説明

標的細菌またはその標的糖質抗原成分の存在を検出する方法

【課題】糖質抗原を有することにより特徴付けられる細菌によって引き起こされる細菌感染の、感受性および特異性の高い、迅速および正確な診断方法を提供する。
【解決手段】以下の段階を含む液体試料中におけるインフルエンザ菌の検出方法:(a)液体試料を多孔性試験用細片に加える段階;ここで前記細片は流体流路を形成し、(b)前記試料を、試験用細片の流路に沿って横方向に流す段階;及び(c)液体試料中のインフルエンザ菌の標的糖質抗原の存在下で、インフルエンザ菌の存在を示唆する抗原に結合された結合剤の一つを含む複合体と結合する段階。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の詳細な説明)
本出願は、本出願の全てにおいて割り当てられた権利を有するバイナックス(Binax,Inc)社にその全てが割り当てられた、以下の米国特許出願の各々の一部継続出願である。
(1)1998年8月25日に出願された、米国特許出願第09/139,720号
(2)その一部継続出願を優先して現在放棄されている、1998年9月16日に出願された、米国特許出願第09/156,486号、
(3)1999年9月16日に出願された、米国特許出願第09/397,110号、
(4)米国特許出願第09/139,720号の一部継続出願として1999年12月10日に出願された、米国特許出願第09/458,998号。
【背景技術】
【0002】
発明の序論
本発明は、糖質抗原を有することにより特徴付けられる細菌によって引き起こされる細菌感染の、感受性および特異性の高い、迅速および正確な診断を達成することに関連する。特に、本発明は、そのような糖質抗原を本質的にタンパク質を含まない状態にまで初期精製し、続いてそのように精製された各糖質抗原を、該抗原に対する未処理の多価抗体をアフィニティー精製するために使用し、そのように精製された該抗体を、元の細菌の存在を検出するために、正確性、特異性および感受性の高い診断試験において使用することに関わる。
【0003】
本発明は、グラム染色に陽性または陰性であり得る、糖質抗原を有する細菌に適用できる。本発明に従って生産される精製抗体は、市販のモノクローナル抗体と少なくとも同じ程度の特異性および感受性をもつものであり、多くのそのようなモノクローナル抗体よりも生産および取り扱いが容易である。それらは、扱いにくい方法論を用いて、これまでは迅速および正確に同定することが困難であったため、それらが引き起こす細菌性疾患の診断が得られるのがしばしば遅れかつ難しかったような細菌を同定するため、例えばICT免疫学的検定法による、迅速な診断試験のための広い機会を提供する。
【0004】
上記に同定された各親出願は、その開示が本質的に、参照として本明細書に組み入れられる3つの出願に含まれる、その一部継続出願の米国特許出願第09/397,110号の中に完全に示されている、現在放棄されている米国特許出願第09/156,486号を例外として、参照として本明細書に組み入れられる。
【0005】
発明の背景
グラム陰性菌は、少なくとも1つのリポ多糖抗原または他のリポポリ糖質抗原を共通にもつ一方、グラム陽性菌は、リポテイコ酸またはテイコ酸またはそのいずれかの誘導体である、少なくとも1つの糖質抗原をもつ共通の特徴があることが知られている。グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両者の幾つかはまた、莢膜抗原である糖質抗原をも有する。即ち、これらの抗原は各々、その天然の状態において厚い莢膜層に封入されている。この莢膜層は、ほとんどの細菌の細菌細胞壁を取り囲む粘液様の物質を構成する。
【0006】
その全容を参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/139,720号では、その全てがグラム陽性であるレジオネラ(Legionella)種の細菌のリポ糖質抗原を、本質的にタンパク質を含まない状態にまで精製することについて説明している。そこでは、限定はしないが、本質的にタンパク質を含まない状態まで精製することについて詳細を説明しているレジオネラ・ニューモフィラ菌血清型1のO−多糖抗原を含む、レジオネラ・ニューモフィラ菌(Legionella pneumophila)各血清型の糖質抗原の精製について強調されている。
【0007】
本出願は、レジオネラ・ニューモフィラ菌血清型1(この血清型が、レジオネラ属が原因で生じる肺炎様疾患の約70%の病原生物であることが知られている)の、本質的にタンパク質を含まないO−糖質抗原が、説明されるようにアフィニティーカラムに(スペーサー分子によって)結合され、未精製の抗原に対する未処理のポリクローナル抗体が説明されるようにカラムに通され、その結果生じる精製抗体は抗原特異性が高く、レジオネラ・ニューモフィラ菌血清型1により引き起こされる疾患をもつ患者から得た体液中に同じ抗原が存在する場合、それを容易に同定することを示す。この診断のためには尿が好ましい体液であることが示される。なぜならば:
(1)レジオネラ・ニューモフィラ菌血清型1抗原は、疾患状態の早期に尿中に現れ、適切な治療を開始した後でさえも数日間残存する;
(2)試験用試料の採集は非侵襲的かつ簡単であり、患者には最小限の負担を生じ、および特別に訓練を受けた職員または特別に設計された機器を必要としない;および
(3)例えば痰由来の試料は、試料を得ることまたは培養することの困難、患者の鼻または咽喉において慢性的に存在するが、疾患の原因ではない細菌コロニーの潜在的な存在、および他の同様な困難によって、偽陰性または偽陽性の結果を与える可能性があるからである。
【0008】
尿中に存在するレジオネラ・ニューモフィラ菌血清型1 細菌は死んでおり、腎臓を通過しているため、少なくとも部分的にその細胞壁が破壊されている;ゆえに、抗原は、ICT試験用細片上の2つの区域に沈積された抗原特異的な抗体が容易に近づき得る状態にある。
【0009】
水溶性培地からなる環境的試料中の生きた細菌の、全部、およびある程度までの同定における、米国特許出願第09/139,720号にて説明された抗原特異的な抗体の有効性は、特異性および感受性の高い酵素免疫学的検定法について説明される、同様に参照として本明細書に組み入れられる一部継続出願である米国特許出願第09/458,988号においてさらに示される。本アッセイ法は、親出願において詳細を説明されるように、未処理のポリクローナル抗体の精製によって得られた抗原特異的な抗体を、抗原についての検出試薬として使用することに基づく。そのように精製された抗体の感受性および特異性は、酵素免疫学的検定法により有益な結果を生じた時間の短さによって、並びに長いインキュベーション時間(1時間)によるものと等しく有益な時間結果を与えた抗原特異的な抗体の濃度の低さ(試験毎に0.05μg)によって、部分的に示される。
