標的分析物検出および溶液中の標的分析物濃度の決定のための方法およびアレイ
【課題】単一の分子のアレイを製造する方法およびサンプル中の標的分析物を検出する方法を提供する。
【解決手段】a)標的分析物の分子をある濃度で含むサンプルと、各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;およびb)単一の分子を含有する位置を含むアレイを製造するために、前記標的分析物の分子の前記アレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように、前記アレイと前記サンプルとを接触させることを含む、前記方法。
【解決手段】a)標的分析物の分子をある濃度で含むサンプルと、各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;およびb)単一の分子を含有する位置を含むアレイを製造するために、前記標的分析物の分子の前記アレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように、前記アレイと前記サンプルとを接触させることを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利
米国政府は、国防総省、国防総省国防高等研究事業局(DARPA)海軍研究事務所によって供与された規約番号N00014−01−1に従って、本発明において所定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0002】
背景
高感受性かつ低いレベルの分析物の検出を迅速かつ再現可能な実験プロトコルと組み合わせて実施する方法は、近代的な分析学的測定法の礎石である。現在、サンプルマトリックス中の低レベルの標的分析物を定量するための最も知られている技術は、レポーター分子の数を増大させてそれにより測定可能なシグナルを得る増幅手順を用いる。かかる公知の方法として、抗体に基づくアッセイにおいてシグナルを増幅するための酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ならびにDNAに基づくアッセイにおいて標的DNA鎖を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が挙げられる。免疫PCRと称される、より感受性であるが間接的なタンパク質標的増幅技術(Sano, T.; Smith, C. L.; Cantor, C. R. Science 1992, 258, 120-122を参照)は、オリゴヌクレオチドマーカーを利用し、オリゴヌクレオチドマーカーを、その後PCRを用いて増幅し、DNAアッセイを用いて検出することができる(Nam, J. M.; Thaxton, C. S.; Mirkin, C. A. Science 2003, 301, 1884-1886; Niemeyer, C. M.; Adler, M.; Pignataro, B.'; Lenhert, S.; Gao, S.; Chi, L. F.; Fuchs, H.; Blohm, D. Nucleic Acids Research 1999, 27, 4553-4561; and Zhou, H.; Fisher, R. J.; Papas, T. S. Nucleic Acids Research 1993, 21, 6038-6039を参照)。免疫PCR法によって超低レベルのタンパク質の検出が可能となるが、これは複雑なアッセイ手順であり、擬陽性シグナルを生じる傾向があり得る(Niemeyer, C. M.; Adler, M.; Wacker, R. Trends in Biotechnology 2005, 23, 208- 216を参照)。
【0003】
これらの公知の方法の欠点は、測定可能なシグナルを提供するために、レポーター分子を増幅する別の工程に依存しており、それによりさらなる増幅の工程を必要とし、したがってさらなる時間、設備および材料を必要とすることである。
【0004】
さらに、溶液中の特定の分析物の濃度を正確に定量するための公知の方法は、全て、多くの分析物分子が測定可能なシグナルを生じるアンサンブル応答に基づく。
【0005】
したがって、当該分野において、改善された標的分析物検出の方法およびシステムが必要とされている。
【発明の開示】
【0006】
発明の要旨
一態様において、本発明は、サンプル中の標的分析物を検出する方法に関する。該方法は、各々の位置(site)が捕獲成分(capture component)を含む複数の位置を含むアレイを提供すること、および、複数の位置のサブセット中の各々の位置が単一の標的分析物を含有するように、アレイとサンプルとを接触させること、を包含する。各々の標的分析物は、酵素成分を含む。該方法はさらに、アレイを酵素基質と接触させること、および、位置の各々における光学特性の変化を標的分析物の存在の指標として検出すること、を包含する。
【0007】
本発明は、別の態様において、サンプル中の標的分析物を検出する方法に関する。該方法は、複数の位置を含むアレイを提供すること、および第1の複数の位置のサブセット中の各々の位置が単一の第1の標的分析物を含有し、第2の複数の位置のサブセット中の各々の位置が単一の第2の標的分析物を含有するように、アレイをサンプルと接触させること、を包含する。この態様において、各々の位置は捕獲成分を含み、第1及び第2の標的分析物の各々は酵素成分を含む。該方法はさらに、アレイを第1の酵素基質と接触させること、および位置の各々での第1の酵素基質の結果としてのあらゆる光学特性の変化を、第1または第2の標的分析物のいずれかの存在の指標として検出すること、を包含する。さらに、該方法は、アレイを洗浄すること、およびアレイを第2の酵素基質と接触させることを包含する。さらに、該方法は、位置の各々での第2の酵素基質の結果としてのあらゆる光学特性の変化を、第1または第2の標的分析物のいずれかの存在の指標として検出することを包含する。
【0008】
別の態様によると、本発明は、サンプル中の標的分析物を検出する方法に関する。該方法は、複数の位置を含むアレイを提供すること、および複数の位置のサブセット中の各々の位置が単一の標的分析物を含有するようにアレイをサンプルと接触させること、を包含する。この方法において、各々の位置は捕獲成分を含む。該方法はまた、単一の標的分析物の各々を酵素成分を含む結合リガンドと接触させること、およびアレイを酵素基質とさらに接触させること、を包含する。さらに、該方法は、位置の各々での光学特性の変化を標的分析物の存在の指標として検出することを包含する。
【0009】
本発明は、さらなる態様によると、サンプル中の標的分析物の量を定量する方法である。該方法は、各々の位置が捕獲成分を含む複数の位置を含むアレイを提供すること、および、複数の位置のサブセット中の各々の位置が単一の標的分析物を含有するように、アレイをサンプルと接触させること、を包含する。この態様において、各々の標的分析物は酵素成分を含む。該方法はまた、アレイを酵素基質と接触させること、位置の各々での光学特性の変化を標的分析物の存在の指標として検出すること、およびサンプル中の標的分析物の量を計算すること、を包含する。
【0010】
一態様において、本発明は、単一の分子のアレイを製造する方法を企図する。該方法は、標的分析物をある濃度で含むサンプル、および各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイを提供すること、ならびに、単一の分子を含有する位置を含むアレイを製造するために、標的分析物分子の前記アレイの各々の位置に対する比が1:1より少なくなるように、前記アレイと前記サンプルとを接触させること、を包含する。一態様において、本発明は、物質の組成として、この方法により製造されたアレイを企図する。本発明は、標的分析物の性質によって限定されることを意図しない。一態様において、標的分析物は、生体分子(例えば、タンパク質、核酸、脂質、および炭水化物;あるいは、ホルモン、サイトカインおよび細胞抗原;好ましくは、神経受容体、ホルモン受容体および栄養因子受容体などの受容体)を含む。本発明は、生体分子の性質によって限定されることを意図しない。一態様において、生体分子は、タンパク質、核酸、脂質および炭水化物からなる群より選択される。別の態様において、生体分子は、ホルモン、サイトカインおよび細胞抗原からなる群より選択される。さらに別の態様において、生体分子は受容体である(例えば、神経受容体、ホルモン受容体および栄養因子受容体)。一態様において、標的分析物は、環境汚染物質である(例えば、農薬、殺虫剤およびトキシン)。一態様において、標的分析物は薬物である。本発明は、比によって限定されることを意図しない。一態様において、比は、単一の分子を有する位置を得ることができるように、選択される。好ましい態様において、比は、読み出しがデジタル読み出しである(例えば、各々の位置が1分子を有するかまたは何も有さない)ように選択される。一態様において、比は1:5より小さい。別の態様において、比は1:10である。さらに別の態様において、比は1:5〜1:500の間である。一態様において、単一の分子を含有する位置のパーセンテージが、サンプル中の分子の濃度の指標を提供する(換言するに、全位置の数および位置の規定の容積を計算して検知することによる)。
【0011】
一態様において、方法はさらに、工程b)の後に、各々の位置の内容物が各々の位置から漏出することができないように、アレイを密封することを包含する。一態様において、本発明は、溶液中での分子の密封、密封の前の溶液中での分子の(例えば、捕獲成分を用いての)捕獲、および/または密封の前の溶液からの分子の捕獲(および、一部の態様において、溶液からの分子の除去)、を企図する。一態様において、本発明は、該方法により製造された密封されたアレイを企図する。
【0012】
本発明は、捕獲成分の性質によって限定されることを意図しない。一態様において、アレイの各々の位置は捕獲成分を含む。別の態様において、標的分析物は一本鎖核酸を含み、捕獲成分は相補的な核酸を含む。
【0013】
本発明は、特定の容積に限定されることを意図しない。しかしながら、一態様において、規定された容積は、フェムトリットルにおいて測定される。一態様において、本発明は、物質の組成として、規定されたフェムトリットル容積の位置のアレイであって、規定された容積が各々の位置で同一であり、約30フェムトリットル〜約60フェムトリットルの範囲である、前記アレイを企図する。一態様において、規定されたフェムトリットル容積は、46フェムトリットルである。
【0014】
本発明は、位置の数について限定されることを意図しない。1000個の位置を用いることができるが、好ましくはより多くの位置を用いる(例えば、10,000個より多くの位置、20,000〜30,000個の間の位置、およびさらにより好ましくは100,000〜10,000,000個の間の位置)。
【0015】
別の態様において、本発明は、サンプル中の標的分析物を検出する方法を企図する。該方法は、生体分子標的分析物を含むサンプル、および各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイを提供すること;生体分子標的分析物のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるようにアレイをサンプルと接触させること;ならびに単一の生体分子を含有するアレイの位置の数を決定すること、を包含する。やはり、本発明は比によって限定されることを意図しない。好ましい態様において、比は、単一の分子を含む位置を得ることができるように選択される。一態様において、比は、読み出しがデジタル読み出しである(例えば、各々の位置が1分子を有するかまたは何も有さない)ように選択される。一態様において、比は1:5より小さい。別の態様において、比は1:10である。さらに別の態様において、比は1:5〜1:500の間である。一態様において、単一の分子を含有する位置のパーセンテージが、サンプル中の分子の濃度の指標を提供する(言い換えると、全位置の数および位置の規定された容積を計数して知ることによる)。
【0016】
好ましくは、生体分子を標識する(例えば、フルオロフォアを用いる)。一態様において、決定することは、位置での光学特性の変化を標的分析物の存在の指標として検出することを含む。やはり、単一の分子を含有する位置のパーセンテージが、サンプル中の生体分子の濃度の指標を提供することが好ましい。
【0017】
一態様において、該方法はさらに、接触させる工程の後であるが決定する工程の前に、各々の位置の内容物が該位置から漏出することができないように、アレイを密封することを含む。一態様において、本発明は、溶液中での分子の密封、密封の前の溶液中での分子の(例えば、捕獲成分を用いての)捕獲、および/または密封の前の溶液からの分子の捕獲(および、一部の態様において、溶液からの分子の除去)、を企図する。一態様において、本発明は、前記の方法により製造された密封されたアレイを企図する。
【0018】
なお別の態様において、本発明は、サンプル中の標的分析物を検出する方法を企図する。該方法は、生体分子標的分析物を第1の濃度で含むサンプル、および各々の位置が規定されたフェムトリットル容積を有する少なくとも10,000個の位置を含むアレイを提供すること;サンプルを希釈して生体分子標的分析物を第2の濃度で含む希釈サンプルを作製すること;生体分子標的分析物のアレイの各々の位置に対する比が1:5〜1:500の間であるように、アレイを希釈サンプルと接触させること;ならびに単一の生体分子を含有するアレイの位置の数を決定すること、を包含する。
【0019】
さらに別の態様において、本発明は、単一の細胞のアレイを製造する方法を企図する。該方法は、細胞を含むサンプル、および各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイを提供すること;ならびに、単一の細胞を含有する位置を含むアレイを製造するために、細胞のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるようにアレイをサンプルと接触させること、を包含する。一態様において、本発明は、物質の組成として、この態様の方法により製造されたアレイを企図する。該方法の一態様において、本発明はさらに、単一の細胞を含有するアレイの位置を決定する工程を企図する。好ましくは、単一の細胞を含有する位置のパーセンテージが、サンプル中の細胞の濃度の指標を提供する。本発明は、細胞の性質によって限定されることを意図しない。原核細胞(例えば、細菌細胞)ならびに真核細胞(例えば、腫瘍細胞および神経細胞などの哺乳動物細胞)が企図される。本発明の機序を理解することは必要ではないが、単一の細胞のアレイにより、1ウェル毎に単一のmRNA標的の捕獲が可能となると考えられる。一態様において、単一の細胞をトラップし、次いで溶解する。一態様において、単一のウェルは単一の細胞を含む。一態様において、単一のウェル中の単一の細胞を溶解する。一態様において、単一の細胞からの標的物を、単一のウェルにおいてトラップする。別の態様において、単一の細胞を溶解し、次いでmRNA標的物を捕獲する。例えば、1つの単一の細胞を溶解し、ここで、複数のmRNA標的物を、1ウェルに1コピーより多くの転写物タイプを有することなく、ウェル中で捕獲する。本発明の機序を理解することは必要ではないが、細胞は数千個の異なる転写物を含み、その各々が細胞毎に多数のコピーを有すると考えられるが、一方、本発明は、1ウェルに異なる転写物タイプの1つ以上を捕獲しない(すなわち、例えば、各々のウェルが、各々の転写物を1コピーより多く含まない)ことを企図する。一態様において、単一の細胞は、複数の標的物(すなわち、例えばmRNAのタイプ)を含む。一態様において、複数の標的物(すなわち、例えばmRNA型)を連続的に調査することにより、それらの存在を決定する(すなわち、例えば異なる色のフルオロフォアを用いることによる)。一態様において、標的物(すなわち、例えばmRNA型)を、デジタルシグナルを検出することにより、定量的に決定する。
【0020】
さらに別の態様において、本発明は、複数の異なる細胞を含むアレイを提供する方法を企図する。この方法は、細胞を含むサンプルと、各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;および前記アレイと前記サンプルとを接触させること、を包含する。一態様において、複数の異なる細胞を溶解することにより、複数の標的物を含むライセートを生成する。一態様において、複数の異なる細胞の各々を、異なるウェル中で溶解する。一態様において、複数の異なる細胞を、単一のウェル中で溶解する。一態様において、複数の異なる細胞からのライセートをプールする。一態様において、プールされたライセートを捕獲する。一態様において、複数の標的物(すなわち、例えばmRNA型)を連続的に調査することにより、それらの存在を決定する(すなわち、異なる色のフルオロフォアを用いることによる)。一態様において、標的物(すなわち、例えばmRNA型)を、デジタルシグナルを検出することにより、定量的に決定する。
【0021】
一態様において、方法はさらに、アレイを細胞と接触させた後で、各々の位置の内容物が該位置から漏出し得ないようにアレイを密封することを包含する。一態様において、本発明は、溶液中での細胞の密封、密封の前の溶液中での細胞の(例えば捕獲成分を用いての)捕獲、および/または密封の前の溶液からの細胞の捕獲(および一部の態様においては、溶液からの細胞の除去)を企図する。一態様において、本発明は、上記の方法により製造された、細胞を含む密封されたアレイを企図する。一態様において、細胞を、アレイを接触させた後で、捕獲成分(例えば、受容体、抗体またはタンパク質、たとえばフィブロネクチン)により固定する(例えば、アレイの各々の位置において、捕獲成分が存在し、好ましくは結合している)。
【0022】
やはり、本発明は、細胞の位置に対する比によって限定されることを意図しない。一態様において、比を、単一の細胞を含む位置を得るように選択する。好ましい態様において、比を、読み出しがデジタル読み出しである(例えば、各々の位置が1細胞を有するかまたは何も有さない)ように選択する。一態様において、比は1:5より小さい。別の態様において、比は1:10である。さらに別の態様において、比は1:5〜1:500の間である。一態様において、単一の細胞を含有する位置のパーセンテージが、サンプル中の分子の濃度の指標を提供する(言い換えると、全位置の数および位置の規定の容積を計算して検知することによる)。
【0023】
一態様において、本発明は、サンプル中の細胞を検出する方法を企図する。この方法は、細胞を第1の濃度において含むサンプルと、各々の位置が約10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;サンプルを希釈して、細胞を第2の濃度において含む希釈サンプルを作製すること;細胞のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように、アレイを希釈サンプルと接触させること;および、単一の細胞を含有するアレイの位置の数を決定すること、を包含する。このアレイを、好ましくは上記の決定する工程の前に密封し、本発明は、アレイおよび密封されたアレイの両方を、物質の組成として企図する。
【0024】
さらに別の態様において本発明は、サンプル中の細胞の標的分析物を検出する方法を企図する。この方法は、各々が標的分析物を含む細胞を第1の濃度において含むサンプルと、各々の位置が規定されたフェムトリットルの容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;サンプルを希釈して、細胞を第2の濃度において含む希釈サンプルを作製すること;細胞のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように、アレイと希釈サンプルとを接触させること;アレイ中の細胞を、細胞が溶解されるような条件下において処置すること;および、細胞の標的分析物を含有するアレイの位置の数を決定すること、を包含する。このアレイを、好ましくは前記の決定する工程の前に密封し、本発明は、物質の組成として、アレイおよびこの様式において製造された密封されたアレイを企図する。
【0025】
代替的な態様において、本発明は、サンプル中の細胞の標的分析物を検出する方法を企図する。この方法は、細胞をある濃度において含むサンプルと、各々の位置が規定されたフェムトリットルの容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;細胞が溶解されるような条件下において細胞を処置し、処置されたサンプルを作製すること;標的分析物のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように、アレイを処置されたサンプルと接触させること;および標的分析物を含有するアレイの位置の数を決定すること、を包含する。やはり、好ましくは上記の決定の工程の前にアレイを密封し、本発明は、物質の組成として、アレイおよびこの様式において製造された密封されたアレイを企図する。
【0026】
一態様において、細胞は原核細胞である。特定の態様において、細胞は細菌細胞であり、標的分析物は溶菌の後で細胞から放出される細菌酵素である。好ましい態様において、各々の位置は、溶菌の後で標的分析物を捕獲するように指向された捕獲試薬を含有する。
【0027】
反応に影響を及ぼす反応成分を検出する方法であって、以下を包含する:反応成分、標的分析物を第1の濃度で含むサンプル、および各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイを提供すること;標的分析物のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるようにアレイをサンプルと接触させること;アレイの各々の位置に反応成分を導入すること;ならびに反応成分が反応に影響を及ぼすか否かを決定すること。好ましい態様において、標的分析物は酵素であり、酵素のための基質は、決定する工程の前にアレイの各々の位置に存在する。特に好ましい態様において、反応成分は酵素の阻害剤であり、決定する工程は、酵素の阻害剤が該酵素と基質との反応を阻害するか否かを決定することを含む。一態様において、本発明は、決定する工程の前にアレイを密封することを企図し、物質の組成として、密封されたアレイが企図される。
【0028】
実際に、本発明は具体的に、酵素の速度定数を単一の酵素分子の設定において測定する態様を企図する。例えば、態様において、酵素および阻害剤を、アレイの位置へ導入する前に(例えば、水性緩衝液系において)、阻害剤の濃度が阻害剤の結合のための解離定数(Ki)より高くなり、酵素の活性部位の全てが遮断されるか占有されるように、一緒にバルクでプレインキュベートする。酵素/阻害剤のペアが異なるとKiが異なるので、それに従って阻害剤の濃度を調整しなければならない。本明細書において例示するいくつかの特定の酵素/阻害剤のペアと共に、100mM〜20μMの間の範囲で多様な阻害剤の開始濃度を用いることができる。この態様の第2の工程において、水性緩衝液系中の1または2以上の基質(例えば、色素生産性の基質)を、好ましくは高い過剰量(10倍〜100,000倍の間)において添加する。この態様の第3の工程において、バルク溶液をアレイの位置に添加する。各々の位置は、規定(10アトリットル〜50ピコリットルの間、より好ましくはフェムトリットル)の容積を有する。この時点において、阻害剤はもはや過剰量ではない。実際、阻害剤の濃度は、Kiよりはるかに低い(100,000分子より少ない阻害剤、好ましくは10,000分子より少ない阻害剤、さらにより好ましくは3,000分子より少ない阻害剤、および、なおより好ましくは1,000分子より少ない阻害剤が溶液中に残っていることが好ましい)。溶液がアレイの位置に添加された時点において、酵素の濃度が(工程2における多回の希釈に起因して)、各アレイ位置において単一の酵素しか存在しない(または、より典型的には、単一の酵素がいくつかの位置にあり、他の位置には酵素がない)ようになっていることが好ましい。好ましい態様において、次いで、アレイを、検出手段を用いて、経時的にシグナルについてモニタリングする(例えば、その結果、酵素による基質の利用が検出される)。基質の代謝回転の開始時間の頻度分布をプロットすると、Koff速度定数を計算することができる。
【0029】
かかる方法の別の態様において、阻害剤の濃度は、Kiと同じ範囲であるように選択される。この阻害剤濃度では、酵素に結合した阻害剤は、阻害剤フリーの酵素と平衡状態にある。バルク溶液を、各々の位置が規定(10アトリットル〜50ピコリットルの間、より好ましくはフェムトリットル)の容積を有する位置のアレイに添加する。やはり、各単一のアレイ位置に単一の酵素のみをもたらす(または、より典型的には、単一の酵素がいくつかの位置にあり、他の位置には酵素がない)ように、酵素濃度が選択されることが好ましい。シグナル(例えば、蛍光)を経時的にモニタリングすると、アレイ中の酵素が存在する場合、各々の位置における結合、放出およびその後の結合を観察することができる。
【0030】
さらに別の態様において、本発明は、反応に影響を及ぼす反応成分を検出する方法を企図する。この方法は、以下を包含する:反応成分、生体分子標的分析物を第1の濃度において含むサンプル、および各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイを提供すること;サンプルを希釈して、生体分子標的分析物を第2の濃度において含む希釈サンプルを作製すること;生体分子標的分析物のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように、アレイを希釈サンプルと接触させること;反応成分をアレイの各々の位置に導入すること;ならびに、反応成分が反応に影響を及ぼすか否かを決定すること。
【0031】
なお別の態様において、本発明は、酵素阻害を検出する方法を企図する。この方法は、以下を包含する:i)反応成分、ii)酵素標的分析物を第1の濃度において含むサンプル、iii)前記酵素標的分析物のための基質、ならびにiv)各々の位置が規定されたフェムトリットルの容積を有する少なくとも10,000個の位置を含むアレイを提供すること;サンプルを希釈して、酵素標的分析物を第2の濃度において含む希釈サンプルを作製すること;アレイを、酵素標的分析物のアレイの各々の位置に対する比が1:5〜1:500の間になるように、任意の順序において、基質、反応成分、および希釈サンプルと接触させること;ならびに、反応成分が、酵素と基質との反応を阻害するか否かを決定すること。
【0032】
一態様において、標的および濃度のデジタル読み出しのために、ナノ粒子を利用する。ナノ粒子は、酵素のデジタル読み出しに対していくつかの利点を有する。酵素のアプローチによる場合、濃度が高くなるにつれて、ポワソン分布に従うデジタル読み出しの直線性が失われる。蛍光種により官能化されたナノ粒子を用いて、本発明は、一態様において、デジタル読み出しのみならず、本発明者らの研究室において大規模に用いられる伝統的なバルク光度読み出し(bulk intensity readout)を行い得ることを企図する。デジタル読み出しの直線性が失われるにつれ、デジタル読み出しからナノ粒子を用いる伝統的な光度読み出しへと分析をシフトさせてもよい。ここで、シグナルを、濃度に相関するアレイの各々の位置の平均光度(例えば、平均ウェル光度)として読むことができ、このシステムにより読むことができる濃度の範囲を著しく拡大する。ナノ粒子を用いるいくつかの態様においては、アレイを密封しない。
【0033】
標的が金粒子に結合して結合パートナー(例えば、固定化されたリガンド)を含むアレイ中に導入される態様を含む多様な態様が企図されるが、これに限定されない。別の態様において、標的分析物は、アレイに結合するか、あるいは他の方法で固定されてもよく、金粒子−結合パートナー複合体を、アレイに導入して標的分析物に結合させてもよい。別の態様において、第1の結合リガンドにより標的を固定してもよく、金粒子−第2の結合リガンドをアレイに導入して標的に結合させてもよい。一態様において、標的は核酸であり、結合パートナーは相補的プローブである。
【0034】
別の態様において、2ステップサンドウィッチ形式が企図され、ここで、標的は標識されていなくともよく、第1の相補的プローブと共にインキュベートし;その後、ナノ粒子−第2のプローブの複合体をアレイの位置に導入する。この態様において、標的は、リンカーとして作動するとみなすことができる。
【0035】
複数の態様を開示する一方で、本発明の例示的な態様を示し説明する以下の詳細な説明から、本発明のさらに別の態様が当業者に明らかとなる。理解されるように、本発明は、全て本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多様な明らかな局面において改変が可能である。したがって、図面および詳細な説明は、本来例示的なものとみなされるべきであり、限定するものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一態様によるエッチングされた束の修飾を表す、横から見た断面模式図である。
【0037】
【図2】本発明の一態様によるサンドウィッチアッセイを表す、横から見た断面模式図である。
【0038】
【図3】(a)本発明の一態様による、未研磨のビオチン修飾光ファイバーアレイを示す写真である。(b)本発明の一態様による、研磨されたビオチン修飾光ファイバーアレイに結合するストレプトアビジンAlexa Fluor 568(登録商標)を示す写真である。
【0039】
【図4】本発明の一態様による実験を示す写真である。
【0040】
【図5】本発明の一態様による、活性な反応容器のパーセンテージを生じる、サンプル中に存在する標的の分子のlog対logのプロットを表すグラフである。
【0041】
【図6】(a)本発明の一態様による、ファイバーアレイ全体の顕微鏡写真と、束の挿入拡大図である。(b)本発明の一態様による、エッチングされた表面の一部のAFM画像である。
【0042】
【図7】本発明の一態様による、反応容器の封入(enclosure)および封(seal)の評価を示す図である。
【0043】
【図8】本発明の多様な態様による、β−ガラクトシダーゼの単一の分子の活性の検出を表す顕微鏡写真である。
【0044】
【図9】単一の酵素レベルでの酵素の速度定数を測定するための一態様の模式図である。
【0045】
【図10】シグナルが阻害剤の放出に起因して検出されるアレイの代表的な画像である。
【0046】
【図11】阻害剤の存在下または不在下における基質の代謝回転を示す、時間によるトレースである。
【0047】
【図12】特定の酵素/阻害剤のペアについてのKoffの決定を可能にする測定のプロットである。
【0048】
【図13】(A)阻害剤放出によるシグナルの増大を示すようにプロットされた複数の時間トレースである。(B)阻害剤放出によるシグナルの増大を示すようにプロットされた単一の時間トレースである。
【0049】
【図14】特定の酵素/阻害剤のペアについての半減期の値の計算を可能にするオフタイムの棒グラフである。
【0050】
【図15】ナノ粒子が検出を増強するために使用される一態様を模式的に示す図である。
【0051】
【図16】ナノ粒子が検出を増強するために使用される代替的な態様を模式的に示す図である。
【0052】
【図17】アレイの位置における金ナノ粒子の検出を示す図である。
【0053】
詳細な説明
本発明は、サンプル中の標的分析物または標的分析物(複数)の酵素による検出および定量のための方法、システムおよびデバイスに関する。より具体的には、本発明は、捕獲成分を含有するマイクロからナノスケールのサイズの反応容器のアレイを用いての、酵素による標的分析物の検出および定量に関する。一態様によれば、捕獲成分を含有する反応容器のアレイを、少なくとも1つの標的分析物を含有するサンプルと接触させる。次いで、色素生産性の基質を添加し、生じる酵素反応の色素生産性生成物により、分析物の検出が可能となる。さらに、一態様によれば、捕獲された標的分析物を有する反応容器のパーセンテージを用いて、バイナリ読み出し法を使用してサンプル中の標的分析物の量を計算することができる。
【0054】
より具体的には、本発明は、特別に官能化され、酵素であるかまたは酵素によって標識されている標的分析物分子を捕獲することができる、マイクロまたはナノスケールのサイズの反応容器のアレイを提供する。標的を固定する能力により、以下に概説するように、洗浄の工程および間接的アッセイを用いることが可能となる。用いる際は、単一の酵素(または酵素によって標識された)分子は、個々の反応容器中で捕獲され、検出可能なシグナルを生じるために充分な数の色素生産性生成物分子の生成を触媒する。低い標的分析物濃度を有するサンプルに関する一態様によれば、反応容器の一部のみが標的分子に結合することにより、アレイからの標的分析物のバイナリ読み出しを可能にする。
【0055】
したがって、本発明の方法およびシステムにおける直接酵素増幅により、検出可能なシグナルの直接増幅が可能となる。さらに、先行技術の方法と異なり、本発明は、低濃度のタンパク質の検出を可能にする。
【0056】
一態様による定量方法は、統計学的解析に基づく濃度決定のための新規の方法である。サンプルの酵素濃度は、酵素含有サンプルおよび好適な基質を、多数のナノスケールの反応容器に分配することによって決定される。この方法において、容器は、ゼロまたは1の酵素分子を含有する。各々の反応容器中の単一の酵素分子の触媒から生じる蛍光生成物の存在または不在を観察することにより、バイナリ読み出し法を用いて酵素分子を計数することができる。最終的に、酵素分子によって占有された反応容器のパーセンテージを、バルク酵素濃度と相関させる。
【0057】
I.アレイ
本発明は、複数のアッセイ位置を含む表面を備えた第1の基材を少なくとも含む、アレイの組成を提供する。本明細書における「アレイ」とは、アレイ形式における複数の捕獲成分を意味する。アレイのサイズは、アレイの組成および最終用途に依存する。約2個から数百万個の異なる捕獲成分を含有するアレイ、ならびに非常に大きな光学アレイを含む非常に大きなアレイを作製することができる。一般に、アレイは、ウェルおよび基材のサイズ、ならびにアレイの最終用途に依存して、2個〜10億個もの多数またはそれより多くの捕獲成分を含み、したがって、非常に高密度、高密度、中程度の密度、低密度および非常に低密度のアレイを作製することができる。非常に高密度のアレイのための好ましい範囲は、約10,000,000個〜約2,000,000,000個であり、約100,000,000個〜約1,000,000,000個が好ましい。高密度アレイは、約100,000個〜約10,000,000個の範囲であり、約1,000,000個〜約5,000,000個が特に好ましい。中程度の密度のアレイは、約10,000個〜約50,000個の範囲であることが特に好ましく、約20,000個〜約30,000個が特に好ましい。低密度アレイは、一般に、10,000個より少なく、約1,000個〜約5,000個であることが好ましい。非常に低密度のアレイは、1,000個より少なく、約10個〜約1000個が好ましく、約100個〜約500個が特に好ましい。一部の態様において、複数の基材を用いてもよく、異なった組成であっても同一の組成であってもよい。したがって、例えば、大きなアレイは、複数のより小さい基材を含んでもよい。
【0058】
組成は、基材を含む。本明細書において、「基材」、「アレイ基材」または「固体支持体」または他の文法的に同等なものにより、標的分析物の付着または会合に適した不連続の個々の位置を含むように改変されることができ、少なくとも1つの検出方法に適する、任意の材料を意味する。当業者に理解されるように、可能な基材の数は非常に大きく、ガラスおよび修飾または官能化されたガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、およびスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、Teflon(登録商標)などを含む)、多糖類、ナイロンまたはニトロセルロース、複合材料、セラミック、および可塑性樹脂、シリカならびシリコンおよび修飾シリコンを含むシリカベースの材料、炭素、金属、無機ガラス、プラスチック、光ファイバー束、ならびに多様な他のポリマーを含むがこれらに限定されない。一般に、基材は検出を可能にするものであって、感知できるほどには蛍光を発しない。
【0059】
一態様において、基材は、光ファイバー束の末端を含む。あるいは、基材は、光ファイバー束の末端を含まない。例えば、基材は、公知のスポットされた基材であっても、印刷された基材であっても、または光リソグラフィー基材であってもよい。例えば、WO 95/25116;WO 95/35505;PCT US98/09163;米国特許第5,700,637号;同第5,807,522号および同第5,445,934号;ならびにU.S.S.N.s第08/851,203号および第09/187,289号、ならびにこれらにおいて引用される参考文献を参照のこと。これらの全ては参考として明示的に援用される。本発明において光ファイバー束の末端を基材として用いることの1つの利点は、各々のウェルと接触する個々のファイバーを、ウェルへ、またはウェルからの、励起光および発光の両方を運搬するために用いることができ、ウェルの内容物の遠隔調査が可能であることである。さらに、光ファイバーのアレイは、ファイバー間でシグナルが「クロストーク(cross-talk)」することなく、隣接する容器中の分子の同時励起を可能とする。すなわち、1本のファイバー中を伝達された励起光は、隣接するファイバーに漏出しない。
【0060】
一態様において、基材は、平面であり、当業者に理解されることであるが、他の構造の基材も同様に用いることができる。例えば、三次元構造の基材を用いてもよい。好ましい基材は、以下に議論するような光ファイバー束、ならびに、ガラス、ポリスチレンおよび他のプラスチックおよびアクリルなどの平らな平面基材である。
【0061】
一態様において、基材の少なくとも1つの平面は、後の標的分析物の会合のために、不連続の個々の位置(本明細書においてまた「反応容器」および「マイクロウェル」として言及される)を含むように改変される。これらの位置は、一般に、物理的に改変された位置、すなわち、ビーズを保持することができる基材におけるウェルまたは小さな凹部などの物理的構造を含む。光リソグラフィー、スタンピング技術、鋳型成形技術およびマイクロエッチング技術を含むがこれらに限定されない多様な技術を用いて、マイクロウェルを当該分野において一般に公知であるように形成することができる。当業者が理解するように、用いられる技術は、基材の組成および形状に依存する。
【0062】
一態様において、基材の表面において位置を提供するために物理学的変更が行われる。好ましい態様において、基材は光ファイバー束であり、基材の表面は該光ファイバー束の末端である。この態様において、ウェルは、光ファイバー束の末端または遠位端において作られ、個々のファイバーを含む。この態様において、個々のファイバーのコアを、被覆材(cladding)に対して、ファイバーの一方の端において小さなウェルまたは凹部が形成されるようにエッチングする。必要なウェルの深さは、ウェルに加えられるビーズのサイズに依存する。本発明の一局面において、物理的変更は、本明細書においてその全体において参考として援用される米国特許第6,023,540号、同第6,327,410号および同第6,858,394号において教示されるように行うことができる。
【0063】
位置は、パターン、すなわち、一定の設計または構造であっても、ランダムに分配されていてもよい。好ましい態様は、位置をX−Y座標面において扱うことができるように、一定のパターンの位置を利用する。この意味において「パターン」は、反復する単位のセルであって、好ましくは、高密度のビーズを基材上にもたらし得るものを含む。
【0064】
本発明の一態様によると、反応容器は、約10アトリットル〜50ピコリットルの範囲の容積を有する。代替的には、反応容器は、約1フェムトリットル〜約1ピコリットルの範囲のサイズである。さらなる代替において、反応容器は、約30フェムトリットル〜約60フェムトリットルの範囲である。
【0065】
本発明の一局面において、アレイは光ファイバーアレイである。一態様によると、アレイは以下のように作製することができる。第1に、反応容器を光ファイバー束の遠位端において形成する。一態様によると、容器は、例えば酸腐食(acid etching)法などのエッチング法を用いて作製され、所望の容積の反応容器を得る。すなわち、エッチングのプロセスにより、光ファイバー束の端でコア材料中に凹部または孔が作製されるが、被覆材料は影響を受けず、これによって反応容器を得る。あるいは、コア材料および被覆材料の両方がエッチングされるが、被覆材料がコア材料より遅い速度でエッチングされることにより、反応容器を得る。光ファイバーアレイ形式の1つの利点は、それが、複雑な微細加工手順を回避し、多数の反応容器を同時に観察する能力を提供することである。
【0066】
II.捕獲成分
