標点打刻装置


【課題】 試験片形状によらず、所定の精度を有する1組又は2組以上の標点を効率よく試験片表面に刻印することが可能な標点打刻装置を提供すること。
【解決手段】 標点打刻装置10は、その先端に、2個のパンチ26、26を所定の標点距離となるように保持するためのパンチ保持部22aが設けられた可動部20と、その先端に、2個のパンチ26、26の先端に対して、試験片4をほぼ平行に載置するための試験片支持台44が設けられた固定部40とを備え、可動部20の起端は、試験片支持台44上に載置された試験片4に対して、パンチ保持部22aを前進・後退できるように、固定部40の起端に回転可能に支持されている。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標点打刻装置に関し、さらに詳しくは、引張試験片などの各種試験片に標点を刻印するための標点打刻装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引張試験は、材料の機械的性質を調べる最も基本的な試験方法であり、材料から切り出した所定の形状を有する試験片に対し、材料が壊れるまで引張荷重を加える試験である。引張試験によって、材料の比例限度、弾性限度、降伏点、耐力、引張強さ、伸び、絞り、加工硬化率などを求めることができる。
これらの内、伸びは、試験前後の試験片の長さの変化量から求められる。そのため、伸びを測定する際には、試験前に試験片の表面に所定の間隔で標点が記される。引張試験中又は破断後の試験片の長さ又は伸びを測定する方法としては、
(1) 破断した試料を突き合わせ、標点距離をノギス等で測定する方法、
(2) 試験片の表面にレーザー光を照射し、標点に対応する2領域からの散乱光に含まれるスペックルパターンの移動量から、標点間の伸びを算出する方法(例えば、特許文献1参照)、
などがある。また、標点は、通常、パンチ等を用いて、1個ずつ試験片表面に刻印されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−96597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
標点は、通常、2個(1組)あれば足りる。しかし、試験片が標点近傍で破断した場合には、伸びの測定が困難になることがある。また、試験片が2個の標点で挟まれた領域の外側で破断した場合には、伸びの測定ができない。そのため、試験片には、位置をずらして2組以上の標点が刻印される場合もある。さらに、引張試験の際の標点距離の測定誤差は、JIS Z2241で規定されており、規定寸法の0.4%以内(例えば、標点距離25mmの場合、誤差0.1mm以内)と定められている。
しかしながら、標点距離が規定の値となるように、試験片の表面に個々の標点を1個ずつパンチ等で刻印するのは、作業が極めて煩雑となる。
【0005】
また、個々の標点を1個ずつパンチ等で刻印すると、図3に示すように、1組の標点2a、2bが試験片4の中心線から外れる場合がある。特に、試験片4の断面が円形断面である場合には、円周方向のずれが発生しやすい。伸びは、引張荷重が加えられた方向における試験片4の長さの変化量であるので、標点距離とは、正確には、試験片4の中心線に対して平行に測定した標点2a、2b間の長さ(すなわち、中心線上への投影長さ)である。
一方、標点距離の測定は、通常、標点2a、2b間の直線距離をノギス等で計測することにより行われている。そのため、1組の標点2a、2bが試験片4の中心線から外れると、計測値と標点距離との間に誤差が生ずる。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、規定された精度を有する1組又は2組以上の標点を効率よく試験片表面に刻印することが可能な標点打刻装置を提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、試験片の断面が円形断面であっても、1組又は2組以上の標点を試験片の中心線に対して平行に刻印することが可能な標点打刻装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る標点打刻装置は、その先端に、2個のパンチを所定の標点距離となるように保持するためのパンチ保持部が設けられた可動部と、その先端に、前記2個のパンチの先端に対して、試験片をほぼ平行に載置するための試験片支持台が設けられた固定部とを備え、前記可動部の起端は、前記試験片支持台上に載置された前記試験片に対して、前記パンチ保持部を前進・後退できるように、前記固定部の起端に回転可能に支持されていることを要旨とする。
この場合、前記可動部の起端は、前記試験片の長手方向に対して平行に移動できるように、前記固定部の起端に回転可能に支持されていても良い。
【発明の効果】
【0008】
パンチ保持部には2個のパンチが標点距離とほぼ同じ間隔で固定されているので、試験片支持台に載置されている試験片に向かって可動部を前進させ、パンチ先端で試験片表面を打刻すると、所定の精度を有し、かつ、試験片の中心線に対してほぼ平行である1組の標点を1動作で刻印することができる。また、可動部の起端が試験片の長手方向に対して平行に移動できるようになっている場合には、同一の試験片に対し2組以上の標点を高い精度で効率よく刻印することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。図1(a)、図2(b)及び図1(c)に、本発明に係る標点打刻装置の平面図、正面図及び右側面図を示す。図1において、標点打刻装置10は、可動部20と、固定部40とを備えている。
【0010】
可動部20は、その先端にパンチ保持部22aを有するT字型の可動部基体22と、パンチ保持部22aに固定された2個のパンチホルダ24、24と、各パンチホルダ24、24に固定されたパンチ26、26とを備えている。
パンチ保持部22aの先端面には、水平方向に伸びる溝22bが形成されている。溝22bの断面形状は、表面から内部に向かうにつれてその横幅が広くなる、いわゆる、逆テーパ状になっている。また、各パンチホルダ24、24には、それぞれ、逆テーパ状の突起24a、24aが設けられ、突起24a、24aは、パンチ保持部22aの溝22bに挿入されている。
【0011】
各パンチホルダ24、24は、溝22bに沿ってスライドできるようになっており、パンチ26、26の間隔を任意に変更できるようになっている(標点距離可変手段)。また、各パンチホルダ24、24は、パンチ26、26の先端の間隔が所定の標点距離となるように位置決めされた後、その先端面から挿入されるボルト24b、24bによりパンチ保持部22aに固定されている。
