説明

標的分子の改変および組織化のための多価キレーター

【課題】式:X−G−Clの新規の化合物、それらの生成のための方法を提供。
【解決手段】これらは、金属−キレーター錯体に結合するアフィニティータグを有する多価キレーター化合物を構成し、これらの化合物は、多数のプローブまたは官能性のユニットによって標的分子を選択的に、改変し得そして/または固定化し得る。Gは、足場構造であり、Xは、プローブFまたは官能性のユニットFに対するカップリング基であり、CLは、少なくとも1つの金属配位中心を有するキレーター基であり、mは、整数でありかつ少なくとも1であり、そしてnは、整数でありかつ少なくとも2である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の説明)
本発明は、多価キレーター(multivalent chelator)化合物、多価キレーター化合物の生成のための方法、ならびに金属−キレーター錯体に結合するアフィニティータグを有する標的分子の改変および/または固定化のための多価キレーター化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
分光学的もしくは微視的なプローブまたは(生)化学的な官能性のユニットを用いた、組換えタンパク質の選択的な非共有結合性の改変は、プロテオーム分析および生物工学用途に関する中心的な課題である。原理において、このような改変は、いわゆるアフィニティータグ(すなわち、遺伝子工学によってタンパク質中に導入される短いペプチド配列)の手段による部分的な特異性を用いて実現される。これらのアフィニティータグは、(生)化学的な認識単位によって特異的に認識される。精製のためには、数種のアフィニティータグが非常に首尾よく利用されたが、溶液中かつ表面への、分光学的もしくは微視的なプローブおよび他の生化学的な官能性のユニットの結合のためのアフィニティータグの使用は、その錯体が十分な安定性を示さないので、多くの場合、批判的である。
【0003】
1970年代半ば以来、キレーターイミノ二酢酸(IDA)は、既に、タンパク質を精製するために、数種の金属イオンと組み合わせて使用されている(非特許文献1)。
【0004】
1980年代半ばにおいて、ニトリロ三酢酸(NTA)は、タンパク質を精製するためのキレーターとして記載された(特許文献1、特許文献2)。さらに、(累積した)ヒスチジンタグは、組換えタンパク質の一般的な精製のために記載された(非特許文献2;特許文献3、特許文献4を参照のこと)。現在、圧倒的に最も一般的に使用されるアフィニティータグは、ヒスチジンタグによるものであり、そしてキレーターに結合した金属イオンとの相互作用に依存する最も多様なマトリックスおよび検出技術が、記載されている(非特許文献3)。それにもかかわらず、個々のNi−NTA−オリゴヒスチジン相互作用の結合親和性は、安定でありかつ化学量論的に定義された結合のためには低すぎる。部分的に安定な結合は、親和性マトリックス、または平面における高密度のNTA基によって達成され得る(例えば、非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7を参照のこと)。それにもかかわらず、多くの用途(特に、溶液またはインビボ(例えば、生細胞)におけるタンパク質の操作)のために、分子レベルにおける高い結合安定性が必要とされる。
【0005】
第1に、アフィニティータグと金属キレーターとの間の結合を改良するために、このアフィニティータグを操作することは、1つの可能性である。したがって、一方では、一般的な6個のヒスチジン残基の代わりに10個のヒスチジン残基を使用する伸長されたヒスチジンタグが、例えば、Guigetらによって記載される(非特許文献8)。それにもかかわらず、この様式において、化学量論的に定義てもいないし、安定でもない錯体しか得ることができない。他方では、2つのヒスチジンタグを有し、したがってNi−NTA−チップの表面に、より安定に結合するタンパク質およびタンパク質錯体が、記載されている(非特許文献9)。それにもかかわらず、全てのタンパク質に対して、その生物学的機能に大きく影響することなく、末端に1つより多いアフィニティータグが提供され得るとは限らない。
【0006】
結合を上昇させるための他の可能性は、キレーター基自体を改良することからなる。したがって、特許文献5(および非特許文献10)においてEbrightおよびEbrightは、例えば、フルオロフォアのような検出可能な基によるタンパク質のインサイチュにおける標識のための、二価キレーター錯体を記載している。これらの錯体は、一価の錯体と比較して、Hisタグに対する改良された親和性を示す。それにもかかわらず、この2つのキレーター基(NTA)は、検出可能な基に直接結合され、このことがこの2つのキレーター基を広範な合成には利用しづらくしている。むしろ、それらの生成についての可能性は、常に、選択された検出可能な基の、合成に対する適合性に依存する。
他の二官能性のカルボキシメチル置換キレーターが、Klineらによって記載される(非特許文献11)。これらのキレーターは、標的タンパク質に共有結合し得、そして触媒活性を有する金属錯体を用いた標識のために開発された。
標的タンパク質の安定かつ選択的な標識または改変が、Griffinらによって記載される(非特許文献12)。4個のシステインを含む組換えタンパク質中の特定のモチーフ(Cys−Cys−Xaa−Xaa−Cys−Cys)を特異的に認識する二ヒ素錯体(bi−arsenic−complex)が、開示される。この二ヒ素錯体は、フルオロフォアのような検出可能な基を含み得、それによって標的タンパク質を改変するか、または標識する。この技術はまた、特許文献6においてTsienらによって記載され、そして特許文献7においてEbrightおよびEbrightによって記載される。それにもかかわらず、これらの二ヒ素錯体の使用は、それぞれの二ヒ素誘導体の困難な合成、ならびに特定のフルオロフォアおよび発色団のみが可能であるという事実によって制限される。さらに、必要とされるような、システインが豊富なアフィニティータグまたはモチーフは、遊離のチオール基の高い反応性に起因して、多くの使用に関して不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0253303B1号明細書
【特許文献2】米国特許第4,877,830号明細書
【特許文献3】欧州特許第0282042B1号明細書
【特許文献4】米国特許第5,284,933号明細書
【特許文献5】国際公開第03/091689号パンフレット
【特許文献6】米国特許第6,008,378号明細書
【特許文献7】国際公開第03/107010号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Porath J、Carlsson J、Olsson I、Belfrage G、「Metal chelate affinity chromatography,a new approach to protein fractionation」、Nature、1975年、第258巻、第5536号、p.598−9
【非特許文献2】Hochuli E、Dobel H、Schacher A、「New metal chelate adsorbent selective for proteins and peptides containing neighbouring histidine residues」、J Chromatogr、1987年、第411巻、p.177−84
【非特許文献3】Ueda EK、Gout PW、Morganti L、「Current and prospective applications of metal ion−protein binding」、J Chromatogr A、2003年、第988巻、第1号、p.1−23
【非特許文献4】Dorn I.T.、Pawlitschko K.、Pettinger S.C.、Tampe R.、「Orientation and two−dimensional organization of proteins at chelator lipid interfaces」、Biol Chem.、1998年、第379巻、第8号〜第9号、p.1151−9
【非特許文献5】Frenzel A、Bergemann C、Kohl G、Reinard T、「Novel purification system for 6xHis−tagged proteins by magnetic affinity separation」、J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.、2003年、第793巻、第2号、p.325−9
【非特許文献6】Paborsky LR、Dunn KE、Gibbs CS、Dougherty JP、「A nickel chelate microtiter plate assay for six histidine−containing proteins」、Anal Biochem.、1996年、第234巻、第1号、p.60−5
【非特許文献7】Lauer SA、Nolan JP、「Development and characterization of Ni−NTA−bearing microspheres」、Cytometry、2002年、第48巻、第3号、p.136−45
【非特許文献8】Guignet EG、Hovius R、Vogel H、「Reversible site−selective labeling of membrane proteins in live cells」、Nat Biotechnol.、2004年、第22巻、第4号、p.440−4
【非特許文献9】Nieba L、Nieba−Axmann SE、Persson A、Hamalainen M、Edebratt F、Hansson A、Lidholm J、Magnusson K、Karlsson AF、Plueckthun A、「BIACORE analysis of histidine−tagged proteins using a chelating NTA sensor chip」、Anal Biochem.、1997年、第252巻、第2号、p.217−28
【非特許文献10】Kapanidis AN、Ebright YW、Ebright RH、「Site−specific incorporation of fluorescent probes into protein:hexahistidine−tag−mediated fluorescent labeling with(Ni(2+):nitrilotriacetic Acid(n)−fluorochrome conjugates」、J Am Chem Soc.、2001年、第123巻、第48号、p.12123−5
【非特許文献11】Kline SJ、Betebenner DA、Johnson DK、「Carboxymethyl−substituted bifunctional chelators:preparation of aryl isothiocyanate derivatives of 3−(carboxymethyl)−3−azapentanedioic acid、3,12−to(carboxymethyl)−6,9−dioxa−3,12−diazatetradecanedioic acid、and 1,4,7,10−tetraazacyclododecane−N,N’,N’’,N’’’−tetraacetic acid for use as protein labels」、Bioconjug Chem.、1991年、第2巻、第1号、p.26−31
【非特許文献12】Griffin BA、Adams SR、Tsien RY、「Specific covalent labeling of recombinant protein molecules inside live cells」、Science、1998年、第281巻、第5374号、p.269−72
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、当該分野において公知であり、そして広く使用されるアフィニティータグ(例えば、オリゴヒスチジンタグ)に結合するための多価キレーターを提供することであり、この多価キレーターは、化学量論的で、安定したアフィニティータグとの相互作用を示し、そして転換可能かつ可逆的に標的分子と相互作用する。これによって、標的分子は、一般的に、多数のプローブおよび他の生化学的に官能性のユニットを用いて、選択的かつ位置特異的な様式で改変され得る。さらに、この多価キレーターは、制御されかつ普遍的な、多数のプローブおよび他の生化学的に官能性のユニットとの結合体化のような方法で、合成的に利用しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従って、この目的は、一般式:
−G−CL
の化合物であって、ここで:
Gは、足場構造であり;
Xは、プローブFまたは官能性のユニットFに対するカップリング基であり;
CLは、少なくとも1つの金属配位中心を有するキレーター基であり;
mは、整数でありかつ少なくとも1であり;そして
nは、整数でありかつ少なくとも2である、
化合物、ならびにその互変異生体、異性体、無水物、酸および塩を提供することによって解決される。
【0011】
好ましい実施形態において、足場構造Gは、2個〜25個の炭素原子、好ましくは2個〜20個の炭素原子、およびさらに好ましくは5個〜16個の炭素原子を有する飽和炭水化物鎖を含む。さらに、上記足場構造は、アミド結合、エステル結合および/またはエーテル結合を含む。
【0012】
上記足場構造は、直鎖状であっても、分枝状であっても、閉じていてもよい。好ましい閉じた足場構造は、サイクラム環(cyclam ring)構造によって表される。好ましい足場構造は、アミノ酸エレメントを含む。
【0013】
好ましい実施形態において、少なくとも1種の金属イオンが、本発明に従う化合物のキレーター基の各々に結合される。それに関して、上記金属イオンは、Ni2+、Co2+、Cu2+、Zn2+、Fe2+、Fe3+、および全てのランタニドイオンからなる群より選択される。
【0014】
上記キレーター基は、好ましくは、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノ二酢酸(IDA)、ポルフィリン系の全ての改変体、サリチル酸誘導体、1,2−ジアミノエチル二酢酸、ジアミノエチル三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、およびそれらの塩または組み合わせ、ならびに当業者に公知である他のキレーター基からなる群より選択される。好ましい実施形態において、上記キレーター基の反応基は、保護基を有する。例えば、カルボキシル基(例えば、NTAのカルボキシル基)は、OtBu基によって保護され得る。当業者に公知である全ての一般的な保護基が、使用され得る。
【0015】
さらなる実施形態において、スペーサー基Aが、上記キレーター基と上記足場構造との間に配置される。上記スペーサー基Aは、直鎖状であっても、分枝状であってもよい。当業者に公知である通常のスペーサー基が、使用され得る。好ましいスペーサー基は、ポリ(エチレングリコール)、オリゴ(エチレングリコール)、ペプチド、nが1〜8である(CH、オリゴプロリンを含む。
【0016】
上記キレーター基は、アミド結合、エステル結合またはエーテル結合を介して上記足場構造に結合されることが、好ましい。
【0017】
本発明に従って、足場構造G自体は、プローブまたは別の検出可能な基でないことが、好ましい。好ましくは、Gは、上記キレーター基およびプローブまたは官能性のユニットが結合される構造である。
【0018】
好ましくは、本発明に従う化合物は、以下:
【0019】
【化4】

