説明

標的装置

【課題】訓練者の位置に基づいて、標的をX方向、Y方向に自動的に移動させる射撃訓練装置を提供する。
【解決手段】訓練者30の画像または訓練者に付される識別マークを記憶する記憶部と、訓練者を撮像するカメラ27と、記憶した訓練者の画像または識別マークを前記カメラ27で撮像して得た画像と比較して訓練者を識別する制御部12と、隠顕、移動及び反撃の少なくともいずれかの動作が可能な標的部11と、制御部12による訓練者の識別結果に基づいて標的部の動作を制御する制御部12をもつ標的装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、射撃訓練に使用する標的装置に関し、特に、訓練者の位置または方向を検出して、標的をX方向、Y方向に移動する標的装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、標的装置を用いることで、実践的な射撃訓練を行なうことが知られている。標的装置を用いた射撃訓練の一例として、移動台車上に標的装置を搭載して標的を隠顕動作させて射撃訓練を実施するものが知られている。
また、特許文献1は、訓練者の位置を検出して標的を自動的に隠顕させる射撃訓練装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−238997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の従来技術においては、訓練者の位置を検出した際の標的の動作は隠顕に止まっていた。
本発明は、検出した訓練者の位置に基づいて、標的を少なくともX方向、Y方向に自動的に移動させる射撃訓練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決する一実施形態は、
訓練者の画像または前記訓練者に付される識別マークを記憶する記憶部と、
前記訓練者を撮像するカメラと、
前記記憶した訓練者の画像または識別マークを前記カメラで撮像して得た画像と比較し、訓練者を識別する識別部と、
隠顕、移動及び反撃の少なくともいずれかの動作が可能な標的部と、
前記識別部による訓練者の識別結果に基づいて前記標的部の動作を制御する制御部と、
を具備したことを特徴とする標的装置である。
【発明の効果】
【0006】
カメラ映像等を用いて訓練者の位置や移動方向を検出し、この位置や移動方向に対応して、標的部をX方向およびY方向に移動することで、実践的な射撃訓練を可能にする。また、標的部を物陰に隠したり、標的部を回転させて表示内容を変更したり、訓練者に対してレーザ照射により反撃を行なうことで、より実践的な訓練を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の一実施形態である標的装置の外観の一例を示す外観図。
【図2】当該標的装置の構成の一例を示すブロック図。
【図3】当該標的装置を含めた標的システムの構成の一例を示すブロック図。
【図4】当該標的装置による射撃訓練処理の一例を示すフローチャート。
【図5】当該標的装置による画像認識処理の一例を示すフローチャート。
【図6】当該標的装置による画像認識処理により認識された複数の訓練者の動きベクトルの一例を示す説明図。
【図7】当該標的装置による屋内での射撃訓練処理の一例を示す説明図。
【図8】当該標的装置による屋内での射撃訓練処理における隠顕動作の一例を示す説明図。
【図9】当該標的装置による屋外での射撃訓練処理における隠顕動作の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る標的装置1は、図1および図2に示すように、標的部11に設けられた表示部11’と、全体の動作を制御する制御部12と、統制装置41の通信部42と通信を行なう通信部15と、制御部12の制御下において表示部11’に映像信号等を供給する表示駆動部21と、標的部11を上下方向(Z方向)に移動する上下モータ16と、標的部11を左右方向(X方向)に移動する左右モータ17と、標的部11を前後方向(Y方向)に移動する前後モータ18と、これら上下モータ16、左右モータ17および前後モータ18をそれぞれ制御部12の制御下において駆動するモータ駆動部14を有している。ここで、表示部11’は、任意の映像を表示するディスプレイであってもよいし、図1に示すように、レーザ検出部23が設置される土台であり標的であることが判る絵が表面に描かれた板状の部材であってもよい。なお、後者の場合、表示駆動部21は不要であることは言うまでもない。
