説明

標本観察装置

【課題】超解像成分が可視化された超解像画像を生成する標本観察装置の技術を提供する。
【解決手段】蛍光LSM10は、変調制御信号に基づいてガルバノミラー13の駆動を制御するガルバノミラー駆動装置14と、PMT検出器19から検出信号と変調制御信号から標本1の画像データを生成するPC20と、を含んでいる。PC20は、生成する画像データのナイキスト周波数がレーザ光源11から射出される励起光2の標本1上における空間強度分布のカットオフ周波数よりも大きくなるように、変調制御信号を生成してガルバノミラー駆動装置14へ送信する。また、PC20は、画像データに含まれる励起光2の標本1上における空間強度分布のカットオフ周波数を上回る高周波成分を強調処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標本観察装置に関し、特に、超解像成分が可視化された標本画像を生成する標本観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査顕微鏡は、標本上の一点に集光させた光をガルバノミラーなどの走査手段で移動させて標本を走査することにより標本を観察する顕微鏡であり、現在さまざまな分野で広く用いられている。このような走査顕微鏡は、例えば、特許文献1、特許文献2で開示されている。
【0003】
特許文献1で述べられているように、走査顕微鏡には、ピンホール径、PMTの電圧、光源の出力強度や波長、スキャンスピードなど種々の設定項目が存在し、これらの設定によって画質が大きく異なることがある。例えば、蛍光レーザ走査顕微鏡(以降、蛍光LSMと記す。)では、ピンホール径をエアリーディスク径に対して十分に小さくすると、光学系のカットオフ周波数を超える解像(以降、超解像と記す。)が得られることが知られている。このような技術は、例えば、非特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7227112号明細書
【特許文献2】米国特許第7649682号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T. Wilsonand C. Sheppard, "Theory and Practice of Scanning Optical Microscopy", Academic Press, 1984, 第6章6節
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の蛍光LSMの主要な目的は、超解像成分を得ることではなく、セクショニング効果を得ることにある。また、超解像成分を得るためにピンホール径をエアリーディスク径に対して小さくすると、検出器で検出される蛍光の光量が減少することになる。
【0007】
このため、従来の蛍光LSMでは、検出効率の確保を優先して、ピンホール開口径をエアリーディスク径程度に設定するのが通常である。従って、検出器で検出される超解像成分は極めて微弱であり、可視化されない。
【0008】
なお、以上では、蛍光LSMについて説明したが、超解像成分が検出される顕微鏡は、蛍光LSMに限られない。走査顕微鏡では、照明光は標本上の一点に集光し、且つ、その照明光が集光する点は走査手段により移動する。これにより、照明光は、空間的にまたは時間的に変調されるため、走査顕微鏡全般で超解像成分は検出され得る。しかし、従来の蛍光LSMと同様に、一般的にその超解像成分は極めて微弱であり、可視化されない。
以上のような実情を踏まえて、本発明では、超解像成分が可視化された超解像画像を生成する標本観察装置の技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、励起光を標本に照射する励起光照射手段と、前記標本上における前記励起光の空間強度分布を変調する励起光変調手段と、変調制御信号に基づいて前記励起光変調手段を制御する励起光変調制御手段と、前記励起光の照射により生じる前記標本からの発光を検出して検出信号を生成する光検出手段と、前記変調制御信号及び前記検出信号から前記標本の画像データを生成する画像生成手段と、前記画像データのナイキスト周波数が前記標本上における前記励起光の空間強度分布のカットオフ周波数よりも大きくなるように、前記変調制御信号を生成する変調制御信号生成手段と、前記画像データに含まれる前記カットオフ周波数を上回る高周波成分を強調する画像処理手段と、を含む標本観察装置を提供する。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の標本観察装置において、前記励起光照射手
段は、前記励起光の少なくとも一部を前記標本上に集光させる集光手段を含み、前記励起光変調手段は、前記集光手段により集光された前記励起光の集光位置を移動させて、前記標本を走査する走査手段である標本観察装置を提供する。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の標本観察装置において、前記変調制御信号生成手段は、前記画像データのナイキスト周波数が前記標本上における前記励起光の空間強度分布のカットオフ周波数の約1.5倍以上になるように、前記変調制御信号を生成する標本観察装置を提供する。
【0012】
本発明の第4の態様は、第2の態様または第3の態様に記載の標本観察装置において、前記変調制御信号生成手段は、前記画像データのナイキスト周波数が前記標本上における前記励起光の空間強度分布のカットオフ周波数の約4倍以下になるように、前記変調制御信号を生成する標本観察装置を提供する。
【0013】
本発明の第5の態様は、第2の態様乃至第4の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、前記励起光の空間強度分布のカットオフ周波数は、前記励起光の波長と前記集光手段の射出側の開口数から算出される回折限界により定まる標本観察装置を提供する。
【0014】
本発明の第6の態様は、第2の態様乃至第5の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、前記画像データのナイキスト周波数は、前記走査手段による前記標本上におけるサンプリング間隔により定まる標本観察装置を提供する。
【0015】
本発明の第7の態様は、第2の態様乃至第6の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、さらに、前記集光手段による集光位置と光学的に共役な位置に開口が形成された共焦点絞りを含む標本観察装置を提供する。
【0016】
本発明の第8の態様は、第7の態様に記載の標本観察装置において、前記共焦点絞りの開口径は、レイリー径以下である標本観察装置を提供する。
【0017】
本発明の第9の態様は、第2の態様乃至第8の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、前記画像処理手段は、デジタルコンボリューションフィルタを使用して、前記高周波成分を強調する標本観察装置を提供する。
【0018】
本発明の第10の態様は、第9の態様に記載の標本観察装置において、前記デジタルコンボリューションフィルタの係数は、前記励起光の波長に応じて調整される標本観察装置を提供する。
【0019】
本発明の第11の態様は、第9の態様または第10の態様に記載の標本観察装置において、前記デジタルコンボリューションフィルタの係数は、前記発光の波長に応じて調整される標本観察装置を提供する。
【0020】
本発明の第12の態様は、第9の態様乃至第11の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、前記デジタルコンボリューションフィルタの係数は、前記集光手段の射出側の開口数に応じて調整される標本観察装置を提供する。
【0021】
本発明の第13の態様は、第9の態様乃至第12の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、前記デジタルコンボリューションフィルタの係数は、前記標本の光学像が前記光検出手段の受光面に投影される倍率に応じて調整される標本観察装置を提供する。
【0022】
本発明の第14の態様は、第9の態様乃至第13の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、前記デジタルコンボリューションフィルタの係数は、前記画像データのナイキスト周波数に応じて調整される標本観察装置を提供する。
【0023】
本発明の第15の態様は、第1の態様乃至第14の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、前記発光は、前記標本における前記励起光の照射強度に非線形に依存する標本観察装置を提供する。
【0024】
本発明の第16の態様は、第15の態様に記載の標本観察装置において、前記発光は、前記標本から発生する多光子励起蛍光である標本観察装置を提供する。
【0025】
本発明の第17の態様は、第15の態様に記載の標本観察装置において、前記発光は、前記標本から発生する高次高調波である標本観察装置を提供する。
【0026】
本発明の第18の態様は、第15の態様に記載の標本観察装置において、前記励起光は、異なる2つの波長成分を含み、前記発光は、前記標本からのラマン散乱光に含まれるアンチストークス成分である標本観察装置を提供する。
【0027】
本発明の第19の態様は、第15の態様に記載の標本観察装置において、前記励起光は、異なる2つ以上の波長成分を含み、前記発光は、前記標本における4光波混合により生じる標本観察装置を提供する。
【0028】
本発明の第20の態様は、第1の態様乃至第19の態様のいずれか1項に記載の標本観察装置において、前記画像処理手段は、前記画像生成手段による前記画像データの生成に合わせて、前記画像データを実時間処理する標本観察装置を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、超解像成分が可視化された超解像画像を生成する標本観察装置の技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】蛍光LSMの点像分布関数を例示した図である。
【図2】蛍光LSMの変調伝達関数を例示した図である。
【図3】点像分布関数の半値全幅と検出効率について、蛍光LSMと広視野蛍光顕微鏡を比較した図である。
【図4】実施例1に係る蛍光LSMの構成を例示した図である。
【図5】実施例1に係る蛍光LSMで実行される超解像画像生成処理のフローを示す図である。
【図6】図5に示されるコンボリューションフィルタの設定処理のフローを示す図である。
【図7】図5に示されるコンボリューションフィルタの設定処理を説明するための図である。
【図8】実施例1に係る蛍光LSMで強調処理前後の点像分布関数のFWHMを比較した図である。
【図9】実施例2に係る2光子励起顕微鏡の構成を例示した図である。
【図10】実施例2に係る2光子励起顕微鏡で実行される超解像画像生成処理のフローを示す図である。
【図11】実施例2に係る2光子励起顕微鏡の強調処理前後の点像分布関数と強調処理後の目標とする点像分布関数を例示した図である。
【図12】実施例2に係る2光子励起顕微鏡の強調処理前の変調伝達関数と強調処理後の目標とする変調伝達関数を例示した図である。
【図13】実施例3に係る第2高調波(SHG)顕微鏡の構成を例示した図である。
【図14】実施例4に係るコヒーレント反ストークスラマン散乱(CARS)顕微鏡の構成を例示した図である。
【図15】実施例4に係るCARS顕微鏡で実行される超解像画像生成処理のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
まず、本発明の各実施例について説明する前に、蛍光LSMの結像特性について説明する。
蛍光LSMの結像式は、式(1)、(2)で表される。
【数1】