【0010】
同様に参照として本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/397,110号は、全ての肺炎連鎖球菌(S.pneumoniae)血清型の肺炎球菌の細胞壁において存在するC−多糖細胞壁抗原を、本質的にタンパク質を含まない状態まで精製することについて説明する。この抗原は、テイコ酸由来のホスホコリンを含む多糖である。肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)の菌株は全てグラム染色陽性である。
【0011】
本質的にタンパク質を含まない抗原(その重量パーセントで約10%未満を含む)を、スペーサー分子に共有結合し、それを次にアフィニティーカラムに共有結合し、そのように調製されたカラムをその後、肺炎連鎖球菌に対する未処理のポリクローナル抗体を精製するために使用する。その結果生じる抗原特異的な精製抗体は、特に尿を含む体液中の肺炎連鎖球菌を同定するためのICT試験において、高い感受性および特異性を示した。
【0012】
探索される特異的な細菌の存在を調べる、ELISA法、対向免疫電気泳動および/またはラテックス凝集試験を含む種々の試験において、下気道の疾患の原因であると考えられる様々な感染性のグラム陰性菌またはグラム陽性菌の糖質抗原に対する未処理の多価抗体、またはそのような抗原に対するモノクローナル抗体を使用するために、数多の様々な取組みが過去になされてきた。試験の幾つかはある場合においては有用であったが、それらのいずれも、細胞培養試験に依存せずに用いるのに臨床的に十分許容できる信頼性をこれまでは得なかった。細胞培養試験の欠点およびそれらのあいまいな信頼性については当技術分野において広く報告されており、親出願である米国特許出願第09/139,720号および同第09/397,110号において議論されている。
【0013】
親出願である米国特許出願第09/139,720号にて最初に説明されたレジオネラ・ニューモフィラ菌血清群1のICT試験、および、親出願である米国特許出願第09/397,110号およびその親出願の米国特許出願第09/156,786号の主題である、肺炎連鎖球菌のICT試験について、米国食品医薬品局(「FDA」)の承認を得るため、これらの出願の受託者であるバイナックス社(Binax, Inc)には、各々についての大規模臨床試験を実施することが必要であった。これらの臨床試験の多くは、参照として本明細書に組み入れられる2つの親出願において説明されている。臨床試験についての重要な点の1つは、FDAの規制により、診断試験が既知の試験からの、および商業的な使用において、実質的な科学的および技術的発展を示すと認められる場合にのみ、診断試験の大規模臨床試験を要求されるということである。これら2つの試験の各々の感受性および特異性は、親出願において示されるものよりはるかに高いと考えられる。その理由は、示される数値は、これらの臨床試験結果を、以前から使用可能であった異なるアッセイ法または同定技術(細胞培養試験等)を用いて、同じ臨床試料について平行して得られる結果と比較することに基づいており、過去に使用可能であった試験法は、それらが関連細菌またはその抗原成分の検出のために使用可能な最良の同定法であると考えられていた場合でさえ、信頼性があいまいであることが知られていたからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願第09/397,110号
【特許文献2】米国特許出願第09/156,486号
【特許文献3】米国特許出願第09/139,720号
【特許文献4】米国特許出願第09/458,988号
【特許文献5】米国特許出願第09/156,786号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
要するに本発明は、対応する細菌に感染した患者のヒト体液、特に尿に抗原が現れる、糖質抗原を有する広域スペクトルの細菌について、特異性および感受性の高い、迅速な診断試験を提供する機会を与える。
【0016】
発明の簡単な説明
本発明は、液体、特にヒトまたは他の哺乳動物の体液、および特に尿中の、細菌の糖質抗原の存在を検出するための、特別に精製された、抗原特異性の高い新規の抗体に関する。
【0017】
これらの抗体は、標的糖質抗原に対する未処理の多価抗体から、以下を含む方法によって調製される:
(a)本質的にタンパク質を含まない抗原、即ち、約10パーセントを超えないタンパク質を含む抗原を得るため、未処理の標的抗原を精製する段階、
(b)そのように精製された抗原を、共有結合によってスペーサー分子に結合する段階、
(c)スペーサー分子の遊離末端を、クロマトグラフィーカラムに充填したアフィニティーゲルに共有結合する段階、
(d)未処理の抗原に対する未処理の多価抗体を、カラムのゲルに通す段階、および
(e)精製抗体を溶出する段階。
【0018】
アフィニティーゲルから溶出された精製抗体は、特異性、感受性および正確性が高く、液体媒質、特に哺乳動物の体液、および特に尿において未処理の標的抗原を検出するために、特定的に開発された様々な免疫学的検定法の任意のものにおいて使用できる。
【0019】
レジオネラ属の細菌のポリ糖質抗原、および特にレジオネラ・ニューモフィラ菌血清群1のO−多糖抗原を検出するための好ましいICT法は、親出願の米国特許出願第09/139,720号において説明されている一方、米国特許出願第09/156,486号、および同第09/397,110号では、肺炎連鎖球菌の全ての血清型に存在するC−多糖細胞壁抗原を検出するための、類似した好ましいICT法について説明している。
【0020】
インフルエンザb型菌の莢膜多糖抗原を検出するための同様のICT法については、本明細書において詳細を説明される。
【0021】
グラム陰性菌において典型的に認められるリポポリ糖質抗原、グラム陽性菌において典型的に認められるリポテイコ酸もしくはテイコ酸またはその誘導体を含む抗原、およびグラム陽性型およびグラム陰性型の両方の、多くの細菌の細胞壁を取り囲む厚い粘液様莢膜において頻繁に認められる莢膜ポリ糖質抗原を、本節の第二段落において説明される、糖質抗原に対する未処理のポリクローナル抗体を精製するための図式に従って得られるような、抗原特異的な抗体を検出試薬として用いる、迅速かつ特異性および感受性の高いICT型の免疫学的検定法によって全て検出できるということは、これまでは認められていなかった。細菌の糖質抗原に対する未処理の多価抗体を、本質的にタンパク質を含まない、精製した標的細菌の糖質抗原を用いたアフィニティー精製を受けさせることによって、抗原特異性および感受性の高いものに変えられるという事実もまた、これまでは評価されていなかった。同様に、グラム陰性菌およびグラム陽性菌の両方に由来する、および/または両型の細菌を取り囲む莢膜層に由来する糖質抗原を全て精製でき、抗原特異的な抗体を得るため、そのような抗原に対する抗体のアフィニティー精製に使用できるという事実は、これまでは認められておらず、そのような抗原特異的な抗体を検出試薬として使用して、細菌の糖質抗原が高い正確性、感受性および特異性をもって迅速に検出できることは評価されていなかった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1およびその関連図1A、1Bおよび1Cは、本発明に従って細菌の糖質抗原についてのアッセイ法を実施する際に好ましい型の、典型的なICT装置を示す。
