説明

標的装置における追尾検知処理方法

【課題】移動目標の目標情報を取得して目標を検知する検知処理を加えることにより、対象目標の追尾検知精度を向上する標的装置における追尾検知処理方法を提供する。
【解決手段】標的装置における追尾検知処理方法は、赤外線センサにより検出された目標から発せられる赤外線レベル、超音波測距センサにより超音波を用いて目標までの距離を測定した超音波測距情報、及びマイクにより検出された目標からの音量を目標情報として取得する目標情報取得ステップと、前記目標情報取得ステップで得られた赤外線レベル、超音波測距情報、及び音量が規定値以上であれば目標検出値と判定する目標判定ステップと、前記目標判定ステップで判定された目標検出値を基に目標に対する画像処理を規定時間行い目標として認識する目標認識ステップと、前記目標認識ステップで認識された目標の画像データを用いて自動追尾する自動追尾ステップとよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラから得られる映像データから目標を自動追尾し、目標に射撃を模擬したレーザ光を照射することにより模擬的な対抗射撃訓練を行うことを可能とした射撃訓練用模擬対抗装置等の標的装置において、対象目標の追尾検知精度を上げる検知処理を加えた標的装置における追尾検知処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、標的装置である射撃訓練用模擬対抗装置(例えば、特許文献1参照。)においては、対象とする目標をカメラのみで検知した場合のみ追尾することしか出来ないという問題があり支障があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−168332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、対象とする目標を画像データから追尾処理する際、移動目標の目標情報を取得して目標を検知する検知処理を加えることにより、対象目標の追尾検知精度を向上する標的装置における追尾検知処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明の標的装置における追尾検知処理方法は、赤外線センサにより検出された目標から発せられる赤外線レベル、超音波測距センサにより超音波を用いて目標までの距離を測定した超音波測距情報、及びマイクにより検出された目標からの音量を目標情報として取得する目標情報取得ステップと、前記目標情報取得ステップで得られた赤外線レベル、超音波測距情報、及び音量が規定値以上であれば目標検出値と判定する目標判定ステップと、前記目標判定ステップで判定された目標検出値を基に目標に対する画像処理を規定時間行い目標として認識する目標認識ステップと、前記目標認識ステップで認識された目標の画像データを用いて自動追尾する自動追尾ステップとよりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の標的装置における追尾検知処理方法は、対象とする目標を画像データから追尾処理する際、移動目標の目標情報を取得して目標を検知する検知処理を加えることにより、対象目標の追尾検知精度を向上し、効果的な対抗訓練が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態に係る模擬対抗装置を用いた射撃訓練システムを示す説明図である。
【図2】(a),(b)は本発明の実施形態に係るレーザ送受信部を示す構成説明図及び斜視図である。
【図3】(a),(b)は本発明の実施形態に係るプロジェクタを示す構成説明図及び斜視図である。
【図4】(a),(b)は本発明の実施形態に係るディテクタを示す構成説明図、前面図及び後面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る目標を自動追尾するための画像処理用のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0009】