【0009】
さらに、標的装置1は、図1および図2に示すように、標的部11に設けられ、制御部12から与えられる方向信号に応じて訓練者30に対するレーザの照射方向を変える方向制御モータを内蔵しているレーザ照射部19と、標的部11に設けられ訓練者30から照射されるレーザ光を検出するレーザ検出部23と、制御部12に接続され訓練者30の映像や動作プログラム、各種制御情報を格納する記憶部22と、制御部12に接続され訓練者30を検出するための赤外線センサ26a・音センサ26b・振動センサ26cと、標的装置1に電源を供給する電源部25と、訓練者30の映像等を撮像するカメラ27と、カメラ27からの映像信号に対してA/D変換等の画像処理を施して制御部12や記憶部22に供給するまたはさらに後述する画像認識処理を行なう画像処理部28を有している。
【0010】
また、訓練者30は、レーザ銃32を使用してレーザ光線Vを標的部11に向けて照射する。この際、訓練者30は、人員用制御装置31を操作して操作信号を出力し、統制装置41の通信部42と通信を行なって統制装置41に働きかけることで、射撃訓練プログラムに対して一定の操作を行なうことができる。
【0011】
また、本発明の一実施形態に係る標的システム2には、内部に複数の訓練者の画像信号や動作プログラムを保持する記憶部を内蔵するコンピュータシステムである統制装置41が設けられている。標的システム2は、統制装置41の動作により、第1標的装置1−1、第2標的装置1−2、第3標的装置1−3、第4標的装置1−4…のように、複数の標的装置を接続してこれらを同時に制御することが可能である。
【0012】
この場合、標的システム2には、第1標的装置1−1の赤外線センサ26a・音センサ26b・振動センサ26c、カメラ27等である第1センサ群51、同様に、第2標的装置1−2の赤外線センサ26a・音センサ26b・振動センサ26c、カメラ27等である第2センサ群52、第3標的装置1−3の赤外線センサ26a・音センサ26b・振動センサ26c、カメラ27等である第3センサ群53、第4標的装置1−4の赤外線センサ26a・音センサ26b・振動センサ26c、カメラ27等である第4センサ群54をそれぞれ標的システム2に接続することができる。しかし、図2に示すように、標的装置の赤外線センサ26a・音センサ26b・振動センサ26c、カメラ27等の検出信号は、標的装置の制御部12に供給され、通信部15を介して統制装置41の通信部42に供給されるものであってもよい。
【0013】
(動作)
次に、上述した構成を有する標的装置1および標的システム2における射撃訓練処理の一例を図面を用いて詳細に説明する。図4は、当該標的装置による射撃訓練処理の一例を示すフローチャート、図5は、当該標的装置による画像認識処理の一例を示すフローチャートである。
【0014】
本発明の一実施形態に係る標的装置1または標的システム2は、統制装置41の操作により、または、人員用制御装置31による操作信号をトリガーとして、通信部42を介して統制装置41に起動信号を送信することにより、統制装置41が起動する。そして、統制装置41からの指示信号を受けた標的装置1の制御部12は、射撃訓練処理を開始する。または、標的装置1は、統制装置41からの指示信号を受けることなく、自律的に起動することもできる。図4のフローチャートにおいて、標的装置1は、室内の天井等に設置されたカメラ27からの映像信号を有線ケーブルまたは通信部15を介して電装内部の画像処理部28に受けて、A/D(Analogue Digital)変換処理等の映像処理を行い、この映像信号を制御部12の制御下において、記憶部22に格納する。画像処理部28は、画像処理した映像信号と予め記憶部22に格納した訓練者の画像との比較処理を行い、訓練者30の画像認識を行なう(ステップS11)。このとき、訓練者の顔画像を予め記憶部22等に格納して、画像処理部28からの映像信号と比較するだけでなく、予め決めておいた訓練者を識別するマークを訓練者が肩やヘルメット等に添付し、記憶部22等においてもこの識別するマークを格納しておいて識別処理をするという方法も可能である。
