかから読み出し、標本化周波数比選択回路312に入力する。たとえば、出力信号選択回路313が入力端子303から入力する信号を選択する場合、読出選択回路311は記憶回路309から標本化周波数比データを読み出し、標本化周波数比選択回路312を経由して、補間回路315に出力する。標本化周波数比選択回路312の動作については、後述する。補間回路315は、出力信号選択回路313の出力をオーバーサンプリング回路314でオーバーサンプリングした信号に対し、入力した標本化周波数比データを使って補間処理を行い、出力端子316から出力する。
【0031】
ここで標本化周波数比選択回路312の動作について説明する。標本化周波数変換処理を行うにあたっては、入力標本化周波数と出力標本化周波数の比を示す標本化周波数比データが必要であり、各入力端子302〜304から入力する信号ごとの標本化周波数比データは記憶回路308〜310に格納されているため、このデータを選択的に使用すれば標本化周波数変換処理は可能ではあるが、入力標本化周波数と出力標本化周波数が整数倍の関係でない場合、標本化周波数比検出の誤差が蓄積され、いずれは出力信号が不連続になる。このため、標本化周波数比選択回路312は、出力信号選択回路313が出力信号を選択した時点から標本化周波数比検出回路306による標本化周波数比検出が完了するまでの間、記憶回路308〜310に格納された標本化周波数比データを補間回路315に出力し、標本化周波数比検出回路306による標本化周波数比検出が完了した以降は、標本化周波数比検出回路306の出力を補間回路315に出力する。この動作により、出力信号切り替えの直後から標本化周波数変換処理を開始でき、かつ、長時間にわたって正しい標本化周波数変換処理を行うことができる。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態によれば、一つの標本化周波数比検出回路と入力信号ごとの標本化周波数比を記憶する記憶回路を備え、あらかじめ各入力信号の標本化周波数比を検出して各記憶回路に記憶し、標本化周波数変換を行う信号を切り替える際に標本化周波数変換を行う信号に対応した標本化周波数比データを記憶回路から読み出して使用することにより、より小さな回路構成で、標本化周波数変換処理の中断を解消する機能を実現することが可能となる。さらに、標本化周波数変換を行う信号を切り替えた後、標本化周波数比検出回路による直近の標本化周波数比データが得られるようになった以降は標本化周波数比検出回路が出力する量子化周波数比データを用いて補間処理を行うことにより、標本化周波数比が整数でない場合も長時間にわたって安定した標本化周波数変換処理を実行できる。
【0033】
なお、本実施の形態では記憶回路308〜310を独立した回路として説明したが、通常、このような標本化周波数変換装置はマイクロコントローラによって制御される場合が多く、マイクロコントローラが持つメモリを記憶回路として使用することもできる。この場合、マイクロコントローラは標本化周波数比検出回路306から標本化周波数比データを受け取り、自ら持つメモリに記憶し、出力信号の切り替えに合わせて選択した標本化周波数比データを標本化周波数比選択回路312に出力する。このような構成をとることにより、独立した記憶回路を備える必要がなくなり、より回路規模を小さくすることができる。
【0034】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1および実施の形態2で説明した標本化周波数変換装置を搭載した信号再生装置について説明する。信号再生装置は、たとえば、ラジオ受信機能やCD再生機能などを有するオーディオ機器であるCDレシーバを想定している。
【0035】
図4に、本実施の形態における信号再生装置401のブロック図を示す。図4において、401はAM・FMラジオ復調機能、コンパクトディスク(以下、CDと称す。)再生機能、アナログオーディオ信号を外部から取り込むアナログデジタル変換機能を有する信号再生装置、402は実施の形態1にて説明した標本化周波数変換装置、403は出力ワードクロック生成回路408が生成する出力ワードクロックを分周する分周回路、404はAM放送あるいはFM放送を受信し、デジタル音声信号として出力するラジオ復調部、405はCDから読み出された信号からデジタル音声信号を再生するCD信号復調部、406は外部からのアナログ音声信号をアナログデジタル変換するアナログデジタル変換部(以下、ADCと称す。)、407は標本化周波数変換装置402が出力するデジタル音声信号をデジタルアナログ変換するデジタルアナログ変換器(以下、DACと称す。)、408はDAC407の標本化周波数に一致したクロック信号である出力ワードクロックを生成する出力ワードクロック生成回路である。101〜104、112は、図1の同符号のものに対応している。
【0036】
