説明

標識された抗生物質を使用した抗生物質耐性の同定

本発明の対象は、微生物における抗生物質耐性の検出方法であって、疑われる微生物を標識された(蛍光性の)抗生物質に曝す工程と、その微生物と同じ種類の非耐性の微生物との間の差異を観察する工程とを含む方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、微生物における抗生物質耐性の検出方法である。
【0002】
日常の診断手法における微生物の特性決定は、種の個性の調査と、その抗生物質に対する感受性の調査を含む。これを達成するためには、微生物をその環境から採取し、そして個別の同定(ID)及び抗生物質感受性試験(AST)のために選択的な環境で富化させる必要がある。最近では、微生物のAST/IDは、生化学的特徴のアレイの存在もしくは不在の同定及び抗生物質の存在下での増殖の(不)能力の同定によって達成される。選択的に、DNAはサンプルから抽出でき、次いでプールされたDNAは、特定の配列の存在/不在について、遺伝子増幅技術を利用して試験される。これは、サンプル中の生物の存在を知らせることができる。同様に、サンプル中での、抗生物質耐性をコードする遺伝子の存在を検出できる。定義上、サンプルから直接的にDNAを抽出することで、未知の細胞混合物からのプールされたDNAが与えられる。曖昧でない結果は、DNAが1つの純粋なコロニーから抽出される場合にのみ達成できる。
【0003】
スタフィロコッカス・アウレウスは、院内感染あるいは地域ベースの感染の最も一般的な原因の一つであり、それは、高率な罹患率と死亡率を伴う重度の疾患を引き起こす。近年では、メチシリン耐性のスタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)に対して耐性を示す細菌株の数の増加は、深刻な臨床的かつ疫病的な問題となっている。それというのも、この抗生物質(もしくは類似体)は、ブドウ球菌感染の治療における最初の選択肢と見なされているからである。この抗生物質に対する耐性は、全てのβ−ラクタム系抗生物質に対する耐性を暗示するものである。これらの理由のため、メチシリン耐性の検出における精度と迅速性は、主として、感染した患者での適切な抗生物質処置に加えて、病因環境におけるMRSA単離物の制御を保証し、その伝播を防ぐために重要となる。
【0004】
MRSA菌株は、mecA遺伝子を保有する。前記遺伝子は、メチシリン及び全てのβ−ラクタム系抗生物質に対して低い親和性を有する改変されたPBP2タンパク質(PBP2′もしくはPBP2a)をコードしている。メチシリン耐性の表現型的発現は、S.アウレウスに関する増殖条件、例えば温度もしくは培地の容量オスモル濃度に依存して変化することがあり、そしてこの変化が、メチシリン耐性の検出に使用される方法の精度に影響を及ぼすことがある(1)。ヘテロ耐性細菌株は、完全耐性菌株に発展し、β−ラクタム系抗生物質が与えられる患者において淘汰されることがあり、こうして治療の失敗が引き起こされる。臨床的な観点からは、これらの菌株は、従って完全耐性と見なされるべきではない。
【0005】
メチシリン耐性を検出するためには、幾つかの方法があり(1,9)、それには、最低阻害濃度MICを測定する古典的方法(ディスク拡散法、Etest法もしくはブロス希釈法)、オキサシリン含有の固体培養培地を用いたスクリーニング技術、そしてmecA遺伝子もしくはそのタンパク質産物(PBP2′タンパク質)を検出する方法(3,4)が含まれる。mecA遺伝子の検出は、メチシリンに対する耐性を測定するための参考法と見なされる(1)。しかしながら、世界中の多くの研究室は、必要な資金や、MRSA単離物を検出するための分子的アッセイを提供するために必要な設備能力あるいは熟練したスタッフを有していない。従って、他の、より有用なスクリーニング法を、日常の臨床実務に取り入れることが必須である。更に、抗生物質耐性の存在は、多くのレベルでその関連性を有し、その全てが臨床的に重要である。
【0006】
1.mecA、mef(E)などの耐性を運ぶ遺伝子の存在。
【0007】
2.前記の耐性メカニズムの表現型発現を阻害するリプレッサー遺伝子;例えばMecAリプレッサーの存在。
【0008】
3.多剤耐性のメカニズム;例えばリボソーム結合部位の改変と排出メカニズムを介したマクロライド耐性。
【0009】
4.表現型として検出可能な転写及び翻訳を介して制御される前記耐性メカニズムの発現のレベル。
【0010】
最近の培養技術は、孤立したコロニーの単離と、引き続いての同定と耐性試験を必要とし、単コロニーは、単一細胞から得られることが想定され、従って純粋であると思われる。しかし、現実には、臨床サンプルからの純粋なコロニーの生成は保証できない。それは、病原体はしばしばバイオフィルム集落に生息しているからである。同様に、増幅技術を用いると、多くの細胞から複数の核酸配列が抽出されるため、従って誤った陽性の結果がもたらされることがある。同定と耐性が実施され、個々の細胞で読み出すことができる場合にのみ、侵襲病原体の真実の像が可能となる。
【0011】
広い範囲の抗生物質は、第一級アミノ基を有する。当該技術分野においては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルなどの試薬が前記第一級アミンと容易に反応することはよく知られている。
