説明

標的物質検出用プローブ及び該プローブを用いた標的物質検出装置、並びに標的物質検出方法

【課題】 物質間の相互作用を利用した簡便かつ容易な標的物質検出方法を提供すること。
【解決手段】 本開示は、標的物質を採取する採取場と、該標的物質をトラップするトラップ用物質を固定化し、物質間の相互作用を行う反応場と、を備える感応毛細管内で、採取した標的物質に対して固定化トラップ用物質にて物質間の相互作用を行い、発せられた光又は放射性情報を検出する標的物質検出方法を提供する。また、標的物質を毛細管にて採取し得る採取部と、該標的物質と結合するトラップ用物質を固定化し、物質間の相互作用を行う感応部と、を設ける感応毛細管部を備える、標的物質検出用プローブを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、標的物質検出用プローブ及び該プローブを用いた標的物質検出装置、並びに標的物質検出方法に関する。
より詳しくは、本開示は、種々の標的物質を検出するための用具として用いるものであり、物質間の相互作用を利用して標的物質を検出可能とする標的物質検出用プローブに関する。また、本開示は、前記標的物質検出用プローブを用いた標的物質検出装置に関する。また、本開示は、毛細管内で物質間の相互作用を行う標的物質検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、核酸分子のハイブリダイゼーション、タンパク質間の相互作用、抗原抗体反応等の物質間の化学結合又は解離という物質間の相互作用を利用した検出方法が知られている。
例えば、電気泳動や誘電泳動などの電気的力学的効果を利用する技術の一例として、ハイブリダイゼーションにより得られた二本鎖DNAを検出する技術が開示されている(例えば特許文献1)。
また、例えば、抗原−抗体による特異的反応を利用して、特定の抗原又は抗体よりなる被検出物質を検出する免疫測定法方が広く用いられている。この種の免疫測定法の機構として、競合型反応及びサンドイッチ型反応が広く用いられている。これを利用した、ELISA(Enzyme-Linked Immuno-Sorbent Assay)法やイムノクロマトグラフ法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献2には、以下の迅速かつ簡便に判定することができる免疫学的簡易測定方法及び該測定方法に使用する測定用具が提案されている。
ロッド状の合成樹脂製の芯部分の外周面に多数の溝を内側の長手方向に沿って形成した透明の合成樹脂の筒状からなる透明なカバー部材を装着した測定用具を使用する。芯部材の外周面とカバー部材の内側の溝を利用して毛細管作用で検体液を吸い上げ、検体液をまず芯部材に形成した標識抗原又は標識抗体ゾーンと接触させて抗原抗体反応をさせる。その反応をさせた後に、特定の抗原又は抗体からなる検出ゾーンに接触させ、検出ゾーンにおいて標識抗原又は標識抗体に付着させた標識物が顕出するか否かによって検体液中に目的とする抗原又は抗体が存在するか否かを目視にて確認する。
【0004】
ところで、標的物質、特に生体内物質の検出には、通常、血液を採取して、血液中の生体内物質を光学的又は電気的に調べることが一般的に行われている。しかしながら、血液採取は、侵襲的な方法であり、採取者に医療的な資格なども必要であり、また、高コストである。更に、実際の検出・測定では、血液の精製が必要であり、検出・測定結果を得るのに、手間と時間を要するという問題もある。加えて、連続的な測定を行うためには、サンプリングの回数を増やす必要があり、被験者への負担も大きい。そのため、リアルタイムな測定が不可能であるという問題もある。そこで、近年、生体への侵襲性を低減させるための様々な方法が開発されつつある。
【0005】
例えば、非侵襲的な検出方法として、特許文献3には、胃がんや大腸がん等の消化器系における異常を簡単に検出する方法が提案されている。この方法は、糞便の採取器と、予め糞便中の消化酵素の活性を阻止するように調整した緩衝液を入れた液容器とからなる採取容器を使用する。そして、採取器の表面に糞便中のヘモグロビンを物理的に吸着させて分離する。さらに、該ヘモグロビンを、抗ヒト酵素標識ヘモグロビンを用いて特異的に検出・測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−242135号公報
【特許文献2】特開平10−73593号公報
【特許文献3】特開昭59−182367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さらに、簡便かつ容易に物質間の相互作用を利用して標的物質を検出できる方法が求められている。
本開示では、物質間の相互作用を利用して標的物質の検出を簡便かつ容易に行うことができる標的物質検出用プローブを提供することを主な目的とする。さらに、本開示では、前記標的物質検出用プローブを用いた標的物質検出装置、また物質間の相互作用を利用した簡便かつ容易な標的物質検出方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題解決のため、本開示は、標的物質を採取する採取場と、該標的物質をトラップするトラップ用物質を固定化し、物質間の相互作用の反応を行う反応場と、を備える感応毛細管内で、採取した標的物質に対して固定化トラップ用物質にて物質間の相互作用を行い、発せられた光又は放射性情報を検出する標的物質検出方法を提供する。
【0009】
(A)前記毛細管内に、標的物質を含む検体液を吸収させて、該標的物質に対して前記固定化トラップ用物質にて物質間の相互作用を行い、その後毛細管内を洗浄することと、(B)前記毛細管内に、光標識又は放射性標識をした検出用物質を含む溶液を吸収させて、該標識した検出用物質を前記標的物質と物質間の相互作用をさせることと、(C)前記結合した標識化検出用物質にて発せられた光情報又は放射性情報を検出すること、を含む前記標的物質検出方法が好適である。
【0010】
さらに、(a)前記固定化トラップ用物質にて物質間の相互作用の反応を行った後に、前記毛細管内に、酵素で標識化した検出用物質を含む溶液を吸収させ、毛細管内を洗浄することと、(b)前記毛細管内に、前記酵素の基質を含む溶液を吸収させることと、(c)前記酵素基質が変化して生じる光情報を検出することと、を含む前記標的物質検出方法が好適である。
【0011】
前記固定化トラップ用物質は、毛細管内にトラップ用物質を含む溶液を吸収させて、標的物質をトラップするトラップ用物質を固定化したものであるのが好適である。
前記酵素基質が色素前駆体であるのが好適である。
前記固定化トラップ用物質及び/又は前記標識化検出用物質が、ビオチン−アビジン架橋又はビオチン−ストレプトアビジン架橋にて得られたものであるのが好適である。
前記標的物質を含む検体液が、体液又は血液であるのが好適である。
【0012】
本開示は、標的物質を毛細管にて採取し得る採取部と、該標的物質と結合するトラップ用物質を固定化し、物質間の相互作用を行う感応部と、を設ける感応毛細管部を備える、標的物質検出用プローブを提供する。
前記固定化トラップ用物質は、毛細管内にトラップ用物質を含む溶液を吸収させて、標的物質をトラップするトラップ用物質を固定化したものが好適である。
前記標識した検出用物質が、酵素で標識化した検出用物質であるのが好適である。
前記酵素基質が色素前駆体であるのが好適である。
前記固定化トラップ用物質及び/又は前記標識化検出用物質が、ビオチン−アビジン架橋又はビオチン−ストレプトアビジン架橋にて得られたものであるのが好適である。
【0013】
本開示は、着脱可能な前記標的物質検出用プローブとを少なくとも備える、標的物質検出装置を提供する。
また、本開示は、(1)標的物質を毛細管にて採取し得る採取部と、該標的物質をトラップするトラップ用物質を固定化し、物質間の相互作用を行う感応部とを設ける感応毛細管部を備える、着脱可能な標的物質検出用プローブと、(2)前記標的物質検出用プローブの前記感応部に対して、光を照射する光照射部と、(3)前記光照射部による光照射によって、前記感応部中からの光情報を検出する光検出部と、を少なくとも備える、標的物質検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、簡便かつ容易に標的物質を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1の第1実施形態を模式的に示す模式概念図である。
【図2】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1の第2実施形態を模式的に示す模式概念図である。
【図3】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1の第3実施形態を模式的に示す模式概念図である。
【図4】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1の感応毛細管部11の断面形状を模式的に例示す模式概念図である。
【図5】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1の第4実施形態及び標的物質検出装置10の第1実施形態を模式的に示す模式概念図である。
【図6】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1の第5実施形態及び標的物質検出装置10の第2実施形態を模式的に示す模式概念図である。
【図7】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1の第6実施形態及び標的物質検出装置10の第3実施形態を模式的に示す模式概念図である。
【図8】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1の感応毛細管部11の作製方法及び標的物質の検出方法を模式的に示す模式概念図である。
