説明

標的リガンドをスクリーニングする方法

標的(例えば生体分子)をスクリーニングするための一般システムを説明する。
スクリーニングは、以降の生物学的試験で見られるように、標的の自然発生的な低活性または不活性状態に対して結合し、標的機能のインヒビターとして作用する化合物の発見に用いることがでる。本発明は、以降の生物学的試験で見られるように、標的の自然発生的な低活性または不活性状態に対して結合し、標的機能のインヒビターとして作用する化合物を発見するために、新規な様式で、標的(例えば生体分子)をスクリーニングするための一般システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、米国仮出願第60/456,816号(2003年3月21日出願)および米国仮出願第60/456,901号(2003年3月21日出願)の優先権を主張するものであり、各々の内容全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
小分子薬物が種々の疾患を処置することを発見する努力は、ヒト・ゲノムの解明で革命をもたらした。ゲノム科学および生物学的スクリーニングの両方での高いスループット技術は、コンビナトリアル・ケミストリーおよび計算機技術と共に、新薬候補の大量検索実行の可能性をよりいっそう高くした。
【0003】
科学者は、一つの薬物を検索する際に、可能性のある莫大な数の候補薬を厳密に調べなければならない。コンビナトリアル・ケミストリーと平行する合成がプールをスクリーニングしている可能性として多数の化合物を提供する一方で、現在のスクリーニング・プロセスでは今や、新規メカニズムによる薬物の手かがりの発見には限界がある。大部分の現在のスクリーニング・プロセスは、機能に基づいており、生化学でまたは細胞レポーター読み出しを必要とする。酵素に関しては、レポーターは基質の消費または生成物の発生であり、最適パフォーマンスのために、標的酵素で最も活性の高い形態が機能ベースのアッセイを構成する上で要求される。機能ベースのスクリーニング・プロセスは、酵素の活性化の活性に直接干渉する化合物のみを同定する方向に偏っている。したがって、不活性型(例えば非活性形態または基底形態)および酵素前駆体形状である酵素は、機能に基づくスクリーンにとっては好適ではない。それにもかかわらず、非活性形態に結合し、かつそれが活性化されるのを防止している化合物は、まさしく多くの現行のスクリーニング・プロセスを使用して見渡されるかもしれない新規かつ有用な薬物を導くものとなりえる。また、酵素が酵素活性のために補助因子を必要とする場合、機能的なベースのスクリーニング・プロセスを、酵素が補助因子のない形態である場合にのみ存在しているアロステリック結合部位に結合するものであってもよい化合物の発見のために最適なかたちで構成することはできない。
【0004】
伝統的なスクリーニング法が潜在的候補薬を見渡すことができるもう一つの状況は、リガンド受容体プロセスが単一タンパク質の多量体化を含むということである。機能ベースのスクリーニング・プロセスは、単一形状を結合している化合物を検出することができない。しかし、多量体化プロセスを単一形状と予防することに結合している化合物は、非常に有用なリード薬物である。G−タンパク質結合受容体(GPCR)および核ホルモン受容体(NHR)等の受容体タンパク質の場合、例えば、アンタゴニストのためにスクリーニングを機能ベースにした場合には、レポーターとして少なくとも1つの既知の作用薬を必要とする。したがって、オーファン(または非リガンド化)受容体の機能をベースとしたスクリーニングは、受容体の活性を刺激する化合物を発見することができるだけである。それでも、受容体結合した化合物(受容体に対するリガンド結合に干渉しない)は、受容体の機能で役割を果たす他の生体分子で、相互作用を通して受容体の機能にさらに影響を及ぼし続けることができる。明らかに、機能に基づくスクリーンでオーファン受容体を構成することができない。同様に、未知機能のタンパク質は、機能に基づくスクリーンのための標的であるはずではない。未知関数の多くの新しいタンパク質が、ゲノミックおよびプロテオミック実験を通して発見される。このように、全てに対する結合が標的の形成する化合物の発見のための機能ニュートラル・スクリーニング方法が求められている。本明細書中に報告される親和性ベースのスクリーニング・プロセスを、機能ニュートラルに構成することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明は、以降の生物学的試験で見られるように、標的の自然発生的な低活性または不活性状態に対して結合し、標的機能のインヒビターとして作用する化合物を発見するために、新規な様式で、標的(例えば生体分子)をスクリーニングするための一般システムに関する。このシステムは、DNA、RNA、タンパク質(例えば膜関連タンパク質、酵素、核ホルモンレセプター、およびG−タンパク質結合受容体(GPCRs))を含む全種類の生物学的標的に適用可能である。また、システムはその出力のために生化学アッセイを必要とせず、非常に少量の精製されたタンパク質のみ、または他の生体分子受容体(典型的な実験では1μg未満)だけを利用する。その上、このシステムは、そのインプリメンテーションのために受容体の構造についての知識を必要としない。さらに、本明細書中に記載される方法の所望のアウトプットは、複数の化合物の複数の混合物で達成される。また、所定の標的酵素を一緒に多重化して、プロセスの効率を促進することができる。
【0006】
一態様において、本発明は標的部分の不活性化または不活性形態に対して複数の化合物からなる混合物(例えば、2ないし25,000の化合物、約5ないし10,000の化合物、約5ないし5,000の化合物、約5ないし1,000の化合物、約20ないし500の化合物、または約100ないし300の化合物を有する混合物)をスクリーニングする親和性スクリーニング方法を提供する。スクリーニングは、標的部分の不活性化または不活性形態が反応の範囲内で優勢である条件下で起こる。もう一つの態様において、例えば基質(例としてATP、GTP)、補助因子、および金属イオンが存在しない場合に、標的を活性化しうる1種類以上の化合物が不在または欠如している状態で、スクリーニングが起こる。別の態様では、標的は活性化されないように修飾または突然変異されている(例えば、それ自身が切断しないように突然変異したプロテアーゼ)。もう一つの態様では、標的混合物は、活性の高いまたは生理学的に活性のある標的をいっさい含まない。これらの態様の全て対して、方法は、以下のステップを含む。すなわち、複数の化合物からなる混合物を提供するステップと、
混合物を標的部分の非活性形態とともにインキュベートして化合:標的物複合体を形成するステップと、
非結合化合物および標的から、化合:標的複合体を非結合化合物および標的から分離するステップと、
化合物:標的複合体を解離させるステップと、
質量分析計に化合物を通すことで、標的に対して結合した解離化合物を同定するステップとを有し、同定された化合物が標的部分に結合する。
【0007】
一実施形態では、上記同定された化合物がKd値1pM(ピコモル)ないし50μM(マイクロモル)の親和性で、標的と結合することができる。化合物混合物を、単一のイオン質量を持つ少なくとも90%の化合物が質量分析計で測定可能であることを確実にする手段として質量コード化(mass−coded)することができる。標的は、例えば核酸(例:DNAまたはRNA)あるいは酵素(例:キナーゼ、シンターゼ、ホスファターゼ、メチラーゼ)等の任意の生体分子とすることができる。
【0008】
別の態様では、本発明は、複数の化合物からなる混合物(例えば、2ないし25,000の化合物、約5ないし10,000の化合物、約5ないし5,000の化合物、約5ないし1,000の化合物、約20ないし500の化合物、または約100ないし300の化合物を有する混合物)を、標的部分の異なる形態の混合物に対して、スクリーニングするための親和性スクリーニング方法を提供する。もう一つの態様では、不活性化または不活性形態は、標的混合物中で優勢である。別の態様では、反応が活性成分を欠如またはまったくなく、例えば、基質(例えばATP、GTP)、補助因子、および金属イオンが存在しない状態にある。これらの態様で、本方法は、以下のステップを含む。すなわち、化合物をスクリーニングにするための方法であって、
複数の化合物からなる混合物を提供するステップと、
標的部分の活性形態(リガンド結合形態)および非活性形態もしくは不活性形態(リガンド無し形態)の混合物を提供するステップと、
複数の化合物からなる混合物を標的部分の混合物ととともにインキュベートして化合:標的物複合体を形成するステップと、
非結合化合物および標的から、化合:標的複合体を非結合化合物および標的から分離するステップと、
化合物:標的複合体を解離させるステップと、
質量分析計に化合物を通すことで標的に結合した解離した化合物を同定し、同定された化合物が親和性のKd値が1pMないし50μMである標的部分に結合をするステップと、
標的物複合体に存在する化合物のあいだから新規のリガンドを同定し、標的化合物が化合物を通すことで標的部分の任意の形状に結合し、標的部分の任意の形状に対して結合したリガンドを同定するために質量分析計に標的複合体を通し、該同定されたリガンドは親和性のKd値が1pMないし50μMである標的部分に結合するステップとを有し、
本方法は、標的部分のリガンド結合およびリガンド無し形態により同定された新規リガンドをインキュベーションするステップを必要に応じて含むことができる。ここで、化合物:標的物複合体の形成と、標的部分のリガンド結合形態に対してどの化合物が結合したか、その反対にどの化合物がリガンド・フリーの形態に結合したかを概説するためにリガンドが繰り返される。
【0009】
一実施形態では、上記化合物混合物を質量コード化して上記化合物の少なくとも90%が質量分析計によって検出可能な単一イオン質量を持つことを確実にする。別の実施形態では、標的形態の混合物として、生体分子の非活性形態(例えば、非リン酸化、リン酸化、非リガンド化、ネガティブ調節因子)、不活性形態(例えば、変異、トランケート)、および活性形態(例えば、リン酸化、非リン酸化、アゴニストへの結合、恒常的活性化)が含まれる。別の実施形態では、標的形態の混合物は、単一形状および多量体形状を含む。別の実施形態では、標的の形態の混合物は、リガンド結合状態およびリガンドのない形状を含む。さらに別の実施形態において、標的の形態の混合物は、補助因子結合形態および補助因子のない形態を含む。
【0010】
別の実施形態では、複数の化合物からなる混合物は質量コード化されており、標的の形態の混合物は非活性形態、不活性形態、活性形態、多量体形態、単一形態、リガンド結合形態、リガンドのない形態、補助因子結合形態および/または補助因子のない形態を含む。複数の化合物からなる混合物は、化合物のその少なくとも90%を確実にするために、質量分析によって検出可能な固有のイオン質量を有するような方向で質量コード化される。
【0011】
本発明も、キナーゼのリガンドを発見するための方法を提供する。これらのリガンドは目的とするところのキナーゼのために選択的で、キナーゼを阻害するのに役立つ。選択的なキナーゼインヒビターは、キナーゼ(すなわち標的)をその基底状態または非活動状態(例えば、非リン酸化、非二量体化、またはリン酸化)にあるキナーゼをスクリーニングすることによって同定することができる。キナーゼのスクリーニングは、DFGがDFG外側位置にある場合、アロステリック部位が形成した標的を優先してこれらの条件下でおこなわれた。スクリーニングは、アロステリック部位が優勢である条件下でアフィニティー法を使用して実行される。例えば、キナーゼが触媒活性がない場合(例えば、非活性、基底低い活性状態で、または不活性である)、アロステリック部位が優勢である可能性がある。本発明は、インヒビターの直接的検出および構造的アサインメントを可能とする方法によって、大きな化合物混合物のスクリーニングを可能にする付加的な利点を提供する。本発明は、また足場の理論的設計(rationale design)も可能し、DFG外側立体配置にキナーゼがある場合に形成されたアロステリック部位のモデリングをベースとしたライブラリーの設計も可能にする。本発明によって誘導されたインヒビターは、優先的にアロステリック部位を標的にし、また改善された選択制を概して示す。
【0012】
一態様では、本発明はライブラリーまたは複数の化合物からなる混合物(例えは、質量コード化ライブラリー)から試験キナーゼインヒビターを同定したり、発見する方法を提供する。この方法では、一般に、試験キナーゼ(例えば不活性化状態のキナーゼ)と、ライブラリーまたは複数の化合物からなる混合物のメンバーと、接触またはインキュベーションすることが含まれる。結合した化合物を次に非結合化合物から分離する。もう一つの実施形態において、結合化合物はそれから非結合化合物から任意に切り離される。結合化合物(すなわち潜在的インヒビター)を同定することができる(例えば、質量分析計によって)。この方法は、さらに、潜在的バインダーが試験キナーゼの活性(例えば、従来のアッセイで、例えば生化学的または細胞をベースとしたアッセイ)を阻害または抑制するかどうかを決定することも含み、インヒビターが試験キナーゼと結合するのを可能にする条件下および十分な時間にわたって、試験キナーゼに対してインヒビターを接触さえるステップと、該インヒビターによって試験キナーゼが非機能性または劣機能性を与えられるかどうかを測定するステップとを含む。一実施形態において、複数の化合物からなる混合物(例えば質量コード化ライブラリー)のインキュベートまたは接触は、ATPおよび/またはペプチド基質がない場合、実行される。もう一つの実施形態において、複数の化合物からなる混合物(例えば質量コード化ライブラリー)のインキュベートまたは、接触させることは、ATPおよび/またはペプチド基質で実行される。一実施形態において、試験キナーゼは全長キナーゼである。もう一つの実施形態において、試験キナーゼは触媒領域を含む全長キナーゼのトランケート・フラグメントを含む。もう一つの実施形態において、試験キナーゼはキナーゼのバリアントまたは突然変異体である。もう一つの実施形態において、試験キナーゼは不活性化である。もう一つの実施形態において、試験キナーゼは活性化させられる。別の実施形態では、上記試験キナーゼが、生理学的活性状態に関連して部分的に活性化されている。他の実施形態では、試験キナーゼは基底形態であり、低触媒活性を示す。別の実施形態では、化合物(試験キナーゼを結合することができる)の同定は、質量分析計によって同定することが可能であり、質量コード化された化合物のデータベースで比較的に実行される。
【0013】
DFGモチーフがDFG外側立体配置である場合に凹状ポケットがインヒビター結合部位として形成されるように、本発明はDFG外側立体配置でのDFGモチーフの位置決めを用いてキナーゼインヒビターを同定する方法を提供する。一実施形態では、本発明はインヒビターを設計する方法を提供する。
この方法は、
(a)非活性化試験キナーゼを三次元構造が知られている参照キナーゼ(例えば、プロテイン・データ・バンク識別子:1kyl鎖a、1kv2鎖a、1iep鎖a、1iep鎖b、1fpu鎖a、1fpu鎖b、および1irk、プロテイン・データ・バンクは、URLアドレス(rcsb.org/pdb/)で見つかる)と比較するステップと、
(b)アロステリック結合部位(例えばDFGモチーフおよびへリックス・アルファ−Cと関連して位置するアロステリック結合部位)を同定するステップと、
(c)アロステリック結合部位に基づくインヒビターを設計するステップとを含む。
インヒビターを設計することは、アロステリック結合部位の位相幾何学的性質および電子的性質に基づく足場の設計と、足場に基づいた質量コード化ライブラリーを設計することとを含むことができる。別の実施形態では、ステップ(c)は、質量コード化ライブラリーまたは複数の化合物からなる混合物を提供する。さらに別の実施形態では、本発明は、試験キナーゼを結合する前記複数の化合物に関する質量コード化ライブラリー(例えば試験キナーゼによる親和性スクリーニング)のスクリーニングと、キナーゼ結合剤が、インヒビターの存在または非存在下でキナーゼ・アッセイを実施することでキナーゼを阻害するかどうかの決定とを含み、それによって試験キナーゼの設計または発見がおこなわれる。
【0014】
一実施形態において、三次元構造が知られている参照キナーゼは、プロテイン・データ・バンク識別子1g3n鎖a、1g3n鎖b、lkyl鎖a、1kv2、鎖a、1iep鎖a、1iep鎖b、1fpu鎖a、および1fpu鎖bもしくは1irkを持つキナーゼである。別の実施形態では、試験はプロテイン・データ・バンク識別子1g3n鎖a、1g3n鎖b、lkyl鎖a、1kv2、鎖a、1iep鎖a、1iep鎖b、1fpu鎖a、および1fpu鎖b、あるいは1irkを持つキナーゼである。
【0015】
別の実施形態において、アロステリック結合部位はDFGモチーフを位置決めして、DFGモチーフがDFG外側位置であると決定することで同定される。
アロステリック部位は、DFG外側立体配置でDFGモチーフに関連させて、あるいはへリックス・アルファ−Cに関連してDFGモチーフと関連して位置決めされる。別の実施形態では、DFG外側位置にあるDFGモチーフは、アルファ・へリックスCからの距離が11Åよりも大きく、また20Åよりも低い。別の実施形態では、アルファ・へリックスCは、Val1050〜Met1051を含むインシュリン受容体キナーゼ アルファ−・へリックスCに相対的な三次元位置で相同である。アルファ−・へリックスCは、Val289〜Met290を含むc−ablアルファー・へリックスCに対する相対的な三次元位置で相同である。DFGモチーフは、配列DWGまたはDLGを有することができる。一実施形態では、試験キナーゼは、c−abl, p38MAPKまたはインシュリン受容体チロシンキナーゼである。別の実施形態では、試験キナーゼは、c−abl, p38MAPKまたはインシュリン受容体チロシンキナーゼではない。別の実施形態では、前記アロステリック結合部位が前記ATP結合部位および前記活性化ループから空間的に異なる。一実施形態において、試験キナーゼはc−エイブル、p38MAPKまたはインシュリン受容体チロシンキナーゼである。別の実施形態では、前記アロステリック結合部位が前記ATP結合部位および前記活性化ループから空間的に異なる.