【0012】
地域と健康管理システムの両方での抗生物質耐性の高まる伝播は、分子生物学の精度と速度を必要としている。しかしながら、これらのアッセイの複雑性と費用により、日常の試験環境での広く使用されないでいる。
【0013】
微生物の同定の困難性と、生物学的試料における抗生物質に対する潜在的な耐性を考慮すると、サンプルから直接的に病原体を迅速に、培養することなく、かつ増幅することなく同定でき、そして選択された抗生物質に対する耐性の存在を検出もしくは排除できることが望ましい。
【0014】
本発明の目的は、細胞レベルで同定と耐性試験を同時に可能にすることによる解決策を提供することである。これにより、アッセイの複雑性が減るので、表現型の明白な割り当てが個々の細胞について可能である。前記アッセイは、全ての往来患者の、例えばMRSAに関するスクリーニングなどのスクリーニングプログラムを可能にするために、取り扱い時間と所要時間を短縮するように設計される。
【0015】
このように、本発明の第一の対象は、生物学的試料中の予め決められた微生物の抗生物質耐性を検出するための方法であって、以下の工程:
(a)標識された抗生物質を提供する工程と、
(b)前記標識された抗生物質と、前記微生物を含む生物学的試料とを、当該標識された抗生物質が当該微生物中のその抗生物質の結合部位に結合できる条件下で接触させる工程と、
(c)前記標識された抗生物質を前記微生物中で検出する工程と、
(d)検出可能な標識の量が、前記の予め決められた微生物のその非耐性形における検出可能な標識の量に対して変更されている微生物を同定する工程と、
を含み、前記工程(d)で同定された微生物が、前記抗生物質に対して耐性の微生物である、前記方法である。
【0016】
前記方法の基礎となる原理は、ある生物が抗生物質に対して感受性もしくは耐性である場合に、該生物の耐性もしくは感受性の対応生物とは顕著に異なるということである。抗生物質は、細胞内腔、細胞質、細胞壁のいずれかにおける、そのそれぞれの結合部位に、又はβ−ラクタマーゼ類などの分泌されるタンパク質に結合しうる。耐性メカニズムに依存して、耐性生物は、大抵、例えばリボソームもしくはペニシリン結合性タンパク質に対する低減された親和性のため、抗生物質に対して低減された親和性を示すか、あるいは抗生物質に対して親和性を示さないことがある。反対に、耐性メカニズムが外側の細胞膜への吸収/吸着によるものである場合に、耐性生物は、高度に高められた蛍光を示す。
【0017】
生物学的試料は、抗生物質耐性の微生物を含むことが疑われる、臨床的試料あるいは食品試料などの生物学的起源の任意の試料であってよい。微生物は、細菌、酵母及び糸状菌、特にグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌からなる群から選択できる。
【0018】
好ましくは、前記の予め決められた微生物は、スタフィロコッカス、エンテロコッカス及びストレプトコッカスからなる群から選択される。
【0019】
より好ましくは、前記の予め決められた微生物は、メチシリン耐性のスタフィロコッカス、バンコマイシン耐性のスタフィロコッカス、バンコマイシン耐性のエンテロコッカス及び高レベルアミノグリコシド耐性のエンテロコッカスからなる群から選択される。
【0020】
該微生物は、さらにより好ましくは、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、メチシリン耐性のスタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)、バンコマイシン耐性のスタフィロコッカス・アウレウス(VRSA)、バンコマイシン耐性のスタフィロコッカス(VRS)、バンコマイシン耐性のエンテロコッカス(VRE)、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumoniae)、薬剤耐性のストレプトコッカス・ニューモニア(DRSP)及びアミノグリコシド耐性のエンテロコッカス(HLAR)からなる群から選択される。
【0021】
工程(a)で提供されるべき抗生物質は、任意の抗生物質であってよい。好ましくは、抗生物質は、アミノグリコシド系、カルバセフェム系、カルバペネム系、セファロスポリン系、グリコペプチド系、マクロライド系、モノバクタム系、β−ラクタム系抗生物質、キノロン系、バシトラシン、スルホンアミド系、テトラサイクリン系、ストレプトグラミン系、クロラムフェニコール、クリンダマイシン及びリンコサミドからなる群から選択される。
【0022】
より好ましくは、抗生物質は、β−ラクタム系抗生物質、マクロライド系、リンコサミド及びストレプトグラミン系から選択される。
【0023】