本発明のマイクロウェルは、少なくとも1つの捕獲成分を含む。捕獲成分(また、「捕獲結合リガンド」、「結合リガンド」、「捕獲結合種」、または「捕獲プローブ」としても言及される)は、標的分析がアッセイの間固定されるように、標的分析物を基材上のマイクロウェル中で探る(probe)か、これに付着するか、結合するか、または他の方法でこれを捕獲するために用いることができる、任意の分子、化合物、またはマイクロウェルの修飾である。一般に、捕獲結合リガンドまたは成分は、検出、定量または他の分析の目的のための、標的分析物のマイクロウェルへの付着を可能にする。
【0067】
当業者が理解するように、捕獲成分の組成は、標的分析物の組成に依存する。多様な分析物のための捕獲成分が公知であるか、または公知の技術を用いて容易に見出すことができる。例えば、分析物がタンパク質である場合、捕獲成分または結合リガンドとして、タンパク質(特に、抗体またはそのフラグメント(FAbなど)を含む)、または低分子が挙げられる。好ましい捕獲成分タンパク質として、ペプチドが挙げられる。例えば、分析物が酵素である場合、好適な結合リガンドとして、基質および阻害剤が挙げられる。抗原−抗体のペア、受容体−リガンドのペア、および炭水化物およびそれらの結合パートナーもまた、好適な分析物−結合リガンドのペアである。さらに、分析物が一本鎖核酸である場合、結合リガンドは、相補的な核酸であってもよい。同様に、分析物が核酸結合タンパク質であってもよく、捕獲結合リガンドは、一本鎖または二本鎖のいずれかの核酸である。あるいは、分析物が一本鎖または二本鎖の核酸である場合、結合リガンドは、核酸結合タンパク質であってもよい。あるいは、本明細書により援用される米国特許第5,270,163号、同第5,475,096号、同第5,567,588号、同第5,595,877号、同第5,637,459号、同第5,683,867号、同第5,705,337および関連特許において一般に記載されるように、ほぼ全ての標的分析物に結合するための、核酸「アプタマー」を開発してもよい。当業者が理解するように、会合する任意の2個の分子を、分析物としてまたは捕獲成分として用いることができる。同様に、コンビナトリアル化学法に基づく捕獲成分の開発についての広範な文献が存在する。
【0068】
好適な分析物/捕獲成分のペアとして、以下が挙げられるがこれらに限定されない:抗体/抗原、受容体/リガンド、タンパク質/核酸、酵素/基質および/または阻害剤、炭水化物(糖タンパク質および糖脂質を含む)/レクチン、タンパク質/タンパク質、タンパク質/低分子;ならびに、炭水化物およびそれらの結合パートナーもまた、好適な分析物−結合リガンドのペアである。これらは、野生型であっても誘導体の配列であってもよい。一態様によれば、捕獲成分は、成長ホルモン受容体、グルコーストランスポーター(特に、GLUT 4受容体)、転移受容体(transferring receptor)、上皮成長因子受容体、低密度リポタンパク質受容体、高密度リポタンパク質受容体、上皮成長因子受容体、レプチン受容体、IL−1受容体、IL−2受容体、IL−3受容体、IL−4受容体、IL−5受容体、IL−6受容体、IL−7受容体、IL−8受容体、IL−9受容体、IL−1l受容体、IL−12受容体、IL−13受容体、IL−15受容体およびIL−17受容体を含むインターロイキン受容体、ヒト成長ホルモン受容体、VEGF受容体、PDGF受容体、EPO受容体、TPO受容体、毛様体神経栄養因子受容体、プロラクチン受容体、ならびにT細胞受容体などの、多量体を形成することが知られている細胞表面受容体のタンパク質の部分(特に、細胞外部位)である。
【0069】
好ましい態様において、捕獲成分は、例えば「付着成分(attachment component)」(明細書中において「付着リンカー」としても言及される)を介して、本明細書において概説されるようなマイクロウェルまたは反応容器に付着する。「付着成分」とは、本明細書において使用される場合、捕獲成分の付着をもたらす任意の成分、マイクロウェルの官能化または修飾として定義され、結合剤(bond)および/またはリンカーを含み得る。あるいは、捕獲成分は、捕獲拡張成分(capture extender component)を利用することができる。この態様において、捕獲成分または結合リガンドは、標的分析物に結合する第1の部分と、表面への付着のために用いられることができる第2の部分を含む。
【0070】
捕獲結合リガンドの付着リンカーへの付着の方法は、一般に、当該分野において公知であるように行われ、付着リンカーおよび捕獲結合リガンドの組成に依存する。一般に、捕獲結合リガンドは、その後に付着のために用いることができる官能基の各々に対する使用を介して、付着リンカーに付着する。一態様によれば、官能基は、化学官能基である、すなわち、マイクロウェルの表面を、化学官能基が表面に結合するように誘導体化する。付着のための好ましい官能基は、アミノ基、カルボキシ基、オキソ基、およびチオール基である。これらの官能基を、次いで直接的にまたはリンカー(本明細書においてしばしば「クロスリンカー」として言及される)の使用を介して付着させることができる。リンカーは、当該分野において公知である。例えば、ホモまたはヘテロ−二官能性リンカーなどが公知である(本明細書において参考として援用される1994 Pierce Chemical Company catalog, technical section on cross-linkers, pages 155-200を参照)。好ましいリンカーとして、以下が限定せずに挙げられる:短いアルキル基、エステル、アミド、アミンを有するアルキル基(置換アルキル基およびヘテロ原子部分を含有するアルキル基を含む)、エポキシ基、およびエチレングリコールおよび誘導体が好ましい。リンカーは、スルホンアミドを形成するスルホン基であってもよい。
【0071】
一態様によれば、官能基は、光によって活性化される官能基である。すなわち、光によって官能基を活性化し、標的分析物またはクロスリンカーに付着させることができる。一例は、SurModics,Inc.(Eden Prairie、MN)から市販されるPhotoLink(登録商標)技術である。
【0072】
本発明の1つの代替的局面において、ウェル表面を誘導体化することなく官能基を添加する。すなわち、ウェル表面に対する結合アフィニティーを有する、官能基を付着させた分子を添加することにより、官能基を表面に添加する。一態様によれば、分子はウシ血清アルブミンである。あるいは、分子は、容器表面に結合または固着することができる任意のタンパク質である。さらなる代替において、分子は、容器表面に結合または固着することができる任意の分子である。一例において、分子は、遊離アミン基を表面に有するウシ血清アルブミンである。次いで、クロスリンカーを添加して、アミン基に付着させることができる。
【0073】
捕獲成分が化学的クロスリンカーである例示的な態様において、標的分析物を、以下の様式において、化学的相互架橋を用いて付着させる。第1に、反応容器表面を、NH2などの官能基を用いて誘導体化する。次いで、クロスリンカーがNH2に付着し、標的分析物がクロスリンカーに付着するように、クロスリンカーと標的分析物とをアレイに添加する。以下により詳細に説明する標的分析物が酵素ではない一代替的態様において、酵素成分を有する標識を標的分析物に付着させてもよい。
【0074】
この方法において、タンパク質、レクチン、核酸、有機低分子、炭水化物などを含む捕獲結合リガンドを添加してもよい。
【0075】
一態様は、タンパク質性の捕獲成分または捕獲結合リガンドを利用する。当該分野において公知であるように、タンパク質性捕獲結合リガンドを付着させるためにあらゆる数の技術を用いることができる。「タンパク質」は、この意味において、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドを含み、例えば、酵素を含む。タンパク質に部分を追加するための多様な技術が知られている。1つの好ましい方法は、その全体が本明細書により参考として援用される米国特許第5,620,850号において概説される。表面へのタンパク質の付着は公知である。また、Heller, Ace. Chem. Res. 23:128 (1990)および関連文献を参照。
【0076】
代替的な態様は、例えば、当該分野において周知であるように、標的分析物が核酸または核酸結合タンパク質である場合に関して、または、核酸がタンパク質に結合するための対するアプタマーとして役立つ場合に関して、核酸を捕獲結合リガンドとして用いる。
【0077】
一態様によれば、各々のマイクロウェルは、複数の捕獲成分を含む。本発明の一局面において、複数の捕獲成分は、ウェルの表面に、「芝」のように分配される。あるいは、捕獲成分は、任意の公知の様式において分配される。
【0078】
一態様によれば、捕獲成分と標的分析との間の結合は特異的であり、捕獲成分は、結合ペアの一部である。すなわち、捕獲成分は、標的分析物に特異的に結合するか、または標的分析に対する特異性を有する、標的特異的捕獲成分である。より具体的には、捕獲成分は、標的分析物に特異的かつ直接的に結合する。本明細書において、「特異的に結合する」または「結合特異性」により、捕獲成分が分析物に、分析物と試験サンプル中の他の成分または夾雑物との間を区別するために充分な特異性で結合することを意味する。例えば、一態様による捕獲成分は、標的分析物の一部に特異的に結合する抗体である。一態様によれば、抗体は、標的分析物に特異的に結合することができる任意の抗体であってよい。例えば、好適な抗体として、以下が限定せずに挙げられる:それぞれ、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディー(minibody)、ドメイン抗体、合成抗体(しばしば「抗体模倣物」として言及される)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合物(しばしば「抗体複合体」として言及される)、および各々のフラグメント。
【0079】
しかしながら、当業者に理解されるとおり、特異性が高くない結合を用いて分析物を検出することが可能である。例えば、システムは、例えば、異なるリガンドのアレイなどの異なる捕獲成分を用いてもよく、任意の特定の分析物の検出は、「電子鼻(electronic nose)」が作動する様式と同様に、その結合リガンドのパネルへの結合の「サイン(signature)」を介する。このことから、化学分析物の検出における特段の有用性を見出す。非特異的結合を除去する洗浄の工程を含むアッセイの条件下において結合したままでいるために、結合が充分であるべきである。一部の態様において、例えば特定の生体分子の検出において、分析物の結合リガンドへの結合定数は、少なくとも約104〜106M−1であり、少なくとも約105〜109M−1であることが好ましく、少なくとも約107〜109M−1であることが特に好ましい。
【0080】
標的分析物が例えば細菌細胞を含む細胞である一態様によれば、捕獲成分はアドヘシン受容体分子である。使用においては、アドヘシン受容体分子は、標的細胞の細胞外表面上のアドヘシンと称される表面タンパク質と結合することにより、細胞を固定または捕獲する。あるいは、標的細胞が別の型の細胞(非細菌細胞)である場合、捕獲成分は、標的分析物細胞に結合する好適な細胞表面受容体である。標的分析物が細胞であるさらなる態様において、捕獲成分はフィブロネクチンである。例えば、フィブロネクチンは、標的分析物が神経細胞である場合に用いることができる。
【0081】
あるいは、捕獲成分は、非特異的な捕獲成分である。すなわち、捕獲成分は、標的分析物に特異的に結合しないが、むしろ、標的分析物に会合するかまたは付着する対応する結合パートナーに結合する。例えば、一態様による非特異的捕獲成分は、上記のような化学的クロスリンカーである。一態様によれば、標的サンプル中の各々のペプチド分子が、化学的クロスリンカーに付着することができる。この型のシステムは、基質を改変することによって分析物が検出されるので、酵素標的分析物を同定するために用いることができる。
【0082】
一態様による非特異的捕獲成分の例において、捕獲成分は、ストレプトアビジンである。ストレプトアビジンは、ビオチンに対して高いアフィニティーで結合し、したがって、ビオチンが付着している任意の分子に結合する。あるいは、捕獲成分がビオチンであり、標的分析物がビオチンによって捕獲されることができるように、ストレプトアビジンが標的分析物に付着または会合している。
【0083】
一態様によれば、以下の様式において捕獲成分を反応容器に添加する。第1に、マイクロウェルを、捕獲成分の付着のために準備する。すなわち、捕獲成分がマイクロウェルに付着するように、マイクロウェルを修飾するか、またはマイクロウェルに付着成分を添加する。一態様において、マイクロウェルは、上記のように、化学官能性のもので誘導体化される。次いで、捕獲成分を添加する。
【0084】
捕獲成分の付着の一例を、図1に示す。ここで、本発明の反応容器は、ビオチンを用いて官能化される。図1aに示すとおり、この例における本発明のアレイは、光ファイバー束10である。捕獲成分18を付着させるために、マイクロウェルを、第1に、付着成分16により修飾する。付着成分16は、この例においては、図1bにおいて示すように、ファイバー束10の遠位端のコア12表面と被覆14表面との両方に結合するアミノプロピルシラン16である。NHS−ビオチンがアミノシラン化表面16に付着するので、アミノプロピルシランによる修飾は、この例において効果的である。しかしながら、捕獲成分18は反応容器の中にのみ存在すべきであるので、基材の外部表面、例えば被覆14の外部表面は、シラン化されるべきではない。すなわち、ビオチン付着を避けるために、外部被覆表面14からシラン化を除去しなければならない。この例において、図1cにおいて示すとおり、アミノシラン化ファイバーを10秒間0.3μmのラッピングフィルムで研磨し、それによりアミノシラン化された被覆層を除去することにより、シラン化16を外部被覆層14から除去する。
【0085】
付着成分16がマイクロウェルに添加された後で、捕獲成分18を付着させることができる。図1の例において、捕獲成分18は、ビオチン18である。図1dにおいて示すとおり、ビオチンサクシニミジルエステル18は、ウェル表面12上のアミノ基16に付着する。
【0086】
III.標的分析物
本明細書において議論されるように、本発明のアレイは、標的分析の検出、定量、およびさらなる分析を提供する。本明細書における「標的分析物」または「分析物」または文法的に同等のものにより、検出されるか、または結合パートナーについて評価されるべき任意の原子、分子、イオン、分子イオン、化合物または粒子を意味する。
【0087】
一態様によれば、標的分析物は酵素である。例えば、酵素は、6つの酵素分類:酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼおよびリガーゼ、のいずれかからの酵素であってよい。したがって、好適な酵素として以下が挙げられるがこれらに限定されない:ポリメラーゼ類、カテプシン類、カルパイン類、例えばASTおよびALTなどのアミノ転移酵素、例えばカスパーゼ類などのプロテアーゼ類、ヌクレオチドシクラーゼ類、トランスフェラーゼ類、リパーゼ類、心臓発作に関連する酵素など。本発明のシステムをウイルスまたは細菌の標的物に用いる場合、好適な酵素は、ウイルスまたは細菌のポリメラーゼ類、ならびにウイルスまたは細菌のプロテアーゼ類を含む他のかかる酵素を含む。
【0088】
あるいは、標的分析物は、酵素成分を有する。例えば、標的分析物は、その細胞外表面上に存在する酵素または酵素成分を有する細胞であってもよい。あるいは、標的分析物は、酵素成分を有さない細胞である。かかる細胞は、典型的には、「サンドウィッチ」アッセイなどの以下に記載される間接的アッセイ方法を用いて同定される。
【0089】
別の態様によれば、標的分析物は酵素ではない。当業者によって理解されるように、本発明において多数の分析物を用いることができる。基本的に、捕獲成分および/または二次結合リガンドに結合するあらゆる標的分析物を用いることができる。以下にさらに詳細に説明するように、これらの標的分析物は、典型的には、「サンドウィッチ」アッセイなどの間接的なアッセイを用いて同定される。上記のように、1つの好適な標的分析物は細胞である。さらに、好適な分析物として、生体分子を含む有機および無機の分子が挙げられる。好ましい態様において、標的分析物は、タンパク質である。当業者によって理解されるとおり、本発明を用いて検出されるかまたは結合パートナーについて評価することができる多数の可能なタンパク質性標的分析物が存在する。上記のような酵素に加えて、好適なタンパク質標的分析物として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:(1)免疫グロブリン;(2)ホルモンおよびサイトカイン(これらの多くは、細胞受容体に対するリガンドとして作用する);ならびに(3)他のタンパク質。
【0090】
標的分析物が酵素でなく、以下により詳細に記載するサンドウィッチアッセイが行われる一態様によれば、以下により詳細に記載する酵素標識は、ベータガラクトシダーゼであってよい。あるいは、酵素標識は、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペロキシダーゼであってよいが、これらに限定されない。
【0091】
さらに、好適な標的分析物として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:環境汚染物質(農薬、殺虫剤、トキシンなどを含む);化学物質(溶媒、ポリマー、有機物質などを含む);治療性分子(therapeutic molecule)(治療性分子および誤用される薬物(abused drug)、抗生物質を含む);生体分子(ホルモン、サイトカイン、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜抗原、および受容体(神経、ホルモン、栄養因子、および細胞表面受容体)またはそれらのリガンドなど);全細胞(whole cell)(原核細胞(病原性細菌など)および真核細胞を含み、哺乳動物の腫瘍細胞を含む);ウイルス(レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスなどを含む);ならびに胞子など。
【0092】
IV.酵素基質
標的分析物(単数または複数)がマイクロウェル(単数または複数)中に捕獲された後(および特定の態様によれば洗浄の工程の後)で、反応成分がアレイに添加される。本明細書において使用される場合、「反応成分」により、酵素または酵素性分子と接触した場合に酵素反応に影響を及ぼす分子を意味する。「影響を及ぼす」により、反応または阻害反応を活性化するか、または改変する(例えば、遅延または加速させる)か、または反応を阻害することを含むことを意味するが、これらに限定されない。一態様によれば、反応成分は、色素生産性酵素基質である。「色素生産性酵素基質」とは、本明細書において使用される場合、酵素によって酵素反応の結果として色素生産性生成物に変換されるあらゆる分子である「色素生産性」とは、光学(可視光)スペクトルにおける色または色素への関連を意味し、蛍光発生性を含む。
【0093】
色素生産性基質は、公知であるか、6つの酵素分類のいずれかの酵素について作られることができることが、当該分野において理解される。したがって、特定の酵素との反応において色素生産性生成物を生成することができるあらゆる公知の色素生産性基質を、本発明において用いることができ、これは、本明細書においてその全体が参考として援用されるThe Handbook - A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, Tenth Ed., Chapter 10, http://probes.invitrogen.com/handbook/sections/1000.htmlにおいて開示される色素生産性酵素基質のいずれかを含む。
【0094】
本発明のアッセイが、本明細書においてさらに説明するような酵素標識がベータガラクトシダーゼであるサンドウィッチアッセイである一態様によれば、アレイに添加される基質は、レゾルフィン−β−D−ガラクトピラノシドなどのベータガラクトシダーゼ基質である。
【0095】
V.アッセイ方法
本発明のアレイは、いくつかの異なるアッセイ方法のために用いることができる。より具体的には、本発明は、(a)標的分析物の検出、および(b)サンプル中の標的分析物濃度の定量を提供する。
【0096】
一般に、本発明のシステムまたはアレイは、目的の分析物に露出され(または、目的の分析物を含有するサンプルと接触させ)、分析物は、捕獲成分の少なくとも1つへの標的分析物の固定化に好適な条件、すなわち、一般的な生理学的条件下において、マイクロウェル中で捕獲成分により固定される。本発明の用途を目的とする場合、用語「固定化」とは、マイクロウェル中で捕獲成分に付着、結合または付加(affix)されることを意味する。したがって、マイクロウェル中での任意の分析物分子と捕獲成分との間の相互作用は、マイクロウェル中での分析物分子の固定化をもたらす。
【0097】
本発明の一局面において、目的のサンプルを、約45分間〜約75分間の期間にわたり、本発明のアレイと接触させる(または、アレイをサンプル中でインキュベートする)。あるいは、アレイとサンプルとを、約50分間〜約70分間の期間にわたり接触させる。さらなる代替において、インキュベーションの期間は、約1時間である。
【0098】
一態様によれば、アレイとサンプルとを接触させた後で洗浄の工程を行う。洗浄の工程は、捕獲成分に結合していないあらゆる標的分析物または非標的分子を洗い流すことを目的とする。あるいは、洗浄の工程は必要でない。
【0099】
本発明の一局面において、次いで、二次結合リガンドをアレイに添加する。一般に、二次結合リガンドを、本明細書においてより詳細に記載されるように、アッセイが「サンドウィッチアッセイ」などの間接的アッセイである場合(標的分析物が酵素でない場合)に添加する。上記のとおり、二次結合リガンドは、結合した標的分析物に会合するかまたは結合し、酵素成分を含む。二次結合リガンドは、リガンドがアレイ中の全ての結合した標的分析物と確実に接触するために充分な量で添加する。あるいは、例えば標的分析が直接的に検出される場合、二次結合リガンドは添加しない。
【0100】
次いで、上記のような色素生産性酵素基質を、アレイに導入するかまたは添加する。色素生産性酵素基質は、全ての捕獲された標的分析物と接触するために充分な量で提供する。選択された基質は、酵素成分と反応するか、または酵素成分によって修飾され、その結果、反応は、色素生産性生成物を生成し、したがって光学シグナルを生成する。アレイ中での色素生産性生成物の存在は、分析物および捕獲成分および酵素基質(および一部の場合においては二次結合リガンド)の相互作用に基づいて、分析物の光度および/または濃度についての情報を提供することができる。
【0101】
本発明の一態様において、酵素基質を添加した後で、マイクロウェルを密封する。すなわち、密封成分を基材の面と接触させることにより、各々のマイクロウェルを流動体に関して分離し、その内容物を密封する。「密封成分」とは、本明細書において使用される場合、アレイ基材の全表面を覆うために充分に大きく、各々の密封容器の内容物が容器から漏出することができないように各々の反応容器が密封されるかまたは分離されるようにアレイ基材表面と接触することができる、任意の材料またはデバイスとして定義される。一態様によれば、密封成分は、シリコーンエラストマーのガスケットであって、基材の全体にわたって均一な圧力を伴って基材に対して配置される。各々のマイクロウェル中に内容物を密封することにより、酵素反応がマイクロウェル中で進行することができ、それによって検出可能な量の色素生産性生成物を生成し、それがマイクロウェル中に検出の目的のために残留することができる。すなわち、酵素は、基質を色素生産性生成物に変換し、これが各々の密封された容器中で局所的に高い濃度に蓄積し、検出可能な色素生産性シグナルを生じる。
【0102】
一態様によれば、本発明は、密封成分を適用する機械的なプラットフォームを備えた顕微鏡システムを提供する。プラットフォームは、顕微鏡のステージの下で、顕微鏡システム上に配置される。アッセイ成分を各々のウェルに添加した後で、密封成分を、機械的プラットフォームにより適用される均一な圧力を用いて、扁平表面(例えば、顕微鏡スライドグラス)とアレイ基材との間にサンドウィッチする。
【0103】
アッセイは、当業者に理解されるように、多様な実験条件下において行うことができる。多様な他の試薬をスクリーニングアッセイにおいて含めることができる。これらは、塩、中性タンパク質、例えばアルブミン、洗剤などの試薬を含み、これらは、至適なタンパク質−タンパク質結合を促進するため、および/または非特異的もしくはバックグラウンドの相互作用を低減するために用いることができる。また、その他にアッセイの効率を改善する試薬、例えばプロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などを用いてもよい。成分の混合物は、必要な結合を提供する任意の順序で添加することができる。当該分野において公知であるように、多様なブロッキングおよび洗浄の工程を利用することができる。
【0104】
光学サインの活性または変化を示すマイクロウェルを、従来の光列(optical train)および光学検出システムにより同定することができる。用いられる特定の色素生産性酵素基質およびそれらの色素生産性生成物が作動する波長に依存して、特定の波長のために設計された光学フィルターを、マイクロウェルの光学調査のために用いることができる。好ましい態様において、本発明のシステムまたはアレイは、基材としての光ファイバー束または光ファイバーアレイと組み合わせて使用される。
【0105】
一態様によれば、本発明のアレイは、その全体が本明細書において参考として援用される米国特許出願第09/816,651号において記載されるシステムのような光学検出システムと組み合わせて用いてもよい。例えば、一態様によれば、本発明のアレイは、光ファイバーの集合の遠位端であって、被覆ファイバーから構成される光ファイバー束を含み、したがって、光はファイバー間で混じらない。09/816,651出願において示されるように、束の近位端は、z−翻訳ステージおよびx−yマイクロポジショナーにより受容される。
【0106】
米国特許出願第09/816,651号の光学検出システムは、以下のように作動する。束の遠位端から戻る光は、倍率交換装置(magnification changer)へのアタッチメントを通過し、該アタッチメントは、ファイバーの近位または遠位端のイメージのサイズの調整を可能にする。倍率交換装置を通過する光は、次いで、シャッター(shutter)され、第2のホイールによりフィルターされる。光は、次いで、電荷結合素子(CCD)カメラでイメージ化される。コンピューターがイメージングを処理するソフトウェアを実行し、CCDカメラからの情報を処理し、また、可能であれば第1および第2のシャッターおよびフィルターのホイールを制御する。
【0107】
本発明のアレイまたはシステムは、多様な適合する方法を用いて、光ファイバー束の遠位端に取り付けることができる。各々の光ファイバー束の中心にウェルを形成する。したがって、束の各々の光ファイバーが、そのファイバーの遠位端の中心に形成された単一のマイクロウェルからの光を運搬する。この特徴は、個々のマイクロウェルの光学サインの調査を可能とし、各々のマイクロウェル中の反応を同定するために必要である。したがって、束の末端をCCDアレイ上にイメージングすることにより、マイクロウェルの光学サインを個々に調査することができる。
【0108】
A.検出
本発明の一局面において、本発明のアレイは、サンプル中の標的分析物の存在を検出するために用いることができる。より具体的には、本発明は、酵素反応の生成物を標的分析物の存在の指標として検出するための方法を提供する。
【0109】
検出の方法は、直接的であっても間接的であってもよい。標的分析物が酵素である場合、分析物は、直接的な検出の方法によって同定される。あるいは、標的分析物が酵素ではなく、したがって、色素生産性酵素の基質の存在下において色素生産性生成物を生成し得ない場合、分析物は、間接的な検出の方法によって同定される。
【0110】
直接的な検出の方法は、酵素である標的分析物に関し、以下のように進行する。第1に、目的のサンプルとアレイとを、上記でより詳細に記載したように、好適な条件下において接触させる。その後、色素生産性酵素の基質を添加する。
【0111】
任意の所与のマイクロウェル中の標的分析物の存在または不在を、次いで、光学的調査により検出する。すなわち、色素生産性生成物の生成によって引き起こされる光学的シグナルのあらゆる変化が検出される。標的分析物を含有する任意のマイクロウェル中で、分析物は、何らかの方法で基質を修飾するかまたは基質に作用し、それにより色素生産性生成物の放出をもたらし、該マイクロウェルからの光学シグナルの変化を生じる。次いで、色素生産性反応生成物を、光学的に検出する。
【0112】
本発明の一態様において、上記のように、酵素の基質を添加した後でマイクロウェルを密封する。
【0113】
間接的な検出の方法は、酵素特性を有さない標的分析物に関する。本発明と共に用いることができる2つの間接的方法は、「サンドウィッチ」アッセイおよび「競合的」アッセイである。
【0114】
サンドウィッチアッセイは、図2に示すように行うことができる。第1に、目的のサンプルとアレイ10とを、図2aに示すように、および上記により詳細に記載するように接触させる。好適な条件下において、サンプル中に存在する標的分析物12は、図2bに示すように、マイクロウェル14中の捕獲成分16によって捕獲される。一態様によれば、次いで洗浄の工程を行う。
【0115】
次いで、図2cに示すように、溶液結合リガンド18(また、本明細書において「二次結合リガンド」として言及される)をアレイ10に添加する。溶液結合リガンド18は、標的分析物12に結合する点において捕獲成分16と類似する。溶液結合リガンド18は、捕獲結合リガンド16と同一であっても異なっていてもよい。捕獲された標的分析物12に対する溶液結合リガンド18の結合は、ある種の「サンドウィッチ」を形成する。標的分析物が不在の場合、溶液結合リガンド18は洗い流される。
【0116】
溶液結合リガンド18は、結合成分22および酵素標識24の2つの成分を有する。結合成分22は、溶液結合リガンド18の標的分析物12に結合する部分である。典型的には、溶液結合リガンド18は、標的分析物12の、捕獲成分16とは異なる部分に結合する。なぜならば、捕獲成分16と溶液結合リガンド18との両方が同一の部分に結合する場合、溶液結合リガンド18は、捕獲された標的分析物12には結合することができないからである。したがって、選択された二次結合リガンド18は、標的分析物12が捕獲成分16を介してマイクロウェル14に結合したままで、標的分析物12に結合することができる。
【0117】
酵素標識24は、溶液結合リガンド18の酵素活性を奏する部分である。一態様によれば、酵素標識24は、溶液結合リガンド18に付加された酵素である。
【0118】
その後、色素生産性酵素基質が添加される。
【0119】
本発明の一態様において、上記のように酵素基質が添加された後でマイクロウェルを密封する。
【0120】
次いで、任意の所与のマイクロウェル中の標的分析物の存在または不在を、光学的調査によって検出する。すなわち、色素生産性生成物の生成によって引き起こされる光学的シグナルのあらゆる変化が検出される。標的分析物および二次結合リガンドを含有する任意のマイクロウェル中で、二次結合リガンドに会合した酵素は、何らかの方法で基質を修飾するかまたは基質に作用し、それにより色素生産性生成物を生成し、該マイクロウェルからの光学シグナルの変化を生じる。次いで、生成物を光学的に検出する。
【0121】
競合的アッセイは以下のように作用する。第1に、標識された分子を本発明のアレイに添加する。ここで、標識は、酵素または酵素成分である。この態様において、選択された標識分子は、標識分子のアレイへの添加がマイクロウェル中の捕獲成分への標識分子の結合をもたらすように、捕獲成分に結合する。
【0122】
次いで、目的のサンプルとアレイとを、上でより詳細に記載したように接触させる。アレイ中の標的分析物の存在は、標識された分子の移動(displacement)、および分析物の捕獲成分への結合を引き起こす。移動は、以下の理由により起こる:この態様において、選択された捕獲成分は、標識された分子または標的分析物のいずれかに結合することができ、したがって、競合的結合状態をもたらす。その結果、標識された分子がマイクロウェル中で捕獲成分に結合しており、標的分析物が添加される場合、標的分析物は、好適な条件下において標識された分子を移動する。
【0123】
一態様によれば、次いで、あらゆる非結合の標識された分子をアレイから除去するために、洗浄の工程を行う。
【0124】
その後、色素生産性酵素基質を添加する。そして、上記のように、本発明の一局面によれば、酵素基質を添加した後でマイクロウェルを密封する。あるいは、マイクロウェルを密封しない。
【0125】
次いで、任意の所与のマイクロウェル中の標的分析物の存在または不在は、光学的調査により検出することができる。しかし、上記の光学的調査とは異なり、この調査においては、色素生産性生成物を欠いていることが、マイクロウェル中の標的分析物の存在を示す。標的分析物を含有する任意のマイクロウェルにおいて酵素活性はおこらず、該マイクロウェルからの光学的シグナルの変化は起こらない。対照的に、標識された分子が未だ存在する任意のマイクロウェルにおいて、光学的シグナルが検出される。
【0126】
競合的アッセイの態様の代替的バージョンにおいて、標識された分子および目的のサンプルの両方をアレイに同時に決まった容積で添加する。このバージョンにおいて、標的分析物および標識された分子は、捕獲成分の結合部位について直接的に競合する。
【0127】
I.同一の標的分析物に対する同一の捕獲成分の亜集団
1つの検出の態様によれば、センサー冗長性(sensor redundancy)が用いられる。この態様において、「亜集団」として言及される同一の捕獲成分を含む複数の反応容器が用いられる。すなわち、各々の亜集団は、アレイのマイクロウェル中に存在する複数の同一の捕獲成分を含む。さらに、一態様によれば、各々の亜集団は、同一の捕獲成分を含む複数のマイクロウェルを含む。所与のアレイについて多数の同一の捕獲成分を用いることにより、各々のマイクロウェルからの光学シグナルを、亜集団について組み合わせることができ、以下に概説するように、任意の数の統計学的分析を行うことができる。このことは、多様な理由のために行い得る。
【0128】
例えば、時間により変化する測定において、冗長性により、システムのノイズを著しく低減することができる。時間に基づかない測定については、冗長性により、データの信頼度を著しく高めることができる。
【0129】
亜集団の数は、一態様によれば、2から、任意の公知のアレイの限界および異なる捕獲成分の数を前提として、可能な任意の亜集団の数までの範囲であってよい。あるいは、数は、約2〜約10の範囲であってよい。さらなる代替において、数は、約2〜約5の範囲であってよい。
【0130】
一態様において、複数の異なる捕獲成分が用いられる。当業者に理解されるように、亜集団中の同一の捕獲成分の数は、センサーアレイの用途および使用に伴い変化する。一般に、2〜数千個のいくつの同一の捕獲成分を所与の亜集団において用いてもよく、2〜100個が好ましく、2〜50個が特に好ましく、5〜20個がことさら好ましい。一般に、予備の結果は、亜集団中のおよそ10個の同一の捕獲成分が充分な利点をもたらすが、一部の用途については、より多くの同一の捕獲成分を用いることができる。
【0131】
一旦得られると、各々の亜集団内の(すなわち、同一の捕獲成分を有する)複数のマイクロウェルからの光学応答シグナルを、基線の調節、平均化、標準偏差分析、分布およびクラスター分析、信頼区間分析、平均値試験などを含む多様な方法において、操作して分析することができる。
【0132】
2.同一の標的分析物に対する複数の異なる捕獲成分
センサー冗長性に加えて、一態様による本発明のアレイは、単一の標的分析物に指向するが同一ではない複数の捕獲成分を利用する。この態様は、1より多くの異なる捕獲成分を各々のマイクロウェル中に、または、異なるマイクロウェル中に異なる捕獲成分を、提供する。一例において、単一の2または3以上の捕獲成分が結合することができる標的分析物を提供することができる。このことにより、非特異的結合相互作用が統計学的に最少化されるので、信頼のレベルが高まる。この態様において、タンパク質性標的分析物を評価する場合、好ましい態様は、標的の異なる部分に結合する捕獲成分を利用する。例えば、同一の標的タンパク質の異なる部分に対する2または3以上の抗体(または抗体フラグメント)を捕獲成分として使用し、好ましい態様は、異なるエピトープに対する抗体を利用する。
【0133】
同様に、核酸標的分析物を評価する場合、余剰の核酸プローブは、オーバーラップしているか、隣接しているか、または空間的に分離している。しかしながら、2つのプローブが単一の結合部位について競合しないことが好ましく、したがって、隣接しているか分離しているプローブが好ましい。
【0134】
この態様において、複数の異なる捕獲成分を用いてもよく、約2〜約20が好ましく、約2〜約10が特に好ましく、および2〜約5がことさらに好ましく、これは、2、3、4または5を含む。しかしながら、上記のように、用途に依存して、より多くを用いてもよい。
【0135】
3.複数の標的分析物に対する複数の異なる捕獲成分
別の態様によれば、本発明のアレイは、複数の標的分析物に指向された複数の異なる捕獲成分を利用する。この態様は、各々のマイクロウェル中に1より多くの異なる捕獲成分、または異なるマイクロウェル中に異なる捕獲成分を含む。一例において、同一のマイクロウェルまたは異なるマイクロウェル中の2または3以上の捕獲成分が結合することができる、2または3以上の標的分析物を提供してもよい。
【0136】
この態様において、1以上の標的分析を同定することができる。例えば、各々の異なる分析物が異なる酵素であるかまたは酵素表面分子などの異なる酵素成分を有する限り、2または3以上の標的分析物を同定することができる。一態様において、標的分析物は、複数の酵素基質を用いて同定され、ここで、各々の基質は、好適な酵素との相互作用の際に異なる色を生じる。したがって、各々の標的分析物は、基質との反応により生じた色に基づいて区別することができる。代替的態様において、標的分析物は、各々が同一の色を生じる複数の基質を用いて同定される。したがって、各々の標的分析物は、連続的に基質を添加することによって区別することができる。
【0137】
この態様において、複数の異なる捕獲成分を用いることができ、約2〜約20が好ましく、約2〜約10が特に好ましく、および2〜約5がことさらに好ましく、これは、2、3、4または5を含む。しかしながら、上記のように、用途に依存して、より多くを用いてもよい。
異なる標的分析物に指向された捕獲成分亜集団および同一の標的分析物に指向された複数の捕獲成分を含む上記の異なるアッセイの構成の各々はまた、以下に記載する定量のために利用してもよいことに注意されたい。
【0138】
B.定量
本発明の一態様によれば、本発明は、サンプル中の標的分析物の検出のために用いるのみならず、またサンプル中の標的分析物の定量のために用いることもできる。すなわち、標的分析物を含有する反応容器のパーセンテージと、サンプル中の標的分析物の濃度との間に、相関関係が存在する。したがって、本発明の定量方法により、標的分析物を捕獲したマイクロウェルのパーセンテージに基づき、サンプル中の標的分析物の量の計算が可能となる。
【0139】
理論に拘束されることなく、定量方法は、使用される反応容器の数および用量が、この技術により決定することができる濃度の動的範囲を支配するという事実によって、部分的に駆動される。すなわち、本発明のアレイ中の反応容器の数および容積に基づき、溶液中の標的分析物の濃度の範囲の概算を行うことができ、これにより、本発明の方法を用いて濃度を決定することができる。
【0140】
例えば、例2において開示されるアレイは、各々が46fLの容積を有する反応容器を備え、3.6×10−11Mの濃度を有するβ−ガラクトシダーゼの溶液は、平均して、1容器あたり1酵素分子を得る。しかしながら、標的分析物濃度を有する溶液を、反応容器のアレイ中に好適な範囲で分配することは、正確に1容器あたり1酵素分子の分配をもたらすものではないことが重要である。統計学的には、一部の容器は複数の分子を有し、他の容器はゼロ個の分子を有する。1容器あたりの酵素分子の数が多い場合、データをガウス分布にフィットさせることができる。酵素分子の反応容器に対する比がゼロに近づくにつれ、ポワソン分布が適用される。この極限分布を用いて、多数の試行において起こる稀な事象の確率を計算することができる。例えば、ポワソン統計に基づき、3.6×10−11Mの濃度について、1容器あたりゼロ〜5の間の酵素分子が観察され、最もあり得る値は、ゼロおよび1である。
【0141】
方程式1は、予測される1試行あたりの事象の平均数μに基づいてv事象を観察する確率を決定するために用いることができる。
方程式1: Pμ(v)=e−μ(μv/v!)