パンチ26、26は、パンチホルダ24、24の鉛直方向に形成された貫通孔に挿入され、パンチホルダ24、24の先端面から挿入されるボルト24c、24cにより固定されている。また、パンチ26、26は、その先端が試験片4の表面に対してほぼ平行に、かつ、試験片4の中心線に対してほぼ平行になるように固定されている。
【0012】
さらに、可動部基体22の先端側の上面には、取手28が設けられている。また、可動部基体22の起端側の上面には、ホームベース型の位置決め板30が固定されている。可動部基体22の起端側には、U字型の切り欠きが形成されており、位置決め板30は、その先端がU字型の切り欠きからせり出すように、可動部基体22の起端側に固定されている。
【0013】
固定部40は、平板状の固定部基体42と、固定部基体42の先端に設けられた試験片支持台44と、固定部基体42の起端に設けられた回転軸46とを備えている。
試験片支持台44は、2個のパンチ26、26の先端に対して、試験片4の表面がほぼ平行になり、かつ、試験片4の中心線に対してほぼ平行になるように、試験片4を載置するためのものである。試験片支持台44には、V字型の溝が形成され、円形断面を有する試験片4をV字型の溝上に載置できるようになっている。
【0014】
ここで、「試験片4の表面に対してほぼ平行」とは、パンチ26、26の先端を結ぶ線と試験片4の表面とは、完全に平行であることが望ましいが、2個のパンチ26、26で2個の標点を確実に刻印できる限りにおいて、パンチ26、26の先端を結ぶ線と試験片4の表面とが、多少、平行からずれていても良いことを意味する。
同様に、「試験片4の中心線に対してほぼ平行」とは、パンチ26、26の先端を結ぶ線と試験片4の中心線とは、完全に平行であることが望ましいが、標点距離が許容範囲に収まる限りにおいて、パンチ26、26の先端を結ぶ線と試験片4の中心線とが、多少、平行からずれていても良いことを意味する。
【0015】
回転軸46は、固定部基体42の起端に設けられた起立部42a、42aに固定されている。また、回転軸46は、可動部基体22の起端側に形成された貫通孔に挿入されている。すなわち、可動部20の起端は、固定部40の起端に回転可能に支持されており、試験片支持台44上に載置された試験片4に対して、パンチ保持部22aを前進・後退させることができるようになっている。
また、可動部基体22の起端は、回転軸46の長手方向に沿って、任意の位置に移動できるようになっている。さらに、回転軸46の表面には、複数個の目盛り46a、46a…が形成されている。上述した位置決め板30は、その先端が目盛り46a、46a…近傍に来るように、可動部基体22の起端側に固定されている。
【0016】
次に、図1に示す標点打刻装置10を用いた試験片表面への標点の打刻方法について説明する。
まず、予め、パンチホルダ24、24を所定の位置に固定し、パンチ26、26の先端の距離を標点距離に合わせておく。次いで、取手28を手で持ち上げ、試験片支持台44上に試験片4を載置する。
次に、図2(a)に示すように、位置決め板30の先端が回転軸46に形成された目盛り46a、46a…のいずれか(図2(a)に示す例においては、中心にある目盛り46a)に来るように、可動部20を回転軸46に沿って移動させ、可動部20の位置決めを行う。
この状態から、図2(b)に示すように、取手28を手でつかんだまま、可動部20の先端を試験片4に向かって振り下ろす。これにより、試験片4の表面には、標点距離に相当する間隔で、2個の標点が同時に形成される。
【0017】
同一の試験片4に対して複数組の標点を刻印する場合には、図2(c)に示すように、位置決め板30の先端が他の目盛り46a(図2(c)に示す例においては、図の上方にある目盛り46a)に来るように、可動部20を回転軸46に沿って移動させる。そして、この状態から、図2(d)に示すように、取手28をつかんで可動部20を持ち上げ、可動部20の先端を試験片4に向かって振り下ろせば良い。これにより、2組目の標点を同時に形成することができる。3組以上の標点を形成する場合も同様である。
【0018】
本発明に係る標点打刻装置10は、パンチ保持部22aに2個のパンチ26、26が標点距離とほぼ同じ間隔で固定されているので、可動部20を試験片4に対して振り下ろす1回の動作で、所定の標点距離を有する1組の標点を同時に形成することができる。また、パンチ26、26は、予め定められた間隔で固定されているので、複数個の試験片に対して標点を打刻する場合であっても、各試験片毎に標点距離を計測する必要がない。そのため、標点の打刻作業及び標点距離の検査作業を簡略化することができる。
【0019】
また、パンチ保持部22aと試験片支持台44との位置関係を適正化すると、試験片4が円形断面を有する場合であっても、所定の標点距離を有する1組の標点を試験片4の中心線上に容易に形成することができる。
さらに、本発明に係る標点打刻装置10は、可動部の起端が試験片の長手方向に沿って移動できるようになっているので、2組以上の標点を同一の試験片4に打刻する場合であっても、標点の打刻作業を高い精度で効率よく行うことができ、標点距離の検査作業も簡略化することができるる。
【0020】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【0021】
例えば、本発明に係る標点打刻装置を用いて標点を打刻することが可能な試験片は、引張試験片に限られるものではなく、他の試験に供される試験片であって、標点を打刻する必要があるものすべてに対して適用することができる。
また、本発明が適用可能な試験片は、円形断面を有するものに限られるものではなく、例えば、長方形断面を有する試験片に対しても使用することができる。この場合、試験片支持台44の先端にV字型の溝を形成することに代えて、試験片形状に適した溝(例えば、試験片形状が長方形断面を有するものである場合、試験片支持台44の表面に凹型の溝)を形成するのが好ましい。
【0022】
また、パンチホルダ24、24は、パンチ保持部22aの先端に形成された溝22bに沿って水平方向に移動できるようになっているが、パンチ保持部22aの上面に、パンチホルダ24、24(すなわち、これに保持されるパンチ26、26)の間隔を計測するための目盛りを設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る標点打刻装置は、引張試験片などの各種試験片に標点を打刻するための打刻装置として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(a)、図1(b)及び図1(c)は、それぞれ、本発明に係る標点打刻装置の平面図、正面図及び右側面図である。
【図2】図1に示す標点打刻装置の使用方法を示す図である。
【図3】標点が打刻された試験片を示す模式図である。
【符号の説明】
【0025】
4 試験片
10 標点打刻装置
20 可動部
22a パンチ保持部
26 パンチ
40 固定部
44 試験片支持台