【図9】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1の感応毛細管部11の作製方法及び標的物質の検出方法を模式的に示す模式概念図である。
【図10】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1の感応毛細管部11の作製方法及び標的物質の検出方法を模式的に示す模式概念図である。
【図11】体液(歯肉溝滲出液)のサンプリングの例を示す図である。
【図12】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1の感応毛細管部11の先端であり、微少量の歯肉溝滲出液に対応可能な形状である。
【図13】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1を使用し、ELISA法にてTNF−αを測定した際の結果である。
【図14】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1を使用し、フロー方式でのキャピラリーELISAの結果を示す図である。
【図15】本開示に係わる標的物質検出用プローブ1を備える標的物質検出装置10を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序により行う。
1.標的物質検出用プローブ
(1)感応毛細管部
(2)採取部(採取場)
(3)感応部(反応場)
2.標的物質検出装置
3.標的物質検出方法
【0017】
<1.標的物質検出用プローブ>
図1〜3及び5〜7には、本開示に係わる標的物質検出用プローブ1の第1実施形態〜第6実施形態を模式的に示す模式概念図が示されている。図4には、本開示に係わる標的物質検出用プローブ1の断面形状の模式的に例示す模式概念図が示されている。
【0018】
本開示に係わる標的物質検出用プローブ1は、標的物質Xを採取し、検出するための用具であり、測定装置等に着脱可能なものが好ましく、ディスポーザブルとして利用できるものが望ましい。これにより、検出精度を向上させることができ、また感染症予防的に好ましい。
前記標的物質検出用プローブ1は、標的物質Xを採取する採取部13と、該標的物質Xと物質間の相互作用(反応)をさせる感応部12とから構成されている感応毛細管部11を少なくとも備えるものである。
また、標的物質検出用プローブ1には、必要に応じて、感応毛細管部11を固定するためや支持するために支持部を設けてもよい。また、標的物質検出用プローブ1を用いて各種測定を行う際に、光測定システム16、放射性測定システム(図示せず)、差圧機構18等の装置に接続するための支持部を設けてもよい。
このような支持部としては、光測定を行う場合、例えば、図5〜7に示すような、支持部14や光測定用ホルダー15等を挙げることができる。
標的物質検出用プローブ1の支持するための支持部14及び支持部15は、光導波路17(光ファイバー)と接続してもよく、必要に応じてフェルール(光コネクタ部材)F(F1,F2)及びスリーブS等から構成されていてもよい。
【0019】
本開示の標的物質検出用プローブ1は、毛細管を使用する用具であることから、標的物質を含む検体液を採取し易く、採取量が少なくとも測定可能である。このため、本開示の物質検出用プローブ1を用いれば、低侵襲的に又は非侵襲的に標的物質を測定することが可能である。また、本開示の標的物質検出用プローブ1は、採取場と反応場とが一体となっているため、検体を採取後速やかに測定可能であるので、検体の変質を低減することも可能であり、精度よく検出することも可能である。
【0020】
ここで、本開示でいう「標的物質」は、特に限定されず、物質間の相互作用を起こすことが可能な物質であればよい。例えば、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、核酸分子、ホルモン等;その前駆物質:その分解物質などが挙げられる。さらに、生体の内外組織(例えば、皮膚組織上や組織内部等)から採取できるものが望ましい。
前記標的物質として、生体内生成物が好ましく、このうち炎症メディエーターが好ましい。炎症メディエーターとは、損傷された組織及び炎症部位に浸潤した白血球や肥満細胞、マクロファージ等から放出される生理活性物質である。
例えば、ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミン等の発痛物質;プロスタグランジン、ロイコトリエン等のブロスタノイド;インターロイキン1、インターロイキン6、TNF−α、血小板活性化因子、リソソーム酵素等のサイトカイン;活性酸素及びNO等のフリーラジカル(物質)等が挙げられる。
【0021】
また、歯周炎のような歯肉での炎症疾患を含め、病態として炎症を示す組織では、炎症性メディエーターと呼ばれる生理活性物質が放出されることが知られており、その病態の指標となる。そのため、炎症性メディエーターの検出検査は病態の診断に用いられる。
典型的な炎症性メディエーターとしては、細胞間の相互作用に関わる糖タンパク質であるサイトカインが知られる。
炎症に関わるサイトカイン(炎症性サイトカイン)は、インターロイキン(IL)や腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor、TNF)等を含む。例えば、参考文献1:柳田と村上、和泉ら編「ザ・ペリオドントロジー」第5章(2009、永末書店)参照。
サイトカインに特異的に結合する抗体を用いれば、抗体抗原反応で検出することができる。検出されるサイトカインは炎症の原因によって差違があることが知られており、サイトカインの種類を特定することにより、原因の診断も可能となる。
また、炎症性サイトカインである「TNF−α」は、細菌菌体成分の刺激により、単球やマクロファージから産生され、血管内皮細胞の活性化や血管透過性を促進する作用を持ち、インスリン抵抗性を高める作用もある。このことより、歯周病だけでなく糖尿病との関連からも注目される物質である。
【0022】
ここで、本開示において、「物質間の相互作用」とは、物質間の非共有結合、共有結合、水素結合を含む化学結合又は解離を広く意味し、例えば、核酸分子のハイブリダイゼーション、タンパク質間の相互作用、抗原抗体反応等の物質間の化学結合又は解離を広く含む。なお、「ハイブリダイゼーション」は、相補的な塩基配列構造を備える間の相補鎖(二本鎖)形成を意味する。
本開示において、「核酸鎖」とは、プリン又はピリミジン塩基と糖がグリコシド結合したヌクレオシドのリン酸エステルの重合体(ヌクレオチド鎖)を意味する。さらに、本開示において、「核酸鎖」とはプローブDNAを含むオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プリンヌクレオチドとピリミジンヌクレオチドが重合したDNA(全長又はその断片)、逆転写により得られるcDNA(cプローブDNA)、RNA、ポリアミドヌクレオチド誘導体(PNA)等を広く含む。
また、本開示において、「タンパク質間の相互作用」とは、タンパク質とタンパク質、タンパク質とペプチド、ペプチドとペプチドとの相互作用を含む意味である。この相互作用として、例えば、あるタンパク質等の立体構造中に存在するある部分又はその近傍に対して特異的にタンパク質等が結合すること等が挙げられる。
また、本開示において、「抗原抗体反応」とは、抗原(例えば、エピトープ)と抗体との結合等が挙げられる。
【0023】
ところで、従来の手法にて、少量検体を採取し、測定するという一連の操作を行う場合、測定可能な状態にするまでに煩雑な操作が必要となり、また、測定結果を得るための操作時間が長くなるという問題点がある。また、測定精度の安定性も低下しやすいという問題点がある。
例えば、通常のエライザ(ELISA)では、検体液が微少量であると、処理工程が増え、感度が低下するようになる。より具体的には、微少量の検体(例えば歯肉溝滲出液等)を採取する方法として、ろ紙で吸い取る手法が採用されているが、そのろ紙から標的物質を抽出する操作が必要である上に、希釈されてしまう。
また、採取した検体液を測定システムに導入しようとすると、前処理として分取する操作が必要であり、このときにロスが生じてしまい、微少量であるほど測定困難に陥る可能性が高い。
斯様に従来の手法は、微少量(例えば、歯肉溝液)を従来の採取用用具にて採取し、この採取物から標的物質を調製し、さらにこの調製物を測定装置や測定器具(例えばエライザ等)にて測定するというものであった。
【0024】
これに対し、本発明者は、鋭意検討を行い、毛細管内に、標的物質を採取する採取場と、前記標的物質をトラップできるトラップ用物質を固定化し、物質間の相互作用を行う反応場とを有機的に設けることで、上述の問題点を解決できることを見出した。
すなわち、本発明者は、上述の如く従来の手法(発想)を抜本的に転換し、採取と反応とを同じ場にて行うという奇抜な着想にて、本技術内容を完成させるに至った。
【0025】
さらに、本技術の測定対象は、特に限定されず、生体内組織等も含まれる。この生体内組織として、体液や血液等が挙げられる。体液としては、例えば、歯肉溝液(滲出液)、精液、分泌液、唾液、尿等が挙げられる。
【0026】
また、近年、歯肉溝液中に生体内物質が種々存在することが明らかになってきた。しかも、非侵襲性にて採取可能であることから、この歯肉溝液に含まれている目的とする生体内物質を標的物質として測定することにより、種々の疾病の診断、治療、管理を行う技術が開発されてきている。しかしながら、歯肉溝という非常に狭い部位から生体内物質を採取するため、その採取可能な歯肉溝液は少量である。このため、検出に必要な量を確保することが困難であり、また測定精度の安定性を保つことも困難であった。このようなことからも、歯肉溝液中の生体内物質をリアルタイムに測定する技術が確立されていないという実状があった。
【0027】
これに対し、本技術を用いれば、微少量の標的物質が含まれている歯肉溝液でも測定可能であり、非侵襲的に測定することもできる。