【0032】
ここで、PSFLSM、MTFLSMは、それぞれ蛍光LSMの結像特性を示す点像分布関数(PSF:Point Spread Function)、及びそのフーリエ変換である変調伝達関数(MTF: Modulation Transfer Function)である。PSFex、MTFexは、それぞれ標本上での励起光スポットの点像分布関数、及びそのフーリエ変換である変調伝達関数であり、励起光が標本面に集光する際の集光特性を示す。PSFem、MTFemは、それぞれ標本面上での検出波長における点像分布関数、及びそのフーリエ変換である変調伝達関数であり、標本面から生じた蛍光が像面(共焦点面)に結像する際の結像特性を示す。PH、~PHは、それぞれ共焦点絞りの透過関数を標本へ投影した関数、それをフーリエ変換した関数である。なお、rは、光軸からの距離であり、標本位置の空間座標を示す。fは、rの空間周波数である。
【0033】
また、点像分布関数PSFex、PSFem、変調伝達関数MTFex、MTFem、関数PH、~PHは、近似的にそれぞれ式(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)で表される。なお、式(7)、(8)は、共焦点絞りの開口がピンホール形状(円形)である場合に適用される式である。
【数2】

【0034】
ここで、fc,ex、fc,emは、それぞれ標本上における励起波長λexの励起光の空間強度分布のカットオフ周波数(空間周波数の上限)、標本面上における検出波長λemの蛍光の空間強度分布のカットオフ周波数(空間周波数の上限)であり、式(9)、(10)で表される。NA、dPH、Mobは、それぞれ対物レンズの標本側の開口数、共焦点絞りの開口径、標本面から共焦点絞りまでの投影倍率である。また、Jinc関数、chinesehat関数は、それぞれ式(11)、(12)で表される関数である。J1は、第1種Bessel関数である。
【数3】