図1は本発明の実施形態に係る模擬対抗装置を用いた射撃訓練システムを示す説明図である。図1において、11は射撃訓練用模擬対抗装置であるレーザ送受信部、12は統制部であるパソコン、13は統制部の構成である無線機(通常は無線LAN機器)、14は統制部の構成であるジョイスティック(またはマウス)、15はディテクタが装着された訓練者である移動目標、16はプロジェクタが装着された実銃または模擬銃、17はレーザ光、18はレーザ光、19は射撃の開始指示と目標の照準位置の制御データ、20は映像データ及び被弾データ等、21は被弾データ等である。
【0010】
図1に示すように、移動目標(訓練者)15が所持した実銃または模擬銃16に搭載されたプロジェクタからレーザ光17を照射することができる。また、レーザ送受信部11に搭載されたプロジェクタからレーザ光18を照射することができる。レーザ送受信部11に搭載されたカメラで撮像された映像データ20は、無線系を通じて統制部無線機13によりパソコン12に表示される。
【0011】
操作員は、パソコン12に表示された映像を見てジョイスティック14の操作により、パソコン12から無線機13を介して無線系でレーザ送受信部11に射撃の開始指示と目標の照準位置の制御データを送信し、レーザ送受信部11のプロジェクタから射撃を行うことができる。複数のレーザ送受信部11からの複数の映像データに基づく複数の画面のうちの1画面については、マニュアル操作により目標の照準と射撃の制御を行うことができる。
【0012】
また、移動目標(訓練者)15から照射されたレーザ光17がレーザ送受信部11に命中した場合は、レーザ送受信部11からの被弾データ20が無線機13を介して無線系でパソコン12に送信され、パソコン12上の画面に結果が表示される。
【0013】
一方、レーザ送受信部11のプロジェクタからのレーザ光18が移動目標(訓練者)15に搭載されたディテクタの受光器に命中した場合は、移動目標(訓練者)15に搭載されたディテクタからの被弾データ21が無線機13を介して無線系でパソコン12に送信され、パソコン12上の画面に結果が表示される。
【0014】
図2(a),(b)は本発明の実施形態に係るレーザ送受信部を示す構成説明図及び斜視図である。図2(a),(b)において、30は無線機、31は制御回路、32は駆動モータ、33はプロジェクタ、34はカメラ、35は射撃・損耗現示LED(発光器)、36はスピーカ、37は受光器、38はバッテリー、39はAC/DC変換器、40は映像データ、41はレーザコード、42は駆動信号、43は表示信号、44は発射模擬音声信号、45はレーザ受信信号、46は制御データ、47は映像データまたは被弾データ、48はセンサ/マイクで、赤外線センサ、超音波測距センサ、及び指向性を持ったマイクロホンより構成される。49は目標情報である。
【0015】
図2(a),(b)に示すように、センサ/マイク48は、赤外線センサにより検出される目標から発せられる赤外線レベル、超音波測距センサにより超音波を用いて目標までの距離を測定する超音波測距情報、及びマイクにより検出される目標からの音量を目標情報49として取得して制御回路31に出力する。制御回路31は目標情報49である赤外線レベル、超音波測距情報、及び音量がそれぞれ予め設定されている規定値以上であれば、規定範囲内に近接している目標検出値として判定し、目標として検出する。センサ/マイク48で目標を検出すると、規定時間内、カメラ34で撮像した映像データ40を制御回路31に入力して目標に対する画像処理を行い目標として認識する。制御回路31にはカメラ34から入力された映像データ40を基に認識された目標を自動追尾するための画像処理用のアルゴリズム実行回路が実装されている。制御回路31はリアルタイムにカメラ34から入力された映像データ40を基に認識された目標を自動追尾するための画像処理した駆動信号42を駆動モータ32に出力する。駆動モータ32は駆動信号42が入力され、駆動部分と一体化したプロジェクタ33及びカメラ34を目標方向に旋回して姿勢制御する。
【0016】
制御回路31はカメラ34で撮像した映像データ47を無線機30から無線系で統制部であるパソコン12に送信する。無線機30は無線系でパソコン12から射撃の開始指示と目標の照準位置の制御データ46を受信して制御回路31に出力する。制御回路31は無線機30から入力された射撃の開始指示と目標の照準位置の制御データ46を基にレーザコード41を生成してプロジェクタ33に出力する。プロジェクタ33はレーザコード41に基づいて実弾を模擬したレーザ光を照射する。
【0017】