さらにより好ましくは、抗生物質は、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン、ロラカルベフ、エルタペネム、イミペネム、シラスタチン、メロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフスロジン、セフェピム、テイコプラニン、バンコマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、アズトレオナム、アモキシシリン、アンピシリン、アジオシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ナフシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、マフェニド、プロントシル、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファニリミド、スルファサラジン、スルフィソキサゾール、トリメトプリム、トリメトプリム スルファ、スルファメトキサゾール、コトリモキサゾール、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、エタンブトール、フォスフォマイシン、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジンアミド、キヌプリスチン/ダルフォプリスチン、リファンピン、スペクチノマイシン、アンフォテリシンB、フルカナゾール、フルオロピリミジン類、ゲンタマイシン及びクラブラン酸からなる群から選択される。
【0024】
最も好ましくは、抗生物質は、バンコマイシン、メチシリン、クリンダマイシン、トリメトプリム、トリメトプリム スルファ、ゲンタマイシン及びクラブラン酸から選択される。
【0025】
驚くべきことに、抗生物質を標識基で修飾することによっても、抗生物質の微生物中のその結合部位への結合が妨げられない。
【0026】
好ましくは、抗生物質は、発光標識基によって標識される。本発明において標識基として好適な多くの蛍光体が利用できる。標識基は、市場にあるフィルタに適合するように選択されうる。抗生物質は、微生物中で検出できる任意の好適な標識基によって標識することができる。好ましくは、標識基は、蛍光性の標識基である。より好ましくは、標識基は、フルオレセイン及びAtto−495−NSIから選択される。
【0027】
該標識基は、抗生物質に対して1つの官能基で結合させることができる。広い範囲の抗生物質は、第一級アミノ基を有する。例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルなどの蛍光性化合物は、抗生物質のアミノ基と反応することができ、こうしてフルオレセイン標識された抗生物質が得られる。クリンダマイシンなどの他の抗生物質は、標識基に結合しうるチオメチル基を有する。クリンダマイシンのメチル基を、ジチオ橋を形成するスペーサー分子と穏やかに置き換える条件が見出された。
【0028】
該標識基は、抗生物質に対して1つのスペーサーを介して結合させることができる。多くのスペーサーが当該技術分野で知られており、かつ適用できる。当該技術分野でよく知られるタンパク質化学を使用することで、スペーサーを結合させ、引き続き蛍光体を結合させる多くの方法が実現可能となる。好ましい一実施態様においては、第一級アミノ基を容易に蛍光体で標識できるので、システインが選択される。より長い炭素骨格と当該技術分野でよく知られる他の反応性基とを有する分子は、任意の蛍光体と抗生物質との間のリンカー/スペーサーとして選択することもできる。
【0029】
蛍光体で修飾された、スペーサーを有するもしくは有さない抗生物質のリストを、第1表にまとめる。抗生物質(特に第1表のもの)を、フルオレセインもしくはAtto−495−NSIで標識することが好ましい。
【0030】
同定と耐性状態とを組み合わせるために、工程(b)における、標識された抗生物質が微生物中のその抗生物質の結合部位に結合できる条件は、インサイチュー・ハイブリダイゼーション法によって阻害されない結合アッセイに参照がなされ、こうして個々の細胞及び細胞集団において、同定と耐性状態の両方の付随するあるいは引き続いての決定が可能となる。
【0031】
好ましい結合部位は、スタフィロコッカス中の、mecA遺伝子によってコードされるPBP2タンパク質(Penicillin Binding Protein(ペニシリン結合タンパク質))である。β−ラクタム系抗生物質に対して耐性のスタフィロコッカスにおいては、mecA遺伝子は、メチシリンと全てのβ−ラクタム系抗生物質について低い親和性を有する改変されたPBP2タンパク質(PBP2′もしくはPBP2a)をコードする。このように、より好ましい一実施態様においては、微生物は、メチシリンと全てのβ−ラクタム系抗生物質について低い親和性を有する改変されたPBP2タンパク質(PBP2′もしくはPBP2a)をコードするmecA遺伝子を有するMRSA菌株であり、かつ抗生物質はβ−ラクタム系抗生物質である。
【0032】
更に好ましい用途は、23sリボソームRNAにおける点突然変異による耐性の決定のためである。種々の位置での点突然変異は、マクロライド系、ケトライド系、テトラサイクリン、チアゾール系抗生物質、リンコサミン、クロラムフェニコール、ストレプトグラミン、アメシチン、アニソマイシン、スパルソマイシン及びピューロマイシンなどの広い範囲の抗生物質に対する耐性を誘発する。それぞれの点突然変異の詳細な効果を、第3表に列記する。23S rRNAの種々の位置での点突然変異は、同じ表現型をもたらすことがある。全ての可能性を網羅するために一連のオリゴヌクレオチドプローブが必要となる。本発明は、突然変異の位置に関係なく、抗生物質耐性を検出するためのコスト集中的かつ効率的な方法を提供する。