【0035】
図1は、蛍光LSMの点像分布関数を例示した図であり、点像分布関数PSFemと共焦点絞りの設定が異なる複数の点像分布関数PSFLSMとを示している。図1の横軸は、点像分布関数PSFemの半値全幅(FWHM:Full Width Half Maximum)で正規化された光軸からの距離r/FWHM_PSFem(r)である。図2は、蛍光LSMの変調伝達関数を例示した図であり、変調伝達関数MTFemと共焦点絞りの設定が異なる複数の変調伝達関数MTFLSMとを示している。図2の横軸は、カットオフ周波数fc,emで正規化された空間周波数f/fc,emである。なお、図1及び図2では、共焦点絞りの設定として、蛍光が共焦点絞り上に形成するエアリーディスク径に対する共焦点絞りの開口径の比αが0、0.5、1となる場合が例示されている。図3は、点像分布関数の半値全幅と検出効率について、蛍光LSMと広視野蛍光顕微鏡を比較した図である。横軸は、上述したエアリーディスク径に対する共焦点絞りの開口径の比αであり、縦軸は、広視野蛍光顕微鏡を基準とした蛍光LSMの点像分布関数の半値全幅または検出効率である。なお、ここで、広視野蛍光顕微鏡とは、標本面を均一に照明する蛍光顕微鏡であり、非共焦点顕微鏡である。
【0036】
蛍光LSMの結像特性は、式(1)、(2)に示されるように、蛍光LSMが励起光、蛍光のそれぞれに対して行う変調に依存している。また、蛍光に対する変調には、光学系による変調のみならず、共焦点絞りよる変調も含まれる。これに対して、広視野蛍光顕微鏡の結像特性は、蛍光に対する光学系による変調により定まる。これは、広視野蛍光顕微鏡では、励起光に対する光学系による変調(励起光の標本面への集光)や蛍光に対する共焦点絞りによる変調は行われないためである。つまり、図1、図2に例示される点像分布関数PSFem、変調伝達関数MTFemは、それぞれ広視野蛍光顕微鏡の点像分布関数、変調伝達関数に相当する。
【0037】
図1に示されるように、点像分布関数PSFLSMは点像分布関数PSFemに比べて光軸(r/FWHM_PSFem(r)=0)に近い位置により多くの光が分布する特性を有している。また、図2に示されるように、変調伝達関数MTFLSMは変調伝達関数MTFemに比べてより広い空間周波数まで分布している。これらは、蛍光LSMは広視野蛍光顕微鏡よりも高い結像性能を有し、より高い周波数成分まで検出することができることを示している。また、図1及び図2に示されるように、蛍光LSMは、比αを小さく設定するほどより高い周波数成分まで検出することができる。
【0038】
その一方で、図2に示されるように、比αが1の状態の蛍光LSMでは、広視野蛍光顕微鏡のカットオフ周波数を上回る超解像成分は、極わずかしか伝達されない。また、超解像成分をより効率的に伝達するために比αを小さくすると、図3に示されるように、点像分布関数の半値全幅の減少に対して検出効率が著しく低下する。このため、生成される画像データは標本の画像を非常に暗く表示するものとなってしまう。従って、いずれにしても、検出された超解像成分を画面上で視認することはほとんどできず、超解像成分は可視化されない。
【0039】
このように、従来の蛍光LSMは、超解像成分を検出し得るが、超解像成分を可視化するには至っていない。
以下、本発明の各実施例について具体的に説明する。
【実施例1】
【0040】
図4は、本実施例に係る蛍光LSMの構成を例示した図である。図4に例示される蛍光LSM10は、超解像成分が可視化された超解像画像を生成する標本観察装置である。蛍光LSM10は、励起光2を射出するレーザ光源11と、励起光2を透過し標本1からの蛍光3を反射するダイクロイックミラー12と、標本1を走査するガルバノミラー13と、変調制御信号に基づいてガルバノミラー13を駆動するガルバノミラー駆動装置14と、励起光2を標本1に集光させる対物レンズ15と、レンズ16と、対物レンズ15による励起光2の集光位置と光学的に共役な位置にピンホール(開口)が形成された共焦点絞り17と、レンズ18と、蛍光3を検出して検出信号を生成するPMT検出器19と、変調制御信号と検出信号から標本1の画像データを生成するPC20と、標本1の画像データを記憶する記憶装置21と、標本1の画像データを表示するモニタ22と、を含んでいる。
【0041】
本実施例に係る蛍光LSM10では、レーザ光源11から射出された励起光2は、ダイクロイックミラー12を透過して、ガルバノミラー13を介して対物レンズ15に入射する。そして、対物レンズ15が励起光2を標本1上に集光することで、励起光2が標本1に照射される。即ち、蛍光LSM10では、レーザ光源11、ダイクロイックミラー12、ガルバノミラー13、及び対物レンズ15は、励起光2を標本1に照射する励起光照射手段であり、対物レンズ15は、励起光2を標本1上に集光させる集光手段である。なお、集光手段として機能する対物レンズ15は、標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数を高める効果を有している。
【0042】
また、励起光2の集光位置は、PC20からの変調制御信号に基づいて、ガルバノミラー駆動装置14がガルバノミラー13を駆動することにより、光軸と直交するXY平面上で移動する。即ち、蛍光LSM10では、ガルバノミラー13は、標本1上における励起光2の空間強度分布を変調する励起光変調手段であり、対物レンズ15により集光された励起光2の集光位置を移動させて標本1を走査する走査手段である。また、ガルバノミラー駆動装置14は、PC20からの変調制御信号に基づいて励起光変調手段を制御する励起光変調制御手段である。
【0043】
励起光2が照射された標本1では、集光位置に存在する蛍光物質が励起されて、標本1における励起光2の照射強度に線形に依存する光量の蛍光3を発光する。蛍光3は、励起光2と同じ経路を反対方向に進行して、ダイクロイックミラー12に入射する。ダイクロイックミラー12を反射した蛍光3は、レンズ16により集光されて共焦点絞り17に入射する。
【0044】
共焦点絞り17では、集光位置以外から生じた蛍光は遮断され、集光位置から生じた蛍光3が開口を通過する。なお、共焦点絞り17は、その共焦点効果により、標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数よりも高い周波数成分の検出に寄与する。
【0045】
その後、蛍光3は、レンズ18を介してPMT検出器19に入射して検出される。PMT検出器19は、検出した蛍光3の光量に応じた検出信号を生成してPC20へ送信する。即ち、蛍光LSM10では、PMT検出器19は、励起光2の照射により生じる標本1からの蛍光3を検出して検出信号を生成する光検出手段である。
【0046】
PC20は、生成する画像データのナイキスト周波数が標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数よりも大きくなるように変調制御信号を生成し、且つ、生成した画像データに含まれる標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数を上回る高周波成分を強調する画像処理を行う。即ち、蛍光LSM10では、PC20は、標本1の画像データを生成する画像生成手段であるとともに、変調制御信号を生成する変調制御信号生成手段であり、また、画像データの高周波成分を強調する画像処理手段である。なお、ナイキスト周波数とカットオフ周波数の比較は、標本1と像面の間の投影倍率を考慮して行われる。具体的には、ナイキスト周波数とカットオフ周波数の一方を投影倍率で補正することに得られる換算量と他方とを比較する。
【0047】
図5は、蛍光LSM10で実行される超解像画像生成処理のフローを示す図である。以下、蛍光LSM10による超解像画像の生成方法について、図5を参照しながら、具体的に説明する。
【0048】
超解像画像生成処理が開始されると、まず、ステップS1では、利用者が観察に使用する励起波長λex、蛍光波長(検出波長)λemを選択することで、励起波長λex及び蛍光波長λemがLSM10に設定される。例えば、レーザ光源11がArレーザであり、標本1中の蛍光物質が強化緑色蛍光タンパク質(EGFP:Enhanced Green Fluorescence Protein)であれば、ステップS1では、励起波長、蛍光波長は、それぞれλex=488nm、λem=508nmに設定される。
【0049】
ステップS2では、利用者が対物レンズ15を選択する。例えば、レンズ16と組み合わせて100倍の倍率を有し、且つ、開口数が1.4である対物レンズが選択されて、蛍光LSM10にMob=100、NA=1.4が設定される。
【0050】
ステップS3では、標本1上における励起波長λexの励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数fc,exと、標本1上における検出波長λemの蛍光3の空間強度分布のカットオフ周波数fc,emとを算出する。ここでは、式(9)、(10)により、それぞれfc,ex=5.7μm−1、fc,em=5.5μm−1と算出される。
なお、式(9)で示されるように、標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数fc,exは、励起光2の波長λexと対物レンズ15の射出側(標本1側)の開口数NAから算出される回折限界により定まる。
【0051】
ステップS4では、蛍光LSM10で生成される画像データのナイキスト周波数を設定する。画像データのナイキスト周波数fNyquistは、超解像成分を記録するために、標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数fc,exよりも大きくなるように設定する。ここでは、例えば、下式(13)により算出した画像データのナイキスト周波数fNyquist=11.2μm−1を設定する。
【数4】