前記「歯肉溝液」とは、歯肉溝に存在し、歯組織からの生体内物質を含む液である。具体的には、歯肉溝滲出液(GCF:歯肉から滲出した血漿成分や組織液成分などを含む液)や歯肉から出血した血液(白血球成分、赤血球成分、血漿等を含む)などが挙げられる。また、歯肉溝液には、炎症性メディエーター等も含まれている。
なお、一般的に「歯肉溝」とは、歯組織において、歯と歯肉の境目になる溝をいう。
【0028】
本開示の感応毛細管部11は、標的物質を採取する採取部(採取場)13と、該標的物質と結合するトラップ用物質を固定化し、物質間の相互作用の反応を行う感応部(反応場)12とを備えるものである。
前記感応毛細管部11の大きさや形状は、特に限定されず、目的に合うように設計することが可能である。例えば、後述する採取部13にて検体を採取し易く、また後述する感応部12にて反応が行い易い大きさや形状が好適である。
【0029】
また、前記感応毛細管部11の短手方向の断面形状(形態)は、例えば、図4の例示の模式図が挙げられる。具体的には、楕円形、正方形、長方形、円形、三日月形、ラクビーボール型等が挙げられる。前記感応毛細管部11の短径Wは、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.2mm以下である。
【0030】
また、感応毛細管部11の先端方向の部分(採取部13)は、斜めカット形状やコーン形状であってもよい。さらに、テーパー形状とする(例えば図7及び12参照)のが、毛細管作用得やすく、また少量の検体でも測定し易いので、好適である。より具体的には、感応毛細管部11の先端から他端へ向かって徐々に口径や断面積が大きくなるようなテーパー形状(例えば、図7のテーパー形状110参照)とするのが好適である。このときのテーパー形状(構造)の先端の短径Wを、0.15mm以下とするのが好適である。これにより、生体組織、特に歯肉溝へ挿入する際、歯肉や損傷が加わるのを防止することができるからである。
【0031】
また、前記感応毛細管部11に、通気口11Hを単数又は2つ以上設けるのが好適である(例えば、図7参照)。これを、感応部12を形成する際の空気抜きとして利用することが可能である。例えば、毛細管内に、その通気口11Hを利用として、先端11Aから感応膜作製用溶液を通気口11Hの高さまで吸い上げて感応膜を形成し、第1感応部12とする。そして、他端11Bから、第1感応膜とは異なる感応膜作製用膜溶液を同様の手順にて感応膜を形成し、第2感応部12とする。このようにして複数の感応部12を形成することも可能である(例えば、図3の感応部12a、感応部12b参照)。
また、通気口11Hを閉じることで閉じた通気口11Hの高さを超えて感応膜作製用溶液を吸い上げることができる。このため、通気口11Hを複数設けて各通気口の開閉調整をすれば、異なる性質の感応部12を複数作製することも可能である。
なお、図7に示すように、前記通気口11Hは、先端11Aから他端11Bとの間で、先端Aから半分〜4分の3程度の位置に設けるのが好ましい。
また、前記通気口11Hの孔径(直径)は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜0.2mm、より好ましくは0.05〜0.1mmである。
【0032】
感応毛細管部11に用いる材料は、特に限定されない。このうち、可撓性を有する材料を用いるのが、生体組織に接触したときに生体組織への損傷を低減出来るので好適である。可撓性を有する材料として、例えば、樹脂、金属、セラミック、紙、フェルト材のような布等が挙げられる。
また、感応毛細管部11は、上記材料を用いて、射出成形、エッチング、切削、機械加工等の公知の作製方法により形成すればよい。
【0033】
(2)採取部(採取場)
感応毛細管部11には、採取部13が設けられており、感応毛細管部11の内部に採取場が形成されている。この採取部13の先端部分から、上述の標的物質を含む検体液を毛細管作用又は差圧により、毛細管内(採取場部分)に吸収させることが可能である。これにより、標的物質を後述する反応場である感応部12部分に導くことが可能となる。
前記採取部13の大きさや形状(形態)は、例えば、前記採取部の短辺又は短径Wが、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.2mm、さらに好ましくは0.15mm以下とするのが、好適である。標的物質を含む検体液に接触させ標的物質を採取する端部付近が細いと、標的物質を採取し易く、また採取する検体量を少なくすることができる。さらに、細くすることで、差圧でなく、毛細管作用を利用できるため、また採取する検体量を少なくすることができるので、好適である。
これにより、採取部13の先端付近(毛細管先端11A)をより細くすることにより、健常人の歯肉溝は、幅0.2mm、深さ2mmであることから、歯肉溝に感応毛細管部11を挿入することができる。また、歯肉に加わる刺激や損傷を低減することも可能となる。よって、非侵襲性の高い歯肉溝液を採取することが容易となる。
【0034】
また、生体組織等と接するような採取部13の先端部分は、例えば、図7の毛細管先端11Aのように、丸みを帯びさせてもよい。また、採取部13の先端部分に、不織布や織布、発泡体等の柔軟性のある被覆部(図示せず)を設けるのが好適であり、検体液のロスを抑えるため非吸収性のものを使用するのが望ましい。これにより、採取部13の先端が生体組織と接触しても、刺激や損傷を与えにくくなるので、直接採取が行い易い。直接採取することで、そのときの被験者の状態が把握しやすく、検体量も少なくてもよくなる。
【0035】
(3)感応部(反応場)
感応毛細管部11には、感応部12が設けられており、感応毛細管部11の内部には物質間の相互作用のための反応場が設けられている。この反応場では、標的物質Xを物質間の相互作用にてトラップすることができるトラップ用物質TAを固定化し、各種の物質間の相互作用による反応を行う。
この感応部12では、ハイブリダイゼーション、タンパク質間の相互作用、抗原抗体反応等の各種の物質間の相互作用の反応場を提供する領域又は空間として機能する。さらに、前記感応部12では、この相互作用にてトラップされた標的物質Xを検出する検出場を提供する領域又は空間としても機能するのが好適である。
また、前記感応部12には、標的物質Xを相互作用にて捕獲できるトラップ用物質TAを1種又は2種以上含むものである。このトラップ用物質TAによって標的物質Xとで相互作用を行い、さらに物質間の相互作用による反応にて発せされた光学的に又は放射免疫測定的に光情報又は放射性情報を検出することが可能である。このときの検出のための反応として、例えば、競合型反応及びサンドイッチ型反応などが挙げられる。また、これにより複数の光情報又は放射性情報を検出することも可能である。
【0036】
感応部12の位置(範囲)は、適宜設定すればよいし、感応部12には、1つ又は2つ以上の感応領域(感応膜)を設けてもよい。
例えば、図1に示すように、感応部12の範囲は、採取部13とほぼ同じ範囲であってもよい。
また、図2に示すように、感応毛細管部11の先端付近の採取部132には感応部12を形成させずに非感応部とし、他端方向の採取部131に感応部12を形成させてもよい。また、感応部12を感応毛細管部11中央付近に形成してもよい。
また、図3に示すように、複数の感応部12を形成してもよい。例えば、先端方向には感応部12aを形成し、他端方向にはこれとは異なる感応部12bを形成してもよい。感応部同士が隣接していてもよいし、隣接しないようにある一定範囲の非感応部領域を設けてもよい。この複数の感応領域や非感応領域を形成する際に、上述の如く通気口11Hを利用してもよい。
【0037】
固定化トラップ用物質Tは、前記トラップ用物質TAを毛細管(感応毛細管部11)の内壁面に固定化したものである。
固定化トラップ用物質Tに使用するトラップ用物質TAは、上述の如く、物質間の相互作用により、標的物質Xをトラップできる物質であればよい。例えば、標的物質Xが抗原又は抗体の場合、トラップ用物質TAは、標的物質Xと抗原抗体反応を行う抗体又は抗原であればよく、標的物質X(エピトープ等)に応じて適宜決定すればよい。そして、トラップ用物質TAは、標的物質に応じて、通常用いられる方法にて自由に作製することが可能であるし、市販品を入手し使用してもよい。
また、感応部12の形成に使用するトラップ用物質TAの種類は、所望に応じて1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。例えば、使用するトラップ用物質TAの種類に応じて、感応部12を複数としてもよいし、例えば1つの感応部12に、複数の異なる種類のトラップ用物質TAを用いてもよい。
【0038】
前記トラップ用物質TAを毛細管の内壁面に固定化するための固定化剤及びその固定化方法は、特に限定されないが、例えば光硬化樹脂を用いる方法が簡便で好適である。
【0039】
本開示の固定剤及び固定化方法について好適な一例を説明する。
例えば、種々の光反応性基を有する水溶性化合物と水溶性高分子鎖を含む水溶液(固定化水溶液)中に、トラップ用物質TAを混合して、感応膜作製用溶液を作製する。この混合水溶液(感応膜作製用溶液)を毛細管の内壁面に毛細管現象又は差圧により導入し付着させた後に、水分を乾燥させてから光(紫外線)を照射し固定化する。この方法により、毛細管の内壁面に対して、毛細管に目詰りを起こすことが少ない上に、感応部12の容量(容積)も制御しながら、確実に固定化することができる。
【0040】
前記水溶性ポリマーとして、ノニオン性ポリマーが好ましく、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートのビニル重合体等が挙げられる。