【0033】
もう一つの好ましい用途は、スタフィロコッカス・アウレウスの、その細胞壁ペプチドグリカンに支えられた表面タンパク質にバンコマイシンが結合するのを検出することである。バンコマイシン耐性のスタフィロコッカスは、抗生物質を、バンコマイシンの効果がなくなる程度まで結合する。従って、標識されたバンコマイシンは、好ましくは、耐性の生物に結合する。
【0034】
本発明においては、微生物中の検出可能な標識の量は、抗生物質の標識基のシグナルに相当する。検出可能な標識の量は、標識基から得られるシグナルに正比例することがある。
【0035】
本発明の方法は、抗生物質から開裂される標識基を取り除く工程及び/又は微生物に結合されていない標識された抗生物質を取り除く工程を含むことがある。かかる工程は、シグナル対ノイズ比を改善することがある。
【0036】
本発明の方法の工程(c)において、標識は、当該技術分野で公知の任意の好適な方法によって検出できる。該アッセイの読み出しは、個々の細胞にまで下がる解像度を必要とすることがある。好ましくは、標識は、落射蛍光顕微鏡検査、フローサイトメトリー、レーザ走査装置、時間分解蛍光測定、発光検出、同位体検出、ハイパースペクトラルイメージングスキャナー、表面プラズモン共鳴及び/又は他のエバネッセンスを基礎とする読み出し技術を介して検出される。
【0037】
本発明の方法の工程(d)において、検出可能な標識の量の変化は、検出可能な標識の増加でも、又は検出可能な標識の減少であってもよい。本発明の方法において、検出されるべき抗生物質耐性は、工程(a)における標識された抗生物質の提供によって予め決められる。第4表は、臨床的に関連のある微生物における通常知られる抗生物質に対する耐性メカニズムを示している。特定の予め決められた微生物の耐性メカニズム、例えば第4表に示される耐性メカニズムから、微生物/抗生物質耐性のどのような組み合わせが、抗生物質耐性細胞において検出可能な標識の増大された量を示すことが予測されるかと、どのような組み合わせが、検出可能な標識の低減された量を示すかを推定できる。例えば、検出可能な標識の量の減少は、β−ラクタム系抗生物質もしくはマクロライド系に対する微生物、例えばMRSA、ORSAなどで予想される。検出可能な標識の増大された量は、VRSAにおいて予想される。検出可能な標識の減少は、VRSAにおけるものとは異なる耐性メカニズムのため、バンコマイシン耐性のエンテロコッカスにおいて予想される。更なる詳細は、第4表に見いだせる。
【0038】
本発明においては、予め決められた微生物のその非耐性形は、検出可能な標識の量が変化したかどうか(減少したか又は増大したか)を決定するための参照として使用できる。予め決められた微生物のその非耐性形は、試料に添加されるか、あるいは個別の調製物中に存在してもよい。予め決められた微生物のその非耐性形は、少なくとも1つの更なる標識を有してよい。本願に記載される任意の標識を使用できるが、但し、本発明のアッセイにおいて存在する抗生物質及び/又は微生物の標識から区別するのに適していることを条件とする。予め決められた微生物のその非耐性形における検出可能な標識の量は、また、微生物、抗生物質及び標識基の1つ以上の組み合わせのための検出可能な量の特定の値もしくは範囲の形で、例えばデータシートの形で提供することもできる。特に、本発明のキットは、前記の予め決められた微生物のその非耐性形及び/又は前記のデータシートを含んでよい。
【0039】
本発明の方法は、また、予め決められた微生物のその耐性形を更なる対照として使用でき、又は予め決められた微生物のその耐性形における検出可能な標識の量の特定の値もしくは範囲を、微生物、抗生物質及び標識基の1つ以上の組み合わせのために、例えばデータシートの形で使用することもできる。予め決められた微生物のその耐性形は、少なくとも1つの更なる標識を有してよい。本願に記載される任意の標識を使用できるが、但し、本発明のアッセイにおいて存在する抗生物質及び/又は微生物の標識から区別するのに適していることを条件とする。特に、本発明のキットは、前記の予め決められた微生物のその耐性形及び/又は前記のデータシートを含んでよい。
【0040】
検出可能な標識の量の減少は、予め決められた微生物のその非耐性形における検出可能な標識の量に対して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%であってよい。特に、同定されるべき微生物は、前記標識を実質的に有さない微生物であってよい。
【0041】
検出可能な標識の量の増大は、予め決められた微生物のその非耐性形における検出可能な標識の量に対して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%又は少なくとも200%であってよい。
【0042】
本発明の更なるもう一つの実施態様においては、該方法は、生物学的試料における微生物の同定を含む。本発明の内容における"同定"は、特定の分類学的階級、例えば種、族、科、綱及び/又は目などに属する個体の微生物細胞の同定を指す。同定は、形態学的及び/又は生化学的な分類体系に基づいて実施できる。