【0142】
用いられる濃度が3.6×10−11Mよりはるかに低い場合、予測される平均は、例外的に低くなり、分布は狭まり、1試行あたり0または1の事象以外を観察する確率は、全ての実験ケースにおいて起こり得ない。これらの低い濃度では、活性な反応容器のパーセンテージとバルク酵素濃度との間の関係は、ほぼ直線的である。したがって、この知見に基づき、本明細書において記載されるような単純なデジタル読み出しシステムによってサンプル中の標的分析物の濃度を決定するために、本発明のアレイを用いることができる。
【0143】
一態様によれば、本発明の定量方法は、以下のように行うことができる。方法は、第1に上記のいずれかの検出方法によりマイクロウェルのアレイ中の標的分析物を検出することを含む、デジタル読み出しシステム(また、「バイナリ読み出しシステム」としても言及される)である。次いで、応容器の数を計数し、反応容器の全数のパーセンテージを計算する。すなわち、高密度の反応容器のアレイと組み合わせての応(yes)または否(no)応答の利用により、β−ガラクトシダーゼのバルク濃度のデジタル読み出しを可能とする。この読み出しは、活性な酵素分子を含有する容器をアレイにわたって計数することにより達成され、結果として生じる「活性なアレイ」のパーセンテージは、酵素濃度に相関する。本発明のアレイにおいては同時に多数の容器が調査されることを前提として、多数のウェルが低い比においても統計学的に有意なシグナルを提供するので、酵素分子の反応容器に対する比は、1:500まで低くてもよい。
【0144】
理論に限定されることなく、本発明の定量方法は、受容可能な解像度で見ることができる個々の反応容器の数によってのみ限定されると考えられる。したがって、より高い密度のCCDチップを用いて調査される容器の数を拡大することにより、より低い標的濃度で発光する小数の活性なウェルの統計により下限が定義されるので、検出の限界を低くする。一方、動的範囲の上限は、バイナリ読み出しからのウェル間の偏差によって制御される。標的濃度が高くなるにつれ、ガウス分布が標的分子結合のより好ましい近似値となり、バイナリ読み出しは失われる。より高い濃度の標的は、各々のウェルを占有する多数の酵素分子の広い分布をもたらし、したがって、活性なウェルのパーセンテージの非直線的増大への移行をもたらす。
【0145】
この技術の制限は、動的範囲の閾値の上下で見出される。濃度が動的範囲の下限より下となると、酵素分子の数が少なすぎ、充分な占有されたウェルを観察することができず、したがって、統計学的に有意な数のウェルが酵素分子により占有されることを確実にするために、ウェルの数を増やさなければならない。極めて希釈された濃度についての結果は、活性を示すと予測される反応容器の数が非常に少ないことに起因して、それらに関連する大きな相対的誤差を有する。予測されるポワソン値からのわずかな偏差が、この場合、大きな誤差を生じる。反応容器の100%が少なくとも1個の酵素分子を含有する場合に、この技術に対する究極的な上限が生じる。この限界において、高い酵素濃度の2つの溶液の間の区別は不可能である。活性な容器のパーセンテージが100%に近づくにつれ、濃度と活性な容器のパーセンテージとの間の直線性が失われる。この状況は、正規分布が次第により好ましい結果の近似値となるにつれて、分布の広がりをもたらす。
【0146】
本発明の一局面において、アレイはまた、酵素動態を分析するために用いることができる。「酵素動態」とは、本明細書において使用される場合、酵素により制御される反応の速度の研究を指す。低い基質濃度における酵素反応の速度は、基質濃度に対して比例的である(「酵素依存的」である)ことが、酵素動態の分野において理解される。このことは、第1の規則として言及される。さらに、高い基質濃度における反応の速度は、最大速度に達し、反応が飽和しているので、基質濃度に依存しないことが理解される。したがって、反応速度を基質濃度の関数としてプロットすると、線は、初期には基質が増加すると共に直線的に増大し、次いで基質濃度が飽和に近づくにつれて水平化し始める。
【0147】
したがって、一態様によれば、本発明のシステムおよびアレイを用いて、任意の特定の酵素の動態を研究することができる。反応速度は、酵素によって、例えば、アロステリック阻害により引き起こされる反応の阻害を含む多様な理由により変化する。本発明のアレイにより、これらの変化する動態学的特性の研究が可能となる。
【0148】
一態様によれば、動態は以下の様式において試験される。標的分析物を捕獲成分に結合させ、基質を添加し、反応容器を密封する。有限の量の基質が反応容器中に存在し、容器の密封によってさらなる基質は添加され得ないことを前提として、経時的に検出される色素生産性生成物の量に基づいて、反応速度を決定することができる。
【0149】
C,シグナルおよび感受性の増大
本発明の一態様は、上記の単一分子の検出および定量の多様な態様についてシグナルおよび感受性を増大させるために、生体分子、および好ましくは複数の生体分子(例えばオリゴヌクレオチド)、に付着した金属または半導体のナノ粒子を企図する。一態様において、生体分子(例えばオリゴヌクレオチド)は、ナノ粒子に付着していない末端において蛍光分子で標識される。本発明は、ナノ粒子の型またはアッセイにおける1つのみの型のナノ粒子の使用に限定されることを意図しない。一部の態様において、2または3以上の異なる型またはサイズのナノ粒子が用られる。例えば、異なるサイズ(例えば、直径50nmおよび100nm)の金ナノ粒子は、異なる色の光を分散し(それらの異なる表面プラズモン共鳴に起因する)、これらは、同一のアレイにハイブリダイズされた異なるDNA標的を標識するために用いることができる。
【0150】
本発明の実施において有用なナノ粒子として、金属(例えば、金、銀、銅およびプラチナ)、半導体(例えば、CdSe、CdS、およびCdS、またはZnSでコートされたCdSe)、ならびに磁性体(例えば、フェロマグネタイト(ferromagnetite))のコロイド材料が挙げられる。金属、半導体および磁性体のナノ粒子を製造する方法は、当該分野において周知である。例えば、Schmid, G. (ed.) Clusters and Colloids (VCH, Weinheim, 1994); Hayat, M. A. (ed.) Colloidal. Gold: Principles, Methods, and Applications (Academic Press, San Diego, 1991); Massart, R., IEEE Taransactions On Magnetics, 17, 1247 (1981); Ahmadi, T. S. et al., Science, 272, 1924 (1996); Henglein, A. et al., J. Phys. Chem., 99, 14129 (1995); Curtis, A. C, et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., '27, 1530 (1988)を参照。本発明の実施において有用な他のナノ粒子として、ZnS、ZnO、TiO2、AgI、AgBr、HgI2、PbS、PbSe、ZnTe、CdTe、In2S3、In2Se3、Cd3P2、Cd3As2、InAsおよびGaAsが挙げられる。例えば、Weller, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 32, 41 (1993); Henglein, Top. Curr. Chem., 143, 113 (1988); Henglein, Chem. Rev., 89, 1861 (1989); Brus, Appl. Phys. A., 53, 465 (1991); Bahncmann, in Photochemical Conversion and Storage of Solar Energy (eds. Pelizetti and Schiavello 1991), page 251; Wang and Herron, J. Phys. Chem., 95, 525 (1991); Olshavsky et al., J. Am. Chem. Soc, 112, 9438 (1990); Ushida et al., J. Phys. Chem., 95, 5382 (1992)を参照。好適な金ナノ粒子はまた、例えばTed Pella, Inc., Amersham CorporationおよびNanoprobes, Inc.から市販されている。
【0151】
ナノ粒子の成長を制御するための方法が存在する。Mirkinらに対する米国特許第7,033,415号(本明細書により参考として援用される)は、三角形のナノプリズムの融合を伴う、銀ナノ構造のための新規の型のプラズモン駆動成長機構を記載する。この機構は、プラズモン励起により駆動され、協調性が高く、二峰性の粒子サイズ分布を生じる。これらの方法において、成長プロセスは、二峰性分布および単峰性分布の間で、ナノ粒子の二光束照射を用いて選択的に切り替えることができる。ナノ構造の成長に対するこの型の協調的な光制御により、30〜120nmの範囲において予め選択された接線の長さを有する単分散のナノプリズムの合成が、単純に一方の光束を二峰性成長をオフにするために使用し、他方(450〜700nmの範囲で変化する)を粒子サイズを制御するために使用することにより可能となる。多様なサイズが企図されるが、ナノ粒子のサイズは、好ましくは約5nm〜約150nm(平均直径)、より好ましくは約5nm〜約50nm、最も好ましくは約10nm〜約30nmである。ナノ粒子はまた、ロッドでもよい。
【0152】
本発明において核酸を検出する上で使用するために好ましいのは、金ナノ粒子である。米国特許第7,169,556号(本明細書により参考として援用される)を参照のこと。金コロイド粒子は、その美しい色を生じる帯域について高い減衰係数を有する。これらの強い色は、粒子サイズ、濃度、粒子間距離、ならびに凝集の程度および凝集物の形状(構造)により変化し、これらの材料を比色アッセイのために特に魅力的にしている。例えば、ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドとオリゴヌクレオチドおよび核酸とのハイブリダイゼーションは、裸眼で可視し得る迅速な色の変化をもたらす。
【0153】
金ナノ粒子はまた、本発明において、上記で述べた同じ理由のために、ならびに、それらの安定性、電子顕微鏡によるイメージングの容易性、およびよく特徴付けられたチオール官能基による修飾に起因して、ナノファブリケーションにおける使用のために好ましい。ナノファブリケーションにおける使用のためにまた好ましいのは、半導体ナノ粒子であり、これは、その特有の電気的特性および発光性特徴のためである。
【0154】
あるいは、一態様において、本発明は、イメージング剤および/またはコード化剤(すなわち、アレイに導入された化合物(生体分子を含む)の検出および/または同定を可能とする剤)として、ならびに、アレイの位置においてそれら自体が移動される物質として、ナノ結晶の使用を企図する。一部の態様において、アレイ中での単一分子の検出は、ナノ結晶の使用により増強される。一態様において、ナノ結晶は、標的分析物に付着または結合する。別の態様において、ナノ結晶は結合パートナーに付着し、結合パートナーは次いで標的分析物に結合する。さらなる態様において、ナノ結晶は、阻害剤、基質、または他のリガンドに付着する。他の態様において、ナノ結晶は、光ファイバー検知技術とともに用いられる。本発明の一部の態様において、イメージングモジュールは、生体分子にカップリングされた硫化亜鉛によりキャッピングされたセレン化カドミウム(Sooklal, Adv. Mater., 10:1083 (1998))などの量子ドットの表面修飾(例えば、Chan and Nie, Science 281 :2016 (1998)を参照)を含む。
【0155】
用語「半導体ナノ結晶」、「量子ドット」、および「Qdot(登録商標)ナノ結晶」は、本明細書において交換可能に用いられ、直径約1nm〜約1000nmまたはその間の任意の整数または整数の分数、好ましくは約2nm〜約50nmまたはその間の任意の整数または整数の分数、より好ましくは約2nm〜約20nm(約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20nmなど)の無機結晶を指す。半導体ナノ結晶は、励起により電磁放射を放出することができ(すなわち、半導体ナノ結晶は発光性であり)、1または2以上の第1の半導体材料の「コア」を含み、第2の半導体材料の「シェル(shell)」によって囲まれていてもよい。半導体シェルに囲まれた半導体ナノ結晶のコアは、「コア/シェル」半導体ナノ結晶として言及される。囲んでいる「シェル」の材料は、好ましくは、コア材料のバンドギャップエネルギーより大きいバンドギャップエネルギーを有し、「コア」基材のものに近い原子スペーシング(atomic spacing)を有するように選択される。コアおよび/またはシェルは、グループII〜VI(ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTeなど)、およびIII〜V(GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb5など)、およびIV(Ge、Siなど)の材料、ならびにこれらの合金または混合物を含む半導体材料であってよいが、これらに限定されない。
【0156】
半導体ナノ結晶は、必要に応じて、有機キャッピング剤の「コート」により囲まれる。有機キャッピング剤は、任意の多数の材料であり得るが、半導体ナノ結晶表面に対するアフィニティーを有する。一般に、キャッピング剤は、単離された有機分子、ポリマー(またはポリマー化反応のためのモノマー)、無機複合体、および広範囲の結晶構造であり得る。コートは、可溶性、例えば、コートされた半導体ナノ結晶を選択された溶媒中に均質に分散させる能力、官能性、結合特性などを担持させるために用いられる。例えば、結合特性は、ナノ結晶(単数または複数)が選択された標的分析物に結合するように導入することができる。さらに、コートは、半導体ナノ結晶の光学特性を仕立てるために用いてもよい。キャッピングされた半導体ナノ結晶を製造するための方法は、本明細書により参考として援用される米国特許第6,274,323号において議論される。
【0157】
なお他の態様において、アレイ内での単一の分子の検出は、デンドリマーの使用により増強される。一態様において、デンドリマーは、結合パートナーに付着し、結合パートナーは次いで標的分析物に結合する。さらなる態様において、デンドリマーは、阻害剤、基質、または他のリガンドに付着する。他の態様において、デンドリマーは、光ファイバー検知技術とともに用いられる(例えば、Yeら、米国特許出願第20040131322号、PCT出願第WO/2004057386号、およびThomasら、Biophysical Journal, 86(6), 3959 (2004)を参照。これらの各々はその全体が本明細書において参考として援用される)。
【0158】
デンドリマー性ポリマーは、詳しく記載されている(その全体が本明細書において参考として援用されるTomalia, Advanced Materials 6:529 (1994); Angew, Chem. Int. Ed. Engl., 29:138 (1990)を参照)。デンドリマー性ポリマーは、典型的には直径1〜20ナノメートルの範囲の規定の球状構造として合成される。分子量および末端の基の数は、ポリマーの世代(generation)(層の数)の関数として指数関数的に増大する。ポリマー化のプロセスを開始させるコア構造を基として、異なる型のデンドリマーを合成することができる。
【0159】
デンドリマーのコア構造は、全体的形状、密度および表面官能性などのいくつかの分子の特徴を決定する(Tomalia et al., Chem. Int. Ed. Engl., 29:5305 (1990))。球状のデンドリマーは、アンモニアを三価のイニシエーターコアとして、またはエチレンジアミン(EDA)を四価のイニシエーターコアとして有することができる。近年に記載されたロッド形状のデンドリマー(Yin et al., J. Am. Chem. Soc, 120:2678 (1998))は、多様な長さのポリエチレン−イミンの直線状コアを使用する。コアが長いほど、ロッドが長い。樹状巨大分子は、キログラムの量で市販されており、バイオテクノロジーの用途のための現行の適性製造基準(good manufacturing processes:GMP)下で製造することができる。
【0160】
デンドリマーは、エレクトロスプレー−イオン化質量分析法、13C核磁気共鳴分光法、1H核磁気共鳴分光法、高速液体クロマトグラフィー、多角レーザー光拡散によるサイズ排除クロマトグラフィー、紫外線分光分析法、キャピラリー電気泳動およびゲル電気泳動を含む多数の技術により特徴付けることができるが、これらに限定されない。これらの試験は、ポリマー集団の均質性を確認し、GMP適用のためのデンドリマー製造の品質コントロールのために重要である。
【0161】
多数の米国特許は、デンドリマーを製造するための方法および組成を記載する。本発明において有用であり得るいくつかのデンドリマー組成の説明を提供するために、これらの特許の一部の例を以下に挙げるが、これらは説明としての例にすぎず、本発明において多数の他の類似のデンドリマー組成を用いることができることが理解されるべきである。
【0162】
米国特許第4,507,466号、米国特許第4,558,120号、米国特許第4,568,737号、および米国特許第4,587,329号(これらの各々は、本明細書により参考として援用される)は、それぞれ、従来の星形高分子より末端の密度が高い高密度星形高分子(dense star polymer)を製造する方法を記載する。これらの高分子は、従来の星形高分子、すなわち、第3世代高密度星形高分子よりも高い/より均一な反応性を有する。これらの特許は、さらに、アミドアミンデンドリマーの性質およびデンドリマーの3次元分子直径を記載する。
【0163】
米国特許第4,631,337号は、加水分解に安定な高分子を記載する。米国特許第4,694,064号は、ロッド形状のデンドリマーを記載する。米国特許第4,713,975号は、高密度星形高分子、ならびに、ウイルス、細菌および酵素を含むタンパク質の表面を特徴付けるためのそれらの使用を記載する。架橋された高密度星形高分子は、米国特許第4,737,550号において記載される。米国特許第4,857,599号および米国特許第4,871,779号は、イオン交換樹脂、キレート化樹脂として有用な固定されたコア上の高密度星形高分子、およびかかる高分子を製造する方法を記載する。これらの特許の各々は、本明細書により参考として援用される。
【0164】
米国特許第5,338,532号(本明細書により参考として援用される)は、医薬または他の材料と関連して、デンドリマーのスターバースト複合体を指向する。この特許は、単位ポリマーあたり高濃度で担持される材料の送達、制御送達、ターゲティングされた送達、ならびに/または、複数の種、例えば薬物、抗生物質、一般的もしくは特異的なトキシン、金属イオン、核種、シグナル発生物質、抗体、インターロイキン、ホルモン、インターフェロン、ウイルス、ウイルスフラグメント、殺虫剤および抗菌剤などの送達の手段を提供するための、デンドリマーの使用を記載する。
【0165】
米国特許第6,471,968号(本明細書により参考として援用される)は、共有結合で架橋された第1および第2のデンドリマーを含むデンドリマー複合体を記載し、第1のデンドリマーは、第1の剤を含み、第2のデンドリマーは第2の剤を含み、第1のデンドリマーは第2のデンドリマーとは異なり、第1の剤は第2の剤と異なる。
【0166】
他の有用なデンドリマー型組成物は、米国特許第5,387,617号、米国特許第5,393,797および米国特許第5,393,795号において記載され、ここで、高密度星形高分子は、疎水性の外側のシェルを提供することができる疎水性基によりキャッピングすることにより修飾される。米国特許第5,527,524号は、抗体複合体中のアミノ末端デンドリマーの使用を開示する。これらの特許の各々は、本明細書により参考として援用される。
【0167】
金属イオンキャリアとしてのデンドリマーの使用は、米国特許第5,560,929号において記載される。米国特許第5,773,527号は、コームバースト(comb-burst)構造を有する非架橋の多分枝高分子およびかかる高分子を製造する方法を開示する。米国特許第5,631,329号は、分枝から保護されている第1の分枝高分子のセットを形成し;コアに接合し;第1の分枝高分子のセットを脱保護し、次いで、分枝から保護されている第2の分枝高分子のセットを形成し、第1の分枝高分子のセットを有するコアに接合することなどによる、高分子量の多分枝高分子を製造する方法を記載する。これらの特許の各々は、本明細書により参考として援用される。
【0168】
米国特許第5,898,005号および米国特許第5,861,319号は、分析物の濃度を決定するための、特異的な免疫結合アッセイを記載する。米国特許第5,661,025号は、標的部位へのヌクレオチドの送達に役立つデンドリマーポリカチオンを含む、自己集合するポリヌクレオチド送達系の詳細を提供する。この特許は、ポリヌクレオチドを真核細胞中へインビトロで導入する方法を提供し、この方法は、細胞を、ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドに非共有結合的に結合するデンドリマーポリカチオンを含む組成物と接触させることを含む。これらの特許の各々は、本明細書により参考として援用される。
【0169】
インビトロでの診断用途における使用のためのデンドリマー−抗体複合体は、デンドリマー−抗体構築物の製造について、先に示されている(Singh et al., Clin. Chem., 40:1845 (1994))。デンドリマーはまた、蛍光色素または分子ビーコンと複合体化され、細胞に入ることが示されている。これらは、次いで、細胞内の生理学的変化の評価のための検知器具に適した様式において、細胞内で検出することができる(Baker et al., Anal. Chem. 69:990 (1997))。最後に、分化したブロック共重合体としてデンドリマーが構築され、ここで、分子の外側の部分は、酵素または光誘導触媒のいずれかにより分解されてもよい(Urdea and Horn, Science 261:534 (1993))。
【0170】
一態様において、本発明は、イメージング剤、例えば、フルオロフォア(例えばフルオレセインイソチオシアネート)または量子ドットなどのイメージング剤が付着したデンドリマーの使用を企図する。フルオレセインは、Molecular Probes, Inc.から市販されるイソシアネート誘導体を介してデンドリマーの表面に容易に付着させられる。このように、本発明は、単一分子検出を増強するために、多官能性デンドリマーを提供する。
【0171】
VI.本発明の例示的な用途
本発明のシステムおよびアレイは多くの用途を有する。例えば、アレイは、基礎的な酵素学的研究、ならびにデジタル濃度測定への適用を有する。さらに、アレイは、複数の異なる酵素による研究を可能にし、タンパク質分子およびDNA標的に対する超低濃度検出の限界を拡大する。反応容器の大きなアレイを同時にモニタリングする能力とともに、分子酵素学を用いてバルク動的シグナルからの個々の酵素分子の動態(KoffおよびKon)を分けることができる。
【0172】
別の用途は、例えば、細菌またはウイルスまたは両方の環境モニタリングである。特定の細菌を含有する可能性がある環境サンプルを、本発明のアレイと接触させる。細菌を検出するために、細菌細胞を溶菌し、細菌の酵素(または1より多くの酵素)を検出のためにターゲティングする。一態様によれば、アレイに添加する前に細胞を溶菌する。あるいは、アレイにおいて、細胞を捕獲し、検出の前に溶菌する工程が存在する。さらなる代替において、細胞表面マーカーがターゲティングされる場合、溶菌は必要でない。例えば、目的の細菌またはウイルスを、標的上の表面マーカーに対して特異的な抗体により捕獲し、次いで、酵素により標識された、別の部位において標的に結合する抗体を添加することによるサンドウィッチ型アッセイによって、捕獲物を検出することができる。
【0173】
別の用途は、例えば、遺伝子発現の測定に関する。上記の通り、一態様において、標的分析物は細胞であり、これらは、いくつかの位置が単一の細胞を含有するように、アレイの位置に導入される。これは、遺伝子発現の測定における第1の工程であり、所望の場合、表面タンパク質および分泌タンパク質を検出することにより、全細胞レベルで行うことができる。あるいは、細胞を溶菌して、細胞からの転写物(または他の成分)に対応してもよい。一態様において、各々の位置は、転写物を含有しない。一態様において、正常細胞と癌細胞とを比較する。一態様において、単一の細胞のレベルにおいて遺伝子発現を試験することにより、細胞間の遺伝子発現の変化に対応する。
【0174】
本明細書において開示される全ての引用文献は、その全体が本明細書において参考として援用されることに注意されたい。
【0175】
本発明を、本明細書において好ましい態様への言及により説明したが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形式および詳細において変更を行ってもよいことを理解する。
【実施例】
【0176】
実施例1
この例において、フェムトリットルサイズの反応容器のアレイにおける酵素シグナル増幅を用いて、実際に可能であることを示す結合アッセイを行う。より具体的には、本発明のビオチン化アレイを用いて溶液中の多様な量のストレプトアビジン−β−ガラクトシダーゼ(SβG)を検出するために、多様なアッセイを行い、次いで、捕獲されたSβG分子を有するウェルの数とサンプル中のSβGの濃度との相関関係を試験する。
【0177】
この例において、エッチングされた光ファイバーアレイを用いて、各々が特に官能化されて酵素により標識された標的分子を捕獲することができるフェムトリットルサイズの反応容器の集合を作製する。単一の酵素分子を、個々の反応容器に閉じこめ、陽性シグナルを生じるために充分な数の蛍光生成物の生成を触媒する。低い標的分子濃度においては、捕獲位置の一部しか標的分子に結合せず、高密度アレイからの標的の濃度のバイナリ読み出しが可能となる。
【0178】
材料
この例における反応容器のアレイを、4.5μmの24,000個からなる研磨された1mmの光ファイバーアレイの遠位面の酸エッチングを用いて作製する。コアファイバー材料はシリカであり、各々のファイバーの周囲の被覆剤はゲルマニウムによりドーピングされたシリカであり、これはより遅い速度で腐食する。4.5μmのファイバーを、2.9μmの深さまでエッチングし、各々が46Lの容積を有する反応容器を作製する(図1aを参照)。
【0179】
ファイバーを、第1に、コアおよび被覆表面の両方に結合するアミノプロピルシランにより修飾した(図1bを参照)。被覆材へのビオチンの付着を防止するため、アミノ−シラン化ファイバーを、10秒間0.3μmのラッピングフィルムで研磨し、これにより、ファイバーアレイから最上部のアミノ−シラン化被覆層を取り除いた(図1cを参照)。研磨の後で、NHS−ビオチンをウェル表面上のアミノ基に付着させた(図1dを参照)。
【0180】
方法
第1に、捕獲成分の有効性を試験した。基材のビオチン化の有効性を試験するために、研磨されたファイバーおよび未研磨のファイバーの両方の表面上のビオチン基に、ストレプトアビジンAlexa Fluor 568(登録商標)を直接付着させ、その後、修飾された表面の画像を得た(図3を参照)。図3は、(a)未研磨のビオチン修飾光ファイバーアレイおよび(b)研磨されたビオチン修飾光ファイバーアレイに結合しているストレプトアビジンAlexa Fluor 568(登録商標)を示す。結合がマイクロウェル反応器の表面のみにおいて起きた(b)と比較した場合、画像(a)において観察されるように、ストレプトアビジンの結合は、全ての表面において起きた。したがって、未研磨のファイバーは、被覆表面を含むアレイ全体にわたって色素を示すが、研磨されたファイバーは、ウェル表面においてのみ局在した色素を示す。
【0181】
アレイの修飾の後で、ビオチン化ファイバーアレイを、1時間室温で、多様な量のSβGを含有する150μLのPBSバッファー中でインキュベートした。インキュベーション時間の間に統計学的に1または0個の分子が各々のウェルに結合するように、SβGの濃度を選択した。次いで、未結合の標的を確実に除去するために、アレイをPBSバッファー中で繰り返し洗浄した。
【0182】
SβGの結合のバイナリ読み出しのために、ファイバーアレイを、機械的プラットフォームを備えた正立顕微鏡システムに載せて固定した。β−ガラクトシダーゼの基質であるレゾルフィン−β−ガラクトピラノシド(RDG)の溶液を、反応容器を含有するファイバーの遠位端に導入し、その後密封した。顕微鏡のステージの下に位置する機械的プラットフォームにより顕微鏡スライドグラスとファイバーアレイとの間でサンドウィッチされた0.01インチの厚さのシリコーンエラストマーガスケットを用いて、基材を密封した。このプラットフォームが、束全体にわたりガスケット材料に対して均一な圧力を適用し、各々の反応チャンバーを密封し、ウェル間での酵素活性の調査を可能にし、β−ガラクトシダーゼは、RDGにハイブリダイズしてレゾルフィンを生じ、これが各々の密封された反応容器中で局所的に高い濃度に蓄積し、検出可能な蛍光シグナルを生じる(図4)。
【0183】
図4は、各々の実験について、ファイバーアレイの一部を示す。実験の各々は、異なる濃度のSβGを有する異なるサンプルを試験した。各々の実験についての濃度は、以下の通りであった:(a)128amol、(b)51amol、(c)25amol、(d)7.5amol、および(e)2.6amol。図4(f)は、コントロールを示す。
【0184】
各々の実験について5000個の反応容器の分析により、酵素分子を捕獲した反応容器のパーセンテージと調査されたサンプル中に存在する酵素の量との間の相関が可能となった。活性なウェル間の光度の差異において観察される差異は、表面効果と組み合わせての分子間の触媒活性の差異の結果である可能性が最も高い。表面効果は、反応チャンバー表面に対する酵素分子の配向に基づいて、酵素分子の相対的活性を変化させ得る
【0185】
また、反応器の表面に対する酵素の結合がビオチン−ストレプトアビジンの相互作用にのみ基づいており、ガラス表面への非特異的な結合に基づくものではなかったことを確認するために、2つのコントロール実験をおこなった。1つのコントロール実験は、最も濃縮されたSβG標的溶液(150μL中128amol)でインキュベートされた、エッチングされた未修飾のファイバーからなった。第2のコントロール実験は、ストレプトアビジンを欠くβ−ガラクトシダーゼの溶液(150μL中128amol)中でインキュベートされた修飾ファイバーを用いておこなった。両方のコントロールから、無視することができる活性なウェルのパーセンテージを得た(以下に議論する2.6amolの実験に関する0.2%に対して、0.06%未満)。
【0186】
結果
図5は、サンプル中に存在する標的のモルのlog対logプロット、およびその結果得られる活性な反応容器のパーセンテージを表す。図5に示される活性な反応容器のパーセンテージとlog対logでの標的のモルと間の直線的関係は、DNAおよび抗原などの実際の標的の検出のためにバイナリ読み出し検出法を用い得ることを示唆する。この方法により、直接的なアッセイの手段を維持しつつ、デジタル読み出しを介した迅速な分析および正確な濃度情報が可能となる。
【0187】
この例におけるビオチン化されたフェムトリットルのアレイに対するストレプトアビジン−β−ガラクトシダーゼの結合についての最低検出限界(lowest limit of detection:LOD)が、1時間の標的インキュベーション時間を用いて2.6amole(150μLの17fM溶液)であったこともまた重要である。
【0188】
実施例2
この例において、β−ガラクトシダーゼの単一の分子を、2.0×105個の個々に密封されたフェムトリットルのマイクロウェル反応器にわたって、直径1mmの光ファイバー束を用いてモニタリングした。反応容器のアレイにわたる単一の酵素分子の触媒からの蛍光生成物の蓄積を観察し、ポワソン統計学分析を適用することにより、デジタル濃度読み出しを得た。
【0189】
材料
1mmの束にした4.5μmの光ファイバーを、Illumina(San Diego、CA)から購入した。β−ガラクトシダーゼおよびRu(bpy)3Cl2を、Sigma- Aldrich(St. Louis、MO)から得た、レゾルフィン−D−β−ガラクトピラノシドを、Molecular Probes(Eugene、OR)から購入した。0.01インチの非強化ガラスシリコーンシート材料を、Specialty Manufacturing Inc.(Saginaw、MI)から購入した。使用した全ての他の化学物質は、試薬グレードであり、Sigma- Aldrich(St. Louis、MO)から得た。
【0190】
特注の正立落射蛍光イメージングシステムにより、水銀抗原、励起フィルターホイールおよび発光フィルターホイール、顕微鏡対物およびCCDカメラ(QE、Sensicam)を用いて、全ての蛍光画像を得た。フィルターホイールおよびシャッターをコンピューターにより制御し、JPlabソフトウェア(Scanalytics、Fairfax、VA)により分析を行った。システムは、光ファイバーアレイを全実験にわたりシステムに固定する固定デバイスを備えた。ステージの下の機械的プラットフォームを用いて、シリコーン密封層を収納し、その後ファイバーアレイの遠位端と接触させ、各々の反応容器を密封した。全ての測定を、光ファイバー束の遠位端で、フェムトウェル(femtowell)アレイを用いて行った。
【0191】
およそ2.4×105個の個々の直径4.5μmの光ファイバーを含む光ファイバー束をフェムトリットルの反応容器のアレイを作製するための基材として用いた。エッチングの深度はエッチング時間およびエッチャント濃度により変化するので、ウェルの容積は正確に制御することができる。これらの実験に於いて用いた光ファイバーを、およそ2.9μmの深さまでエッチングし、46fLのウェル容積を得た。図6は、エッチングされた光ファイバー束の表面の画像である。より具体的には、図6aは、ファイバーアレイ全体およびファイバー束の拡大顕微鏡画像を表し、アレイおよび個々の光ファイバーの両方の規則性を強調している。図6bは、エッチングされた表面の一部のAFM画像であり、エッチングのプロセスから作製されたウェルを示す。
【0192】
方法
アッセイ