【図1A】図1Aは、本発明に従って細菌の糖質抗原についてのアッセイ法を実施する際に好ましい型の、典型的なICT装置を示す。
【図1B】図1Bは、本発明に従って細菌の糖質抗原についてのアッセイ法を実施する際に好ましい型の、典型的なICT装置を示す。
【図1C】図1Cは、本発明に従って細菌の糖質抗原についてのアッセイ法を実施する際に好ましい型の、典型的なICT装置を示す。
【図2】図2は、グラフであり、図2では本発明の抗原特異的な精製抗体が、その抗体を生じさせたインフルエンザb型菌以外の血清型を検出する検出能を示すグラフである。
【図3】図3は、インフルエンザb型菌の抗原特異的な精製抗体が、インフルエンザ菌a型、c型、d型もしくはf型の抗原に対しては、交叉反応性がなかったことを示している。
【図4】図4は、インフルエンザb型菌の抗原特異的な精製抗体が、非典型的なインフルエンザ菌NT1、NT2、NT3もしくはNT4の任意のもの、またはパラインフルエンザ菌(H. para−influenzae)に対しては、交叉反応性がなかったことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、細菌感染の検出法における著しい進歩を示すものである。
【0024】
既知の全ての型の細菌の糖質抗原、即ち、リポ多糖類、抗原性リポテイコ酸およびテイコ酸およびそれらの抗原性誘導体を含むリポポリ糖質抗原、および多糖類を含む莢膜ポリ糖質抗原を、哺乳動物の体液において検出することに適用できるため、およびこれまで考えられなかった、細菌感染の検出への一体化したアプローチを表すため、本発明により、疾患状態において患者の体液中に現れる糖質抗原を細菌が有する場合には、実質的に、その細菌が原因となる任意の疾患の迅速な診断を可能にすることが期待できる。
【0025】
特に重要なのは、本発明が、特定の細菌によって引き起こされる疾患がある群内において、例えば学校または老人センターの中のような小さい限られた群、または例えば町、市もしくはさらに大きな地域のような広範な集団のいずれかにおいて、流行していると考えられる状況において、迅速な診断および適切な治療の迅速な導入を与える機会である。
【0026】
概して、本発明の好ましい免疫クロマトグラフィー法(「ICT」)アッセイ法は、当技術分野において開示されている任意の既知の使い捨てICT装置において実行されるように設計および構成できる。それは好ましくは、ヒト呼吸器系疾患の診断を含む使用分野の広い領域において、その全てがスミス−クライン・ダイアグノスティックス社(Smith−Kline Diagnostics,Inc)に委託されるがバイナックス社(Binax,Inc)に独占的に認可される(本出願の割り当てられた権利を与えられる)、同時係属中のハワード・チャンドラー(Howard Chandler)の米国特許出願第07/706,639号、またはその一部継続出願の1つにおいて開示される型のICT装置を用いて、実行されるように設計され、かつ実行される。
【0027】
好ましい装置は、そのある区域において、疾患の原因と疑われる細菌の標的糖質抗原に対する抗原特異性の高い、アフィニティー精製した抗体を適切に充填される。標識した抗原特異的な抗体を、装置の別の部分に装填する。最初に、細菌を含むと疑われる試験用試料を標識した抗原特異的抗体と接触させ、その後、それらを共に、結合した抗原特異的な非標識抗体を含む装置の部分に流し、疑われる細菌に固有の標的抗原が試料中に存在する場合、既に形成された標識抗体:標的糖質抗原の結合体は、固定化した抗原特異的な非標識抗体との接触によって結合し、見た目に明らかな呈色反応が生じる。標識は、標識抗体:抗原複合体が結合した非標識抗体と反応する際に目に見える呈色を生じさせるような、当技術分野において既知の任意の物質であってもよい。そのような標識は、細かく分割された様々な金属、様々な有機分子、および他の呈色分子と酵素の組み合わせのような、様々な分子の組み合わせを含む。本発明においては、金コロイド粒子が好ましい標識となる。
【0028】
試料捕捉ラインにおいて、試験用試料を接触させた際に、試験用試料に存在する抗原が抗原特異的な標識抗体に捕捉されること、および、抗原特異的な標識抗体:抗原結合体が、結合した抗体によって容易に捕捉および保持されることを確実にする、十分な反応が起こるような、試験装置の2つの部位の各々にて存在する抗原特異的な抗体の濃度が、好ましい試験装置の設計においては非常に重要である。本発明に関連して行われた実験的研究により、標的糖質抗原に対して活性のある抗原特異的な抗体は、抗原:抗体反応が起こる試験装置の各部位において、表面積当たり7.7ng/mm〜385ng/mmの間の濃度で存在しなければならないことが示された。反応を生じさせる部位において、7.7ng/mmより低い抗原特異的な抗体濃度が存在する場合、偽陰性の結果が生じる可能性が高い。
【0029】
当技術分野において既知のように、感染性細菌はしばしば複数の抗原成分を有する。例えば、肺炎連鎖球菌は、親出願である米国特許出願第09/156,486号および同第09/397,110号において説明されたアッセイ法の標的である多糖細胞壁抗原に加えて、莢膜抗原をもつことが知られている。後者の抗原は、抗原が肺炎連鎖球菌の全ての既知の血清型に存在するため、かつ本明細書に組み入れられる米国特許出願第09/397,110号にて説明されるように、その比較的低い交叉反応が、肺炎連鎖球菌によって引き起こされる感染を他の感染から迅速に臨床的に識別させる性質のものであるため、これらの出願にて説明された、現在FDAの認可されている試験のための標的抗原として選択された。体液中の肺炎連鎖球菌を検出するための、以前に公表された試みでは、最良でも、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の双方を用いて60〜70%の範囲、つまり信頼性の高い診断のためには許容できない範囲の感受性および特異性をもつ系しか与えられなかったことが注目される。
【0030】
各々説明され、かつFDAに承認を受けた、レジオネラ・ニューモフィラ菌血清群1および肺炎連鎖球菌についてのICT試験を用いた、進行中の臨床研究において、標的糖質抗原が都合良く検出されることが示された哺乳動物の体液には、好ましい尿に加え、痰、鼻咽頭滲出液、中耳液および脳脊髄液がある。これらの試験により、糖質標的抗原が存在する場合にそれが検出される、その他の体液には、血液および気管支液が含まれる。
