説明

標示具

【課題】ICタグの標示情報の検出が容易に行え、標示情報を高い検出精度で読み取れる標示具を提供する。
【解決手段】地面に設置される標示具Bであって、標示情報を記憶した記憶回路27が内蔵されたICタグ25と、上面に視認可能な表示30が付され、ICタグ25の上面を覆う金属製の表示プレート22と、表示プレート22の下面に配置された磁性層23と、磁性層23とICタグ25の間に挿入された非磁性層24とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部が地面に埋設される杭のような標示体の頭部に装着されるか、地盤表面に直接固定または接着されることにより地面に設置され、土地の境界表示や区画番号、基準点からの距離、測量点などの地理的情報や、ケーブル、水道管、ガス管などの埋設状況のような地上情報あるいは道路、鉄道などのメンテナンス履歴情報を備えた標示具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の標示具として、本願出願人は、地盤に一部もしくは全部が埋め込まれる位置標示部材の頭部に形成した上部開放の収容部に、標示情報を内蔵した識別体を収容したもので、検出器を前記頭部へ近付けることにより前記識別体から標示情報を非接触で読出できる標示杭について出願済である(特許文献1参照)。この場合の識別体としては例えばICタグが用いられ、検出器としては指向性のある磁界を発生させる磁界発生器と受信器とを備えたものが用いられ、磁界発生器で発生した磁界が前記ICタグのコイル状のアンテナに付加されたとき、アンテナから発信される特有の周波数の電磁波を前記受信器で受信する。
【特許文献1】特開2004−309255号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、前記先行技術の場合、識別体であるICタグが標示杭の頭部に形成した収容部に収容されているため、前記頭部の上方に検出器を接近させて磁界を付加したときに、前記ICタグのアンテナから電磁波が主に上方に向かって発信される。検出作業の従事者は、通常、側方から標示杭に近付くので、標示杭の側方から検出器を接近させて磁界を付加させたときには、アンテナから発信される電磁波の強度が弱くなって標示情報の検出精度が低いか、標示情報の読取りができないことがある。
【0004】
本発明の目的は、ICタグの標示情報の検出が容易に行え、標示情報を高い検出精度で読み取れる標示具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記した目的を達成するために、本発明の第1構成にかかる標示具は、地面に設置される標示具であって、標示情報を記憶した記憶回路が内蔵されたICタグと、上面に視認可能な表示が付され、前記ICタグの上面を覆う金属製の表示プレートと、前記表示プレートの下面に配置された磁性層と、前記磁性層とICタグの間に挿入された非磁性層とを備えている。ここで、地面に設置とは、地面に埋設される杭のような標示体の頭部に装着する場合や、標示体を用いることなく岩場のような地盤表面に釘による打ち付けや接着などによって取り付ける場合を含む。また、表示プレートに付される視認可能な表示とは、文字や番号のような表記のみならず、「+」、「−」、「×」または「○」など、標示具の存在を視認させる単純な記号を含む。
【0006】
この第1構成によれば、外部からの磁界の付加によってICタグから発信される電磁波は、磁性層に引き込まれるが、その際、表示プレートの下面に配置された磁性層とICタグとの間に、非磁性層の厚み分だけの間隔があるから、ICタグと磁性層との間の磁気抵抗が大きくなるので、ICタグからからの電磁波は、ICタグの径方向外方に漏れ出したのち、磁性層に引き込まれる。したがって、作業者が通常の検出作業で標示具に側方から検出器を近づけたとき、この側方からの標示具の検出および標示情報の読出しが容易になる。また、ICタグの上面は金属製の表示プレートで覆われるので、ICタグが外部環境から保護される。さらに、ICタグの情報が読み取れない場合でも、表示プレートの表示を視認することによって、標示具の存在を認識できる。
【0007】
第1構成において、前記表示プレートは中心部に挿通孔が形成されており、さらに、前記挿通孔と合致する挿通孔を有し、前記磁性層、非磁性層およびICタグのうち、少なくとも非磁性層およびICタグを貫通し、かつ標示具の下面に露出するワッシャを備えるのが好ましい。
【0008】