なお、予め記憶部22に格納する訓練者の画像または識別マークは、自軍または敵軍のいずれかにカテゴライズされる。
【0015】
または、標的装置1は、画像処理部28で画像処理した映像信号に対して、識別処理を施すことはせずに、通信部15により統制装置41の通信部42に送信する。これに対して、統制装置41は、受信した映像信号と予め記憶領域(データベース)に格納した訓練者の画像または識別マークとの比較処理を行い、訓練者30の画像認識処理を行なう(ステップS11)。
【0016】
次に、標的装置1の画像処理部28または統制装置41において行なわれる画像認識処理を図5のフローチャートを用いて以下に詳細に説明する。標的装置1の画像処理部28または統制装置41は、カメラ27から直接供給されて、または統制装置41の通信部42を介して標的装置1から供給されて、デジタル化された映像信号を取得する(ステップS41)。標的装置1の画像処理部28または統制装置41は、デジタル化された映像信号をフレーム毎に、記憶部22または統制装置41に内蔵する記憶部に予め格納した複数の訓練者の画像または識別マークと一致する特徴点が存在するか否かを比較処理する(ステップS42)。これにより、標的装置1の画像処理部28または統制装置41は、映像信号のフレーム内に訓練者30が検出されたかどうかを判断する(ステップS43)。
【0017】
標的装置1の画像処理部28または統制装置41は、訓練者が検出されなければ、ステップS41に戻って処理を反復する。訓練者が検出された場合は、標的装置1の画像処理部28または統制装置41は、訓練者30が自軍の訓練者であるのか、敵軍の訓練者であるのかを予め格納された訓練者のデータベースに基づいて判断する(ステップS44)。
【0018】
さらに、標的装置1の画像処理部28または統制装置41は、認識した単数または複数の訓練者の画像または識別マークを、その後のフレームでも継続して追跡し、その位置情報、移動方向、移動速度、訓練者の人数等の情報を検出する(ステップS45)。ここで、標的装置1の画像処理部28または統制装置41の検出結果の一例は、図6に示すように、訓練者A,B,C,Dのそれぞれについて、方向と移動量(移動速度)を示す方向ベクトルとして表される。そして、標的装置1の画像処理部28または統制装置41は、認識した単数または複数の訓練者の画像がフレーム中から検出不可能(消滅)となるまで、追跡および検出結果の出力を継続し、訓練者の画像が検出不可能(消滅)となると、再びステップS41から処理を開始して映像信号のフレーム中の訓練者の画像検出を行なう(ステップS46)。
【0019】
標的装置1の画像処理部28または統制装置41は、図4のフローチャートのステップS12に戻り、上述した認識処理の結果に基づいて、フレーム中に自軍の訓練者が存在するかどうかを判断する(ステップS12)。フレーム中に自軍の訓練者が存在すれば、標的装置1の画像処理部28または統制装置41は、ステップS13に進み、フレーム中に敵軍の訓練者が存在するかどうかを判断する(ステップS13)。フレーム中に自軍の訓練者が存在しなければ、標的装置1の画像処理部28または統制装置41は、ステップS14に進み、フレーム中に敵軍の訓練者が存在するかどうかを判断する(ステップS14)。
【0020】
標的装置1の画像処理部28または統制装置41は、自軍の訓練者が存在せず、敵軍の訓練者が存在すると判断すると、ステップS21に進み、上記の画像認識処理において検出された単数または複数の訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報を取り込む(ステップS21)。
【0021】
(位置制御:S22)