【0052】
これにより、標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数fc,exの2倍程度までの周波数成分を記録することができる。
なお、ここでは、式(13)を用いて算出したナイキスト周波数fNyquistを設定したが、画像データのナイキスト周波数fNyquistとカットオフ周波数fc,exとの関係は、この関係に限られない。高い超解像性能を実現するためには、ナイキスト周波数fNyquistは、カットオフ周波数fc,exの約1.5倍以上であることが望ましい。一方で、ナイキスト周波数fNyquistが高すぎると、その周波数を実現するために光量低下やノイズ増大が生じうる。これを避けるためには、ナイキスト周波数fNyquistは、カットオフ周波数fc,exの約4倍以下であることが望ましい。
【0053】
ステップS5では、ガルバノミラー13による標本1の走査のサンプリング間隔を設定する。サンプリング間隔dpixには、ステップS4で設定されたナイキスト周波数fNyquistに応じた値が設定される。これは、画像データのナイキスト周波数fNyquistがガルバノミラー13による標本1の走査のサンプリング間隔により定まるからである。具体的には、サンプリング間隔dpixは、ナイキスト周波数fNyquistがサンプリング周波数(fpix=1/dpix)の1/2となるように、下式(14)により算出された値に設定される。ここでは、サンプリング間隔dpixは0.044μmに設定される。
【数5】

【0054】
これにより、変調制御信号生成手段であるPC20では、式(14)で算出されたサンプリング間隔dpixで標本1を走査する変調制御信号が生成される。
【0055】
ステップS6では、共焦点絞り17のピンホール径dPHを設定する。ピンホール径dPHは、超解像成分、つまり、標本上における励起光の空間強度分布のカットオフ周波数fc,exを上回る周波数成分を高いコントラストで記録するために、レイリー径以下に設定することが望ましい。
【0056】
具体的には、下式(15)により、標本1上での蛍光スポットのエアリーディスク径demを算出する。ここでは、エアリーディスク径demは、0.44μmと算出される。そして、算出されたエアリーディスク径demを用いて、下式(16)により、ピンホール径dPHを算出する。式(16)において、比αに1以下の値を用いることで、ピンホール径dPHをレイリー径以下とすることができる。ここでは、例えば、比α=0.5とする。
【数6】

【0057】
なお、比αの値が大きくなるほど、後述するコンボリューションフィルタによる強調処理による超解像周波数領域(超解像成分)の増強度を大きくする必要がある。このため、比αの値が大きすぎると、超解像画像中のノイズが目立ちやすくなってしまう。一方、比αの値が小さくなるほど、検出効率が低下し生成される画像データのS/N比も低下する。このため、比αの値が小さすぎる場合にも、超解像画像中のノイズが目立ちやすくなってしまう。従って、比αは、これらを勘案して最適な値に設定することが望ましい。
【0058】
ステップS7では、PC20での高周波成分の強調に用いられるデジタルコンボリューションフィルタCFを設定する。コンボリューションフィルタについては、図6、図7を参照しながら説明する。図6は、図5に示されるコンボリューションフィルタの設定処理(ステップS7)のフローを示す図である。図7は、図5に示されるコンボリューションフィルタの設定処理を説明するための図である。
【0059】
まず、ステップS8で、式(1)により、蛍光LSMで実際に得られる点像分布関数PSFLSMを算出する(図7の破線を参照)。図7に例示されるように、実際に得られる点像分布関数PSFLSMは、広視野蛍光顕微鏡に相当する点像分布関数PSFemに比べて、高い結像性能を示している。
【0060】
ステップS9では、コンボリューションフィルタCFによる強調処理後に得られる、目標とする点像分布関数PSFDSTを設定する(図7の一点鎖線を参照)。目標とする点像分布関数PSFDSTは、例えば、そのカットオフ周波数fDSTが下式(17)を満たすような、仮想的な点像分布関数を設定する。
【数7】

【0061】
なお、カットオフ周波数fDSTが大きくなるほど、コンボリューションフィルタCFを用いた強調処理による超解像周波数領域(超解像成分)の増強度を大きくする必要がある。このため、カットオフ周波数fDSTが大きすぎると、超解像画像中のノイズが目立ちやすくなってしまう。従って、カットオフ周波数fDSTは、この点を勘案して最適な値に設定することが望ましい。
【0062】
次に、ステップS10では、コンボリューションフィルタCFのサイズNcを設定する。ここでは、例えば、Nc=7とする。なお、コンボリューションフィルタCFのサイズNcが大きくなると、計算コスト(計算時間や使用メモリ容量など)も大きくなる。従って、サイズNcは、超解像画像の超解像性と計算コストとを勘案して、最適なサイズを設定することが望ましい。
【0063】
最後に、ステップS11では、コンボリューションフィルタCFの係数を設定する。コンボリューションフィルタCFの係数は、下式(18)を満たすように、最小二乗法を用いた数値計算により算出して設定する。
【数8】