この構成によれば、ピンや釘を前記表示プレートの挿通孔とワッシャの挿通孔に挿通して杭に打ち込むことにより標示具を杭に装着するとき、打ち込みの際の衝撃は、表示プレートのみ、または表示プレートおよび磁性層と、ワッシャとに加えられるだけで、ICタグには直接加えられないから、ICタグが保護される。
【0009】
前記第1構成にかかる標示具において、好ましくは、前記非磁性層がゴムまたはスポンジである。このような構成にした場合、外部から標示具に対して衝撃が加わっても、この衝撃を前記ゴムまたはスポンジにより吸収緩和できるので、ICタグを損傷から保護することができる。
【0010】
前記第1構成にかかる標示具において、好ましくは、前記磁性層が磁性体からなるシートである。磁性体がシートであることで、表示プレートに対して接着などにより容易に取り付けることができて施工性に優れ、シート全体にわたって均一な厚みとすることですべての部位で均等な磁気特性を確保できる。
【0011】
本発明の第2構成にかかる標示具は、地面に設置される標示具であって、標示情報を記憶した記憶回路が内蔵されたICタグと、上面に視認可能な表示が付され、前記ICタグの上面の一部を覆う金属製の表示プレートとを備えている。
【0012】
この構成によれば、ICタグの上面の一部しか金属製の表示プレートで覆われない、つまり、ICタグ上面の一部を除く他の部分は表示プレートで覆われずに外部に露出している。したがって、外部からの磁界の付加によってICタグから発信される電磁波は表示プレートで覆われていない露出部分でその通過が阻まれることなく側方ないし上側方へ多く漏れ出す。これにより、第1構成にかかる標示具と同様、作業者が通常の検出作業で標示具に側方から検出器を近づけたとき、この側方からの標示具の検出および標示情報の読出しが容易となる。この標示具の場合でも、ICタグの上面の一部を除いて金属製の表示プレートで覆われているので、ICタグが外部環境から保護される。さらに、ICタグの情報が読み取れない場合でも、表示プレートの表示を視認することによって、標示具の存在を認識できる。
【0013】
前記第2構成にかかる標示具において、さらに、前記ICタグを保持する樹脂製の保持体を備え、前記表示プレートは中心部に挿通孔が形成され、前記挿通孔と合致する挿通孔を有し、前記保持体とICタグを貫通して前記表示プレートの下面に接触し、かつ標示具の下面に露出するワッシャを備えているのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、ICタグが保持体により標示具内に安定して保持される。保持体は樹脂製なので電磁波を通過させるから、検出の妨げとならない。しかも、ピンや釘を前記表示プレートの挿通孔とワッシャの挿通孔に挿通して杭に打ち込むことにより標示具を杭に装着するとき、打ち込みの際の衝撃は、表示プレートとワッシャとに加えられるだけで、ICタグには直接加えられないから、ICタグが保護される。
【0015】
前記第2構成にかかる標示具において、好ましくは、前記表示プレートに外周部から中心部に向かって凹入した1つ以上の凹入部が設けられ、前記ICタグの上面の一部が前記凹入部から露出している。
【0016】
この構成によれば、表示プレートの外径をICタグと同一にまで大きくして表示プレートを目立ち易くしても、表示プレートに設けた凹入部によりICタグを露出させて、検出精度を向上させることができる。
【0017】
前記第2構成にかかる標示具において、好ましくは、前記表示プレートの外周に、前記ICタグの上面の一部が前記外周を取り囲む形で露出している。これによれば、やはりICタグの露出部分が増えるので、検出精度が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、表示プレートにより覆われたICタグから電磁波を漏れ出させることができるので、標示具の検出および標示情報の読出しが容易になる。また、ICタグの上面は金属製の表示プレートで覆われるので、ICタグが外部環境から保護される。さらに、ICタグの情報が読み取れない場合でも、表示プレートの表示を視認することによって、標示具の存在を認識できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1 は、本発明の第1 実施形態にかかる標示具を杭に装着した斜視図を示す。同図に示す杭Aは、地盤Gに進入する先鋭部11と胴部12と頭部13とからなる杭本体1と、前記頭部13を覆うキャップ14と、このキャップ14に装着される標示具Bとを備えている。標示具Bは、杭本体1 を地盤Gの所定の位置に打ち込んで埋設する前または埋設した後で、杭本体1 のキャップ14の頂面14a中央に設けた円形の凹所14bに載置し、金属製のピン、または市販の釘やねじ類のような係止部材15をハンマーで打ち込むことにより固着される。杭本体1は頂部14aを除く全部もしくは一部が地盤Gに埋設されるが、この例では、二点鎖線GLで示すように、キャップ14の直下まで埋設されている。