【0031】
任意の特定の細菌についての標的糖質抗原の選択は、それがある細菌の菌株の全てまたはほとんどの血清型に存在することが知られているかどうか、もし特定の血清型に特有な場合は、その血清型がその細菌によって引き起こされる疾患の最も一般的な原因であることが分かっているかどうか、および同様の問題点について、その抗原の交叉反応特性を考慮することに必然的に基づく。
【0032】
本発明は、既に言及された型の糖質抗原、即ち、リポポリ糖質抗原、リポテイコ酸またはテイコ酸およびそのいずれかの誘導体を含む抗原、および莢膜糖質抗原の、1つまたはそれ以上をもつ任意の細菌によって引き起こされる細菌感染の、迅速な診断に関して独特の潜在能力を提供する。細菌のうち、その糖質標的抗原が本発明の範囲内であると考えられるものは、様々な型のインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、緑膿菌(Pseudomonas aereiginosa)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、モラクセラ カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、髄膜炎菌(Neisseria Meningitidis)、B群連鎖球菌属(Streptococci)、大腸菌(Escherichia coli)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、大腸菌属(Escherichia)のその他の種、特定的に名前を挙げられていないクレブシエラ属(Klebsiella)およびシュードモナス属(Pseudomonas)、プロテウス ミラビリス(Proteus mirabilis)、ガードネレラ ワギナーリス(Gardnerella vaginalis)、レイ菌(Serratia marcescens)、特定的に名前を挙げられていないプロテウス属(Proteus)およびリステリア属(Listeria)の様々な他の種、エンテロバクター属(Enterobacter)、ザントモナス属(Xanthomonas)、腸球菌(Enterococcus)、バクテロイデス属(Bacteroides)、クロストリジウム属(Clostridium)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)、カンピロバクター属(Campylobacter)、サルモネラ属(Salmonella)およびアルカリゲネス属(Alcaligenes)の様々な種、および説明される型の1つまたはそれ以上の糖質抗原をもつ、特定的に名前を挙げられていないあらゆる他の細菌種および菌株である。
【0033】
本発明の技術により精製されるポリクローナル抗体は、例えばウサギまたはヤギのような動物個体に、目的とするアッセイ法の粗製標的抗原を注射することによる、従来法によって得られる。好ましくは抗原調製物は、動物個体への注射の前に加熱処理し、細胞を殺す。適切な時間経過を経た後、望ましい抗体を含む血清を得るため、動物個体から採血し、続いて抗体を精製する。この血清は、IgG粗精製分画を生じるために、例えば硫酸アンモニウムまたはイオン交換樹脂を用いた中間精製段階を経ることができる、または直接精製することができる。
【0034】
アフィニティー精製のため、動物個体を免疫化するために使用したものと同じ粗製標的糖質抗原を培養において増殖させ、その後本質的にタンパク質を含まない状態になるまで適切に精製する。本明細書において使用されるような「本質的にタンパク質を含まない状態」という表現は、約10%(重量パーセント)を超えない、および好ましくはそれ未満のタンパク質を含む状態を意味する。
【0035】
本質的にタンパク質を含まない状態になるまで抗原を精製した後、それをスペーサー分子に共有結合により結合させる。適したスペーサー分子の例には、ヒドラジン、ウシ血清アルブミン(「BSA」)、BSAおよびヒドラジンの結合体、および、アフィニティーゲルに共有結合できるもう一方の反応性末端を維持しながら、ある末端において精製糖質抗原に共有結合できる同様の分子が含まれる。
【0036】
精製糖質抗原:スペーサー分子結合体は、次にアフィニティーゲルに連結され、ゲルは、事前に免疫化した動物個体からの採血によって得られる血清中の未処理の多価抗体、またはそのIgG粗精製分画の精製に使用される。未処理の抗体(またはそのIgG粗精製分画)は、アフィニティーゲルに複数回流され、精製された、抗原特異性の高い抗体としてそこから溶出される。
【0037】
以下の実施例は、その精製に用いられる莢膜糖質抗原の予備的分離および精製を含む、インフルエンザb型菌に対する抗体のアフィニティー精製の好ましい仕方を示す。これらの分離および精製の段階を達成するための多くの方法は、文献において知られており、本明細書において述べられるように、得られる精製抗原が本質的にタンパク質を含まない限り、本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書において説明されるものに置き換えられる。
【0038】
実施例1−標的糖質抗原の培養のための培養条件
インフルエンザb型菌(ATCC番号#10211)を、栄養分を補足したミュラーヒントン(Mueller Hinton)ブロスにおいて、37℃、5%COにて、撹拌せずに24時間増殖させた。
【0039】
1L当たりのブロス組成は以下のようであった:
カゼインの酸水解物 17.5g
ウシ心臓抽出物 3.0g
デンプン 1.5g
以下のような栄養分も含まれた:
ヘマチン 15mg/ml
NAD(ニコチンアデニンジヌクレオチド)15mg/ml
酵母抽出物 5mg/ml
本混合物のpHは、25℃にて測定して7.3±0.1であった。
【0040】
実施例2−糖質抗原の精製
24時間後、1.82gの臭化セチルトリメチルアンモニウムCAS#57−09−0を30mlの蒸留水中で溶解し、500mlのブロスの上清に溶液を加え、最終濃度0.01Mの臭化セチルトリメチルアンモニウムを生じた。氷浴において撹拌しながら混合物を1時間インキュベートし、4℃において一晩インキュベートした。
【0041】
実施例1により得られた混合物を、12,000rpmおよび4℃にて20分間遠心分離し、ペレットおよび上清を得た。双方を以下のように各々採集および処理した:(1)0.5MのNaClにペレットを超音波で破砕しながら再懸濁し、その後4℃、再懸濁液の10倍量のエタノールにおいて滴下沈降を行った。その結果得られた溶液を、4℃にて一晩保存し、沈降させた。
【0042】