β−ガラクトシダーゼアッセイのために用いられた基質は、レゾルフィン−β−D−ガラクトピラノシドであった。アレイ中の個々のウェルを酵素および基質の存在下において密封した後、容器のアレイにわたり、酵素生成物であるレゾルフィン(ex 558nm/em 573nm)について蛍光強度をモニタリングした。2.0mMのKClおよび0.lmMのMgCl2を含む100μMのTrisバッファーpH 8.0中、100μMのレゾルフィン−β−D−ガラクトピラノシド(RDG)の溶液を調製した。全ての酵素溶液を、同じ反応バッファーから予め分注して凍結したストックサンプルから調製した。実験の直前に、2つのサンプルを2分間7000RPMで遠心分離し、シリコーンによる密封の機序に干渉し得る全ての粒子状の物質を除去した。およそ1cm2のシリコーンと顕微鏡スライドグラスとを無水エタノールで洗浄した。シリコーンシート材をガラス表面に置き、接着させた。その後、75μLの容積の酵素およびRDG溶液を、シリコーンのガスケット上でピペットを用いて混合した。ガスケットを、ファイバー束の遠位端に向かって、密封が形成されたことを示唆する抵抗を感じるまで機械的に上昇させた。最初の蛍光画像を得、その後、およそ2時間にわたり定期的に画像を得た。
【0193】
密封成分
フェムトリットルアレイを密封するために、0.01インチの厚みのシリコーンエラストマーのガスケットを、顕微鏡スライドグラスとファイバーアレイとの間で、機械的プラットフォームを用いてサンドウィッチした。プラットフォームは、束全体にわたって、ガスケット材に均一な圧力を適用し、各々のマイクロウェルを密封して反応容器を作製した。
【0194】
フェムトリットル容器を作製して分離するために用いたシリコーン/ガラスの密封を、光脱色実験を行うことにより、その密封能力について検査した(図7を参照)。図7は、マイクロチャンバー中への溶液の封入、およびシリコーンの密封の完全性についての評価を表す。図7aは、アレイにわたる赤色蛍光により観察された、チャンバーのアレイ中に封入されたRu(bpy)3C12の溶液を表す。図7bは、UV光を介して光脱色されたファイバー束の小八角形部分を表す。図7cは、60分後のアレイを表す。図において示すとおり、不完全なシリコーン密封の結果としての1つのウェルから別のウェルのRu(bpy)3C12の拡散は、光脱色されたウェルにおける蛍光強度の増大を示すと考えられるが、観察されなかった。実験は、密封が容器のアレイを首尾よく分離する能力についての完全性を立証した。ガラス表面上での酵素分子の変性を、BSAブロッキングバッファーを用いたブロッキングにより防止した。用いられた酵素対容器の比は、1:5から1:500までの範囲であり、2桁にわたる正確な検出を達成した。
【0195】
光脱色実験
DI水中、1mMのRu(bpy)3C12の溶液を、光脱色実験のために用いた。およそ1cm2のシリコーン片および顕微鏡スライドグラスを、糸くずの出ないスワブを用いて無水エタノールで洗浄した。シリコーンシート材を、ガラスの表面上に置き、接着させた。50μLのRu(bpy)3C12溶液をシリコーン上に置き、その後ファイバー束と接触させ、個々の容器中に溶液を封入した。イメージングシステムの視野絞りを用いて、UV光を用いてアレイの小さな部分に10分間照射し、Ru(bpy)3C12を光脱色した。次いで、視野絞りを開放し、蛍光の差異を示す異なる画像を得た。次いで、アレイを、密封が維持された状態で静置した。最後の画像を60分後に取得し、密封の完全性を確認した。
【0196】
上記のように、使用される反応容器の数および容積が、この技術により決定することができる濃度の動的な範囲を支配する。この例において使用される反応容器の容積は、46fL(下記参照)であり;したがって、3.6×10−11Mのβ−ガラクトシダーゼの溶液が、平均して、1容器あたり1個の酵素分子を生じることを計算した。また上記のように、全ての実験ケースにおいて、使用される濃度が3.6×10−11Mより遙かに低い場合、予測される平均値は極めて低くなり、分布は狭くなり、1回の試行あたり0または1以外の事象を観察する確率は、極めて低い。これらの低い濃度において、活性な反応容器のパーセンテージとバルク酵素濃度との間の関係は、ほぼ直線状である。酵素触媒を起こすために充分な時間待った後で、個々の容器を、各々の容器を、酵素活性を有することまたは欠いていることのいずれかに相関するオン/オフ応答について調査した。
【0197】
基質であるレゾルフィン−β−D−ガラクトピラノシド(RDG)を、実験のための基質として用い、シリコーンガスケット材および機械アームを用いて、全ての容器中へ、トラップされた酵素分子と共に密封した。ポワソン分布統計を適用することにより、用いた各々の濃度について、活性なウェルの予測されるパーセンテージを計算した。
【0198】
結果
図8に示すように、β−ガラクトシダーゼアッセイについて、異なるバルク溶液酵素濃度は、容器容積に対する酵素の異なる比に対応し、酵素分子を含有する容器のパーセンテージの変化をもたらした。図8は、β−ガラクトシダーゼの単一分子の活性の検出を表す。図8aは、アレイの一部のバックグラウンド画像であり、一方、図8bは、酵素対容器が1:5であるアッセイの一部を取得した画像を表し、図8cは、酵素対容器が1:80であるアッセイを示す。
【0199】
表1は、占有された容器のパーセンテージをポワソン分布から計算した、各々の実験の結果の比較である。表中のデータにより示されるように、アレイの測定は、調査された濃度の全範囲にわたる単一の酵素β−ガラクトシダーゼ分子の数と、首尾よく相関した。観察されたシグナルにおいて、分子間での触媒活性の差異の結果として、わずかな差異が存在した。この結果は、表面効果に加えて、酵素活性の変化をもたらす酵素の固有の確率論的な性質に起因するものである可能性が最も高い。
【0200】
【表1】
表1.アレイからのデジタル読み出し。活性を示すチャンバーの、ポワソン分布から計算される予測されるパーセンテージに対する実際のパーセンテージを、分析された多様な濃度について列記した。
【0201】
計算結果と実験結果との間の差異は、確率分布に関連する特有の差異ならびに酵素溶液の調製における実験エラーに起因し得る。
【0202】
実施例3
この例において、モデル酵素−阻害剤ペアとして、β−ガラクトシダーゼを競合的阻害剤であるD−ガラクタル(D-galactal)(D−ガラクトースの遷移状態の類似体)の存在下において研究した。しかし、この適用の範囲は、特定の酵素−阻害剤ペアに限定されない。β−ガラクトシダーゼは四量体であり、D−ガラクタルは比較的遅い結合および放出を示すことが知られる。図9は、単一分子阻害を測定するためならびに阻害剤放出の検出のためのスキームの一態様を示す。第1の工程において、酵素および阻害剤を、リン酸バッファー(この特定の態様においては、PBS/MgCl2バッファー:2.7mM KCl、KH2PO4、1.5mM KH2PO4、136mM NaCl、8.1mM Na2HPO4、1mM MgCl2、pH7.3)などの水性バッファー系において、バルクにおいて、阻害剤濃度([阻害剤])が阻害剤結合のための解離定数(Ki)より高くなり、酵素の活性部位の全てがブロックされるかまたは占有されるように、プレインキュベートする。Kiは異なる酵素/阻害剤ペアにより異なるので、阻害剤の濃度を調製しなければならない。この実験において用いたこの特定の酵素/阻害剤ペアを用いる場合、100mM〜20μMの間の範囲で多様な阻害剤開始濃度を用いることができる。この態様において、[阻害剤]は、100μM(〜7×Ki(14μM))であった。第2の工程において、水性バッファー系(この特定の態様においては:PBS/MgCl2バッファー)中の1または2以上の基質(例えば、レゾルフィン−β−ガラクトピラノシド RGP)を、好ましくは高い過剰濃度(10倍〜100,000倍の間)において、添加する。さらなる成分(この特定の態様においては、位置のアレイの表面への非特異的結合を防止するため、1%(w/v)のウシ血清アルブミン(BSA)を、バッファー系に添加してもよい。第三の工程において、バルク溶液を位置のアレイに添加する。各々の位置は、規定の容積(10アトリットル〜50ピコリットルの間、より好ましくはフェムトリットル、この態様においては:46フェムトリットル)を有する。この時点において、阻害剤はもはや過剰量ではない。実際には、[阻害剤]<<Kiである(100,000分子より少ない阻害剤、および10,000分子より少ない阻害剤、およびさらにより好ましくは3,000分子より少ない阻害剤が、溶液中に残る)。酵素濃度(1.8nMを、工程2における1,000倍希釈により、いくつかの位置において各々のアレイの位置において単一の酵素のみが存在し、他においては酵素が存在しないように調製する。図9は、四量体の活性部位の1つがブロックされておらず活性である場合の状況を、模式的に示す。この活性部位は、レポーター部分を含む基質と相互作用することができる。このドメインは、酵素分解により発光性および蛍光性シグナルを生じるものであり得るが、これらに限定されない。好ましくは、蛍光シグナルが発生し、より好ましくは、RGPが蛍光発生基質として用いられる。この方法において、かかる活性を有するアレイ中の位置を、容易に検出することができる(図10)。
【0203】
一態様において、本発明は、複数のタイムポイント(例えば、秒、数十秒、数百秒、分、数十分などの間隔)での基質の代謝回転を決定することを企図する。図11は、図9および図10のスキームに従ってアッセイした場合、阻害剤の存在が、阻害剤が存在しないコントロール(下段左パネル)と比較して基質の代謝回転を遅延させることを示す。基質の代謝回転開始時間の頻度分布をプロットすれば(図12)、Koff速度定数を計算することができる:4.6×10−3秒。このことは、公開された値とも一致する。
【0204】
興味深いことに、データは、四量体の4つの部位の各々における阻害剤の放出が独立していないことを示唆する。いわば、四量体の4つの独立した触媒部位が存在し、koffが一次速度定数である場合、酵素集合体のkoffは、各々のプロトマーのkoffと同一である。しかし、各々の単一の酵素が4つのプロトマーを含むので、第1の阻害剤を放出する4つの候補が存在する。したがって、koff1=4×koff(=1.8×10−2sec−1)となる。このデータは、プロトマーからの阻害剤の放出が非独立的であることを示唆する。
【0205】
プレインキュベーションなしの第2の態様において、阻害剤を、リン酸バッファーなどの水性バッファー系(この特定の態様においては、PBS/MgCl2バッファー)中で、酵素に与える。さらなる成分(この特定の態様においては、位置のアレイの表面への非特異的結合を防止するために、1%(w/v)(BSA))をバッファー系に添加してもよい。[阻害剤]を、Ki(14μM)と同じ範囲において、好ましくは、100mM〜1μMの間で選択し、この態様においては20μMである。この阻害剤濃度において、阻害剤に結合した酵素は、阻害剤フリーの酵素と平衡状態にある。各々のが規定の容積(10アトリットル〜50ピコリットルの間、より好ましくはフェムトリットル、この態様においては46フェムトリットル)を有する位置のアレイにバルク溶液を添加する。酵素濃度(18pM)を、一部の位置において単一の酵素のみを得、他の位置においては酵素を得ないように、選択する。蛍光を経時的にモニタリングすると、結合、放出およびその後の結合を観察することができる(図13)。図13A(左パネル)は、多様な時間トレースからの粗データを表す。図13B(右パネル)は、左パネルの時間トレースの1つを示し、ここで、明確にするために、y軸は別に目盛り付けされている。図13Bは、阻害剤が酵素から放出された後でシグナルが増大すること、およびそれが阻害剤が結合した後で減少することを示す。阻害剤が酵素に結合して酵素活性が存在しない場合、蛍光シグナルが経時的に一定であり続けると予測すべきである。しかしながら、フルオロフォアを連続的に枯渇させる実質的な量の光脱色が存在するので、これは当てはまらない。このことから、図13に示す正味の結果(経時的)による動態が生じる。
【0206】
図14は、オフタイム(off-time)(阻害剤が放出される前に酵素上に留まる時間)の棒グラフを示す。このことから、半減期(指数関数的崩壊に従う量の半減期が、量がその初期値の半分まで崩壊するために必要とされる時間である)の計算が可能となる。半減期は、実験的に、およそ2分30秒であると決定する。この例は、単一の酵素を測定するシステムが、酵素のサブユニットがどのように相互作用するかについて、以前にアンサンブル反応から得られたものよりも動態的なデータを明らかとし得ることを示す。
【0207】
実施例4
一態様において、ナノ粒子は、標的の濃度のデジタル読み出しのために利用する。ナノ粒子は、酵素のデジタル読み出しに対して、いくつかの利点を有する。酵素のアプローチを用いる場合、濃度が増加するにつれて、ポワソン分布に従うデジタル読み出しの直線性が失われる。蛍光種により官能化されたナノ粒子を用いて、本発明は、一態様において、デジタル読み出し、ならびに本発明者らの研究室において広範に用いられる古典的なバルク光度読み出しを行うことができることを企図する。デジタル読み出しの直線性が失われるにつれて、分析を、デジタル読み出しからナノ粒子を用いる古典的な光度読み出しへとシフトすることができる。次いで、シグナルを、濃度と相関する、アレイの各々の位置の平均光度(例えば、平均ウェル光度)として読むことができ、このシステムにより読むことができる濃度の範囲を著しく増大する。ナノ粒子を用いる一部の態様において、アレイを密封しない。
【0208】
金粒子(例えば、1〜500ナノメートル、およびより好ましくは50〜250ナノメートル、およびさらにより好ましくは、80〜150ナノメートルの間の金粒子)などのナノ粒子を、標的分析物または標的分析物に結合するリガンドに付着させてもよい。標的が金粒子に付着して結合パートナー(例えば固定されたリガンド)を含むアレイに導入される態様を含む多様な態様が企図されるが、これらに限定されない。別の態様において、標的分析物を、アレイ上に付着させても、他の方法で固定してもよく、金粒子−結合パートナー複合体をアレイに導入して標的分析物と結合させてもよい。別の態様において、第1の結合リガンドを標的に固定し、金粒子−第2の結合リガンドをアレイ中に導入して標的に結合させてもよい。これらの態様を、図15および16において模式的に説明し、ここで、標的は核酸であり、結合パートナーは相補的プローブである。図15において、所望の場合、プローブ#1またはプローブ#2のいずれかを標的により置換することができる。図16は、標的が標識されていなくともよく、第1にプローブ#1とともにインキュベートし、その後、ナノ粒子をプローブ#2とともに導入する、2段階サンドウィッチ形式を示す。この態様において、標的はリンカーとして作用するものとみなすことができる。
【0209】
この例において、標的分析物は核酸であり、金粒子は複数(およそ2000〜8000の鎖)の蛍光DNAで標識される。このDNA−金粒子複合体を用いて、シグナルを発生させる。多数の蛍光DNA鎖が各々の名の粒子に付着するので、単一の粒子が、アレイ(例えば上記の光ファイバーアレイ)単一の位置(例えばマイクロウェル)におけるバックグラウンドに対してのシグナルのスパイクに十分である。ナノ粒子の複数の集団にわたる蛍光強度の偏差は、触媒速度の変動が高い酵素と比較して非常に小さい。この高い変動速度に起因して、応(yes)または否(no)の応答しか読み取ることができず、酵素についての検出の範囲をおよそ2桁の規模に限定している。同等のシグナル強度を有するナノ粒子を用いることにより、酵素により行われるような0または1のものに、2、3、4などの読み出しを伴う、より制御された読み出しが可能となる。控えめな光度レベルを読み出す能力により、2桁を超える、より優れた検出の範囲が可能となる。分析物−官能化金ナノ粒子(例えばDNA−金粒子複合体または他の生体分子−金粒子複合体)は、分析物(例えばDNA)検出スキームにおいて、常に極めて低いレベルの非特異的および公差反応性結合を示すので、検出の限界を改善する。
【0210】
A.金粒子の調製
金粒子は、多数の方法により調製することができる(Analytical Chemistry, 2000, 72, 5535-5541; Science, 2002, 296, 1836-1838; Science, 2002 295, 1503-1506; J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 5932-5933)。ある場合において、金コロイド(直径13nm)を、Frens, Nature Phys. Sci., 241, 20(1973)およびGrabar, Anal Chem., 67, 735(1995)に記載されるように、HAuCl4のクエン酸による還元により調製する。簡単に述べると、全てのガラス器具を使用する前に王水(3部のHCl、1部のHNO3)中で洗浄し、NanopureH2Oでリンスし、次いでオーブンで乾燥する。HAuCl4およびクエン酸ナトリウムは、Aldrich Chemical Companyから購入する。水性のHAuCl4(1mM、500mL)を、攪拌しながら還流させる。次いで、38.8mMのクエン酸ナトリウム(50mL)を素早く添加する。溶液の色は、淡黄色から赤紫色(burgundy)に変化し、還流を15分間続けるべきである。室温に冷却した後で、赤色の溶液を、Micron Separations Inc.の1マイクロンのフィルターを通してろ過してもよい。金コロイドは、Hewlett Packard 8452Aダイオードアレイ分光光度計を用いるUV/可視光分光法により、およびHitachi 8100透過型電子顕微鏡を用いる透過型電子顕微鏡法(TEM)により、容易に特徴付けられる。直径13nmの金粒子は、標的およびプローブの10〜35ヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチド配列とともに凝集した場合、目に見える色の変化を生じる。
【0211】
B.ファイバーの修飾
この例において、ファイバーアレイを用いる。研磨されたファイバーアレイを、115秒間0.025MのHClでエッチングし、46fLのウェルを得る。洗浄のために、エッチングされたファイバーを、沸騰するNanopure水で10分間インキュベートする。
【0212】
エッチングされたファイバーの表面を、多数の方法において修飾することができる。この例において、ファイバーのアミン修飾を使用する。第1に、シラン化溶液、すなわち、エタノール:nanopure水の95:5の溶液中、1%のDETA(トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン)の溶液を調製する。エッチングされたファイバーを、シラン化溶液中で20分間室温でインキュベートした。次いで、ファイバーを15分間120℃でキュアさせた。この時点において、ファイバーは、いまやアミン基によって修飾されている。
【0213】
多様な官能基をアミン基と反応させることができる。この例において、プロセスは、ファイバーのマレイミド修飾に関する。3.55mgのSMPB(サクシニミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート)を1mLのDMSO中に溶解させ、ストック溶液を作製した。架橋溶液を調製した:100μLのこのストック溶液を900μLのエタノール:DMSOの90:10溶液に添加した。シラン化ファイバーを架橋溶液中で2時間室温でインキュベートする。次いで、アレイを、エタノール:DMSOの80:20溶液で洗浄し、アルゴン下で乾燥させる。この時点において、ファイバーはいまやマレイミド基により修飾されている。
【0214】
C.DNA脱保護
2ナノモルのチオール修飾(保護)DNAを、110μLのPBS pH7.4中で再構成する。10μLのDTT(ジチオスレイトール)ストック(1.0M)を保護されたDNA溶液に添加し、2時間室温でインキュベートする。NAP-5カラム(GE Healthcare)を用いて脱保護したDNAを精製した。カラムをNanopure水で平衡化した。
【0215】
脱保護されたチオールDNAの120μLの溶液をカラムに添加し、ゲルに完全に浸入させた。380μLのPBS7.4水をカラムに添加し、ゲルに完全に浸入させた。回収チューブをカラムの下に置き、1.0mLのPBS7.4水をカラムに添加することにより、チオールDNAを溶出させた。NAP-5カラムのプロトコル(製造者により提供される)に記載されるように、最初の400μLを捨て、400μL〜1mLのDNAを回収した。
【0216】
D.DNA付着
標的分析物(この場合は核酸)に対して特異的なリガンド(この場合はプローブ)を、アレイの位置に直接付着させても、またはナノ粒子(例えば金粒子)に付着させ、次いで複合体(DNA−金ナノ粒子)をアレイに導入してもよい。この例において、マレイミド処理されたファイバーを、チオール脱保護されたDNA溶液(1μM)中で2時間室温でインキュベートした。ファイバーを、PBS7.4でリンスし、結合していないDNAを除去し、アレイをスワブして、被覆材に結合したDNAプローブを除去した。金ナノ粒子(この場合80nm)を、次いで、ファイバーと共にインキュベートし、予備的な実験により、成功的な結合を示す(図16)。
【0217】
実施例5
この例は、合成一本鎖DNAの半導体ナノ粒子量子ドット(QD)上への固定化を記載する。ネイティブなCdSe/ZnSのコア/シェルQD(−4nm)は、有機溶媒中でのみ可溶性であり、アルキルチオ末端を有する一本鎖DNAとの直接的反応は困難である。この問題は、Mirkinらにより、QDを3−メルカプトプロピオン酸でまずキャッピングすることにより回避される。次いで、4−(ジメチルアミノ)ピリジンでカルボン酸基を脱保護し、粒子を水溶性にし、QDと3’−プロピルチオールまたは5’−ヘキシルチオール修飾オリゴヌクレオチド配列のいずれかとの反応を促進する。DNA修飾の後で、透析により未反応のDNAから粒子を分離する。次いで、「リンカー」DNA鎖を、表面結合の配列にハイブリダイズし、拡大したナノ粒子の集合体を生成する。QD集合体は、TEM、UV/可視光分光法および蛍光分光法により容易に特徴付けられる。繰り返し、溶液の温度を制御することにより、これらを可逆的に集合させることができる。結果として、QD集合体および合成物集合体を、QDとナノ粒子との間で形成することができる(例えば、およそ13nmの金ナノ粒子)。
【0218】
文献目録
以下の引用文献の各々は、その全体が参考として援用される。
【表2】
【0219】
【表3】
【0220】
図1a、1bおよび1cは、本発明の一態様によるエッチングされた束の修飾を表す、横から見た断面模式図である。
図2a、2bおよび2cは、本発明の一態様によるサンドウィッチアッセイを表す、横から見た断面模式図である。
【0221】
図3aおよび3bは、本発明の一態様による(a)未研磨のビオチン修飾光ファイバーアレイおよび(b)研磨されたビオチン修飾光ファイバーアレイに結合するストレプトアビジンAlexa Fluor 568(登録商標)を示す写真である。
【0222】
図4a、4b、4c、4d、4eおよび4fは、本発明の一態様による実験を示す写真であり、ここで、β−ガラクトシダーゼは、RDGにハイブリダイズし、レゾルフィンを形成する。より具体的には、これらの図の各々は、異なる濃度のSβGを有する異なるサンプルを表す。濃度は、(a)128amol、(b)51amol、(c)25amol、(d)7.5amol、および(e)2.6amolであり、(f)はコントロールであった。
【0223】
図5は、本発明の一態様による、活性な反応容器のパーセンテージを生じる、サンプル中に存在する標的の分子のlog対logのプロットを表す。
【0224】
図6aは、本発明の一態様による、ファイバーアレイ全体の顕微鏡写真と、束の挿入拡大図である。
【0225】
図6bは、本発明の一態様による、エッチングされた表面の一部のAFM画像である。
【0226】
図7a、7bおよび7cは、本発明の一態様による、反応容器の封入(enclosure)および封(seal)の評価を示す。図7aは、チャンバーのアレイ中に封入されたRu(bpy)3Cl2の溶液の顕微鏡写真である。図7bは、UV光により光脱色された束の小八角形の部分の顕微鏡写真である。図7cは、60分後に撮影された図7bの顕微鏡写真である。
【0227】
図8a、8bおよび8cは、本発明の多様な態様による、β−ガラクトシダーゼの単一の分子の活性の検出を表す顕微鏡写真である。図8aは、アレイの一部のバックグラウンド画像である。図8bは、酵素対容器が1:5であるアッセイの一部を撮影した画像の顕微鏡写真である。図8cは、酵素対容器が1:80であるアッセイの顕微鏡写真である。
【0228】
図9は、単一の酵素レベルでの酵素の速度定数を測定するための一態様の模式図である。
【0229】
図10は、シグナルが阻害剤の放出に起因して検出されるアレイの代表的な画像である。
【0230】
図11a、11bおよび11cは、阻害剤の存在下または阻害剤の不在下(11c)における基質の代謝回転を示す、時間によるトレースである。
【0231】
図12は、特定の酵素/阻害剤のペアについてのKoffの決定を可能にする測定のプロットを示す。
【0232】
図13aおよび13bは、阻害剤放出によるシグナルの増大を示すようにプロットされた複数の時間トレース(13a)および単一の時間トレース(13b)を示す。
【0233】
図14は、特定の酵素/阻害剤のペアについての半減期の値の計算を可能にするオフタイム(off-times)の棒グラフである。
【0234】
図15は、ナノ粒子が検出を増強するために使用される一態様を模式的に示す。
【0235】
図16は、ナノ粒子が検出を増強するために使用される代替的な態様を模式的に示す。
【0236】
図17は、アレイの位置における金ナノ粒子の検出を示す。
【技術分野】
【0001】
政府の権利
米国政府は、国防総省、国防総省国防高等研究事業局(DARPA)海軍研究事務所によって供与された規約番号N00014−01−1に従って、本発明において所定の権利を有し得る。
【背景技術】
【0002】
背景
高感受性かつ低いレベルの分析物の検出を迅速かつ再現可能な実験プロトコルと組み合わせて実施する方法は、近代的な分析学的測定法の礎石である。現在、サンプルマトリックス中の低レベルの標的分析物を定量するための最も知られている技術は、レポーター分子の数を増大させてそれにより測定可能なシグナルを得る増幅手順を用いる。かかる公知の方法として、抗体に基づくアッセイにおいてシグナルを増幅するための酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ならびにDNAに基づくアッセイにおいて標的DNA鎖を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が挙げられる。免疫PCRと称される、より感受性であるが間接的なタンパク質標的増幅技術(Sano, T.; Smith, C. L.; Cantor, C. R. Science 1992, 258, 120-122を参照)は、オリゴヌクレオチドマーカーを利用し、オリゴヌクレオチドマーカーを、その後PCRを用いて増幅し、DNAアッセイを用いて検出することができる(Nam, J. M.; Thaxton, C. S.; Mirkin, C. A. Science 2003, 301, 1884-1886; Niemeyer, C. M.; Adler, M.; Pignataro, B.'; Lenhert, S.; Gao, S.; Chi, L. F.; Fuchs, H.; Blohm, D. Nucleic Acids Research 1999, 27, 4553-4561; and Zhou, H.; Fisher, R. J.; Papas, T. S. Nucleic Acids Research 1993, 21, 6038-6039を参照)。免疫PCR法によって超低レベルのタンパク質の検出が可能となるが、これは複雑なアッセイ手順であり、擬陽性シグナルを生じる傾向があり得る(Niemeyer, C. M.; Adler, M.; Wacker, R. Trends in Biotechnology 2005, 23, 208- 216を参照)。
【0003】
これらの公知の方法の欠点は、測定可能なシグナルを提供するために、レポーター分子を増幅する別の工程に依存しており、それによりさらなる増幅の工程を必要とし、したがってさらなる時間、設備および材料を必要とすることである。
【0004】
さらに、溶液中の特定の分析物の濃度を正確に定量するための公知の方法は、全て、多くの分析物分子が測定可能なシグナルを生じるアンサンブル応答に基づく。
【0005】
したがって、当該分野において、改善された標的分析物検出の方法およびシステムが必要とされている。
【発明の開示】
【0006】
発明の要旨
一態様において、本発明は、サンプル中の標的分析物を検出する方法に関する。該方法は、各々の位置(site)が捕獲成分(capture component)を含む複数の位置を含むアレイを提供すること、および、複数の位置のサブセット中の各々の位置が単一の標的分析物を含有するように、アレイとサンプルとを接触させること、を包含する。各々の標的分析物は、酵素成分を含む。該方法はさらに、アレイを酵素基質と接触させること、および、位置の各々における光学特性の変化を標的分析物の存在の指標として検出すること、を包含する。
【0007】
本発明は、別の態様において、サンプル中の標的分析物を検出する方法に関する。該方法は、複数の位置を含むアレイを提供すること、および第1の複数の位置のサブセット中の各々の位置が単一の第1の標的分析物を含有し、第2の複数の位置のサブセット中の各々の位置が単一の第2の標的分析物を含有するように、アレイをサンプルと接触させること、を包含する。この態様において、各々の位置は捕獲成分を含み、第1及び第2の標的分析物の各々は酵素成分を含む。該方法はさらに、アレイを第1の酵素基質と接触させること、および位置の各々での第1の酵素基質の結果としてのあらゆる光学特性の変化を、第1または第2の標的分析物のいずれかの存在の指標として検出すること、を包含する。さらに、該方法は、アレイを洗浄すること、およびアレイを第2の酵素基質と接触させることを包含する。さらに、該方法は、位置の各々での第2の酵素基質の結果としてのあらゆる光学特性の変化を、第1または第2の標的分析物のいずれかの存在の指標として検出することを包含する。
【0008】
別の態様によると、本発明は、サンプル中の標的分析物を検出する方法に関する。該方法は、複数の位置を含むアレイを提供すること、および複数の位置のサブセット中の各々の位置が単一の標的分析物を含有するようにアレイをサンプルと接触させること、を包含する。この方法において、各々の位置は捕獲成分を含む。該方法はまた、単一の標的分析物の各々を酵素成分を含む結合リガンドと接触させること、およびアレイを酵素基質とさらに接触させること、を包含する。さらに、該方法は、位置の各々での光学特性の変化を標的分析物の存在の指標として検出することを包含する。
【0009】
本発明は、さらなる態様によると、サンプル中の標的分析物の量を定量する方法である。該方法は、各々の位置が捕獲成分を含む複数の位置を含むアレイを提供すること、および、複数の位置のサブセット中の各々の位置が単一の標的分析物を含有するように、アレイをサンプルと接触させること、を包含する。この態様において、各々の標的分析物は酵素成分を含む。該方法はまた、アレイを酵素基質と接触させること、位置の各々での光学特性の変化を標的分析物の存在の指標として検出すること、およびサンプル中の標的分析物の量を計算すること、を包含する。
【0010】
一態様において、本発明は、単一の分子のアレイを製造する方法を企図する。該方法は、標的分析物をある濃度で含むサンプル、および各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイを提供すること、ならびに、単一の分子を含有する位置を含むアレイを製造するために、標的分析物分子の前記アレイの各々の位置に対する比が1:1より少なくなるように、前記アレイと前記サンプルとを接触させること、を包含する。一態様において、本発明は、物質の組成として、この方法により製造されたアレイを企図する。本発明は、標的分析物の性質によって限定されることを意図しない。一態様において、標的分析物は、生体分子(例えば、タンパク質、核酸、脂質、および炭水化物;あるいは、ホルモン、サイトカインおよび細胞抗原;好ましくは、神経受容体、ホルモン受容体および栄養因子受容体などの受容体)を含む。本発明は、生体分子の性質によって限定されることを意図しない。一態様において、生体分子は、タンパク質、核酸、脂質および炭水化物からなる群より選択される。別の態様において、生体分子は、ホルモン、サイトカインおよび細胞抗原からなる群より選択される。さらに別の態様において、生体分子は受容体である(例えば、神経受容体、ホルモン受容体および栄養因子受容体)。一態様において、標的分析物は、環境汚染物質である(例えば、農薬、殺虫剤およびトキシン)。一態様において、標的分析物は薬物である。本発明は、比によって限定されることを意図しない。一態様において、比は、単一の分子を有する位置を得ることができるように、選択される。好ましい態様において、比は、読み出しがデジタル読み出しである(例えば、各々の位置が1分子を有するかまたは何も有さない)ように選択される。一態様において、比は1:5より小さい。別の態様において、比は1:10である。さらに別の態様において、比は1:5〜1:500の間である。一態様において、単一の分子を含有する位置のパーセンテージが、サンプル中の分子の濃度の指標を提供する(換言するに、全位置の数および位置の規定の容積を計算して検知することによる)。
【0011】
一態様において、方法はさらに、工程b)の後に、各々の位置の内容物が各々の位置から漏出することができないように、アレイを密封することを包含する。一態様において、本発明は、溶液中での分子の密封、密封の前の溶液中での分子の(例えば、捕獲成分を用いての)捕獲、および/または密封の前の溶液からの分子の捕獲(および、一部の態様において、溶液からの分子の除去)、を企図する。一態様において、本発明は、該方法により製造された密封されたアレイを企図する。
【0012】
本発明は、捕獲成分の性質によって限定されることを意図しない。一態様において、アレイの各々の位置は捕獲成分を含む。別の態様において、標的分析物は一本鎖核酸を含み、捕獲成分は相補的な核酸を含む。
【0013】
本発明は、特定の容積に限定されることを意図しない。しかしながら、一態様において、規定された容積は、フェムトリットルにおいて測定される。一態様において、本発明は、物質の組成として、規定されたフェムトリットル容積の位置のアレイであって、規定された容積が各々の位置で同一であり、約30フェムトリットル〜約60フェムトリットルの範囲である、前記アレイを企図する。一態様において、規定されたフェムトリットル容積は、46フェムトリットルである。
【0014】
本発明は、位置の数について限定されることを意図しない。1000個の位置を用いることができるが、好ましくはより多くの位置を用いる(例えば、10,000個より多くの位置、20,000〜30,000個の間の位置、およびさらにより好ましくは100,000〜10,000,000個の間の位置)。
【0015】
別の態様において、本発明は、サンプル中の標的分析物を検出する方法を企図する。該方法は、生体分子標的分析物を含むサンプル、および各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイを提供すること;生体分子標的分析物のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるようにアレイをサンプルと接触させること;ならびに単一の生体分子を含有するアレイの位置の数を決定すること、を包含する。やはり、本発明は比によって限定されることを意図しない。好ましい態様において、比は、単一の分子を含む位置を得ることができるように選択される。一態様において、比は、読み出しがデジタル読み出しである(例えば、各々の位置が1分子を有するかまたは何も有さない)ように選択される。一態様において、比は1:5より小さい。別の態様において、比は1:10である。さらに別の態様において、比は1:5〜1:500の間である。一態様において、単一の分子を含有する位置のパーセンテージが、サンプル中の分子の濃度の指標を提供する(言い換えると、全位置の数および位置の規定された容積を計数して知ることによる)。