【0020】
前記杭本体1の材料には、樹脂製、木製、コンクリート製のものが用いられ、好ましくは樹脂製のものが用いられる。樹脂製のものとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチロール、ポリアミド、ポリスルホンなどの熱可塑性樹脂の単独もしくは混合物、あるいは廃棄樹脂が用いられる。また、キャップ14の材料には、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂やフェノール、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂が用いられる。
【0021】
図2は図1の要部の拡大断面図を示す。同図に示すように、杭A に装着される標示具Bは、上層から金属製の表示プレート22と磁性層23と非磁性層24とICタグ25とが積層され、中央部にワッシャ29が挿入された構造となっている。つまり、分解斜視図である図3に示すように、下面に磁性層23が配置された金属製の表示プレート22と標示情報を記憶した記憶回路27が内蔵され、アンテナ26を備えたICタグ25との間に、シート状の非磁性層24を挟み込み、非磁性層24とICタグ25の中央部にワッシャ29を嵌め込んだ構造となっている。これら表示プレート22、磁性層23、非磁性層24、ICタグ25、およびワッシャ29は、標示具B5の中心軸Oに沿って同心状に配置されて互いに接着により接合されている。接着により互いに結合されている。
【0022】
前記磁性層23としては、フェライト粉末の焼結体からなるシートやアモルファス金属からなるシートが用いられ、前記表示プレート22の下面に接着することで形成するが、これ以外に、例えばフェライト粉末の焼結体やアモルファス金属粉を含む塗料を前記表示プレート22の下面に一定厚でコーティングして形成してもよい。非磁性層24としては、ゴムやスポンジのような、磁性を持たず、弾力性があって衝撃緩和性のある材料を用いるが、ゴムより硬い樹脂を用いてもよい。
【0023】
表示プレート22および磁性層23のそれぞれの中央部には、係止部材15を挿通させるための挿通孔22a,23aが形成されている。磁性層23の下方に位置する非磁性層24およびICタグ25にはそれぞれ、前記挿通孔22aよりも大径で、ワッシャ29の外径とほぼ同一内径の開口24aおよび25aが形成されており、これら開口24a,25aにワッシャ29が挿通される。ワッシャ29はアルミニウム製あるいはシリコンゴムのような樹脂製で、その中央部に前記表示プレート22の挿通孔22aの内径と合致した径の挿通孔29aが設けられている。
【0024】
このようにして各部材22〜25が組み合わされると、非磁性層24とワッシャ29の上面が面一となり、磁性層23の下面に接触する。ワッシャ29の下面はICタグ25の下面と面一であり、標示具Bの下面に露出している。ワッシャ29は、磁性層23をも貫通させてもよく、その場合、ワッシャ29の上面は表示プレート22の下面に接触する。ワッシャ29は、標示具Bを図1の杭本体1の頭部13に係止部材15で打ち付けて固着するときの衝撃緩和を目的としてICタグ25の保護のために用いられるものである。また、表示プレート22、磁性層23およびワッシャ29の挿通孔22a,23a,29aは、ハンマーで係止部材15を打ち込みやすくするためのものである。したがって、標示具Bを接着により杭本体1の頭部13に固着する場合には、ワッシャ29および挿通孔22a,23a,29aは割愛できる。
【0025】
前記表示プレート22は、ステンレス鋼、真鍮、アルミニウム等の金属で形成されており、標示具Bの平面図である図4に示すように、その上面に視認可能な表示として、識別または管理用の番号もしくは記号のような識別表示30が刻印または印刷により付されている。図4に示す一例の場合、「11−571」という識別記号と、「国土調査」という標示目的が記されている。この視認可能な表示とは、文字や番号の表記のみならず、「+」、「−」または「○」などの単純な記号も含み、標示具Bの存在を視認させるものであればよい。
【0026】