次に、標的装置1の制御部12または統制装置41は、検出された単数または複数の訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報と予め与えられた動作プログラムに基づいて、標的装置1の制御部12の自立的な判断により制御信号をモータ駆動部14に供給し、または、統制装置41からの指示信号に応じて制御部12から制御信号をモータ駆動部14に供給することで、モータ駆動部14は駆動信号を出力して、上下モータ16をZ方向(上下方向)へ駆動し、または、左右モータ17をX方向(左右方向)へ駆動し、または、前後モータ18をY方向(前後方向)へ駆動して、標的部11を移動する(ステップS22)。ここでは、自軍の訓練者が存在せず、敵軍の訓練者だけであるので、標的装置1の制御部12または統制装置41は、標的装置1が屋内である場合は、訓練者30の方に一律に近づくまたは一律に遠ざかる等のプログラムで設定された移動を行なう。
【0022】
または、標的装置1の制御部12または統制装置41は、訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報に基づいて、予め与えられた動作プログラムに設定されるように、例えば、訓練者が近づいてきたら標的部11を遠ざける、または、訓練者30と標的部11の距離を所定距離に保つように標的部11を近づけたり遠ざけたりする、または、訓練者30が所定以上の速度で近づいてきたら標的部11が逃げるかのごとく遠ざける、または、訓練者30が所定数以下であれば標的部11を訓練者30に近づけ、訓練者30が所定数よりも多ければ標的部11を訓練者30から遠ざける等の処理を行う。
【0023】
(表裏制御:S23)
次に、標的装置1の制御部12または統制装置41は、検出された単数または複数の訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報と予め与えられた動作プログラムに基づいて、標的装置1の制御部12の自立的な判断により制御信号を表示回転部24に供給し、または、統制装置41からの指示信号に応じて制御部12から制御信号を表示回転部24に供給し、表示回転部24を制御する。これにより、標的部11を回転させることで、例えば表示部の裏に描かれた無地の絵を表示部の表に描かれた兵士の絵とすることで、表裏制御を行い、訓練者30に対する標的部11の意味を異ならせる(ステップS23)。
【0024】
ここでは、自軍の訓練者が存在せず、敵軍の訓練者だけであるので、標的装置1の制御部12または統制装置41は、例えば、一律に表示部の裏に描かれた無地の絵を表示部の表に描かれた兵士の絵へと回転するという方法等をとる。
または、標的装置1の制御部12または統制装置41は、訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報に基づいて、予め与えられた動作プログラムに設定されるように、例えば、訓練者30が標的部11に近づいてきたら、表示部の裏に描かれた無地の絵を表示部の表に描かれた兵士の絵へと回転する、または、例えば、訓練者30が標的部11から所定以上遠ざかったら、表示部の表に描かれた兵士の絵を表示部の裏に描かれた無地の絵へと回転する、または、訓練者30が所定以上の速度で標的部11に近づいてきたら、表示部の裏に描かれた無地の絵を表示部の表に描かれた兵士の絵へと回転する、または、訓練者30が所定数以下であれば、表示部の表に描かれた兵士の絵を表示部の裏に描かれた無地の絵へと回転する、または、訓練者30が所定数よりも多ければ、表示部の裏に描かれた無地の絵を表示部の表に描かれた兵士の絵へと回転する等の処理を行う。
【0025】
また、ここでの表裏制御において、表示部の表裏を回転することで、表示内容を変更するのではなく、制御部12の制御下による表示駆動部21から供給される映像信号によって例えば液晶ディスプレイ等の表示部11’に兵士の映像等の任意の映像を表示させることも可能である。この方法によれば、表示させる映像を微妙に異ならせることもでき、また、レーザ検出部23で検出されたレーザ光によるダメージの程度を映像内容に反映させることも可能である。
【0026】
(隠顕制御:S24)
次に、標的装置1の制御部12または統制装置41は、検出された単数または複数の訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報と予め与えられた動作プログラムに基づいて、標的装置1の制御部12の自立的な判断により制御信号をモータ駆動部14に供給し、または、統制装置41からの指示信号に応じて制御部12から制御信号をモータ駆動部14に供給し、モータ駆動部14は駆動信号を出力して、上下モータ16をZ方向(上下方向)へ駆動し、または、左右モータ17をX方向(左右方向)へ駆動し、または、前後モータ18をY方向(前後方向)へ駆動して、標的部11を移動することにより隠顕制御を行なう(ステップS24)。