別の態様では、本発明は、DFGがキナーゼ(例えば不活性化キナーゼ)でDFG外側立体配置である場合、形成されるアロステリック結合部位(例えば凹状ポケット)の位相幾何学的および静電気学的性質に基づいて設計された複数の化合物からなる混合物(例えば、ライブラリー、例えば、質量コード化ライブラリー)から、試験キナーゼのインヒビターを同定する方法を提供する。方法は一般に、一般式A(B)nを有している化合物の質量コード化セットを生産することを含む。ここで、Aは足場であり、各Bはそれぞれ独立して周辺部分であり、nは整数で1よりも大きく、概して2から約6までである。この方法は、周辺部分前駆体サブセットをセットされる周縁部分前駆体から選択することを含む。そして、それはアロステリック部位がDFG外側立体配置でDFGで形成したキナーゼ(例えば不活性化キナーゼ)の位相幾何学的および静電気学的性質に基づく。サブセットは、n個の周辺部分の少なくとも約50、100、250、または500の異なる組み合わせがサブセットで周辺部分前駆体から導き出された充分な数の周辺部分前駆体を含む。周辺部分前駆体のサブセットに由来するn個の周辺部分の少なくとも約90%の可能性のある組み合わせ全てがn個の周辺部分のその他の組み合わせの全ての分子質量合計とは別の分子質量合計を有するように、周辺部分前駆体のサブセットが選択される。この方法は、n個の反応基を有する足場前駆体を周辺部分前駆体サブセットと接触させることをさらに含む。また、その各々が少なくとも1つの周辺部分前駆体と反応して共有結合を形成することが可能である。周辺部分前駆体サブセットは、周辺部分前駆体を、各々の反応基との反応に充分な条件下で、足場前駆体に接触させることで、一般式A(B)nの化合物の質量コード化セットが得られる。
【0016】
具体的には、一般式A(B)nの化合物の質量コード化セットを産生するための方法は、以下のステップを含む。すなわち、
(a)2つの異なる周辺部分前駆体のあらゆるセットを周辺部分前駆体セットから選択し、この際、選択を、2つのうちの各セットについて、もし2つの周辺部分前駆体が等しい分子質量を持つならば、2つのうちの1つが取り除かれて、残留セットが形成されるようにしておこなうステップと、
(b)残留セットから、4つの周辺部分前駆体のあらゆるセットを選択するもので、4つのうちの所定のセットに関して、4つの所定のセットのうち最初の2つの前駆体の分子量の合計が4つの周辺部分前駆体の所定のセットの第2の2つの前駆体の分子量の合計と等しいならば、4つの周辺部分前駆体のうちの1つを取り除き、上記選択が残留セットを形成するステップと、
(c)残留セットから、6つの異なる周辺部分前駆体の各々のセットを選択するもので、6つの所定のセットに関して、6つの所定のセットのうち最初の3つの前駆体の分子量の合計が6つの周辺部分前駆体の所定のセットの第2の3つの前駆体の分子量の合計と等しいならば、6つの周辺部分前駆体のうちの1つを取り除き、上記選択が周辺部分前駆体の作用選択(working selection)を形成するステップと、
(d)周辺部分前駆体の働く選択セットから、周辺部分前駆体サブセットを選択するもので、この際、前記サブセットが前記サブセットに由来するn個の周辺部分の少なくとも約250の異なる組み合わせが存在する充分な数の周辺部分前駆体を含むようにして、前記サブセットに由来するn個の周辺部分の組み合わせの少なくとも約90%は、分子質量合計を有し、それらは前記サブセットに由来するn個の周辺部分の他の全ての組み合わせの分子質量合計とは別であるステップと、
(e)足場前駆体で前記周辺部分前駆体サブセットを接触させ、ここでn個の反応基を有している前記足場前駆体であり、各々の反応基は、共有結合を形成するために、少なくとも1つの周辺部分前駆体で反応することができ、その際、周辺部分前駆体による各々の反応基の反応に充分な条件下でおこなわれ、それによって、一般式A(B)nの化合物の質量コード化セットが生産されるステップと、を有する。
【0017】
別の態様では、試験キナーゼインヒビターを、質量コード化ライブラリー(例えば既存の質量コード化ライブラリー)をスクリーニングすることによって同定するもので、該ライブラリーは、レトロ合成的に足場を定義することによって、一組の個別離散的な試験キナーゼインヒビターから生産され、また、述べられるように個別離散的な化合物のセットの範囲内で含まれる遮断を構築して、アルゴリズムが実行される(Corey and Cheng, 1995, The Logic of Chemical Synthesis, John Wiley & Sons, Inc.)。
【0018】
別の実施形態では、試験キナーゼインヒビターの同定は、複数の化合物からなる1つのライブラリーをスクリーニングすることでおこなわれる。そのライブラリーを構成する各メンバーについての分子量を算出し、該ライブラリーのメンバーを質量コード化フォーマットに組み込むことができる。すなわち、ライブラリーの他のメンメンバーの少なくとも90%、包括的に、90〜100の間の少なくとも任意の整数%)が固有の質量を有するように、複数の化合物からなる1つのライブラリーを調製することができる。方法は、一般に試験キナーゼ(例えば不活性化状態にあるキナーゼ)で質量コード化ライブラリーのメンバーを接触させることを含む。結合化合物は、それから非結合化合物から切り離される。別の実施形態において、結合化合物は非結合化合物から任意に切り離される。つぎに、結合化合物(すなわち潜在的インヒビター)を同定することができる(例えば、質量分析計による。)。方法は、潜在的バインダーが試験キナーゼ(例えば、従来のアッセイで、例えば、生化学的または細胞をベースとしたアッセイ)を阻害するか(例えば非機能性または劣機能性を与える)どうかについて決定することを更に含むことができ、インヒビターを試験キナーゼに結合させるのに十分な条件および時間の下で試験キナーゼにインヒビターを接触させるステップを含む。
【0019】
別の態様では、本発明は試験キナーゼのインヒビターを設計するための方法を提供するもので、該方法は以下のステップを有する。すなわち、(a)DFGモチーフを位置づけるために試験キナーゼの三次元構造を用いるステップと、(b)DFG外側立体配置でDFGモチーフによって形成されるアロステリック結合部位を同定し、アロステリック結合部位は空間的に区別可能であるか、ATP結合部位と活性化ループとは別にするステップと、(c)アロステリック結合部位に基づくインヒビターを設計するステップとを含む。試験キナーゼは、三次元構造が知られているキナーゼであり、例えばp38MAPキナーゼ(c−abl)またはインシュリン受容体キナーゼがあり、非活性形態になっている。この方法は、潜在的バインダーが試験キナーゼを阻害するかどうかについて決定することを更に含むことができ、(d)インヒビターを試験キナーゼに結合させるのに十分な条件および時間の下でキナーゼにインヒビターを接触させるステップと、(e)キナーゼがインヒビターによって非機能性または劣機能性を与えられているかを決定するステップとを有する。 別の実施形態では, 試験キナーゼはc−abl、p38MAPK、またはインシュリン受容体チロシン・キナーゼではない。
【0020】
別の態様では、本発明はステップを含む試験キナーゼのインヒビターを同定する方法を提供するもので、該方法は以下のステップを含む。すなわち、(a)試験キナーゼ上に、ATP結合部位に物理的に結合(例えば、部分的にのみ、あるいは全く結合しない)しない試験キナーゼに結合する試験化合物を与え、前記試験キナーゼのDFGモチーフがDFG外側位置にある場合に前記試験化合物がアロステリック結合部位に結合するステップと、(b)前記試験キナーゼ上でATP結合部位に阿智する物理的結合なしに、前記試験キナーゼと結合する試験化合物を提供し、前記試験キナーゼのアロステリック結合部位に対する前記試験化合物の結合による前記試験キナーゼに対するATPの結合との間接的干渉が、前記試験化合物をキナーゼインヒビターとして、同定するステップと、(c)前記試験キナーゼに対して結合した前記インヒビターの存在または非存在下でキナーゼ・アッセイを任意に実施し、前記試験化合物が存在しない場合のキナーゼ活性と比較した前記試験化合物の存在下でのキナーゼ活性の減少は、試験化合物が試験キナーゼのインヒビターであることをさらに確証するステップとを有する。一実施形態では、上記試験キナーゼ はc−abl、p38MAPK、またはインシュリン受容体チロシン・キナーゼではない。
【0021】
別の態様では、本発明はステップを含む試験キナーゼのインヒビターを同定する方法を提供するもので、該方法は以下のステップを含む。(a)試験キナーゼ上で、ATP結合部位への物理的結合(例えば、部分的にのみATP結合部位と結合するか、もしくはATP結合部位に結合しない)なしで試験キナーゼに結合する試験化合物を提供するステップと、(b)ATPが試験キナーゼ上のATP結合部位に結合しうるかどうかを判断し、試験キナーゼに対する試験化合物の結合によって試験キナーゼに対するATPの結合による干渉が試験キナーゼのインヒビターを同定し、それによって試験化合物が、DFG外側位置に試験キナーゼのDFGモチーフを制限(例えば、固定または保持)するステップとを有する。別の実施形態では、試験化合物がキナーゼのインヒビターであるかどうかを、該試験化合物の存在下および非存在下で、キナーゼアッセイを実行することにより確認するステップをさらに含み、試験化合物が存在しない場合でのキナーゼ活性と比較した場合の試験化合物の存在下でのキナーゼ活性の減少または無しが、キナーゼのインヒビターであるが存在下でキナーゼ・アッセイを実行キナーゼインヒビターの同定を確認する。別の実施形態では、試験キナーゼは、c−abl、p38MAPK、またはインシュリン受容体チロシン・キナーゼではない。
【0022】
別の態様では, 本発明は、ATP結合部位および活性化ループから空間的に区別可能なアロステリック結合部位を同定する方法を提供するもので、該方法は、(a) 試験キナーゼと三次元構造が知られている参照キナーゼとを比較するステップと、(b)試験キナーゼにDFGモチーフを、参照キナーゼ内におけるその位置に基づいて、試験キナーゼに位置決めする(例えば、試験キナーゼと参照キナーゼとをコンピュータ処理によって重ねること、および/または多重配列アラインメント(Peitsch et al., 1995, ProMod: automated knowledge−based protein modelling tool. PDB Quarterly Newsletter 72:4; Marti−Renom et al., 2000, Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct. 29, 291−325, 2000)によって)ステップと、 (c)アルファ・へリックスC内のアルファ炭素残基とフェニルアラニンの非骨格重原子、試験キナーゼのDFGモチーフのロイシンまたはトリプトファンとの最短距離を測定し、11Åを越えるが20Å未満である距離は、試験キナーゼのDFGモチーフがDFG外側配置にあることを特徴どけるステップとを有し、DFG外側立体配置内のDFGモチーフがアロステリック結合部位を同定する。DFGモチーフがDFG外側位置にある場合、凹状ポケットの形成を誘発することができ、該凹状ポケットの表面は、隣接する一連のアミノ酸(XないしYと示す)、例えばc−ablのアミノ酸104ないし111(c−ablの場合、Xはアミノ酸104およびYはアミノ酸111)によって、部分的に形成される。一実施形態において、試験キナーゼのアミノ酸XないしYは、参照キナーゼのアミノ酸XないしYに相同的である。別の実施形態では、アミノ酸XないしYは配列アラインメント分析で測定されるように、PDB受託コードが1kv1(鎖A)であるタンパク質のLeu 104 ないしAla111からなる隣接アミノ酸配列から成ることができる。別の実施形態では、配列アラインメント分析で測定されるように、アミノ酸XないしYはPDB受託コードが1kv2であるタンパク質(鎖A)のLeu 104ないしAla111からなる隣接アミノ酸配列から成ることができる。別の実施形態では、試験キナーゼのアミノ酸XないしYは、配列アラインメント分析で測定されるように、PDB受託コードが1kv1(鎖A)または1kv2(鎖A)であるタンパク質のLeu104ないしAla111からなる隣接アミノ酸配列に対して相同なアミノ酸から成る。別の実施形態では、試験キナーゼのアミノ酸XないしYは、1iep(鎖A)、1iep(鎖B)、1fpu(鎖A)または1fpu(鎖B)のIle313ないしAsn322に対して相同であるアミノ酸からなる隣接アミノ酸配列から成る。別の実施形態では、試験キナーゼのアミノ酸XないしYは、1irkのLeu1073ないし1080 に対して相同であるアミノ酸からなる隣接アミノ酸配列から成る。
【0023】
別の態様では、試験キナーゼのインヒビターに対して、本発明はATP結合部位および活性化ループと空間的に区別可能もしくは異なるアロステリック結合部位を同定するための方法を提供するもので、該方法は、以下のステップを含む。すなわち、(a)試験キナーゼの三次構造と三次構造が知られているキナーゼの三次構造とを比較することで、試験キナーゼ内のDFGモチーフを位置決めするステップ(例えば、多重配列アラインメントによって)と、 (b)DFGモチーフがDFG外側位置にある場合に、アロステリック結合部位に対して試験化合物が結合するのを可能にするステップと、(c)試験化合物が試験キナーゼの活性を阻害するかどうかを決定するステップ(あっ訪えば、キナーゼ・アッセイもしくはキナーゼに結合した試験化合物のX線結晶を生産および分析することで)と、 (d)DFGがDGF外側立体配置にある場合に形成されたアロステリック結合部位で試験化合物が試験キナーゼに結合するかどうかを判断するステップ(例えば、試験化合物を標識することで)とを有し、DFGモチーフがDFG外側位置に確認されるような試験化合物の結合が、試験キナーゼのアロステリック結合部位を同定する。別の実施形態では、試験キナーゼはc−abl、p38MAPK、またはインシュリン受容体チロシン・キナーゼではない。
【0024】
別の態様では、本発明はインヒビターを同定する方法を提供するもので、(a)試験キナーゼ(例えば表2のもの)を三次元構造が知られているキナーゼと比較するステップと、(b)試験キナーゼ上でアロステリック結合部位を同定するステップと、(c) 前記アロステリック結合部位を標的にする足場を設計するステップと;(d)足場に基づく複数の化合物の複数の混合物を提供するステップと、(e)前記キナーゼに対する親和性スクリーンによってアロステリック部位のためにリガンドを同定するステップとを有する。この方法は、さらに、(f)インヒビターのキナーゼ阻害活性を示すステップを含むことができる。別の実施形態では、試験キナーゼは、c−abl、p38MAPK、またはインシュリン受容体チロシン・キナーゼではない。三次元構造が知られているキナーゼを、プロテイン・データ・バンク識別子 1iep鎖a、1iep鎖b、1fpu鎖a、1fpu鎖b、lkyl鎖a、1kv2 chain、1irk、1gn3n鎖a、 および1g3n鎖bを有するキナーゼから選択する。別の実施形態では、前記アロステリック結合部位が前記ATP結合部位および前記活性化ループから空間的に異なる。さらに別の実施形態では、ロスティック結合部位は、DFGモチーフ (例えば、DFG、DLG、またはDWG) を位置決めすることで、同定することができ、またDFGモチーフはDFG外側立体配置にある。
【0025】
別の実施形態では、試験キナーゼのインヒビターに対して、本発明はATP結合部位および活性化ループと空間的に区別可能もしくは異なるアロステリック結合部位を同定するための方法を提供するもので、該方法は、以下のステップを含む。すなわち、(a)DFGモチーフが外側位置(out position)にある試験キナーゼに対して試験化合物を結合させるステップと、(b) 前記試験化合物が前記試験キナーゼの活性を阻害するかどうかを決定するステップと、(c)既知の試験キナーゼのインヒビター(アロステリック部位がDFG外側位置にあるDFGモチーフによって形成した既知のインヒビター結合)であるかを決定するステップとを含む。既知のインヒビターは、既知のインヒビターは、試験キナーゼ結合に関して試験化合物と競合することができ、既知のインヒビターによる競合的な結合は、試験キナーゼインヒビターに関して、ATP結合および活性化ループと空間的に区別可能または異なるアロステリック結合部位を同定する。一実施形態では、試験キナーゼは、c−abl、p38MAPK、またはインシュリン受容体チロシン・キナーゼではない。
【0026】
別の態様では、本発明はキナーゼインヒビターを合成する方法を提供する。この方法は以下のステップを含む。すなわち、(a)試験キナーゼを三次元構造が知られているキナーゼと比較するステップと、(b)アロステリック結合部位を同定するステップと、(c)アロステリック結合部位に基づいてインヒビターを設計するステップと、(d)インヒビターを合成するステップとを含む。一実施形態では、この試験キナーゼは、c−abl、p38MAPK、またはインシュリン受容体チロシン・キナーゼではない。
【0027】
別の態様では本発明は、以下の方法によって設計されたインヒビターを提供する。すなわち、この方法は、(a)試験キナーゼを三次元構造(例えば、プロテイン・データ・バンク識別子:lkyl鎖a、1kv2鎖a、liep、1iep鎖b、1fpu鎖a、1fpu鎖b、および1irk)が知られているキナーゼと比較するステップと、(b)アロステリック結合部位を同定するステップと、(c)アロステリック結合部位に基づいてインヒビターを設計するステップとを含む。別の実施形態では、この試験キナーゼは、c−abl、p38MAPK、またはインシュリン受容体チロシン・キナーゼではない。.