前記ICタグ25は、その平面図である図5に示すように、共振体としての環状のアンテナ26と、このアンテナ26に接続されて標示情報を記憶した記憶回路(ICチップ)27とを備えた磁気共鳴体が用いられ、このICタグ25を上下面からシリコンゴムのような耐薬品性、耐熱・耐水性および電磁波透過性に優れた樹脂シートでサンドイッチ状に挟み込んで溶着した樹脂モールド31により封入して形成されている。前記アンテナ26の始端と終端とは接続部26aで接続され、前記記憶回路(ICチップ)27はその対面側に設けられているが、対面側でなくともよい。
【0027】
図6に示すように、ICタグ25と磁性層23とは、非磁性層24によって離間している。つまり、非磁性層24が一定の隙間を形成している。ICタグ25はそのアンテナ26がICタグ25の厚み方向の中間部に位置している。
【0028】
つぎに、第1実施形態の動作について説明する。図1に示す杭Aを、図2 に示すように、調査対象となった場所の地盤Gに打ち込み、杭本体1の頭部13の頂面14aに、表示プレート22と、地理的情報や埋設状祝のような標示情報を記憶回路27に記憶させたICタグ25とを備えた標示具Bを係止部材15で取り付ける。この杭Aから標示情報を読み出す場合、標示具Bの側方から作業者が検出器60を近付け、標示具Bに対して磁界を付加する。この磁界の付加によりICタグ25のアンテナ26(図4)が共振し、電磁波Wを発信する。この電磁波Wの検出器60での受信強度が一定レべル以上となったとき、検出器60に設けた報知灯または報知音発生手段が作動して作業者に報知する。これにより、杭Aの場所がつきとめられる。図6に示すように、ICタグ25から発信された電磁波Wは、磁性層23に引き込まれるが、その際、ICタグ25と磁性層23との間に間隔があるから、その間の磁気抵抗が大きくなるので、アンテナ26から径方向外方に大きく漏れ出したのち、磁性層23に引き込まれる。この漏れ出した電磁波Wを図2の検出器60で受信し、検出器60に設けた表示手段で標示情報として表示する。
【0029】
また、表示プレート22には図4の表示30が付されているから、標示具Bの標示情報が読み取れない場合でも目視によって標示具Bの存在を視認できるので、表示プレート22の上面の表示30に対応する標示情報をコンピュータのデータから取り出すことができる。
【0030】
なお、この例では、標示具Bを杭Aに装着した場合について説明したが、杭Aを用いることなく、岩場などに標示具Bを直接接着した場合も同様に動作する。
【0031】
図7は第2実施形態を示す。この第2実施形態による標示具Bは、表示プレート22として、真鍮、アルミニウムのような金属で形成された偏平な円錐台状の市販の金属鋲を用いたものである。この標示具Bの場合、表示プレート22の中央部に凹所22dが形成され、この凹所22dの中央部の挿通孔22aに釘のような係止部材15を打ち込んで、係止部材15の頭部を凹所22dの底面に当てることで、地面Gに標示具Bを設置できるようになっている。係止部材15の頂面に「+」印のような表示30が付される。その動作については第1実施形態と同様である。
【0032】
図8は第3実施形態を示す。この第3 実施形態による標示具Bは、特にコンクリートのような固い地面への設置に適している。この場合、表示プレート22として、真鍮、アルミニウムのような金属で形成された円板状の市販のフラット鋲を用いているが、上面が球面状に盛り上がった二点鎖線で示す基準点鋲22A、上面の中央部が球面上に盛り上がった水準点鋲22Bを用いることもできる。この標示具Bの場合、金属鋲22の下面側にはアンカーボルトのような係止部材15の雄ねじ15aが係合する雌ねじ32が形成されている。前記フラット鋲22の上面にも「+」印のような表示30が付される。コンクリート地面Gへの設置にあたっては、まず、地面Gにドリルのような切削具で孔を形成し、この孔にアンカーボルト15の一端を植設し、その他端にフラット鋲22の雌ねじ32をねじ込むことにより行う。その動作については第1実施形態と同様である。
【0033】
図9は第4実施形態を示す。この第4実施形態による標示具Bは、境界部分への設置に適するものであって、地面に直接設置するプレートタイプである。上面に「境界」という文字および「⇒」を含む表示30が付された長方形状の境界表示用プレート40の長手方向の一側部に浅い凹所からなる取付部41を設け、この取付部41に表示プレート22付きの標示具Bを載置し、取付部41に設けた貫通孔42を通して釘のような係止部材15を地盤Gに打ち込む。境界プレート40の他側部にもうーつの貫通孔43を設け、この貫通孔43を通して別の係止部材45を地盤Gに打ち込む。
【0034】
前記プレート40はアルミニウムまたは真鍮のような金属製であり、電磁波Wを透過しにくい。そこで、この標示具Bは、図11に示すように、ICタグ25の下側にも非磁性層24と磁性層23とを設けて、ICタグ25の下側でも電磁波Wが標示具Bの側方へ漏れ出すようにしている。