以下、本実施の形態の信号再生装置の動作を説明する。ラジオ復調部404はデジタル回路で構成され、AM放送、あるいはFM放送波を受信し、復調処理を行い、たとえば、標本化周波数32kHzのデジタル音声信号として出力する。CD信号復調部405は、図示していないスピンドルモータや光ピックアップを用いてCDから読み出された信号に対しEFM復調を施し、標本化周波数44.1kHzのデジタル音声信号として出力する。ADC406は、外部からのアナログ音声信号をアナログデジタル変換し、標本化周波数48kHzのデジタル音声信号として出力する。これらのデジタル音声信号は、入力端子102〜104を介して標本化周波数変換装置402に入る。入力端子101には、出力ワードクロック生成回路408が生成する出力ワードクロックを分周回路403で分周した信号が入る。出力ワードクロックの周波数はたとえば48kHz、分周回路403の分周比はたとえば8192とする。標本化周波数変換装置402は、入力端子101〜104からの入力信号を使い、実施の形態1にて説明した方法にて入力端子102〜104からの入力信号のうち一つの信号を標本化周波数変換処理し、出力する。
【0037】
DAC407は出力ワードクロック生成回路408が出力する出力ワードクロックに従って、標本化周波数変換装置402の出力をデジタルアナログ変換し、出力する。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態における信号再生装置によれば、標本化周波数が異なるデジタル信号を出力する複数の信号復調部を有し、各信号復調部の出力を切り替えて外部に出力する際に、標本化周波数変換処理を連続的に行うことが可能となり、外部に出力する信号の空白期間を解消することができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、実施の形態1で説明した標本化周波数変換装置を適用した信号再生装置について説明したが、図3に示す、実施の形態2で説明した標本化周波数変換装置を適用した場合も、入力するデジタル音声信号切り替え時に標本化周波数変換処理が途切れることなく実行されるという効果が得られる。この場合入力端子101〜104は301〜304に、出力端子112は316に読み替えられる。
【0040】
(実施の形態4)
本実施の形態では、入力標本化周波数を示す信号を得る方法に着目した実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0041】
図5は、本実施の形態の信号再生装置のブロック図である。図5において、501は信号再生装置、502は標本化周波数変換装置、503はCD信号復調部405およびADC406に対し動作クロックを供給するクロック発生部、504はラジオ復調部404に対して動作クロックを供給するクロック発生部である。505はラジオ復調部404の動作クロックを入力する入力端子、506はCD信号復調部405の動作クロックを入力する入力端子、507はADC406の動作クロックを入力する入力端子、508はラジオ復調部404の動作クロックを分周する分周回路、509はCD信号復調部405の動作クロックを分周する分周回路、510はADC406の動作クロックを分周する分周回路である。101〜112は図1の同符号の要素に、403〜408は図4の同符号の要素に対応している。
【0042】
以下、本実施の形態における信号再生装置501の動作を説明する。信号再生装置501にて特徴的なものは入力するデジタル音声信号を生成する信号復調部、すなわち、ラジオ復調部404、CD信号復調部405、ADC406の動作クロックを入力し、これを分周することによって、入力標本化周波数を示す信号を得ることである。たとえば、ラジオ復調部404、CD信号復調部405、ADC406の動作クロックを、それぞれ出力するデジタル音声信号の標本化周波数の1152倍、384倍、384倍とすると、各動作クロックは、36.864MHz(=32kHz×1152)、16.9344MHz(=44.1kHz×384)、18.432MHz(=48kHz×384)となる。クロック発生部503は16.9344MHzの水晶発振子を発振させ、得られる16.9344MHzのクロックをCD信号復調部405に供給する。クロック発生部504は36.864MHzの水晶発振子を発振させ、36.864MHzのクロックをラジオ復調部404に、2分周した18.432MHzのクロックをADC406に供給する。分周回路508〜510は入力端子505〜507を介して、ラジオ復調部404、CD信号復調部405、ADC406の動作クロックを入力し、それぞれ、18分周、6分周、12分周することにより、各入力標本化周波数の64倍の周波数をもつ信号を得る。標本化周波数比検出回路105〜107は、分周回路508〜510が出力する、各入力標本化周波数の64倍の周波数をもつ信号と、分周回路403が出力する出力標本化周波数を8192分周した信号を入力し、実施の形態1同様に標本化周波数比を検出し、補間回路111に供給する。補間回路111は、出力信号選択回路109にて選択され、オーバーサンプリング回路110にてオーバーサンプリングされた信号に対して、入力した標本化周波数比に従って補間処理を行う。