【0027】
標的装置1の制御部12または統制装置41は、標的装置1が屋内である場合は図7および図8の(a)に示すように、訓練者30を認識すると、窓枠の外へと標的部11を移動するべくY方向へと移動することで、訓練者30の視界から標的部11を隠すものである。また、標的装置1の制御部12または統制装置41は、図7および図8の(b)に示すように、訓練者30を認識すると、窓枠の外へと標的部11を移動するべく、X方向へと移動することで、訓練者30の視界から標的部11を隠すものである。移動量においては、一例として、あらかじめどの程度、X方向またはY方向に移動したら訓練者30の視界から標的部11が隠れるかの移動量を記憶部22に格納しておくことが望ましい。または、専用の光センサ等を設けることで、標的部11の隠顕に必要な移動を検出してもよい。
【0028】
また、標的装置1の制御部12または統制装置41は、標的装置1が屋外である場合は、図9に示すように、例えば、標的装置1−2の標的部11をZ方向へと移動して、壁や土嚢等(図9に斜線で示す)の後ろ側へと標的部11を移動して隠すものである。この場合、標的部11が壁や土嚢等の後ろ側に隠れたか否かを判断するために、近接センサ等を標的部11に設けることで、標的装置1の制御部12または統制装置41は、近接センサの出力により現在壁や土嚢等の後ろ側に隠れているか否かを判断することができる。
【0029】
このとき、自軍の訓練者が存在せず、敵軍の訓練者だけであるので、標的装置1の制御部12または統制装置41は、例えば、訓練者を認識すれば一律に標的部11をZ方向またはX方向やY方向に移動して、窓枠の外または壁や土嚢等の後ろ側へと標的部11を移動して隠すものとする。
【0030】
ここで、さらに、標的装置1の制御部12または統制装置41は、検出した訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報に基づいて、隠顕制御をおこなう。すなわち、標的装置1の制御部12または統制装置41は、例えば、訓練者30が所定位置よりも近づいたら標的部11をZ方向またはX方向やY方向に移動して、窓枠の外または壁や土嚢等の後ろ側へと標的部11を移動して隠す、また、例えば、訓練者30が所定数より少なければ標的部11を隠さずに露出しておく、しかし所定数よりも多ければ標的部11を窓枠の外または壁や土嚢等の後ろ側へと隠す、また、例えば、訓練者30が標的部11に向かって移動していれば、標的部11を窓枠の外または壁や土嚢等の後ろ側へと隠す、しかし、訓練者30が標的から遠ざかれば標的部11を顕すべく隠顕制御をおこなうものである。また、訓練者30の移動速度が所定値よりも大きければ、標的部11を窓枠の外または壁や土嚢等の後ろ側へと隠す、しかし、訓練者30の移動速度が所定値よりも小さければ、標的部11を顕すものとする。
【0031】
(反撃制御:S25)
次に、標的装置1の制御部12または統制装置41は、検出された単数または複数の訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報と予め与えられた動作プログラムに基づいて、標的装置1の制御部12の自立的な判断によりレーザ照射部19を制御して、訓練者30に対する反撃制御を行なう(ステップS25)。
【0032】
このとき、自軍の訓練者が存在せず、敵軍の訓練者だけであれば、標的装置1の制御部12または統制装置41は、訓練者30を認識すれば一律にレーザ照射部19を制御して、訓練者30への反撃を行なうものである。