【0035】
第1ないし第4実施形態では、磁性層23と非磁性層24を用いたが、次に、これらを用いない第5ないし第7実施形態について説明する。
【0036】
図11および図12は第5実施形態を示す。この第5実施形態による標示具Bは、第1実施形態における磁性層23や非磁性層24を必要としない例である。この実施形態の標示具Bでは、後述するように、ICタグ25の上面は表示プレート22で完全に覆われることなく、その一部が露出している。上層となる円板状の表示プレート22の下側にICタグ25、保持体28およびワッシャ29を配置し、ワッシャ29がICタグ25と保持体28の中央部を貫通している。表示プレート22の中央部にピン、釘またはねじ体のような係止部材15(図2)を貫通させるための挿通孔22aが設けられている。ワッシャ29はアルミニウム製あるいはシリコンゴムのような樹脂製で、その中央部に前記表示プレート22の挿通孔22aの内径と合致した内径の挿通孔29aが設けられている。
【0037】
最下層となる保持体28はシリコンゴムのような樹脂材で形成されており、その上部に前記ICタグ25を収容する凹所からなる収容部28aが形成されている。ICタグ25および保持体28の中央部には、ワッシャ29を挿通させる開口25a,28bが設けられている。これら開口25a,28bの内径は、挿通孔22aよりも大径であり、ワッシャ29の外径29bとほぼ同一である。これらの各部材22、25、28および29は標示具B5の中心軸Oに沿って同心状に配置されて互いに接着により接合されている。
【0038】
このようにして各部材22、25、28および29が組み合されると、ICタグ25、ワッシャ29および保持体28の各上面が面一となり、表示プレート22の下面に接触する。ワッシャ29の下面は保持体28の下面と面一であり、標示具Bの下面に露出している。このようにすることで、ICタグ25とワッシャ29とは、表示プレート22と保持体28の間にフィットした状態で収容される。ここで、前記ワッシャ29と保持体28は、標示具Bを図1の杭本体1の頭部13に係止部材15で打ち付けて固着するときの衝撃緩和を目的としてICタグ25の保護のために用いられるものであるが、標示具Bを接着により杭本体1の頭部13に固着する場合には割愛できる。
【0039】
前述のとおり、表示プレート22、ICタグ25、保持体28およびワッシャ29は同心状に配置されているので、図12に示すように、ICタグ25のアンテナ26は表示プレート22と同心に配置される。このようにアンテナ26が表示プレート22と同心であると、磁界が付加されたとき、アンテナ26からの電磁波Wは周方向のいずれの箇所からもほぼ均等に発信されるので、均一な検出精度が得られる。この場合、表示プレート22で覆われていないICタグ25および保持体28の周囲および下面を通過して側方ないし上側方へ電磁波Wが漏れ出す。表示プレート22には、その外周部から中心部に向かって凹入したーつの凹入部22bが設けられている。凹入部22bを設けたことで、ICタグ25の上面の一部が凹入部22bから露出する。
【0040】
このような設計を採用することで、表示プレート22の外周面に検出器60を近付けてICタグ25に磁界を付加すると、前記アンテナ26からの電磁波Wが、表示プレート22の存在しない凹入部22bの露出部分から上方および側方へ漏れ出す。この電磁波Wを図2の検出器60で受信し、検出器60に設けた表示手段で標示情報として表示する。この第6実施形態の標示具Bにおいて、第1実施形態のように表示プレート22の下面に磁性層23を配置し、磁性層23とICタグ25の間に第1実施形態の非磁性層24を挿入すると、前記凹入部22bとの相乗効果により、電磁波Wの漏れ量がさらに多くなって、検出および読取り精度が一層向上する。
【0041】
図13は第6実施形態を示す。この第6実施形態は、幅広の凹入部22bを複数設けたものを示している。同図では、複数の凹入部22bを周方向に90°の間隔で4つ設けた例を示しているが、その数は2つ、3つまたは5つ以上であってもよい。このように、凹入部22bを周方向に間隔をあけて複数設けた場合、ICタグ25のアンテナ26からの電磁波WがICタグ25の周方向の複数箇所において多く漏れ出すので、検出性に優れ、標示情報の読取りが一層精度よく行える。
【0042】