【0043】
このような構成をとることにより、たとえば、ラジオ復調部404が出力する音声信号を標本化周波数変換してDAC408から出力している際に、CD信号復調部405およびADC406を停止させることができる。たとえば、CD信号復調部405およびADC406を停止させても各部の動作クロックが周波数変換装置502に供給されるため、もともと各部にて動作クロックに従って生成していた入力標本化周波数を示す信号(ビットクロック)を、標本化周波数変換装置502に内蔵する分周回路508〜510にて生成することができる。不要な回路を停止することは、消費電力、不要輻射などを考慮すると望ましい。
【0044】
(実施の形態5)
これまで説明してきた実施の形態では、標本化周波数比検出回路が起動してから初めに標本化周波数比を検出するまでの間は、標本化周波数比データを出力することができない。この課題を解決する方法として、各標本化周波数比検出回路が周波数検出完了信号を出力し、この信号がディスエブル、すなわち、周波数比検出が未完了の間は、想定した入力標本化周波数に対応した固定値を出力する方法がある。たとえば、第一の実施の形態においては、図1の標本化周波数比検出回路105には入力標本化周波数32kHzの信号が入るため、32kHzに対応した標本化周波数比データ349525をあらかじめ固定値として準備しておき、出力信号選択回路109が入力端子102からの入力信号を選択し、かつ、標本化周波数比検出回路105による標本化周波数比検出が完了するまでの間は、固定値349525を補間回路111に出力する。標本化周波数比検出が完了した後には、固定値ではなく、検出結果の標本化周波数比データを補間回路111に出力する。これにより、初めに標本化周波数比検出が完了するまでの間は固定値を用いた変換精度が若干劣る標本化周波数変換処理を行い、標本化周波数比検出が完了した後には、検出結果の標本化周波数比データを用いて精度が高い標本化周波数変換処理を行うことができる。すなわち、精度の違いはあれ、標本化周波数変換処理を空白時間なしに実行することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の標本化周波数変換装置は、入力するデジタル信号ごとに出力標本化周波数との標本化周波数比を検出、あるいは設定できるようにすることにより、標本化周波数変換する信号を選択してから、標本化周波数変換が実施されるまでの空白時間を実質的になくすることができる。また、本発明の信号再生装置は、上記の標本化周波数変換装置を備えることにより、出力信号切り替えに要する時間が短い信号再生装置が実現でき、また、各信号復調部を選択的に停止させた場合も、信号復調部再起動の際の標本化周波数変換が実施されるまでの空白時間の発生を解消できるという、実用上大きな効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施の形態1における標本化周波数変換装置のブロック図
【図2】入力端子102〜104が入力する信号を示すタイミングチャート
【図3】実施の形態2における標本化周波数変換装置のブロック図
【図4】実施の形態3における信号再生装置のブロック図
【図5】実施の形態4における信号再生装置のブロック図
【符号の説明】
【0047】
105〜107 標本化周波数比検出回路
308〜310 記憶回路
402 標本化周波数変換装置
508〜510 分周回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル信号を入力し入力デジタル信号として出力する複数の入力手段と、
前記入力デジタル信号の標本化周波数である入力標本化周波数を示す信号を入力する複数の入力標本化周波数入力手段と、
出力信号の標本化周波数である出力標本化周波数を示す信号を生成する出力標本化周波数生成手段と、
前記入力標本化周波数入力手段の出力および前記出力標本化周波数生成手段の出力を入力し、前記入力標本化周波数と前記出力標本化周波数の比を検出し出力する複数の標本化周波数比検出手段と、
前記複数の入力手段が出力する入力デジタル信号から出力に用いるデジタル信号を選択する出力信号選択手段と、
前記複数の標本化周波数比検出手段が検出する標本化周波数比から補間処理に用いる標本化周波数比を選択する標本化周波数比選択手段と、
前記出力信号選択手段が出力するデジタル信号に対して前記標本化周波数比選択手段の出力する標本化周波数比を用いて補間処理を施し、前記出力信号として出力する補間手段を備える標本化周波数変換装置。
【請求項2】
デジタル信号を入力し入力デジタル信号として出力する複数の入力手段と、
前記入力デジタル信号の標本化周波数である入力標本化周波数を示す信号を入力する複数の入力標本化周波数入力手段と、