溶液をその後、12,000rpmにおいて20分間遠心分離した。ペレットを蒸留水に溶解し、その後3,500の分子量カットオフ値をもつ透析チューブにおいて、蒸留水に対して透析した。
【0043】
(2)実施例1の混合物から得た上清を4℃において一晩保存し、その後沈降物が形成されたことを記録した。これを保持する容器の内容物の全てを12,000rpmにて20分間遠心分離した。ペレットを回収し、0.5MのNaClに超音波で破砕しながら再懸濁した。その結果得られた溶液を、4℃、再懸濁液の10倍量のエタノールにおいて滴下沈降した。溶液を4℃にて一晩保存し、沈降物を再度形成させた。溶液および沈降物を12,000rpmにて20分間遠心分離し、ペレットを回収した。蒸留水にペレットを溶解し、3,500の分子量カットオフ値をもつ透析チューブにおいて蒸留水に対して透析した。
【0044】
その後、上記の(1)および(2)からの、透析した溶液をプールし、凍結乾燥した。90mgのインフルエンザb型菌多糖抗原が得られた。
【0045】
5.3μg/mlの濃度のこの抗原の溶液を調製し、タンパク質についてローリー法を行い、5%(重量パーセント)のタンパク質を含むことが認められた。溶液はまた、フェノール−硫酸法によって糖質について試験し、36%(重量パーセント)を含むことが認められた。ELISA法およびSDS−PAGE−免疫ブロット法の両方により、活性について溶液を試験し、必要な活性をもつことが認められた。
【0046】
実施例3−アフィニティーカラムの調製
5mgの凍結乾燥したインフルエンザb型菌多糖抗原を、4.52mlの蒸留水に溶解し、HClでpHを5〜6に調整した;pH 5〜6、15.64mgのウシ血清アルブミン−ヒドラジン結合体をその後加え、続いて3分間混合した。
【0047】
2.6μgの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(「EDAC」)を、100μlの蒸留水中に溶解した。50μlのこの溶液を、抗原/BSA−ヒドラジン結合体溶液に加え、続いて3分間混合した。EDAC平衡溶液をその後この混合物に加え、続いて室温にて2時間混合した。その後NaOHを用いてpHを8に調整し、室温にて1時間混合し、引き続き4℃において一晩保存した。
【0048】
翌日、保存した混合物のpHをHClを用いて7に調整し、一部をELISA試験に供し、その活性を確認した。
【0049】
2.12mgのEDAC処理した抗原/BSAヒドラジン結合体を、2.4gの洗浄したSpherilose(商標)ゲルと混合し、その結果生じた混合物を室温にて2時間、上から下まで混合する条件下でインキュベートした。33.6mgのシアノ水素化ホウ素ナトリウムをその後、480μlの溶解水にて溶解し、この溶液の半分を、抗原/BSAヒドラジン結合体/Spherilose(商標)ゲル混合物に加えた。その結果生じた混合物を、室温にて3.5時間、上から下まで混合する条件下でインキュベートした。結合した抗原/BSAヒドラジン/Spherilose(商標)ゲルを分離し、20倍量の蒸留水で洗浄し、続いてpH 7、4.8mlの0.2M トリス(Tris)−HClブロック緩衝液において再懸濁した。上述のシアノ水素化ホウ素ナトリウム溶液の残りの240μlを懸濁液に加え、この混合物を室温にて1時間、その後4℃にて一晩、上から下まで混合する条件下で通してインキュベートした。
【0050】
結合し、ブロックされたゲルを分離し、続いて擬似抗体の精製を模倣するために、20〜30倍量の蒸留水、pH 7.2の3倍強リン酸緩衝生理食塩水、pH 9.2の標準強リン酸緩衝生理食塩水およびリン酸緩衝生理食塩水に溶解したpH 7.5の3M チオシアン酸ナトリウムで洗浄し、アフィニティーカラムに充填した。
【0051】
実施例4−インフルエンザb型菌抗体の精製
ウサギ−α−インフルエンザb型菌血清に対し、最終濃度0.5M NaCl となるまでNaClを加え、血清中に溶解した。混合物を5,000×Gにて20分間遠心分離し、脱脂綿を通してろ過した。実施例3より得られたアフィニティーゲルを標準強のリン酸緩衝生理食塩水を用いて平衡化し、このゲルに血清ろ過物を4回アプライした。その後ゲルを3倍強のリン酸緩衝生理食塩水、続いて標準強のリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、結合していない血清成分を除去した。
【0052】
その後、リン酸緩衝生理食塩水に溶解した3Mのチオシアン酸ナトリウム(pH=7.5)、続いて蒸留水に溶解した3Mのチオシアン酸ナトリウム(pH 5〜6)を用いて、抗体をゲルから溶出した。回収された精製抗体を、pH 7.2の標準強リン酸緩衝生理食塩水において透析した。
【0053】
実施例5−インフルエンザb型菌についてのICTアッセイ法
A.試験装置の準備
試験結果および対照結果の両方を見ることができる観察窓を備えた、蝶番のついた厚紙の構造物を含む試験装置を、図1にて示されるように用意した。装置には、その右側部分に、試料で湿らせたスワブを受け取るために、事前に形成されたプラスチックのスワブウェルが置かれる凹所がある(図面においては1と称される)。図1Aにて示される上部ラベルをその後、装置の右側部分の全体に被せ置く。上部ラベルには2つの穴が備えられ、下の穴(図1AにおいてはBと示される)には、浸されたスワブが挿入され、上の穴(図1AにおいてはAと示される)には、穴Bへのその挿入後にスワブが押し込まれる。穴AおよびBをもつ上部ラベルの配置およびスワブウェルにより、アッセイの間中スワブは適切な位置に保持され、吸収された試験用試料液のスワブからの排出が促進される。
【0054】
下記に説明される、事前に組み立てた試験用細片(図1においてはCと示される)を、左側部分にある凹所(図1においては2と示される)に挿入し、その底部に塗られた接着剤により、決まった場所に保持する。図1Bに示される上部ラベルは左側部分の上に置く。それには、アッセイ法の実行のために装置が閉じられる際には右側部分の穴Aに一致するような、1つの穴(図1BにおいてはDと示される)が開けられている。
【0055】
組み立てられた装置を、乾燥剤を入れて密封した袋において、使用するまで保管する。袋を密封し保管する前に、装置の右半分の外側の縁に弱い粘着テープを配置する。
【0056】
B.試験用細片の調製および構成
図1Cにて示されるように、アッセイのための試験用細片は、金の粒子およびアフィニティー精製したウサギ抗インフルエンザ菌B抗体の結合体を充填した、吸収性材料のパッドからなる。使用においては、この結合体は、液体の試験用試料と接触させることにより、流動可能なように変えられる。金結合体と反応させた試料についての捕捉ラインが、アフィニティー精製したウサギ抗インフルエンザ菌B抗体をそこに埋め込むことによりその上で確立されているようなニトロセルロースパッドと、結合体パッドを接触させる。ニトロセルロースパッドはまた、ヤギ抗ウサギ免疫グロブリン(IgG)によってパッドにすじをつけることにより確立された、下流の対照ラインをも含む。ニトロセルロースパッドを通した後、液体の貯水槽としての役割を担う吸収パッドにまで試料残渣を流す。