図14は第7実施形態を示す。この第7実施形態の場合、保持体28を省略し、表示プレート22の外径をICタグ25の外径よりも若干小さく設定している。したがって、ICタグ25の外周部25dが表示プレート22によって覆われることなく標示具Bの上面に露出している。この露出した外周部25dにICタグ25のアンテナ26を配置しており、これによって、アンテナ26からの電磁波WがICタグ25の露出した外周部上面から強い強度で発信される。この第7実施形態においても、第1実施形態のように表示プレート22の下面に磁性層23を配置し、磁性層23とICタグ25の間に第1実施形態の非磁性層24を挿入すると、電磁波Wの漏れ量がさらに多くなって、検出および読取り精度が一層向上する。
【0043】
図1〜図9に示した第1〜第4実施形態でも、図11に示した保持体28を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる標示具を装着した杭の斜視図である。
【図2】図1の要部の拡大断面図である。
【図3】標示具の分解正面図である。
【図4】表示プレートの平面図である。
【図5】ICタグの平面図である。
【図6】標示具における電磁波の漏れ状況を模式的に示す説明図である。
【図7】第2実施形態にかかる標示具の拡大断面図である。
【図8】第3実施形態にかかる標示具の拡大断面図である。
【図9】第4実施形態にかかる標示具を装着した境界表示用プレートを示す分解斜視図である。
【図10】第4実施形態の標示具の拡大断面図である。
【図11】第5実施形態にかかる標示具の分解斜視図である。
【図12】同じく第5実施形態の標示具の拡大斜視図である。
【図13】第6実施形態にかかる標示具の拡大斜視図である。
【図14】第7実施形態における表示プレートとICタグの組み合わせ例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 杭本体
13 頭部
15 係止部材
22 表示プレート
22a 挿通孔
22b 凹入部
23 磁性層
24 非磁性層
25 ICタグ
25a 開口
26 アンテナ
27 記憶回路
28 保持体
29a 挿通孔
29 ワッシャ
30 表示
60 検出器
A 杭
B 標示具
G 地盤
W 電磁波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に設置される標示具Bであって、
標示情報を記憶した記憶回路27が内蔵されたICタグ25と、
上面に視認可能な表示30が付され、前記ICタグ25の上面を覆う金属製の表示プレート22と、
前記表示プレート22の下面に配置された磁性層23と、
前記磁性層23とICタグ25の間に挿入された非磁性層24と、
を備えた標示具。
【請求項2】
請求項1において、前記表示プレート22は中心部に挿通孔22aが形成されており、さらに、
前記挿通孔22aと合致する挿通孔29aを有し、前記磁性層23、非磁性層24およびICタグ25のうち、少なくとも非磁性層24およびICタグ25を貫通し、かつ標示具Bの下面に露出するワッシャ29を備えた標示具。
【請求項3】
請求項1において、前記非磁性層24がゴムまたはスポンジである標示具。
【請求項4】
請求項1または3において、前記磁性層23が磁性体からなるシートである標示具。
【請求項5】
地面に設置される標示具Bであって、
標示情報を記憶した記憶回路27が内蔵されたICタグ25と、
上面に視認可能な表示30が付され、前記ICタグ25の上面の一部を覆う金属製の表示プレート22と、
を備えた標示具。
【請求項6】
請求項5において、さらに、
前記ICタグ25を保持する樹脂製の保持体28を備え、
前記表示プレート22は中心部に挿通孔22aが形成され、
前記挿通孔22aと合致する挿通孔29aを有し、前記保持体28とICタグ25を貫通して前記表示プレート22の下面に接触し、かつ標示具Bの下面に露出するワッシャ29を備えた標示具。
【請求項7】
請求項5または6において、前記表示プレート22に外周部から中心部に向かって凹入した1つ以上の凹入部22bが設けられ、前記ICタグ25の上面の一部が前記凹入部22bから露出している標示具。
【請求項8】
請求項5または6において、前記表示プレート22の外周に、前記ICタグ25の上面の一部が前記外周を取り囲む形で露出している標示具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−92512(P2009−92512A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263385(P2007−263385)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(591034017)株式会社リプロ (15)
【Fターム(参考)】