前記光反応基を有する水溶性化合物として、例えば、アジド基(−N)、特に該アジド基を2個有するジアジド化合物(一例として、ニ個のフェニルアジド基を連結した構造の化合物)が挙げられる。さらに、水溶性ジアジド化合物、例えば、N−Ph−R−Ph−N及びN−CH−CH−O−(CH−CH−O)n−CH−CH−N等が挙げられる。前記Rとして、−CH−、−O−、−SO−、−S−S−、−CH=CH−、−CH=CH−CO−、−CH=CH−CO−CH=CH−、−CH=CH−等が好ましい。また、前記nとして、1〜1000が好ましく、より1〜500が好ましい。具体的な化合物として、4、4‘―ジアジドスチルベン−2,2’−ジスルホン酸アルカリ金属塩(ナトリウム等)が挙げられる。
【0041】
なお、アジド基は、光照射によって窒素分子が離脱すると共に窒素ラジカルを生じ、この窒素ラジカルは、アミノ基やカルボキシル基等の官能基だけでなく、有機化合物を構成する炭素原子とも結合することが可能であるので、ほとんどの有機化合物との供給結合を形成し得るという性質を有している。
【0042】
毛細管(感応毛細管部11)の内壁面(内壁部113)は、アルコール性水酸基等の親水性基を有する固相で形成されることが好ましい。毛細管の内壁面に感応部12を形成し易くするためである。このような固相として、例えば、ガラス、石英、ポリアルコール性樹脂、表面改質した樹脂、シランカップリング剤等親水性基を付与した固相等が挙げられる。
また、毛細管(感応毛細管部110)の内壁面(内壁部113)は、単孔質、多孔質としてもよく、特に表面積を増加させた形態に形成するのが好ましい。表面積を大きくすることで、該表面に設ける反応部12に、より多くのトラップ用物質TAを含有させることが可能となる。
【0043】
また、前記固定化剤にてトラップ用物質TAを、トラップ用物質TA−固定物2―内壁面というように、直接固定化してもよい。これにより、トラップ用物質TAを内壁面に安定的に固定化しやすい。
また、架橋体(複合架橋体)Cを用いて、トラップ用物質TA−架橋体C−内壁面というように、トラップ用物質TAを固定化してもよい。架橋体を用いることにより、毛細管内を通過する標的物質をトラップしやすい(物質間の相互作用が起こりやすい)向きにトラップ用物質を配置することが容易となる。また、架橋体を用いることで,強固に結合させることになるので,洗浄時での脱落が防げるという利点もある。
さらに架橋体と固定化剤とを組み合わせることで、トラップ用物質TA−架橋体C−固定物2−内壁面というように固定化させてもよい。
また、作製が容易な点で、複合架橋体Cを形成する複数の部分架橋体を用いるのが好ましい。例えば、トラップ用物質TA−架橋体a−架橋体b−内壁面;トラップ用物質TA−架橋体a−架橋体b−固定物2−内壁面などが挙げられる。なお、「−架橋体a−架橋体b−」は、「−架橋体b−架橋体a−」であってもよく特に限定されない。
【0044】
トラップ用物質TA−架橋体(複合架橋体)C−と形成させる方法としては、例えば、酵素免疫測定法の酵素標識に用いられる架橋試薬を用いる方法等にて行うことが可能である。例えば、グルタルアルデヒド、マレイミド化合物、ピリジル・ジスルフィド化合物、ビオチン・アビジン化合物、ビオチン・ストレプトアビジン化合物等を用いる方法、及び過ヨウ素酸酸化によるNaKaue法等を用いる方法等が挙げられる。このうち、ビオチン・アビジン化合物、ビオチン・ストレプトアビジン化合物を用いる方法が望ましい。
【0045】
なお、標識化検出用物質Yは、標的物質Xと物質間の相互作用にて、光学的に又は放射免疫測定的に光情報又は放射性情報を測定装置等にて検出させることが可能な物質である。
標識化検出用物質Yに使用する検出用物質YAは、上述の固定化トラップ用物質Tのように、標的物質Xと物質間の相互作用ができる物質であればよい。例えば、標的物質Xが抗原又は抗体の場合、検出用物質YAは、標的物質Xと抗原抗体反応を行う抗体又は抗原が挙げられ、標的物質X(エピトープ等)に応じて適宜決定すればよい。そして、検出用物質YAは、標的物質に応じて、通常用いられる方法にて作製することが可能であるし、市販品を入手し使用してもよい。検出用物質YAの種類は、所望により1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
また、標識化検出用物質Yとは、検出用物質YAを、光標識及び/又は放射性標識したものなどが挙げられる。この光標識とは、光成分(蛍光、吸光等)を発すること又は発するものを生成できるもの等のように、光検出を可能とするものである。
前記標識化検出用物質Yとして、例えば、アイソトープラベルされたもの、蛍光標識されたもの、架橋化されたもの、酵素標識されたものなどが挙げられる。
【0046】
標識化する際に、必要に応じて、種類の異なる検出用物質YAを使用してもよい。このとき、異なる種類の検出用物質YAを、それぞれ異なる種類の標識Mにて標識化すればよい。これにより、複数の標的物質について検出することが可能となる。また、1つの標的物質が物質間と相互作用する部分を複数有する場合には、より検出精度を高めることが可能となる。
また、上記「トラップ用物質」の如く架橋試薬を用いる方法にて得られる、標識M−架橋体C−検出用物質YA;標識M−複合架橋体C−検出用物質YA等の標識化検出用物質Yを用いてもよい。一例として、部分架橋体−検出用物質YAがトラッピングされている標的物質Xに結合し、該検出用物質YA−部分架橋体に、部分架橋体−標識(例えばPOD)が結合し、標識−複合架橋体−検出用物質−標的物質−固定化トラップ用物質となる。結合させる物質が小さいので、効率良く結合することが可能となる。これにより、検出精度も向上するので、好ましい。また、架橋体を用いることで,強固に結合させることになるので,洗浄時での脱落が防げるという利点もある。
【0047】
放射性標識に使用する放射性同位体として、特に限定されない。例えば、〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕及び〔35S〕等が挙げられる。
蛍光標識に使用する蛍光色素として、特に限定されない。例えば、フルオロセイン、ローダミン、フィコビリン、アクリジン、クマリン、シアニン、Alexa Fluor(登録商標)、Cy色素(登録商標)、ルテニウム(II)錯体及びランタノイド錯体等が挙げられる。
また、吸光度変化の標識に使用する色素として、オルトジアニシジン(ο-dianisidine)等が挙げられる。
【0048】
酵素標識に使用する酵素として、特に限定されない。
例えば、アルカリフォスターゼ、ペルオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、アルコール脱水素酵素、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、キサンチンオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、インベルターゼ、アセテートキナーゼ、グルコース脱水素酵素、ピルビン酸キナーゼ、ウリカーゼ(乳酸オキシダーゼ)、ウレアーゼ、乳酸オキシダーゼ、フルクトシル。アミノ酸酸化酵素、サルコシン酸化酵素、コレステロール酸化酵素等が挙げられる。これらを単独で又は複数組み合わせて使用してもよい。好ましくは、ペルオキシダーゼである。これらは市販品のものを購入して使用することが可能である。
【0049】
また、前記酵素の基質としては、上述した酵素の基質となるものを任意に用いることができる。この酵素基質として、色素前駆体が好ましい。前記色素前駆体として、例えば、酵素により、色素前駆体から光を発する又は吸光度を変化させる物質に変化するものが好ましい。
例えば、アルカリフォスターゼの場合には、p−ニトロフェニルリン酸等が挙げられる。
例えば、ペルオキシダーゼの場合には、10-acetyl-3,7-dihydroxyphenoazine(ADHP)、オルトジアニシジン(o-dianisidine)、5−アミノサリチル酸、o−フェニレンジアミン、テトラメチルベンジジン(3,3’5,5’-tetramethylbennizine)等が挙げられる。
このうち、酵素の作用により色素前駆体から生じた色素を光学的に測定し、標的物質Xの検出、定量を行うのが簡便である。例えば、過酸化水素の存在下で、ペルオキシダーゼにより、色素前駆体から、蛍光を発する物質又は吸光度を変化させる物質になるものが好ましい。このうち、ペルオキシダーゼ−ADHP及びペルオキシダーゼ−オルトジアニシジンで行うのが、簡便である。
【0050】
ADHPは、過酸化水素の存在下でペルオキシダーゼにより、レソルフィン(Resorufin)となり、このレソルフィンは蛍光源となるので、これによる蛍光強度を測定することを可能とする。
また、オルトジアニシジン(還元)は、過酸化水素の存在下でペルオキシダーゼにより、オルトジアニシジン(酸化)となることで吸光度が変化するので、この吸光度変化を可視光分光法により測定することを可能とする。
【0051】
なお、例えば、種類が異なる検出用物質YAを用いる場合、それぞれ別々に異なる標識を標識化してもよい。異なる標識を使用することにより、標的物質Xの種類が異なる場合でも、別々の検出波長等にて検出することが可能である。
【0052】
<2.標的物質検出装置10>
本開示に係わる標的物質検出装置10には、少なくとも本開示の標的物質検出用プローブ1が備えられている。
前記標的物質検出用プローブ1は、上述の如く、標的物質Xを毛細管部にて採取し得る採取部13と、該標的物質と結合するトラップ用物質TAを固定化し、物質間の相互作用を行う感応部12と、を設ける感応毛細管部11を備えるものである。そして、この感応毛細管部11は、図1〜3、5〜7に示すような第1〜6の実施形態の何れでもよいが、これら実施形態の例示に限定されるものでもない。
また、感応毛細管部11の先端は、テーパー形状であるのが好適である。なお、この標的物質検出用プローブ1は、前述した標的物質検出用プローブ1の構成と重複するため、ここでは詳細な説明を割愛する。
【0053】