【0016】
好ましくは、生体分子を標識する(例えば、フルオロフォアを用いる)。一態様において、決定することは、位置での光学特性の変化を標的分析物の存在の指標として検出することを含む。やはり、単一の分子を含有する位置のパーセンテージが、サンプル中の生体分子の濃度の指標を提供することが好ましい。
【0017】
一態様において、該方法はさらに、接触させる工程の後であるが決定する工程の前に、各々の位置の内容物が該位置から漏出することができないように、アレイを密封することを含む。一態様において、本発明は、溶液中での分子の密封、密封の前の溶液中での分子の(例えば、捕獲成分を用いての)捕獲、および/または密封の前の溶液からの分子の捕獲(および、一部の態様において、溶液からの分子の除去)、を企図する。一態様において、本発明は、前記の方法により製造された密封されたアレイを企図する。
【0018】
なお別の態様において、本発明は、サンプル中の標的分析物を検出する方法を企図する。該方法は、生体分子標的分析物を第1の濃度で含むサンプル、および各々の位置が規定されたフェムトリットル容積を有する少なくとも10,000個の位置を含むアレイを提供すること;サンプルを希釈して生体分子標的分析物を第2の濃度で含む希釈サンプルを作製すること;生体分子標的分析物のアレイの各々の位置に対する比が1:5〜1:500の間であるように、アレイを希釈サンプルと接触させること;ならびに単一の生体分子を含有するアレイの位置の数を決定すること、を包含する。
【0019】
さらに別の態様において、本発明は、単一の細胞のアレイを製造する方法を企図する。該方法は、細胞を含むサンプル、および各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイを提供すること;ならびに、単一の細胞を含有する位置を含むアレイを製造するために、細胞のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるようにアレイをサンプルと接触させること、を包含する。一態様において、本発明は、物質の組成として、この態様の方法により製造されたアレイを企図する。該方法の一態様において、本発明はさらに、単一の細胞を含有するアレイの位置を決定する工程を企図する。好ましくは、単一の細胞を含有する位置のパーセンテージが、サンプル中の細胞の濃度の指標を提供する。本発明は、細胞の性質によって限定されることを意図しない。原核細胞(例えば、細菌細胞)ならびに真核細胞(例えば、腫瘍細胞および神経細胞などの哺乳動物細胞)が企図される。本発明の機序を理解することは必要ではないが、単一の細胞のアレイにより、1ウェル毎に単一のmRNA標的の捕獲が可能となると考えられる。一態様において、単一の細胞をトラップし、次いで溶解する。一態様において、単一のウェルは単一の細胞を含む。一態様において、単一のウェル中の単一の細胞を溶解する。一態様において、単一の細胞からの標的物を、単一のウェルにおいてトラップする。別の態様において、単一の細胞を溶解し、次いでmRNA標的物を捕獲する。例えば、1つの単一の細胞を溶解し、ここで、複数のmRNA標的物を、1ウェルに1コピーより多くの転写物タイプを有することなく、ウェル中で捕獲する。本発明の機序を理解することは必要ではないが、細胞は数千個の異なる転写物を含み、その各々が細胞毎に多数のコピーを有すると考えられるが、一方、本発明は、1ウェルに異なる転写物タイプの1つ以上を捕獲しない(すなわち、例えば、各々のウェルが、各々の転写物を1コピーより多く含まない)ことを企図する。一態様において、単一の細胞は、複数の標的物(すなわち、例えばmRNAのタイプ)を含む。一態様において、複数の標的物(すなわち、例えばmRNA型)を連続的に調査することにより、それらの存在を決定する(すなわち、例えば異なる色のフルオロフォアを用いることによる)。一態様において、標的物(すなわち、例えばmRNA型)を、デジタルシグナルを検出することにより、定量的に決定する。
【0020】
さらに別の態様において、本発明は、複数の異なる細胞を含むアレイを提供する方法を企図する。この方法は、細胞を含むサンプルと、各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;および前記アレイと前記サンプルとを接触させること、を包含する。一態様において、複数の異なる細胞を溶解することにより、複数の標的物を含むライセートを生成する。一態様において、複数の異なる細胞の各々を、異なるウェル中で溶解する。一態様において、複数の異なる細胞を、単一のウェル中で溶解する。一態様において、複数の異なる細胞からのライセートをプールする。一態様において、プールされたライセートを捕獲する。一態様において、複数の標的物(すなわち、例えばmRNA型)を連続的に調査することにより、それらの存在を決定する(すなわち、異なる色のフルオロフォアを用いることによる)。一態様において、標的物(すなわち、例えばmRNA型)を、デジタルシグナルを検出することにより、定量的に決定する。
【0021】
一態様において、方法はさらに、アレイを細胞と接触させた後で、各々の位置の内容物が該位置から漏出し得ないようにアレイを密封することを包含する。一態様において、本発明は、溶液中での細胞の密封、密封の前の溶液中での細胞の(例えば捕獲成分を用いての)捕獲、および/または密封の前の溶液からの細胞の捕獲(および一部の態様においては、溶液からの細胞の除去)を企図する。一態様において、本発明は、上記の方法により製造された、細胞を含む密封されたアレイを企図する。一態様において、細胞を、アレイを接触させた後で、捕獲成分(例えば、受容体、抗体またはタンパク質、たとえばフィブロネクチン)により固定する(例えば、アレイの各々の位置において、捕獲成分が存在し、好ましくは結合している)。
【0022】
やはり、本発明は、細胞の位置に対する比によって限定されることを意図しない。一態様において、比を、単一の細胞を含む位置を得るように選択する。好ましい態様において、比を、読み出しがデジタル読み出しである(例えば、各々の位置が1細胞を有するかまたは何も有さない)ように選択する。一態様において、比は1:5より小さい。別の態様において、比は1:10である。さらに別の態様において、比は1:5〜1:500の間である。一態様において、単一の細胞を含有する位置のパーセンテージが、サンプル中の分子の濃度の指標を提供する(言い換えると、全位置の数および位置の規定の容積を計算して検知することによる)。
【0023】
一態様において、本発明は、サンプル中の細胞を検出する方法を企図する。この方法は、細胞を第1の濃度において含むサンプルと、各々の位置が約10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;サンプルを希釈して、細胞を第2の濃度において含む希釈サンプルを作製すること;細胞のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように、アレイを希釈サンプルと接触させること;および、単一の細胞を含有するアレイの位置の数を決定すること、を包含する。このアレイを、好ましくは上記の決定する工程の前に密封し、本発明は、アレイおよび密封されたアレイの両方を、物質の組成として企図する。
【0024】
さらに別の態様において本発明は、サンプル中の細胞の標的分析物を検出する方法を企図する。この方法は、各々が標的分析物を含む細胞を第1の濃度において含むサンプルと、各々の位置が規定されたフェムトリットルの容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;サンプルを希釈して、細胞を第2の濃度において含む希釈サンプルを作製すること;細胞のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように、アレイと希釈サンプルとを接触させること;アレイ中の細胞を、細胞が溶解されるような条件下において処置すること;および、細胞の標的分析物を含有するアレイの位置の数を決定すること、を包含する。このアレイを、好ましくは前記の決定する工程の前に密封し、本発明は、物質の組成として、アレイおよびこの様式において製造された密封されたアレイを企図する。
【0025】
代替的な態様において、本発明は、サンプル中の細胞の標的分析物を検出する方法を企図する。この方法は、細胞をある濃度において含むサンプルと、各々の位置が規定されたフェムトリットルの容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;細胞が溶解されるような条件下において細胞を処置し、処置されたサンプルを作製すること;標的分析物のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように、アレイを処置されたサンプルと接触させること;および標的分析物を含有するアレイの位置の数を決定すること、を包含する。やはり、好ましくは上記の決定の工程の前にアレイを密封し、本発明は、物質の組成として、アレイおよびこの様式において製造された密封されたアレイを企図する。
【0026】
一態様において、細胞は原核細胞である。特定の態様において、細胞は細菌細胞であり、標的分析物は溶菌の後で細胞から放出される細菌酵素である。好ましい態様において、各々の位置は、溶菌の後で標的分析物を捕獲するように指向された捕獲試薬を含有する。
【0027】
反応に影響を及ぼす反応成分を検出する方法であって、以下を包含する:反応成分、標的分析物を第1の濃度で含むサンプル、および各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイを提供すること;標的分析物のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるようにアレイをサンプルと接触させること;アレイの各々の位置に反応成分を導入すること;ならびに反応成分が反応に影響を及ぼすか否かを決定すること。好ましい態様において、標的分析物は酵素であり、酵素のための基質は、決定する工程の前にアレイの各々の位置に存在する。特に好ましい態様において、反応成分は酵素の阻害剤であり、決定する工程は、酵素の阻害剤が該酵素と基質との反応を阻害するか否かを決定することを含む。一態様において、本発明は、決定する工程の前にアレイを密封することを企図し、物質の組成として、密封されたアレイが企図される。
【0028】
実際に、本発明は具体的に、酵素の速度定数を単一の酵素分子の設定において測定する態様を企図する。例えば、態様において、酵素および阻害剤を、アレイの位置へ導入する前に(例えば、水性緩衝液系において)、阻害剤の濃度が阻害剤の結合のための解離定数(Ki)より高くなり、酵素の活性部位の全てが遮断されるか占有されるように、一緒にバルクでプレインキュベートする。酵素/阻害剤のペアが異なるとKiが異なるので、それに従って阻害剤の濃度を調整しなければならない。本明細書において例示するいくつかの特定の酵素/阻害剤のペアと共に、100mM〜20μMの間の範囲で多様な阻害剤の開始濃度を用いることができる。この態様の第2の工程において、水性緩衝液系中の1または2以上の基質(例えば、色素生産性の基質)を、好ましくは高い過剰量(10倍〜100,000倍の間)において添加する。この態様の第3の工程において、バルク溶液をアレイの位置に添加する。各々の位置は、規定(10アトリットル〜50ピコリットルの間、より好ましくはフェムトリットル)の容積を有する。この時点において、阻害剤はもはや過剰量ではない。実際、阻害剤の濃度は、Kiよりはるかに低い(100,000分子より少ない阻害剤、好ましくは10,000分子より少ない阻害剤、さらにより好ましくは3,000分子より少ない阻害剤、および、なおより好ましくは1,000分子より少ない阻害剤が溶液中に残っていることが好ましい)。溶液がアレイの位置に添加された時点において、酵素の濃度が(工程2における多回の希釈に起因して)、各アレイ位置において単一の酵素しか存在しない(または、より典型的には、単一の酵素がいくつかの位置にあり、他の位置には酵素がない)ようになっていることが好ましい。好ましい態様において、次いで、アレイを、検出手段を用いて、経時的にシグナルについてモニタリングする(例えば、その結果、酵素による基質の利用が検出される)。基質の代謝回転の開始時間の頻度分布をプロットすると、Koff速度定数を計算することができる。
【0029】
かかる方法の別の態様において、阻害剤の濃度は、Kiと同じ範囲であるように選択される。この阻害剤濃度では、酵素に結合した阻害剤は、阻害剤フリーの酵素と平衡状態にある。バルク溶液を、各々の位置が規定(10アトリットル〜50ピコリットルの間、より好ましくはフェムトリットル)の容積を有する位置のアレイに添加する。やはり、各単一のアレイ位置に単一の酵素のみをもたらす(または、より典型的には、単一の酵素がいくつかの位置にあり、他の位置には酵素がない)ように、酵素濃度が選択されることが好ましい。シグナル(例えば、蛍光)を経時的にモニタリングすると、アレイ中の酵素が存在する場合、各々の位置における結合、放出およびその後の結合を観察することができる。
【0030】
さらに別の態様において、本発明は、反応に影響を及ぼす反応成分を検出する方法を企図する。この方法は、以下を包含する:反応成分、生体分子標的分析物を第1の濃度において含むサンプル、および各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイを提供すること;サンプルを希釈して、生体分子標的分析物を第2の濃度において含む希釈サンプルを作製すること;生体分子標的分析物のアレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように、アレイを希釈サンプルと接触させること;反応成分をアレイの各々の位置に導入すること;ならびに、反応成分が反応に影響を及ぼすか否かを決定すること。
【0031】
なお別の態様において、本発明は、酵素阻害を検出する方法を企図する。この方法は、以下を包含する:i)反応成分、ii)酵素標的分析物を第1の濃度において含むサンプル、iii)前記酵素標的分析物のための基質、ならびにiv)各々の位置が規定されたフェムトリットルの容積を有する少なくとも10,000個の位置を含むアレイを提供すること;サンプルを希釈して、酵素標的分析物を第2の濃度において含む希釈サンプルを作製すること;アレイを、酵素標的分析物のアレイの各々の位置に対する比が1:5〜1:500の間になるように、任意の順序において、基質、反応成分、および希釈サンプルと接触させること;ならびに、反応成分が、酵素と基質との反応を阻害するか否かを決定すること。
【0032】
一態様において、標的および濃度のデジタル読み出しのために、ナノ粒子を利用する。ナノ粒子は、酵素のデジタル読み出しに対していくつかの利点を有する。酵素のアプローチによる場合、濃度が高くなるにつれて、ポワソン分布に従うデジタル読み出しの直線性が失われる。蛍光種により官能化されたナノ粒子を用いて、本発明は、一態様において、デジタル読み出しのみならず、本発明者らの研究室において大規模に用いられる伝統的なバルク光度読み出し(bulk intensity readout)を行い得ることを企図する。デジタル読み出しの直線性が失われるにつれ、デジタル読み出しからナノ粒子を用いる伝統的な光度読み出しへと分析をシフトさせてもよい。ここで、シグナルを、濃度に相関するアレイの各々の位置の平均光度(例えば、平均ウェル光度)として読むことができ、このシステムにより読むことができる濃度の範囲を著しく拡大する。ナノ粒子を用いるいくつかの態様においては、アレイを密封しない。
【0033】
標的が金粒子に結合して結合パートナー(例えば、固定化されたリガンド)を含むアレイ中に導入される態様を含む多様な態様が企図されるが、これに限定されない。別の態様において、標的分析物は、アレイに結合するか、あるいは他の方法で固定されてもよく、金粒子−結合パートナー複合体を、アレイに導入して標的分析物に結合させてもよい。別の態様において、第1の結合リガンドにより標的を固定してもよく、金粒子−第2の結合リガンドをアレイに導入して標的に結合させてもよい。一態様において、標的は核酸であり、結合パートナーは相補的プローブである。
【0034】
別の態様において、2ステップサンドウィッチ形式が企図され、ここで、標的は標識されていなくともよく、第1の相補的プローブと共にインキュベートし;その後、ナノ粒子−第2のプローブの複合体をアレイの位置に導入する。この態様において、標的は、リンカーとして作動するとみなすことができる。
【0035】
複数の態様を開示する一方で、本発明の例示的な態様を示し説明する以下の詳細な説明から、本発明のさらに別の態様が当業者に明らかとなる。理解されるように、本発明は、全て本発明の精神および範囲から逸脱することなく、多様な明らかな局面において改変が可能である。したがって、図面および詳細な説明は、本来例示的なものとみなされるべきであり、限定するものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一態様によるエッチングされた束の修飾を表す、横から見た断面模式図である。
【0037】
【図2】本発明の一態様によるサンドウィッチアッセイを表す、横から見た断面模式図である。
【0038】
【図3】(a)本発明の一態様による、未研磨のビオチン修飾光ファイバーアレイを示す写真である。(b)本発明の一態様による、研磨されたビオチン修飾光ファイバーアレイに結合するストレプトアビジンAlexa Fluor 568(登録商標)を示す写真である。
【0039】
【図4】本発明の一態様による実験を示す写真である。
【0040】
【図5】本発明の一態様による、活性な反応容器のパーセンテージを生じる、サンプル中に存在する標的の分子のlog対logのプロットを表すグラフである。
【0041】
【図6】(a)本発明の一態様による、ファイバーアレイ全体の顕微鏡写真と、束の挿入拡大図である。(b)本発明の一態様による、エッチングされた表面の一部のAFM画像である。
【0042】
【図7】本発明の一態様による、反応容器の封入(enclosure)および封(seal)の評価を示す図である。
【0043】
【図8】本発明の多様な態様による、β−ガラクトシダーゼの単一の分子の活性の検出を表す顕微鏡写真である。
【0044】
【図9】単一の酵素レベルでの酵素の速度定数を測定するための一態様の模式図である。
【0045】
【図10】シグナルが阻害剤の放出に起因して検出されるアレイの代表的な画像である。
【0046】
【図11】阻害剤の存在下または不在下における基質の代謝回転を示す、時間によるトレースである。
【0047】
【図12】特定の酵素/阻害剤のペアについてのKoffの決定を可能にする測定のプロットである。
【0048】
【図13】(A)阻害剤放出によるシグナルの増大を示すようにプロットされた複数の時間トレースである。(B)阻害剤放出によるシグナルの増大を示すようにプロットされた単一の時間トレースである。
【0049】
【図14】特定の酵素/阻害剤のペアについての半減期の値の計算を可能にするオフタイムの棒グラフである。
【0050】
【図15】ナノ粒子が検出を増強するために使用される一態様を模式的に示す図である。
【0051】
【図16】ナノ粒子が検出を増強するために使用される代替的な態様を模式的に示す図である。
【0052】
【図17】アレイの位置における金ナノ粒子の検出を示す図である。
【0053】
詳細な説明
本発明は、サンプル中の標的分析物または標的分析物(複数)の酵素による検出および定量のための方法、システムおよびデバイスに関する。より具体的には、本発明は、捕獲成分を含有するマイクロからナノスケールのサイズの反応容器のアレイを用いての、酵素による標的分析物の検出および定量に関する。一態様によれば、捕獲成分を含有する反応容器のアレイを、少なくとも1つの標的分析物を含有するサンプルと接触させる。次いで、色素生産性の基質を添加し、生じる酵素反応の色素生産性生成物により、分析物の検出が可能となる。さらに、一態様によれば、捕獲された標的分析物を有する反応容器のパーセンテージを用いて、バイナリ読み出し法を使用してサンプル中の標的分析物の量を計算することができる。
【0054】
より具体的には、本発明は、特別に官能化され、酵素であるかまたは酵素によって標識されている標的分析物分子を捕獲することができる、マイクロまたはナノスケールのサイズの反応容器のアレイを提供する。標的を固定する能力により、以下に概説するように、洗浄の工程および間接的アッセイを用いることが可能となる。用いる際は、単一の酵素(または酵素によって標識された)分子は、個々の反応容器中で捕獲され、検出可能なシグナルを生じるために充分な数の色素生産性生成物分子の生成を触媒する。低い標的分析物濃度を有するサンプルに関する一態様によれば、反応容器の一部のみが標的分子に結合することにより、アレイからの標的分析物のバイナリ読み出しを可能にする。
【0055】
したがって、本発明の方法およびシステムにおける直接酵素増幅により、検出可能なシグナルの直接増幅が可能となる。さらに、先行技術の方法と異なり、本発明は、低濃度のタンパク質の検出を可能にする。
【0056】
一態様による定量方法は、統計学的解析に基づく濃度決定のための新規の方法である。サンプルの酵素濃度は、酵素含有サンプルおよび好適な基質を、多数のナノスケールの反応容器に分配することによって決定される。この方法において、容器は、ゼロまたは1の酵素分子を含有する。各々の反応容器中の単一の酵素分子の触媒から生じる蛍光生成物の存在または不在を観察することにより、バイナリ読み出し法を用いて酵素分子を計数することができる。最終的に、酵素分子によって占有された反応容器のパーセンテージを、バルク酵素濃度と相関させる。
【0057】
I.アレイ
本発明は、複数のアッセイ位置を含む表面を備えた第1の基材を少なくとも含む、アレイの組成を提供する。本明細書における「アレイ」とは、アレイ形式における複数の捕獲成分を意味する。アレイのサイズは、アレイの組成および最終用途に依存する。約2個から数百万個の異なる捕獲成分を含有するアレイ、ならびに非常に大きな光学アレイを含む非常に大きなアレイを作製することができる。一般に、アレイは、ウェルおよび基材のサイズ、ならびにアレイの最終用途に依存して、2個〜10億個もの多数またはそれより多くの捕獲成分を含み、したがって、非常に高密度、高密度、中程度の密度、低密度および非常に低密度のアレイを作製することができる。非常に高密度のアレイのための好ましい範囲は、約10,000,000個〜約2,000,000,000個であり、約100,000,000個〜約1,000,000,000個が好ましい。高密度アレイは、約100,000個〜約10,000,000個の範囲であり、約1,000,000個〜約5,000,000個が特に好ましい。中程度の密度のアレイは、約10,000個〜約50,000個の範囲であることが特に好ましく、約20,000個〜約30,000個が特に好ましい。低密度アレイは、一般に、10,000個より少なく、約1,000個〜約5,000個であることが好ましい。非常に低密度のアレイは、1,000個より少なく、約10個〜約1000個が好ましく、約100個〜約500個が特に好ましい。一部の態様において、複数の基材を用いてもよく、異なった組成であっても同一の組成であってもよい。したがって、例えば、大きなアレイは、複数のより小さい基材を含んでもよい。
【0058】
組成は、基材を含む。本明細書において、「基材」、「アレイ基材」または「固体支持体」または他の文法的に同等なものにより、標的分析物の付着または会合に適した不連続の個々の位置を含むように改変されることができ、少なくとも1つの検出方法に適する、任意の材料を意味する。当業者に理解されるように、可能な基材の数は非常に大きく、ガラスおよび修飾または官能化されたガラス、プラスチック(アクリル、ポリスチレン、およびスチレンと他の材料とのコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、Teflon(登録商標)などを含む)、多糖類、ナイロンまたはニトロセルロース、複合材料、セラミック、および可塑性樹脂、シリカならびシリコンおよび修飾シリコンを含むシリカベースの材料、炭素、金属、無機ガラス、プラスチック、光ファイバー束、ならびに多様な他のポリマーを含むがこれらに限定されない。一般に、基材は検出を可能にするものであって、感知できるほどには蛍光を発しない。
【0059】
一態様において、基材は、光ファイバー束の末端を含む。あるいは、基材は、光ファイバー束の末端を含まない。例えば、基材は、公知のスポットされた基材であっても、印刷された基材であっても、または光リソグラフィー基材であってもよい。例えば、WO 95/25116;WO 95/35505;PCT US98/09163;米国特許第5,700,637号;同第5,807,522号および同第5,445,934号;ならびにU.S.S.N.s第08/851,203号および第09/187,289号、ならびにこれらにおいて引用される参考文献を参照のこと。これらの全ては参考として明示的に援用される。本発明において光ファイバー束の末端を基材として用いることの1つの利点は、各々のウェルと接触する個々のファイバーを、ウェルへ、またはウェルからの、励起光および発光の両方を運搬するために用いることができ、ウェルの内容物の遠隔調査が可能であることである。さらに、光ファイバーのアレイは、ファイバー間でシグナルが「クロストーク(cross-talk)」することなく、隣接する容器中の分子の同時励起を可能とする。すなわち、1本のファイバー中を伝達された励起光は、隣接するファイバーに漏出しない。
【0060】
一態様において、基材は、平面であり、当業者に理解されることであるが、他の構造の基材も同様に用いることができる。例えば、三次元構造の基材を用いてもよい。好ましい基材は、以下に議論するような光ファイバー束、ならびに、ガラス、ポリスチレンおよび他のプラスチックおよびアクリルなどの平らな平面基材である。
【0061】
一態様において、基材の少なくとも1つの平面は、後の標的分析物の会合のために、不連続の個々の位置(本明細書においてまた「反応容器」および「マイクロウェル」として言及される)を含むように改変される。これらの位置は、一般に、物理的に改変された位置、すなわち、ビーズを保持することができる基材におけるウェルまたは小さな凹部などの物理的構造を含む。光リソグラフィー、スタンピング技術、鋳型成形技術およびマイクロエッチング技術を含むがこれらに限定されない多様な技術を用いて、マイクロウェルを当該分野において一般に公知であるように形成することができる。当業者が理解するように、用いられる技術は、基材の組成および形状に依存する。
【0062】
一態様において、基材の表面において位置を提供するために物理学的変更が行われる。好ましい態様において、基材は光ファイバー束であり、基材の表面は該光ファイバー束の末端である。この態様において、ウェルは、光ファイバー束の末端または遠位端において作られ、個々のファイバーを含む。この態様において、個々のファイバーのコアを、被覆材(cladding)に対して、ファイバーの一方の端において小さなウェルまたは凹部が形成されるようにエッチングする。必要なウェルの深さは、ウェルに加えられるビーズのサイズに依存する。本発明の一局面において、物理的変更は、本明細書においてその全体において参考として援用される米国特許第6,023,540号、同第6,327,410号および同第6,858,394号において教示されるように行うことができる。
【0063】
位置は、パターン、すなわち、一定の設計または構造であっても、ランダムに分配されていてもよい。好ましい態様は、位置をX−Y座標面において扱うことができるように、一定のパターンの位置を利用する。この意味において「パターン」は、反復する単位のセルであって、好ましくは、高密度のビーズを基材上にもたらし得るものを含む。
【0064】
本発明の一態様によると、反応容器は、約10アトリットル〜50ピコリットルの範囲の容積を有する。代替的には、反応容器は、約1フェムトリットル〜約1ピコリットルの範囲のサイズである。さらなる代替において、反応容器は、約30フェムトリットル〜約60フェムトリットルの範囲である。
【0065】
本発明の一局面において、アレイは光ファイバーアレイである。一態様によると、アレイは以下のように作製することができる。第1に、反応容器を光ファイバー束の遠位端において形成する。一態様によると、容器は、例えば酸腐食(acid etching)法などのエッチング法を用いて作製され、所望の容積の反応容器を得る。すなわち、エッチングのプロセスにより、光ファイバー束の端でコア材料中に凹部または孔が作製されるが、被覆材料は影響を受けず、これによって反応容器を得る。あるいは、コア材料および被覆材料の両方がエッチングされるが、被覆材料がコア材料より遅い速度でエッチングされることにより、反応容器を得る。光ファイバーアレイ形式の1つの利点は、それが、複雑な微細加工手順を回避し、多数の反応容器を同時に観察する能力を提供することである。
【0066】
II.捕獲成分
本発明のマイクロウェルは、少なくとも1つの捕獲成分を含む。捕獲成分(また、「捕獲結合リガンド」、「結合リガンド」、「捕獲結合種」、または「捕獲プローブ」としても言及される)は、標的分析がアッセイの間固定されるように、標的分析物を基材上のマイクロウェル中で探る(probe)か、これに付着するか、結合するか、または他の方法でこれを捕獲するために用いることができる、任意の分子、化合物、またはマイクロウェルの修飾である。一般に、捕獲結合リガンドまたは成分は、検出、定量または他の分析の目的のための、標的分析物のマイクロウェルへの付着を可能にする。
【0067】
当業者が理解するように、捕獲成分の組成は、標的分析物の組成に依存する。多様な分析物のための捕獲成分が公知であるか、または公知の技術を用いて容易に見出すことができる。例えば、分析物がタンパク質である場合、捕獲成分または結合リガンドとして、タンパク質(特に、抗体またはそのフラグメント(FAbなど)を含む)、または低分子が挙げられる。好ましい捕獲成分タンパク質として、ペプチドが挙げられる。例えば、分析物が酵素である場合、好適な結合リガンドとして、基質および阻害剤が挙げられる。抗原−抗体のペア、受容体−リガンドのペア、および炭水化物およびそれらの結合パートナーもまた、好適な分析物−結合リガンドのペアである。さらに、分析物が一本鎖核酸である場合、結合リガンドは、相補的な核酸であってもよい。同様に、分析物が核酸結合タンパク質であってもよく、捕獲結合リガンドは、一本鎖または二本鎖のいずれかの核酸である。あるいは、分析物が一本鎖または二本鎖の核酸である場合、結合リガンドは、核酸結合タンパク質であってもよい。あるいは、本明細書により援用される米国特許第5,270,163号、同第5,475,096号、同第5,567,588号、同第5,595,877号、同第5,637,459号、同第5,683,867号、同第5,705,337および関連特許において一般に記載されるように、ほぼ全ての標的分析物に結合するための、核酸「アプタマー」を開発してもよい。当業者が理解するように、会合する任意の2個の分子を、分析物としてまたは捕獲成分として用いることができる。同様に、コンビナトリアル化学法に基づく捕獲成分の開発についての広範な文献が存在する。
【0068】
好適な分析物/捕獲成分のペアとして、以下が挙げられるがこれらに限定されない:抗体/抗原、受容体/リガンド、タンパク質/核酸、酵素/基質および/または阻害剤、炭水化物(糖タンパク質および糖脂質を含む)/レクチン、タンパク質/タンパク質、タンパク質/低分子;ならびに、炭水化物およびそれらの結合パートナーもまた、好適な分析物−結合リガンドのペアである。これらは、野生型であっても誘導体の配列であってもよい。一態様によれば、捕獲成分は、成長ホルモン受容体、グルコーストランスポーター(特に、GLUT 4受容体)、転移受容体(transferring receptor)、上皮成長因子受容体、低密度リポタンパク質受容体、高密度リポタンパク質受容体、上皮成長因子受容体、レプチン受容体、IL−1受容体、IL−2受容体、IL−3受容体、IL−4受容体、IL−5受容体、IL−6受容体、IL−7受容体、IL−8受容体、IL−9受容体、IL−1l受容体、IL−12受容体、IL−13受容体、IL−15受容体およびIL−17受容体を含むインターロイキン受容体、ヒト成長ホルモン受容体、VEGF受容体、PDGF受容体、EPO受容体、TPO受容体、毛様体神経栄養因子受容体、プロラクチン受容体、ならびにT細胞受容体などの、多量体を形成することが知られている細胞表面受容体のタンパク質の部分(特に、細胞外部位)である。
【0069】
好ましい態様において、捕獲成分は、例えば「付着成分(attachment component)」(明細書中において「付着リンカー」としても言及される)を介して、本明細書において概説されるようなマイクロウェルまたは反応容器に付着する。「付着成分」とは、本明細書において使用される場合、捕獲成分の付着をもたらす任意の成分、マイクロウェルの官能化または修飾として定義され、結合剤(bond)および/またはリンカーを含み得る。あるいは、捕獲成分は、捕獲拡張成分(capture extender component)を利用することができる。この態様において、捕獲成分または結合リガンドは、標的分析物に結合する第1の部分と、表面への付着のために用いられることができる第2の部分を含む。
【0070】
捕獲結合リガンドの付着リンカーへの付着の方法は、一般に、当該分野において公知であるように行われ、付着リンカーおよび捕獲結合リガンドの組成に依存する。一般に、捕獲結合リガンドは、その後に付着のために用いることができる官能基の各々に対する使用を介して、付着リンカーに付着する。一態様によれば、官能基は、化学官能基である、すなわち、マイクロウェルの表面を、化学官能基が表面に結合するように誘導体化する。付着のための好ましい官能基は、アミノ基、カルボキシ基、オキソ基、およびチオール基である。これらの官能基を、次いで直接的にまたはリンカー(本明細書においてしばしば「クロスリンカー」として言及される)の使用を介して付着させることができる。リンカーは、当該分野において公知である。例えば、ホモまたはヘテロ−二官能性リンカーなどが公知である(本明細書において参考として援用される1994 Pierce Chemical Company catalog, technical section on cross-linkers, pages 155-200を参照)。好ましいリンカーとして、以下が限定せずに挙げられる:短いアルキル基、エステル、アミド、アミンを有するアルキル基(置換アルキル基およびヘテロ原子部分を含有するアルキル基を含む)、エポキシ基、およびエチレングリコールおよび誘導体が好ましい。リンカーは、スルホンアミドを形成するスルホン基であってもよい。
【0071】