ならびにその互変異生体、異性体、無水物、酸および塩から選択される。
【0020】
好ましいカップリング基Xは、NHRからなる群より選択され、Rは、H、アルキル残基またはアリール残基、COOH、nが整数である(CH−COOH、SH、マレイミド(maleinimide)、ヨードアセトアミド、イソチオシアネートまたはシアネ−トである。
【0021】
好ましい実施形態において、プローブFまたは官能性のユニットFは、本発明に従う化合物のカップリング基Xにおいて結合される。上記プローブFまたは官能性のユニットFは、好ましくは、フルオロフォア、FRET−フルオロフォア、蛍光消光剤、リン光化合物、発光化合物、吸収性化合物(absorbing compound)、ポリマー、PEG、オリゴ糖類、オリゴヌクレオチド、PNA、ビオチン、ハプテン、ペプチド、タンパク質、酵素、架橋剤、オリゴ(エチレングリコール)、脂質、ナノ粒子、電子密度増幅因子、金クラスター、金属クラスター、量子ドット、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0022】
プローブとして適切であるフルオロフォアおよび発色団の例は、Haughland R.P.、1996、Handbook of Fluorescent Probes
and Research Chemicals、Molecular Probes、第6版(Spence,MTZ編)に見出され得る。
【0023】
好ましくは、本発明に従う化合物は、以下:
【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

ならびにその互変異生体、異性体、無水物、酸および塩から選択され、(A)は、ビス−NTAであり、(B)および(C)は、トリス−NTAであり、そして(D)は、テトラキス−NTAである(図1も参照のこと)。
【0026】
一般的に、上記多価キレーターは、ニトリロ三酢酸(NTA)のような数個の(独立した)キレーター基(それでもなお、好ましくは2個〜4個)が分子足場(足場G)に結合し得る一方で、同時に、官能基(カップリング基X)がプローブFまたは官能性のユニットFにカップリングするために提供されるという点で特徴付けられ得る。プローブまたは官能性のユニットに対する結合の重要な必要条件は、キレーター基の官能基(例えば、NTAの場合における3つのカルボキシル基)に対するこのカップリング基Xの化学的な直交性である。図1に示されるような多価キレーターの場合において、これは、カルボキシル基における保護基によって達成された(図2を参照のこと)。ここで、さらなる官能基(X)における選択的カップリング反応は、上記キレーター基に影響することなく行われ得る。
【0027】
さらに、上記目的は、本発明に従う化合物を生成するための方法を提供することによって解決される。この方法は、上記足場構造の合成後か、または合成の間における、少なくとも2つのキレーター基のその足場構造に対するカップリングを包含し、上記キレーター基は、適切な様式で保護され得る。本発明に従う方法の間、上記カップリング基Xはまた、適切に保護され得る。
【0028】
本発明に従う上記足場構造の合成は、1種または数種の出発化合物(特に、アミノ酸(例えば、リジン)、オルニチン、1,3−ジアミノ酪酸、1,2−ジアミノプロピオン酸、グルタメートもしくはアスパルテートおよび/またはそれらの保護された誘導体(例えば、Z−Lys−OtBu、H−Glu(OtBu)−OBzl、Z−Glu−OH))からの足場構造の合成を包含する。
【0029】
さらに好ましい出発化合物は、ブロモ酢酸−tert−ブチルエステル、BOC−ε−アミノカプロン酸および大環状ポリアミン(例えば、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン)である。
【0030】
好ましい中間体は、Nα,Nα−ビス[(tert−ブチルオキシカルボニル)メチル]−L−リジン−tert−ブチルエステル(「Lys−NTA−OtBu」、図25の化合物3)である。
【0031】
本発明に従う生成のための方法は、好ましくは、第1に上記足場構造の合成を包含する。次いで、上記キレーター基は、その足場構造とカップリングする。したがって、上記キレーター基は、適切な保護基を有し得る。したがって、上記足場構造は、好ましくは、環状足場構造(例えば、サイクラム環構造)である。
【0032】
本発明に従う生成のための方法は、上記足場構造が保護アミノ酸またはアミノ酸から誘導される化合物から構成され得ることを含む。このことのために、既に上記足場構造の合成の間に、保護キレーター基が含まれることが好ましい。上記足場構造のための出発化合物は、当業者に公知であるペプチド合成の代表的な出発産物を構成し得る。このことのために、好ましい足場構造は、直鎖状であるか、または分枝状(すなわち、デンドリマー状(dendrimeric))である。
【0033】
カルボキシル官能化された足場構造が、アミノ官能化された保護キレーター基によって改変されるか、またはアミノ官能化された足場構造が、カルボキシル官能化された保護キレーター基によって改変されることが、好ましい。
【0034】
スキームIにおいて、好ましい合成経路の概略図が、見出され得る。(A)において、アミノ官能化された保護キレーターエレメントによってカルボキシルベースの足場が、改変される(図3Aも参照のこと)。上記保護された官能基(カップリング基)X−Pは、選択的(I)か、または上記キレーター基と一緒(II)に脱保護され、次いでプローブFまたは官能性のユニットFとカップリングされ得る。(B)は、カルボキシル官能化された保護キレーターエレメントによって改変されるアミノ官能化された足場についての類似する合成経路を示す(図3Bも参照のこと)。次に、中間体1または2が、合成の第1工程においてキレーターエレメントとして使用され得る(実施例9も参照のこと)。
【0035】
(スキームI)
【0036】
【化7】