【0057】
結合体パッドは不織ポリエステルまたは押出成形されたセルロースアセテートが可能である。本アッセイ法における使用のためのパッドの調製においては、「免疫化学;最新の方法および適用(Immunochemistry;Modern Methods and Application)」(J.M.PolakおよびS.Van Norden編、Wright社、Bristol、England、1986)中の、デメイ(DeMay)の「金プローブの調製および使用(The Preparation and Use of Gold Probes)」の方法、またはその他の様々な既知の任意の方法に従い、アフィニティー精製した抗インフルエンザ菌B抗体に直径45 nmの金の粒子を連結する。アフィニティー精製は、好ましくは上記に説明されるように行う。「酵素免疫学的検定法の実践および理論(Practice and Theory of Enzyme Immunoassays)」(R.H.BurdenおよびP.H. Van Knippedberg編、Elsevier、New York(1985))に含まれる、ティセン(P.Tyssen)の「免疫グロブリンまたは抗体の親和性クロマトグラフィー(Affinity chromatography of Immunoglobulins or Antibodies)」も参照のこと。様々な既知のアフィニティー精製法の任意のものは、本発明から逸脱することなく、好ましい方法に置き換えられる。
【0058】
金結合体粒子を乾燥剤と混合し、結合体パッドに包埋する。使用される乾燥剤は、1.0%のウシ血清アルブミン、0.1%のトライトン(Triton)X−100、2.0%のトゥイーン(Tween)20、8.0%のスクロース、および0.02%のアジ化ナトリウムを含む、pH 8.0の5mMの水溶性ホウ酸ナトリウムである。パッドを十分に加熱し、存在する全ての液体を除去し、試験装置の組み立ての間湿度の低い環境において保存する。乾燥した結合体を保持し、試料で湿らされた場合にそれを解離するように、これらのパッドは特別に選択される。
【0059】
ニトロセルロースパッドは、アフィニティー精製した抗インフルエンザb型菌抗体をパッドの第一部分に個別に包埋することにより、最初に処理される。これらの抗体は捕捉ラインとして作用する。対照ラインは、ヤギ抗ウサギIgGでパッド表面上にすじをつけることにより確立される。ニトロセルロースパッド上にすじをつけられたそれらのラインについては、5%のメタノールおよび0.102%のイントラホワイト(Intrawhite)色素を含む、pH 7.4の5mM リン酸ナトリウムからなる溶液を、抗体の担体液体として使用する。ニトロセルロースパッドをその後、それに対する永続的なタンパク質の吸収を促進するため、18〜25℃の温度で乾燥させる。
【0060】
使用される吸収パッドは、アールストローム(Ahlstrom)243のように、商品として販売される、セルロース誘導体材料のものである。それには特別な処理は不要である。試験装置を顧客への配送のために構成する場合、全てのパッドを図1Cにて示される順に粘着性細片上に集合させる。
【0061】
C.免疫学的検定法
本発明に従ったアッセイ法の実行においては、図に示されるように配置された、スワブウェルを有する完成した試験装置、穴を備えた上層部分および試験用細片を使用する。ダクロン(Dacron)繊維から製造したスワブを尿試料にしばらく浸し、その後試料から取り除き、装置の右側部分にある上層部分の穴Bを通して、試験装置のサンプルウェルに直ちに挿入する。2または3滴の「試薬A」、この場合は、pH 6.5の0.05Mのクエン酸ナトリウム−リン酸ナトリウム緩衝液に溶解した、2.0%のトゥイーン 20、0.05%のアジ化ナトリウムおよび0.5%のドデシル硫酸ナトリウムの溶液を、同じ穴を通して試料に加える。右側部分の縁にある粘着性細片を剥離し、その後装置を閉じる。試料を結合体パッドと直ちに接触し、免疫クロマトグラフィー用の細片を通して流す。15分後、試験用試料および対照のための観察窓を見て、結果を記録する。
【0062】
D.試料試験の結果
上記に説明されたように、2つの型の多くの尿検体を試験装置において分析した。評価された2つの型の尿試料は、如何なる肺炎型の感染もない患者由来の尿および、インフルエンザb型菌を含む尿であった。全ての試料を2通り試験した。以下の表は試験の結果を要約する:
【0063】
【表1】

【0064】
上記の結果は、不織ポリエステルの結合体パッドおよび押出成形されたセルロースアセテート結合体パッドの双方について一致していた。「試薬A」を2滴または3滴のいずれか加えた場合に、差異は認められなかった。
【0065】
実施例6−インフルエンザb型菌に対する抗原特異的な抗体の交叉反応性/適合性
インフルエンザb型菌結合体ワクチンとして、パスツール・メリュー・コンノート研究所(Pasteur−Merieux−Connaught Laboratories)により「ACT−HIB」という商品名で販売されている、市販の合成インフルエンザb型菌調製物をウサギに注射し、約60日間経過した後、ウサギから採血した。
【0066】
実施例2において調製された、本質的にタンパク質を含まない精製莢膜抗原を、実施例3において示されたようにヒドラジン−BSA結合体に共有結合し、次に抗原:ヒドラジン−BSA 結合体を実施例3にて使用されたものと同じアフィニティーゲルに共有結合した。
【0067】
インフルエンザb型菌に対する未処理のポリクローナル抗体を含むウサギ血清を、実施例4にて説明される方法で、精製抗原:BSA−ヒドラジンアフィニティーゲルに対して精製した。ゲルから溶出された抗原特異的な抗体をその後、適合試験および交叉反応試験において使用し、結果をこれに関する図2、図3および図4のグラフに表した。
【0068】
A.適合試験
以下のように、改良ELISA法を用いて、適合試験を行った:
ダイネックス・テクノロジー社(Dynex Technologies,Inc)の96ウェルのポリスチレンマイクロタイタープレートを、様々な菌株のインフルエンザ菌細胞懸濁液(0.5〜0.7×10細胞/ml)の、100mclのアリコートで被覆した。プレートを37℃において2時間インキュベートし、0.02%のトゥイーン 20を含むpH 8.0のPBS(「PBST」)で4回洗浄した。1mg/mlの濃度でBSAを含むpH 7.2のPBS 200mclを用いて、マイクロタイターウェルを室温にて1時間ブロッキングした。プレートをその後、再度PBSTで4回洗浄した。
【0069】