別の態様では本発明は、方法によって設計されるインヒビターを含む医薬組成物を提供するもので、該方法は、(a)試験キナーゼを三次元構造(例えば、プロテイン・データ・バンク識別子:1kv1(鎖A)、1kv2(鎖A)、1iep(鎖A)、1iep(鎖B)、1fpu(鎖A)、 1fpu(鎖B)、および1irk)が知られているキナーゼ(例えば参照キナーゼ)と比較するステップと、(b)アロステリック結合部位を同定するステップ(例えば、参照キナーゼのアミノ酸XおよびYに類似した試験キナーゼ・アミノ酸(表1を見よ)によって同定された凹状ポケット)と、アロステリック結合部位(例えば、凹状ポケット)に基づいたインヒビターの設計をおこなうステップとを含む。別の実施形態では、別の実施形態において、医薬組成物は(a)前記試験キナーゼ内にDFGモチーフを配置するために参照キナーゼの酸次元構造を用いるステップと、(b)DFG外側立体配置で、DFGモチーフによって形成されたアロステリック結合部位を同定し、前記アロステリック結合部位がATP結合部位および活性化ループから空間的に区別可能であるステップと、c)アロステリック結合部位に基づいたインヒビターを設計するステップとを有する方法によって設計されるインヒビターを含むことができる。別の実施形態では、この試験キナーゼは、c−abl、p38MAPK、またはインシュリン受容体チロシン・キナーゼではない。
【0028】
別の実施形態では、本明細書で説明した方法のいずれかによって設計され、発見され、あるいは同定されたインヒビターを含むキットを提供する。例えば、その方法は、(a)試験キナーゼを三次元構造が知られているキナーゼ(例えば、プロテイン・データ・バンク識別子:1kv1(鎖A)、1kv2(鎖A)、1iep(鎖A)、1iep(鎖B)、1fpu(鎖A)、1fpu(鎖B)、および1irk)と比較するステップと、(b)アロステリック結合部位を同定するステップと、(c)アロステリック結合部位に基づいてインヒビターを設計するステップとを有する。別の実施形態では、このキットは、DFGモチーフを位置決めさせるために試験キナーゼの三次元構造を用いるステップと、(b)DFGモチーフが前記外側立体配置内のDFGモチーフによって形成されたアロステリック結合部位を同定し、前記アロステリック結合部位(例えば、DFG外側位置にあるDFGによって誘導された凹状ポケット)は、ATP結合部位および活性化ループから空間的に区別可能であるステップと、(c)アロステリック結合部位(例えばDFG外側位置でDFGによって誘発される凹状ポケット)に基づくインヒビター(例えば、コンピュータによる計算による)を設計するステップとを有する。
【0029】
別の態様では、本発明はキナーゼ活性を阻害するか、被検体(例えば、哺乳類、例えば、ヒト)でキナーゼ媒介疾患または疾患症状を処置する方法を提供するもので、被検体に対して、試験キナーゼを三次元構造(例えば、プロテイン・データ・バンク識別子:1kv1(鎖A)、1kv2(鎖A)、1iep(鎖A)、1iep(鎖B)、1fpu(鎖A)、1fpu(鎖B)、および1irk)アロステリック結合部位)が知られているキナーゼと比較するステップと、(b)アロステリック結合部位(例えば、DFG外側位置でDFGによって誘発される凹状ポケット)を同定するステップと、(c)アロステリック結合部位(例えばDFG外側位置でDFGによって誘発される凹状ポケット)に基づくインヒビターを設計するステップとを有する方法によって設計されたインヒビターを含む化合物を投与するステップを含む。別の実施形態において、被検体(例えば、哺乳類、例えば、ヒト)のキナーゼ活性を抑制する方法は、(a)DFGモチーフを位置づけるために試験キナーゼの三次元構造を使用するステップと、(b)DFG外側立体配置でDFGモチーフによって形成されるアロステリック結合部位(例えばDFG外側位置でDFGによって誘発される凹状ポケット)を同定し、アロステリック結合部位(例えばDFG外側位置でDFGによって誘発される凹状ポケット)は、ATP結合部位と活性化ループからの空間的に区別可能であるステップと(c)アロステリック結合部位(例えば、コンピュータによる計算による)に基づくインヒビターを設計するステップとを有する。
【0030】
別の態様では、本発明は医薬的に有用な組成物を作る方法を提供するもので、該方法は、インヒビター(例えば本明細書中に記載される方法の少しでも同定されるインヒビター)を1種類以上の医薬的に許容される担体と結合させるステップを含み、任意に、添加された治療薬を化合させるステップをさらに含む。
医薬的に有用な組成物は、二種類以上のキナーゼインヒビターおよび/または複数の添加された治療薬を含むことができる。
一実施形態において、同定されるインヒビターを、疾患(例えば疾患クラス(例えば癌(例えば乳癌、前立腺ガン、肺癌))、炎症(例えば関節炎、関節リウマチ)、神経障害(例えばアルツハイマー病)および肥満)を処置するための薬物の調製に使うことができる。
定義
酵素(すなわち、標的部分、例えば、キナーゼ)のような生体分子の「非活性形態」(unactivated form)または「基底形態」(basal form)は、標的部分の状態であり、その生理機能を実行することが不可能および/または困難である立体構造である。概して、生体分子の不活性化または基底形態は、完全な生物学的活性を得るために、形質転換の更なるステップを必要とする。不活性化された生体分子を活性化しうる他のイベントのなかでも、さらなるステップとして、キナーゼもしくはそれが適当である他の生体分子で、リン酸化、脱リン酸化、他の修飾、別のモノマーに対する結合、多量体化、局在化、転位置、補助因子に対する結合、または基質に対する結合が挙げられる。このように、不活性化生体分子は、これらのイベントまたは他のイベントのどれによっても、活性化させられる能力がある。標的部分が酵素である場合、非活性形態または基底形態は、通常、その基質の上でその機能を実行することができない酵素の状態である(例えば、その基質をリン酸化することが不可能または困難である状態のキナーゼ;その基質をメチル化することが不可能または困難である状態のメチラーゼ;その基質を脱リン酸することが不可能または困難である状態のホスファターゼ;そのタンパク分解性の機能を実行することが不可能または困難であるプロテアーゼ;もう一つのポリペプチドまたは分子と結合していないポリペプチド;ポリペプチドは、選択的に変異せず、または特異的な立体構造(例えば、温度変化または他の因子によって誘導される)に誘導されない)。場合によっては、非活性形態または基底形態は、ATPに結合していない。その他の例では、不活性化または基底形態は、多量体の状態またはその逆で、むしろ単一状態である。さらに他のケースにおいて、不活性化または基底形態はそれがその機能を実行するのを可能にする際に必須とされる補助因子または他の分子と結合しせず、あるいは不活性化または基底形態は誘発された立体構造でない。不活性化または基礎状態の標的部分は、いぜんとして活性を有することができるか、機能することができる。しかし、大きさおよび/または活性または機能の持続期間にであるにせよ、その活性状態のそれと関連した活性または機能はより少ないか、減少した。本明細書で用いられるように、「非活性形態」はは標的部分の非活性形態もしく基底形態に言及する。2つの用語がそれらの意味において異なるにもかかわらず、それ両方が記載された方法と組成物の背景の範囲内で同等に使われる。すなわち、記載された方法は非活性形態である標的部分を使用することができる、または、それは基底形態で標的部分を使用することができるもので、いずれにせよ、同じ結果を達成することができる。すなわち、その特定の状態で標的部分に結合する化合物の同定が達成される。
【0031】
一方では、生体分子の「不活性化(inactive)」もあり得る。これは、生体分子が活性化される能力が失われていることをいう。生体分子を不活性化させるイベントとして、突然変異、トランケーション、または他の修飾があり、生体分子を任意の条件下で、もしくは任意の活性化種の存在下で、不活性化しようとする生体分子を活性化させる。
【0032】
「非活性化キナーゼ」(unactivated kinase)は、その生体内機能的な活性を含むその機能的な活性を実行する結合ATPまたは対するより小さい能力を持つキナーゼである。その結果、不活性化キナーゼはそれがそのインビボの機能を実行する場合と比較して、キナーゼ活性がより少なく、またはキナーゼ活性を示さない。不活性化キナーゼは、以下のイベントのいずれか一つまたは多数を必要とするキナーゼである。すなわち、完全に活性化になるための修飾(例えばリン酸化、脱リン酸、他の修飾)、調整部分(例えば補助因子、タンパク質/脂質調節因子)に対する接触または結合または他のイベント(例えば多量体化、局在化、転位置)。このように、不活性化キナーゼは完全に機能的になる能力が完全にあるか、もしくは上述したイベントまたは複数のイベントが完了することで活性化する。しかし、不活性キナーゼは、活性化になる能力に欠けている。
突然変異、トランケーション、誤った折り畳み、適切な局所化する不能または結合に対する不能によるかどうかにかかわらず、必須の補助因子または他の活性化のための分子を必要とした。いずれにせよ、本明細書中に記載される方法が、使われる。例えば、キナーゼの不活性化または不活性である場合に存在するキナーゼ上で新規アロステリック部位に結合するキナーゼインヒビターの同定のために使われる。
【0033】
用語「較正(calibrating)は、基準と比較または測定することで、メーターまたは他の測定機器上で読み取った各スケールの正しい値を判断する。例えば、分析機器または測定機器(例えば、質量分光計)は、真の値が知られているアナライト(例えば、リガンドの濃度)の複数の値を測定または決定することで較正することができる。
【0034】
用語「質量分析計」とは、イオン化原子または分子を互いに分けるために、それらの質量対電荷比(m/e)の差を利用する分析装置のことをいう。質量分析は、したがって、原子または分子の定量化のために、更に、分子に関する化学構造情報を決定するために有用である。分子は、構造成分を同定するために構造的情報を規定する特徴的な断片化パターンを有する。質量分析計の一般の手順は、(a)気相イオンの生成、(b)空間または質量対電荷比に基づいた時間でのイオンの分離、および(c)各質量対電荷比のイオンの量の測定である。質量分析計のイオン分離力は、その解像度によって記載される。
【0035】
当技術分野では、例えばエレクトロスプレー・イオン化(ESI)、電子衝撃イオン化(EI)、高速原子衝撃イオン化法(FAB)(抗原結合性フラグメント)、マトリックス支援レーザー脱離(MALDI)、電子捕獲(しばしば負イオン化学イオン化またはNICIを呼ばれる)、および気圧化学イオン化(ApCI))等、多くのイオン源が知られている。上記したイオン化方法のいずれかで生成されるイオンは、質量分離装置(一般に磁場、四極子電磁石または飛行時間型の質量分離器)を通過し、イオンの質量が各質量レベルでのイオンの数と同様に区別可能となる。
【0036】
質量分析(MS)は、有機化学および無機化学の両方おで、分子の特徴付けおよび同定に幅広く用いられる技術である。MSは、分子に関する分子量情報を提供する。分子の分子量は、分子の混合物の特定の分子の同定の情報の重要な部分である。MS分析を、例えば薬剤開発および製造(公害防止分析)、さらに化学品質管理で用いることができる。
【0037】
用語「リガンド(lingand)」は、受容体とで連結または結合(例えば、共有結合性または非共有結合性の相互作用)する分子のことをいう。場合によっては、受容体に対するリガンドの結合は、生物学的影響(例えばアゴニズムまたはアンタゴニズム)を有することができる。例えば、リガンドは、生体分子(例えばDNA分子)に結合するポリペプチド(例えばタンパク質)であり、DNAに対するタンパク質の結合がmRNA合成を開始させる。リガンドは、酵素に対する有機分子の結合が酵素の活性を阻害する酵素(例えばHIVプロテアーゼ)結合した有機分子(例えば医薬化合物)でもありえる。
【0038】
リガンドが「バインダー(binder)」または標的と「結合((binds)」したり、あるいは標的のリガンドである場合、結合は共有結合による相互作用または非共有結合による相互作用、さもなければ他の相互作用によるものである。他の相互作用としては、相互作用の種々の形態が挙げられる(例えば立体的な相互作用、ファンデルワールス相互作用、静電的相互作用、溶媒和相互作用、充電相互作用、共有結合形成相互作用、非共有結合形成相互作用(例えば水素結合相互作用)、エントロピー的にまたはエンタルプー的に有利な相互作用)。
【0039】
「インヒビター(inhibitor)」は分子(例えば、サイズが約5kDa未満の小分子)であり、それが標的(例えばキナーゼ)と結合すると、その標的の生理学的機能(例えば、キナーゼに劣機能性を与える)を減少させたり、またはその活性(例えば、kキナーゼ非機能性を描く)を遮断する。インヒビターは、1000ダルトン未満の小分子、750、600、または500ダルトン未満の小分子、自然発生的または非自然発生的なアミノ酸のポリペプチド、自然発生的または非自然発生的なアミノ酸のペプチド、ペプトイド、ペプチドミメティック、合成化合物、合成有機化合物、またはその他である。例えば、インヒビターによる「劣機能性(less functional)」にされる標的(例えば、酵素、例えば、キナーゼ)とは、生理学的条件下でその活性よりも低い検出可能な活性を有している標的(例えば、酵素、例えば、キナーゼ)のことをいう。その活性がバイオアッセイ(例えば、酵素阻害アッセイ、例えば、キナーゼ阻害アッセイ)によって検出可能でない場合、標的(例えば、酵素、例えば、キナーゼ)はインヒビターによって「機能しなく」なる。
【0040】
標的(例えばキナーゼ)の「アロステリック部位」は、本明細書に記載されているように、標的(例えばキナーゼ)のATP結合部位とは空間的に別の部位であり、そのリガンドによって占められた場合(例えばアロステリックなリガンド)、ATP結合を修飾(例えば、阻害)または阻害する。したがって、キナーゼ機能である。標的(例えばキナーゼ)上の空間的に異なった「アロステリック部位」は、標的(例えばキナーゼ)機能に対する類似の効果で、基質結合を調整することもできるか、抑制することもできる。「空間的にATP結合部位とは別」とは、ATP結合部位と別である結合部位に言及しており、キナーゼの範囲内のアミノ酸残基によって定義されるが、ATP結合部位を定義するアミノ酸の配列は同一ではない。ATP結合部位とは空間的に別であるA部位は、アミノ酸の長さでATP結合部位を区別することができて、単一アミノ酸によって異なることができて、部位を含んでいる配列で、アミノ酸のオーダーにおいて異なることができる。アロステリック部位は、このように空間的に明瞭であり、ATP結合部位(例えば、ATP結合部位とアロステリック結合部位とは同じものではない)と識別可能である。本発明のアロステリック部位が部分的にATP部位に重なることも可能ではあるが、アロステリック部位とATP結合部位とを同じように一つのものとして構築することはない。本明細書中に記載される方法を、アロステリック部にある標的(例えばキナーゼ)に結合するリガンド(例えばインヒビター)の同定することに適用されることができ、またアロステリック部位に結合することで、これらのリガンド(例えばインヒビター)は、DFG外側位置にあるDFGモチーフを固定、制限、または保持する。DFG外側位置にあるDFGは標的(例えばキナーゼ)に対する結合から物理的に妨げる。このように、この新規方法で標的(例えばキナーゼ)の阻害が可能になる。
【0041】
本明細書中に記載される方法は、酵素(例えばキナーゼ)のインヒビターの同定に適用されることができる。「アロステリック結合部位に基づくインヒビターを設計する」ことは、コンピュータ・モデリングの使用して、アロステリック結合部位(例えばDFG外側位置でDFGによって誘発される凹状ポケット)に基づく潜在的酵素(例えばキナーゼ)バインダーの最適特徴を決定することに言及するものであり、また潜在的酵素(例えばキナーゼ)バインダーを合成するためにその情報を使用することに言及するものである。潜在的酵素(例えばキナーゼ)バインダーは、DFGモチーフがDFG外側立体配置にある場合に存在するアロステリック結合部位(例えばDFG外側位置でDFGによって誘発される凹状ポケット)に対して結合するように、設計される。インヒビターの設計は、アロステリック結合部位にフィットするために、正しい形態(形状)および電子特性で足場を設計することも意味しうる。一旦足場が設計されると、質量コード化ライブラリー(例えばその足場に基づくもの)が提供および合成可能となり、このライブラリーからのアロステリックなバインダー(例えばインヒビター)は、アロステリック部位(すなわち、DFGがDFG外側位置である時を示す)が優勢である(すなわちATPと基質がない場合、不活性化キナーゼ)条件の下で、キナーゼで親和性スクリーニングによって同定される。キナーゼが比活性形態である条件下で、親和性スクリーニング方法によって、DFG外側立体配置にあるキナーゼに対して優先的に標的化するインヒビターが提供されたことは、驚くべき結果であり、また本発明の鍵となる態様であった。
【0042】
用語「有機分子(organic molecule)」とは化合物のことをいい、その分子は炭素および水素を含み、また窒素、酸素、リン、ハロゲン、または硫黄等の元素をさらに含むこともできる(例えば、医薬化合物)。分子はカーボンと水素を含んで、添加元素(例えば窒素、酸素、リン、ハロゲンまたは硫黄(例えば医薬化合物))を含むこともできる。医薬的に許容可能な塩類(例えばマレイン酸塩、塩化水素塩、臭化水素塩、リン塩、酢酸塩、フマル酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、酒石酸塩、およびメタンスルホン酸塩)は、用語「有機分子の意味の範囲内にも包含される。
【0043】
用語「受容体(receptor)」とは、リガンドが結合して細胞内でシグナル伝達機能を発揮することができる生体分子のことをいう。リガンドは、通常の生理的機能を刺激すしたり、活性化させることができる。あるいは、リガンドは生理的機能を調整したり、阻害することができる。受容体は、第2の分子と結合することで、作用効果(例えば生物学的活性または検出可能なシグナル)を奏したり、イニシエートすることが可能である。例えば、受容体は特異的な細胞外シグナル分子(例えばリガンド)と結合して、細胞内での応答をイニシエートするタンパク質である。細胞表面マーカーの例として、アセチルコリン受容体およびインシュリン受容体が挙げられる。細胞内受容体の例として、ホルモン類が挙げられる。また、それは形質膜を介して細胞内全体に広まるリガンドと結合することができる。受容体の他の例として、ポリペプチド、タンパク質、酵素、リボザイム、RNA、DNA、および生体分子模倣体が挙げられる。
【0044】
用語「生体分子(biomolecule)」は、生物学的活性(例えば代謝、アンタゴニズム、アゴニズム、情報伝達または転写)に影響を及ぼしている分子のことをいう。生体分子が体内で見いだされる一方で、生体分子という用語は自然発生的な生体分子に限られるものではなく、フラグメントと同様に自然発生的な生体分子の合成バージョンとその修飾物が含まれる。生体分子の例として、ポリペプチド、タンパク質、酵素、リボザイム、RNA、およびDNAが挙げられる。
【0045】
用語「ポリペプチド(polypeptide)」は、複数のアミノ酸から成るポリマーに言及する。タンパク質は、ポリペプチドの一例でもある。
【0046】
用語「酵素(enzyme)」は、反応速度を増加させることによって、(生物学的)触媒として機能する巨大分子(通常、タンパク質)のことをいう。、一般に、酵素は1つの反応型(すなわち反応選択性)だけに触媒作用を及ぼして、1種類の基質(すなわち基質選択性)だけに作用する。基質分子は、同じ部位(位置選択性)で、また一般に形質転換される。すなわち、ラセミの基質一対の1つのキラルの基質のみに、形質転換される(エナンチオ選択性、立体選択性の特殊形式)。
【0047】
用語「核酸(核酸)」とは、ヌクレオチド・サブユニットから成るポリマーのことをいう。クレオチド・サブユニットは、ホスホジエステル結合を介して結合することができる。