ここで:
Xは、カップリング基であり;
Pは、保護基であり;
Fは、プローブまたは官能性のユニットであり;そして
CLは、キレーター基である。
【0037】
2個、3個および4個の金属配位中心を有する多価キレーターが、デンドリマー状の足場および環状の足場(すなわち、化学的な基本足場)に基づいて合成された(図1および実施例を参照のこと)。
【0038】
ビス−NTA−OtBu、テトラキス−NTA−OtBuおよびビス−NTA−脂質の生成のために、実施例9および図25に示されるような合成の工程が、好ましい。
【0039】
トリス−NTA−OtBuおよび異なるフルオロフォア(特に、フルオロフォアOregon Green 488、ATTO 565、FEW−S0387(これについては、図14も参照のこと)を含む)を有するそれらの誘導体の生成のために、実施例9および図26に示されるような合成の工程が、好ましい。
【0040】
さらに、上記目的は、アフィニティータグが金属−キレーター錯体に結合する、標的分子上のアフィニティータグに結合するための本発明に従う化合物の使用によって解決される。
【0041】
好ましくは、上記アフィニティータグは、4個と15個との間のアミノ酸を含むペプチドタグである。この4個〜15個のアミノ酸の場合において、これらは、好ましくは4個〜15個のヒスチジンである。さらに、0個〜4個の塩基性アミノ酸(例えば、リジンおよびアルギニン)が、上記ペプチドタグに含まれ得る。
【0042】
好ましいアフィニティータグは、(His)タグであり、nは、4と15との間の整数である。
【0043】
好ましい標的分子は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ならびにペプチド模倣物(mimetic)およびタンパク質模倣物、ならびにペプチド改変ポリマーもしくはペプチド改変デンドリマーを含む。これに関して、タンパク質またはペプチドによって、翻訳後に修飾されたタンパク質またはペプチドがまた、認識される。ペプチド模倣物およびタンパク質模倣物は、ペプチドまたはタンパク質のような類似する側鎖官能性を含むが、骨格の組成においてペプチドまたはタンパク質と異なる化合物を含む。上記骨格の可能なバリエーションは、骨格原子の改変(骨格模倣物)、二環式ジペプチドアナログの導入、および非オリゴマー鎖構造中の官能基の配置(足場模倣物)を含む。例えば、オリゴ−N−アルキルグリシン(ペプトイド(peptoid))は、骨格模倣物に属し、これは、側鎖の結合点においてペプチドまたはタンパク質と異なる(Cαの代わりにNである)。
【0044】
好ましくは、本発明に従う化合物は、改変、固定化、カップリング、精製、検出、モニタリング、分析、またはインビトロ、インビボ、インサイチュ、固定細胞および生細胞もしくは脂質小胞における標的分子の検出のために使用され得る。
【0045】
本発明に従う化合物のさらに好ましい使用は、標的分子(特に、タンパク質)の上記分子の官能性のユニットとの、制御されかつ可逆的な二量化またはオリゴマー化である。
【0046】
本発明に従う化合物は、当該分野において公知である多くのインビトロアッセイおよびインビボアッセイにおいて使用され得る。好ましいアッセイ法は、分光学的方法(例えば、吸収分光法、蛍光分光法、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、蛍光相関分光法(FCS)、蛍光退色(fluorescence−bleaching)(フォトブリーチング後の蛍光回復(fluorescence recovery after photobleaching)、FRAP)、反射率測定干渉分光法(reflectometric interference−spectroscopy)(RIfS)、表面プラスモン分光法(表面プラズモン共鳴)/BIACORE、光走査カップリング(optical scanning coupling)、水晶発振子マイクロバランス(quartz−micro balance)、弾性表面波(SAW)、x/y−蛍光スキャニング(fluorescence−scanning)(FluorImaging))、および顕微鏡的方法(例えば、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、反射顕微鏡、コントラスト増強顕微鏡(contrast enhancing microscopy)、電子顕微鏡、走査型プローブ顕微鏡)を含むが、他の方法(例えば、磁気共鳴法、顕微鏡による断層撮影(microscopy and tomography)、インピーダンス分光法、電界効果トランジスタ、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、蛍光標示式の細胞または粒子の分取(FACS)、放射性免疫測定法(RIA)、オートラジオグラフィー、分析用ゲル濾過、ストップトフロー技術、熱量測定、ハイスループットスクリーニング(HTS)、アレイ技術およびチップ技術(例えば、プロテインアレイ))も含む。
【0047】
標的分子の固定化のための本発明に従う化合物の使用が、さらに好ましい。
【0048】
このことのために、本発明の化合物は、表面上に結合されることもできるし、脂質単一層または脂質二重層中に含まれることもできる。したがって、上記表面は、好ましくは、ガラス型表面(例えば、メタロイド酸化物、金属酸化物および全てのガラス型/ガラス、金、銀、DAPEGで改変したガラス、PEGポリマーで改変したガラスもしくはPEGポリマーで改変した金、GOPTSでシラン処理したガラス、脂質単一層もしくは脂質二重層、セレン化金属、テルル化金属、および硫化金属を備えるガラス型表面ならびに貴金属表面から選択される。
【0049】
ガラス表面によって、ガラス型表面が、ガラスに加えて、水晶、雲母、金属酸化物、メタロイド酸化物もまた含むことが理解されるべきである。
【0050】
貴金属表面上に自己組織化単分子膜(SAM)を生成するための本発明に従う使用が、好ましい。SAMは、好ましくは、表面プラスモン分光法、インピーダンス分光法、走査型プローブ顕微鏡および水晶発振子マイクロバランスに基づく方法において使用される。
【0051】
さらに、本発明の化合物は、官能性のマイクロ構造表面および官能性のナノ構造表面の生産ならびに/またはプロテインアレイの生産のために使用され得る。
【0052】
多価キレーター(MCH)を介するいくつかの規模によってタンパク質とキレーターとの結合の安定性を増加させるために、過剰量のオリゴヒスチジンタグを使用することが、本発明の基本的な概念である。
【0053】
金属−キレーター錯体に対するオリゴヒスチジンタグの結合は、一般的に、キレーターによって錯体化され、それによって一部、配位的に飽和されるNi2+における空いている(free)配位位置に対するオリゴヒスチジンタグのイミダゾール残基のN原子の配位結合によって起こる。Ni−NTA錯体の場合において、Ni2+の全部で6個の配位位置のうちの4個は、2個のヒスチジン残基の結合に対する2個の空いている配位位置が残るように、NTAによって飽和される(図4A)。したがって、この錯体形成は、以下の2つの工程を必要とする(図4B):(1)(例えば、Ni2+のような)金属イオンの結合によるキレーターの活性化、および(2)空いている配位位置に対するオリゴヒスチジンタグのヒスチジン残基の結合。過度な遊離のイミダゾールの添加によって、Ni(II)−キレーター錯体に対するオリゴヒスチジンタグの結合は、タンパク質とキレーターとの結合が可逆的であり、そして転換可能であるように無効にされ得る。さらに、上記キレーターは、EDTAを使用してキレート錯体からNi2+の除去することによって非活性化され得る(図4B)。
【0054】
2個だけのヒスチジン残基による金属キレート錯体に対する上記オリゴヒスチジンタグの結合は、比較的不安定である(実施例4および実施例8を参照のこと)。金属キレーターが高密度で固定化される場合、上記オリゴヒスチジンタグの数個のヒスチジン残基は、数個の金属−キレートユニットに対して同時に結合して、より強い結合を生じ得る(図5B)。1分子中に数個の金属−キレートユニットを含む多価キレーターの使用によって、分子レベルでのオリゴヒスチジンタグに対する安定な結合が、達成され得る。上記キレーターに対するさらなる官能性のユニットのカップリングによって、オリゴヒスチジンタグを含むタンパク質は、安定であるが、可逆的かつ転換可能に改変され得る(図5C)。
【0055】
以下の図面および実施例において記載される実験は、多価キレーター化合物がアフィニティータグ(例えば、ヒスチジンタグ)に対する、化学的な、高い親和性(highly−affine)の転換可能な認識構造を表すことを示す。したがって、それらは、伝統的なキレーターの改良を表すだけでなく、主に、使用の新規の領域を公開する。それらは、ほとんどの任意の化合物と連関され得るので、これらのキレーターに関して、ほとんどの任意の種類の分光学的もしくは微視的なプローブまたは官能性のユニットが、位置特異的かつ可逆的に、標的分子(例えば、組換えタンパク質)に結合し得る。また、例えば、オリゴ糖類、PEGまたは他の生物学的な官能性のユニットは、このような方法で標的分子を改変するために、標的分子に可逆的に対して結合され得る。次に、MCHはまた、分子足場上に配置され得、そしてこのような方法によって、例えば、タンパク質のような標的分子を二量体構造または多量体構造で立体的に組織化する。再びここで、可変性の転換性能(switchability)は、中心的な特徴である。さらなる可能性は、オリゴヌクレオチドまたはPNAとのカップリングから生じる。したがって、DNAマイクロアレイの多重化の実現性は、プロテインアレイの生産のために使用され得る。
以下の略語が、使用される:
AU:吸光度単位
Boc:tert−ブチルオキシカルボニル(保護基)
Bzl:ベンジル(保護基)
DAPEG:α,ω−ジアミノポリ(エチレングリコール)
DIC:ジイソプロピルカルボジイミド
DMF:ジメチルホルムアミド
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
FL:フルオレセイン
FRET:蛍光共鳴エネルギー転移
Glu:グルタミン酸
GOPTS:グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン
H10:デカ−ヒスチジン
H6:ヘキサ−ヒスチジン
IDA:イミノ二酢酸
Ifnar2:1型インターフェロンレセプター2の細胞外ドメイン
IFNα2、IFNβ:I型インターフェロンα2およびI型インターフェロンβ
MBP:マルトース結合タンパク質
MCH:多価キレーター
NTA:ニトリロ三酢酸
OG:Oregon Green 488(登録商標)
PEG:ポリ(エチレングリコール)
PNA:ペプチド核酸
RIfS:反射率測定干渉分光法
RT:室温
SAM:自己組織化単分子膜
TBTU:O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート
tBu:三級ブチル(保護基)
TEA:トリエチルアミン
TFA:トリフルオロ酢酸
Z:ベンジルオキシカルボニル(保護基)
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
一般式:
−G−CL
の化合物、ならびにその互変異生体、異性体、無水物、酸および塩であって、ここで:
Gは、2個〜20個の炭素原子を有する飽和炭水化物鎖を含み、アミド結合、エステル結合および/またはエーテル結合をさらに含む足場構造であり;
Xは、プローブFまたは官能性のユニットFに対するカップリング基であり;
CLは、金属配位中心を有するキレーター基であり;
mは、整数であり、そして少なくとも1であり;そして
nは、整数であり、そして少なくとも2である、
化合物。
(項目2)
項目1に記載の化合物であって、該化合物は、金属イオンが、キレーター基の各々に結合されることによって特徴付けられる、化合物。
(項目3)
前記金属イオンが、Ni2+、Co2+、Cu2+、Zn2+、Fe2+、Fe3+、および全てのランタニドイオンからなる群より選択される、項目2に記載の化合物。
(項目4)
項目1〜3のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物は、前記キレーター基が、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノ二酢酸(IDA)、ポルフィリン系、サリチル酸誘導体、1,2−ジアミノエチル二酢酸、ジアミノエチル三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、およびそれらの塩または組み合わせからなる群より選択されることによって特徴付けられる、化合物。
(項目5)
前記キレーター基の反応基が、保護基を有する、項目1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
(項目6)
項目1〜5のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物は、スペーサー基Aが、CLとGとの間に配置されることによって特徴付けられる、化合物。
(項目7)
Aが、直鎖状であるか、または分枝状である、項目6に記載の化合物。
(項目8)
項目1〜7のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物は、前記キレーター基が、アミド結合、エステル結合またはエーテル結合を介してGに結合されることによって特徴付けられる、化合物。
(項目9)
項目1〜8のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物は、Gが、直鎖状であるか、分枝状であるか、または閉じられることによって特徴付けられる、化合物。
(項目10)
項目1〜9のいずれか1項に記載の化合物、ならびにその互変異生体、異性体、無水物、酸および塩であって、該化合物は、以下:
【化1】