【0043】
プローブは、微生物の同定のために使用することができる。予め決められた微生物は、インサイチュー条件下で微生物中の核酸と特異的にハイブリダイズすることができる標識された核酸、特に標識されたオリゴヌクレオチドによって同定することが好ましい。標識されたオリゴヌクレオチドは、50個までのヌクレオチド長を有してよい。より好ましいのは、蛍光インサイチュー・ハイブリダイゼーション(FISH)による微生物の同定である。これらの好ましい実施態様及びより好ましい実施態様は、インサイチュー・ハイブリダイゼーション条件を維持しつつ分子レベルで抗生物質の表現型を検出し、同時にかつ明白にインサイチュー・ハイブリダイゼーションを介して同定を可能にし、そして同じ細胞内の抗生物質耐性表現型の検出を、混合された集団においてさえも可能にする。
【0044】
インサイチュー・ハイブリダイゼーションのプロトコールは、特許出願EP06021267.7に公開されるように適用できる。前記特許出願は、本願では参照をもって開示されたものとする。標識された抗生物質と一緒のインキュベーションは、ハイブリダイズしたプローブのTm未満の温度で実施できる。好ましい一実施態様においては、前記温度は、約25〜約65℃であり、より好ましい一実施態様においては、前記温度は、約35℃〜約59℃である。更により好ましい一実施態様においては、前記温度は、約52℃である。インキュベーション時間は、好ましくは、約1〜約30分である。より好ましい一実施態様においては、インキュベーションは、約15分間行われる。インキュベーションの後に、そのスライドガラスを、50%のエタノール中に浸漬し、引き続き純粋なエタノール中の浴中に浸漬してよい。両方の工程は、約1分〜約10分の間で進行してよい。インキュベーションの好ましい長さは、約2分〜約6分である。約4分間インキュベートすることがより好ましい。前記のスライドガラスを、次いで、(例えばホットプレート上で)空気乾燥してよく、そして該細胞を、均衡塩類封入剤中に包埋してよい。
【0045】
該微生物は、当該技術分野で公知の任意の好適な方法によって検出できる。該アッセイの読み出しは、個々の細胞にまで下がる解像度を必要とすることがある。特に、微生物は、落射蛍光顕微鏡検査、フローサイトメトリー、レーザ走査装置、時間分解蛍光測定、発光検出、同位体検出、ハイパースペクトラルイメージングスキャナー、表面プラズモン共鳴及び/又は他のエバネッセンスを基礎とする読み出し技術を介して検出される。
【0046】
好ましくは、インサイチュー・ハイブリダイゼーションは、抗生物質耐性の検出と組み合わされる。より好ましくは、FISHは、抗生物質耐性の検出と組み合わされる。
【0047】
また、予め決められた微生物は、本発明の方法の工程(c)で同定されることも好ましい。
【0048】
微生物の同定と、該微生物における標識された抗生物質の検出を、引き続いて、進行させることが好ましい。
【0049】
選択的な好ましい一実施態様においては、微生物の同定と、該微生物における標識された抗生物質の検出は、同時に進行される。この実施態様においては、標識された抗生物質を、ハイブリダイゼーションバッファーに添加することができる。インキュベーションの後に、更なる処理は、微生物の検出のために本願に開示されるように実施される。最も好ましくは、インサイチュー・ハイブリダイゼーション及びFISHのそれぞれと、抗生物質耐性の検出は、同時に行われる。
【0050】
好ましくは、同じ検出法、例えば落射蛍光顕微鏡検査、フローサイトメトリー、レーザ走査装置又は本願に記載される別の方法は、微生物の同定と、微生物中の標識された抗生物質の検出の両方のために使用することができる。
【0051】
インサイチュー・ハイブリダイゼーション及び酵素アッセイもしくは受容体アッセイは、慣用には、技術水準のそれぞれのアッセイのための特定の環境を要求する。従って、驚くべきことであったのは、
1. 最大50マーのオリゴマーのヌクレオチドの通過に十分な寸法の細孔を有するインサイチュー・ハイブリダイゼーション用の細胞を準備することができること、
2. 膜タンパク質を標識された抗生物質に到達可能にできること、
3. 前記のタンパク質とリボソームの両方の完全性を保持して、蛍光体で標識された抗生物質の特異的結合を可能にできること、
4. 落射蛍光顕微鏡検査下で、特に均一な条件下で視認できるシグナルを生成するのに十分な結合部位を見出せること
であった。
【0052】
本発明の方法において、予め決められた波長範囲で発光を示す蛍光体を有するオリゴヌクレオチドと、ある波長範囲で発光を示す別の蛍光体で標識された抗生物質とを、それらの2つの蛍光体が発光検出によって区別できるように一緒に使用することが好ましい。例えば、フルオレセインなどの蛍光体の1つは、緑色のシグナルを放出でき、かつ他の蛍光体は、赤色のシグナルを放出できる。蛍光体で修飾された抗生物質のリストを、第I表にまとめる。
【0053】