ここで、さらに、標的装置1の制御部12または統制装置41は、検出した訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報に基づいて、訓練者の位置情報に基づいて内蔵する方向制御モータでレーザの照射方向を変更して訓練者に対して反撃制御を行なう。例えば、標的装置1の制御部12または統制装置41は、訓練者30が所定位置よりも標的部11に近づいたらレーザ照射部19を制御して訓練者30への反撃を行なう、また、訓練者30が標的部11の方向に近づいてきたらレーザ照射部19を制御して訓練者30への反撃を行なう、また、訓練者30が一定以上の速度で標的部11に近づいてきたらレーザ照射部19を制御して訓練者30への反撃を行なう、また、例えば、訓練者30の数が一定数以下であれば、レーザ照射部19を制御して訓練者30への反撃を行なう等の反撃制御を行なうものである。
【0033】
次に、標的装置1の制御部12または統制装置41は、標的部11のレーザ検出部23へ一定以上のレーザ光による攻撃があり、標的が倒された(攻撃が達成した)と判断すると射撃訓練の目的を達成したことを統制装置41に通知したり、人員用制御装置31に通知して、射撃訓練プログラムを終了する(ステップS26)。または、標的装置1の制御部12または統制装置41は、訓練者30の図示しないレーザ検出部に一定以上のレーザ光による攻撃があり、訓練者30が倒された(攻撃が達成した)と判断すると同様に訓練者30が負けたことを統制装置41に通知したり、人員用制御装置31に通知して、射撃訓練プログラムを終了する(ステップS26)。標的装置1の制御部12または統制装置41は、標的部11のレーザ検出部23や訓練者30の図示しないレーザ検出部にいまだに一定以上のレーザ光による攻撃がないものと判断すれば、ステップS11に戻り、画像認識処理および各種の制御処理を継続する。
【0034】
(自軍と敵軍の混在時の制御)
さらに、標的装置1の制御部12または統制装置41は、ステップS12およびステップS14において、映像信号のフレーム内に自軍と敵軍の訓練者が混在していると判断すると、上述した標的位置制御A(ステップS22)、表裏制御A(ステップS23)、隠顕制御A(ステップS24)、反撃制御A(ステップS25)とはそれぞれ異なる、標的位置制御B(ステップS32)、表裏制御B(ステップS33)、隠顕制御B(ステップS34)、反撃制御B(ステップS35)を行なうものである。
【0035】
すなわち、標的装置1の制御部12または統制装置41は、映像信号のフレーム内に自軍と敵軍の訓練者が混在していると判断すると、標的位置制御B(ステップS32)において、敵軍の訓練者を自軍の訓練者と識別して、近傍の訓練者が敵軍の訓練者の場合は、検出された単数または複数の訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報と予め与えられた動作プログラムに基づいて、標的装置1の制御部12の自立的な判断により制御信号をモータ駆動部14に供給し、または、統制装置41からの指示信号に応じて制御部12から制御信号をモータ駆動部14に供給する。これにより、モータ駆動部14は駆動信号を出力し、上下モータ16をZ方向(上下方向)へ駆動し、または、左右モータ17をX方向(左右方向)へ駆動し、または、前後モータ18をY方向(前後方向)へ駆動して、標的部11を移動する。しかし、近傍の訓練者が自軍の訓練者の場合は、特に、標的部11を移動させないという制御を行なう。または、自軍の訓練者と敵軍の訓練者の比率が一定以上となれば、標的部11を移動する等の制御を行なう。
【0036】
また、標的装置1の制御部12または統制装置41は、映像信号のフレーム内に自軍と敵軍の訓練者が混在していると判断すると、表裏制御B(ステップS33)において、敵軍の訓練者を自軍の訓練者と識別して、近傍の訓練者が敵軍の訓練者である場合は、検出された単数または複数の訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報と予め与えられた動作プログラムに基づいて、標的装置1の制御部12の自立的な判断により制御信号を表示回転部24に供給し、または、統制装置41からの指示信号に応じて制御部12から制御信号を表示回転部24に供給する。これにより、表示回転部24は標的部11を回転させ、例えば表示部の裏に描かれた無地の絵を表示部の表に描かれた兵士の絵とすることで、表裏制御を行い、訓練者に対して標的部11であることを示す(ステップS33)。しかし、近傍の訓練者が自軍の訓練者である場合は、表示部の表に描かれた兵士の絵を表示部の裏に描かれた無地の絵へと回転する、または、敵軍の訓練者の比率が一定以上となれば、表示部の裏に描かれた無地の絵を表示部の表に描かれた兵士の絵とする等の表裏制御を行なう。