から選択される、化合物。
(項目11)
項目1〜10のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物は、カップリング基Xが、NHRからなる群より選択されることによって特徴付けられ、Rは、H、アルキルもしくはアリール、COOH、nが整数である(CH−COOH、SH、マレイミド、アセトアミド、イソチオシアネートまたはシアネートである、化合物。
(項目12)
項目1〜11のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物は、プローブFまたは官能性のユニットFが、カップリング基Xにおいて結合されることによって特徴付けられる、化合物。
(項目13)
項目12に記載の化合物であって、該化合物は、前記プローブFまたは官能性のユニットFが、フルオロフォア、FRET−フルオロフォア、蛍光消光剤、リン光化合物、発光化合物、吸収性化合物、ポリマー、PEG、オリゴ糖類、オリゴヌクレオチド、PNA、ビオチン、ハプテン、ペプチド、タンパク質、酵素、架橋剤、オリゴエチレングリコール、脂質、ナノ粒子、電子密度増幅因子、金クラスター、金属クラスター、量子ドット、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されることによって特徴付けられる、化合物。
(項目14)
項目1〜13のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物が、以下:
【化2】


【化3】


から選択される、化合物、ならびにその互変異生体、異性体、無水物、酸および塩。
(項目15)
項目1〜14のいずれか1項に記載の化合物を生成するための方法であって、該方法は、前記足場構造の合成後か、または合成の間において、少なくとも2つのキレーター基を該足場構造に対してカップリングする工程を包含する、方法。
(項目16)
項目15に記載の方法であって、該方法は、保護されたまたは保護されていないアミノ酸およびアミノ酸誘導体、Z−Lys−OtBu、H−Glu(OtBu)−OBzl、Z−Glu−OH、大環状ポリアミン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、ブロモ酢酸−OtBu、BOC−ε−アミノカプロン酸からなる群より選択される1種以上の出発化合物から足場構造を合成する工程を包含する、方法。
(項目17)
前記キレーター基が、保護されている、項目15または16に記載の方法。
(項目18)
標的分子におけるアフィニティータグへの結合のための項目1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用であって、該アフィニティータグは、金属−キレーター錯体に結合する、使用。
(項目19)
前記アフィニティータグは、4個〜15個のヒスチジンおよび0個〜4個の塩基性アミノ酸を含む4個〜15個のアミノ酸を含むペプチドタグである、項目18に記載の使用。
(項目20)
前記標的分子は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物もしくはタンパク質模倣物、またはペプチド改変ポリマーもしくはペプチド改変デンドリマーである、項目18または19に記載の使用。
(項目21)
改変、カップリング、オリゴマー化、検出、モニタリング、分析のため、またはインビトロ、インビボ、インサイチュ、生細胞もしくは脂質小胞における標的分子の検出のための、項目1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用。
(項目22)
標的分子の固定化のための、項目1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用。
(項目23)
項目22に記載の使用であって、該使用は、前記化合物が、表面結合または脂質単一層もしくは脂質二重層に含まれることによって特徴付けられる、使用。
(項目24)
前記表面は、ガラス型表面、金、銀、DAPEGで改変したガラス、PEGポリマーで改変したガラスもしくはPEGポリマーで改変した金、GOPTSでシラン処理したガラス、脂質単一層もしくは脂質二重層、セレン化金属、テルル化金属、および硫化金属を備えるガラス型表面および金表面から選択される、項目23に記載の使用。
(項目25)
自己組織化単分子膜(SAM)の生産のための、項目1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用。
(項目26)
官能性のマイクロ構造表面および官能性のナノ構造表面の生産ならびに/またはプロテインアレイの生産のための、項目1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用。
(項目27)
標的分子の精製のための、項目1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用。
(図面および実施例)
本発明は、添付の図面に関した以下の実施例によってさらに明らかにされるが、それにかかわらず、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、多価キレーター(MCH)の構造式および多価キレーターの主な組成を示す。それぞれ、NTA基は、薄い灰色で影付けされ、そしてカップリング基は、濃い灰色で影付けされる。
【図2】図2は、多価キレーターの組成を示す。(A)OtBu−保護NTA基を有するモノ−NTA(1)、ビス−NTA(2)およびトリス−NTA(3)。自由な官能基(カップリング基X)は、灰色で影付けされる。(B)PEGプローブに対するこの官能基のカップリングおよびNTA残基のカルボキシル基の脱保護の後の、(A)にあるものと同じキレーター。
【図3】図3は、特に、スキームIで使用されるような、好ましい保護されたアミノ官能化キレーターエレメント(X−CL−P)(A)、または好ましい保護されたカルボキシ官能化キレーターエレメント(X−CL−P)(B)を示す。
【図4】図4は、オリゴヒスチジンの金属−キレーター錯体との、転換可能な、可逆的な相互作用の原理を示す。(A)Ni(II)−NTA錯体の2個の自由な配位位置に対する2個のヒスチジン残基の配位。(B)金属イオンによるキレーターの活性化およびヒスチジンタグ化タンパク質に対する結合;競合剤(例えば、イミダゾール)による解離、および例えば、EDTAを使用したキレーターの非活性化。
【図5】図5は、多価キレーターの概念を示す。(A)固定化された金属キレーター(例えば、Ni:NTAのような)とヒスチジンタグ化タンパク質との、一時的な一価の相互作用。(B)2個以上の固定化された金属キレーター(例えば、親和性マトリックスのような)との安定な多価の相互作用。(C)多価キレーターによる官能性のユニットに対する安定なカップリング。
【図6】図6は、DAPEGで改変された表面に対するMCHのカップリングの略図を示す(実施例1を参照のこと)。
【図7】図7は、官能化ガラス表面に対するタンパク質の固定化を示す。(A)GOPTSでシラン処理されたガラス表面に対する、PEGポリマー層(PEG2000)を介するトリス−NTAの結合の略図。(B)Ni(II)イオンによるキレーターのロード前(破線)およびロード後(実線)におけるifnar2−H10の結合。
【図8】図8は、キレーターで改変された水晶表面上の固定化されたタンパク質の(RIfSによって検出された)官能性を示す。Ni(II)イオンによるキレーターのロード後におけるifnar2−H10の固定化および固定化されたifnar2−H10とそのリガンドIFNα2との相互作用についての結合曲線。
【図9】図9は、金表面上へのヒスチジンタグ化タンパク質の固定化を示す。(A)混合型の自己組織化単分子膜(SAM)の生成のために使用されるアルキルチオールの構造式。(B)Ni(II)イオンによる表面結合型キレーターのロード前(破線)およびロード後(実線)におけるifnar2−H6の結合(1)、IFNα2との相互作用(2)ならびに200mMのイミダゾール(3)および200mMのEDTA(4)による再生(表面プラスモン共鳴による検出)。
【図10】図10は、高濃度(30μM)のMBP−H10と異なるキレーターとの相互作用の比較を示す。(A)モノ−NTAに対する30μMのMBP−H10の会合および解離。(B)モノ−NTA、ビス−NTAおよびトリス−NTA(実線)について比較した解離。
【図11】図11は、イミダゾールの異なる濃度における、固定化されたMBP−H10の誘導された解離を示す。(A)イミダゾールの異なる濃度における、モノ−NTA表面のifnar2−H10の解離動態の比較、および結合モデルの適合。(B)モノ−NTA、ビス−NTA、およびトリス−NTAについて比較した、イミダゾールの濃度の関数としての平衡−ロードの依存性。
【図12】図12は、トリス−NTAに対するMBP−H6およびMBP−H10の結合の安定性の比較(A)を示す。(B)モノ−NTAに対するMBP−H10の結合の安定性と、トリス−NTAに対するMBP−H6の結合の安定性との比較。
【図13】図13は、キレーターで改変された表面に対するタンパク質の非特異的な結合を示す。(A)高い表面密度を有するモノ−NTAに対するifnar2−H10の固定化の前(破線)および後(実線)におけるIFNβの結合。(B)IFNβ低い表面密度を有するトリス−NTAに対するIFNβの結合(実線)、MBP−H10を用いた表面のブロッキング後のIFNβの結合(破線)、およびifnar2−H10を固定化し、次いでMBP−H10によってブロッキングした後のIFNβの結合(実線)。
【図14】図14は、トリス−NTAによる溶液中のヒスチジンタグのブロッキングを示す。(A)トリス−NTAで改変された表面上への、100nMのトリス−NTAを伴わない50nMのifnar1−H10の結合(破線)および100nMのトリス−NTAを伴う50nMのifnar1−H10の結合(実線)(B)それぞれ200nMのトリス−NTA−フルオレセインを伴う100nMのifnar1−H10 wt(実線)および100nMのifnar1−H10 W129A(破線)の固定化されたIFNβに対する結合。