一態様によれば、官能基は、光によって活性化される官能基である。すなわち、光によって官能基を活性化し、標的分析物またはクロスリンカーに付着させることができる。一例は、SurModics,Inc.(Eden Prairie、MN)から市販されるPhotoLink(登録商標)技術である。
【0072】
本発明の1つの代替的局面において、ウェル表面を誘導体化することなく官能基を添加する。すなわち、ウェル表面に対する結合アフィニティーを有する、官能基を付着させた分子を添加することにより、官能基を表面に添加する。一態様によれば、分子はウシ血清アルブミンである。あるいは、分子は、容器表面に結合または固着することができる任意のタンパク質である。さらなる代替において、分子は、容器表面に結合または固着することができる任意の分子である。一例において、分子は、遊離アミン基を表面に有するウシ血清アルブミンである。次いで、クロスリンカーを添加して、アミン基に付着させることができる。
【0073】
捕獲成分が化学的クロスリンカーである例示的な態様において、標的分析物を、以下の様式において、化学的相互架橋を用いて付着させる。第1に、反応容器表面を、NH2などの官能基を用いて誘導体化する。次いで、クロスリンカーがNH2に付着し、標的分析物がクロスリンカーに付着するように、クロスリンカーと標的分析物とをアレイに添加する。以下により詳細に説明する標的分析物が酵素ではない一代替的態様において、酵素成分を有する標識を標的分析物に付着させてもよい。
【0074】
この方法において、タンパク質、レクチン、核酸、有機低分子、炭水化物などを含む捕獲結合リガンドを添加してもよい。
【0075】
一態様は、タンパク質性の捕獲成分または捕獲結合リガンドを利用する。当該分野において公知であるように、タンパク質性捕獲結合リガンドを付着させるためにあらゆる数の技術を用いることができる。「タンパク質」は、この意味において、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドを含み、例えば、酵素を含む。タンパク質に部分を追加するための多様な技術が知られている。1つの好ましい方法は、その全体が本明細書により参考として援用される米国特許第5,620,850号において概説される。表面へのタンパク質の付着は公知である。また、Heller, Ace. Chem. Res. 23:128 (1990)および関連文献を参照。
【0076】
代替的な態様は、例えば、当該分野において周知であるように、標的分析物が核酸または核酸結合タンパク質である場合に関して、または、核酸がタンパク質に結合するための対するアプタマーとして役立つ場合に関して、核酸を捕獲結合リガンドとして用いる。
【0077】
一態様によれば、各々のマイクロウェルは、複数の捕獲成分を含む。本発明の一局面において、複数の捕獲成分は、ウェルの表面に、「芝」のように分配される。あるいは、捕獲成分は、任意の公知の様式において分配される。
【0078】
一態様によれば、捕獲成分と標的分析との間の結合は特異的であり、捕獲成分は、結合ペアの一部である。すなわち、捕獲成分は、標的分析物に特異的に結合するか、または標的分析に対する特異性を有する、標的特異的捕獲成分である。より具体的には、捕獲成分は、標的分析物に特異的かつ直接的に結合する。本明細書において、「特異的に結合する」または「結合特異性」により、捕獲成分が分析物に、分析物と試験サンプル中の他の成分または夾雑物との間を区別するために充分な特異性で結合することを意味する。例えば、一態様による捕獲成分は、標的分析物の一部に特異的に結合する抗体である。一態様によれば、抗体は、標的分析物に特異的に結合することができる任意の抗体であってよい。例えば、好適な抗体として、以下が限定せずに挙げられる:それぞれ、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、ミニボディー(minibody)、ドメイン抗体、合成抗体(しばしば「抗体模倣物」として言及される)、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体融合物(しばしば「抗体複合体」として言及される)、および各々のフラグメント。
【0079】
しかしながら、当業者に理解されるとおり、特異性が高くない結合を用いて分析物を検出することが可能である。例えば、システムは、例えば、異なるリガンドのアレイなどの異なる捕獲成分を用いてもよく、任意の特定の分析物の検出は、「電子鼻(electronic nose)」が作動する様式と同様に、その結合リガンドのパネルへの結合の「サイン(signature)」を介する。このことから、化学分析物の検出における特段の有用性を見出す。非特異的結合を除去する洗浄の工程を含むアッセイの条件下において結合したままでいるために、結合が充分であるべきである。一部の態様において、例えば特定の生体分子の検出において、分析物の結合リガンドへの結合定数は、少なくとも約104〜106M−1であり、少なくとも約105〜109M−1であることが好ましく、少なくとも約107〜109M−1であることが特に好ましい。
【0080】
標的分析物が例えば細菌細胞を含む細胞である一態様によれば、捕獲成分はアドヘシン受容体分子である。使用においては、アドヘシン受容体分子は、標的細胞の細胞外表面上のアドヘシンと称される表面タンパク質と結合することにより、細胞を固定または捕獲する。あるいは、標的細胞が別の型の細胞(非細菌細胞)である場合、捕獲成分は、標的分析物細胞に結合する好適な細胞表面受容体である。標的分析物が細胞であるさらなる態様において、捕獲成分はフィブロネクチンである。例えば、フィブロネクチンは、標的分析物が神経細胞である場合に用いることができる。
【0081】
あるいは、捕獲成分は、非特異的な捕獲成分である。すなわち、捕獲成分は、標的分析物に特異的に結合しないが、むしろ、標的分析物に会合するかまたは付着する対応する結合パートナーに結合する。例えば、一態様による非特異的捕獲成分は、上記のような化学的クロスリンカーである。一態様によれば、標的サンプル中の各々のペプチド分子が、化学的クロスリンカーに付着することができる。この型のシステムは、基質を改変することによって分析物が検出されるので、酵素標的分析物を同定するために用いることができる。
【0082】
一態様による非特異的捕獲成分の例において、捕獲成分は、ストレプトアビジンである。ストレプトアビジンは、ビオチンに対して高いアフィニティーで結合し、したがって、ビオチンが付着している任意の分子に結合する。あるいは、捕獲成分がビオチンであり、標的分析物がビオチンによって捕獲されることができるように、ストレプトアビジンが標的分析物に付着または会合している。
【0083】
一態様によれば、以下の様式において捕獲成分を反応容器に添加する。第1に、マイクロウェルを、捕獲成分の付着のために準備する。すなわち、捕獲成分がマイクロウェルに付着するように、マイクロウェルを修飾するか、またはマイクロウェルに付着成分を添加する。一態様において、マイクロウェルは、上記のように、化学官能性のもので誘導体化される。次いで、捕獲成分を添加する。
【0084】
捕獲成分の付着の一例を、図1に示す。ここで、本発明の反応容器は、ビオチンを用いて官能化される。図1aに示すとおり、この例における本発明のアレイは、光ファイバー束10である。捕獲成分18を付着させるために、マイクロウェルを、第1に、付着成分16により修飾する。付着成分16は、この例においては、図1bにおいて示すように、ファイバー束10の遠位端のコア12表面と被覆14表面との両方に結合するアミノプロピルシラン16である。NHS−ビオチンがアミノシラン化表面16に付着するので、アミノプロピルシランによる修飾は、この例において効果的である。しかしながら、捕獲成分18は反応容器の中にのみ存在すべきであるので、基材の外部表面、例えば被覆14の外部表面は、シラン化されるべきではない。すなわち、ビオチン付着を避けるために、外部被覆表面14からシラン化を除去しなければならない。この例において、図1cにおいて示すとおり、アミノシラン化ファイバーを10秒間0.3μmのラッピングフィルムで研磨し、それによりアミノシラン化された被覆層を除去することにより、シラン化16を外部被覆層14から除去する。
【0085】
付着成分16がマイクロウェルに添加された後で、捕獲成分18を付着させることができる。図1の例において、捕獲成分18は、ビオチン18である。図1dにおいて示すとおり、ビオチンサクシニミジルエステル18は、ウェル表面12上のアミノ基16に付着する。
【0086】
III.標的分析物
本明細書において議論されるように、本発明のアレイは、標的分析の検出、定量、およびさらなる分析を提供する。本明細書における「標的分析物」または「分析物」または文法的に同等のものにより、検出されるか、または結合パートナーについて評価されるべき任意の原子、分子、イオン、分子イオン、化合物または粒子を意味する。
【0087】
一態様によれば、標的分析物は酵素である。例えば、酵素は、6つの酵素分類:酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼおよびリガーゼ、のいずれかからの酵素であってよい。したがって、好適な酵素として以下が挙げられるがこれらに限定されない:ポリメラーゼ類、カテプシン類、カルパイン類、例えばASTおよびALTなどのアミノ転移酵素、例えばカスパーゼ類などのプロテアーゼ類、ヌクレオチドシクラーゼ類、トランスフェラーゼ類、リパーゼ類、心臓発作に関連する酵素など。本発明のシステムをウイルスまたは細菌の標的物に用いる場合、好適な酵素は、ウイルスまたは細菌のポリメラーゼ類、ならびにウイルスまたは細菌のプロテアーゼ類を含む他のかかる酵素を含む。
【0088】
あるいは、標的分析物は、酵素成分を有する。例えば、標的分析物は、その細胞外表面上に存在する酵素または酵素成分を有する細胞であってもよい。あるいは、標的分析物は、酵素成分を有さない細胞である。かかる細胞は、典型的には、「サンドウィッチ」アッセイなどの以下に記載される間接的アッセイ方法を用いて同定される。
【0089】
別の態様によれば、標的分析物は酵素ではない。当業者によって理解されるように、本発明において多数の分析物を用いることができる。基本的に、捕獲成分および/または二次結合リガンドに結合するあらゆる標的分析物を用いることができる。以下にさらに詳細に説明するように、これらの標的分析物は、典型的には、「サンドウィッチ」アッセイなどの間接的なアッセイを用いて同定される。上記のように、1つの好適な標的分析物は細胞である。さらに、好適な分析物として、生体分子を含む有機および無機の分子が挙げられる。好ましい態様において、標的分析物は、タンパク質である。当業者によって理解されるとおり、本発明を用いて検出されるかまたは結合パートナーについて評価することができる多数の可能なタンパク質性標的分析物が存在する。上記のような酵素に加えて、好適なタンパク質標的分析物として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:(1)免疫グロブリン;(2)ホルモンおよびサイトカイン(これらの多くは、細胞受容体に対するリガンドとして作用する);ならびに(3)他のタンパク質。
【0090】
標的分析物が酵素でなく、以下により詳細に記載するサンドウィッチアッセイが行われる一態様によれば、以下により詳細に記載する酵素標識は、ベータガラクトシダーゼであってよい。あるいは、酵素標識は、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペロキシダーゼであってよいが、これらに限定されない。
【0091】
さらに、好適な標的分析物として、以下が挙げられるがこれらに限定されない:環境汚染物質(農薬、殺虫剤、トキシンなどを含む);化学物質(溶媒、ポリマー、有機物質などを含む);治療性分子(therapeutic molecule)(治療性分子および誤用される薬物(abused drug)、抗生物質を含む);生体分子(ホルモン、サイトカイン、タンパク質、核酸、脂質、炭水化物、細胞膜抗原、および受容体(神経、ホルモン、栄養因子、および細胞表面受容体)またはそれらのリガンドなど);全細胞(whole cell)(原核細胞(病原性細菌など)および真核細胞を含み、哺乳動物の腫瘍細胞を含む);ウイルス(レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、レンチウイルスなどを含む);ならびに胞子など。
【0092】
IV.酵素基質
標的分析物(単数または複数)がマイクロウェル(単数または複数)中に捕獲された後(および特定の態様によれば洗浄の工程の後)で、反応成分がアレイに添加される。本明細書において使用される場合、「反応成分」により、酵素または酵素性分子と接触した場合に酵素反応に影響を及ぼす分子を意味する。「影響を及ぼす」により、反応または阻害反応を活性化するか、または改変する(例えば、遅延または加速させる)か、または反応を阻害することを含むことを意味するが、これらに限定されない。一態様によれば、反応成分は、色素生産性酵素基質である。「色素生産性酵素基質」とは、本明細書において使用される場合、酵素によって酵素反応の結果として色素生産性生成物に変換されるあらゆる分子である「色素生産性」とは、光学(可視光)スペクトルにおける色または色素への関連を意味し、蛍光発生性を含む。
【0093】
色素生産性基質は、公知であるか、6つの酵素分類のいずれかの酵素について作られることができることが、当該分野において理解される。したがって、特定の酵素との反応において色素生産性生成物を生成することができるあらゆる公知の色素生産性基質を、本発明において用いることができ、これは、本明細書においてその全体が参考として援用されるThe Handbook - A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies, Tenth Ed., Chapter 10, http://probes.invitrogen.com/handbook/sections/1000.htmlにおいて開示される色素生産性酵素基質のいずれかを含む。
【0094】
本発明のアッセイが、本明細書においてさらに説明するような酵素標識がベータガラクトシダーゼであるサンドウィッチアッセイである一態様によれば、アレイに添加される基質は、レゾルフィン−β−D−ガラクトピラノシドなどのベータガラクトシダーゼ基質である。
【0095】
V.アッセイ方法
本発明のアレイは、いくつかの異なるアッセイ方法のために用いることができる。より具体的には、本発明は、(a)標的分析物の検出、および(b)サンプル中の標的分析物濃度の定量を提供する。
【0096】
一般に、本発明のシステムまたはアレイは、目的の分析物に露出され(または、目的の分析物を含有するサンプルと接触させ)、分析物は、捕獲成分の少なくとも1つへの標的分析物の固定化に好適な条件、すなわち、一般的な生理学的条件下において、マイクロウェル中で捕獲成分により固定される。本発明の用途を目的とする場合、用語「固定化」とは、マイクロウェル中で捕獲成分に付着、結合または付加(affix)されることを意味する。したがって、マイクロウェル中での任意の分析物分子と捕獲成分との間の相互作用は、マイクロウェル中での分析物分子の固定化をもたらす。
【0097】
本発明の一局面において、目的のサンプルを、約45分間〜約75分間の期間にわたり、本発明のアレイと接触させる(または、アレイをサンプル中でインキュベートする)。あるいは、アレイとサンプルとを、約50分間〜約70分間の期間にわたり接触させる。さらなる代替において、インキュベーションの期間は、約1時間である。
【0098】
一態様によれば、アレイとサンプルとを接触させた後で洗浄の工程を行う。洗浄の工程は、捕獲成分に結合していないあらゆる標的分析物または非標的分子を洗い流すことを目的とする。あるいは、洗浄の工程は必要でない。
【0099】
本発明の一局面において、次いで、二次結合リガンドをアレイに添加する。一般に、二次結合リガンドを、本明細書においてより詳細に記載されるように、アッセイが「サンドウィッチアッセイ」などの間接的アッセイである場合(標的分析物が酵素でない場合)に添加する。上記のとおり、二次結合リガンドは、結合した標的分析物に会合するかまたは結合し、酵素成分を含む。二次結合リガンドは、リガンドがアレイ中の全ての結合した標的分析物と確実に接触するために充分な量で添加する。あるいは、例えば標的分析が直接的に検出される場合、二次結合リガンドは添加しない。
【0100】
次いで、上記のような色素生産性酵素基質を、アレイに導入するかまたは添加する。色素生産性酵素基質は、全ての捕獲された標的分析物と接触するために充分な量で提供する。選択された基質は、酵素成分と反応するか、または酵素成分によって修飾され、その結果、反応は、色素生産性生成物を生成し、したがって光学シグナルを生成する。アレイ中での色素生産性生成物の存在は、分析物および捕獲成分および酵素基質(および一部の場合においては二次結合リガンド)の相互作用に基づいて、分析物の光度および/または濃度についての情報を提供することができる。
【0101】
本発明の一態様において、酵素基質を添加した後で、マイクロウェルを密封する。すなわち、密封成分を基材の面と接触させることにより、各々のマイクロウェルを流動体に関して分離し、その内容物を密封する。「密封成分」とは、本明細書において使用される場合、アレイ基材の全表面を覆うために充分に大きく、各々の密封容器の内容物が容器から漏出することができないように各々の反応容器が密封されるかまたは分離されるようにアレイ基材表面と接触することができる、任意の材料またはデバイスとして定義される。一態様によれば、密封成分は、シリコーンエラストマーのガスケットであって、基材の全体にわたって均一な圧力を伴って基材に対して配置される。各々のマイクロウェル中に内容物を密封することにより、酵素反応がマイクロウェル中で進行することができ、それによって検出可能な量の色素生産性生成物を生成し、それがマイクロウェル中に検出の目的のために残留することができる。すなわち、酵素は、基質を色素生産性生成物に変換し、これが各々の密封された容器中で局所的に高い濃度に蓄積し、検出可能な色素生産性シグナルを生じる。
【0102】
一態様によれば、本発明は、密封成分を適用する機械的なプラットフォームを備えた顕微鏡システムを提供する。プラットフォームは、顕微鏡のステージの下で、顕微鏡システム上に配置される。アッセイ成分を各々のウェルに添加した後で、密封成分を、機械的プラットフォームにより適用される均一な圧力を用いて、扁平表面(例えば、顕微鏡スライドグラス)とアレイ基材との間にサンドウィッチする。
【0103】
アッセイは、当業者に理解されるように、多様な実験条件下において行うことができる。多様な他の試薬をスクリーニングアッセイにおいて含めることができる。これらは、塩、中性タンパク質、例えばアルブミン、洗剤などの試薬を含み、これらは、至適なタンパク質−タンパク質結合を促進するため、および/または非特異的もしくはバックグラウンドの相互作用を低減するために用いることができる。また、その他にアッセイの効率を改善する試薬、例えばプロテアーゼ阻害剤、ヌクレアーゼ阻害剤、抗菌剤などを用いてもよい。成分の混合物は、必要な結合を提供する任意の順序で添加することができる。当該分野において公知であるように、多様なブロッキングおよび洗浄の工程を利用することができる。
【0104】
光学サインの活性または変化を示すマイクロウェルを、従来の光列(optical train)および光学検出システムにより同定することができる。用いられる特定の色素生産性酵素基質およびそれらの色素生産性生成物が作動する波長に依存して、特定の波長のために設計された光学フィルターを、マイクロウェルの光学調査のために用いることができる。好ましい態様において、本発明のシステムまたはアレイは、基材としての光ファイバー束または光ファイバーアレイと組み合わせて使用される。
【0105】
一態様によれば、本発明のアレイは、その全体が本明細書において参考として援用される米国特許出願第09/816,651号において記載されるシステムのような光学検出システムと組み合わせて用いてもよい。例えば、一態様によれば、本発明のアレイは、光ファイバーの集合の遠位端であって、被覆ファイバーから構成される光ファイバー束を含み、したがって、光はファイバー間で混じらない。09/816,651出願において示されるように、束の近位端は、z−翻訳ステージおよびx−yマイクロポジショナーにより受容される。
【0106】
米国特許出願第09/816,651号の光学検出システムは、以下のように作動する。束の遠位端から戻る光は、倍率交換装置(magnification changer)へのアタッチメントを通過し、該アタッチメントは、ファイバーの近位または遠位端のイメージのサイズの調整を可能にする。倍率交換装置を通過する光は、次いで、シャッター(shutter)され、第2のホイールによりフィルターされる。光は、次いで、電荷結合素子(CCD)カメラでイメージ化される。コンピューターがイメージングを処理するソフトウェアを実行し、CCDカメラからの情報を処理し、また、可能であれば第1および第2のシャッターおよびフィルターのホイールを制御する。
【0107】
本発明のアレイまたはシステムは、多様な適合する方法を用いて、光ファイバー束の遠位端に取り付けることができる。各々の光ファイバー束の中心にウェルを形成する。したがって、束の各々の光ファイバーが、そのファイバーの遠位端の中心に形成された単一のマイクロウェルからの光を運搬する。この特徴は、個々のマイクロウェルの光学サインの調査を可能とし、各々のマイクロウェル中の反応を同定するために必要である。したがって、束の末端をCCDアレイ上にイメージングすることにより、マイクロウェルの光学サインを個々に調査することができる。
【0108】
A.検出
本発明の一局面において、本発明のアレイは、サンプル中の標的分析物の存在を検出するために用いることができる。より具体的には、本発明は、酵素反応の生成物を標的分析物の存在の指標として検出するための方法を提供する。
【0109】
検出の方法は、直接的であっても間接的であってもよい。標的分析物が酵素である場合、分析物は、直接的な検出の方法によって同定される。あるいは、標的分析物が酵素ではなく、したがって、色素生産性酵素の基質の存在下において色素生産性生成物を生成し得ない場合、分析物は、間接的な検出の方法によって同定される。
【0110】
直接的な検出の方法は、酵素である標的分析物に関し、以下のように進行する。第1に、目的のサンプルとアレイとを、上記でより詳細に記載したように、好適な条件下において接触させる。その後、色素生産性酵素の基質を添加する。
【0111】
任意の所与のマイクロウェル中の標的分析物の存在または不在を、次いで、光学的調査により検出する。すなわち、色素生産性生成物の生成によって引き起こされる光学的シグナルのあらゆる変化が検出される。標的分析物を含有する任意のマイクロウェル中で、分析物は、何らかの方法で基質を修飾するかまたは基質に作用し、それにより色素生産性生成物の放出をもたらし、該マイクロウェルからの光学シグナルの変化を生じる。次いで、色素生産性反応生成物を、光学的に検出する。
【0112】
本発明の一態様において、上記のように、酵素の基質を添加した後でマイクロウェルを密封する。
【0113】
間接的な検出の方法は、酵素特性を有さない標的分析物に関する。本発明と共に用いることができる2つの間接的方法は、「サンドウィッチ」アッセイおよび「競合的」アッセイである。
【0114】
サンドウィッチアッセイは、図2に示すように行うことができる。第1に、目的のサンプルとアレイ10とを、図2aに示すように、および上記により詳細に記載するように接触させる。好適な条件下において、サンプル中に存在する標的分析物12は、図2bに示すように、マイクロウェル14中の捕獲成分16によって捕獲される。一態様によれば、次いで洗浄の工程を行う。
【0115】
次いで、図2cに示すように、溶液結合リガンド18(また、本明細書において「二次結合リガンド」として言及される)をアレイ10に添加する。溶液結合リガンド18は、標的分析物12に結合する点において捕獲成分16と類似する。溶液結合リガンド18は、捕獲結合リガンド16と同一であっても異なっていてもよい。捕獲された標的分析物12に対する溶液結合リガンド18の結合は、ある種の「サンドウィッチ」を形成する。標的分析物が不在の場合、溶液結合リガンド18は洗い流される。
【0116】
溶液結合リガンド18は、結合成分22および酵素標識24の2つの成分を有する。結合成分22は、溶液結合リガンド18の標的分析物12に結合する部分である。典型的には、溶液結合リガンド18は、標的分析物12の、捕獲成分16とは異なる部分に結合する。なぜならば、捕獲成分16と溶液結合リガンド18との両方が同一の部分に結合する場合、溶液結合リガンド18は、捕獲された標的分析物12には結合することができないからである。したがって、選択された二次結合リガンド18は、標的分析物12が捕獲成分16を介してマイクロウェル14に結合したままで、標的分析物12に結合することができる。
【0117】
酵素標識24は、溶液結合リガンド18の酵素活性を奏する部分である。一態様によれば、酵素標識24は、溶液結合リガンド18に付加された酵素である。
【0118】
その後、色素生産性酵素基質が添加される。
【0119】
本発明の一態様において、上記のように酵素基質が添加された後でマイクロウェルを密封する。
【0120】
次いで、任意の所与のマイクロウェル中の標的分析物の存在または不在を、光学的調査によって検出する。すなわち、色素生産性生成物の生成によって引き起こされる光学的シグナルのあらゆる変化が検出される。標的分析物および二次結合リガンドを含有する任意のマイクロウェル中で、二次結合リガンドに会合した酵素は、何らかの方法で基質を修飾するかまたは基質に作用し、それにより色素生産性生成物を生成し、該マイクロウェルからの光学シグナルの変化を生じる。次いで、生成物を光学的に検出する。
【0121】
競合的アッセイは以下のように作用する。第1に、標識された分子を本発明のアレイに添加する。ここで、標識は、酵素または酵素成分である。この態様において、選択された標識分子は、標識分子のアレイへの添加がマイクロウェル中の捕獲成分への標識分子の結合をもたらすように、捕獲成分に結合する。
【0122】
次いで、目的のサンプルとアレイとを、上でより詳細に記載したように接触させる。アレイ中の標的分析物の存在は、標識された分子の移動(displacement)、および分析物の捕獲成分への結合を引き起こす。移動は、以下の理由により起こる:この態様において、選択された捕獲成分は、標識された分子または標的分析物のいずれかに結合することができ、したがって、競合的結合状態をもたらす。その結果、標識された分子がマイクロウェル中で捕獲成分に結合しており、標的分析物が添加される場合、標的分析物は、好適な条件下において標識された分子を移動する。
【0123】
一態様によれば、次いで、あらゆる非結合の標識された分子をアレイから除去するために、洗浄の工程を行う。
【0124】
その後、色素生産性酵素基質を添加する。そして、上記のように、本発明の一局面によれば、酵素基質を添加した後でマイクロウェルを密封する。あるいは、マイクロウェルを密封しない。
【0125】
次いで、任意の所与のマイクロウェル中の標的分析物の存在または不在は、光学的調査により検出することができる。しかし、上記の光学的調査とは異なり、この調査においては、色素生産性生成物を欠いていることが、マイクロウェル中の標的分析物の存在を示す。標的分析物を含有する任意のマイクロウェルにおいて酵素活性はおこらず、該マイクロウェルからの光学的シグナルの変化は起こらない。対照的に、標識された分子が未だ存在する任意のマイクロウェルにおいて、光学的シグナルが検出される。
【0126】
競合的アッセイの態様の代替的バージョンにおいて、標識された分子および目的のサンプルの両方をアレイに同時に決まった容積で添加する。このバージョンにおいて、標的分析物および標識された分子は、捕獲成分の結合部位について直接的に競合する。
【0127】
I.同一の標的分析物に対する同一の捕獲成分の亜集団
1つの検出の態様によれば、センサー冗長性(sensor redundancy)が用いられる。この態様において、「亜集団」として言及される同一の捕獲成分を含む複数の反応容器が用いられる。すなわち、各々の亜集団は、アレイのマイクロウェル中に存在する複数の同一の捕獲成分を含む。さらに、一態様によれば、各々の亜集団は、同一の捕獲成分を含む複数のマイクロウェルを含む。所与のアレイについて多数の同一の捕獲成分を用いることにより、各々のマイクロウェルからの光学シグナルを、亜集団について組み合わせることができ、以下に概説するように、任意の数の統計学的分析を行うことができる。このことは、多様な理由のために行い得る。
【0128】
例えば、時間により変化する測定において、冗長性により、システムのノイズを著しく低減することができる。時間に基づかない測定については、冗長性により、データの信頼度を著しく高めることができる。
【0129】
亜集団の数は、一態様によれば、2から、任意の公知のアレイの限界および異なる捕獲成分の数を前提として、可能な任意の亜集団の数までの範囲であってよい。あるいは、数は、約2〜約10の範囲であってよい。さらなる代替において、数は、約2〜約5の範囲であってよい。
【0130】
一態様において、複数の異なる捕獲成分が用いられる。当業者に理解されるように、亜集団中の同一の捕獲成分の数は、センサーアレイの用途および使用に伴い変化する。一般に、2〜数千個のいくつの同一の捕獲成分を所与の亜集団において用いてもよく、2〜100個が好ましく、2〜50個が特に好ましく、5〜20個がことさら好ましい。一般に、予備の結果は、亜集団中のおよそ10個の同一の捕獲成分が充分な利点をもたらすが、一部の用途については、より多くの同一の捕獲成分を用いることができる。
【0131】
一旦得られると、各々の亜集団内の(すなわち、同一の捕獲成分を有する)複数のマイクロウェルからの光学応答シグナルを、基線の調節、平均化、標準偏差分析、分布およびクラスター分析、信頼区間分析、平均値試験などを含む多様な方法において、操作して分析することができる。
【0132】
2.同一の標的分析物に対する複数の異なる捕獲成分
センサー冗長性に加えて、一態様による本発明のアレイは、単一の標的分析物に指向するが同一ではない複数の捕獲成分を利用する。この態様は、1より多くの異なる捕獲成分を各々のマイクロウェル中に、または、異なるマイクロウェル中に異なる捕獲成分を、提供する。一例において、単一の2または3以上の捕獲成分が結合することができる標的分析物を提供することができる。このことにより、非特異的結合相互作用が統計学的に最少化されるので、信頼のレベルが高まる。この態様において、タンパク質性標的分析物を評価する場合、好ましい態様は、標的の異なる部分に結合する捕獲成分を利用する。例えば、同一の標的タンパク質の異なる部分に対する2または3以上の抗体(または抗体フラグメント)を捕獲成分として使用し、好ましい態様は、異なるエピトープに対する抗体を利用する。
【0133】
同様に、核酸標的分析物を評価する場合、余剰の核酸プローブは、オーバーラップしているか、隣接しているか、または空間的に分離している。しかしながら、2つのプローブが単一の結合部位について競合しないことが好ましく、したがって、隣接しているか分離しているプローブが好ましい。
【0134】
この態様において、複数の異なる捕獲成分を用いてもよく、約2〜約20が好ましく、約2〜約10が特に好ましく、および2〜約5がことさらに好ましく、これは、2、3、4または5を含む。しかしながら、上記のように、用途に依存して、より多くを用いてもよい。
【0135】
3.複数の標的分析物に対する複数の異なる捕獲成分
別の態様によれば、本発明のアレイは、複数の標的分析物に指向された複数の異なる捕獲成分を利用する。この態様は、各々のマイクロウェル中に1より多くの異なる捕獲成分、または異なるマイクロウェル中に異なる捕獲成分を含む。一例において、同一のマイクロウェルまたは異なるマイクロウェル中の2または3以上の捕獲成分が結合することができる、2または3以上の標的分析物を提供してもよい。
【0136】
この態様において、1以上の標的分析を同定することができる。例えば、各々の異なる分析物が異なる酵素であるかまたは酵素表面分子などの異なる酵素成分を有する限り、2または3以上の標的分析物を同定することができる。一態様において、標的分析物は、複数の酵素基質を用いて同定され、ここで、各々の基質は、好適な酵素との相互作用の際に異なる色を生じる。したがって、各々の標的分析物は、基質との反応により生じた色に基づいて区別することができる。代替的態様において、標的分析物は、各々が同一の色を生じる複数の基質を用いて同定される。したがって、各々の標的分析物は、連続的に基質を添加することによって区別することができる。
【0137】
この態様において、複数の異なる捕獲成分を用いることができ、約2〜約20が好ましく、約2〜約10が特に好ましく、および2〜約5がことさらに好ましく、これは、2、3、4または5を含む。しかしながら、上記のように、用途に依存して、より多くを用いてもよい。
異なる標的分析物に指向された捕獲成分亜集団および同一の標的分析物に指向された複数の捕獲成分を含む上記の異なるアッセイの構成の各々はまた、以下に記載する定量のために利用してもよいことに注意されたい。
【0138】
B.定量
本発明の一態様によれば、本発明は、サンプル中の標的分析物の検出のために用いるのみならず、またサンプル中の標的分析物の定量のために用いることもできる。すなわち、標的分析物を含有する反応容器のパーセンテージと、サンプル中の標的分析物の濃度との間に、相関関係が存在する。したがって、本発明の定量方法により、標的分析物を捕獲したマイクロウェルのパーセンテージに基づき、サンプル中の標的分析物の量の計算が可能となる。
【0139】
理論に拘束されることなく、定量方法は、使用される反応容器の数および用量が、この技術により決定することができる濃度の動的範囲を支配するという事実によって、部分的に駆動される。すなわち、本発明のアレイ中の反応容器の数および容積に基づき、溶液中の標的分析物の濃度の範囲の概算を行うことができ、これにより、本発明の方法を用いて濃度を決定することができる。
【0140】
例えば、例2において開示されるアレイは、各々が46fLの容積を有する反応容器を備え、3.6×10−11Mの濃度を有するβ−ガラクトシダーゼの溶液は、平均して、1容器あたり1酵素分子を得る。しかしながら、標的分析物濃度を有する溶液を、反応容器のアレイ中に好適な範囲で分配することは、正確に1容器あたり1酵素分子の分配をもたらすものではないことが重要である。統計学的には、一部の容器は複数の分子を有し、他の容器はゼロ個の分子を有する。1容器あたりの酵素分子の数が多い場合、データをガウス分布にフィットさせることができる。酵素分子の反応容器に対する比がゼロに近づくにつれ、ポワソン分布が適用される。この極限分布を用いて、多数の試行において起こる稀な事象の確率を計算することができる。例えば、ポワソン統計に基づき、3.6×10−11Mの濃度について、1容器あたりゼロ〜5の間の酵素分子が観察され、最もあり得る値は、ゼロおよび1である。
【0141】
方程式1は、予測される1試行あたりの事象の平均数μに基づいてv事象を観察する確率を決定するために用いることができる。
方程式1: Pμ(v)=e−μ(μv/v!)