【特許請求の範囲】
【請求項1】
その先端に、2個のパンチを所定の標点距離となるように保持するためのパンチ保持部が設けられた可動部と、
その先端に、前記2個のパンチの先端に対して、試験片をほぼ平行に載置するための試験片支持台が設けられた固定部とを備え、
前記可動部の起端は、前記試験片支持台上に載置された前記試験片に対して、前記パンチ保持部を前進・後退できるように、前記固定部の起端に回転可能に支持されている標点打刻装置。
【請求項2】
前記可動部の起端は、前記試験片の長手方向に対して平行に移動できるように、前記固定部の起端に回転可能に支持されている請求項1に記載の標点打刻装置。
【請求項3】
前記パンチ保持部は、前記2個のパンチの間隔を変える標点距離可変手段を備えている請求項1又は2に記載の標点打刻装置。


【図1】

【図2】

【図3】


【公開番号】特開2006−250589(P2006−250589A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
物理学 | 測定;試験 | 材料の化学的または物理的性質の決定による材料の調査または分析 | 機械的応力の負荷による固体材料の強さの調査 | 細部 | 指示または記録手段の特殊な適用
【出願番号】特願2005−64704(P2005−64704)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社
【Fターム(参考)】
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 調査方法;試験の仕方 | 引張試験
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 力を掛ける方法(時間的、空間的) | 静的負荷による試験
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 力を掛ける方法(時間的、空間的) | 静的負荷による試験 | 破断試験(試験片破断)
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 調査対象項目 | 弾性率 | 伸び弾性率(縦弾性係数)
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験片、形状、構造及び部分、部品 | 柱状、棒状
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 試験装置;構成、部分構成(治具を含む) | 治具
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 測定対象 | 変位
機械的応力負荷による材料の強さの調査 | 測定対象 | 歪み