【0064】
以下は、比α=0.5の場合のコンボリューションフィルタCFの係数の算出結果の一例である。
【数9】

【0065】
このようにして算出されたコンボリューションフィルタCFを用いて画像データに対して強調処理(コンボリューション演算)を行うことで、図7に例示されるように、目標とする点像分布関数PSFDSTに近似した点像分布関数PSFrを有する超解像画像の画像データを得ることができる(図7の実線を参照)。なお、算出されるコンボリューションフィルタCFの係数は、比αにより、つまり、ピンホール径の設定により異なる。
【0066】
図8は本実施例に係る蛍光LSM10で強調処理前後の点像分布関数PSFLSMとPSFrのFWHMを比較した図である。横軸は、上述したエアリーディスク径に対する共焦点絞りの開口径の比αであり、縦軸は、広視野蛍光顕微鏡を基準とした点像分布関数の半値全幅の比である。本実施例に係る蛍光LSM10で強調処理後に得られる点像分布関数PSFLSMのFWHMは、比α<1.2において、広視野蛍光顕微鏡の点像分布関数のFWHMに対して、0.5倍から0.8倍程度となる。つまり、本実施例に係る蛍光LSM10は、比α<1.2において、広視野蛍光顕微鏡に対して、1.6倍から2倍程度の超解像性を有している。従って、蛍光LSM10は、比αを過度に小さくして検出効率を低下させることなく、高い超解像性を実現することができる。
【0067】
また、コンボリューションフィルタCFの係数は、励起光2の波長や蛍光3の波長に応じて調整してもよい。また、コンボリューションフィルタCFの係数は、対物レンズ15の射出側の開口数に応じて調整してもよい。また、コンボリューションフィルタCFの係数は、標本1の光学像が共焦点絞り17に投影される倍率に応じて調整されてもよい。さらに、コンボリューションフィルタCFの係数は、画像データのナイキスト周波数fNyquistに応じて調整されてもよい。これにより、コンボリューションフィルタCFの係数を、蛍光LSM10の励起光2の波長、蛍光3の波長、開口数、倍率、ナイキスト周波数に最適化することができる。
【0068】
また、コンボリューションフィルタCFは、画像処理の分野で広く使用されているLoG(Laplacian of Gaussian)タイプのフィルタであってもよい。これにより、超解像画像のノイズを効果的に抑制することができる。また、本実施例で例示されるように、対物レンズ15の開口数が0.5を超えるような場合には、計算精度を向上させるために、ベクトル回折理論を採用して点像分布関数を算出してもよい。
【0069】
コンボリューションフィルタCFの設定を含む各種設定が完了すると、図5に示されるように、ステップS12では、蛍光LSM10による画像取得処理が行われる。このとき、ガルバノミラー13による標本1の走査は、ステップS5で設定されたサンプリング間隔dpixで行われる。これにより、標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数fc,exよりも大きい超解像成分を含む画像データがPC20で生成される。
【0070】
ステップS13では、PC20が、生成された画像データに対して、ステップS7で設定したコンボリューションフィルタCFを使用したコンボリューション演算により強調処理を行う。これにより、標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数fc,exよりも大きい超解像成分が強調された超解像画像の画像データがPC20で生成される。
【0071】
ステップS13で生成された超解像画像の画像データは、ステップS14でモニタ22に表示される。ステップS15では、画像取得を継続するか否かが判断されて、継続する場合には、ステップS12に戻って同様の処理を繰り返す。これにより、モニタ22に超解像画像が動画表示される。
【0072】
画像取得が終了すると、ステップS16で生成した超解像画像の画像データを記憶装置21に記憶して、その後、処理を終了する。
【0073】
以上、本実施例に係る蛍光LSM10によれば、超解像成分が可視化された超解像画像を生成することができる。具体的には、蛍光LSM10では、従来は可視化されていなかった超解像成分を強調処理することにより、超解像成分を可視化することができる。また、強調処理が行われるため、図8に示されるように、共焦点絞り17のピンホール径(開口径)をレイリー径程度に広げても高い超解像性を発揮することができる。このため、蛍光LSM10では、高い光の利用効率と超解像性能を両立することができる。また、既知の光学系の特性から超解像画像の生成に適したピンホール径(開口径)やサンプリング間隔を算出することができるため、蛍光LSM10では、事前に画像を取得して設定を調整するなどの作業が不要であり、開口径やサンプリング間隔の設定を自動化することができる。さらに、強調処理が簡単な行列のコンボリューション演算であるため、強調処理を短時間で行うことができる。即ち、PC20は、画像データの生成に合わせて強調処理を実時間処理することが可能であり、蛍光LSM10では、画像取得後、超解像画像をほぼリアルタイムでモニタ22に表示することができる。
なお、式(1)から分かるように、標本面上での検出波長における点像分布関数PSFemとピンホールの透過関数PHのコンボリューションの範囲外に分布する励起光はLSMの結像に寄与しない。従って、励起光が必ずしも全て1点に集光する必要性は無い。
【実施例2】
【0074】
図9は、本実施例に係る2光子励起顕微鏡の構成を例示した図である。図9に例示される2光子励起顕微鏡30は、実施例1に係る蛍光LSM10と同様に、超解像成分が可視化された超解像画像を生成する標本観察装置である。2光子励起顕微鏡30は、励起光2である超短パルスレーザ光を射出する超短パルスレーザ光源31と、標本1を走査するガルバノミラー32と、変調制御信号に基づいてガルバノミラー32を駆動するガルバノミラー駆動装置33と、励起光2を透過し標本1からの2光子蛍光4を反射するダイクロイックミラー34と、励起光2を標本1に集光させる対物レンズ35と、標本1から生じる2光子蛍光4(多光子励起蛍光)を検出して検出信号を生成するPMT検出器36と、変調制御信号と検出信号から標本1の画像データを生成するPC37と、標本1の画像データを記憶する記憶装置38と、標本1の画像データを表示するモニタ39と、を含んでいる。
【0075】
2光子励起顕微鏡30は、蛍光LSM10と異なり、2光子励起により共焦点効果を生じさせることができる。このため、蛍光(2光子蛍光4)をPMT検出器36へ導く構成が蛍光LSM10と異なっており、その結果、結像式も蛍光LSM10と異なっている。具体的には、2光子励起顕微鏡30の結像式は式(20)、(21)で表される。
【数10】

【0076】
ここで、PSF2p、MTF2pは、それぞれ2光子励起顕微鏡30の結像特性を示す点像分布関数、変調伝達関数である。PSFex、MTFexは、それぞれ標本1上での励起光スポットの点像分布関数及びそのフーリエ変換である変調伝達関数であり、励起光が標本面に集光する際の集光特性を示す。rは、光軸からの距離であり、標本位置の空間座標を示す。fは、rの空間周波数である。なお、PSFex、MTFexは、上述した式(3)、(5)により表される。
【0077】
式(20)、(21)に示されるように、2光子励起顕微鏡30の結像特性は、励起光が標本面に集光する際の集光特性である点像分布関数PSFex、変調伝達関数MTFexに依存するが、検出波長(蛍光波長)における点像分布関数PSFem、変調伝達関数MTFemには依存しない点が、実施例1に係る蛍光LSM10の結像特性と異なっている。
【0078】
2光子励起顕微鏡30は、PC37が生成する画像データのナイキスト周波数が標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数よりも大きくなるように変調制御信号を生成し、且つ、生成した画像データに含まれる標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数を上回る高周波成分を強調する画像処理を行う点については、蛍光LSM10と同様である。即ち、2光子励起顕微鏡30でも、蛍光LSM10と同様に、PC37は、標本1の画像データを生成する画像生成手段であるとともに、変調制御信号を生成する変調制御信号生成手段であり、また、高周波成分を強調する画像処理手段である。なお、ナイキスト周波数とカットオフ周波数の比較は、実施例1と同様に、標本1と像面の間の投影倍率を考慮して行われる。具体的には、ナイキスト周波数とカットオフ周波数の一方を投影倍率で補正することに得られる換算量と他方とを比較する。
【0079】
図10は、本実施例に係る2光子励起顕微鏡で実行される超解像画像生成処理のフローを示す図である。以下、2光子励起顕微鏡30による超解像画像の生成方法について、図10を参照しながら、具体的に説明する。
【0080】
超解像画像生成処理が開始されると、まず、ステップS21では、利用者が観察に使用する励起波長λexを選択することで、励起波長λexが2光子励起顕微鏡30に設定される。例えば、超短パルスレーザ光源31がチタンサファイアレーザ(Ti:Sapphire Laser)であり、ステップS21では、励起波長は、λex=900nmに設定される。
【0081】
ステップS22では、利用者が対物レンズ35を選択する。例えば、25倍の倍率を有し、且つ、開口数が1.05である対物レンズが選択されて、2光子励起顕微鏡30にMob=25、NA=1.05が設定される。
【0082】
ステップS23では、標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数fc,exを算出する。ここでは、式(9)により、fc,ex=2.3μm−1と算出される。
【0083】
ステップS24では、2光子励起顕微鏡30で生成される画像データのナイキスト周波数を設定する。画像データのナイキスト周波数fNyquistは、超解像成分を記録するために、標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数fc,exよりも大きくなるように設定する。ここでは、例えば、下式(22)により算出した画像データのナイキスト周波数fNyquist=4.6μm−1を設定する。
【数11】