さらに、前記標的物質検出装置10には、光照射部、光検出部を少なくとも備える。また、必要に応じて、ダイクロイック素子、集光レンズ、光学フィルター等を備えることも可能である。以下、各々について、詳細に説明する。
また、前記標的物質検出装置10における前記標的物質検出用プローブ1の配置は、横型(例えば図5及び6)や縦型(例えば図7)の何れでもよく、横型縦型に応じて各測定装置等の配置を自由に設計すればよい。
また、前記標的物質検出装置10は、採取場と反応場とを備える標的物質検出用プローブ1を使用するため、標的物質を採取した後、ほぼリアルタイムに検出することも可能である。
【0054】
図6は、本開示に係わる標的物質検出装置10の第1の実施形態を模式的に示す模式概念図である。
本開示に係わる標的物質検出装置10は、少なくとも、着脱可能な前記標的物質検出用プローブ1と、検出部とを備える。該検出部は、光情報又は放射性情報を検出することが可能な装置であればよい。そして、光情報の場合には、光照射部及び光検出部から構成される光測定システム16を備えるのが好適である。前記光照射部は、前記標的物質検出用プローブ1の前記感応部12に対して、光を照射するものである。また、前記光検出部は、前記光照射部による光照射によって、前記感応部12中からの光情報を検出するものである。
【0055】
また、前記光測定システム16には、前記標的物質検出用プローブ1の感応部12をより検出しやすいように、光測定用ホルダー15及びこの光測定用ホルダー15と光測定システム16とを接続する光導波路17とを備えるのが好適である。
光導波路17の形成方法は、感応部12への光照射及び/又は前感応部中から発生られる光学的情報を伝送することができれば、特に限定されず、自由に設計することができる。例えば、ロッドを用いて光導波路を形成したり、光ファイバーを用いた光導波路を形成したり、又は導光板を用いて光導波路を形成したりすることができる。
【0056】
また、標的物質検出用プローブ1を作成する場合及び物質間の相互作用を行う場合に、差圧機構18を備えるのが好適である。また、感応毛細管部11の他端11Bに、中空の支持部14(例えば、円柱状等)を設け、差圧機構に接続されているのが好適である。これにより、標的物質検出用プローブの毛細管内に各種溶液を簡単に流すことが可能となる。
【0057】
本開示の標的物質検出装置10の第2の実施形態を模式的に示す模式概念図を図5に示す。
光ファイバーを用いる場合、フェルール(光コネクタ部材)F1とスリーブSを用いて本体を形成し、フェルールF1と測定装置側のフェルールF2とを、スリーブSにて接続することでも、光学的検出が可能である。
なお、第2の実施形態では、前記標的物質検出用プローブ1側にスリーブSを備えているが、この実施形態例に限定されず、測定装置側のフェルールF2にスリーブSを備えるか、又は接続する際にのみスリーブSを用いるように設計してもよい。
なお、感応毛細管部11は、図1〜3、5〜7に示すような第1〜6の実施形態の何れでもよいが、これら実施形態の例示に限定されるものでもない。感応毛細管部11の先端は、テーパー形状であるのが好適である。
【0058】
本開示の標的物質検出装置10の第3の実施形態を模式的に示す模式概念図を図7に示す。
感応毛細管部11に対する光導波路17の配列構成に関して、該感応毛細管部11の上端面111に対して直列状に配置する構成ではなく、感応毛細管部11の側胴部112に対して光導波路17を接続させるように設計してもよい。この側胴部112の内壁面、好ましくは接続部分付近の内壁面が、感応部12(感応膜21)が形成されているのが好適である。また、前記第1の実施形態に示すようなスライド可能な光測定用ホルダーを設けてもよい。これにより、感応部12から発せられる光学的情報を取得し易くなる。
また、毛細管他端11Bには、前記第1の実施形態に示すような差圧機構を設けるのが好適である。これにより、各種溶液の吸い上げ、毛細管内の洗浄等が容易に行うことができる。
【0059】
前記標的物質検出装置10の第3の実施形態の一例を以下に説明する。
PFA(フッ素樹脂)チューブ151の一端部付近に孔152を開けておき、この孔152に感応毛細管部11の上部を装着し、接着剤等で固定する。例えば、PFAチューブ内口径は0.5mm、外口径は1.0mmに設計する。PFAチューブ151の内部には、光導波路17、例えば光ファイバー171(例えば、口径0.25mm)を設けておく。この光ファイバーの一端部は感応毛細管部11の側胴部112に当接された状態で配置しておき、この光ファイバーを介して、光の伝送を行うようにする。
詳しくは、前記感応部12(感応膜21)に対して、測定光L1(例えば蛍光励起光)を入射させたり、該感応部12に存在する蛍光源等から発生した蛍光や発光等の光L2を、光測定システム(図示せず)に対して伝送したりする。なお、前記感応部12(感応膜21)とは、感応毛細管部11の内壁部113に膜状形成されたものである。
また、光コネクタ部材F及びこれを固定する光測定用ホルダー15を備えてもよく、また、このホルダーとPFAチューブ151とを接着剤等にて接着してもよい。
なお、前記感応毛細管部11は、図1〜3、5〜7に示すような第1〜6の実施形態の何れでもよいが、これら実施形態の例示に限定されるものでもない。感応毛細管部11の先端は、テーパー形状であるのが好適である。
【0060】
光照射部は、標的物質検出用プローブ1に設けられた感応部12に対して光(一例、蛍光励起光)を照射するための装置である。
【0061】
光照射部から照射される光の種類は特に限定されないが、感応部12中から蛍光や散乱光を確実に発生させるためには、光方向、波長、光強度が一定の光が望ましい。一例としては、レーザー、LED、水銀灯などを挙げることができる。レーザーを用いる場合、その種類も特に限定されないが、アルゴンイオン(Ar)レーザー、ヘリウム−ネオン(He-Ne)レーザー、ダイ(dye)レーザー、クリプトン(Kr)レーザー等を、1種又は2種以上、自由に組み合わせて用いることができる。
【0062】
光検出部は、光照射部による光照射によって感応部12中から発せられた光学的情報を検出するための装置である。
【0063】
本発明に係る標的物質検出装置10に用いることができる光検出部は、光学的情報の検出ができれば、その種類は特に限定されず、公知の光検出器を自由に選択して採用することができる。例えば、蛍光測定器、散乱光測定器、透過光測定器、反射光測定器、回折光測定器、紫外分光測定器、赤外分光測定器、ラマン分光測定器、FRET測定器、FISH測定器その他各種スペクトラム測定器、複数の光検出器をアレイ状に並べた、いわゆるマルチチャンネル光検出器等を1種又は2種以上自由に組み合わせて採用することができる。
【0064】
また、前記標的物質検出装置10には、ダイクロイック素子を備えることも可能である(図示せず)。このダイクロイック素子を備えることにより、必要な光学的情報のみを選択して検出することができる。
前記ダイクロイック素子としては特に限定されず、公知のダイクロイック素子を目的に応じて自由に選択して用いることができる。例えば、ダイクロイックミラー、分波器などを用いることができる。
【0065】
また、前記標的物質検出装置10には、図示しないが、光照射部からの励起光を感応部12へ集光する目的で、光照射部と感応部12との間に、励起用の集光レンズを配置することができる。この集光レンズは必須のものではないが、励起光用の集光レンズを設ければ、感応部12に対して、より正確に励起光の照射を行うことが可能である。
【0066】
また、前記標的物質検出装置10には、図示しないが、感応部12中から発せられた光学的情報を光検出部に集光する目的で、感応部12と光検出部との間に、受光用の集光レンズを配置することができる。この受光用の集光レンズも必須のものではないが、受光用の集光レンズを設ければ、蛍光などの光学的情報のシグナルをより高めることができる。その結果、SN比の向上を図ることも可能である。
【0067】
また、前記標的物質検出装置10には、図示しないが、光照射部と感応部12との間に、励起用の光学フィルターを配置することができる。この励起用の光学フィルターは必須のものではないが、励起用の光学フィルターを設ければ、感応部12に、所望の波長の励起光を選択的に照射することができる。
【0068】
また、前記標的物質検出装置10には、図示しないが、感応部12と光検出部との間に、受光用の光学フィルターを配置することができる。この受光用の光学フィルターは必須のものではないが、受光用の光学フィルターを設ければ、感応部12中から発せられる蛍光などの光学的情報から、所望の波長の光を選択的に受光することができる。
【0069】
<3.標的物質検出方法>
図8〜10を参照して、本開示の標的物質検出方法を以下に説明する。このとき、前記標的物質検出用プローブ1及び前記標的物質検出装置10の関する技術内容は、前述した標的物質検出用プローブ1及び前記標的物質検出装置10と重複するため、ここでは説明を適宜割愛する。
【0070】
図8〜10には、本開示の標的物質検出方法の模式的な例示が開示されているので、これを参考にしながら、以下に説明する。なお、図8〜10は、前記感応部12の形成方法を含む概略図でもある。
本開示の標的物質検出方法は、感応毛細管(部)11内で、採取した標的物質Xに対して固定化トラップ用物質Tにて物質間の相互作用を行い、発せられた光又は放射性情報を検出する。前記感応毛細管部11は、標的物質Xを採取する採取場(採取部13)と、該標的物質Xをトラップするトラップ用物質TAを固定化し、物質間の相互作用の反応を行う反応場(感応部12)とを備えるものである。
また、前記固定化トラップ用物質Tは、毛細管内にトラップ用物質TAを含む溶液を吸収させて、標的物質Xをトラップするトラップ用物質TAを固定化したものである。
【0071】
本開示の標的物質検出方法は、以下の〔手順A〕〜〔手順D〕にて行うことが可能である。
〔手順A〕 図8(1)(2)及び図10(1)に示すように、毛細管(感応毛細管部11)内に、前記トラップ用物質TAを含む溶液を吸収させて、標的物質をトラップするトラップ用物質TAを毛細管の内壁面に固定化する。