【0048】
用語「受容体−リガンド対(receptor−ligand pair)」とは、受容体とリガンドとからなる複合体のことをいい、非共有の相互作用(例えば水素結合、イオン相互作用または疎水性相互作用)によって、通常、可逆的方法で一緒に保持される。
【0049】
用語「平衡(equilibrium)」とは可逆化学または生化学反応および/または相互作用における状態のことをいい、反応物が生成物に変化する率と同じ率で反応産物から反応物に変わるのこで、各々の反応物の量と生成物の量とが基本的に一定のままである。一定期間にわたって混合物のサンプルをとって、製品に対する出発原料の比率が変化しなかったと判断することは、反応が平衡に達したことを強く証明するものである。
【0050】
用語「立体排除クロマトグラフィ(size−exclusion−chromatography)」(SEC)は、異なるサイズの分子を分離するために、多孔質粒子の使用に言及する。それは、通常、生体分子を分離して、ポリマーの分子量と分子量分布とを決定するのに用いられる。通常、細孔寸法より小さい分子は、粒子に入ることができる。したがって、そのような小さな分子は、粒子に入ることができないより大きな分子よりも、より長い経路および通過時間を持つ。細孔寸法より大きな分子は、孔に入ることができず、クロマトグラムの最初のピークとして、一緒に溶出することができない。
この状態は、完全な除外(total exclusion)と呼ばれている。
孔に入ることができる分子は、分子の大きさおよび形状に依存する粒子内での平均滞留時間を有する。したがって、分子が異なるとカラム全体にわたってその滞留時間が異なる。細孔寸法より小さい分子は、全ての孔に入ることができて、カラムの上で最も長い滞留時間を有して、クロマトグラムで最後のピークとして一緒に溶出する。
【0051】
用語「液体クロマトグラフィー(liquid chromatography)」とは、溶媒に溶けるイオンおよび/または分子を分離するのに用いられる分析的クロマトグラフィーの技術のことをいう。試料溶液が第2の固体または液相と接触してある場合、異なる溶質は吸着、イオン交換、群分離またはサイズの違いによって異なる程度に他の相で相互作用する。これらの違いを利用して、混合物成分を互いに分離することが可能となり、カラムを通して溶質の通過時間を決定する。
高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)は、溶液に溶けた化合物を分離する液体クロマトグラフィーの一形態である。HPLC装置は、移動相の容器、ポンプ、インジェクター、分離塔、および探知器から成る。カラム上に試料混合物のプラグを注入することで、化合物を分離させる。混合物の異なる構成要素は、移動液相と安定相との間でそれらの分配挙動の違いによる異なる率で、カラムを貫通する。
【0052】
用語「競合的なバインダー(competitive binder)」とは、特異的部位(例えば、酵素の触媒部位)で受容体に対して結合するリガンドのことをいい、ここで、それは動的かつ平衡的なプロセスでもう一方のリガンドと結合を争う。
【0053】
用語「標的部分(target moiety)」とは、結合リガンドを見つけるためにスクリーニング・プロセスが適用される生体分子またはそのフラグメントである。
【0054】
用語「標的の形態(target form)」は、生体分子(例えばキナーゼ)(例えば異なる立体構造、集合状態、化学修飾、他の生体分子またはコファクターとの結合、1種類以上のリガンドとの結合)の特徴的な生化学または生物物理学的な状態のことをいう。
【0055】
本明細書では、標的は、キナーゼに対して言及することができる。「DFGモチーフ(DFG motif)」とは、3つの隣接するアミノ酸から成るキナーゼで保存されたモチーフのことをいう。したがって、アスパラギン酸塩の後にフェニルアラニン、トリプトファンまたはロイシンが続いて、グリシン(すなわちAsp−フェニルアラニン/ロイシン/Trp−グリシン)が続く。このように、DFGモチーフはアミノ酸配列DFG、DWGまたはDLGを有することができる。例えば、Asp1150−Phe1151−Gly1152は、インシュリン受容体キナーゼのDFGモチーフである。Asp381−Phe382−Gly383は、c−ablのDFGモチーフである。さらに、Asp168−Phe169−Gly170は、p38MAPKのDFGモチーフである。このモチーフは、タンパク質の多重配列アラインメントによって同定され、該タンパク質のDFGモチーフ位置は、DFGモチーフが決定されるものとして知られている。
【0056】
特異的標的のユニーク構造、キナーゼは「へリックス・アルファ−C」(また、へリックス・アルファ−Cともいう)である。「へリックス・アルファ−C」とは、キナーゼの保存ヘリックスのことをう。例えば、インシュリン受容体キナーゼでは、このヘリックスは、位置1050〜1051にVal−Metモチーフを持つアミノ酸配列LRERIEFLNEASVM(アミノ酸1038〜1051)から成る。別の例では、c−ablでは、このヘリックスはアミノ酸配列VEEFLKEAAVM(アミノ酸280〜290)からなり、アミノ酸289−290にVal−Metモチーフが位置する。試験キナーゼのへリックス・アルファ−Cは、位置1051でメチオニンが続く位置1050のバリンを含有するインシュリン受容体キナーゼのへリックス・アルファ−Cに対して「相同」であり、また位置289にバリン、また位置290にメチオンを有するcablのへリックス・アルファ−Cに対しても「相同」である。1irkは、プロテイン・データ・バンク(プロテインデータバンク)のインシュリン受容体キナーゼのための継承コードであり、アドレスrcsb.org/pdb/でワールドワイド・ウェブ上で見つかる。また、1iepはこのアドレスで見つけることもでき、STI−571(すなわちGleevec(登録商標).)に結合したc−ablのPDB受託コードでもある。
【0057】
類似の側鎖を有しているアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。これらの類似点は、アミノ酸をキナーゼの三次元構造の中で「類似して(analogously)」作用させることが可能である。これらのファミリーは、基本的な側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性の側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β枝分れ側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。このように、例えば、リジンに対する類似アミノ酸は、アルギニンまたはヒスチジンである。
他の例として、アスパラギン酸は本明細書に記載されているようにグルタミン酸に類似している。
【0058】
本発明の1種類以上の実施形態の詳細は、以下の説明で述べられる。本発明の他の特徴、目的、および長所は、説明および請求の範囲から明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
(詳細な説明)
本明細書中に記載される方法は、活性型以外の標的(例えば生体分子)の形状が標的(例えば、生体分子)機能の新規インヒビターの同定で非常に有用であるという知見に基づく。この方法は、化合物を発見するために新規様式で標的をスクリーニングすることを与えるもので、該化合物は低活性または不活性状態にある標的に結合し、それに続くバイオアッセイでその標的機能のインヒビターとして作用する。プロセスは、核酸(例えばDNAまたはRNA)またはタンパク質(例えば膜関連タンパク質、酵素、核ホルモン受容体(NHR)とG−タンパク質結合受容体(GPCRs))を含む全ての種類の生物学的標的に適用することができる。記載される方法は、その出力のために生化学アッセイを必要とせず、かなり少量の精製された標的だけを利用する。本明細書中に記載される方法は、いくつかの利点を与える。すなわち、標的の構造に対する先行知識を必要としない。複数の化合物の複数の混合物が使用可能である。また、所定の標的の酵素を、プロセスの効率を促進するために、一緒に多重化することができる(例えば、1つの共通した結合反応でタンパク質の2種類以上の異なる形態を組み合わせてスクリーニングすること)。本明細書中に記載される方法は、質量コード化組み合わせライブラリーと自動化リガンド同定システム(Automated Ligand Identification System(ALIS))(後述)とを利用することができる。
【0060】
米国特許第6,207,861号は、質量コード化組み合わせのライブラリーを作る方法に関し、また1種類以上の生体分子を一体にするそれらの質量コード化された組み合わせのライブラリーで(すなわちスクリーニング)化合物を同定する方法に関する。質量コード化されたライブラリーを設計および合成することができる。質量コード化ライブラリーにおいて、個体化合物の少なくとも約90%は、他の個体化合物の分子質量合計とは別である分子質量合計を有する。この合計は、質量コード化ライブラリーの他の個々の化合物の分子質量合計とは異なる。この場合、冗長性は許容的である(例えば、質量コード化されることは質量のためにユニークな足場+周辺部分組み合わせがソートされ、このように、質量冗長性が計数される位置異性体の間にある)。他の例において、個体化合物の少なくとも90%が冗長性が許容的でない(例えば、質量コード化されることは質量のためにユニークな足場+周辺部分組み合わせをソートされ、このように、質量冗長性が計数されない位置異性体の間にある)質量コード化ライブラリーの他の個体化合物の分子質量合計とは別である分子合計を有するように、質量コード化ライブラリーを設計することができる。
【0061】
米国特許第6,207,861号のスクリーニング法は、オートメーション化したAutomated Ligand Identification System(ALIS)と呼ばれるシステムを説明している。ALISシステムは、以下の通りに一般に機能する。すなわち、(1)目的の生体分子(例えばタンパク質)希薄溶液を、生体分子−リガンド錯体形成反応が平衡に達するように定められた時間にわたって、リガンド(例えば小有機分子またはそのライブラリー)の存在下でインキュベートする。(2)生体分子の溶液、未結合リガンド、および生体分子リガンド複合体をサイズ排除クロマトグラフィー・ステージに通して、分子の大きさに基づいて生体分子プラス生体分子リガンド複合体を未結合リガンドから分離する。生体分子プラス生体分子−配位子錯体で、溶離液流の先頭に共溶出する。(3)生体分子プラス生体分子リガンド複合体を含むけれども、未結合リガンドを含まない溶離液流の一部分を逆相クロマトグラフィー・ステージに流す。ここで、小分子の同定は、その分子量またはタンデム型質量分析断片化パターンを基礎としておこなうことができ、シグナル反応の測定によって定量化することもできる。
【0062】
上記したように(上掲)、標的リガンド(例えばキナーゼのインヒビター)を同定する際に、複数の化合物の複数の混合物、足場またはライブラリーを試験標的とともにインキュベートして、標的−結合化合物を質量分析計によって同定する前に、非結合化合物から分離した。一実施形態において、標的−結合化合物を分離して結合成分を同定する。標的−化合物結合対の混乱は、クロマト(例えば高温下の高分解能逆相クロマトグラフィー)圧力変化、pH、塩濃度、温度または有機溶剤濃度の使用のような種々の方法によって達成されることができる。または既知の標的結合剤との競争またはこれらの技術のいかなる組合せでも達成することができる。
【0063】
一旦標的−結合化合物が標的から分離されると、化合物を質量分析計によって同定することができる。米国特許第6,147,344号は、対照試料測定が暗雑音検査を規定して実行される質量分析計データを分析する方法を記載する。
時間の相関関係としての各々のm/z比率のピーク高さと幅値とをメモリーに格納する。分析される材料の質量分析計操作は実行し、各々のm/z比率対時間のピーク高さと幅値とを第2のメモリーロケーションで格納する。分析される材料の質量分析計操作を所定の回数繰り返す。つぎに各々の時間増分の各々のm/z比率レベルの格納された対照試料値を、活動中の実行から各々の対応するものから減算し、このように、並列の各々のために各々の質量比で差値を生産することは、各々の時間増分で動作する。雑音なしでMS値が設定量を上回らない場合、m/z比率データポイントは記録されない。このように、質量分析計データから暗雑音、化学ノイズと偽陽性ピークを除去する。複数の実行の各々のための記憶データは、それから各々のm/z比率で、所定の値と比較してある。今やバックグラウンド以上である結果として生じる一連のピークを、ピークが著しいm/z部位で格納される。
【0064】
具体的には、米国特許第6,147,344号は、バックグランドノイズ、総合分解能、システム汚染、荷電イオン、および同位元素置換による誤ったピークの同定を除去するか、減らすように設計された一連のスクリーンからなる化合物の混合物から自動的に質量分光光学的データを分析する技術を記載する。この方法は、有機化合物の複雑な混合物のなかから有機化合物の同定を可能にすることから、本明細書に説明される方法にとって有用である。この技術は、対照試料に対してマススペクトル操作を実施することで、第1群の出力値を得る。次に、分析すべき試料に対して質量分光学的な操作を実施して、第2群の出力値を得る。算出された質量分析計出力スペクトルの予め定められたライブラリーから混合物であると思われる材料のために、第1のm/z比率を選択し、分析した試料の値から予測出力値で対照試料の値を減算し、差を所定の値と比較する。その値が所定の値よりも大きい場合、シグナルがバックグランドノイズ・レベルよりも高いことを示し、期待された材料に対してm/z値で記録を生成することができる。同じマススペクトル操作を繰り返すことで、ランダムノイズとバックグラウンド汚染とを排除する。次に、分離法のために予測ピーク幅または適当な滞留時間を有しないピーク値が、同定される。多重化荷電イオンは、ピークの分離を検討することによって同定される。予測材料のm/z位置は、検討される予測m/z位置の強度は、原子同位元素置換に関連したピークを同定するために、次の下のm/z記録ピークで、強度と比較される。
そのような技術で、質量分析器データ解析は見込みがある擬似シグナルの同定によって非常に単純化させることができ、分析がよりいっそう単純および正確になる。
コンピュータ・モデリング
参照リガンド複合体(または参照標的)の結晶の三次元構造の決定に応じて、潜在的インヒビターの評価を、任意のいくつかの方法のいずれかによって、単独または組み合わせておこなうことができる。そのような評価は、コンピュータ・スクリーン上で関連した部位(本明細書中に記載される構造の座標に基づく)の三次元表現の外観検査を利用することができる。評価またはモデリングは、当業者に知られているコンピュータ・モデリング技術、ハードウェアおよびソフトウェアを用いることにより達成されることができる。これはさらに、ソフトウェアを使用している標的−リガンド相互作用のモデル構成、モデル・ドッキングまたは他の分析を含むことができる。このソフトウェアとして、例えば、QSC、FlexX(Lengauer、Rarey、1996)またはAutodock(Morris et.al.、1998)、GLIDE、Modeler、またはSybylが挙げられ、その後、、CHARMMおよびAMBERを含む標準の分子力学力場でエネルギー最小化および分子動力学によってなされた。標的−配位子錯体の三次元構造的情報は、他の標的タンパク質構造(特に三次元構造的情報が決定された標的に対するホモロジーを持つ人々)のコンピュータモデルを生成するために、コンピュータ・モデリングと同時に利用することもできる。標的タンパク質構造のコンピュータモデルは、本明細書中に記載されるソフトウェアパッケージを含む当業者に知られている標準分析法および技術を使用して作成可能である。
【0065】
一旦その標的のために標的と標準のリガンドの間で形成されるタンパク質−配位子錯体を含んでいる結晶の三次元構造が決定されるならば、潜在的リガンドは、ドッキング・プログラム(例えばQSC、FlexXまたは潜在的リガンドの形状と化学構造が結合部位でどれくらいよく相互作用するかについて確認するためにアロステリック結合部位に潜在的リガンドおよび/またはインヒビターを同定するAutodock)を使用しているコンピュータ・モデリングを用いることにより検討される。コンピュータ・プログラムは、2つの結合パートナー(すなわちアロステリックな結合部位と潜在的リガンド)の引力、反発、および立体障害を推定するために使用されることもできる。潜在的リガンドとアロステリック結合部位との間の一般に補完的な適合、下部の立体障害とより大きな引力は、2つの間でより堅い結合定数と整合している。さらに、潜在的薬物の設計に対してより多くの特異性、薬物が他のタンパク質で同様に相互作用しないために、より多くのものが可能性がある。これは、他のタンパク質で不必要な相互作用による潜在的副作用を最小化する。
【0066】
種々の方法は、分子または、特に、タンパク質と関連することに適当な化学フラグメントを(例えばキナーゼ、フォスファターゼ、トランスフェラーゼ、GPCR、NHR、など)評価して、実質的にスクリーニングするために、当業者が利用できる。そのような関連が、例えば、立体相互作用、ファンデルワールス相互作用、静電的相互作用、溶媒和相互作用、充電相互作用、共有結合形成相互作用、非共有結合形成相互作用(例えば水素結合相互作用)、エントロピー的にまたはエチレン的に有利な相互作用等を含んでいる種々の形状であることができる。
【0067】
数多くのコンピュータ・プログラムは合理的な薬物設計とコンピュータ・モデリング、モデル構成と、計算機的に同定することプロセスのために利用できて適当である。さらに、本明細書中に記載される方法で潜在的インヒビターを選択して、評価する。これらは、例えば、QSC(WO 01/98457)、FlexX、Autodock、Glide、AccelrysのディスカバリーStudioまたはSybylを含む。
潜在的インヒビターは、QSC(WO 01/98457)、AccelrysのディスカバリーStudio、Sybyl、ISIS、ChemDrawまたはDaylightのようなソフトウェアパッケージを使用している計算機的に設計された「デノボ」でもありえる。化合物変形エネルギーと静電反発力は、プログラム(例えばGAUSSIAN 92、AMBER、QUANTA/CHARMM、AND INSIGHT II/DISCOVER)を使用して評価することができる。
【0068】
これらのコンピュータ評価およびモデリング技術は、適当なハードウェアのいずれかで実行することができる。例えば、Silicon Graphics, Sun Microsystems等から入手可能なワークステーションが挙げられる。これらの技術、方法、ハードウエア、およびソフトウエア・パッケージは、代表的なものであって、包括的にリストすることを意図したものではない。当業者に知られている他のモデリング技術も、この発明にもとづいて用いることができる。例えば、ASC(WO01/98457)、FlexX、Autodock, Glide, Accelrys’ Discovery Studio, またはSybylおよび種々のインターネット・サイトで見つかるソフトウェアが挙げられる(例えば、netsci.org/Resources/Software/Modeling/CADD/c.cam.ac.uk/SGTL/software.htmlcmm.info.nih.gov/modeling/universal_software.html dasher.wustl.edu/tinker/ zeus.polsl.gliwice.pl/.about.nikodem//linux4chemistry.html nyu.edu/pages/mathmol/software.html msi.umn.edu/user_support/software/MolecularModeling.html us.expasy.org/ sisweb.com/software/model.htm).