制御回路31は、プロジェクタ33からのレーザ光の照射と同時に表示信号43を射撃・損耗現示LED(発光器)35に出力すると共に発射模擬音声信号44をスピーカ36に出力する。射撃・損耗現示LED(発光器)35は射撃動作を現示するために発光(点滅動作)して模擬表示すると共にスピーカ36は射撃音を模擬した発射模擬音を出力する。
【0018】
一方、移動目標(訓練者)15から照射されたレーザ光17がレーザ送受信部11の受光部37に命中した場合は、受光部37からレーザ受信信号45が制御回路31に出力される。制御回路31は内部の受信回路において受光部37から入力されたレーザ受信信号45のうち一定の閾値を超えた信号を抽出し命中の判定を行って即座に被弾データ47を無線機30を介して無線系で統制部であるパソコン12に送信する。
【0019】
制御回路31は被弾と同時に表示信号43を射撃・損耗現示LED(発光器)35に出力し、被弾現示のために点灯(常時点灯)して模擬表示する。
【0020】
レーザ送受信部11の内部で使用する電源は、バッテリー38または商用電源をAC/DC変換器39で変換した電源から供給される。
【0021】
図5は本発明の実施形態に係る目標を自動追尾するための画像処理用のアルゴリズムを示すフローチャートである。図5に示すように、ステップSaでセンサ/マイク48は、赤外線センサにより検出される目標から発せられる赤外線レベル、超音波測距センサにより超音波を用いて目標までの距離を測定する超音波測距情報、及びマイクにより検出される目標からの音量を目標情報として取得する。ステップSbで制御回路31は目標情報である赤外線レベル、超音波測距情報、及び音量がそれぞれ予め設定されている規定値以上であるか否かを判定する。ステップScで目標情報である赤外線レベル、超音波測距情報、及び音量がそれぞれ予め設定されている規定値以上であれば、規定範囲内に近接している目標検出値として判定し、目標として検出すると、ステップSdで一定の規定時間内、カメラ34で撮像した映像データ40を制御回路31に入力して検出した目標に対する画像処理を行い正しい目標として認識する。
【0022】
ステップSdで正しい目標を認識すると、ステップS1で制御回路31のアルゴリズム実行回路に画像データ(映像データ)が入力される。ステップS2で画像データが2値化される。ステップS3で2値化された画像データから背景を除去し、ステップS4で目標を抽出する。この場合、ステップS5の前フレームデータを用いて背景を除去する。ステップS6で抽出した目標の面積・重心を算出する。ステップS7で算出した目標の面積・重心から目標を判定し、ステップS8で目標を検出しない場合にはステップSdに戻る。ステップS8で目標を検出した場合には、ステップS9で目標指示角(方位/高低)を算出し、ステップS10で算出した目標指示角(方位/高低)になるように駆動モータを駆動する。ステップS11で駆動した駆動モータの現在の指向角(方位/高低)を検出し、ステップS12で駆動モータの現在指向角(方位/高低)が目標指示角(方位/高低)になっていない場合はステップS10に戻り、駆動モータの現在指向角(方位/高低)が目標指示角(方位/高低)になっている場合はステップSdに戻る。
【0023】
図3(a),(b)は本発明の実施形態に係るプロジェクタを示す構成説明図及び斜視図である。図3(a),(b)において、51はプロジェクタ、52はレーザ駆動回路、53は引金センサ、54はレーザダイオード、55は光学系、56はバッテリーである。
【0024】
図3(a),(b)に示すように、プロジェクタ51は移動目標(訓練者)15が所持した実銃または模擬銃16に装着され、プロジェクタ51の引金センサ53を操作することによりレーザ光17を照射することができる。
【0025】
プロジェクタ51のレーザ駆動回路52において、内部スイッチまたは外部からの通信(光または電波)に基づく初期設定信号により、個別番号(ID)の初期設定を行う。IDデータは、レーザ駆動回路52で生成されるレーザコードに付与される。
【0026】
引金センサ53により引金を引いたことを検出すると、検出信号がレーザ駆動回路52に出力される。
【0027】
レーザ駆動回路52において生成されたレーザコードはレーザ駆動信号としてレーザダイオード54に出力される。レーザ駆動信号が入力されてレーザダイオード54より出力されるレーザ出力光は光学系55の光学レンズにより集光され外部に放射される。プロジェクタ51の内部回路に必要な電源はバッテリー56より供給される。