前記複数の入力標本化周波数入力手段が出力する入力標本化周波数を示す信号から一つの入力標本化周波数を示す信号を選択する入力標本化周波数選択手段と、
出力信号の標本化周波数である出力標本化周波数を示す信号を生成する出力標本化周波数生成手段と、
前記入力標本化周波数選択手段の出力と前記出力標本化周波数生成手段の出力を入力し、前記入力標本化周波数と前記出力標本化周波数の比を検出し出力する標本化周波数比検出手段と、
前記標本化周波数比検出手段が検出した標本化周波数比を、前記入力デジタル信号毎に記憶する複数の記憶手段と、
前記複数の入力手段が出力する入力デジタル信号から出力に用いるデジタル信号を選択し、出力する出力信号選択手段と、
前記複数の記憶手段が記憶する標本化周波数比から補間処理に用いる標本化周波数比を選択する標本化周波数比選択手段と、
前記出力信号選択手段が出力するデジタル信号に対して前記標本化周波数比選択手段の出力する標本化周波数比を用いて補間処理を施し、前記出力信号として出力する補間手段を備える標本化周波数変換装置。
【請求項3】
標本化周波数比検出手段は周波数検出完了信号を出力し、
標本化周波数比選択手段は、前記周波数検出完了信号がディスエブルの際には、固定値を標本化周波数比として出力することを特徴とする請求項1,2記載の標本化周波数変換装置。
【請求項4】
入力標本化周波数入力手段は、複数の信号復調部の動作クロックを入力し、前記動作クロックを分周して入力標本化周波数を示す信号を生成することを特徴とする請求項1〜3記載の標本化周波数変換装置。
【請求項5】
入力信号を入力し、前記入力信号に応じた復調処理を施し、入力デジタル信号として出力する複数の信号復調部と、
前記入力デジタル信号の標本化周波数である入力標本化周波数を示す信号を入力する複数の入力標本化周波数入力部と、
出力デジタル信号の標本化周波数である出力標本化周波数を示す信号を生成する出力標本化周波数生成部と、
前記入力標本化周波数入力部の出力および前記出力標本化周波数生成部の出力を入力し、前記入力デジタル信号のおのおのの標本化周波数と前記出力標本化周波数の比を検出し出力する複数の標本化周波数比検出部と、
前記複数の信号復調部が出力する入力デジタル信号から出力に用いるデジタル信号を選択する出力信号選択部と、
前記複数の標本化周波数比検出部が検出する標本化周波数比から補間処理に用いる標本化周波数比を選択する標本化周波数比選択部と、
前記出力信号選択部が出力する信号に対して前記標本化周波数比選択部の出力する標本化周波数比を用いて補間処理を施し、前記出力デジタル信号として出力する補間部と、
前記補間部が出力するデジタル信号をデジタルアナログ変換して出力するデジタルアナログ変換部を備える信号再生装置。
【請求項6】
入力信号を入力し、前記入力信号に応じた復調処理を施し、入力デジタル信号として出力する複数の信号復調部と、
前記入力デジタル信号の標本化周波数である入力標本化周波数を示す信号を入力する複数の入力標本化周波数入力部と、
前記複数の入力標本化周波数入力部が出力する入力標本化周波数を示す信号から一つの入力標本化周波数を示す信号を選択する入力標本化周波数選択部と、
出力音声信号の標本化周波数である出力標本化周波数を示す信号を生成する出力標本化周波数生成部と、
前記入力標本化周波数選択部の出力と前記出力標本化周波数生成部の出力を入力し、前記入力標本化周波数と前記出力標本化周波数の比を検出し出力する標本化周波数比検出部と、
前記標本化周波数比検出部が検出した標本化周波数比を、前記入力デジタル信号毎に記憶する複数の記憶部と、
前記複数の信号復調部が出力する入力デジタル信号から出力に用いるデジタル信号を選択し、出力する出力信号選択部と、
前記複数の記憶部が記憶する標本化周波数比から補間処理に用いる標本化周波数比を選択する標本化周波数比選択部と、
前記出力信号選択部が出力するデジタル信号に対して前記標本化周波数比選択部の出力する標本化周波数比を用いて補間処理を施し、前記出力信号として出力する補間部と、
前記補間部が出力するデジタル信号をデジタルアナログ変換して出力するデジタルアナログ変換部を備える信号再生装置。
【請求項7】
標本化周波数比検出部は周波数検出未完了信号を出力し、
標本化周波数比選択部は、前記周波数検出未完了信号がイネーブルの際には、固定値を標本化周波数比として出力することを特徴とする請求項5、6記載の信号再生装置。
【請求項8】
入力標本化周波数入力部は、複数の信号復調部の動作クロックを入力し、前記動作クロックを分周して入力標本化周波数を示す信号を生成することを特徴とする請求項5〜7記載の信号再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−68416(P2010−68416A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234893(P2008−234893)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)