このとき、前記固定化剤を使用するのが望ましく、さらに前記トラップ用物質TA及び前記固定化剤を含む混合溶液を使用するのが望ましい。そして、光照射等を行い、固定物2及び固定化トラップ用物質Tが感応膜21として、毛細管(感応毛細管部11)の内壁面に形成される。この部分が感応部12となる。感応部12及び採取部13の範囲及びその作製方法は上述のとおりであるので、割愛する。
その後、この毛細管内を溶液等で洗浄してもよい。
【0072】
また、〔手順A〕において、図9(1)に示すように、架橋体Cを用いる方法を利用してもよい。なお、複合架橋体Cは複数の部分架橋体にて形成されるので、部分架橋体ごとの使用する順序は何れが先になってもよい。
複合架橋体Cとなる(部分)架橋体Caと、固定化剤とを含む混合液を、毛細管(感応毛細管部11)内に吸収させて、架橋体Caを固定化する。その後、架橋体Caと複合架橋体Cとなる(部分)架橋体Cbと結合したトラップ用物質TAを含む溶液を、毛細管(感応毛細管部11)内に吸収させる。
図9(2)に示すように、部分架橋体Caと部分架橋体Cbとで複合架橋体Cを形成し、これによりトラップ用物質TAが固定化され、固定化トラップ用物質Tとなる。
その後、この毛細管内を溶液等で洗浄してもよい。
【0073】
〔手順B〕 図8(3)、図9(3)及び図10(2)に示すように、前記毛細管(感応毛細管部11)内に、標的物質Xを含む検体液を吸収させて、該標的物質Xに対して前記固定化トラップ用物質Tにて物質間の相互作用を行う。
その後、この毛細管内を溶液等で洗浄してもよい。
【0074】
〔手順C〕 図8(4)及び図9(4)に示すように、前記毛細管(感応毛細管部11)内に、光又は放射性標識をした検出用物質YAを含む溶液を吸収させて、該標識した検出用物質Yを前記標的物質Xと物質間の相互作用をさせる。
その後、必要に応じて、この毛細管内を溶液等で洗浄してもよい。
【0075】
また、〔手順C〕において、図10(3)〜(5)に示すように、架橋体Cを用いる方法を利用してもよい。なお、複合架橋体Cは、複数の部分架橋体にて形成されるので、部分架橋体の使用する順序は何れが先になってもよい。
図10(3)に示すように、前記毛細管内に、検出用物質YAを含む溶液を吸収させて、検出用物質YAを前記標的物質Xと物質間の相互作用をさせ、これらを結合させる。その後、この毛細管内を溶液等で洗浄してもよい。
図10(4)に示すように、架橋体Cbを含む溶液を吸収させて、架橋体Cbを検出用物質YAに結合させる。その後、この毛細管内を溶液等で洗浄してもよい。
図10(5)に示すように、前記毛細管内に、前記標識Mを有する架橋体Caを含む溶液を吸収させて、部分架橋体Caが部分架橋体Cbと結合する。これにより、標識M−複合架橋体C−検出用物質YAで構成される標識化検出用物質Yとなる。この標識化検出用物質Yと標的物質Xとが結合している状態である。
その後、この毛細管内を溶液等で洗浄してもよい。
【0076】
〔手順D〕 前記結合した標識化検出用物質にて発せられた光又は放射性情報を、測定装置等にて検出する。
また、図8(5)に示すように、以下の手順にて検出するのが好適である。
前記〔手順C〕にて、物質間の相互作用の反応を行った後に、前記毛細管(感応毛細管部11)内に、酵素Mで標識化した検出用物質Yを含む溶液を吸収させる。このとき、上述の架橋体を用いる方法を利用してもよい。その後、この毛細管内を溶液等で洗浄してもよい。
さらに、前記毛細管内に、前記酵素Mの基質Zを含む溶液を吸収させる。そして、前記酵素基質Zが変化して生じる光情報(発光物Za)を検出する。このため、前記酵素基質Zが、発光物Zaとなる色素前駆体であるのが好適である。
【0077】
また、前記固定化トラップ用物質T及び/又は前記標識化検出用物質Yが、ビオチン−アビジン架橋又はビオチン−ストレプトアビジン架橋にて得られたものであるのが好適である。
【0078】
感応毛細管部11の内部(内壁面)に、感応部(反応場)12を形成する方法は特に限定されず、自由な方法を用いて形成することができる。このとき、生体に悪影響を及ぼさない素材を用いて感応部12を形成するのが、望ましい。
例えば、前記トラップ用物質TAを含有する溶液を、毛細管(感応毛細管部11)内に毛細管現象又は差圧にて導入した後に乾燥させる。これにより、トラップ用物質TAが毛細管(感応毛細管部11)の内壁面に直接固定化された状態で、感応部(反応場)12を形成することができる。
【0079】
より好適な毛細管(感応毛細管部11)内壁面へのトラップ用物質TAの固定化方法として、固定剤を用いるのが望ましい。より具体的には、例えば、前記トラップ用物質TAを含有する溶液と固定化剤を含有する溶液とを混合し、毛細管内部に毛細管現象又は差圧により導入し、乾燥、光照射等を行う。これにより、毛細管(感応毛細管部11)の内壁面に、少なくとも固定物2及びトラップ用物質TAから構成される感応膜(感応層)21が形成され、トラップ用物質TAが固定化されることとなる。
【0080】
以下に、本開示の標的物質検出方法の一例について、図8を参照しながら、毛細管内で抗原抗体反応(免疫反応)を行う場合について説明する。このとき、特に、標的物質(抗原)に対する固相酵素免疫測定法(enzyme-linked immunosorbent assay,ELISA)にて説明する。
〔手順a〕において、図8(3)に示すように毛細管(感応毛細管部11)内に、標的物質(抗原)Xと結合する抗体TAを固定化する。これにより、固定化トラップ用物質Tと固定物2から構成される感応膜21(感応部12)が形成される。
〔手順a〕において、〔手順a1〕として、抗体TAをUV固定化剤で直接固定してもよい。具体的には、抗体TA及びUV固定化剤を含む溶液を毛細管力や差圧で吸収させ、抗体を固定する。
また、〔手順a2〕として、ビオチン−アビジン又はビオチン−ストレプトアビジン法及びUV固定化剤を使用した方法で抗体TAを固定化してもよい。ビオチンの場合は、アビジン又はストレプトアビジンで修飾した抗体、アビジン又はストレプトアビジンの場合は、ビオチンで修飾した抗体を用いることとなる。
具体的には、複合架橋体Cの一方の部分架橋体とUV固定化剤を含む溶液を毛細管力や差圧で吸収させ、複合架橋体Cの一方の部分架橋体を固定する。その後、複合架橋体の他方の部分架橋体で修飾した抗体TAを含む溶液を毛細管力や差圧で吸収させ、抗体を固定する。
【0081】
〔手順b〕として、図8(3)に示すように,標的物質Xを含むサンプル液を毛細管力又は差圧により、毛細管(感応毛細管部11)内に吸収する。
【0082】
このとき、〔手順b1〕として、複合架橋体Cを用いる方法を利用してもよい。
複合架橋体Cの一方の部分架橋体にて修飾した二次抗体YAを含む溶液を毛細管力又は差圧により、毛細管内に吸収する。この二次抗体YAが、トラップされている標的物質Xに結合する。複合架橋体Cの一方の部分架橋体にて修飾した二次抗体とは、ビオチンで修飾した二次抗体又はアビジンやストレプトアビジンで修飾した二次抗体であるのが好適である。
さらに、複合架橋体Cの他方の部分架橋体にて修飾した酵素を含む溶液を、毛細管力又は差圧により、毛細管内に吸収する。この複合架橋体Cの他方の部分架橋体が、一方の部分架橋体と結合することで、酵素を標識Mとする標識化二次抗体Yとなる。
なお、二次抗体YAにビオチンを用いた場合は、アビジン又はストレプトアビジンで修飾した酵素、二次抗体YAにアビジン又はストレプトアビジンを用いた場合には、ビオチンで修飾した酵素を使用する。
【0083】
また、〔手順b2〕として、酵素(標識M)を結合させた二次抗体Yを含む溶液を、毛細管力又は差圧により、毛細管内に吸収させてもよい。
【0084】
さらに、〔手順c〕において、前記酵素Mの基質Z(色素前駆体を含む)を含む溶液を、毛細管力又は差圧により、毛細管内に吸収する。
さらに、〔手順d〕において、酵素Mの作用にて色素前駆体Zより生じた色素Zaを光学的に測定し、標的物質Xの検出、定量を行う。
また、〔手順b3〕として、色素前駆体Zの代わりに、放射性物質等でもよい。その場合は、放射性物質等の標識Mを結合させた二次抗体Yを用い、その物質の産物に対応した測定を行い、標的物質Xの検出、定量を行う。
【0085】
なお、毛細管力又は差圧による溶液の除去工程や洗浄工程を挿入してもよい。
標的物質Xを含むサンプル液として、体液又は血液を用いてもよい。この体液として、歯肉溝滲出液、唾液、尿を用いてもよい。標的物質Xは、炎症メディエーターが望ましい。
また、本開示の感応毛細管部11を持ち、上述のELISAを行う差圧のための機構を持つシステムを構築するのが好適である。
【実施例】
【0086】
以下に、具体的な実施例等を説明するが、本技術はこれに限定されるものではない。
〔標識の測定〕
蛍光の場合は毛細管に励起光を照射し,蛍光を受光することによって行う。
【0087】
〔1.試薬を用いた検証実験〕
歯周炎を起こしている歯肉組織より、歯肉溝滲出液を採取し、その中の炎症性メディエーターを分析することを想定し、微少量のサンプル液中の炎症性サイトカインの検出が、本技術であるキャピラリーELISA法で可能であることを検証する実験を実施した。
ELISAの標的物質は炎症性サイトカインであるTNF−αとした。これは、細菌菌体成分の刺激により、単球やマクロファージから産生され、血管内皮細胞の活性化や血管透過性を促進する作用を持ち、インスリン抵抗性を高める作用もあることより、歯周病だけでなく糖尿病との関連からも注目される物質である。例えば、参考文献1(柳田と村上、和泉ら編「ザ・ペリオドントロジー」第5章(2009、永末書店))参照。
【0088】
TNF−αの検出実験には、市販のTNF−α検出用キットの抗原と抗体を用いた。用いた試薬キットはAccukine Human TNF−α ELISA(E8005、Symansis)であり、購入して使用した。これはウェル・プレートのウェル底面に固定される。具体的には、Coating antibody、抗原であるTNF−α(標準物質)、Detection antibody、Streptavidin-HRP(ホースラディッシュ・ペロキシダーゼ)の試薬をキットにしたものである。これは、ELISA法によってTNF−αを検出する試薬キットである。