最も好ましい一実施態様においては、本発明の方法は、メチシリン耐性のスタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)を、インサイチュー・ハイブリダイゼーションによって、同時に標識されたβ−ラクタム系抗生物質の結合によるペニシリン結合タンパク質2の発現の検出により同定することを含む。
【0054】
MRSAの場合には、クリンダマイシンもしくはトリメトプリム サルファに対する感受性を分析することによって、院内MRSAと地域獲得性のMRSAとの間を識別することさえもできる。地域獲得性のメチシリン耐性のスタフィロコッカス・アウレウス菌株は、クリンダマイシンもしくはトリメトプリム サルファに対するその感受性を保持する。その識別は、その際には、それぞれの結合能力プロフィールを介することによる。さらにもう一つの最も好ましい実施態様においては、本発明の方法は、こうして、メチシリン耐性のスタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)を、インサイチュー・ハイブリダイゼーションによって、同時に、標識されたクリンダマイシンもしくはトリメトプリム サルファを結合するそれぞれの能力を介した院内と地域獲得性のMRSAとの間の識別によって同定することを含む。
【0055】
さらにもう一つの最も好ましい実施態様においては、本発明の方法は、バンコマイシン耐性のスタフィロコッカス・アウレウス(VRSA)を、インサイチュー・ハイブリダイゼーションによって、同時に、標識されたバンコマイシンを結合する能力によって同定することを含む。
【0056】
さらにもう一つの最も好ましい実施態様においては、本発明の方法は、バンコマイシン耐性のスタフィロコッカス(VRS)を、インサイチュー・ハイブリダイゼーションによって、同時に、標識されたバンコマイシンを結合する能力によって同定することを含む。
【0057】
さらにもう一つの最も好ましい実施態様においては、本発明の方法は、バンコマイシン耐性のエンテロコッカス(VRE)を、インサイチュー・ハイブリダイゼーションによって、同時に、標識されたバンコマイシンを結合する能力によって同定することを含む。
【0058】
さらにもう一つの最も好ましい実施態様においては、本発明の方法は、β−ラクタマーゼ(ESBL)の分泌によるβ−ラクタム系抗生物質に対する耐性を、前記酵素の存在を、標識されたクラブラン酸の結合により明らかにすることによって検出することと一緒に、グラム陰性微生物の同定を含む。
【0059】
クラブラン酸は、ペニシリングループの抗生物質と時々組み合わされて、一定の種類の抗生物質耐性をつぶすためのβ−ラクタマーゼインヒビターである。特に、それは、大抵のペニシリン類を不活性化するβ−ラクタマーゼ酵素を分泌する細菌における耐性をつぶすために使用される。最も一般的には、クラブラン酸カリウムといったカリウム塩が、アモキシシリンと組み合わされる。クラブラン酸は、β−ラクタム系抗生物質の競合的インヒビターである。蛍光体で標識した場合に、β−ラクタマーゼの存在が検出される。
【0060】
さらにもう一つの最も好ましい実施態様においては、本発明の方法は、メタロ−β−ラクタマーゼ(MBL)の分泌によるβ−ラクタム系抗生物質に対する耐性を、前記酵素の存在を、標識されたイミペネムの結合により明らかにすることによって検出することと一緒に、グラム陰性微生物の同定を含む。
【0061】
さらにもう一つの最も好ましい実施態様においては、本発明の方法は、マクロライド系、リンコサミド及びストレプトグラミン(MLS)に対する耐性を、標識されたエリスロマイシン及び/又はクリンダマイシンの結合を介して検出することと一緒に、ストレプトコッカスの同定を含む。
【0062】
さらにもう一つの最も好ましい実施態様においては、本発明の方法は、薬剤耐性のストレプトコッカス・ニューモニア(DRSP)のFISHによる同定と一緒に、β−ラクタム系とマクロライド系に対するそれぞれの耐性に関して同定することを含む。
【0063】
さらにもう一つの最も好ましい実施態様においては、本発明の方法は、高レベルのアミノグリコシド耐性のエンテロコッカス(HLAR)をFISHと標識されたゲンタマイシンによって検出することを含む。
【0064】
予め決められた微生物を含む生物学的試料は、予備処理することで、標識された抗生物質の結合と、場合により微生物の同定を容易にすることができる。
【0065】
生物学的試料は、その指定されたプローブ(標識された抗生物質と、場合により微生物検出用のプローブ)に応じてスライドガラス上で、例えば約45〜約65℃で、好ましくは約50〜約55℃で、より好ましくは約52℃で熱固定することができる。
【0066】
微生物がグラム陽性細菌である場合には、好適なバッファーによって穿孔することができる。グラム陽性細菌は、バクテリオシン及び/又は界面活性剤によって穿孔することができる。好ましい一実施態様においては、ランチビオティックが生物学的界面活性剤と組み合わされ、特定の好ましい一実施態様においては、ナイシンがサポニンと組み合わされる。さらに、リソザイム及びリソスタフィンなどの溶解性酵素を適用できる。溶解性酵素は、方程式に平衡化できる。試料がエタノールで処理される場合に、有効成分の濃度は、その引き続きのエタノール中での処理に関して平衡化できる。より好ましい一実施態様においては、リソザイム、リソスタフィン、ナイシン及びサポニンの濃度を平衡化することで、全てのグラム陽性生物が、マイコバクテリアを除いてカバーされる。