潜在的インヒビターは、本明細書中に記載される標的のアロステリック部位に対して決定される三次元構造(または構造)で合理的なドラッグデザインを実行することによって選択されるとともに、同時にまたは単にコンピュータ・モデリングと上述の方法をおこなう。潜在的インヒビターはそれから商業的なソースから得られるか、標準の合成的技法を使用している容易に利用できる出発原料と当業者に知られている方法論とから合成される。潜在的インヒビターをアッセイして、先に述べたように標的酵素(例えばキナーゼ)および/または酵素経路(例えばキナーゼ経路)を阻害するその能力を判断する。
【0069】
潜在的インヒビターは、先に述べたように複数の化合物からなる1つのライブラリー(例えば、無作為配列ライブラリー、例えば、質量コード化された組み合わせのライブラリー)をスクリーニングすることによって選択されることもできる。複数の化合物からなる1つのライブラリーを、親和性スクリーニングによってスクリーニングされることができる。最も緩徐性解離速度によるメンバーと新しいアロステリック部位の特定のタンパク質に対する最大の親和性を、選択することができる。ALIS(または、上述)は、複数の化合物からなる1つのライブラリーをスクリーニングするのに用いることができる。標的が不活性化状態である場合、アロステリック部位が多くの標的であるので、ALISは特に有利である。ALISを、複数の化合物の複数の混合物で作用させることもできる。標的が不活性化状態であるとき、ALISは特に結合したリガンドの同定を可能にすることができる。従来の標的スクリーンは、しばしば、活性化状態である目的とするところの標的に依存する。
医薬組成物
この発明の医薬組成物は、本明細書に記した一方法または複数の方法、あるいはそれらの薬理学的に許容される塩で同定される化合物を含むもので、必要に応じて、さらに標的インヒビター(低分子、ポリペプチド、抗体等)、免疫抑制薬、抗癌剤、抗炎症剤または抗血管性過剰増殖化合物、および神経障害を処置するための薬剤、および抗肥満化合物を処置する化合物から選択される追加の薬剤、さらに
医薬的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクルが含まれる。この発明の代替組成物は、本明細書中に記載される方法または方法によって同定される化合物またはそれの医薬的に許容可能な塩、さらに医薬的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクルが含まれる。
【0070】
用語「医薬的に許容される担体またはアジュバント」とは、この発明の化合物と共に患者に投与可能な担体またはアジュバントのことをいい、化合物の治療的な量を送達するのに十分な用量で投与される場合、薬理学的活性を破壊せずに無毒性である。
【0071】
用語「医薬的に許容される担体またはアジュバント」とは、この発明の化合物と共に患者に投与可能な担体またはアジュバントのことをいい、化合物の治療的な量を送達するのに十分な用量で投与される場合、薬理学的活性を破壊せずに無毒性である。この発明の医薬組成物で使用可能である医薬的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルとして、制限されるもではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、d−α−トコフェロール・ポリエチレングリコール1000スクシネート等の自動乳化ドラッグ・デリバリー・システム(SEDDS)、ツイーンまたは他の類似の重合体の送達マトリックスのような医薬剤形で使用される界面活性剤、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、リン酸塩のような緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和した植物性脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水、塩類または電解質(例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースを主成分とする物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリラート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−新ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、およびラノリン(羊毛脂)が挙げられる。シクロデキストリン類、例えばα、β、およびγシクロデキストリン、あるいは化学的修飾誘導体、例えばヒドロキシアルキルシクロデキストリン、2および3−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、さらに他の可溶化誘導体も有利に使用すること可能であり、本明細書に記した方法または複数の方法によって同定される化合物の送達を高めた。
【0072】
この発明の医薬組成物は、非経口的、注射によって内服または投与によって望ましくは、局所的、直腸、鼻腔、頬側、経膣的にまたは移植された容器を経て、吸入スプレー、あるいは経口投与することができる。この発明の医薬組成物は、いかなる従来の無毒の医薬的に許容可能な担体、アジュバントまたはビヒクルを含むことができる。用語「非経口(parental)」は、本明細書で用いられるように、皮下、皮内、静脈内、筋内、関節内、動脈内、滑液包内、内胸骨、鞘内、病巣内、頭蓋内注射または注入技術を含む。
【0073】
この発明の医薬組成物は、カプセル、錠剤、エマルジョン類および水性懸濁液、分散系および溶液を含むがこれに限らずいかなる経口的に許容可能な剤形ででも経口投与であることができる。経口の使用のための錠剤の場合、一般的に用いられる担体は、ラクトースとコーンスターチを含む。ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤もまた普通に使用される。経口投与にはカプセル形状、有用な希釈剤には、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液および/またはエマルジョン類が経口投与される場合、活性成分は懸濁されることができ、あるいはその中で分解されて、油性相は乳化および/または懸濁剤と結合される。必要に応じて、ある種の甘味剤および/または芳香剤および/または着色剤を加えることができる。
【0074】
この発明の医薬組成物は、リポソームまたはマイクロカプセル化技術を利用している製剤を含むことができる。そのような技術は、当技術分野で知られている。
【0075】
この発明の医薬組成物は、直腸内適用のために坐薬の形で投与されることもできる。これらの組成物は、この発明の化合物は室温で固いが、直腸温で液体であることから、直腸で溶解させて有効成分を放出するのに適当な非刺激性の賦形剤を混ぜ合わせることによって調製されることができる。このような材料には、カカオ脂、蜜ろうおよびポリエチレングリコールが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
所望の処置が容易に局所適用でアクセスできる領域または器官を含む場合、この発明の医薬組成物の局所投与は特に有用である。皮膚に対する局所投与のために、医薬組成物は、担体に懸濁または溶解された活性成分を含む適当な軟膏で処方されなければならない。この発明の化合物の局所投与のための担体は、限定されるものではないが、、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリ・オキシプロピレン化合物、乳化蝋、および水が挙げられる。あるいは、医薬組成物は活性化合物を懸濁または溶解させた適当なローション剤またはクリームで処方可能であり、あるいは適当な乳化剤で担体に溶かしてもよい。適当な担体は、限定されるものではないが、鉱油、ソルビタンステアラート、ポリソルベート60、セチル基エステル・ワックス、セテアリルアルコール2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられる。この発明の医薬組成物は、肛門座剤製剤によって、または適当な浣腸製剤で下部消化管に局所適用されるものであってもよい。局所経皮パッチ剤もまた、本発明に含まれる。
【0077】
この発明の医薬組成物を、鼻腔エアゾールまたは吸入によって投与してもよい。そのような組成物は薬学的製剤の当技術分野で周知の技術によって調製され、生理食塩水で溶液として調製することができる。また、ベンジルアルコールまたは他の適当な防腐剤(当技術分野で知られている因子を可溶化しているか、分散させている生物学的利用能、フルオロカーボンおよび/または他を強化する吸収プロモータ)を使用する。
【0078】
本明細書に記載した標的阻害化合物を1日あたり約0.01ないし約100mg/kg体重、あるいは1日あたり約0.5gないし75mg/kg体重の投薬量で、使用することが、標的媒介疾患の予防および治療にとって、独療法でおよび/または予防のための併用療法で有用であった。概して、この発明の医薬組成物は、1日約1ないし6回まで、または、代わりに、持続注入により投与される。そのような投与が、慢性または急性の治療として使われることができる。単一の投与形態物を得るために担体物質と組み合わせることのできる活性成分の量は、治療を受ける宿主および投与方式の種類によって異なる。典型的調製は、約5%ないし約95%までの活性化合物(w/w)を含む。あるいは、そのような調製は、約20%ないし約80%までの活性化合物を含む。
【0079】
当業者は、上記した投薬量よりも低い、あるいは高い投薬量が必要となる場合もあることを容易に理解するだろう。いかなる特定の患者のための特異的な投薬量と処置療法は、使用される特異的な化合物、年齢、体重、公衆衛生状態、性、食事、投与の時間、排出、複合製剤、重症度、および疾患、重症度および病気経過、疾患、状態または症状に対する患者の傾向と処置する医師の判断等を含む種々の因子による。
【実施例】
【0080】
[実施例1]
多量体酵素活性を阻害するリガンドを同定するための単量体形態にある標的酵素の標的酵素のスクリーニング
ヒト酵素誘導性一酸化窒素シンターゼ(iNOS)は、炎症にとって重要な役割を担うことが知られており、iNOS活性のインヒビターは抗炎症性創薬の候補である。完全な活性のために、iNOS酵素は、多量体につき2つの機能的な活性部位を与える補助因子がロードされたホモ二量体として存在しなければならない。必須の補助因子であるテトラヒドロビオプテリン(THB)が一つ欠けた状態では、酵素が低活性形態で存在することが知られており、不活性単量体と活性二量体との間が平衡化することが知られている(Ghosh et al, Biochemistry, 35:1444−9 (1996))。このように、親和性ベースのスクリーニングは、インヒビター発見のためにTHB結合高活性二量体を使用した。しかし、THBがなく低活性形態であるiNOSの低活性形態の親和性をベースとしたスクリーニングによって、iNOSの単量体形態に結合し、二量体を損なう新規リガンドを生じた。これらのリガンドは、生化学的および細胞学的アッセイの両方でiNOSの機能的インヒビターとして作用するもので、放射リガンド置換アッセイ(既知のモノマー特異的液体)ではIC50が30nMから30μM、またLPS刺激RAW細胞アッセイではEC50の値が約100nMまたは50μMである機能的インヒビターとして作用する。
[実施例2]
補助因子非依存的に酵素活性を阻害するリガンドを同定するための所望の補助因子非存在下での標的酵素のスクリーニング
ヒト酵素イノシンモノフォシフェート・デヒドロゲナーゼ(IMPDH)は、炎症において重要な役割を担っている。したがって、IMPDH活性の阻害は抗炎症創薬の候補である。完全な活性のために、IMPDH酵素は基質IMPを酸化させるために補助因子NAD+を利用し、その生成物であるキサントシン一燐酸(XMP)およびNADHを生成する。ミコフェノール酸(MPA)等の既知のIMPDHインヒビターは、IMPおよびNAD依存形式でIMPDHに結合する(Fleming et al, Biochemistry, 35:6990−7 (1996))。また、機能ベースのIMPDHのスクリーニングは、IMPおよびNADの存在下でおこなわなければならない。しかし、IMP存在下、しかしNADは非存在である条件でIMPDHの新和性をベースとしたスクリーニングによって、IMP−依存およびNAD非依存様式でIMPDHに結合する新規リガンドを生成した。これらのリガンドは、生化学的アッセイではIMPDHの機能的インヒビターとして作用し、蛍光NADHの生産に続く生化学アッセイで、50nMないし10μMの範囲内のIC50と500nMないし50μMの範囲内のEC50によって、PHA刺激によるPBMC細胞増殖の阻害について細胞内アッセイをおこなった。
[実施例3]
酵素活性を阻害するリガンドを同定するための標的キナーゼの基底、比活性形態のスクリーニング
ヒト・キナーゼp38が炎症において重要な役割を果たすことが知られており、p38活性のインヒビターは抗炎症性の創薬(REF)の候補である。完全な活性のために、p38キナーゼの基底形態は、MKK6/MEK6 Wilsonその他によって、アミノ酸残基Thr180およびTyr182でMKK6/MEK6によるリン酸エステル化によって活性化されなければならない(Wilson et al., (J. Biol. Chem., 271:27696−27700 (1996))。p38のリン酸エステル化は、好ましい等価形態を低活性”DG外側立体構造から高活性DGF内側立体構成へDFGループへシフトさせる((Knighton et al., Science 253:407−414 (1997), Yamaguchi et al., Nature 384:484−489 (1996)).)。p38の機能ベースのスクリーニングは、基質およびATPの存在下で、p38の活性化形態を概して利用することから、強くて信頼性が高い機能的な読出しが確実となった。しかし、ATPおよび基質が存在しない場合での基底非リン酸化p38キナーゼの親和性に基づくスクリーニングは、p38キナーゼの不活性立体構造であるDFG外側に結合して安定化する新規リガンドを生成した。これらのリガンドは、生化学アッセイにおいて高度に選択的で機能的なp38インヒビターとして作用し、放射性標識ATPをMAPKAP−2基質ペプチドp38に、IC50の値が50nM〜10μMで移すとともに、THP.1で、全細胞アッセイではTNFαのLPS媒介放出を500nMないし50μMの範囲のEC50で阻害することが報告された。機構的に、そのようなリガンドは、活性化(リン酸エステル化)を防止し、基質の結合を防止し、および/または、ATPの結合を防止することによって、活性を阻害することができる。
[実施例4]
酵素活性を阻害するリガンドを同定するために所望のタンパク質パートナーの非存在下での標的酵素のスクリーニング
ヒト・サイクリン依存型キナーゼ2(CDK2)は、癌細胞増殖で重要な役割を担っていることから、CDK2活性のインヒビターが抗癌創薬の候補である(Knockaert et al, TIPS, 23:417−425 (2002))。ヒト・サイクリンに依存するキナーゼ2(CDK2)が癌細胞増殖において重要な役割を果たすことは知られている、そして、このように、CDK2活性のインヒビターは抗癌剤発見(Knockaertなどは傾く。そして、23:417−425が(2002)である)の候補である。完全な活性のために、CDK2キナーゼの基底形態は、1:1ストイキオメトリでもってタンパク質サイクリン・パートナーと結合しなければならない(Knockaert et al, TIPS, 23:417−425 (2002))。
CDK2と結合して活性CDK2サイクリン複合体と結合する2つの既知のサイクリンが、サイクリンAとサイクリンEである。CDK2と調子活発なCDK2−サイクリンに対する結合が複雑にする2つの既知のサイクリンは、cyclinAとcyclinEである。CDK2に対するサイクリンの結合はキナーゼ活性のために必要である、また、このように、CDK2の機能ベースのスクリーニングは、基質ペプチドおよびATPの存在下で、機能的な読出しを得るために合成サイクリン−CDK2を利用しなければならない。しかし、サイクリンがない場合、またATPおよび基質ペプチドがない場合、基底、未リン酸エステル化CDK2の親和性ベースのスクリーニングは、CFK3のサイクリン・フリー不活性形態に対して選択的に結合する新規リガンドを生成した。このれらのリガンドは、癌細胞系統を用いた従来の細胞増殖アッセイでCDK2の機能的インヒビターとして作用し、EC50の範囲が500nMないし50μMであった。機構的に、そのようなリガンドは、CDK2にサイクリンの結合を防止して、活性化(リン酸エステル化)を防止して、基質の結合を防止して、および/または、ATPの結合を防止することによって、活性を阻害することができる。
[実施例5]
受容体活性を阻害するリガンドを同定するための標的NHRの非リガンド形態のスクリーニング
ヒト核ホルモンレセプター(NHR)肝臓X受容体β(LXRbeta)が脂質ホメオスタシスにおいて重要な役割を果たすことは知られている、そして、このように、LXRbeta活性のモジュレーターは異脂肪血症と心血管創薬の候補である。
転写性の活性化因子としての完全な活性のために、LXRbetaの基底形態は、1:1にストイキオメトリで小分子アゴニストに結合することによって活性化させられなければならない。24−ヒドロキシコレステロールは、LXRbetaのための1つの自然発生的な小分子アゴニストである(REFLehmann et al., J. Biol. Chem, 272:3137−40 (1997).。
LXRbetaのアンタゴニストまたは逆作動薬を同定するために、機能に基づくスクリーンは、強い機能的な読出しを得るために、アゴニストの存在下で実行されなければならない。しかし、24−ヒドロキシコレステロールがない場合、基礎、非リガンド化されたLXRbetaの親和性ベースのスクリーニングは、アゴニストフリー(LXRbetaの基底形態)に対して結合する新規リガンドにその結合を与えた。
これらのリガンドは、XRbetaの逆転アゴニストおよびアンタゴニストとして、全細胞受容体細胞アッセイで作用し、自然に生ずるLXRbeta依存型点差産物の転写を測定する全細胞アッセイでは、EC50が50nM〜50μMであった。機構的に、そのようなリガンドは、LXRbeta(逆アンタゴニスト)の不活性立体構造を安定させることによって、さらに、LXRbeta(拮抗作用)に自然発生的なアゴニスの結合を防止することによって活性を阻害することができる。
[実施例6]
受容体活性を阻害するリガンドを同定するための標的GPCRの非リガンド形態のスクリーニング