前記Coating antibody(トラップ用抗体)は、抗原と抗原抗体反応で結合する抗体である。前記Detection antibodyは、アビジンを結合し、TNF−αと抗原抗体反応で結合するものである。前記Streptavidin-HRP(ホースラディッシュ・ペロキシダーゼ)は、POD(ペロキシダーゼ)と結合したstreptavidinである。
【0089】
このキットは通常、多数のウェルを一枚の基板に持つウェル・プレートで使用される。ウェルの底面にCoating antibodyを固定し、そこに標的分子を含むサンプル液(例えば、TNF−αの溶液)を注入する。そして、Coating antibodyと標的分子の間の抗原抗体反応(免疫反応)による結合の後、洗浄する。そして、Detection antibody(プローブ抗体)溶液を注入し、更に、標的分子とDetection antibodyを抗原抗体反応により結合させる。このことにより、サンドイッチ複合体を形成させ、その後、洗浄する。
ここに、Streptavidin-HRP溶液を注入すると、Detection antibodyのビオチンとStreptavidinが結合することにより、PODがサンドイッチ複合体に付加される。
PODは、過酸化水素存在下で、無色の色素前駆体(例えば、無蛍光の10-acetyl-3、7-dihydroxyphenoxazine)を、有色や蛍光性の色素(例えば、蛍光性のレゾルフィン)に変化させる。
そこで、色素前駆体と過酸化水素をウェルに滴下すれば、有色や蛍光反応が生じ、吸光や蛍光の測定により、サンプル液中の目的物質(この場合、TNF−α)を検出できる。
色素前駆体が存在する限り、酵素反応により吸光や蛍光の反応が進むため、高感度に抗原を検出することができる。こうした抗原抗体反応(免疫反応)と酵素を用いた高感度化の手法を固相酵素免疫測定法(enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)と呼ぶ。
【0090】
このELISA法を毛細管(キャピラリー)内で行い、サンプリングと検出を同一の毛細管で実施することで、ロスなく微少量の検出を可能とする方法が本技術である。
本技術の毛細管を用いたELISA法(キャピラリーELISA法)(例えば図12参照)の流れ図を図8〜10に示した。一例として、このキャピラリー−ELISA法の感応毛細管部11の先端を歯肉溝に挿入して使用する。
【0091】
〔1.1.抗体固定化毛細管(センサ・プローブ・チップ)の作製〕
Accukine Human TNF−α ELISAのCoating antibodyのバイアルに1mLのリン酸緩衝食塩水を加え、溶解し、Coating antibodyの720μg/mLの溶液を調製した。100μLをマイクロチューブに分注し、ヒートブロックを用いて25℃で20分間加熱した。それに、ジアジド化合物と水溶性の高分子鎖を含む1%の固定化液R(ヒラソルバイオ社製)を3.6μL添加し、混合し、再度25℃で5分間加熱した。
前記のCoating antibodyの溶液を5μL分取し、秤量ボートに滴下した。デルリン製毛細管(内積0.8μL、20mm長)の片側端面を滴下した溶液に10秒間浸漬し、溶液を毛細管内に吸収させた。吸収は実体顕微鏡で確認した。真空に減圧することで20分間乾燥させた後、UV露光することにより、Coating antibodyを毛細管内壁に固定化した。
吸引可能なシリンジ・ポンプを用意し、シリンジをセットした。セットしたシリンジと毛細管をチューブで繋いだ後、毛細管の先端を純水に浸漬し、1mL吸引し、毛細管内を洗浄した。洗浄後、再度、真空に減圧し、1晩乾燥させた。これにより、Coating antibodyを内壁に固定化した毛細管を作製した(図12参照)。
【0092】
〔1.2.サンプル液の用意〕
前記1.1.のキットの720ng/mLのTNF−α Standardを14μLマイクロチューブに分取し、36μLの超純水を加え、200pg/μLに希釈した。これより、0(超純水、対照)、0.2、20、200pg/μLのサンプル液を調製した。
【0093】
〔1.3.Detection antibodyの用意〕
前記1.1.のキットのDetection antibodyのバイアルにリン酸緩衝食塩水を1 mL注入し、溶解し、13.5μg/mLの溶液を得た。25℃で15分間ヒートブロックで加熱後、10倍希釈し、1.35μg/mLのDetection antibody溶液を調製した。
【0094】
〔1.4. Streptavidin-POD(ペロキシダーゼ)溶液の調製〕
キット内のStreptavidin-HRP(ホースラディッシュ・ペロキシダーゼ)溶液をリン酸緩衝食塩水で10倍希釈し、Streptavidin-POD溶液を調製した。
【0095】
〔1.5.基質溶液の用意〕
Dimethyl sulfoxide(DMSO)で溶解した0.4mg/μLのADHP(AnaSpec)を2.5μLマイクロチューブに分取し、超純水を42.5μL、30%過酸化水素水を50μL加え、基質溶液を調製した。
【0096】
〔1.6.抗体固定化毛細管内での抗原抗体反応の操作〕
前記1.2.で調製したサンプル液を秤量ボートに5μL分取し、前記1.1.で作製した抗体固定化毛細管の先端を浸漬し、サンプル液が吸収されるかどうか、実体顕微鏡で目視確認したところ、吸収されることが分かった。
前記1.2.で調製した一連の濃度のサンプル液を5μL分取し、秤量ボートに滴下し、抗体固定化毛細管の先端を5秒間浸漬し、吸収させた。前述したシリンジ・ポンプを用意し、シリンジをセットした。抗体固定化毛細管とシリンジをチューブで繋ぎ、毛細管の先端を超純水に浸漬し、1mL吸引することにより、毛細管内を洗浄した。
次に、前記1.3.のDetection antibody溶液を秤量ボートに2μL滴下し、シリンジ・ポンプで吸引することにより、毛細管内に吸収させ、5分間放置した。超純水に浸漬し、シリンジ・ポンプで1mL吸引することにより、毛細管内を洗浄した。
次に、前記1.4.のSterptavidin-POD溶液を秤量ボートに2μL滴下し、シリンジ・ポンプで吸引することにより、毛細管内に吸収させ、5分間放置した。超純水に浸漬し、シリンジ・ポンプで1mL吸引することにより、毛細管内を洗浄した後、乾燥させた。
【0097】
〔1.7.基質溶液による蛍光観察〕
ADHPは過酸化水素存在下で、PODの作用で、レゾルフィンに変化する。ADHPは無蛍光であるが、レゾルフィンは蛍光物質であり、緑色での励起で、橙色の蛍光を発する。
そこで、蛍光実体顕微鏡を用いて、前記1.6.で抗原抗体反応が行われたか、確認した。
前記1.5.の基質溶液を秤量ボートに5μL分取し、前記1.6.の操作を行った抗体固定化毛細管の先端を浸漬し、蛍光観察を行ったところ、毛細管内の蛍光を目視確認できた。
【0098】
〔1.8.基質溶液の毛細管力による吸収による蛍光測定〕
光ファイバー方式の蛍光測定システム(日本板硝子)の光ファイバーの先端を前記4.6.の操作を行った抗体固定化毛細管の側面に保持した。これにより、毛細管を励起し、生じた蛍光を測定できる。基質溶液が毛細管力で吸収され、蛍光の増加が測定されれば、標的物質が測定されたこととなる。
基質溶液を秤量ボートに5μL滴下し、毛細管の先端を10秒間浸漬し、毛細管の蛍光を測定した。TNF−αの濃度に対して、蛍光強度の変化を示した(図13)。0pg/μL(超純水)での蛍光の増加は基質溶液中のADHPがレゾルフィンに変化したものと想定された。低濃度ではばらつきが見られ、20pg/μL以上の濃度で蛍光強度が飽和する傾向が見られるもののTNF−αの増加に応じた蛍光の増加が確認できた。
【0099】
キャピラリーELISAによって、TNF−αが800nL程度の微少量(キャピラリーの内積)で測定ができることが示せた。キャピラリー内壁で、Coating antibody、TNF−α(標的物質)、Detection antibodyのサンドイッチ構造ができれば、標的物質の測定が可能であるので、キャピラリーの内積を埋める必要はない。ストレプトアビジン-ビオチン結合で標識される酵素(POD)の作用による基質溶液中の色素前駆体の吸光や蛍光による変化を測定できれば良い。仮に、毛細管で蛍光測定を行う領域が0.5mm長とすれば、毛細管の先端に20nL程度、各溶液が採取されれば充分である。
【0100】
キャピラリーの内積を減らせば、更に微少なサンプルで測定が可能であることは明らかであり、ナノリッター量での測定も実現できる。例えば、ガラス製のキャピラリーで、内径が37μmのものが実用化されている。これを用いれば、0.5mm長で内積は0.5nL程度となり、サブナノリッター量の採取での測定も可能となる。ナノリッター量以下での測定では、一般に高感度と言われる蛍光であっても迷光等の外来ノイズ等により、色素の蛍光を有意に検出できない場合が考えられる。その場合は、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応系のような化学発光法を利用することで可能となる。
【0101】
〔1.9.フロー方式による蛍光測定〕
毛細管の末端にチューブを付け、シリンジ・ポンプにセットしたシリンジに配管すれば、吸引により、基質溶液や洗浄液をフローさせることができる。そこで、200pg/μLのTNF−αのサンプル液を用い、前記1.6.の操作を実施した抗体固定化毛細管を用い、基質溶液を5μL吸引後、洗浄のため、超純水を1mL吸引した。結果を図14に示す。
レゾルフィンの生成による蛍光が観察された後、洗浄によって、蛍光が消失することが分かる。毛細管力による吸収はポンプを用いた吸引でも可能であるので、前記1.6.の工程を含め、キャピラリーELISAの全工程をフロー方式で行うことができることが示せた。即ち、全工程をポンプ等の差圧を用いた吸引法でも実現できる。