【0084】
これにより、標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数fc,exの2倍程度までの周波数成分を記録することができる。
なお、ナイキスト周波数fNyquistは、実施例1と同様の理由により、カットオフ周波数fc,exの約1.5倍以上であり、且つ、約4倍以下であることが望ましい。従って、画像データのナイキスト周波数fNyquistとカットオフ周波数fc,exとの関係は、式(22)の関係に限られない。
【0085】
ステップS25では、ステップS24で設定されたナイキスト周波数fNyquistに応じて、ガルバノミラー32による標本1の走査のサンプリング間隔を設定する。具体的には、サンプリング間隔dpixは、ナイキスト周波数fNyquistがサンプリング周波数(fpix=1/dpix)の1/2となるように、上述した式(14)により算出された値に設定される。ここでは、サンプリング間隔dpixは0.11μmに設定される。
【0086】
ステップS26では、PC37での高周波強調処理に用いられるコンボリューションフィルタCFの設定を設定する。具体的な設定手順は、実施例1に係る蛍光LSM10と同様である。ただし、2光子励起顕微鏡30では、下式(23)、(24)で表される点像分布関数PSFDST、変調伝達関数MTFDSTを目標として設定し、下式(25)を満たすようにコンボリューションフィルタCFを算出して設定する点が、実施例1に係る蛍光LSM10と異なっている。即ち、2光子励起顕微鏡30では、目標とする点像分布関数PSFDSTには、2光子蛍光像とカットオフ周波数が等しい広視野蛍光像の点像分布関数を設定する。
【数12】

【0087】
なお、図11は、2光子励起顕微鏡30の強調処理前の点像分布関数PSF2pと強調処理後の目標とする点像分布関数PSFDSTを比較した図であり、点像分布関数PSF2p、PSFDSTは、それぞれ点線、破線で示されている。また、図12は、2光子励起顕微鏡30の強調処理前の変調伝達関数MTF2pと強調処理後の目標とする変調伝達関数MTFDSTを比較した図であり、変調伝達関数MTF2p、MTFDSTは、それぞれ点線、破線で示されている。
【0088】
以下は、コンボリューションフィルタCFの係数の算出結果の一例である。
【数13】

【0089】
このようにして算出されたコンボリューションフィルタCFを用いて画像データに対して強調処理を行うことで、図11に例示されるように、目標とする点像分布関数PSFDSTに近似した点像分布関数PSFrを有する超解像画像の画像データを得ることができる(図11の実線を参照)。
【0090】
コンボリューションフィルタCFの設定を含む各種設定が完了すると、2光子励起顕微鏡30による画像取得処理が行われ(ステップS27)、取得された画像データに対するコンボリューションフィルタCFを使用した強調処理が行われ(ステップS28)、コンボリューション処理により生成された超解像画像がモニタに表示される(ステップS29)。そして、画像取得が終了するまでこれらの処理(ステップS27からステップS29)が繰り返し行われる(ステップS30)ことで、超解像画像の動画表示が行われる。画像取得が終了すると、超解像画像の画像データを記憶装置21に記憶して、処理を終了する(ステップS31)。
【0091】
以上、本実施例に係る2光子励起顕微鏡30によっても、超解像成分が可視化された超解像画像を生成することが可能であり、実施例1に係る蛍光LSM10と同様の効果を得ることができる。
【0092】
なお、実施例2では、標本観察装置として2光子励起顕微鏡30を例示したが、その他の多光子励起顕微鏡についても、図10に例示したフローと同様の超解像画像生成処理により超解像画像を生成することができる。
【実施例3】
【0093】
図13は、本実施例に係る第2高調波(SHG:Second Harmonic Generation)顕微鏡の構成を例示した図である。図13に例示されるSHG顕微鏡40は、実施例1に係る蛍光LSM10と同様に、超解像成分が可視化された超解像画像を生成する標本観察装置である。SHG顕微鏡40は、励起光2である超短パルスレーザ光を射出する超短パルスレーザ光源41と、標本1を走査するガルバノミラー42と、変調制御信号に基づいてガルバノミラー42を駆動するガルバノミラー駆動装置43と、励起光2を標本1に集光させる対物レンズ44と、標本1から発生するSHG光5を集光するレンズ45と、標本1を透過した励起光2を遮断するバリアフィルタ46と、標本1から発生するSHG光5(高次高調波)を検出して検出信号を生成するPMT検出器47と、変調制御信号と検出信号から標本1の画像データを生成するPC48と、標本1の画像データを記憶する記憶装置49と、標本1の画像データを表示するモニタ50と、を含んでいる。なお、SHG顕微鏡40で検出するSHG光5は、蛍光と異なりコヒーレント光であるため、PMT検出器47は透過光路上に配置される。
【0094】
SHG顕微鏡40は、PC48が生成する画像データのナイキスト周波数が標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数よりも大きくなるように変調制御信号を生成し、且つ、生成した画像データに含まれる標本1上における励起光2の空間強度分布のカットオフ周波数を上回る高周波成分を強調する画像処理を行う点については、蛍光LSM10や2光子励起顕微鏡30と同様である。即ち、SHG顕微鏡40においても、PC48は、標本1の画像データを生成する画像生成手段であるとともに、変調制御信号を生成する変調制御信号生成手段であり、また、高周波成分を強調する画像処理手段である。なお、ナイキスト周波数とカットオフ周波数の比較は、実施例1と同様に、標本1と像面の間の投影倍率を考慮して行われる。具体的には、ナイキスト周波数とカットオフ周波数の一方を投影倍率で補正することに得られる換算量と他方とを比較する。
【0095】
SHG顕微鏡40で実行される超解像画像生成処理のフローは、実施例2に係る2光子励起顕微鏡30と同様であるので、詳細な説明は省略する。
以上、本実施例に係るSHG顕微鏡40によっても、超解像成分が可視化された超解像画像を生成することが可能であり、実施例1に係る蛍光LSM10や実施例2に係る2光子励起顕微鏡30と同様の効果を得ることができる。
【0096】
なお、実施例3では、標本観察装置としてSHG顕微鏡40を例示したが、例えば、第3高調波(THG:Third Harmonic Generation)顕微鏡などの他の高次高調波顕微鏡についても、同様の超解像画像生成処理により超解像画像を生成することができる。
【実施例4】
【0097】
図14は、本実施例に係るコヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS:coherent anti-Stokes Raman scattering)顕微鏡の構成を例示した図である。図14に例示されるCARS顕微鏡60は、実施例1に係る蛍光LSM10と同様に、超解像成分が可視化された超解像画像を生成する標本観察装置である。CARS顕微鏡60は、励起光であるpump光6を射出するpump光レーザ光源61と、pump光6とは異なる波長の励起光であるStokes光7を射出するStokes光レーザ光源62と、ミラー63と、pump光6を透過しStokes光7を反射するダイクロイックミラー64と、標本1を走査するガルバノミラー65と、変調制御信号に基づいてガルバノミラー65を駆動するガルバノミラー駆動装置66と、異なる2つの波長成分を含む励起光(pump光6、Stokes光7)を標本1に集光させる対物レンズ67と、標本1からのラマン散乱光に含まれるアンチストークス成分であるCARS光8を集光するレンズ68と、標本1を透過した励起光を遮断するバリアフィルタ69と、CARS光8を検出して検出信号を生成するPMT検出器70と、変調制御信号と検出信号から標本1の画像データを生成するPC71と、標本1の画像データを記憶する記憶装置72と、標本1の画像データを表示するモニタ73と、を含んでいる。なお、CARS顕微鏡60で検出するCARS光8は、蛍光と異なりコヒーレント光であるため、PMT検出器70は透過光路上に配置される。
【0098】
CARS顕微鏡60は、pump光6の2光子とStokes光7の1光子による3光子励起によりCARS光8を生じさせる。具体的には、CARS顕微鏡60の結像式は式(27)、(28)で表される。
【数14】