【0067】
最も好ましいグラム陽性穿孔バッファーの例を、第2表に示す。量及び濃度、並びに適用温度及びインキュベーション時間のばらつきは当業者の範囲内にあることが考慮される。
【0068】
微生物が酵母もしくは糸状菌である場合には、好適なバッファーによって穿孔することができる。驚くべきことに、酵母及び糸状菌の細胞壁は、当該技術分野でよく知られた手法に従って処理した場合に、再現可能な細孔を形成しないことが判明した。これらの手法は、しばしば、誤った陽性の結果と誤った陰性の結果の両方を与えた。確実な解決策は、ペプチド性抗生物質、界面活性剤、錯化剤及び還元剤の組み合わせを含む好ましいバッファーである。より好ましいバッファーは、特定の浸透圧をもたらす一価の塩、バクテリオシン、生物学的な及び合成の界面活性剤の組み合わせ、多価カチオンのための錯化剤並びにジスルフィド橋を還元できる剤の組み合わせを含む。更なる驚くべき改善は、原核生物に特異的なタンパク質溶解酵素を添加することによって達成された。さらにより好ましいバッファーにおいては、サポニン、SDS、ナイシン、EDTA、DTTが、リソザイム及び塩と、例えば約150〜約250mMの濃度で、より好ましくは約200〜約230mMの濃度で、最も好ましくは約215mMの濃度で組み合わされた。
【0069】
最も好ましい酵母穿孔バッファーの例を、第2表に示す。量及び濃度、並びに適用温度及びインキュベーションのばらつきは当業者の範囲内にあることが考慮される。
【0070】
さらにもう一つの好ましい実施態様においては、本発明の方法は、診断法である。
【0071】
本発明のさらなるもう一つの態様は、予め決められた微生物の抗生物質耐性の検出に適したキットであって、(a)標識された抗生物質と、(b)場合により生物学的試料における微生物の同定に適したプローブとを含むキットである。
【0072】
本発明のキットは、本発明の方法に適している。該標識された抗生物質は、本発明の方法の範囲で本願に記載される標識された抗生物質であってよい。
【0073】
該プローブは、微生物の同定に適した任意のプローブであってよい。該プローブは、インサイチュー条件下で微生物中の核酸と特異的にハイブリダイズすることができる標識された核酸、特に標識されたオリゴヌクレオチドであることが好ましい。該オリゴヌクレオチドは、50個までのヌクレオチド長を有してよい。
【0074】
前記のように、該キットは、更なる構成要素、例えば検出可能な標識の量についての情報を提供するデータシートを、微生物、抗生物質及び標識の少なくとも1つの組み合わせにおいて、又は予め決められた微生物のその非耐性形及び/又は耐性形の試料を、例えば対照の目的のために含んでよい。
【0075】
本発明のさらなるもう一つの態様は、標識された抗生物質を、生物学的試料における予め決められた微生物における抗生物質耐性の検出のために用いる使用である。
【0076】
本発明は、更に、以下の実施例及び以下の表によって説明される。
【0077】
第1表は、抗生物質と、本発明の方法において適した標識の例を記載している。
【0078】
第2表は、本発明において使用される穿孔バッファーの組成を記載している。
【0079】
第3表は、23S rRNAにおける突然変異による抗生物質耐性を記載している。
【0080】
第4表は、微生物における抗生物質耐性メカニズムと、耐性の微生物における標識された抗生物質の量の変化を記載している。
【0081】
実施例1
第I表の抗生物質を、FITCで標識し、当該技術分野でよく知られているように精製した。クリンダマイシンを、X′−Sに結合したメチル基を、S−S結合を介したシステインで置換することによって修飾した。結合されたシステインを、次いで、フルオレスカミンで、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルかFITCのいずれかを介して標識し、当該技術分野でよく知られた方法で精製した。
【0082】
実施例2
ペニシリンに対する耐性などの抗生物質耐性を、以下の工程を含むプロトコールで検出できる:
1 生物学的試料を、例えば10μlでスライドガラスに適用する工程
2 例えば52℃で乾燥させる工程
3 例えば10μlで穿孔バッファーを添加する工程
4 乾燥する工程
5 再構成されたプローブミックス(例えば9μl)を添加する工程
6 抗生物質(例えばFITC−ペニシリン)を添加する工程
7 例えば52℃で15分にわたりインキュベートする工程
8 例えば室温で5分にわたりEtOH/停止ミックス(例えば50%/50%)の工程
9 エタノール、例えば99%エタノールの5分にわたる工程
10 乾燥させる工程
11 均衡塩固定媒体(例えば小さな一滴)の工程
12 読み出しの工程。
【0083】
実施例3
第4表は、検出可能な標識された抗生物質の量の、臨床的に関連のある微生物のその耐性形のその非耐性形に対する変化を示している。その量は、蛍光標識を有する抗生物質の蛍光の%変化(減少と増大のそれぞれ)で表現される。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
【表6】