ムスカリン性アセチルコリン受容体(m2R)ヒトGタンパク質連結受容体(GPCR)m2が心血管プロセス及び精神分裂症で重要な役割を果たすことが知られていることから、m2R活性のモジュレーターは、心血管及びCNS疾患創薬の候補である(The Pharmacological Basis of Therapeutics (Hardman, J. G., et al., eds.) Ninth edition. New York, N.Y.: McGraw−Hill)。完全な活性のために、m2Rの基底形態は、小分子アゴニストの結合によって活性化させられなければならず、またアセチルコリンは、m2Rのための1つの自然発生的な小分子アゴニストである(Ashkenazi, A. & E. G. Peralta (1994) Muscarinic Acetylcholine Receptors. In Handbook of Receptors and Channels (S. J. Peroutka, ed.) Volume 1. Boca Raton, Fla.: CRC Press)。m2Rのアンタゴニストまたは逆アゴニストを同定するために、機能に基づくスクリーンは、強い機能的な読出しを得るために、アゴニストの存在下で実行されなければならない。しかし、アセチルコリンがない場合、基底形態のm2Rの親和性ベースのスクリーニングは、アゴニストがない基底形態のm2Rの基底形態に結合する新規リガンドをもたらした。これらのリガンドは、アセチルコリンの添加に対する細胞応答を測定する全細胞アッセイでのm2Rno逆アゴニストおよびアンタゴニストとして作用し、EC50が100nM〜50μMであった。機構的に、そのようなリガンドは、m2R(すなわち逆アゴニズム)の不活性立体構造を安定させることによって、さらに、m2R(すなわち拮抗作用)に自然発生的なアゴニストの結合を防止することによって活性を阻害することができる。
[実施例7]
プロテアーゼ活性を阻害するリガンドを同定するための標的プロテアーゼのプロ酵素形態のスクリーニング
血液凝固プロセスでは、プロテアーゼ活性のカスケードは、凝血塊の形成に触媒作用を及ぼすために開始される。そのようなプロテアーゼのインヒビターは、抗凝血物質でありえる。このカスケードにおいて、1つのプロテアーゼは酵素の切断によってその「下流の」プロテアーゼを活性化させる。また、低活性チモーゲンまたは酵素前駆体(Davie et al, Biochemistry, 30:10363−10370 (1991))の転換をもたらす。酵素の切断は、概してチモーゲンから内部組み継ぎまたはペプチド断片の放出をもたらす。機能ベースのスクリーニングは、インヒビター発見のために凝固プロテアーゼのタンパク質分解された、高い活性形状を使用した。しかし、親和性に基づいて低活性または酵素前駆体のスクリーニングして、凝固プロテアーゼの調子は、プロテアーゼの不活性形状に、新規リガンドにその結合を与えることができる。しかし、凝固プロテアーゼの低活性(酵素前駆体)形態の親和性ベースのスクリーニングは、該プロテアーゼの不活性形態に結合する。これらのリガンドは、血液凝固アッセイまたはアミド溶解性のクロモジェニック・アッセイで基質ペプチド(直接的競争またはアロステリック阻害によって)の結合を予防することによってタンパク分解性活性化(例えば上流のプロテアーゼによる処理)によって、プロテアーゼの機能的なインヒビターとして作用することができる。
[実施例8]
プロテアーゼ活性を阻害するリガンドの同定に対する標的プロテアーゼの不活性、突然変異体形態のスクリーニング
ヒト・プロテアーゼ因子VIIa(fVIIa)は血液凝固カスケードのクリティカルコンポーネントであり、fvIIaプロテアーゼのインヒビターは抗凝血物質でありえる。
機能ベースのスクリーニングは、野生型(インヒビター発見のための可溶性組織因子(sTF)との複合体状態でのfVIIaの高い活性形状)を使用した。しかし、親和性fVIIa/sTFのスクリーニングに基づくfVIIaプロテアーゼの不活性突然変異体形状で実行する。不活性突然変異体は親和性スクリーニング・プロセスの結合反応の間、自己タンパク分解を予防する、しかし、それはリガンド結合のためにまだ重要な活性部位残基のほぼ全てを示す。不活性の親和性スクリーニング、突然変異体fVIIa/sTF複合体は、プロテアーゼの不活性形状に結合する新規リガンドを生成した。これらのリガンドは、野生型(IC50値1〜50μM)の機能的インヒビターとして作用し、アミド溶解性クロモジェニック・アッセイの高い活性プロテアーゼの機能的なインヒビターとして作用する。
[実施例9]
キナーゼインヒビターとしてのリガンドの同定
本発明は、これらのキナーゼのインヒビターのために不活性化キナーゼをスクリーニングする際に適用することができる。活性キナーゼの使用を必要とする機能的な生化学読み出しに依存している従来のスクリーニング法とは対照的に、驚くべきことに、不活性化キナーゼをスクリーニングすることで、より選択的にインヒビターが提供される。活性キナーゼは、主に、不活性化キナーゼがDFG外側立体配置の中に主に存在する間、DFG内側立体構造と呼ばれるものの中に存在する。本発明は、一つには、以下の知見にも基づく。すなわち、DFGがDFG外側立体配置であるとき、ATP結合部位とは別のアロステリックな結合ポケット(例えば凹状ポケット)は、不活性化キナーゼで形成されること。また、このアロステリックな結合ポケットが結合している(例えば、リガンドによって、例えば、インヒビター)とき、ATPは、キナーゼ上でのATP部位に対する結合が間接的に防げられる。ATPおよび基質がない場合、キナーゼは不活性化されることから、従来の活性に拠点を置くアッセイによってスクリーニングされることができない所で、キナーゼが優先してDFG外側立体配置にあった。アロステリック結合部位の構造特徴が大部分のATP結合部位sより構造的に多様であるので、この新しいアロステリックな結合ポケット(例えば凹状ポケット)に対するバインダーがより選択的なキナーゼインヒビターであると概ねわかる。
【0081】
本発明は、新しいインヒビター結合部位を同定するための方法と、キナーゼのインヒビターと、これらのインヒビターが含まれる組成物とを設計するための方法に適用される。
試験キナーゼのインヒビターを同定する方法は、例えば、不活性化参照キナーゼの三次元構造を使用することを含む。またそれぞれ、ser/thrキナーゼまたはチロシンキナーゼ(例えばそのインヒビター結合したp38 MAPKまたはc−abl)が、例えば、BIRB 796またはSTI−571またはそれの(すなわちそれのGleeve(登録商標)またはバリアント)バリアントである。参照キナーゼのDFG(例えばAsp−Phe/Leu/W−Gly、例えばDFG、DLGまたはDWG)のモチーフの位置に基づいて、非活性化試験キナーゼのDFGモチーフを位置決めすることができる(例えば、参照キナーゼの構造上の試験キナーゼの多重配列アラインメントおよび/またはオーバレイによって)。参照キナーゼの例は、不活性化インシュリン受容体キナーゼ(1irk)である。1irkにおいて、DFGモチーフはAsp1150−Phe1151−Gly1152に対応する。参照キナーゼのもう一つの例は、c−ablである。
1fpu(STI−571バリアント結合したc−ablのためのPDB受託コード)または1iep(STI−571結合したc−ablのためのPDB受託コード)のDFGモチーフは、Asp381−Phe382−Gly383を含む。中間の残基、フェニルアラニンは時々トリプトファン(Trp、W)またはロイシン(Leu、L)でありえる。このように、DFGモチーフはアミノ酸配列DFG、DWGまたはDLGを有することができる。試験キナーゼ(例えば非活性化試験キナーゼ)は参照キナーゼ(例えば不活性化参照キナーゼ)で位置合わせされる。そのために、DFGの位置は試験キナーゼでDFGモチーフの位置を測定するために多重配列アラインメントで知られている(例えばそのそれぞれのインヒビターBIRB 796とSTI−571バリアント結合したp38 MAPKまたはc−abl)。多重配列アラインメントは、たとえば、CLUSTALW、FASTAまたはHMMERを使用して達成される。
【0082】
参照キナーゼ(例えば、不活性化参照キナーゼ)のへリックスα−Cは、試験キナーゼ(例えば非活性化試験キナーゼ)のへリックスα−Cを位置づけるのに用いることができる。たとえば、11RKにおいて、Val1050−Met1051を含むアルファヘリックスは、へリックスα−Cに対応する。別の例では、1IEPのへリックスα−Cは、Val289−Met290を含む。
へリックスα−Cの位置が知られている(例えば、三次元構造は実験的に解決された)配列の多重配列アラインメントは、三次元構造が実験的にまだ決定されなかった他の配列でへリックスα−Cの位置を同定するのに用いることができる。
【0083】
ひとたびDFGモチーフが位置決めされると、DFGモチーフが外側立体構造(DFG−out)であるかどうか決定することができる。完全活性状態にあるキナーゼに対して、活性化ループは拡張または開いた立体構造でしばしば見つかる、またDFGモチーフは通常、DFG−内側立体構造(Knighton et al.(Science 253)である:407−414の(1997)、Yamaguchi et al., Nature 384:484−489の(1996))で見つかる。本明細書中に記載される新しい方法は、DFG外側立体配置でDFGモチーフを同定する。試験キナーゼのDFGモチーフがDFG外側立体配置であるかどうか決定するために、DFGモチーフと試験キナーゼのへリックスα−Cの間の距離が、計量される。具体的には、以下の2つの原子の最短距離が設定される。(1)DFGモチーフのPhe/Leu/Trpp残基の非骨格重原子(センター残基)ならびに(2)へリックスα−Cのいずれかの残基にあるアルファ炭素を測定する。11Åに等しいか、それよりも大きく、20Åに等しいか、それよりも小さい(例えば、11.0、11.2、11.4、11.6、11.8、11.9、12、13、14、15、16、17、18、19、または20Å)距離は、DFGモチーフをDFG外側立体配置であること定義する。たとえば、1iepは、そのインヒビター(STI−571バリアント)結合したc−ablを表す。1iepにおいて、Pheの非骨格重元素とそのへリックスα−Cのアルファ炭素の最短距離を測定したところ11.9Åであった。したがって、1iepのためのDFGモチーフはDFG−outに指定される。珍しいケースにおいて、参照キナーゼがDFG外側立体配置で見つかることができるが、活性化状態であることができる。DFG外側立体配置がインヒビターがいずれを結合することができるかについてアロステリックなポケットをまだ形成することができる時から、DFG外側立体配置で活性参照キナーゼを使用することはキナーゼインヒビターを同定する際にまだ有用でありえる。
【0084】
DFGモチーフがDFG外側位置にある場合、凹状ポケットの形成(例えばアロステリック結合部位)を誘発することができる。ここで、凹状ポケットの表面がYないしXとして示される。インヒビターが結合するように設計される凹状ポケット(例えばアロステリック結合部位)アラインメント.の方法によって局所化される。一実施形態において、キナーゼインヒビター結合(例えば試験キナーゼインヒビター結合)のために凹状ポケットを局所化することは、いくつかが表1にリストされている1種類以上の参照キナーゼのXないしYを通して試験キナーゼのアミノ酸配列XないしYを位置合わせすることができる。別の実施形態において、XないしYはタンパク質のLeu104ないしAla111からなりうる。このタンパク質のPDB受託コードが配列アラインメント分析(表1参照、後述)によって決定されるように1kv1(鎖A)であるタンパク質のLeu104ないしAla111から成ることができる。別の実施形態では、参照キナーゼアミノ酸XないしYはPDB受託コードが1kv2(鎖A)であるタンパク質(鎖A)のAla111ないしLeu104から成ることができる。別の実施形態において、配列アラインメント分析(例えば、Smith−Waterman algorithm for protein sequence alignment (例えば、e.g., as described in Smith et al., 1981, J Mol Biol 147:195−197 and Pearson, 1991, Genomics 11:635−650)によって決定されるように、試験キナーゼアミノ酸XないしYはPDB受託コードが1kv1(鎖A)または1kv2(鎖A)であるタンパク質のLeu104ないしAla111に類似したアミノ酸から成る;Ile313ないし1iep(鎖A)のAsn322、1iep(鎖B)、1fpu(鎖A)または1fpu(鎖B)、および/またはlirkのLeu1073ないしAla1080、配列アラインメント分析(例えば、Smith−Waterman algorithm for protein sequence alignment (例えば、e.g., as described in Smith et al., 1981, J Mol Biol 147:195−197 and Pearson, 1991, Genomics 11:635−650)。
【0085】
「アミノ酸類似(amino acids analogous to)」は、アミノ酸残基が類似しているが、同一でないことを意味する。したがって、類似のアミノ酸残基を持つアミノ酸は、類似しており、当技術分野で定義されたとおりである。これらの類似点は、アミノ酸をキナーゼ(例えば、三次元付近の中の他のアミノ酸に対するそれらの相互作用の点で同様の)の三次元構造の中で「類似して(analogously)」作用させることができる。これらのファミリーは、基本的な側鎖(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性の側鎖(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性の側鎖(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極の側鎖(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β枝分れ側鎖(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)のアミノ酸を含む。このように、たとえば、リジンに対する類似したアミノ酸は、アルギニンまたはヒスチジンである。他の例として、アスパラギン酸は本明細書に記載されているようにグルタミン酸に類似している。このように、参照キナーゼ(ギャップを含む)のアミノ酸配列XないしY(例えば、表1を見よ)によって位置合わせされる試験キナーゼの領域(例えば、タンパク質配列アラインメントのためにスミス−ウォーターマン・アルゴリズムを使用する)は、部分的に、DFG外側立体配置でDFGによって誘導される凹結合ポケットを形成する相同的領域である。DFG−outによって誘発される相同的試験キナーゼアミノ酸とこのように試験キナーゼ凹状ポケットを同定することによって、アロステリック結合部位は同定される。また、インヒビターはこの部位で試験キナーゼに結合するように設計される。この相同部位の中で、試験キナーゼと参照キナーゼとの間で類似している特定のアミノ酸が存在しうる。
【0086】
ひとたび「相同(homologous)」アミノ酸が非活性化試験キナーゼで決定されると、それはアロステリック結合部位(例えば凹状ポケット)にフィットするために正しいトポロジー(形状)と電子的性質とで足場を設計するのに用いることができる。ライブラリー(例えば、質量コード化ライブラリー、米国特許第6,207,861号及び第6,147,344号を参照せよ)が与えられ、その足場に基づいて合成される。アロステリックなリガンド(例えばインヒビター)は、アロステリック部位(例えば、DFGモチーフがDFG外側立体配置である時を示す)が優勢である(例えば、試験キナーゼはATPと基質がない場合、不活性化である)条件の下で、非活性化試験キナーゼでライブラリー(例えば規定された質量コード化ライブラリーまたは設計された質量コード化ライブラリー)の親和性スクリーニングによって同定される。
【0087】
別の態様では、ライブラリー(例えば質量コード化ライブラリー)はATP部位バインダーが所望である例で、試験キナーゼの活性型に対してスクリーニングされる。この場合、ライブラリー・スクリーニングは、試験キナーゼが活性化状態にあり、ATPおよび/または基質と競合する。任意には、スクリーニングは存在またはATPおよび/または基質の存在下で実行される。
1つの例において、ライブラリーが提供される。もう一つの例において、ライブラリーはDFG外側立体配置である試験キナーゼによって形成されるアロステリック部位のトポロジーまたは電子的性質に基づいて設計される。いずれにせよ、ライブラリー・メンバーは、合成後に質量コード化される。
(表1)
【0088】
【表1】

*PDB受託コード
従来のスクリーニング法が概してDFG−内側立体構造で活性キナーゼを主に必要とする機能的なアッセイを使用することから、これらによって同定されるインヒビターは、主にATP結合部位を標的にしてスクリーニングするので、ATPと競合する。
この様式で結合したインヒビターによるキナーゼはDFG−内側立体構造を示し、このタイプのインヒビターはしばしばより少ない選択性の不利を有して、副作用と毒性を増加させた。キナーゼに対するキナーゼインヒビターまたはバインダーを設計する従来法は、DFG−内側立体構造で活性状態であるキナーゼに依存した。
対照的に、本明細書中に記載される方法は、DFG外側立体配置で不活性化キナーゼに対するインヒビターの設計を可能にするという長所があり、インヒビターにより大きな選択性が与えられる。このような方法が必要に応じて活性状態でキナーゼに適用されるにもかかわらず、該方法は活性状態であるキナーゼに依存することなく本明細書中にキナーゼのインヒビターの同定を可能にする。
【0089】
DFG−内側立体構造において、センター残基(Phe、Leu,またはTrp)は、キナーゼ(Frantz, 2002, Nature Reviews 1: 253)の2つの突出部分(lob)の間で、溝に疎水性ポケットが埋設される。DFGモチーフが、しかしDFG外側立体配置であるとき、他の表面が溶媒にさらされる間、センター残基(Phe、Leu,またはTrp)の側鎖の1つの表面はインヒビターを保護するのを助ける。このセンター残基は、ほとんどの場合、活性のためにキナーゼによって必要である二価のイオンを結合する際に重要でもある。センター残基は、アスパラギン酸塩(DFGモチーフの第1の残基)の位置を調整する。このアスパラギン酸塩はマグネシウム(またはマンガン)イオンの配位圏のリガンドのうちの1つである。この二価のイオン(マグネシウムまたはマンガン)は次々に、このようにATP結合を支持しているATPのβとγリン酸塩を調整する。二価のイオンがATPリン酸塩でDFG相互作用のために全く必要でない点に留意する必要がある。この立体構造は、ATP−結合ポケットとは空間的に別であるキナーゼで、大きい疎水性ポケットを露出させる。