【図15】図15は、脂質膜に対するヒスチジンタグ化タンパク質の結合のためのキレーター−脂質結合体を示す。(A)合成されたビス−NTA脂質結合体の構造。(B)小胞融合による固体に支持された脂質二重層の構築、ifnar2−H10の固定化およびリガンドIFNα2との相互作用。
【図16】図16は、固体に支持された脂質二重層にFRAPを介して結合された蛍光標識ifnar2−H10の側方拡散の試験を示す。(A)円形断面の退色(leaching)前、および円形断面の退色(leaching)後の異なる時点における蛍光画像。(B)時間の関数としての、退色(bleaching)スポット(実線)における強度および参照スポット(破線)での強度。
【図17】図17は、トリス−NTAと、異なるフルオロフォア(A:Oregon Green 488;B:ATTO 565;C:FEW−S0387)との結合体を示す。
【図18】図18は、蛍光標識、およびゲル濾過による結合アッセイを示す。(A)リガンドIFNα2の添加前(実線)および添加後(破線)における、トリス−NTA−Oregon Greenを用いて標識されたifnar2−H10のクロマトグラム(280nm(タンパク質)または490nm(Oregon Green)における吸収)。(B)金属イオンを用いたロード前(実線)およびロード後(破線)、ならびにifnar2−H10に対する結合後(実線)のトリス−NTA−Oregon Greenの蛍光スペクトル。
【図19】図19は、トリス−NTAとOregon Green 488(I)との結合体、トリス−NTAとATTO565(II)との結合体およびトリス−NTAとFEW−S0387(III)との結合体の分光学的特性を示す。これらの結合体の標準化された蛍光スペクトル(実線)、Ni(II)イオンの錯体化後のこれらの結合体の標準化された蛍光スペクトル(破線)、およびifnar2−H10の結合後のこれらの結合体の標準化された蛍光スペクトル(実線)。
【図20】図20は、モノ−NTAとフルオレセインとの結合体(A)、ビス−NTAとフルオレセインとの結合体(B)、トリス−NTAとフルオレセインとの結合体(C)、およびテトラキス−NTAとフルオレセインとの結合体(D)を示す。
【図21】図21は、異なるMCH((A)モノ−NTA;(B)ビス−NTA;(C)トリス−NTA;(D)テトラキス−NTA(フルオレセイン結合体))を用いたMBP−H6(左側)およびMBP−H10(右側)の非共有結合性の蛍光標識の、分析用ゲル濾過による試験を示す(280nm(タンパク質)または490nm(フルオレセイン)における吸収)。
【図22】図22は、蛍光消光による会合動態の試験を示す。H10−フルオレセインを伴うモノ−NTA(実線)、およびH6−フルオレセインを伴うモノ−NTA(破線)についての結合曲線の比較。
【図23】図23は、解離動態の試験を示す。(A)5mMのモノ−NTA−H10−フルオレセイン錯体の10倍希釈におけるフルオレセインの変化。(B)H10−フルオレセインを伴う異なるMCHおよびH6−フルオレセインを伴う異なるMCHについての、平衡−振幅に対して標準化された解離動態の比較。
【図24】図24は、モノ−NTAおよびMCHについての錯体形成定数の比較を示す。(A)乖離速度定数。(B)平衡解離定数。
【図25】図25は、ビス−NTA−OtBu(6)、テトラキス−NTA−OtBu(8)およびビス−NTA−脂質(12)を提供するための合成についてのスキームを示す。
【図26】図26は、トリス−NTA−OtBu(17および18)および3種の異なるフルオロフォアを有する誘導体(Oregon Green 488(21)、ATTO 565(22)、FEW−S0387(23))を提供するための合成についてのスキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
(実施例1:表面に対するMCHの結合)
表面上へのヒスチジンタグ化タンパク質の固定化のために、上記キレーターを、ガラス表面および金表面上に共有結合させた。このことのために、異なるストラテジーを使用した。第1に、金表面を、α,ω−ジアミノ−ポリ(エチレングリコール)(DAPEG、2000g/mol)の単一層によって保護した。これを、Piehlerら、2000年(Piehler J、Brecht A、Valiokas R、Liedberg
B、Gauglitz G、2000、 A high−density poly(ethylene glycol)polymer brush for immobilization on glass−type surfaces,Biosensors & Bioelectronics,15(9−10):473−481)によって記載された、非特異的なタンパク質結合に対するプロトコルにしたがって行った。
【0058】
これらの表面に対する上記キレーターの化学的結合を、図6に概略的に示す。カルボキシル官能化されたキレーターの先端(図2Aを参照のこと)を、上記表面の濃度がカップリングの持続期間によって変化する、DAPEGの空いているアミノ基に直接カップリングさせた(図6、経路III)。アミノ官能化されたキレーターのカップリングのために、上記表面を、最初に、グルタル酸アルデヒドによって再度官能化した(図6、経路I)。カルボキシル基の表面の濃度を、無水酢酸を同時に添加することによって変化させた(図6、経路II)。上記MCHを、そのようにして生成されたカルボキシル基にカップリングさせた。その後、保護基を、トリフルオロ酢酸によって除去した。
【0059】
(実施例2〜5:MCHによるタンパク質の固定化)
(実施例2:特異的な固定化および官能性)
ヒスチジンタグ化タンパク質と、実施例1において生成されるような表面との相互作用を、反射率測定干渉分光法(RIfS)によって詳細に特徴付けた。この方法を使用して、表面に対するタンパク質の結合を、PiehlerおよびSchreiber、2001年(Piehler J、Schreiber G.、2001、Fast transient cytokine−receptor interactions monitored in real time by reflectometric interference spectroscopy、Anal.Biochem.289(2):173−186)に記載されるように、リアルタイムで定量化し得る。
【0060】
トリス−NTAで改変された表面に対する、C末端にデカ−ヒスチジンタグを有するifnar2の細胞外ドメイン(ifnar2−H10)の固定化(図7A)を、図7Bに示す。結合は、Ni(II)イオンによる表面にカップリングされるキレーターのロード前に検出可能ではなかったが、その後、約1.5ng/mmのタンパク質の全体的な結合が観察され、この結合はまた、リンスの間、安定に固定され続けた。それにもかかわらず、このタンパク質は、競合剤としての200mMのイミダゾールによって定量的に除去され得る。
【0061】
上記固定化されたタンパク質の官能性を、リガンドインターフェロンα2(IFNα2)の結合によって調べた(図8)。したがって、90%より多くの固定化されたifnar2−H10が活性であり、そして上記リガンドとの特異的で可逆的な相互作用を示したことが、見出され得る。
【0062】
(実施例3:MCHを有する自己組織化単分子膜(SAM))
金表面上で、自己組織化単分子膜(SAM)の技術(Sigal GB、Bamdad
C、Barberis A、Strominger J、Whitesides GM、1996、A self−assembled mono layer for the binding and study of histidine−tagged proteins by surface plasmon resonance、Anal Chem、68:490−7)を使用した。
【0063】
このことのために、ビス−NTA先端基を有するアルキルチオールを、合成した(図9A)。上記官能化表面との非特異的なタンパク質相互作用を最小化するために、オリゴ(エチレングリコール)残基を、上記先端基とアルキル基との間に導入した。このビス−NTA−チオールを、MCHの異なる表面の濃度によってSAMをもたらすために、MCHの先端基を有さないマトリックスチオールと混合した(図9A)。ifnar2−H6の特定の可逆的な固定化および上記固定化されたタンパク質に対するリガンドIFNα2の特異的な結合が、検出できる(図9B)。
【0064】
(実施例4:MCHを介する結合の安定性)
表面におけるモノ−NTAの結合の比較的低い安定性は、上記キレーターの高い表面濃度によって部分的に補填され得る。一価のキレーターとは対照的に、MCHは、低い表面濃度においても、表面に対するヒスチジンタグ化タンパク質の安定な結合を可能にし、このことは、本使用に対する一連の利益を提供する。図10Aは、主に、モノ−NTA官能化された表面に対するMBP−H10の結合を示す。
【0065】
タンパク質(MBP−H10)による上記表面の最初の完全なロード後に、顕著な解離が観察された:400秒後に、最初に結合したタンパク質の50%より多くが、上記表面から解離する。観察された解離動態は、モノ−NTAを介する結合について代表的である表面における再結合効果および配位効果によって説明され得る。
【0066】
このことと比較して、上記MCHの場合においては、同じ期間において、非常に安定な結合を観察することができ、そして有意な解離は観察することができなかった(図10B)。MCHについては、解離は観察できなかったために、上記結合安定性をイミダゾールによって減少させた。
【0067】
図11Aにおいて、イミダゾールの異なる濃度におけるモノ−NTA表面のMBP−H10の解離を示す。平衡ロードReqを、結合モデルの適合によって決定した。
【0068】
モノ−NTA、ビス−NTA、およびトリス−NTAについて、イミダゾール濃度に由来するReqの依存性を、図11Bに比較して示す。より高いイミダゾール濃度への顕著なシフトは、多価性(multivalence)の関数として、結合安定性の増加を示す。さらに、勾配がより急激な変化が観察され、このことは、モノ−NTAの表面協同性と対照的に、分子協同性への変化を示唆する。