【0099】
ここで、PSFCARS、MTFCARSは、それぞれCARS起顕微鏡60の結像特性を示す点像分布関数、及びそのフーリエ変換である変調伝達関数である。PSFpump、MTFpumpは、それぞれ標本1上でのpump光スポットの点像分布関数、及びそのフーリエ変換である変調伝達関数であり、pump光が標本面に集光する際の集光特性を示す。PSFStokes、MTFStokesは、それぞれ標本1上でのStokes光スポットの点像分布関数、及びそのフーリエ変換である変調伝達関数であり、Stokes光が標本面に集光する際の集光特性を示す。rは、光軸からの距離であり、標本位置の空間座標を示す。fは、rの空間周波数である。
【0100】
従って、取得されるCARS顕微鏡画像の空間強度分布のカットオフ周波数fCARSは、pump光6の波長λpumpをとし、Stokes光7の波長λStokesをとすると、下式(29)により表される。
【数15】

【0101】
ここで、pump光6のカットオフ周波数fpump、Stokes光7のカットオフ周波数fStokesは、それぞれ式(30)、(31)で表される。
【数16】

【0102】
CARS顕微鏡60は、PC71が生成する画像データのナイキスト周波数が標本1上におけるpump光およびStokes光の空間強度分布のカットオフ周波数よりも大きくなるように変調制御信号を生成し、且つ、生成した画像データに含まれる標本1上におけるpump光およびStokes光スポットの空間強度分布のカットオフ周波数を上回る高周波成分を強調する画像処理を行う点については、蛍光LSM10と同様である。即ち、CARS顕微鏡60でも、蛍光LSM10と同様に、PC71は、標本1の画像データを生成する画像生成手段であるとともに、変調制御信号を生成する変調制御信号生成手段であり、また、高周波成分を強調する画像処理手段である。なお、ナイキスト周波数とカットオフ周波数の比較は、実施例1と同様に、標本1と像面の間の投影倍率を考慮して行われる。具体的には、ナイキスト周波数とカットオフ周波数の一方を投影倍率で補正することに得られる換算量と他方とを比較する。
【0103】
図15は、本実施例に係るCARS顕微鏡で実行される超解像画像生成処理のフローを示す図である。以下、CARS顕微鏡60による超解像画像の生成方法について、図15を参照しながら、具体的に説明する。
【0104】
超解像画像生成処理が開始されると、まず、ステップS41では、利用者が観察に使用するpump光6の波長λpump、Stokes光7の波長λStokesを選択することで、pump光6の波長λpump、Stokes光7の波長λStokesがCARS顕微鏡60に設定される。例えば、CARS顕微鏡60で脂質を観察する場合であれば、ステップS41では、pump光6の波長、Stokes光7の波長は、それぞれ、λpump=711nm、λStokes=839nmに設定される。
【0105】
ステップS42では、利用者が対物レンズ67を選択する。例えば、60倍の倍率を有し、且つ、開口数が1.2である対物レンズが選択されて、CARS顕微鏡60にMob=60、NA=1.2が設定される。
【0106】
ステップS43では、標本1上における励起光の空間強度分布のカットオフ周波数fCARSを算出する。ここでは、式(29)により、fCARS=9.6μm−1と算出される。
なお、式(29)から式(31)で示されるように、標本1上における励起光の空間強度分布のカットオフ周波数fCARSは、励起光(pump光6、Stokes光7)の波長λpump、λStokesと対物レンズ67の射出側(標本1側)の開口数NAから算出される回折限界により定まる。
【0107】
ステップS44では、CARS顕微鏡60で生成される画像データのナイキスト周波数を設定する。画像データのナイキスト周波数fNyquistは、超解像成分を記録するために、標本1上におけるpump光およびStokes光の空間強度分布のカットオフ周波数よりも大きくなるように設定する。ここでは、例えば、下式(32)により算出した画像データのナイキスト周波数fNyquist=9.6μm−1を設定する。
【数17】