【0142】
用いられる濃度が3.6×10−11Mよりはるかに低い場合、予測される平均は、例外的に低くなり、分布は狭まり、1試行あたり0または1の事象以外を観察する確率は、全ての実験ケースにおいて起こり得ない。これらの低い濃度では、活性な反応容器のパーセンテージとバルク酵素濃度との間の関係は、ほぼ直線的である。したがって、この知見に基づき、本明細書において記載されるような単純なデジタル読み出しシステムによってサンプル中の標的分析物の濃度を決定するために、本発明のアレイを用いることができる。
【0143】
一態様によれば、本発明の定量方法は、以下のように行うことができる。方法は、第1に上記のいずれかの検出方法によりマイクロウェルのアレイ中の標的分析物を検出することを含む、デジタル読み出しシステム(また、「バイナリ読み出しシステム」としても言及される)である。次いで、応容器の数を計数し、反応容器の全数のパーセンテージを計算する。すなわち、高密度の反応容器のアレイと組み合わせての応(yes)または否(no)応答の利用により、β−ガラクトシダーゼのバルク濃度のデジタル読み出しを可能とする。この読み出しは、活性な酵素分子を含有する容器をアレイにわたって計数することにより達成され、結果として生じる「活性なアレイ」のパーセンテージは、酵素濃度に相関する。本発明のアレイにおいては同時に多数の容器が調査されることを前提として、多数のウェルが低い比においても統計学的に有意なシグナルを提供するので、酵素分子の反応容器に対する比は、1:500まで低くてもよい。
【0144】
理論に限定されることなく、本発明の定量方法は、受容可能な解像度で見ることができる個々の反応容器の数によってのみ限定されると考えられる。したがって、より高い密度のCCDチップを用いて調査される容器の数を拡大することにより、より低い標的濃度で発光する小数の活性なウェルの統計により下限が定義されるので、検出の限界を低くする。一方、動的範囲の上限は、バイナリ読み出しからのウェル間の偏差によって制御される。標的濃度が高くなるにつれ、ガウス分布が標的分子結合のより好ましい近似値となり、バイナリ読み出しは失われる。より高い濃度の標的は、各々のウェルを占有する多数の酵素分子の広い分布をもたらし、したがって、活性なウェルのパーセンテージの非直線的増大への移行をもたらす。
【0145】
この技術の制限は、動的範囲の閾値の上下で見出される。濃度が動的範囲の下限より下となると、酵素分子の数が少なすぎ、充分な占有されたウェルを観察することができず、したがって、統計学的に有意な数のウェルが酵素分子により占有されることを確実にするために、ウェルの数を増やさなければならない。極めて希釈された濃度についての結果は、活性を示すと予測される反応容器の数が非常に少ないことに起因して、それらに関連する大きな相対的誤差を有する。予測されるポワソン値からのわずかな偏差が、この場合、大きな誤差を生じる。反応容器の100%が少なくとも1個の酵素分子を含有する場合に、この技術に対する究極的な上限が生じる。この限界において、高い酵素濃度の2つの溶液の間の区別は不可能である。活性な容器のパーセンテージが100%に近づくにつれ、濃度と活性な容器のパーセンテージとの間の直線性が失われる。この状況は、正規分布が次第により好ましい結果の近似値となるにつれて、分布の広がりをもたらす。
【0146】
本発明の一局面において、アレイはまた、酵素動態を分析するために用いることができる。「酵素動態」とは、本明細書において使用される場合、酵素により制御される反応の速度の研究を指す。低い基質濃度における酵素反応の速度は、基質濃度に対して比例的である(「酵素依存的」である)ことが、酵素動態の分野において理解される。このことは、第1の規則として言及される。さらに、高い基質濃度における反応の速度は、最大速度に達し、反応が飽和しているので、基質濃度に依存しないことが理解される。したがって、反応速度を基質濃度の関数としてプロットすると、線は、初期には基質が増加すると共に直線的に増大し、次いで基質濃度が飽和に近づくにつれて水平化し始める。
【0147】
したがって、一態様によれば、本発明のシステムおよびアレイを用いて、任意の特定の酵素の動態を研究することができる。反応速度は、酵素によって、例えば、アロステリック阻害により引き起こされる反応の阻害を含む多様な理由により変化する。本発明のアレイにより、これらの変化する動態学的特性の研究が可能となる。
【0148】
一態様によれば、動態は以下の様式において試験される。標的分析物を捕獲成分に結合させ、基質を添加し、反応容器を密封する。有限の量の基質が反応容器中に存在し、容器の密封によってさらなる基質は添加され得ないことを前提として、経時的に検出される色素生産性生成物の量に基づいて、反応速度を決定することができる。
【0149】
C,シグナルおよび感受性の増大
本発明の一態様は、上記の単一分子の検出および定量の多様な態様についてシグナルおよび感受性を増大させるために、生体分子、および好ましくは複数の生体分子(例えばオリゴヌクレオチド)、に付着した金属または半導体のナノ粒子を企図する。一態様において、生体分子(例えばオリゴヌクレオチド)は、ナノ粒子に付着していない末端において蛍光分子で標識される。本発明は、ナノ粒子の型またはアッセイにおける1つのみの型のナノ粒子の使用に限定されることを意図しない。一部の態様において、2または3以上の異なる型またはサイズのナノ粒子が用られる。例えば、異なるサイズ(例えば、直径50nmおよび100nm)の金ナノ粒子は、異なる色の光を分散し(それらの異なる表面プラズモン共鳴に起因する)、これらは、同一のアレイにハイブリダイズされた異なるDNA標的を標識するために用いることができる。
【0150】
本発明の実施において有用なナノ粒子として、金属(例えば、金、銀、銅およびプラチナ)、半導体(例えば、CdSe、CdS、およびCdS、またはZnSでコートされたCdSe)、ならびに磁性体(例えば、フェロマグネタイト(ferromagnetite))のコロイド材料が挙げられる。金属、半導体および磁性体のナノ粒子を製造する方法は、当該分野において周知である。例えば、Schmid, G. (ed.) Clusters and Colloids (VCH, Weinheim, 1994); Hayat, M. A. (ed.) Colloidal. Gold: Principles, Methods, and Applications (Academic Press, San Diego, 1991); Massart, R., IEEE Taransactions On Magnetics, 17, 1247 (1981); Ahmadi, T. S. et al., Science, 272, 1924 (1996); Henglein, A. et al., J. Phys. Chem., 99, 14129 (1995); Curtis, A. C, et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., '27, 1530 (1988)を参照。本発明の実施において有用な他のナノ粒子として、ZnS、ZnO、TiO2、AgI、AgBr、HgI2、PbS、PbSe、ZnTe、CdTe、In2S3、In2Se3、Cd3P2、Cd3As2、InAsおよびGaAsが挙げられる。例えば、Weller, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 32, 41 (1993); Henglein, Top. Curr. Chem., 143, 113 (1988); Henglein, Chem. Rev., 89, 1861 (1989); Brus, Appl. Phys. A., 53, 465 (1991); Bahncmann, in Photochemical Conversion and Storage of Solar Energy (eds. Pelizetti and Schiavello 1991), page 251; Wang and Herron, J. Phys. Chem., 95, 525 (1991); Olshavsky et al., J. Am. Chem. Soc, 112, 9438 (1990); Ushida et al., J. Phys. Chem., 95, 5382 (1992)を参照。好適な金ナノ粒子はまた、例えばTed Pella, Inc., Amersham CorporationおよびNanoprobes, Inc.から市販されている。
【0151】
ナノ粒子の成長を制御するための方法が存在する。Mirkinらに対する米国特許第7,033,415号(本明細書により参考として援用される)は、三角形のナノプリズムの融合を伴う、銀ナノ構造のための新規の型のプラズモン駆動成長機構を記載する。この機構は、プラズモン励起により駆動され、協調性が高く、二峰性の粒子サイズ分布を生じる。これらの方法において、成長プロセスは、二峰性分布および単峰性分布の間で、ナノ粒子の二光束照射を用いて選択的に切り替えることができる。ナノ構造の成長に対するこの型の協調的な光制御により、30〜120nmの範囲において予め選択された接線の長さを有する単分散のナノプリズムの合成が、単純に一方の光束を二峰性成長をオフにするために使用し、他方(450〜700nmの範囲で変化する)を粒子サイズを制御するために使用することにより可能となる。多様なサイズが企図されるが、ナノ粒子のサイズは、好ましくは約5nm〜約150nm(平均直径)、より好ましくは約5nm〜約50nm、最も好ましくは約10nm〜約30nmである。ナノ粒子はまた、ロッドでもよい。
【0152】
本発明において核酸を検出する上で使用するために好ましいのは、金ナノ粒子である。米国特許第7,169,556号(本明細書により参考として援用される)を参照のこと。金コロイド粒子は、その美しい色を生じる帯域について高い減衰係数を有する。これらの強い色は、粒子サイズ、濃度、粒子間距離、ならびに凝集の程度および凝集物の形状(構造)により変化し、これらの材料を比色アッセイのために特に魅力的にしている。例えば、ナノ粒子に付着したオリゴヌクレオチドとオリゴヌクレオチドおよび核酸とのハイブリダイゼーションは、裸眼で可視し得る迅速な色の変化をもたらす。
【0153】
金ナノ粒子はまた、本発明において、上記で述べた同じ理由のために、ならびに、それらの安定性、電子顕微鏡によるイメージングの容易性、およびよく特徴付けられたチオール官能基による修飾に起因して、ナノファブリケーションにおける使用のために好ましい。ナノファブリケーションにおける使用のためにまた好ましいのは、半導体ナノ粒子であり、これは、その特有の電気的特性および発光性特徴のためである。
【0154】
あるいは、一態様において、本発明は、イメージング剤および/またはコード化剤(すなわち、アレイに導入された化合物(生体分子を含む)の検出および/または同定を可能とする剤)として、ならびに、アレイの位置においてそれら自体が移動される物質として、ナノ結晶の使用を企図する。一部の態様において、アレイ中での単一分子の検出は、ナノ結晶の使用により増強される。一態様において、ナノ結晶は、標的分析物に付着または結合する。別の態様において、ナノ結晶は結合パートナーに付着し、結合パートナーは次いで標的分析物に結合する。さらなる態様において、ナノ結晶は、阻害剤、基質、または他のリガンドに付着する。他の態様において、ナノ結晶は、光ファイバー検知技術とともに用いられる。本発明の一部の態様において、イメージングモジュールは、生体分子にカップリングされた硫化亜鉛によりキャッピングされたセレン化カドミウム(Sooklal, Adv. Mater., 10:1083 (1998))などの量子ドットの表面修飾(例えば、Chan and Nie, Science 281 :2016 (1998)を参照)を含む。
【0155】
用語「半導体ナノ結晶」、「量子ドット」、および「Qdot(登録商標)ナノ結晶」は、本明細書において交換可能に用いられ、直径約1nm〜約1000nmまたはその間の任意の整数または整数の分数、好ましくは約2nm〜約50nmまたはその間の任意の整数または整数の分数、より好ましくは約2nm〜約20nm(約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20nmなど)の無機結晶を指す。半導体ナノ結晶は、励起により電磁放射を放出することができ(すなわち、半導体ナノ結晶は発光性であり)、1または2以上の第1の半導体材料の「コア」を含み、第2の半導体材料の「シェル(shell)」によって囲まれていてもよい。半導体シェルに囲まれた半導体ナノ結晶のコアは、「コア/シェル」半導体ナノ結晶として言及される。囲んでいる「シェル」の材料は、好ましくは、コア材料のバンドギャップエネルギーより大きいバンドギャップエネルギーを有し、「コア」基材のものに近い原子スペーシング(atomic spacing)を有するように選択される。コアおよび/またはシェルは、グループII〜VI(ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、HgTe、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTeなど)、およびIII〜V(GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb5など)、およびIV(Ge、Siなど)の材料、ならびにこれらの合金または混合物を含む半導体材料であってよいが、これらに限定されない。
【0156】
半導体ナノ結晶は、必要に応じて、有機キャッピング剤の「コート」により囲まれる。有機キャッピング剤は、任意の多数の材料であり得るが、半導体ナノ結晶表面に対するアフィニティーを有する。一般に、キャッピング剤は、単離された有機分子、ポリマー(またはポリマー化反応のためのモノマー)、無機複合体、および広範囲の結晶構造であり得る。コートは、可溶性、例えば、コートされた半導体ナノ結晶を選択された溶媒中に均質に分散させる能力、官能性、結合特性などを担持させるために用いられる。例えば、結合特性は、ナノ結晶(単数または複数)が選択された標的分析物に結合するように導入することができる。さらに、コートは、半導体ナノ結晶の光学特性を仕立てるために用いてもよい。キャッピングされた半導体ナノ結晶を製造するための方法は、本明細書により参考として援用される米国特許第6,274,323号において議論される。
【0157】
なお他の態様において、アレイ内での単一の分子の検出は、デンドリマーの使用により増強される。一態様において、デンドリマーは、結合パートナーに付着し、結合パートナーは次いで標的分析物に結合する。さらなる態様において、デンドリマーは、阻害剤、基質、または他のリガンドに付着する。他の態様において、デンドリマーは、光ファイバー検知技術とともに用いられる(例えば、Yeら、米国特許出願第20040131322号、PCT出願第WO/2004057386号、およびThomasら、Biophysical Journal, 86(6), 3959 (2004)を参照。これらの各々はその全体が本明細書において参考として援用される)。
【0158】
デンドリマー性ポリマーは、詳しく記載されている(その全体が本明細書において参考として援用されるTomalia, Advanced Materials 6:529 (1994); Angew, Chem. Int. Ed. Engl., 29:138 (1990)を参照)。デンドリマー性ポリマーは、典型的には直径1〜20ナノメートルの範囲の規定の球状構造として合成される。分子量および末端の基の数は、ポリマーの世代(generation)(層の数)の関数として指数関数的に増大する。ポリマー化のプロセスを開始させるコア構造を基として、異なる型のデンドリマーを合成することができる。
【0159】
デンドリマーのコア構造は、全体的形状、密度および表面官能性などのいくつかの分子の特徴を決定する(Tomalia et al., Chem. Int. Ed. Engl., 29:5305 (1990))。球状のデンドリマーは、アンモニアを三価のイニシエーターコアとして、またはエチレンジアミン(EDA)を四価のイニシエーターコアとして有することができる。近年に記載されたロッド形状のデンドリマー(Yin et al., J. Am. Chem. Soc, 120:2678 (1998))は、多様な長さのポリエチレン−イミンの直線状コアを使用する。コアが長いほど、ロッドが長い。樹状巨大分子は、キログラムの量で市販されており、バイオテクノロジーの用途のための現行の適性製造基準(good manufacturing processes:GMP)下で製造することができる。
【0160】
デンドリマーは、エレクトロスプレー−イオン化質量分析法、13C核磁気共鳴分光法、1H核磁気共鳴分光法、高速液体クロマトグラフィー、多角レーザー光拡散によるサイズ排除クロマトグラフィー、紫外線分光分析法、キャピラリー電気泳動およびゲル電気泳動を含む多数の技術により特徴付けることができるが、これらに限定されない。これらの試験は、ポリマー集団の均質性を確認し、GMP適用のためのデンドリマー製造の品質コントロールのために重要である。
【0161】
多数の米国特許は、デンドリマーを製造するための方法および組成を記載する。本発明において有用であり得るいくつかのデンドリマー組成の説明を提供するために、これらの特許の一部の例を以下に挙げるが、これらは説明としての例にすぎず、本発明において多数の他の類似のデンドリマー組成を用いることができることが理解されるべきである。
【0162】
米国特許第4,507,466号、米国特許第4,558,120号、米国特許第4,568,737号、および米国特許第4,587,329号(これらの各々は、本明細書により参考として援用される)は、それぞれ、従来の星形高分子より末端の密度が高い高密度星形高分子(dense star polymer)を製造する方法を記載する。これらの高分子は、従来の星形高分子、すなわち、第3世代高密度星形高分子よりも高い/より均一な反応性を有する。これらの特許は、さらに、アミドアミンデンドリマーの性質およびデンドリマーの3次元分子直径を記載する。
【0163】
米国特許第4,631,337号は、加水分解に安定な高分子を記載する。米国特許第4,694,064号は、ロッド形状のデンドリマーを記載する。米国特許第4,713,975号は、高密度星形高分子、ならびに、ウイルス、細菌および酵素を含むタンパク質の表面を特徴付けるためのそれらの使用を記載する。架橋された高密度星形高分子は、米国特許第4,737,550号において記載される。米国特許第4,857,599号および米国特許第4,871,779号は、イオン交換樹脂、キレート化樹脂として有用な固定されたコア上の高密度星形高分子、およびかかる高分子を製造する方法を記載する。これらの特許の各々は、本明細書により参考として援用される。
【0164】
米国特許第5,338,532号(本明細書により参考として援用される)は、医薬または他の材料と関連して、デンドリマーのスターバースト複合体を指向する。この特許は、単位ポリマーあたり高濃度で担持される材料の送達、制御送達、ターゲティングされた送達、ならびに/または、複数の種、例えば薬物、抗生物質、一般的もしくは特異的なトキシン、金属イオン、核種、シグナル発生物質、抗体、インターロイキン、ホルモン、インターフェロン、ウイルス、ウイルスフラグメント、殺虫剤および抗菌剤などの送達の手段を提供するための、デンドリマーの使用を記載する。
【0165】
米国特許第6,471,968号(本明細書により参考として援用される)は、共有結合で架橋された第1および第2のデンドリマーを含むデンドリマー複合体を記載し、第1のデンドリマーは、第1の剤を含み、第2のデンドリマーは第2の剤を含み、第1のデンドリマーは第2のデンドリマーとは異なり、第1の剤は第2の剤と異なる。
【0166】
他の有用なデンドリマー型組成物は、米国特許第5,387,617号、米国特許第5,393,797および米国特許第5,393,795号において記載され、ここで、高密度星形高分子は、疎水性の外側のシェルを提供することができる疎水性基によりキャッピングすることにより修飾される。米国特許第5,527,524号は、抗体複合体中のアミノ末端デンドリマーの使用を開示する。これらの特許の各々は、本明細書により参考として援用される。
【0167】
金属イオンキャリアとしてのデンドリマーの使用は、米国特許第5,560,929号において記載される。米国特許第5,773,527号は、コームバースト(comb-burst)構造を有する非架橋の多分枝高分子およびかかる高分子を製造する方法を開示する。米国特許第5,631,329号は、分枝から保護されている第1の分枝高分子のセットを形成し;コアに接合し;第1の分枝高分子のセットを脱保護し、次いで、分枝から保護されている第2の分枝高分子のセットを形成し、第1の分枝高分子のセットを有するコアに接合することなどによる、高分子量の多分枝高分子を製造する方法を記載する。これらの特許の各々は、本明細書により参考として援用される。
【0168】
米国特許第5,898,005号および米国特許第5,861,319号は、分析物の濃度を決定するための、特異的な免疫結合アッセイを記載する。米国特許第5,661,025号は、標的部位へのヌクレオチドの送達に役立つデンドリマーポリカチオンを含む、自己集合するポリヌクレオチド送達系の詳細を提供する。この特許は、ポリヌクレオチドを真核細胞中へインビトロで導入する方法を提供し、この方法は、細胞を、ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドに非共有結合的に結合するデンドリマーポリカチオンを含む組成物と接触させることを含む。これらの特許の各々は、本明細書により参考として援用される。
【0169】
インビトロでの診断用途における使用のためのデンドリマー−抗体複合体は、デンドリマー−抗体構築物の製造について、先に示されている(Singh et al., Clin. Chem., 40:1845 (1994))。デンドリマーはまた、蛍光色素または分子ビーコンと複合体化され、細胞に入ることが示されている。これらは、次いで、細胞内の生理学的変化の評価のための検知器具に適した様式において、細胞内で検出することができる(Baker et al., Anal. Chem. 69:990 (1997))。最後に、分化したブロック共重合体としてデンドリマーが構築され、ここで、分子の外側の部分は、酵素または光誘導触媒のいずれかにより分解されてもよい(Urdea and Horn, Science 261:534 (1993))。
【0170】
一態様において、本発明は、イメージング剤、例えば、フルオロフォア(例えばフルオレセインイソチオシアネート)または量子ドットなどのイメージング剤が付着したデンドリマーの使用を企図する。フルオレセインは、Molecular Probes, Inc.から市販されるイソシアネート誘導体を介してデンドリマーの表面に容易に付着させられる。このように、本発明は、単一分子検出を増強するために、多官能性デンドリマーを提供する。
【0171】
VI.本発明の例示的な用途
本発明のシステムおよびアレイは多くの用途を有する。例えば、アレイは、基礎的な酵素学的研究、ならびにデジタル濃度測定への適用を有する。さらに、アレイは、複数の異なる酵素による研究を可能にし、タンパク質分子およびDNA標的に対する超低濃度検出の限界を拡大する。反応容器の大きなアレイを同時にモニタリングする能力とともに、分子酵素学を用いてバルク動的シグナルからの個々の酵素分子の動態(KoffおよびKon)を分けることができる。
【0172】
別の用途は、例えば、細菌またはウイルスまたは両方の環境モニタリングである。特定の細菌を含有する可能性がある環境サンプルを、本発明のアレイと接触させる。細菌を検出するために、細菌細胞を溶菌し、細菌の酵素(または1より多くの酵素)を検出のためにターゲティングする。一態様によれば、アレイに添加する前に細胞を溶菌する。あるいは、アレイにおいて、細胞を捕獲し、検出の前に溶菌する工程が存在する。さらなる代替において、細胞表面マーカーがターゲティングされる場合、溶菌は必要でない。例えば、目的の細菌またはウイルスを、標的上の表面マーカーに対して特異的な抗体により捕獲し、次いで、酵素により標識された、別の部位において標的に結合する抗体を添加することによるサンドウィッチ型アッセイによって、捕獲物を検出することができる。
【0173】
別の用途は、例えば、遺伝子発現の測定に関する。上記の通り、一態様において、標的分析物は細胞であり、これらは、いくつかの位置が単一の細胞を含有するように、アレイの位置に導入される。これは、遺伝子発現の測定における第1の工程であり、所望の場合、表面タンパク質および分泌タンパク質を検出することにより、全細胞レベルで行うことができる。あるいは、細胞を溶菌して、細胞からの転写物(または他の成分)に対応してもよい。一態様において、各々の位置は、転写物を含有しない。一態様において、正常細胞と癌細胞とを比較する。一態様において、単一の細胞のレベルにおいて遺伝子発現を試験することにより、細胞間の遺伝子発現の変化に対応する。
【0174】
本明細書において開示される全ての引用文献は、その全体が本明細書において参考として援用されることに注意されたい。
【0175】
本発明を、本明細書において好ましい態様への言及により説明したが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形式および詳細において変更を行ってもよいことを理解する。
【実施例】
【0176】
実施例1
この例において、フェムトリットルサイズの反応容器のアレイにおける酵素シグナル増幅を用いて、実際に可能であることを示す結合アッセイを行う。より具体的には、本発明のビオチン化アレイを用いて溶液中の多様な量のストレプトアビジン−β−ガラクトシダーゼ(SβG)を検出するために、多様なアッセイを行い、次いで、捕獲されたSβG分子を有するウェルの数とサンプル中のSβGの濃度との相関関係を試験する。
【0177】
この例において、エッチングされた光ファイバーアレイを用いて、各々が特に官能化されて酵素により標識された標的分子を捕獲することができるフェムトリットルサイズの反応容器の集合を作製する。単一の酵素分子を、個々の反応容器に閉じこめ、陽性シグナルを生じるために充分な数の蛍光生成物の生成を触媒する。低い標的分子濃度においては、捕獲位置の一部しか標的分子に結合せず、高密度アレイからの標的の濃度のバイナリ読み出しが可能となる。
【0178】
材料
この例における反応容器のアレイを、4.5μmの24,000個からなる研磨された1mmの光ファイバーアレイの遠位面の酸エッチングを用いて作製する。コアファイバー材料はシリカであり、各々のファイバーの周囲の被覆剤はゲルマニウムによりドーピングされたシリカであり、これはより遅い速度で腐食する。4.5μmのファイバーを、2.9μmの深さまでエッチングし、各々が46Lの容積を有する反応容器を作製する(図1aを参照)。
【0179】
ファイバーを、第1に、コアおよび被覆表面の両方に結合するアミノプロピルシランにより修飾した(図1bを参照)。被覆材へのビオチンの付着を防止するため、アミノ−シラン化ファイバーを、10秒間0.3μmのラッピングフィルムで研磨し、これにより、ファイバーアレイから最上部のアミノ−シラン化被覆層を取り除いた(図1cを参照)。研磨の後で、NHS−ビオチンをウェル表面上のアミノ基に付着させた(図1dを参照)。
【0180】
方法
第1に、捕獲成分の有効性を試験した。基材のビオチン化の有効性を試験するために、研磨されたファイバーおよび未研磨のファイバーの両方の表面上のビオチン基に、ストレプトアビジンAlexa Fluor 568(登録商標)を直接付着させ、その後、修飾された表面の画像を得た(図3を参照)。図3は、(a)未研磨のビオチン修飾光ファイバーアレイおよび(b)研磨されたビオチン修飾光ファイバーアレイに結合しているストレプトアビジンAlexa Fluor 568(登録商標)を示す。結合がマイクロウェル反応器の表面のみにおいて起きた(b)と比較した場合、画像(a)において観察されるように、ストレプトアビジンの結合は、全ての表面において起きた。したがって、未研磨のファイバーは、被覆表面を含むアレイ全体にわたって色素を示すが、研磨されたファイバーは、ウェル表面においてのみ局在した色素を示す。
【0181】
アレイの修飾の後で、ビオチン化ファイバーアレイを、1時間室温で、多様な量のSβGを含有する150μLのPBSバッファー中でインキュベートした。インキュベーション時間の間に統計学的に1または0個の分子が各々のウェルに結合するように、SβGの濃度を選択した。次いで、未結合の標的を確実に除去するために、アレイをPBSバッファー中で繰り返し洗浄した。
【0182】
SβGの結合のバイナリ読み出しのために、ファイバーアレイを、機械的プラットフォームを備えた正立顕微鏡システムに載せて固定した。β−ガラクトシダーゼの基質であるレゾルフィン−β−ガラクトピラノシド(RDG)の溶液を、反応容器を含有するファイバーの遠位端に導入し、その後密封した。顕微鏡のステージの下に位置する機械的プラットフォームにより顕微鏡スライドグラスとファイバーアレイとの間でサンドウィッチされた0.01インチの厚さのシリコーンエラストマーガスケットを用いて、基材を密封した。このプラットフォームが、束全体にわたりガスケット材料に対して均一な圧力を適用し、各々の反応チャンバーを密封し、ウェル間での酵素活性の調査を可能にし、β−ガラクトシダーゼは、RDGにハイブリダイズしてレゾルフィンを生じ、これが各々の密封された反応容器中で局所的に高い濃度に蓄積し、検出可能な蛍光シグナルを生じる(図4)。
【0183】
図4は、各々の実験について、ファイバーアレイの一部を示す。実験の各々は、異なる濃度のSβGを有する異なるサンプルを試験した。各々の実験についての濃度は、以下の通りであった:(a)128amol、(b)51amol、(c)25amol、(d)7.5amol、および(e)2.6amol。図4(f)は、コントロールを示す。
【0184】
各々の実験について5000個の反応容器の分析により、酵素分子を捕獲した反応容器のパーセンテージと調査されたサンプル中に存在する酵素の量との間の相関が可能となった。活性なウェル間の光度の差異において観察される差異は、表面効果と組み合わせての分子間の触媒活性の差異の結果である可能性が最も高い。表面効果は、反応チャンバー表面に対する酵素分子の配向に基づいて、酵素分子の相対的活性を変化させ得る
【0185】
また、反応器の表面に対する酵素の結合がビオチン−ストレプトアビジンの相互作用にのみ基づいており、ガラス表面への非特異的な結合に基づくものではなかったことを確認するために、2つのコントロール実験をおこなった。1つのコントロール実験は、最も濃縮されたSβG標的溶液(150μL中128amol)でインキュベートされた、エッチングされた未修飾のファイバーからなった。第2のコントロール実験は、ストレプトアビジンを欠くβ−ガラクトシダーゼの溶液(150μL中128amol)中でインキュベートされた修飾ファイバーを用いておこなった。両方のコントロールから、無視することができる活性なウェルのパーセンテージを得た(以下に議論する2.6amolの実験に関する0.2%に対して、0.06%未満)。
【0186】
結果
図5は、サンプル中に存在する標的のモルのlog対logプロット、およびその結果得られる活性な反応容器のパーセンテージを表す。図5に示される活性な反応容器のパーセンテージとlog対logでの標的のモルと間の直線的関係は、DNAおよび抗原などの実際の標的の検出のためにバイナリ読み出し検出法を用い得ることを示唆する。この方法により、直接的なアッセイの手段を維持しつつ、デジタル読み出しを介した迅速な分析および正確な濃度情報が可能となる。
【0187】
この例におけるビオチン化されたフェムトリットルのアレイに対するストレプトアビジン−β−ガラクトシダーゼの結合についての最低検出限界(lowest limit of detection:LOD)が、1時間の標的インキュベーション時間を用いて2.6amole(150μLの17fM溶液)であったこともまた重要である。
【0188】
実施例2
この例において、β−ガラクトシダーゼの単一の分子を、2.0×105個の個々に密封されたフェムトリットルのマイクロウェル反応器にわたって、直径1mmの光ファイバー束を用いてモニタリングした。反応容器のアレイにわたる単一の酵素分子の触媒からの蛍光生成物の蓄積を観察し、ポワソン統計学分析を適用することにより、デジタル濃度読み出しを得た。
【0189】
材料
1mmの束にした4.5μmの光ファイバーを、Illumina(San Diego、CA)から購入した。β−ガラクトシダーゼおよびRu(bpy)3Cl2を、Sigma- Aldrich(St. Louis、MO)から得た、レゾルフィン−D−β−ガラクトピラノシドを、Molecular Probes(Eugene、OR)から購入した。0.01インチの非強化ガラスシリコーンシート材料を、Specialty Manufacturing Inc.(Saginaw、MI)から購入した。使用した全ての他の化学物質は、試薬グレードであり、Sigma- Aldrich(St. Louis、MO)から得た。
【0190】
特注の正立落射蛍光イメージングシステムにより、水銀抗原、励起フィルターホイールおよび発光フィルターホイール、顕微鏡対物およびCCDカメラ(QE、Sensicam)を用いて、全ての蛍光画像を得た。フィルターホイールおよびシャッターをコンピューターにより制御し、JPlabソフトウェア(Scanalytics、Fairfax、VA)により分析を行った。システムは、光ファイバーアレイを全実験にわたりシステムに固定する固定デバイスを備えた。ステージの下の機械的プラットフォームを用いて、シリコーン密封層を収納し、その後ファイバーアレイの遠位端と接触させ、各々の反応容器を密封した。全ての測定を、光ファイバー束の遠位端で、フェムトウェル(femtowell)アレイを用いて行った。
【0191】
およそ2.4×105個の個々の直径4.5μmの光ファイバーを含む光ファイバー束をフェムトリットルの反応容器のアレイを作製するための基材として用いた。エッチングの深度はエッチング時間およびエッチャント濃度により変化するので、ウェルの容積は正確に制御することができる。これらの実験に於いて用いた光ファイバーを、およそ2.9μmの深さまでエッチングし、46fLのウェル容積を得た。図6は、エッチングされた光ファイバー束の表面の画像である。より具体的には、図6aは、ファイバーアレイ全体およびファイバー束の拡大顕微鏡画像を表し、アレイおよび個々の光ファイバーの両方の規則性を強調している。図6bは、エッチングされた表面の一部のAFM画像であり、エッチングのプロセスから作製されたウェルを示す。
【0192】
方法
アッセイ
β−ガラクトシダーゼアッセイのために用いられた基質は、レゾルフィン−β−D−ガラクトピラノシドであった。アレイ中の個々のウェルを酵素および基質の存在下において密封した後、容器のアレイにわたり、酵素生成物であるレゾルフィン(ex 558nm/em 573nm)について蛍光強度をモニタリングした。2.0mMのKClおよび0.lmMのMgCl2を含む100μMのTrisバッファーpH 8.0中、100μMのレゾルフィン−β−D−ガラクトピラノシド(RDG)の溶液を調製した。全ての酵素溶液を、同じ反応バッファーから予め分注して凍結したストックサンプルから調製した。実験の直前に、2つのサンプルを2分間7000RPMで遠心分離し、シリコーンによる密封の機序に干渉し得る全ての粒子状の物質を除去した。およそ1cm2のシリコーンと顕微鏡スライドグラスとを無水エタノールで洗浄した。シリコーンシート材をガラス表面に置き、接着させた。その後、75μLの容積の酵素およびRDG溶液を、シリコーンのガスケット上でピペットを用いて混合した。ガスケットを、ファイバー束の遠位端に向かって、密封が形成されたことを示唆する抵抗を感じるまで機械的に上昇させた。最初の蛍光画像を得、その後、およそ2時間にわたり定期的に画像を得た。
【0193】
密封成分
フェムトリットルアレイを密封するために、0.01インチの厚みのシリコーンエラストマーのガスケットを、顕微鏡スライドグラスとファイバーアレイとの間で、機械的プラットフォームを用いてサンドウィッチした。プラットフォームは、束全体にわたって、ガスケット材に均一な圧力を適用し、各々のマイクロウェルを密封して反応容器を作製した。
【0194】
フェムトリットル容器を作製して分離するために用いたシリコーン/ガラスの密封を、光脱色実験を行うことにより、その密封能力について検査した(図7を参照)。図7は、マイクロチャンバー中への溶液の封入、およびシリコーンの密封の完全性についての評価を表す。図7aは、アレイにわたる赤色蛍光により観察された、チャンバーのアレイ中に封入されたRu(bpy)3C12の溶液を表す。図7bは、UV光を介して光脱色されたファイバー束の小八角形部分を表す。図7cは、60分後のアレイを表す。図において示すとおり、不完全なシリコーン密封の結果としての1つのウェルから別のウェルのRu(bpy)3C12の拡散は、光脱色されたウェルにおける蛍光強度の増大を示すと考えられるが、観察されなかった。実験は、密封が容器のアレイを首尾よく分離する能力についての完全性を立証した。ガラス表面上での酵素分子の変性を、BSAブロッキングバッファーを用いたブロッキングにより防止した。用いられた酵素対容器の比は、1:5から1:500までの範囲であり、2桁にわたる正確な検出を達成した。
【0195】
光脱色実験
DI水中、1mMのRu(bpy)3C12の溶液を、光脱色実験のために用いた。およそ1cm2のシリコーン片および顕微鏡スライドグラスを、糸くずの出ないスワブを用いて無水エタノールで洗浄した。シリコーンシート材を、ガラスの表面上に置き、接着させた。50μLのRu(bpy)3C12溶液をシリコーン上に置き、その後ファイバー束と接触させ、個々の容器中に溶液を封入した。イメージングシステムの視野絞りを用いて、UV光を用いてアレイの小さな部分に10分間照射し、Ru(bpy)3C12を光脱色した。次いで、視野絞りを開放し、蛍光の差異を示す異なる画像を得た。次いで、アレイを、密封が維持された状態で静置した。最後の画像を60分後に取得し、密封の完全性を確認した。
【0196】
上記のように、使用される反応容器の数および容積が、この技術により決定することができる濃度の動的な範囲を支配する。この例において使用される反応容器の容積は、46fL(下記参照)であり;したがって、3.6×10−11Mのβ−ガラクトシダーゼの溶液が、平均して、1容器あたり1個の酵素分子を生じることを計算した。また上記のように、全ての実験ケースにおいて、使用される濃度が3.6×10−11Mより遙かに低い場合、予測される平均値は極めて低くなり、分布は狭くなり、1回の試行あたり0または1以外の事象を観察する確率は、極めて低い。これらの低い濃度において、活性な反応容器のパーセンテージとバルク酵素濃度との間の関係は、ほぼ直線状である。酵素触媒を起こすために充分な時間待った後で、個々の容器を、各々の容器を、酵素活性を有することまたは欠いていることのいずれかに相関するオン/オフ応答について調査した。
【0197】
基質であるレゾルフィン−β−D−ガラクトピラノシド(RDG)を、実験のための基質として用い、シリコーンガスケット材および機械アームを用いて、全ての容器中へ、トラップされた酵素分子と共に密封した。ポワソン分布統計を適用することにより、用いた各々の濃度について、活性なウェルの予測されるパーセンテージを計算した。
【0198】
結果
図8に示すように、β−ガラクトシダーゼアッセイについて、異なるバルク溶液酵素濃度は、容器容積に対する酵素の異なる比に対応し、酵素分子を含有する容器のパーセンテージの変化をもたらした。図8は、β−ガラクトシダーゼの単一分子の活性の検出を表す。図8aは、アレイの一部のバックグラウンド画像であり、一方、図8bは、酵素対容器が1:5であるアッセイの一部を取得した画像を表し、図8cは、酵素対容器が1:80であるアッセイを示す。
【0199】
表1は、占有された容器のパーセンテージをポワソン分布から計算した、各々の実験の結果の比較である。表中のデータにより示されるように、アレイの測定は、調査された濃度の全範囲にわたる単一の酵素β−ガラクトシダーゼ分子の数と、首尾よく相関した。観察されたシグナルにおいて、分子間での触媒活性の差異の結果として、わずかな差異が存在した。この結果は、表面効果に加えて、酵素活性の変化をもたらす酵素の固有の確率論的な性質に起因するものである可能性が最も高い。
【0200】
【表1】
表1.アレイからのデジタル読み出し。活性を示すチャンバーの、ポワソン分布から計算される予測されるパーセンテージに対する実際のパーセンテージを、分析された多様な濃度について列記した。
【0201】
計算結果と実験結果との間の差異は、確率分布に関連する特有の差異ならびに酵素溶液の調製における実験エラーに起因し得る。
【0202】
実施例3
この例において、モデル酵素−阻害剤ペアとして、β−ガラクトシダーゼを競合的阻害剤であるD−ガラクタル(D-galactal)(D−ガラクトースの遷移状態の類似体)の存在下において研究した。しかし、この適用の範囲は、特定の酵素−阻害剤ペアに限定されない。β−ガラクトシダーゼは四量体であり、D−ガラクタルは比較的遅い結合および放出を示すことが知られる。図9は、単一分子阻害を測定するためならびに阻害剤放出の検出のためのスキームの一態様を示す。第1の工程において、酵素および阻害剤を、リン酸バッファー(この特定の態様においては、PBS/MgCl2バッファー:2.7mM KCl、KH2PO4、1.5mM KH2PO4、136mM NaCl、8.1mM Na2HPO4、1mM MgCl2、pH7.3)などの水性バッファー系において、バルクにおいて、阻害剤濃度([阻害剤])が阻害剤結合のための解離定数(Ki)より高くなり、酵素の活性部位の全てがブロックされるかまたは占有されるように、プレインキュベートする。Kiは異なる酵素/阻害剤ペアにより異なるので、阻害剤の濃度を調製しなければならない。この実験において用いたこの特定の酵素/阻害剤ペアを用いる場合、100mM〜20μMの間の範囲で多様な阻害剤開始濃度を用いることができる。この態様において、[阻害剤]は、100μM(〜7×Ki(14μM))であった。第2の工程において、水性バッファー系(この特定の態様においては:PBS/MgCl2バッファー)中の1または2以上の基質(例えば、レゾルフィン−β−ガラクトピラノシド RGP)を、好ましくは高い過剰濃度(10倍〜100,000倍の間)において、添加する。さらなる成分(この特定の態様においては、位置のアレイの表面への非特異的結合を防止するため、1%(w/v)のウシ血清アルブミン(BSA)を、バッファー系に添加してもよい。第三の工程において、バルク溶液を位置のアレイに添加する。各々の位置は、規定の容積(10アトリットル〜50ピコリットルの間、より好ましくはフェムトリットル、この態様においては:46フェムトリットル)を有する。この時点において、阻害剤はもはや過剰量ではない。実際には、[阻害剤]<<Kiである(100,000分子より少ない阻害剤、および10,000分子より少ない阻害剤、およびさらにより好ましくは3,000分子より少ない阻害剤が、溶液中に残る)。酵素濃度(1.8nMを、工程2における1,000倍希釈により、いくつかの位置において各々のアレイの位置において単一の酵素のみが存在し、他においては酵素が存在しないように調製する。図9は、四量体の活性部位の1つがブロックされておらず活性である場合の状況を、模式的に示す。この活性部位は、レポーター部分を含む基質と相互作用することができる。このドメインは、酵素分解により発光性および蛍光性シグナルを生じるものであり得るが、これらに限定されない。好ましくは、蛍光シグナルが発生し、より好ましくは、RGPが蛍光発生基質として用いられる。この方法において、かかる活性を有するアレイ中の位置を、容易に検出することができる(図10)。