【0102】
以上の前記1.8.と1.9.より、微少量のサンプル液中のTNF−αをできたことより、キャピラリーELISA法は健常歯肉での歯肉溝滲出液のような微少量しか滲出しない体液等のサンプルにも対応できることが示せた。TNF以外の炎症性メディエーターについても同様に検出可能と考えられる。
【0103】
〔2.システム化〕
ホルダーにより測定のプローブとなる毛細管と蛍光測定システムの光ファイバーを保持することにより、その場測定が可能となる。洗浄工程は毛細管の末端にポンプ等の吸引機構を備えることで、ELISAで必要な操作は毛細管を用いる場合でもすべて可能である。手持ちの小型化も容易に実現できる。想定される基本構成図を図15に示した。
【0104】
健常者の歯肉溝滲出液のように1歯当たり50nL/分以下しか滲出せず[参考文献2:藤田,大塚ら編「スタンダード 生化学・口腔生化学」p.294(2003,学建書院]、微少量しか採取できないサンプルを用いて、抗原抗体反応(免疫反応)を用いた検出法(ELISA法)を実現できる。
また、ELISA法のための測定システムを小型化できる。
また、サンプル採取具である毛細管の内部に反応系が設けられているので、サンプル採取量を毛細管の吸収量まで減らすことができ、サンプル採取時の時間等を減らすことができ、被験者の負担を軽減できる。
また、サンプルを別容器に移し替えることなく、サンプル採取直後に測定を行うことができるので、サンプルの変質を低減でき、移し替える場合には測定量よりも多めの採取が必要であるが、測定量だけの採取で済み、ロスを減らせる。
【0105】
また、扱うサンプルの量が微少であるため、サンプル経由による病原体等の曝露のリスクを激減できる。
また、サンプルの採取量が微少なため、採取する患部等の体液等を細かい領域に分けて採取でき、組織の微小領域毎に病態を検査できる。例えば、歯肉溝滲出液であれば、病態を示す歯肉の各部での病態を調べることができる。
また、採取後、その場で反応を行うため、短時間で結果を得ることができるので、検査と同時に治療に入れ、患者のQOLに貢献する。
【0106】
なお、本技術は、以下のような構成も取ることができる。
〔1〕 標的物質を採取する採取場と、該標的物質をトラップするトラップ用物質を固定化し、物質間の相互作用の反応を行う反応場と、を備える感応毛細管内で、採取した標的物質に対して固定化トラップ用物質にて物質間の相互作用を行い、発せられた光又は放射性情報を検出する標的物質検出方法。
〔2〕 前記固定化トラップ用物質は、毛細管内にトラップ用物質を含む溶液を吸収させて、標的物質をトラップするトラップ用物質を固定化したものである前記〔1〕記載の標的物質検出方法。
〔3〕 前記毛細管内に、標的物質を含む検体液を吸収させて、該標的物質に対して前記固定化トラップ用物質にて物質間の相互作用を行い、その後毛細管内を洗浄することと、
前記毛細管内に、光又は放射性標識をした検出用物質を含む溶液を吸収させて、該標識した検出用物質を前記標的物質と物質間の相互作用をさせることと、
前記結合した標識化検出用物質にて発せられた光又は放射性情報を検出すること、を含む前記〔1〕又は〔2〕記載の標的物質検出方法。
〔4〕 前記固定化トラップ用物質にて物質間の相互作用の反応を行った後に、前記毛細管内に、酵素で標識化した検出用物質を含む溶液を吸収させ、毛細管内を洗浄することと、
前記毛細管内に、前記酵素の基質を含む溶液を吸収させることと、
前記酵素基質が変化して生じる光情報を検出することと、を含む前記〔1〕〜〔3〕の何れか1つ記載の標的物質検出方法。
〔5〕 前記酵素基質が色素前駆体である前記〔4〕記載の標的物質検出方法。
〔6〕 前記固定化トラップ用物質及び/又は前記標識化検出用物質が、ビオチン−アビジン架橋又はビオチン−ストレプトアビジン架橋にて得られたものである前記〔1〕〜〔6〕の何れか1記載の標的物質検出方法。
〔7〕前記標的物質を含む検体液が、体液又は血液である前記〔1〕〜〔6〕のいずれか1記載の標的物質検出方法。
【0107】
〔8〕標的物質を毛細管にて採取し得る採取部と、
該標的物質と結合するトラップ用物質を固定化し、物質間の相互作用を行う感応部と、を設ける感応毛細管部を備える、標的物質検出用プローブ。
〔9〕 前記固定化トラップ用物質は、毛細管内にトラップ用物質を含む溶液を吸収させて、標的物質をトラップするトラップ用物質を固定化したものである前記〔8〕記載の標的物質検出用プローブ。
〔10〕 前記標識した検出用物質が、酵素で標識化した検出用物質である前記〔8〕又は〔9〕記載の標的物質検出用プローブ。
〔11〕 前記酵素基質が色素前駆体である前記〔8〕〜〔10〕何れか1記載の標的物質検出用プローブ。
〔12〕 前記固定化トラップ用物質及び/又は前記標識化検出用物質が、ビオチン−アビジン架橋又はビオチン−ストレプトアビジン架橋にて得られたものである前記〔8〕〜〔11〕の何れか1記載の標的物質検出用プローブ。
【0108】
〔13〕前記〔6〕〜〔12〕の何れか1記載の、着脱可能な標的物質検出用プローブと
を少なくとも備える、標的物質検出装置。
〔14〕標的物質を毛細管にて採取し得る採取部と、該標的物質をトラップするトラップ用物質を固定化し、物質間の相互作用を行う感応部とを設ける感応毛細管部を備える、着脱可能な標的物質検出用プローブと、
前記標的物質検出用プローブの前記感応部に対して、光を照射する光照射部と、
前記光照射部による光照射によって、前記感応部中からの光情報を検出する光検出部と、を少なくとも備える、標的物質検出装置。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本技術によれば、標的物質を、リアルタイムかつ高精度に、そして、非侵襲的に測定することが可能である。この技術を用いることで、医療分野(病理学、腫瘍免疫学、移植学、遺伝学、再生医学、化学療法など)、創薬分野、臨床検査分野、食品分野、農業分野、工学分野、法医学分野、犯罪鑑識分野、など様々な分野における分析・解析技術の向上に貢献することができる。
また、本技術は、被験者の負担を軽減でき、サンプル経由による病原体等の曝露のリスクも激減させることができる。本技術は、組織の微小領域毎に病態を検査することができ、また検査と同時に治療に入れ、患者のQOLに貢献することができる。よって、本技術は、幅広い分野に貢献することができるが、特に医療分野等の発展に貢献することができる。
また、本技術は、ELISA法のための測定システムを小型化することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 標的物質検出用プローブ;10 標的物質検出装置;11 感応毛細管部;12 感応部;13 採取部;14 支持部;15 光測定ホルダー;16 光測定システム;17 光導波路;2 固定物;T 固定化トラップ用物質;TA トラップ用物質;X 標的物質;YA 検出用物質;M 標識;C 架橋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的物質を採取する採取場と、該標的物質をトラップするトラップ用物質を固定化し、物質間の相互作用を行う反応場と、を備える感応毛細管内で、
採取した標的物質に対して固定化トラップ用物質にて物質間の相互作用を行い、発せられた光又は放射性情報を検出する標的物質検出方法。
【請求項2】
前記固定化トラップ用物質は、毛細管内にトラップ用物質を含む溶液を吸収させて、標的物質をトラップするトラップ用物質を固定化したものである請求項1記載の標的物質検出方法。
【請求項3】
前記毛細管内に、標的物質を含む検体液を吸収させて、該標的物質に対して前記固定化トラップ用物質にて物質間の相互作用を行い、その後毛細管内を洗浄することと、
前記毛細管内に、光又は放射性標識をした検出用物質を含む溶液を吸収させて、該標識した検出用物質を前記標的物質と物質間の相互作用をさせることと、
前記結合した標識化検出用物質にて発せられた光又は放射性情報を検出すること、を含む請求項1記載の標的物質検出方法。
【請求項4】
前記固定化トラップ用物質にて物質間の相互作用の反応を行った後に、前記毛細管内に、酵素で標識化した検出用物質を含む溶液を吸収させ、毛細管内を洗浄することと、
前記毛細管内に、前記酵素の基質を含む溶液を吸収させることと、
前記酵素基質が変化して生じる光情報を検出することと、を含む請求項3記載の標的物質検出方法。
【請求項5】
前記酵素基質が色素前駆体である請求項4記載の標的物質検出方法。
【請求項6】
前記固定化トラップ用物質及び/又は前記標識化検出用物質が、ビオチン−アビジン架橋又はビオチン−ストレプトアビジン架橋にて得られたものである請求項4記載の標的物質検出方法。
【請求項7】
前記標的物質を含む検体液が、体液又は血液である請求項4記載の標的物質検出方法。
【請求項8】
標的物質を毛細管にて採取し得る採取部と、
該標的物質と結合するトラップ用物質を固定化し、物質間の相互作用を行う感応部と、を設ける感応毛細管部を備える、標的物質検出用プローブ。
【請求項9】
標的物質を毛細管にて採取し得る採取部と、該標的物質をトラップするトラップ用物質を固定化し、物質間の相互作用を行う感応部とを設ける感応毛細管部を備える、着脱可能な標的物質検出用プローブと、
前記標的物質検出用プローブの前記感応部に対して、光を照射する光照射部と、
前記光照射部による光照射によって、前記感応部中からの光情報を検出する光検出部と、を少なくとも備える、標的物質検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−76642(P2013−76642A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216899(P2011−216899)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】