【0069】
同じ方法を使用することによって、さらに、異なるヒスチジンタグによる結合の安定性を説明した。このことのために、C末端にヘキサ−ヒスチジンタグ(MBP−H6)を有するマルトース結合タンパク質およびC末端にデカ−ヒスチジンタグを有するマルトース結合タンパク質(MBP−H10)を、使用した。図12Aは、トリス−NTAで改変された表面のこれらのタンパク質について、イミダゾール誘導性の解離の比較を示す。上記結合安定性における違いは著しいので、30mMのイミダゾールにおける定量的な区別が可能である。モノ−NTAとMBP−H10との間の相互作用と比較して、顕著に勾配がより急激な変化は、ここでも、分子協同性を示す(図12B)。
【0070】
(実施例5:非特異的な結合)
タンパク質とキレーターとの非特異的な結合(静電気的かまたは配位した金属イオンを介するかのいずれか)は、タンパク質の固定化のためのキレーターの使用における中心的な問題である。なぜなら、モノ−NTAによる安定な固定化は、非常に過剰なNTA基を必要とするからである。この効果を、図13Aに示す。
【0071】
高い程度までのリガンドIFNβが、モノ−NTAによって高度に官能化された表面に対して非特異的に結合し、その結果、妥当ではない結合動態が、示され得る。トリス−NTAに関して、既に、顕著に低い非特異的な結合が、低いキレーター濃度に起因して認識され得る(図13B)。中性のタンパク質(MBP−H10)による結合部位のブロッキングによって、上記非特異的な結合を、完全に排除し、それによってひずみのない結合動態を測定する。上記表面における配位部位は、定量的にブロックされ得るので、この様式において、ヒスチジンタグ化タンパク質との特異的相互作用がまた、説明され得る。
【0072】
MCHの結合の高い安定性のさらなる利点は、溶液中に、金属イオンがロードされたMCHを添加することによって、ヒスチジンタグ化タンパク質と、キレーターで改変された表面との結合を効率的にブロックする可能性において見出される。したがって、ヒスチジンタグ化タンパク質との特異的相互作用は、ヒスチジンタグ化タンパク質が、上記表面にて必要以上のキレーターと結合することなく説明され得る。これを、図14に示す。溶液中のあまり過剰ではないトリス−NTAによって、トリス−NTAで改変された表面に対するifnar1−H10の結合は、ほぼ完全に抑制され得る(図14A)。
【0073】
この原理に基づいて、結合アッセイを行った。このことのために、最初に、ifnar2−H10を、トリス−NTAで改変された表面上に固定化した。MBP−H10を用いた過剰なキレーターのブロッキングの後、ifnar2の結合部位を、IFNβによって飽和させた。トリス−NTA−フルオレセインによって提供されるifnar1−H10とのその後の結合アッセイ(下の実施例8を参照のこと)を、図14Bに示す。排他的な特異的相互作用を検出した一方で、IFNβの結合部位における(不活性な)変異W129Aについては、結合は観察されなかった。
【0074】
(実施例6:脂質との結合体)
脂質膜に対するタンパク質の結合のために、図15Aに示すビス−NTAの脂質アナログ結合体を、合成した。
【0075】
この脂質を、ガラス表面上で、固体に支持された流動性の脂質二重層を自発的に形成するステアロイル−オレオイル−ホスファチジルコリンの単層の小胞中に組み込んだ(図15B)。ifnar2−H10は、これらの膜において特異的に固定され得、結合活性が、完全に妨げられた(図15B)。膜に固定されたifnar2−H10の側方拡散を、蛍光退色(フォトブリーチング後の蛍光回復、FRAP)によって分析した(図16)。それによって、1μm/秒の拡散定数を、決定した。
【0076】
(実施例7および実施例8:フルオロフォアとの結合体)
(実施例7:異なるフルオロフォアおよび分光学的特性)
溶液におけるヒスチジンタグ化タンパク質の非共有結合性の蛍光標識のために、トリス−NTAと以下の3種の異なるフルオロフォアとの結合体を合成した(図17):Oregon Green 488、ATTO 565、FEW−S0387。
【0077】
Ni(II)イオンを用いたロードの後、ifnar2−H10を、これらの結合体に添加し、そして過剰の結合体を、ゲル濾過によって分離した。
【0078】
ifnar2−H10の安定な標識が、全ての結合体について観察され:第2のゲル濾過の実行において、遊離の色素は、検出できなかった(図18A)。上記リガンドの添加の際に、さらに、より高い波長へのシフトが観察され(図18A)、このことによって、上記タンパク質の機能がこの位置特異的な標識によって保存されたことを確認した。この標識は、完全に可逆的であった:上記MCH−フルオロフォア結合体は、イミダゾールの添加によって完全に分離され得る。
【0079】
上記MCH−フルオロフォア結合体の異なる状態を、蛍光量子収量によって追跡し得る(図18B)。Ni(II)イオンによるキレーター基のロードの後、約50%までの蛍光の顕著な減少が観察され、そして上記タンパク質に対する結合後に、約40%までの蛍光の顕著な減少が観察された。この効果はまた、他の蛍光色素において観察され得、そしてさらに、蛍光色素ATTO 565において、より明確ですらあった(図19)。
【0080】
(実施例8:溶液中の結合安定性)
溶液中の結合安定性の試験のために、モノ−NTAとフルオレセインとの結合体、ビス−NTAとフルオレセインとの結合体、トリス−NTAとフルオレセインとの結合体、およびテトラキス−NTAとフルオレセインとの結合体を合成し、そしてNi(II)イオンをロードした(図20)。これらの結合体と、ヘキサ−ヒスチジンタグ化タンパク質およびデカ−ヒスチジンタグ化タンパク質との相互作用を、分析用ゲル濾過、等温滴定熱量測定、および蛍光分光法の手段によって、熱力学的および動力学的に特徴付けた。
【0081】
((A)分析用ゲル濾過)
分析用ゲル濾過の手段による試験のために、MBP−H6およびMBP−H10を、化学量論的に過剰の結合体で提供し、そしてこれらの混合物を、ゲル濾過カラム上にロードし、そしてその吸光度を、このカラムの出口において、280nm(タンパク質)および490nm(フルオレセイン)にて同時にモニタリングした。これらのシグナルの比を使用して、標識のレベル、したがって結合安定性が、推定され得る。このクロマトグラムを、図21にまとめる。モノ−NTA(図21A)(MBP−H6およびMBP−H10)について、結合した結合体は、ほとんど検出できなかった。ビス−NTA(図21B)について、MBP−H6と比較して、MBP−H10の著しくより安定な結合が、検出できた。トリス−NTAおよびテトラキス−NTA(図21Cおよび図21D)について、標識の化学量論的なレベル、およびMBP−H6とMBP−H10との間の小さな違差異が、検出できた。
【0082】
これらの結果は、トリス−NTAおよびテトラキス−NTAと、ヘキサ−ヒスチジンタグおよびデカ−ヒスチジンタグとの相互作用の安定性が非常に高いので、安定かつ化学量論的な蛍光標識が達成され得ることを示す。さらに、これらの結果は、伝統的なモノ−NTAと比較して、ヒスチジンタグ化タンパク質との相互作用の安定性の観点から、MCHの優位性を印象的に示した。
【0083】
((B)蛍光分光法)
MCHとヒスチジンタグとの間の相互作用の動態を、蛍光分光法によって試験した。このことのために、フルオレセイン標識オリゴヒスチジンペプチドを使用した。上記MCHに対するこれらのペプチドの結合において、強い蛍光消光が観察された。蛍光の変化を、高い需要時限において、ストップフロー技術によってモニタリングした(図22を参照のこと)。これらの曲線から、1.5〜5・10−1−1の会合速度定数を、曲線のあてはめによって決定した。それらによると、デカ−ヒスチジンに対する上記速度定数は、ヘキサ−ヒスチジンに対するものより顕著に高かった。
【0084】
同じ蛍光消光効果をまた、解離動態の試験のために使用した。このことのために、最初に、高濃度の化学量論的な錯体を生成し、そして(モノ−NTAに対する)緩衝液または(MCHに対する)10倍過剰のMBP−H10のいずれかによって希釈した。図23Aにおいて、モノ−NTA H10−フルオレセイン錯体の希釈において観察された蛍光シグナルを示す。この曲線から、1.5s−1の解離速度定数を算出した。これは、分子のNi:モノ−NTA−ヒスチジンタグ錯体の非常に低い安定性を証明している。
【0085】
MCH−オリゴヒスチジン錯体の安定性は、顕著に高く、その結果、解離を観察するために競合剤を必要とした。そのようにして得た解離曲線を、図23Bに示す。これらの曲線から、顕著に低い解離速度定数を、モノ−NTAについて得た(図24A)。得られた平衡−解離定数を、図24Bに示す。このことは、モノ−NTA(約10μM)と比較してほぼ5倍(<1nMまで)の、MCHの結合親和性の増加を印象的に支持する。
【0086】
(実施例9:合成についての教授)
((A)Lys−NTA−OtBu(3)の合成(図25も参照のこと))
ブロモ酢酸tert−ブチルエステル(1.59ml;10.8mmol)およびDIPEA(2.30ml;13.5mmol)を、DMF(25ml)中のNε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンtert−ブチルエステル(1)(1.00g;2.7mmol)の溶液に添加する。反応フラスコを、窒素でリンスし、次いで55℃にて一晩攪拌する。揮発性成分を、60℃にて真空中で取り除く。残留物を、シクロヘキサン/酢酸エチル(3:1、15ml)中に再溶解し、取り除き、そして沈殿物を、同じ溶媒で3回洗浄する(3×10ml)。濾液を、濃縮し、そして溶出相としてシクロヘキサン/エチルアセテート(3:1)を用いてシリカカラム上で精製した。収量:1.3g(2.3mmol)のNα,Nα−ビス[(tert−ブチルオキシ−カルボニル)メチル]−Nε−ベンジルオキシカルボニル−L−リジンtert−ブチルエステル(2)、85%o.th.。TLC:シクロヘキサン/酢酸エチル(3:1)においてR=0.5。
【0087】
【化8】