この大きい疎水性ポケットまたはアロステリック部位に結合したとき、インヒビターはDFGモチーフをDFG外側立体配置に固定する。この立体構造(例えばDFG−out)のDFGの物理的な位置決めはATP結合を予防することである。またそれは次々にキナーゼ機能を阻害する。
【0090】
複数の化合物の複数の混合物(例えば、小分子化合物のライブラリー、例えば、質量コード化組み合わせライブラリー)は、試験キナーゼ(例えば、非活性化試験キナーゼ、例えば、ATPおよび/または基質がない場合)を結合すを可能にするために、スクリーニングされる(例えば、計算モデリングによって、または親和性スクリーニングによって)。一実施形態において、そのDFGがDFG外側立体配置であるとき、質量コード化ライブラリーはキナーゼで形成される新しいアロステリック結合部位(例えば凹状ポケット)の位相幾何学的および静電気学的性質で測定される足場から設計される。別の実施形態において、質量コード化ライブラリーは規定されることができて、キナーゼ活性を阻害するか、調整するキナーゼ結合剤のためにスクリーニングされる。まだ別の実施形態において、個体離散的な化合物は、各々の化合物の分子量を算出して、それから適当な化合物を混ぜ合わせることによって最初に化合物の質量コード化された混合物を作成することによって、この発明の方法によってスクリーニングされる。アロステリック部位(例えば凹状ポケット)を結合する化合物の設計は、そのアロステリック部位(例えば凹結合ポケット)に基づくコンピュータ・モデリングによって設計され、該部位は本明細書中に記載される方法によって同定され、さらに潜在的バインダーはこのような情報に基づいて合成される。
【0091】
米国特許第6,207,861号および第6,147,344号(前掲)は、本明細書中に記載される方法に適用される化合物(例えば新しいアロステリック結合部位に合う足場に基づいて設計される質量コード化ライブラリー)のライブラリーをスクリーニングする際に有用な方法を記載する。
それはアロステリック部位に基づく設計(designing)化合物混合物に適用されるか、足場標的化にアロステリック部位の基礎をおいた。
標的インヒビター合成
標的(例えばキナーゼ)、インヒビターは有機合成文献で十分確立される方法によって合成される((Gazit et al., 1989, J. Med. Chem.32:2344−2352; McKenna et al., 2002, J. Med. Chem.45:2173−2184; Levitzki, 2002, Eur. J. Cancer 38,Suppl 5:S11−8)。さらに、質量コード化ライブラリーを含んでいる複数の化合物の複数の混合物を合成する方法も記載された(Shipps, et al., 1997, Proc. Natl. Acad. Sci USA 94:11833−11838; Shipps et al., 1996, Bioorg. Med. Chem. 4:655−657; Makara et al., 2002, Org. Lett. 4:1751−1754; Makara, 2001, J. Org. Chem.66:5783−5789)。本明細書中に記載されるインヒビター化合物を合成する際に有用な合成化学形質転換と保護基方法論(保護および脱保護)は、当技術分野で知られていて、たとえば、R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T. W. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 2nd ed., John Wiley and Sons (1991); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994); and L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995),およびそれらのそれ以降の版に記載されている。
【0092】
本明細書中に記載されるインヒビターは、1種類以上の不斉中心を含むことができ、このようにラセミ化合物と、ラセミ混合物、一つのエナンチオマー、個体ジアステレオマー、およびジアステレオマー混合物として得ることができる。これらの化合物の全てのそのような異性体の形状は、本発明にはっきりと含まれる。
本明細書中に記載されるインヒビターは、複数の互変異性型で見受けられることもできる。また、その全ては本明細書中に包含される。インヒビターは、cis−またはtrans−またはE−またはZ−二重結合異性体形態で生ずることもできる。そのようなインヒビターの全てのそのような異性体の形状は、本発明に明確に含まれる。
【0093】
インヒビターは同定されるか、ALISのような方法で複数の化合物からなる混合物(例えば、複数の化合物からなる1つのライブラリー(例えば組み合わせのライブラリー)は、例えば、組み合わせのライブラリーを質量コード化された)をスクリーニングすることによって選択される(上述の)、不活性化状態にあるキナーゼのアロステリックなリガンドを同定することができる親和性スクリーニングの方法である。インヒビターは、同定されることもできるか、当技術分野で知られている従来のライブラリー・スクリーニング法を用いて複数の化合物からなる混合物をスクリーニングすることによって選択されることもできる。
標的阻害アッセイ
上述の方法で選択、同定、もしくは設計される潜在的インヒビターをアッセイすることで、その試験標的および/またはシグナル伝達経路を阻害する能力が判断される。アッセイは生体外または生体内でおこなうことができる。例えば、、細胞機能および腫瘍細胞アッセイと同様に、阻害はリン酸エステル化アッセイ、シンチレーション近似アッセイ(Amersham)、DELFIAアッセイ(Perkin Elmer)または連続分光光度的アッセイを含む種々の方法で測定される(Spencer−Fry, J., et al., 1997, Journal of Biomolecular Screening 2(1):25−32; Braunwalder et al., 1996, Anal. Biochem. 238; 159−64; Barker et al., 1995, Biochemistry 34:14843−51)。
【0094】
当技術分野で知られている従来の方法は、キナーゼ阻害を確認するのに用いられることもできる。これらの方法は、放射性同位元素標識ATPと基質の阻害されるキナーゼ、潜在的インヒビターと生理的に見つかってそれと類似の条件を規定する成分からなる反応混合物への追加を含む。制御と関連して基質への放射性同位元素標識リン酸塩の編入の測定は、それから、慢性キナーゼインヒビターとして潜在的インヒビターを同定する情報を規定することができる。
【0095】
本明細書中に記載されるアッセイによって確認される全ての潜在的インヒビターとインヒビターのために、さらに、親和性、インヒビター活性および/または生体内特性を改良する潜在的インヒビターの構造に対する改良は、通常、必要である。
これは薬化学で使用される標準配置によって達成され、ステップの全てが本明細書中に記載されるアッセイをスクリーニングしているインヒビターによって提供し、および/または連続した繰返しによって作られる。
標的インヒビターの用途
本明細書中に記載される方法によって発見されるリガンドは、活性化可能(activatable)である標的の阻害のために有用でありえる。
とえば、リガンドはG−タンパク質結合受容体、フォスファターゼ、トランスフェラーゼ、シンターゼ、キナーゼ、プロテアーゼ、核ホルモンレセプター、二量体化している受容体、輸送体、イソメラーゼ、ポリメラーゼ、タンパク質−タンパク質領域、転写制御因子、ヒドロラーゼ、および膜関連タンパク質と酵素のインヒビターでありえる。標的が疾患を伴う程度まで、ヒトの例のために、本明細書中に記載される方法によって発見されるリガンドは哺乳類でそのような疾患の診断および/または処置のために医薬組成物に処方される。そのような疾患は、生物学的戦争の発作を伴う癌、炎症、神経障害、肥満、老化、ウイルス感染、細菌感染症と病気を伴う。
【0096】
本明細書中に記載される方法によって発見されるリガンドは、標的配列で90%を超える、代わりに85%を超えるまたは代わりに70%を超える配列相同性を含んでいるいかなる標的の生物学的活性を阻害する際に有用でもある。本明細書中に記載されるインヒビターは、部分配列であることを含んでいるいかなる標的(例えば、酵素、例えば、キナーゼ)またはそれのバリアントの生物学的活性を阻害するために有用でもあるか、90%を超えるを含むいかなる標的(例えば、酵素、例えば、キナーゼ)でもあるか、85%より代わりに大きくもあるか、本明細書中に言及されるキナーゼの部分配列であることを含むキナーゼ部分配列であることによる70%の配列相同性より代わりに大きくもある。
そのような酵素(例えば、キナーゼ)の活性部位またはサブドメインの配列による90%を超える、代わりに85%を超えるまたは代わりに70%を超える配列相同性%である。部分配列またはそのバリアントは、少なくとも約250のアミノ酸または代わりに少なくとも約120のアミノ酸を含む。
キナーゼインヒビターの用途
本明細書中に記載される方法によって同定されるインヒビターは、1種類以上の酵素のキナーゼ活性の阻害のために有用でありえる。具体的には、本明細書中に記載される化合物は、チロシン、セリン/スレオニン、脂質またはヒスチジン・キナーゼのインヒビターとして有用である。本明細書中に記載される化合物と組成物によって阻害される、また本明細書中に記載される方法が有用であるキナーゼ(例えば試験キナーゼ)の実施例、セリン・キナーゼ、トレオニンキナーゼ、チロシンキナーゼおよび/または脂質キナーゼを含むが、それらに限られない。インヒビターが設計される潜在的試験キナーゼの特異的な例は、表2にリストされる。これらのキナーゼは、基礎で活性化の状態でスクリーニングされる。本明細書中に記載される方法によって同定されるインヒビターは、疾患の処置と上述したプロテインキナーゼの一つ以上を含む疾患症状のために、適当である。一実施形態において、本明細書中に記載される方法によって同定されるインヒビターは特に疾患の阻害または処置に適している、または、疾患症状はキナーゼによって仲介した。
【0097】
本明細書中に記載されるインヒビターはいかなる酵素(例えばキナーゼ)の生物学的活性を阻害するために有用でもある。また、キナーゼ配列で90%を超える、代わりに85%を超えるまたは代わりに70%を超える配列相同性を含む。また本明細書中に言及されるキナーゼを含む。本明細書中に記載されるインヒビターは、準配列であることを含んでいるいかなる酵素(例えばキナーゼ)または、本明細書中に言及されるキナーゼの準配列であることを含むキナーゼ準配列であることで90%を超える、代わりに85%を超えるまたは代わりに70%を超える配列相同性を含むいかなる酵素(例えばキナーゼ)の、それのバリアントの生物学的活性を阻害するために有用でもある。そのような準配列であること望ましくはは酵素(例えば、キナーゼ)の活性部位またはサブドメインの配列による90%を超える、代わりに85%を超えるまたは代わりに70%を超える配列相同性%である。準配列またはそれのバリアントは、少なくとも約250のアミノ酸または代わりに少なくとも約120のアミノ酸を含む。
【0098】
本明細書中に記載されるインヒビターは、キナーゼ活性を阻害する際に有用である。
それなりに、化合物、組成物とこの発明の方法は、哺乳類(特にヒト)でキナーゼ媒介疾患または疾患症状を処置する際に有用である。キナーゼが媒介となった疾患は、プロテインキナーゼがシグナリング、調停、変調または疾病経過の調節に関与しているそれらである。キナーゼが媒介となった疾患として、限定されるものではないが、以下の疾患クラス:癌、炎症、神経障害、および肥満が挙げられる。
(表2)
【0099】
【表2】


本明細書中で引用されたものが、印刷、電子回路、コンピュータ読み込み可能な記憶媒体または他の形状であろうとなかろうと、その内容の全体を本名足書の一部として援用するものであり、限定されるものではないが、要約、論文、学術誌、刊行物、テキスト、論文、インターネット・ウェブ・サイト、データベース、ソフトウェアパッケージ、特許、および特許刊行物が挙げられる。本発明の多数の実施形態は、記載されたにもかかわらず、種々の修飾が本発明の精神および範囲から逸脱することなく作られることができると理解される。
したがって、別の実施形態は以下の請求の範囲および要約書(上記)の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的部分の非活性形態に対する化合物の混合物をスクリーニングするための方法であって、
(a)化合物の混合物を提供する工程と、
(b)前記混合物を前記標的部分の非活性形態とともにインキュベートして、化合物:標的複合体を形成する工程と、
(c)非結合化合物および標的から、化合物:標的複合体を非結合化合物および標的から分離する工程と、
(d)化合物:標的複合体を解離させる工程と、
(e)質量分析計に前記化合物を通すことで、標的に対して結合した前記解離化合物を同定する工程とを包含し、前記同定された化合物がKd値1pMないし50μMの親和性で前記標的部分に結合する、スクリーニング方法。
【請求項2】
標的部分の異なる形態の混合物に対する化合物から構成される混合物をスクリーニングにするための方法であって、
(a)化合物の混合物を提供する工程と、
(b)標的部分のリガンド結合形態およびリガンド無し形態の混合物を提供する工程と、
(c)前記化合物の混合物を前記標的部分の混合物ととともにインキュベートして化合物:標的複合体を形成する工程と、
(d)化合物:標的複合体を非結合化合物および標的部分から分離する工程と、
(e)化合物:標的複合体を解離させる工程であって、前記標的から分離した脱解離化合物を新たなリガンドとして指定する工程と、
(f)任意の形態の標的部分に結合したリガンドを同定するために質量分析計に化合物:標的複合体を通すことによって、前記標的部分の任意の形態に結合した化合物:標的複合体に存在する化合物のうちから新規のリガンドを同定する工程であって、前記同定されたリガンドがKd値1pMないし50μMの親和性で前記標的部分に結合する工程と、
(g)前記工程(f)で同定された新規リガンドを、前記標的部分のリガンド結合形態およびリガンド無し形態とインキュベートする工程であって、前記工程(e)から(f)を繰り返して、どの化合物が前記標的部分のリガンド無し形態に結合したかに対して、どの化合物が前記リガンド結合形態に結合したかを線引きする工程とを包含する、スクリーニング方法。
【請求項3】
前記化合物混合物が、質量分析計で検出可能な固有のイオン質量を有している前記化合物の少なくとも90%を確実にするために質量コード化(mass coded)されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物混合物が、質量分析計で検出可能な固有のイオン質量を有している化合物の少なくとも90%を確実にするために質量コード化されている、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記標的形態の混合物が、非活性形態、不活性形態、および活性形態を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記標的形態の混合物が、単量体形態と多量体形態とを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記標的形態の混合物が、リガンド結合形態とリガンド無し形態とを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記標的形態の混合物が、補助因子結合形態と補助因子無し形態とを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記標的形態の混合物が、非活性形態と活性形態とを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項10】
前記標的形態の混合物が、単量体形態と多量体形態とを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項11】
前記標的形態の混合物が、リガンド結合状態とリガンド無し形態とを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項12】
前記標的形態の混合物が、補助因子結合形態と補助因子無し形態とを含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項13】
試験キナーゼインヒビターを発見するための方法であって、
(a)試験キナーゼを、ATPおよび/またはペプチド基質の非存在下で化合物の質量コード化ライブラリーとともにインキュベートする工程と、
(b)結合化合物を非結合化合物から分離する工程と、
(c)質量分析計で前記結合化合物を同定する工程と、
(d)キナーゼ阻害アッセイでの前記結合化合物の試験キナーゼ阻害活性を示す工程とを包含する方法。
【請求項14】
前記試験キナーゼが全長キナーゼである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
試験キナーゼが触媒ドメインを含む全長キナーゼのトランケート・フラグメントを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記キナーゼがキナーゼのバリアントまたは突然変異体である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
非結合化合物からの結合化合物の分離がサイズ排除クロマトグラフィーによる、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
質量分析が、質量コード化された化合物のデータベースと比較することによってされる、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記試験キナーゼが非活性化である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記試験キナーゼが、低い触媒活性を示している基底形態である、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記試験キナーゼが活性化される、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記試験キナーゼが生理学的活性状態に関連して部分的に活性化されている、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
インヒビターを設計するための方法であって、
(a)非活性化試験キナーゼを、三次元構造が知られている非活性化参照キナーゼと比較する工程と、