【0203】
一態様において、本発明は、複数のタイムポイント(例えば、秒、数十秒、数百秒、分、数十分などの間隔)での基質の代謝回転を決定することを企図する。図11は、図9および図10のスキームに従ってアッセイした場合、阻害剤の存在が、阻害剤が存在しないコントロール(下段左パネル)と比較して基質の代謝回転を遅延させることを示す。基質の代謝回転開始時間の頻度分布をプロットすれば(図12)、Koff速度定数を計算することができる:4.6×10−3秒。このことは、公開された値とも一致する。
【0204】
興味深いことに、データは、四量体の4つの部位の各々における阻害剤の放出が独立していないことを示唆する。いわば、四量体の4つの独立した触媒部位が存在し、koffが一次速度定数である場合、酵素集合体のkoffは、各々のプロトマーのkoffと同一である。しかし、各々の単一の酵素が4つのプロトマーを含むので、第1の阻害剤を放出する4つの候補が存在する。したがって、koff1=4×koff(=1.8×10−2sec−1)となる。このデータは、プロトマーからの阻害剤の放出が非独立的であることを示唆する。
【0205】
プレインキュベーションなしの第2の態様において、阻害剤を、リン酸バッファーなどの水性バッファー系(この特定の態様においては、PBS/MgCl2バッファー)中で、酵素に与える。さらなる成分(この特定の態様においては、位置のアレイの表面への非特異的結合を防止するために、1%(w/v)(BSA))をバッファー系に添加してもよい。[阻害剤]を、Ki(14μM)と同じ範囲において、好ましくは、100mM〜1μMの間で選択し、この態様においては20μMである。この阻害剤濃度において、阻害剤に結合した酵素は、阻害剤フリーの酵素と平衡状態にある。各々のが規定の容積(10アトリットル〜50ピコリットルの間、より好ましくはフェムトリットル、この態様においては46フェムトリットル)を有する位置のアレイにバルク溶液を添加する。酵素濃度(18pM)を、一部の位置において単一の酵素のみを得、他の位置においては酵素を得ないように、選択する。蛍光を経時的にモニタリングすると、結合、放出およびその後の結合を観察することができる(図13)。図13A(左パネル)は、多様な時間トレースからの粗データを表す。図13B(右パネル)は、左パネルの時間トレースの1つを示し、ここで、明確にするために、y軸は別に目盛り付けされている。図13Bは、阻害剤が酵素から放出された後でシグナルが増大すること、およびそれが阻害剤が結合した後で減少することを示す。阻害剤が酵素に結合して酵素活性が存在しない場合、蛍光シグナルが経時的に一定であり続けると予測すべきである。しかしながら、フルオロフォアを連続的に枯渇させる実質的な量の光脱色が存在するので、これは当てはまらない。このことから、図13に示す正味の結果(経時的)による動態が生じる。
【0206】
図14は、オフタイム(off-time)(阻害剤が放出される前に酵素上に留まる時間)の棒グラフを示す。このことから、半減期(指数関数的崩壊に従う量の半減期が、量がその初期値の半分まで崩壊するために必要とされる時間である)の計算が可能となる。半減期は、実験的に、およそ2分30秒であると決定する。この例は、単一の酵素を測定するシステムが、酵素のサブユニットがどのように相互作用するかについて、以前にアンサンブル反応から得られたものよりも動態的なデータを明らかとし得ることを示す。
【0207】
実施例4
一態様において、ナノ粒子は、標的の濃度のデジタル読み出しのために利用する。ナノ粒子は、酵素のデジタル読み出しに対して、いくつかの利点を有する。酵素のアプローチを用いる場合、濃度が増加するにつれて、ポワソン分布に従うデジタル読み出しの直線性が失われる。蛍光種により官能化されたナノ粒子を用いて、本発明は、一態様において、デジタル読み出し、ならびに本発明者らの研究室において広範に用いられる古典的なバルク光度読み出しを行うことができることを企図する。デジタル読み出しの直線性が失われるにつれて、分析を、デジタル読み出しからナノ粒子を用いる古典的な光度読み出しへとシフトすることができる。次いで、シグナルを、濃度と相関する、アレイの各々の位置の平均光度(例えば、平均ウェル光度)として読むことができ、このシステムにより読むことができる濃度の範囲を著しく増大する。ナノ粒子を用いる一部の態様において、アレイを密封しない。
【0208】
金粒子(例えば、1〜500ナノメートル、およびより好ましくは50〜250ナノメートル、およびさらにより好ましくは、80〜150ナノメートルの間の金粒子)などのナノ粒子を、標的分析物または標的分析物に結合するリガンドに付着させてもよい。標的が金粒子に付着して結合パートナー(例えば固定されたリガンド)を含むアレイに導入される態様を含む多様な態様が企図されるが、これらに限定されない。別の態様において、標的分析物を、アレイ上に付着させても、他の方法で固定してもよく、金粒子−結合パートナー複合体をアレイに導入して標的分析物と結合させてもよい。別の態様において、第1の結合リガンドを標的に固定し、金粒子−第2の結合リガンドをアレイ中に導入して標的に結合させてもよい。これらの態様を、図15および16において模式的に説明し、ここで、標的は核酸であり、結合パートナーは相補的プローブである。図15において、所望の場合、プローブ#1またはプローブ#2のいずれかを標的により置換することができる。図16は、標的が標識されていなくともよく、第1にプローブ#1とともにインキュベートし、その後、ナノ粒子をプローブ#2とともに導入する、2段階サンドウィッチ形式を示す。この態様において、標的はリンカーとして作用するものとみなすことができる。
【0209】
この例において、標的分析物は核酸であり、金粒子は複数(およそ2000〜8000の鎖)の蛍光DNAで標識される。このDNA−金粒子複合体を用いて、シグナルを発生させる。多数の蛍光DNA鎖が各々の名の粒子に付着するので、単一の粒子が、アレイ(例えば上記の光ファイバーアレイ)単一の位置(例えばマイクロウェル)におけるバックグラウンドに対してのシグナルのスパイクに十分である。ナノ粒子の複数の集団にわたる蛍光強度の偏差は、触媒速度の変動が高い酵素と比較して非常に小さい。この高い変動速度に起因して、応(yes)または否(no)の応答しか読み取ることができず、酵素についての検出の範囲をおよそ2桁の規模に限定している。同等のシグナル強度を有するナノ粒子を用いることにより、酵素により行われるような0または1のものに、2、3、4などの読み出しを伴う、より制御された読み出しが可能となる。控えめな光度レベルを読み出す能力により、2桁を超える、より優れた検出の範囲が可能となる。分析物−官能化金ナノ粒子(例えばDNA−金粒子複合体または他の生体分子−金粒子複合体)は、分析物(例えばDNA)検出スキームにおいて、常に極めて低いレベルの非特異的および公差反応性結合を示すので、検出の限界を改善する。
【0210】
A.金粒子の調製
金粒子は、多数の方法により調製することができる(Analytical Chemistry, 2000, 72, 5535-5541; Science, 2002, 296, 1836-1838; Science, 2002 295, 1503-1506; J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 5932-5933)。ある場合において、金コロイド(直径13nm)を、Frens, Nature Phys. Sci., 241, 20(1973)およびGrabar, Anal Chem., 67, 735(1995)に記載されるように、HAuCl4のクエン酸による還元により調製する。簡単に述べると、全てのガラス器具を使用する前に王水(3部のHCl、1部のHNO3)中で洗浄し、NanopureH2Oでリンスし、次いでオーブンで乾燥する。HAuCl4およびクエン酸ナトリウムは、Aldrich Chemical Companyから購入する。水性のHAuCl4(1mM、500mL)を、攪拌しながら還流させる。次いで、38.8mMのクエン酸ナトリウム(50mL)を素早く添加する。溶液の色は、淡黄色から赤紫色(burgundy)に変化し、還流を15分間続けるべきである。室温に冷却した後で、赤色の溶液を、Micron Separations Inc.の1マイクロンのフィルターを通してろ過してもよい。金コロイドは、Hewlett Packard 8452Aダイオードアレイ分光光度計を用いるUV/可視光分光法により、およびHitachi 8100透過型電子顕微鏡を用いる透過型電子顕微鏡法(TEM)により、容易に特徴付けられる。直径13nmの金粒子は、標的およびプローブの10〜35ヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチド配列とともに凝集した場合、目に見える色の変化を生じる。
【0211】
B.ファイバーの修飾
この例において、ファイバーアレイを用いる。研磨されたファイバーアレイを、115秒間0.025MのHClでエッチングし、46fLのウェルを得る。洗浄のために、エッチングされたファイバーを、沸騰するNanopure水で10分間インキュベートする。
【0212】
エッチングされたファイバーの表面を、多数の方法において修飾することができる。この例において、ファイバーのアミン修飾を使用する。第1に、シラン化溶液、すなわち、エタノール:nanopure水の95:5の溶液中、1%のDETA(トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン)の溶液を調製する。エッチングされたファイバーを、シラン化溶液中で20分間室温でインキュベートした。次いで、ファイバーを15分間120℃でキュアさせた。この時点において、ファイバーは、いまやアミン基によって修飾されている。
【0213】
多様な官能基をアミン基と反応させることができる。この例において、プロセスは、ファイバーのマレイミド修飾に関する。3.55mgのSMPB(サクシニミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート)を1mLのDMSO中に溶解させ、ストック溶液を作製した。架橋溶液を調製した:100μLのこのストック溶液を900μLのエタノール:DMSOの90:10溶液に添加した。シラン化ファイバーを架橋溶液中で2時間室温でインキュベートする。次いで、アレイを、エタノール:DMSOの80:20溶液で洗浄し、アルゴン下で乾燥させる。この時点において、ファイバーはいまやマレイミド基により修飾されている。
【0214】
C.DNA脱保護
2ナノモルのチオール修飾(保護)DNAを、110μLのPBS pH7.4中で再構成する。10μLのDTT(ジチオスレイトール)ストック(1.0M)を保護されたDNA溶液に添加し、2時間室温でインキュベートする。NAP-5カラム(GE Healthcare)を用いて脱保護したDNAを精製した。カラムをNanopure水で平衡化した。
【0215】
脱保護されたチオールDNAの120μLの溶液をカラムに添加し、ゲルに完全に浸入させた。380μLのPBS7.4水をカラムに添加し、ゲルに完全に浸入させた。回収チューブをカラムの下に置き、1.0mLのPBS7.4水をカラムに添加することにより、チオールDNAを溶出させた。NAP-5カラムのプロトコル(製造者により提供される)に記載されるように、最初の400μLを捨て、400μL〜1mLのDNAを回収した。
【0216】
D.DNA付着
標的分析物(この場合は核酸)に対して特異的なリガンド(この場合はプローブ)を、アレイの位置に直接付着させても、またはナノ粒子(例えば金粒子)に付着させ、次いで複合体(DNA−金ナノ粒子)をアレイに導入してもよい。この例において、マレイミド処理されたファイバーを、チオール脱保護されたDNA溶液(1μM)中で2時間室温でインキュベートした。ファイバーを、PBS7.4でリンスし、結合していないDNAを除去し、アレイをスワブして、被覆材に結合したDNAプローブを除去した。金ナノ粒子(この場合80nm)を、次いで、ファイバーと共にインキュベートし、予備的な実験により、成功的な結合を示す(図16)。
【0217】
実施例5
この例は、合成一本鎖DNAの半導体ナノ粒子量子ドット(QD)上への固定化を記載する。ネイティブなCdSe/ZnSのコア/シェルQD(−4nm)は、有機溶媒中でのみ可溶性であり、アルキルチオ末端を有する一本鎖DNAとの直接的反応は困難である。この問題は、Mirkinらにより、QDを3−メルカプトプロピオン酸でまずキャッピングすることにより回避される。次いで、4−(ジメチルアミノ)ピリジンでカルボン酸基を脱保護し、粒子を水溶性にし、QDと3’−プロピルチオールまたは5’−ヘキシルチオール修飾オリゴヌクレオチド配列のいずれかとの反応を促進する。DNA修飾の後で、透析により未反応のDNAから粒子を分離する。次いで、「リンカー」DNA鎖を、表面結合の配列にハイブリダイズし、拡大したナノ粒子の集合体を生成する。QD集合体は、TEM、UV/可視光分光法および蛍光分光法により容易に特徴付けられる。繰り返し、溶液の温度を制御することにより、これらを可逆的に集合させることができる。結果として、QD集合体および合成物集合体を、QDとナノ粒子との間で形成することができる(例えば、およそ13nmの金ナノ粒子)。
【0218】
文献目録
以下の引用文献の各々は、その全体が参考として援用される。
【表2】
【0219】
【表3】
【0220】
図1a、1bおよび1cは、本発明の一態様によるエッチングされた束の修飾を表す、横から見た断面模式図である。
図2a、2bおよび2cは、本発明の一態様によるサンドウィッチアッセイを表す、横から見た断面模式図である。
【0221】
図3aおよび3bは、本発明の一態様による(a)未研磨のビオチン修飾光ファイバーアレイおよび(b)研磨されたビオチン修飾光ファイバーアレイに結合するストレプトアビジンAlexa Fluor 568(登録商標)を示す写真である。
【0222】
図4a、4b、4c、4d、4eおよび4fは、本発明の一態様による実験を示す写真であり、ここで、β−ガラクトシダーゼは、RDGにハイブリダイズし、レゾルフィンを形成する。より具体的には、これらの図の各々は、異なる濃度のSβGを有する異なるサンプルを表す。濃度は、(a)128amol、(b)51amol、(c)25amol、(d)7.5amol、および(e)2.6amolであり、(f)はコントロールであった。
【0223】
図5は、本発明の一態様による、活性な反応容器のパーセンテージを生じる、サンプル中に存在する標的の分子のlog対logのプロットを表す。
【0224】
図6aは、本発明の一態様による、ファイバーアレイ全体の顕微鏡写真と、束の挿入拡大図である。
【0225】
図6bは、本発明の一態様による、エッチングされた表面の一部のAFM画像である。
【0226】
図7a、7bおよび7cは、本発明の一態様による、反応容器の封入(enclosure)および封(seal)の評価を示す。図7aは、チャンバーのアレイ中に封入されたRu(bpy)3Cl2の溶液の顕微鏡写真である。図7bは、UV光により光脱色された束の小八角形の部分の顕微鏡写真である。図7cは、60分後に撮影された図7bの顕微鏡写真である。
【0227】
図8a、8bおよび8cは、本発明の多様な態様による、β−ガラクトシダーゼの単一の分子の活性の検出を表す顕微鏡写真である。図8aは、アレイの一部のバックグラウンド画像である。図8bは、酵素対容器が1:5であるアッセイの一部を撮影した画像の顕微鏡写真である。図8cは、酵素対容器が1:80であるアッセイの顕微鏡写真である。
【0228】
図9は、単一の酵素レベルでの酵素の速度定数を測定するための一態様の模式図である。
【0229】
図10は、シグナルが阻害剤の放出に起因して検出されるアレイの代表的な画像である。
【0230】
図11a、11bおよび11cは、阻害剤の存在下または阻害剤の不在下(11c)における基質の代謝回転を示す、時間によるトレースである。
【0231】
図12は、特定の酵素/阻害剤のペアについてのKoffの決定を可能にする測定のプロットを示す。
【0232】
図13aおよび13bは、阻害剤放出によるシグナルの増大を示すようにプロットされた複数の時間トレース(13a)および単一の時間トレース(13b)を示す。
【0233】
図14は、特定の酵素/阻害剤のペアについての半減期の値の計算を可能にするオフタイム(off-times)の棒グラフである。
【0234】
図15は、ナノ粒子が検出を増強するために使用される一態様を模式的に示す。
【0235】
図16は、ナノ粒子が検出を増強するために使用される代替的な態様を模式的に示す。
【0236】
図17は、アレイの位置における金ナノ粒子の検出を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の分子のアレイを製造する方法であって:
a)標的分析物の分子をある濃度で含むサンプルと、各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;および
b)単一の分子を含有する位置を含むアレイを製造するために、前記標的分析物の分子の前記アレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように、前記アレイと前記サンプルとを接触させること
を含む、前記方法。
【請求項2】
標的分析物が生体分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生体分子が、タンパク質、核酸、脂質および炭水化物からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
生体分子が、ホルモン、サイトカインおよび細胞抗原からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
生体分子が受容体である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
受容体が、神経受容体、ホルモン受容体および栄養因子受容体からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
生体分子が標識される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
標的分析物が環境汚染物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
標的分析物が、農薬、殺虫剤およびトキシンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
標的分析物が薬物である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
比が1:5より小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
比が1:10である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
比が1:5〜1:500の間である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
単一の分子を含有する位置のパーセンテージがサンプル中の分子の濃度の指標を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1の方法によって製造されたアレイ。
【請求項16】
工程b)の後に、各々の位置の内容物が該位置から漏出し得ないように、アレイを密封することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって製造されたアレイ。
【請求項18】
規定された容積が、フェムトリットルにおいて測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法によって製造されたアレイ。
【請求項20】
規定された容積が、各々の位置で同一であって、約30フェムトリットル〜約60フェムトリットルの範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
規定されたフェムトリットルの容積が46フェムトリットルである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
アレイが、20,000〜30,000個の位置を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
アレイが、100,000〜10,000,000個の位置を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
アレイの各々の位置が捕獲成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
標的分析物が一本鎖核酸を含み、捕獲成分が相補的な核酸を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
サンプル中の標的分析物を検出する方法であって:
a)生体分子標的分析物を含むサンプルと、各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;
b)前記生体分子標的分析物の前記アレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように前記アレイと前記サンプルとを接触させること;および
c)単一の生体分子を含有する前記アレイの位置の数を決定すること
を含む、前記方法。
【請求項27】
比が1:5より小さい、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
比が1:10である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
比が1:5〜1:500の間である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
生体分子が標識される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
決定することが、位置における光学特性の変化を標的分析物の存在の指標として検出することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
単一の生体分子を含有する位置のパーセンテージがサンプル中の生体分子の濃度の指標を提供する、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
工程b)の後に、各々の位置の内容物が該位置から漏出し得ないように、アレイを密封することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
規定された容積が、フェムトリットルにおいて測定される、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
規定された容積が、各々の位置で同一であって、約30フェムトリットル〜約60フェムトリットルの範囲である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
規定されたフェムトリットルの容積が46フェムトリットルである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
アレイが、20,000〜30,000個の位置を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
アレイが、100,000〜10,000,000個の位置を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
アレイの各々の位置が捕獲成分を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項40】
標的分析物が一本鎖核酸を含み、捕獲成分が相補的な核酸を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
生体分子が、タンパク質、核酸、脂質および炭水化物からなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項42】
生体分子が、ホルモン、サイトカインおよび細胞抗原からなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項43】
生体分子が受容体である、請求項26に記載の方法。
【請求項44】
受容体が、神経受容体、ホルモン受容体および栄養因子受容体からなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
サンプル中の標的分析物を検出する方法であって:
a)生体分子標的分析物を第1の濃度で含むサンプルと、各々の位置が規定されたフェムトリットルの容積を有する少なくとも10,000個の位置を含むアレイとを提供すること;
b)前記サンプルを希釈して、生体分子標的分析物を第2の濃度で含む希釈サンプルを作製すること;
c)前記生体分子分析物の前記アレイの各々の位置に対する比が1:5〜1:500の間であるように、前記アレイと前記希釈サンプルとを接触させること;および
d)単一の生体分子を含有する前記アレイの位置の数を決定すること
を含む、前記方法。
【請求項46】
生体分子が標識される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
決定することが、位置における光学特性の変化を標的分析物の存在の指標として検出することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
単一の生体分子を含有する位置のパーセンテージが希釈サンプル中の生体分子の濃度の指標を提供する、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
工程c)の後に、各々の位置の内容物が該位置から漏出し得ないように、アレイを密封することをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
規定された容積が、フェムトリットルにおいて測定される、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
規定された容積が、各々の位置で同一であって、約30フェムトリットル〜約60フェムトリットルの範囲である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
規定されたフェムトリットルの容積が46フェムトリットルである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
比が1:10である、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
アレイが、20,000〜30,000個の位置を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
アレイが、100,000〜10,000,000個の位置を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項56】
アレイの各々の位置が、捕獲成分を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
標的分析物が一本鎖核酸を含み、捕獲成分が相補的な核酸を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
生体分子が、タンパク質、核酸、脂質および炭水化物からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項59】
生体分子が、ホルモン、サイトカインおよび細胞抗原からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項60】
生体分子が受容体である、請求項45に記載の方法。
【請求項61】
受容体が、神経受容体、ホルモン受容体および栄養因子受容体からなる群より選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項1】
単一の分子のアレイを製造する方法であって:
a)標的分析物の分子をある濃度で含むサンプルと、各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;および
b)単一の分子を含有する位置を含むアレイを製造するために、前記標的分析物の分子の前記アレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように、前記アレイと前記サンプルとを接触させること
を含む、前記方法。
【請求項2】
標的分析物が生体分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
生体分子が、タンパク質、核酸、脂質および炭水化物からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
生体分子が、ホルモン、サイトカインおよび細胞抗原からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
生体分子が受容体である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
受容体が、神経受容体、ホルモン受容体および栄養因子受容体からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
生体分子が標識される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
標的分析物が環境汚染物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
標的分析物が、農薬、殺虫剤およびトキシンからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
標的分析物が薬物である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
比が1:5より小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
比が1:10である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
比が1:5〜1:500の間である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
単一の分子を含有する位置のパーセンテージがサンプル中の分子の濃度の指標を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1の方法によって製造されたアレイ。
【請求項16】
工程b)の後に、各々の位置の内容物が該位置から漏出し得ないように、アレイを密封することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって製造されたアレイ。
【請求項18】
規定された容積が、フェムトリットルにおいて測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法によって製造されたアレイ。
【請求項20】
規定された容積が、各々の位置で同一であって、約30フェムトリットル〜約60フェムトリットルの範囲である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
規定されたフェムトリットルの容積が46フェムトリットルである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
アレイが、20,000〜30,000個の位置を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
アレイが、100,000〜10,000,000個の位置を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
アレイの各々の位置が捕獲成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
標的分析物が一本鎖核酸を含み、捕獲成分が相補的な核酸を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
サンプル中の標的分析物を検出する方法であって:
a)生体分子標的分析物を含むサンプルと、各々の位置が10アトリットル〜50ピコリットルの間で規定された容積を有する少なくとも1000個の位置を含むアレイとを提供すること;
b)前記生体分子標的分析物の前記アレイの各々の位置に対する比が1:1より小さくなるように前記アレイと前記サンプルとを接触させること;および
c)単一の生体分子を含有する前記アレイの位置の数を決定すること
を含む、前記方法。
【請求項27】
比が1:5より小さい、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
比が1:10である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
比が1:5〜1:500の間である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
生体分子が標識される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
決定することが、位置における光学特性の変化を標的分析物の存在の指標として検出することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項32】
単一の生体分子を含有する位置のパーセンテージがサンプル中の生体分子の濃度の指標を提供する、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
工程b)の後に、各々の位置の内容物が該位置から漏出し得ないように、アレイを密封することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
規定された容積が、フェムトリットルにおいて測定される、請求項26に記載の方法。
【請求項35】
規定された容積が、各々の位置で同一であって、約30フェムトリットル〜約60フェムトリットルの範囲である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
規定されたフェムトリットルの容積が46フェムトリットルである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
アレイが、20,000〜30,000個の位置を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
アレイが、100,000〜10,000,000個の位置を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
アレイの各々の位置が捕獲成分を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項40】
標的分析物が一本鎖核酸を含み、捕獲成分が相補的な核酸を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
生体分子が、タンパク質、核酸、脂質および炭水化物からなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項42】
生体分子が、ホルモン、サイトカインおよび細胞抗原からなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項43】
生体分子が受容体である、請求項26に記載の方法。
【請求項44】
受容体が、神経受容体、ホルモン受容体および栄養因子受容体からなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
サンプル中の標的分析物を検出する方法であって:
a)生体分子標的分析物を第1の濃度で含むサンプルと、各々の位置が規定されたフェムトリットルの容積を有する少なくとも10,000個の位置を含むアレイとを提供すること;
b)前記サンプルを希釈して、生体分子標的分析物を第2の濃度で含む希釈サンプルを作製すること;
c)前記生体分子分析物の前記アレイの各々の位置に対する比が1:5〜1:500の間であるように、前記アレイと前記希釈サンプルとを接触させること;および
d)単一の生体分子を含有する前記アレイの位置の数を決定すること
を含む、前記方法。
【請求項46】
生体分子が標識される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
決定することが、位置における光学特性の変化を標的分析物の存在の指標として検出することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
単一の生体分子を含有する位置のパーセンテージが希釈サンプル中の生体分子の濃度の指標を提供する、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
工程c)の後に、各々の位置の内容物が該位置から漏出し得ないように、アレイを密封することをさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
規定された容積が、フェムトリットルにおいて測定される、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
規定された容積が、各々の位置で同一であって、約30フェムトリットル〜約60フェムトリットルの範囲である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
規定されたフェムトリットルの容積が46フェムトリットルである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
比が1:10である、請求項45に記載の方法。
【請求項54】
アレイが、20,000〜30,000個の位置を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項55】
アレイが、100,000〜10,000,000個の位置を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項56】
アレイの各々の位置が、捕獲成分を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
標的分析物が一本鎖核酸を含み、捕獲成分が相補的な核酸を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
生体分子が、タンパク質、核酸、脂質および炭水化物からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項59】
生体分子が、ホルモン、サイトカインおよび細胞抗原からなる群より選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項60】
生体分子が受容体である、請求項45に記載の方法。
【請求項61】
受容体が、神経受容体、ホルモン受容体および栄養因子受容体からなる群より選択される、請求項60に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−137830(P2011−137830A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34007(P2011−34007)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【分割の表示】特願2008−556383(P2008−556383)の分割
【原出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(399127843)トラスティーズ・オブ・タフツ・カレッジ (12)
【氏名又は名称原語表記】TRUSTEES OF TUFTS COLLEGE
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【分割の表示】特願2008−556383(P2008−556383)の分割
【原出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(399127843)トラスティーズ・オブ・タフツ・カレッジ (12)
【氏名又は名称原語表記】TRUSTEES OF TUFTS COLLEGE
【Fターム(参考)】
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