本実施例において以前に説明したように、商品であるACT−HIBを用いて免疫化されたウサギから得られた、精製した抗原特異的な抗体を、(穴毎に)濃度0.5mcg/mlから開始し、0.008mcg/mlで終了するよう、プレート中すべてを2倍に希釈した。
【0070】
プレート上の最初の横の列を対照として使用した。抗体溶液の代わりに、100mclのPBSをこの列の各ウェルに加えた。プレートを室温にて1時間インキュベートし、その後PBSTで4回洗浄した。
【0071】
その後、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合させた100mlのヤギ抗ウサギIgGを、PBSTで1:6000に希釈し、各ウェルに加え、プレートを室温にて45分間インキュベートした。再度PBSTで洗浄した後、KPLラボラトリーズ(KPL Laboratories、Gaithersburg、Maryland)のTMBペルオキシダーゼ基質系(TMB Perooxidase Substrate System)100mclを、各ウェルに加えた。
【0072】
3〜5分間の発色反応後、50 mclの1N HSOを用いて各ウェルにおける反応を停止した。分光光度ELISAリーダーにおいて、450 nmの波長にてプレートを計測した。
【0073】
試験された様々なインフルエンザb型菌の菌株は、米国菌培養収集所(American Type Culture Collection)から、アクセッション番号#10211(これは実施例1〜5においてこれに関して使用された菌株である)、#43335、#51654、および#43334として入手可能な産物であった。図2においてそれについてのグラフに示される、試験の結果は、ACT−HIBを用いたウサギに注射すること、ウサギから採血すること、および、その結果得られた抗体を含むウサギ血清を、実施例2および実施例3の手順に従い、ATCC#10211由来の精製莢膜抗原を用いて精製することにより得られた抗原特異的な抗体(図2においては「Hib−ab」と示される)は、ATCC#10211に対し特異性および反応性が非常に高いが、0.063mcg/ml〜0.5mcg/mlの濃度範囲において、対照と比較した場合、ATCC#43335、ATCC#51654およびATCC#43334の各々の莢膜抗原に対してなおも特異性および反応性が高いことを示す。さらに、抗原抗体反応の機器による検出を用い、本発明の抗原特異的な抗体は、0.008mg/mcl程度のより低濃度においても、対照と比較すると、抗原に対する認識できる反応性があることを示した。
【0074】
B.交叉反応試験
これらの試験においては、本実施例の抗原特異的な精製インフルエンザb型菌抗体を、図2の適合試験について説明される試験プロトコールに従い、それらの試験について説明されるものと同じ対照を用い、2つのバッチにおいて、他種のインフルエンザ菌に対して試験した。
【0075】
第一のバッチについて、図3は本発明の抗原特異的な抗体の、それらが特異的であるATCC#10211由来の抗原に対する反応性を、インフルエンザ菌抗原(図上では「Hi」と示される)a型、c型、d型およびf型と比較するグラフである。それにより、0.008mcg/ml〜0.063mg/mlの濃度においては、ATCC#10211のインフルエンザb型菌抗原に対する高い反応性および特異性と比べて、a、c、dおよびf型の全ての型との交叉反応性が欠如していることが示される。0.063mcg/mlをわずかに超える抗体濃度において、f型インフルエンザ菌に対してのみ、かろうじて感知できる交叉反応性が認められるが、最高濃度0.5mcg/mlにおいてでさえ、f型抗原に対する反応性は、抗体の最低濃度0.008mcg/mlにおけるATCC#10211のa型に対するものより低い。抗原特異的な抗体とf型とのわずかな交叉反応性は、問題視するにはあまりに低いと判断された。
【0076】
第二のバッチについて、図4は、本発明の精製された抗原特異的な抗体の、型に分けられない4つのインフルエンザ菌種(NT1、NT2、NT3およびNT4)の各々に加えパラインフルエンザ菌(H.parainfluenzae)に対する反応性を、インフルエンザb型菌の菌株ATCC#10211に対するものと比較したグラフである。図4は、本発明の抗原特異的な抗体は、0.125mcg/ml〜0.5mcg/mlの抗体濃度において、インフルエンザ菌の型に分けられない種1、2、3および4の全てに対して交叉反応性を欠いており、パラインフルエンザ菌に対しては非常にわずかな交叉反応性を有することを表す。しかし、この交叉反応性は、0.008mcg/mlの濃度における抗体の、インフルエンザb型菌の菌株ATCC#10211に対する反応性よりも低い程度のものであり、無視できるものと判断された。図4はまた、本発明の抗体の、インフルエンザb型菌莢膜抗原に対する高い特異性を確証するものである。
【0077】
明らかに、細菌の糖質抗原に対する、抗原特異的な精製抗体は、本明細書において説明されるものに限らず、任意の型の免疫学的検定法において、対応する粗製標的糖質抗原を検出するため、有益に使用できる。同様に、同じ標的糖質抗原について過去に説明されたアッセイ法において、未処理のポリクローナル抗体をこれらの抗原特異的な精製抗体に置き換えることにより、そのような各アッセイ法のより高い信頼性、感受性および特異性がもたらされることは明らかである。さらに、未だ示されてはいないにも関わらず、先行技術において説明されたアッセイ法にて、モノクローナル抗体をこれらの抗原特異的な精製抗体に置き換えることにより、少なくとも同等に良い結果が得られると考えられ、多くの場合においては、報告されたものよりも良くかつ信頼性の高い結果が得られることが期待される。
【0078】
本明細書にて開示されるような本発明の原理は、過去に他者により報告されたアッセイ技術のあらゆる適用、変更および組み合わせに容易に役立つことが指摘される。本明細書において開示される多くの段階は、特定的に開示されるものと異なる試薬または条件を用いて完遂できる。糖質抗原を本質的にタンパク質を含まない状態にまで精製する他の方法は、容易に考案できる。莫大な数の文献、特許および特許ではないもののいずれも、本明細書において説明および推奨される好ましいICT装置に置き換えられるような、信頼性の高い、1回限りの使用の、使い捨て免疫学的検定試験装置の設計および使用について議論している。本発明は、特許請求の範囲がそのように限定する限りを例外として、置き換え可能なアッセイ装置、材料、成分または過程の段階に関して、限定されることは意図しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、リポポリ糖質抗原、リポテイコ酸またはテイコ酸またはそのいずれかの誘導体を含む抗原、および莢膜糖質抗原から選択される標的細菌の糖質抗原に対する抗原特異的な抗体を得る方法:
(a)標的細菌の糖質抗原を、重量パーセントで約10%を超えないタンパク質を含む、本質的にタンパク質を含まない抗原を生じるまで精製する段階、