【0037】
また、標的装置1の制御部12または統制装置41は、映像信号のフレーム内に自軍と敵軍の訓練者が混在していると判断すると、隠顕制御B(ステップS34)において、敵軍の訓練者を自軍の訓練者と識別して、近傍の訓練者が敵軍の訓練者である場合は、検出された単数または複数の訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報と予め与えられた動作プログラムに基づいて、標的装置1の制御部12の自立的な判断により制御信号をモータ駆動部14に供給し、または、統制装置41からの指示信号に応じて制御部12から制御信号をモータ駆動部14に供給する。これにより、モータ駆動部14は駆動信号を出力して、上下モータ16をZ方向(上下方向)に駆動し、または、左右モータ17をX方向(左右方向)に駆動し、または、前後モータ18をY方向(前後方向)に駆動して、標的部11を移動することにより敵軍の訓練者から標的部11を隠すための制御を行なう(ステップS34)。しかし、近傍の訓練者が自軍の訓練者である場合は、標的部11を隠すための制御を特に行なわない、または、標的部11を顕すための制御を行なう、または、敵軍の訓練者の比率が一定以上となれば、訓練者の相手を問わず、一律に標的部11を隠すための制御を行なう。
【0038】
また、標的装置1の制御部12または統制装置41は、映像信号のフレーム内に自軍と敵軍の訓練者が混在していると判断すると、反撃制御B(ステップS35)において、敵軍の訓練者を自軍の訓練者と識別して、近傍の訓練者が敵軍の訓練者である場合は、検出された単数または複数の訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報と予め与えられた動作プログラムに基づいて、標的装置1の制御部12の自立的な判断によりレーザ照射部19を制御して、敵軍の訓練者30に対して選択的な反撃制御を行なう(ステップS35)。しかし、近傍の訓練者が自軍の訓練者である場合は、選択的にレーザ照射部19による反撃制御を行なわない、または、自軍の訓練者の全体に占める比率が一定以上となれば、レーザ照射部19による反撃制御を行なわない等の反撃制御を行なう。
【0039】
以上、上述したように、標的装置1の制御部12または統制装置41は、検出された単数または複数の訓練者の位置・方向・速度・人数等の情報と予め与えられた動作プログラムに基づいて、標的位置制御、表裏制御、隠顕制御、反撃制御を行なうことで、訓練者30の状況に応じたより実践的な射撃訓練を実現する。また、訓練者を例えばA軍、B軍、C軍等に識別して認識し、システム側をB軍等と設定することで、訓練者を自軍、敵軍と認識して、この訓練者の自軍・敵軍の認識結果を、標的位置制御、表裏制御、隠顕制御、反撃制御等の制御の仕方に反映させることで、さらに実践的な射撃訓練を可能とする。
【0040】
また、標的部11の駆動部について、上下モータ16(Z方向;上下方向)、左右モータ17(X方向:左右方向)、前後モータ18(Y方向:前後方向)、表示回転部24(R方向)と多彩にすることにより、標的部の動きが複雑化して、より実践的で高度な射撃訓令を行なうことができる。
【0041】
(他の実施形態)
さらに、上記の標的装置1または標的システム2においては、図1に示すように、通信部15を標的装置1の本体から一定距離だけ離して設置することにより、アンテナが見えることで訓練者30から標的が露見したり、標的の攻撃がアンテナに悪影響を与えて性能が劣化するということがなくなる。また、標的部とアンテナが離れることで、実弾訓練の際にアンテナを破損することがなくなる。
【0042】
また、上述した実施形態においては、主にカメラ27からの映像信号に基づく訓練者の識別処理を中心に説明したが、図1および図2の赤外線センサ26a・音センサ26b・振動センサ26cからの検出信号に基づいて訓練者の検出を行なうことでも、同様に射撃訓練処理を実現することができる。また、この場合、カメラ27からの映像信号に基づく訓練者の識別結果に、赤外線センサ26a・音センサ26b・振動センサ26cからの検出信号を組み合わせて、より確実な訓練者の検出を行なうことも可能である。すなわち、映像信号の識別結果だけでなく、赤外線センサ26a、音センサ26b、振動センサ26cの検出結果が加わることを評価して、標的位置制御、表裏制御、隠顕制御、反撃制御等の制御の仕方を異ならせることが可能である。