メタノール(50ml)中の1.00g(1.8mmol)の2の溶液を、窒素でリンスし、次いで20mgの10%Pd/Cを添加する。反応混合物を、水素雰囲気下で室温にて6時間激しく攪拌する。Pd/Cを、セライトを通した濾過によって除去し、そして揮発性成分を、真空中で取り除く。収量:0.74g(1.7mmol)のNα,Nα−ビス[(tert−ブチルオキシカルボニル)メチル]−L−リジンtert−ブチルエステル(3)、理論の94%。TLC:クロロホルム/メタノール(3:1)においてR=0.3。
【0088】
【化9】

((B)ビス−NTA−OtBu(6)の合成(図25も参照のこと))
3(1.00g;2.3mmol)を、乾燥ジクロロメタン(40ml)に溶解し、そして4(0.29g;1.0mmol)、TBTU(0.96g;2.9mmol)およびDIPEA(0.6ml;3.5mmol)を添加する。得られたスラリーを、窒素でリンスし、そして室温にて一晩攪拌する。次いで揮発性成分を、真空中で除去し、残留物を、ジクロロメタン(100ml)でスラリーにし、そしてMQ水で3回洗浄(各30ml)する。有機相を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして真空中で濃縮する。油状の残留物を、溶離剤としてシクロヘキサン/酢酸エチル(3:1)を用いてシリカカラム上で精製する。収量:0.99g(0.9mmol)Z−ビス−NTA−OtBu(5)、理論の90%。TLC:シクロヘキサン/酢酸エチル(3:1)においてR=0.3
【0089】
【化10】

5(1.00g;0.90mmol)のZ−保護基を、2について上で記載される通り
、加水分解して除去する。収量:0.83g(0.85mmol)のビス−NTA−OtBu(6)、理論の94%。TLC:クロロホルム/メタノール(5:2)においてR=0.3。
【0090】
【化11】

((C)テトラキス−NTA−OtBu(8)の合成(図25も参照のこと))
6(1.00g;1.03mmol)を、乾燥ジクロロメタン(30ml)に溶解し、次いで4(130mg;0.46mmol)、TBTU(1.40mmol;450mg)、およびDIPEA(0.44ml;2.6mmol)を、添加する。得られた反応混合物を、窒素でリンスし、そして室温にて一晩攪拌する。次いで揮発性成分を、真空中で除去し、残留物を、ジクロロメタン(100ml)でスラリーにし、そしてMQ水で3回洗浄(各30ml)する。有機相を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして真空中で濃縮する。油状の残留物を、溶離剤として酢酸エチルを用いてシリカカラム上で精製する。収量:0.70g(0.32mmol)のZ−テトラキス−NTA−OtBu(7)、70%o.th.。TLC:酢酸エチルにおいてR=0.3。
MS(MALDI、ESI、C1111891132);MH2189
7(1.00g;0.46mmol)のZ−保護基を、2について上で記載される通り、加水分解して除去する。収量:0.86g(0.42mmol)、91%。テトラキス−NTA−OtBu(8)、理論の91%。TLC:クロロホルム/メタノール(5:3)においてR=0.3。
MS(MALDI、ESI、C1031831130);MH2055。
【0091】
((D)トリス−NTA−OtBuの合成(17または18)(図26も参照のこと))
ブロム酢酸tert−ブチルエステル(5.9ml;40mmol)、およびDIPEA(8.6ml;50mmol)を、DMF(75ml)中のH−Glu(OtBu)−OBzl 13(3.3g;10mmol)の溶液に添加する。反応フラスコを、窒素でリンスし、次いで55℃にて一晩攪拌する。揮発性成分を、60℃にて真空中で取り除く。残留物を、酢酸エチル(20ml)においてスラリーにし、濾別し、そしてシクロヘキサン:酢酸エチルで3回洗浄する(3:1、3×40ml)。濾液を、真空中で濃縮し、そして溶離剤としてシクロヘキサン:酢酸エチル(3:1)を用いてシリカカラム上で濾過した。収量:4.6g(8.8mmol)のBzl−Glu−NTA(14)、88%
d.Th.。TLC:シクロヘキサン:酢酸エチル(3:1)においてR=0.6。MS(MALDI、ESI、C2843NO);MH522。
【0092】
14(1.00g;1.9mmol)のBzl−保護基を、2のZ−保護基の除去について上で記載される通り、加水分解して除去する。収量:0.76g(1.76mmol)Glu−NTA(15)、92% d.Th.。TLC:クロロホルム/メタノール(3:2)においてR=0.4
MS(MALDI、ESI、C2137NO);MH431。
【0093】
15(431mg;1.0mmol)を、乾燥ジクロロメタン(30ml)に溶解し、次いで16(67mg;0.33mmol)、TBTU(417mg;1.3mmol)、およびDIPEA(0.3ml;1.75mmol)を、添加する。得られた反応混合物を、窒素でリンスし、そして室温にて一晩攪拌する。次いで揮発性成分を、真空中で取り除き、残留物を、ジクロロメタン(50ml)でスラリーにし、そしてMQ水で3回洗浄(各15ml)する。有機相を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして真空中で濃縮する。油状の残留物を、カラムの5容量のメタノールにおける100%酢酸エチルから50%酢酸エチルまでの勾配を用いてシリカカラム上で精製する。
収量:0.37g(0.26mmol)のトリス−NTA−OtBu(17)、79% o.th.TLC:酢酸エチル/メタノール(3:1)においてR=0.5。
MS(MALDI、ESI、C7312921);MH1441。
【0094】
17(1.44g;1.0mmol)を、乾燥クロロホルム(30ml)に溶解し、そして無水コハク酸(300mg;3.0mmol)およびTEA(0.7ml;5.0mmol)を、添加する。得られた反応混合物を、窒素でリンスし、そして室温にて一晩撹拌する。次いで揮発性成分を、真空中で取り除き、残留物を、ジクロロメタン(120ml)でスラリーにし、そしてMQ水で3回洗浄(各40ml)する。有機相を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして真空中で濃縮する。油状の残留物を、カラムの5容量のメタノールにおける100%酢酸エチルから50%酢酸エチルまでの勾配を用いてシリカカラム上で精製する。収量:1.4g(0.91mmol)のトリス−NTA−OtBu−COOH(18)、91% o.th.TLC:酢酸エチル/メタノール(3:1)においてR=0.4。
MS(MALDI、ESI、C7613324);MH1541。
【0095】
((E)トリス−NTA蛍光結合体の合成(図26も参照のこと))
17(1.44g、1.0mmol)を、乾燥ジクロロメタン(30ml)に溶解し、次いでBOC−D−アミノカプロン酸(230mg;1.0mmol)、TBTU(450mg;1.40mmol)、およびDIPEA(0.33ml;1.9mmol)を、添加する。反応混合物を、窒素でリンスし、そして室温にて12時間撹拌する。次いで揮発性成分を、真空中で取り除き、残留物を、ジクロロメタン(70ml)でスラリーにし、そしてMQ水で3回洗浄(各25ml)する。有機相を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして真空中で濃縮する。油状の残留物を、カラムの5容量のメタノールにおける100%酢酸エチルから10%酢酸エチルまでの勾配を用いてシリカカラム上で精製する。TLC:収量:1.4g(0.84mmol)のトリス−NTA−OtBu−アミノカプロン酸−BOC(19)、84% o.th.。酢酸エチルにおいてR=0.3。
MS(MALDI、ESI、C8414824);MH1654。
【0096】
19(500mg;0.3mmol)を、10%のTFAおよび1%の1,2−エタンジチオールを含むジクロロメタンに溶解し、そして1時間撹拌する。次いで、生成物を、エーテルで沈殿させる。収量:300mg(0.3mmol)のトリス−NTA−アミノカプロン酸(20)、95% o.th.。
MS(MALDI、ESI、C436822);MH1049。
【0097】
20(10mg;0.05mmol)を、100μlのDMFに溶解し、そして対応する蛍光色素の化学量論的な量のNHS−活性エステルを得る。12時間後、生成物を、最初に分取用薄層クロマトグラフィーによって精製し、次いでアニオン交換クロマトグラフィーによって精製する。
【0098】
【化12】