【0028】
図4(a),(b)は本発明の実施形態に係るディテクタを示す構成説明図、前面図及び後面図である。図4(a),(b)において、61は受光器、62はレーザ受光回路、63は制御回路、64は無線機、65はブザー、66は発光器、67はバッテリー、68は初期設定データである。
【0029】
図4(a),(b)に示すように、受光器61は移動目標(訓練者)15の胴体に着用された訓練用衣服の前面及び後面にそれぞれ複数個取付けられると共に、頭部のヘルメットの前部及び後部にそれぞれ取付けられる。移動目標(訓練者)15の胴体に着用された訓練用衣服にはレーザ受光回路62、制御回路63、無線機64、ブザー65、発光器66、バッテリー67が装着される。
【0030】
受光器61はレーザ送受信部11より照射されたレーザ光を受信する。受光器61は受信されたレーザ光に基づいてレーザ受光信号をレーザ受光回路62に出力する。レーザ受光回路62は入力されるレーザ受光信号に対して一定の閾値を超えた信号を抽出し命中の判定を行う。命中の結果は制御回路63に出力される。
【0031】
制御回路63において命中結果の被弾データ21を即座に無線機64を介して無線系で統制部であるパソコン12に送信すると共に、命中現示のためブザー65に対してブザー鳴動信号を出力して鳴動し、同時に、発光(点灯)信号を発光器66に出力して発光する。ディテクタの内部回路に必要な電源はバッテリー67により供給される。
【0032】
本発明の実施形態は、カメラ、センサ及びマイク等の移動物体を検知するための回路から得られる画像及び各種情報等から移動目標を検知、自動追尾し、目標の中心に射撃を模擬したレーザ光を照射することにより、模擬的な対抗射撃訓練を行う際に、目標の検知精度を上げることができる。
【0033】
また、レーザ光の照射機能を取り外すことにより、監視システムへ応用することができる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0035】
11…射撃訓練用模擬対抗装置であるレーザ送受信部、12…統制部であるパソコン、13…統制部の構成である無線機(通常は無線LAN機器)、14…統制部の構成であるジョイスティック(またはマウス)、15…ディテクタが装着された訓練者である移動目標、16…プロジェクタが装着された実銃または模擬銃、17…レーザ光、18…レーザ光、30…無線機、31…制御回路、32…駆動モータ、33…プロジェクタ、34…カメラ、35…射撃・損耗現示LED(発光器)、36…スピーカ、37…受光器、38…バッテリー、39…AC/DC変換器、48…センサ/マイク、51…プロジェクタ、52…レーザ駆動回路、53…引金センサ、54…レーザダイオード、55…光学系、56…バッテリー、61…受光器、62…レーザ受光回路、63…制御回路、64…無線機、65…ブザー、66…発光器、67…バッテリー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線センサにより検出された目標から発せられる赤外線レベル、超音波測距センサにより超音波を用いて目標までの距離を測定した超音波測距情報、及びマイクにより検出された目標からの音量を目標情報として取得する目標情報取得ステップと、
前記目標情報取得ステップで得られた赤外線レベル、超音波測距情報、及び音量が規定値以上であれば目標検出値と判定する目標判定ステップと、
前記目標判定ステップで判定された目標検出値を基に目標に対する画像処理を規定時間行い目標として認識する目標認識ステップと、
前記目標認識ステップで認識された目標の画像データを用いて自動追尾する自動追尾ステップと
よりなることを特徴とする標的装置における追尾検知処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−252680(P2011−252680A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128202(P2010−128202)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(000221155)東芝電波プロダクツ株式会社 (62)
【Fターム(参考)】