(b)本質的にタンパク質を含まない抗原をスペーサー分子に結合し、結合体を生じる段階、
(c)段階(b)にて得られた結合体をアフィニティーゲルに結合し、さらなる結合体を生じる段階、
(d)段階(c)のさらなる結合体上において、標的細菌抗原に対する未処理のポリクローナル抗体またはそのIgG粗精製分画を通す段階、および
(e)段階(c)のさらなる結合体から、粗製の標的細菌抗原に特異的な精製抗体を溶出する段階。
【請求項2】
請求項1記載の方法によって調製される、抗原特異的な抗体。
【請求項3】
請求項1記載の工程に従い、未処理のポリクローナル抗体またはそのIgG粗精製分画を精製することにより生産される、標的抗原に対する抗原特異的な抗体と試験用試料を接触させる段階を含む方法であり、標的細菌またはその標的糖質抗原を含有すると疑われる液体を含む試験用試料における、標的細菌またはその標的糖質抗原成分の存在についてアッセイする方法。
【請求項4】
試験用試料が、標的細菌により引き起こされる疾患を有すると疑われる哺乳動物の患者から得られる、哺乳動物の体液を含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
試験用試料が、標的細菌により引き起こされる疾患を有すると疑われる患者から得られるヒトの尿を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
標的細菌がグラム陰性菌であり、その標的抗原成分がリポポリ糖質である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
リポ糖質がリポ多糖である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
標的細菌がグラム陽性菌であり、その標的抗原成分がリポテイコ酸、テイコ酸またはそのいずれかの誘導体を含む抗原である、請求項5記載の方法。
【請求項9】
標的細菌がグラム陽性またはグラム陰性であり、標的抗原が莢膜ポリ糖質抗原である、請求項5記載の方法。
【請求項10】
莢膜ポリ糖質抗原が莢膜多糖抗原である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
以下の段階を含む、標的細菌またはそれらの標的糖質抗原成分の検出のためのICTアッセイ法:
(a)標的細菌またはそれらの標的糖質抗原成分を含むと疑われる液体の試料を、以下を有するような、吸湿性材料からなる細片を含むICT装置と接触させる段階
(i)以下の結合体を包埋した区画:
(1)対応する抗原性結合パートナーと抗体との反応において、目に見える呈色変化を表す標識試薬、および
(2)標的糖質抗原成分に対して抗原特異的な精製抗体であり、本質的にタンパク質を含まない精製標的糖質抗原成分がスペーサー分子によって連結された、クロマトグラフィー用アフィニティーカラムに通すことにより精製された抗体、
(ii)抗原特異的な同じ精製抗体を連結していない形態で結合させた第二の区画であり、呈色変化を見るための観察窓を備えた区画;
(b)前記試料を、試験用細片に沿って第一の区画まで横に流す段階;
(c)アフィニティー精製された抗体および標識の結合体と共に、該試験用細片に沿って第二の区画まで該試料を横に流す段階;および
(d)段階(a)の開始から約15〜20分間以内に、呈色線が該第二の区画に現われたかを観察窓から観察し、それにより試料中の標的細菌もしくはその標的糖質抗原成分、またはその両方の存在が示され、または、呈色線がそのように現われないことにより、標的細菌およびそれらの標的糖質抗原成分が存在しないことが示される段階。
【請求項12】
以下の段階を含む、グラム陽性菌またはグラム陰性菌から、本質的にタンパク質を含まない糖質成分または抗原成分を得る方法:
(a)望ましいサイズの試料を得るため、細菌を必要な時間培養し、それから細菌細胞を湿性細胞ペレットの形態にて採集する段階;
(b)湿性細胞ペレットをアルカリ性溶液に懸濁し混合する段階;
(c)強酸を用いてpHを酸性pHにまで調整し、遠心分離する段階;
(d)段階(c)から上清を分離し、そのpHをおよそ中性になるまで調整する段階;(e)残存タンパク質をなくすため、広域スペクトルプロテアーゼ酵素調製物を用いてこの産物を分解する段階;
(f)弱アルカリ性水溶液を用いて、pHをアルカリ性側に調整する段階;
(g)弱アルカリ性溶液を用いて平衡化した、サイズ排除クロマトグラフィーカラムにおいて、本質的にタンパク質を含まない糖質抗原を分離する段階;および
(h)第一ピークにおいて溶出された材料をプールし、そのpHをおよそ中性になるまで調整する段階。
【請求項13】
標的細菌抗原がインフルエンザb型菌(Haemophilus influenzae type b)の莢膜糖質抗原である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
インフルエンザb型菌の莢膜糖質抗原に特異的な、請求項2記載の抗原特異的な抗体。
【請求項15】
標的細菌がインフルエンザb型菌であり、その標的糖質抗原成分がそれらの細菌の莢膜糖質抗原である、請求項3記載の方法。
【請求項16】
標的細菌がインフルエンザb型菌であり、その標的糖質抗原成分がそれらの細菌の莢膜糖質抗原である、請求項15の方法。
【請求項17】
試験用試料がヒトの尿を含む、請求項15の方法。
【請求項18】
標的細菌がインフルエンザb型菌であり、その標的糖質抗原成分がそれらの莢膜糖質抗原であり、標識試薬が細かく分割された金属の金である、請求項11の方法。
【請求項19】
細菌がインフルエンザb型菌であり、得られる本質的にタンパク質を含まない抗原成分が、それらの本質的にタンパク質を含まない莢膜糖質抗原成分である、請求項12記載の方法。
【請求項20】
抗原特異的な抗体が、抗原:抗体反応が起こる試験装置の各部位において、表面積当たり7.7ng/mm〜385ng/mmの間の濃度で存在する、請求項3記載の方法。
【請求項21】
抗原特異的な抗体が、抗原:抗体反応が起こる試験装置の各部位において、表面積当たり7.7ng/mm〜385ng/mmの間の濃度で存在する、請求項11記載の方法。

【図1】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−145301(P2011−145301A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−31137(P2011−31137)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【分割の表示】特願2001−563134(P2001−563134)の分割
【原出願日】平成13年3月1日(2001.3.1)
【出願人】(505318846)バイナックス インコーポレイティッド (5)