((F)ビス−NTA脂質結合体(12)の合成(図25も参照のこと))
オクタデシルアミン(2.7g;10mmol)、1−ブロモ−cis−9−オクタデセン(3.3g;10mmol)およびTEA(7ml、50mmol)を、混合する。反応フラスコを、窒素でリンスし、そして55℃にて2日間撹拌する。粗生成物を、クロロホルム(200ml)に溶解し、そして水で3回洗浄する(各50ml)。有機相を、濃縮し、そしてカラムの5容量のメタノールにおける100%クロロホルムから60%クロロホルムまでの勾配を用いてシリカカラム上で精製する。収量:2.1g(4.05mmol)のステロイル−オレオイル−アミン(SOA(9))、40% o.th.。
【0099】
【化13】

無水コハク酸(0.60g;6mmol)およびTEA(2.5ml;18mmol)を、クロロホルム(50ml)中の9(1.04g;2mmol)の溶液に添加する。反応フラスコを、窒素でリンスし、そして室温にて一晩撹拌する。粗生成物を、MQ水(4×40ml)で洗浄する。有機相を、乾燥し、濃縮し、そしてアセトンで沈殿させる。収量:1.18g(1.9mmol)のSOA−COOH(10)、95% o.th.。
【0100】
【化14】

10(530mg;0.85mmol)を、乾燥ジクロロメタン(30ml)に溶解し、次いで6(834mg;0.86mmol)、TBTU(413g、1.29mmol)、およびDIPEA(0.3ml、1.76mmol)を、添加する。反応溶液を、窒素でリンスし、そして室温にて12時間撹拌する。次いで揮発性成分を、真空中で除去し、そして残留物を、ジクロロメタン(30ml)で回収する。MQ水(3×30ml)で洗浄した後、有機相を、無水硫酸ナトリウム上で乾燥する。次いで揮発性成分を、真空中で除去し、そして残留物を、クロロホルム/酢酸エチル(3:2)を用いてシリカカラム上で精製する。収量:0.97g(0.61mmol)のSOA−ビス−NTA−OtBu(11)、71% o.th.。TLC:クロロホルム/酢酸エチル(3:2)においてR=0.6。
【0101】
【化15】

11(500mg;0.32mmol)を、10%のTFAおよび1%の1,2−エタンジチオールを含むジクロロメタンに溶解し、そして1時間撹拌する。次いで、生成物を、エーテルで沈殿させる。収量:370mg(0.3mmol)のSOA−ビス−NTA(12)、94% o.th.。
【0102】
【化16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:
−G−CL
の化合物、ならびにその互変異生体、異性体、無水物、酸および塩であって、ここで:
Gは、2個〜20個の炭素原子を有する飽和炭水化物鎖を含み、アミド結合、エステル結合および/またはエーテル結合をさらに含む足場構造であり;
Xは、プローブFまたは官能性のユニットFに対するカップリング基であり;
CLは、金属配位中心を有するキレーター基であり;
mは、整数であり、そして少なくとも1であり;そして
nは、整数であり、そして少なくとも2である、
化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、該化合物は、金属イオンが、キレーター基の各々に結合されることによって特徴付けられる、化合物。
【請求項3】
前記金属イオンが、Ni2+、Co2+、Cu2+、Zn2+、Fe2+、Fe3+、および全てのランタニドイオンからなる群より選択される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物は、前記キレーター基が、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノ二酢酸(IDA)、ポルフィリン系、サリチル酸誘導体、1,2−ジアミノエチル二酢酸、ジアミノエチル三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、およびそれらの塩または組み合わせからなる群より選択されることによって特徴付けられる、化合物。
【請求項5】
前記キレーター基の反応基が、保護基を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物は、スペーサー基Aが、CLとGとの間に配置されることによって特徴付けられる、化合物。
【請求項7】
Aが、直鎖状であるか、または分枝状である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物は、前記キレーター基が、アミド結合、エステル結合またはエーテル結合を介してGに結合されることによって特徴付けられる、化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物は、Gが、直鎖状であるか、分枝状であるか、または閉じられることによって特徴付けられる、化合物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物、ならびにその互変異生体、異性体、無水物、酸および塩であって、該化合物は、以下:
【化17】

から選択される、化合物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物は、カップリング基Xが、NHRからなる群より選択されることによって特徴付けられ、Rは、H、アルキルもしくはアリール、COOH、nが整数である(CH−COOH、SH、マレイミド、アセトアミド、イソチオシアネートまたはシアネートである、化合物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物は、プローブFまたは官能性のユニットFが、カップリング基Xにおいて結合されることによって特徴付けられる、化合物。
【請求項13】
請求項12に記載の化合物であって、該化合物は、前記プローブFまたは官能性のユニットFが、フルオロフォア、FRET−フルオロフォア、蛍光消光剤、リン光化合物、発光化合物、吸収性化合物、ポリマー、PEG、オリゴ糖類、オリゴヌクレオチド、PNA、ビオチン、ハプテン、ペプチド、タンパク質、酵素、架橋剤、オリゴエチレングリコール、脂質、ナノ粒子、電子密度増幅因子、金クラスター、金属クラスター、量子ドット、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されることによって特徴付けられる、化合物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の化合物であって、該化合物が、以下:
【化18】

【化19】

から選択される、化合物、ならびにその互変異生体、異性体、無水物、酸および塩。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物を生成するための方法であって、該方法は、前記足場構造の合成後か、または合成の間において、少なくとも2つのキレーター基を該足場構造に対してカップリングする工程を包含する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、該方法は、保護されたまたは保護されていないアミノ酸およびアミノ酸誘導体、Z−Lys−OtBu、H−Glu(OtBu)−OBzl、Z−Glu−OH、大環状ポリアミン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、ブロモ酢酸−OtBu、BOC−ε−アミノカプロン酸からなる群より選択される1種以上の出発化合物から足場構造を合成する工程を包含する、方法。
【請求項17】
前記キレーター基が、保護されている、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
標的分子におけるアフィニティータグへの結合のための請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用であって、該アフィニティータグは、金属−キレーター錯体に結合する、使用。
【請求項19】
前記アフィニティータグは、4個〜15個のヒスチジンおよび0個〜4個の塩基性アミノ酸を含む4個〜15個のアミノ酸を含むペプチドタグである、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記標的分子は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物もしくはタンパク質模倣物、またはペプチド改変ポリマーもしくはペプチド改変デンドリマーである、請求項18または19に記載の使用。
【請求項21】
改変、カップリング、オリゴマー化、検出、モニタリング、分析のため、またはインビトロ、インビボ、インサイチュ、生細胞もしくは脂質小胞における標的分子の検出のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項22】
標的分子の固定化のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項23】
請求項22に記載の使用であって、該使用は、前記化合物が、表面結合または脂質単一層もしくは脂質二重層に含まれることによって特徴付けられる、使用。
【請求項24】
前記表面は、ガラス型表面、金、銀、DAPEGで改変したガラス、PEGポリマーで改変したガラスもしくはPEGポリマーで改変した金、GOPTSでシラン処理したガラス、脂質単一層もしくは脂質二重層、セレン化金属、テルル化金属、および硫化金属を備えるガラス型表面および金表面から選択される、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
自己組織化単分子膜(SAM)の生産のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項26】
官能性のマイクロ構造表面および官能性のナノ構造表面の生産ならびに/またはプロテインアレイの生産のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項27】
標的分子の精製のための、請求項1〜14のいずれか1項に記載の化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−162540(P2012−162540A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−64302(P2012−64302)
【出願日】平成24年3月21日(2012.3.21)
【分割の表示】特願2007−524229(P2007−524229)の分割
【原出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(507038825)ヨハン ウォルフガング ゲーテ−ウニベルジテート フランクフルト アム マイン (5)
【Fターム(参考)】