【0108】
ステップS45では、ステップS44で設定されたナイキスト周波数fNyquistに応じて、ガルバノミラー65による標本1の走査のサンプリング間隔を設定する。具体的には、サンプリング間隔dpixは、ナイキスト周波数fNyquistがサンプリング周波数(fpix=1/dpix)の1/2となるように、上述した式(14)により算出された値に設定される。ここでは、サンプリング間隔dpixは0.052μmに設定される。
【0109】
ステップS46では、PC71での高周波強調処理に用いられるコンボリューションフィルタCFの設定を設定する。具体的な設定手順は、実施例1に係る蛍光LSM10と同様である。ただし、CARS顕微鏡60では、コンボリューションフィルタCFによる強調処理後に得られる目標とする点像分布関数PSFDSTとして、例えば、そのカットオフ周波数fDSTが下式(33)を満たすような、仮想的な点像分布関数を設定する。
【数18】

【0110】
コンボリューションフィルタCFの設定を含む各種設定が完了すると、CARS顕微鏡60による画像取得処理が行われ(ステップS47)、取得された画像データに対するコンボリューションフィルタCFを使用した強調処理が行われ(ステップS48)、コンボリューション処理により生成された超解像画像がモニタに表示される(ステップS49)。そして、画像取得が終了するまでこれらの処理(ステップS47からステップS49)が繰り返し行われることで、超解像画像の動画表示が行われる(ステップS50)。画像取得が終了すると、超解像画像の画像データを記憶装置72に記憶して(ステップS51)、処理を終了する。
【0111】
以上、本実施例に係るCARS顕微鏡60によっても、超解像成分が可視化された超解像画像を生成することが可能であり、実施例1に係る蛍光LSM10、実施例2に係る2光子励起顕微鏡30、実施例3に係るSHG顕微鏡40と同様の効果を得ることができる。
【0112】
なお、実施例4では、標本観察装置としてCARS顕微鏡60を例示したが、例えば、異なる2つの波長成分を含む励起光で標本を励起して、標本における4光波混合により生じる発光を検出して標本を観察する顕微鏡についても、同様の超解像画像生成処理により超解像画像を生成することができる。
【符号の説明】
【0113】
1・・・標本
2・・・励起光
3・・・蛍光
4・・・2光子蛍光
5・・・SHG光
6・・・pump光
7・・・Stokes光
8・・・CARS光
10・・・蛍光LSM
11・・・レーザ光源
12、34、64・・・ダイクロイックミラー
13、32、42、65・・・ガルバノミラー
14、33、43、66・・・ガルバノミラー駆動装置
15、35、44、67・・・対物レンズ
16、18、45、68・・・レンズ
17・・・共焦点絞り
19、36、47、70・・・PMT検出器
20、37、48、71・・・PC
21、38、49、72・・・記憶装置
22、39、50、73・・・モニタ
30・・・2光子励起顕微鏡
31、41・・・超短パルスレーザ光源
40・・・SHG顕微鏡
46、69・・・バリアフィルタ
60・・・CARS顕微鏡
61・・・pump光レーザ光源
62・・・Stokes光レーザ光源
63・・・ミラー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を標本に照射する励起光照射手段と、
前記標本上における前記励起光の空間強度分布を変調する励起光変調手段と、
変調制御信号に基づいて前記励起光変調手段を制御する励起光変調制御手段と、
前記励起光の照射により生じる前記標本からの発光を検出して検出信号を生成する光検出手段と、
前記変調制御信号及び前記検出信号から前記標本の画像データを生成する画像生成手段と、
前記画像データのナイキスト周波数が前記標本上における前記励起光の空間強度分布のカットオフ周波数よりも大きくなるように、前記変調制御信号を生成する変調制御信号生成手段と、
前記画像データに含まれる前記カットオフ周波数を上回る高周波成分を強調する画像処理手段と、を含む
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の標本観察装置において、
前記励起光照射手段は、前記励起光の少なくとも一部を前記標本上に集光させる集光手段を含み、
前記励起光変調手段は、前記集光手段により集光された前記励起光の集光位置を移動させて、前記標本を走査する走査手段である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項3】
請求項2に記載の標本観察装置において、
前記変調制御信号生成手段は、前記画像データのナイキスト周波数が前記標本上における前記励起光の空間強度分布のカットオフ周波数の約1.5倍以上になるように、前記変調制御信号を生成する
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の標本観察装置において、
前記変調制御信号生成手段は、前記画像データのナイキスト周波数が前記標本上における前記励起光の空間強度分布のカットオフ周波数の約4倍以下になるように、前記変調制御信号を生成する
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記励起光の空間強度分布のカットオフ周波数は、前記励起光の波長と前記集光手段の射出側の開口数から算出される回折限界により定まる
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記画像データのナイキスト周波数は、前記走査手段による前記標本上におけるサンプリング間隔により定まる
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6のいずれか1項に記載の標本観察装置において、さらに、
前記集光手段による集光位置と光学的に共役な位置に開口が形成された共焦点絞りを含む
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項8】
請求項7に記載の標本観察装置において、
前記共焦点絞りの開口径は、レイリー径以下である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項9】
請求項2乃至請求項8のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記画像処理手段は、デジタルコンボリューションフィルタを使用して、前記高周波成分を強調する
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項10】
請求項9に記載の標本観察装置において、
前記デジタルコンボリューションフィルタの係数は、前記励起光の波長に応じて調整される
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の標本観察装置において、
前記デジタルコンボリューションフィルタの係数は、前記発光の波長に応じて調整される
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記デジタルコンボリューションフィルタの係数は、前記集光手段の射出側の開口数に応じて調整される
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項13】
請求項9乃至請求項12のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記デジタルコンボリューションフィルタの係数は、前記標本の光学像が前記光検出手段の受光面に投影される倍率に応じて調整される
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項14】
請求項9乃至請求項13のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記デジタルコンボリューションフィルタの係数は、前記画像データのナイキスト周波数に応じて調整される
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記発光は、前記標本における前記励起光の照射強度に非線形に依存する
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項16】
請求項15に記載の標本観察装置において、
前記発光は、前記標本から発生する多光子励起蛍光である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項17】
請求項15に記載の標本観察装置において、
前記発光は、前記標本から発生する高次高調波である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項18】
請求項15に記載の標本観察装置において、
前記励起光は、異なる2つの波長成分を含み、
前記発光は、前記標本からのラマン散乱光に含まれるアンチストークス成分である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項19】
請求項15に記載の標本観察装置において、
前記励起光は、異なる2つ以上の波長成分を含み、
前記発光は、前記標本における4光波混合により生じる
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項20】
請求項1乃至請求項19のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記画像処理手段は、前記画像生成手段による前記画像データの生成に合わせて、前記画像データを実時間処理する
ことを特徴とする標本観察装置。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−20083(P2013−20083A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153133(P2011−153133)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】