【0043】
また、図9において、統制装置41と標的装置1との通信を行なうに当たり、標的を隠れさせた場合、無線が不達となる場合があるが、中継用無線部43、44を設けることで、より確実な統制装置41と標的装置1との間の通信が可能になる。また、図9においては、屋外の訓練用に、Z軸(垂直方向)の駆動部を外して、ベニア等の標的部に交換することにより、実弾での訓練に対応することができる。また、標的部をZ軸が隠れるまで埋めることにより、すべての動きを満足した実弾での訓練が可能になる。
【0044】
また、標的装置1のカメラ27からの映像信号に基づく訓練者30の識別結果、赤外線センサ26a・音センサ26b・振動センサ26cからの検出信号に基づいて、例えば、訓練者が一定時間、検出できない場合は、統制装置41の判断に基づいて、一定時間、電源部25をオフすることにより、標的装置1の消費電力を抑制することができる。この場合、標的装置1のカメラ27による検出処理および赤外線センサ26a・音センサ26b・振動センサ26cの検出処理だけは、図示しないバッテリにより起動させておくことが可能である。または、統制装置41の制御下において、一定時間、電源部25をオフしている間でも、所定時間の間隔を置いて、標的装置1のカメラ27による検出処理および赤外線センサ26a・音センサ26b・振動センサ26cの検出処理を行なうことで訓練者の検出機能を維持させることができる。
【0045】
以上記載した様々な実施形態は複数同時に実施することが可能である。また、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1…標的装置、11…標的部、11’…表示部、12…制御部、14…車両駆動部、15…通信部、16…上下(Z方向)モータ、17…左右(X方向)モータ、18…前後(Y方向)モータ、19…レーザ銃、22…記憶部、23…レーザ検出部、24…表示回転(R方向)部、25…電源部、26a…赤外線センサ、26b…音センサ、26c…振動センサ、27…カメラ、28…画像処理部、30…訓練者、31…人員用制御装置、32…レーザ銃、41…統制装置、42…通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
訓練者の画像または前記訓練者に付される識別マークを記憶する記憶部と、
前記訓練者を撮像するカメラと、
前記記憶した訓練者の画像または識別マークを前記カメラで撮像して得た画像と比較し、訓練者を識別する識別部と、
隠顕、移動及び反撃の少なくともいずれかの動作が可能な標的部と、
前記識別部による訓練者の識別結果に基づいて前記標的部の動作を制御する制御部と、
を具備したことを特徴とする標的装置。
【請求項2】
前記記憶部に記憶された訓練者の画像または識別マークは、自軍および敵軍のいずれかに区別して記憶され、
前記制御部は、前記識別した訓練者が自軍か敵軍かに基づいて前記標的部の動作を制御することを特徴とする請求項1記載の標的装置。
【請求項3】
前記カメラで撮像して得た画像に基づいて、前記訓練者の位置、移動方向、移動速度、人数の少なくともいずれかを検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記検出部が検出した訓練者の位置、移動方向、移動速度、人数の少なくともいずれかに基づいて、前記標的部の動作を制御することを特徴とする請求項1または2記載の標的装置。
【請求項4】
訓練者の位置を検出する検出部と、
前記訓練者の射撃の標的となる標的部と、
前記検出部の検出した前記訓練者の位置に基づいて、前記標的部をX方向およびY方向に移動する移動部と、を具備することを特徴とする標的装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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