(b)アロステリック結合部位を同定する工程と、
(c)前記アロステリック結合部位に基づいてインヒビターを設計する工程と
を包含する方法。
【請求項24】
前記工程(c)が、
(c1)前記アロステリック結合部位の位相幾何学的性質および電子的性質に基づいて足場を設計する工程と、
(c2)前記足場に基づいて質量コード化ライブラリーを設計する工程とを包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記工程(C)が質量コード化ライブラリーの提供を包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
(d)試験キナーゼに結合する前記化合物に関する質量コード化ライブラリーをスクリーニングする工程と、
(e)前記キナーゼ結合剤が前記試験キナーゼを阻害するかどうかを決定して、試験キナーゼのインヒビターを設計する工程とを、さらに包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記スクリーニングが前記試験キナーゼによる親和性スクリーニングを包含する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記参照キナーゼが、プロテイン・データ・バンク識別子1kv1鎖aおよび1kv2鎖aを持つキナーゼからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記参照がプロテイン・データ・バンク識別子1iep鎖a、1iep鎖b、1fpu鎖a、および1fpu鎖bを持つキナーゼからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記参照キナーゼがプロテイン・データ・バンク識別子1irkを有する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記参照が、プロテイン・データ・バンク識別子1g3n鎖aおよび1g3n鎖bを有するキナーゼからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記アロステリック結合部位は、ATP結合部位と活性化ループとが空間的に異なる、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
アロステリック結合部位がDFGモチーフを位置づけることによって同定される、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記DFGモチーフがDWGまたはDLG配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
へリックス・アルファ−Cと前記DFGモチーフとの離間距離が11Åを越えるとともに20Å未満であり、また前記DFGモチーフがDFG外側立体構造である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記へリックス・アルファ−CがVal1050〜Met1051を含むインシュリン受容体キナーゼへリックス・アルファ−Cに相対的な三次元位置で相同である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記へリックス・アルファ−CがVal289〜Met290を含むc−ablへリックス・アルファーCに対する相対的な三次元位置で相同である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
潜在的バインダーが前記試験キナーゼを阻害するかどうかを決定する工程をさらに包含する、請求項23に記載の方法。
【請求項39】
試験キナーゼのインヒビターを設計する方法であって、
(a)前記試験キナーゼを三次元構造が知られている参照キナーゼと比較する工程と、
(b)アロステリック結合部位を同定する工程と、
(c)前記アロステリック結合部位を標的にする足場を設計する工程と、
(d)前記足場に基づいて化合物の混合物を提供する工程と、
(e)キナーゼに対する親和性スクリーニングにより、アロステリック部位に対するリガンドを同定する工程と、
(f)キナーゼ・アッセイで、前記リガンドによってキナーゼ阻害活性を実証する工程とを、包含する方法。
【請求項40】
前記試験キナーゼおよび前記参照キナーゼが不活性化されている、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記試験キナーゼが全長キナーゼである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記試験キナーゼが、触媒ドメインを含む全長キナーゼのトランケート・フラグメントを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記試験キナーゼが低触媒活性を示す基底形態にある、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記試験キナーゼが活性化されている、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記試キナーゼが、生理学的活性状態に関連して部分的に活性化されている、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記工程(c)が、前記アロステリック結合部位の位相幾何学的性質および電子的性質に基づいて足場を設計する工程を包含する、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
前記足場に基づいて前記化合物の混合物は、タンパク質キナーゼ・リガンドの質量コード化ライブラリーからなる、請求項39に記載の方法。
【請求項48】
前記工程(e)は、
(e1)前記試験キナーゼを前記質量コード化ライブラリーとインキュベートして、前記ライブラリーのリガンドを前記試験キナーゼに結合させる工程と、
(e2)キナーゼ結合リガンドを未結合リガンドから分離する工程と、
(e3)前記結合リガンドから前記キナーゼを分離する工程と、
(e4)質量分析計によって結合化合物を同定する工程と、
を包含する、請求項39に記載の方法。
【請求項49】
インヒビターを設計する方法であって、
(a)試験キナーゼと三次元構造が知られている参照キナーゼとを比較する工程と、
(b)アロステリック結合部位を同定する工程と、
(c)前記アロステリック結合部位を標的にする足場を設計する工程と、
(d)前記足場に基づいて化合物の混合物を提供する工程と、を包含する方法。
【請求項50】
(e)前記キナーゼに対する親和性スクリーンによりアロステリック部位に対するリガンドを同定する工程を、さらに包含する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
(f)キナーゼ阻害活性を実証する工程をさらに包含する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
試験キナーゼのインヒビターを設計する方法であって、
(a)前記試験キナーゼ内にDFGモチーフを配置するために参照キナーゼの三次元構造を用いる工程と、
(b)前記DFG外側立体配置内で前記DFGモチーフによって前記試験キナーゼ中に形成されるアロステリック結合部位を同定する工程であって、前記アロステリック結合部位が前記ATP結合部位および活性化ループから空間的に区別可能となる工程と、
(c)前記アロステリック結合部位に基づいて足場を設計する工程と、
(d)前記足場に基づいて化合物の混合物を提供する工程と、
(e)キナーゼ結合剤について、前記化合物の混合物のスクリーニングをおこなう工程と、
(f)非バインダーからキナーゼ結合剤を分離する工程と、
(g)質量分析計によってキナーゼ結合剤を同定する工程と、
(h)前記キナーゼに前記バインダーが結合するのを可能にするのに十分な条件および時間で、必要に応じて前記キナーゼと前記バインダーとを接触させる工程と、
(e)前記キナーゼが前記結合剤によって非機能性または劣機能性が与えられることを実証する工程であって、それにより試験キナーゼのインヒビターを同定する工程とを包含する方法。
【請求項53】
試験キナーゼのインヒビターを設計する方法であって、
(a)前記試験キナーゼ内にDFGモチーフを配置するために参照キナーゼの三次元構造を用いる工程と、
(b)前記DFG外側立体配置にあるDGFモチーフによって形成されたアロステリック結合部位を同定する工程であって、前記アロステリック結合部位がATP結合部位および活性化ループから空間的に異なる工程と、
(c)前記アロステリック結合部位に基づいて足場を設計する工程と、
(d)前記足場に基づいて化合物の混合物を合成する工程と、
(e)前記キナーゼに対する前記化合物の混合物の親和性スクリーンによって、前記アロステリック結合部位に対するリガンドを同定する工程と、
(f)キナーゼ阻害活性を実証する工程とを包含する方法。
【請求項54】
前記試験キナーゼが非活性化されている、請求項41、42、49、52、または53に記載の方法。
【請求項55】
前記参照キナーゼがプロテイン・データ・バンク識別子1kv1鎖aおよび1kv2鎖aを持つキナーゼからなる群から選択される、請求項39、49、52、または53に記載の方法。
【請求項56】
前記参照キナーゼがプロテイン・データ・バンク識別子1iep鎖a、1iep鎖b、1fpu鎖a、および1fpu鎖bを持つキナーゼからなる群から選択される、請求項39、49、52、または53に記載の方法。
【請求項57】
前記参照キナーゼがプロテイン・データ・バンク識別子1irkを持つ、請求項39、49、52、または53に記載の方法。
【請求項58】
前記参照キナーゼがプロテイン・データ・バンク識別子1g3n鎖aおよび1g3n鎖bを持つキナーゼからなる群から選択される、請求項39、49、52、または53に記載の方法。
【請求項59】
前記アロステリック結合部位が前記ATP結合部位および前記活性化ループから空間的に異なる、請求項39、49、または52に記載の方法。
【請求項60】
前記試験キナーゼがp38MAPキナーゼである、請求項13,23、39、49、52、または53に記載の方法。
【請求項61】
前記試験キナーゼがc−ab1である、請求項13、23、39、49、52、または53に記載の方法。
【請求項62】
試験キナーゼのインヒビターを同定する方法であって、
(a)前記試験キナーゼ上でATP結合部位に物理的結合なしで、前記試験キナーゼと結合する試験化合物を提供する工程であって、前記試験キナーゼのDFGモチーフがDFG外側位置にある場合に存在するアロステリック結合部位に前記試験化合物が結合する工程と、
(b)前記試験キナーゼ上の前記ATP結合部位にATPが結合できるかどうかを決定し、前記試験キナーゼのアロステリック部位への前記試験化合物の結合によって、前記試験キナーゼへのATPの結合を間接的に干渉することにより、前記試験化合物をキナーゼインヒビターとして、同定する工程と、
(c)必要に応じて、前記試験キナーゼに結合した前記インヒビターの存在または非存在下でキナーゼ・アッセイを実施する工程であって、前記試験化合物が存在しない場合のキナーゼ活性と比較した前記試験化合物の存在下でのキナーゼ活性の減少は、試験化合物が試験キナーゼのインヒビターであることをさらに確証する工程とを包含する方法。
【請求項63】
試験キナーゼのインヒビターを同定する方法であって、
(a) 前記試験キナーゼ上でATP結合部位に物理的結合なしで、前記試験キナーゼと結合する試験化合物を提供する工程と、
(b)前記試験キナーゼ上のATP結合部位にATPが結合できるかどうかを決定する工程とを包含し、
前記試験キナーゼへの前記試験化合物の結合によって、前記試験キナーゼへのATPの結合を干渉することにより試験キナーゼのインヒビターを同定し、前記試験化合物がDFG外側位置において前記試験キナーゼのDFGモチーフを限定する方法。
【請求項64】
ATP結合部位および活性化ループから空間的に区別可能なアロステリック結合部位を同定する方法であって、
(a)試験キナーゼと三次元構造が知られている参照キナーゼとを比較する工程と、
(b)DFGモチーフを、前記参照キナーゼ内におけるその位置に基づいて、前記試験キナーゼに位置決めする工程と、
(c)アルファ・へリックスC内のアルファ炭素残基とフェニルアラニンの非骨格重原子、前記試験キナーゼの前記DFGモチーフのロイシンまたはトリプトファンとの間の最短距離を測定する工程であって、11Åを越えて20Å未満である距離は、前記試験キナーゼの前記DFGモチーフが前記DFG外側立体配置にあることを特徴づける工程と、
(d)参照キナーゼのアミノ酸XないしYに類似した前記試験キナーゼ内にアミノ酸を位置決めすることで、前記DFG外側立体配置にある前記DFGモチーフによって形成された凹状ポケットを部分的に形成するアミノ酸を同定する工程であって、前記凹状ポケットの位置決めが前記アロステリック結合部位を同定する工程とを有する方法。
【請求項65】
試験キナーゼのインヒビターに関して、ATP結合部位および活性化ループから空間的に異なってるアロステリック結合部位を同定する方法であって、
(a)前記試験キナーゼの三次構造と三次構造が知られているキナーゼの三次構造とを比較することで、前記試験キナーゼ内のDFGモチーフを位置決めする工程と、
(b)前記DFGモチーフがDFG外側位置にある場合に、前記アロステリック部位に試験化合物を結合させる工程と、
(c)前記試験化合物が前記試験キナーゼの活性を阻害するかどうかを決定する工程と、
(d)前記DFGモチーフがDGF外側立体配置にある場合に形成されたアロステリック部位で前記試験化合物が前記試験キナーゼに結合するかどうかを決定する工程とを包含し、
前記DFGモチーフが前記DFG外側位置に限定されるような前記試験化合物の結合が、前記試験キナーゼの前記アロステリック結合部位を同定する方法。
【請求項66】
前記DFGモチーフの位置決めは、多数の配列アラインメントを含む、請求項33、52、53、64、または65のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
前記試験化合物が前記試験キナーゼの活性を阻害するかどうかを決定する工程が、キナーゼアッセイを包含する、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記DFGモチーフがDFG外側立体配置である場合、前記試験化合物が形成されるアロステリック部位で前記試験化合物が前記試験キナーゼに結合するかどうかを決定する工程が、前記試験化合物を標識する工程を包含する、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記DFGモチーフが前記DFG外側立体配置にある場合に形成されたアロステリック結合部位で前記試験化合物の前記試験キナーゼに結合するかどうかを決定する工程が、前記キナーゼに結合した前記試験化合物のX線結晶を生成および分析する工程を包含する、請求項65に記載の方法。
【請求項70】
請求項13、23、39、49、52、53、62または63に記載の方法のインヒビター。
【請求項71】
前記インヒビターがp38MAPK、c−ab1、またはインシュリン受容体キナーゼのインヒビターではない、請求項70のインヒビター。
【請求項72】
前記インヒビターがp38MAPKを阻害する、請求項70のインヒビター。
【請求項73】
前記インヒビターがc−ablを阻害する、請求項70のインヒビター。
【請求項74】
前記インヒビターがインシュリン受容体キナーゼを阻害する、請求項70のインヒビター。
【請求項75】
請求項63または64のインヒビターを含む医薬組成物。
【請求項76】
請求項70のインヒビターのうちのいずれか1つを備えるキット。
【請求項77】
被検体でのキナーゼ活性を阻害する方法であって、前記被検体に対して、請求項70のインヒビターを含む化合物を投与する工程を含む方法。
【請求項78】
前記被検体が哺乳類である、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記哺乳類がヒトである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
被検体でのキナーゼ媒介疾患または疾患症状を処置する方法であって、請求項70のインヒビターを含む化合物の前記被検体への投与を包含する方法。
【請求項81】
前記被検体が哺乳類である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記被検体がヒトである、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
被検体の疾患または疾患症状を処置する方法であって、請求項70のインヒビターを含む化合物を前記被検体に投与する工程を含む方法。
【請求項84】
前記被検体が哺乳類である、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記被検体がヒトである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
医薬的に有用な組成物を製造する方法であって、請求項70のインヒビターを、1種類以上の医薬的に許容される担体と組み合わせる工程を包含する方法。
【請求項87】
さらなる治療薬を組み合わせることをさらに包含する、請求項70のインヒビター。
【請求項88】
請求項13、23、39、42、44、49、52、または53に記載の方法であって、
前記DFG外側位置にある前記DFGは、凹状ポケットの形成を誘導し、前記凹状ポケットの表面は、アミノ酸XないしYによって部分的に形成され、ここでXは、前記凹状ポケットを部分的に形成する隣接アミノ酸配列にある第1のアミノ酸であり、Yは前記隣接アミノ酸配列の最後のアミノ酸である方法。
【請求項89】
アミノ酸XないしYがPDB受託コード1kv2であるタンパク質のLeu104ないしAla111からなる、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
アミノ酸XないしYが、配列アラインメント分析によって決定されるように、PDB受託コードが1kv2であるタンパク質の、Leu104ないしAla111に対して相同なアミノ酸からなる、請求項88に記載の方法。

【公表番号】特表2006−523307(P2006−523307A)
【公表日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507471(P2006−507471)
【出願日】平成16年3月22日(2004.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/008805
【国際公開番号】WO2004/085618
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】