【0090】
【表7】

【0091】
【表8】

【0092】
【表9】

【0093】
【表10】

【0094】
【表11】

【0095】
【表12】

【0096】
【表13】

【0097】
【表14】

【0098】
【表15】

【0099】
【表16】

【0100】
【表17】

【0101】
【表18】

【0102】
【表19】

【0103】
【表20】

【0104】
【表21】

【0105】
【表22】

【0106】
【表23】

【0107】
【表24】

【0108】
【表25】

【0109】
【表26】

【0110】
【表27】

【0111】
【表28】

【0112】
【表29】

【0113】
【表30】

【0114】
【表31】

【0115】
【表32】

【0116】
【表33】

【0117】
【表34】

【0118】
【表35】

【0119】
【表36】

【0120】
【表37】

【0121】
【表38】

【0122】
【表39】

【0123】
【表40】

【0124】
【表41】

【0125】
【表42】

【0126】
【表43】

【0127】
【表44】

【0128】
【表45】

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【表46】

【0130】
【表47】

【0131】
【表48】

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【表49】

【0133】
【表50】

【0134】
【表51】

【0135】
【表52】

【0136】
【表53】

【0137】
【表54】

【0138】
【表55】

【0139】
【表56】

【0140】
【表57】

【0141】
【表58】

【0142】
【表59】

【0143】
【表60】

【0144】
【表61】

【0145】

【0146】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料中の予め決められた微生物の抗生物質耐性を検出するための方法であって、以下の工程:
(a)標識された抗生物質を提供する工程と、
(b)前記標識された抗生物質と、前記微生物を含む生物学的試料とを、当該標識された抗生物質が当該微生物中のその抗生物質の結合部位に結合できる条件下で接触させる工程と、
(c)前記標識された抗生物質を前記微生物中で検出する工程と、
(d)検出可能な標識の量が、前記の予め決められた微生物のその非耐性形における検出可能な標識の量に対して変更されている微生物を同定する工程と、
を含み、前記工程(d)で同定された微生物が、前記抗生物質に対して耐性の微生物である、前記方法。
【請求項2】
抗生物質が、アミノグリコシド系、カルバセフェム系、カルバペネム系、セファロスポリン系、グリコペプチド系、マクロライド系、モノバクタム系、β−ラクタム系抗生物質、キノロン系、バシトラシン、スルホンアミド系、テトラサイクリン系、ストレプトグラミン系、クロラムフェニコール、クリンダマイシン及びリンコサミドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗生物質が、発光性標識基、特に蛍光性標識基によって標識される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
結合部位が、細胞内腔、細胞質、細胞壁及び/又は分泌されるタンパク質中に位置する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
抗生物質が、β−ラクタム系抗生物質である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
β−ラクタム系抗生物質が、PBP2結合タンパク質に結合する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
標識が、落射蛍光顕微鏡検査、フローサイトメトリー、レーザ走査装置、時間分解蛍光測定、発光検出、同位体検出、ハイパースペクトラルイメージングスキャナー、表面プラズモン共鳴又は他のエバネッセンスを基礎とする読み出し技術を介して検出される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
予め決められた微生物が、生物学的試料中で同定される、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
予め決められた微生物が、インサイチュー条件下で微生物中の核酸と特異的にハイブリダイズすることができる標識された核酸によって同定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
予め決められた微生物が、FISHによって同定される、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
予め決められた微生物が、工程(c)で同定される、請求項8から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
微生物の同定と、該微生物における標識された抗生物質の検出は、同時に進行される、請求項8から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
微生物が、落射蛍光顕微鏡検査、フローサイトメトリー、レーザ走査装置、時間分解蛍光測定、発光検出、同位体検出、ハイパースペクトラルイメージングスキャナー、表面プラズモン共鳴又は他のエバネッセンスを基礎とする読み出し技術を介して検出される、請求項8から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
微生物が、細菌、酵母及び糸状菌、特にグラム陽性細菌及びグラム陰性細菌からなる群から選択される、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
微生物が、第2表における配合物のグラム陽性穿孔バッファーによって穿孔されたグラム陽性細菌である、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
微生物が、第2表における配合物の酵母穿孔バッファーによって穿孔された酵母もしくは糸状菌である、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
メチシリン耐性のスタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)が、インサイチュー・ハイブリダイゼーションによって、標識されたβ−ラクタム系抗生物質の結合によるペニシリン結合タンパク質2の発現の検出と同時に同定される、請求項9から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
メチシリン耐性のスタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)が、インサイチュー・ハイブリダイゼーションによって、標識されたクリンダマイシンもしくはトリメトプリム サルファを結合するそれぞれの能力を介した院内MRSAと地域獲得性のMRSAとの間の識別と同時に同定される、請求項9から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
バンコマイシン耐性のスタフィロコッカス・アウレウス(VRSA)が、インサイチュー・ハイブリダイゼーションによって、標識されたバンコマイシンを結合する能力と同時に同定される、請求項9から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
バンコマイシン耐性のスタフィロコッカス(VRS)が、インサイチュー・ハイブリダイゼーションによって、標識されたバンコマイシンを結合する能力と同時に同定される、請求項9から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
バンコマイシン耐性のエンテロコッカス(VRE)が、インサイチュー・ハイブリダイゼーションによって、標識されたバンコマイシンを結合する能力と同時に同定される、請求項9から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
β−ラクタマーゼ(ESBL)の分泌によるβ−ラクタム系抗生物質に対する耐性が、前記酵素の存在を、標識されたクラブラン酸の結合により明らかにすることによって、グラム陰性微生物の同定と一緒に検出される、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
メタロ−β−ラクタマーゼ(MBL)の分泌によるβ−ラクタム系抗生物質に対する耐性が、前記酵素の存在を、標識されたイミペネムの結合により明らかにすることによって、グラム陰性微生物の同定と一緒に検出される、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
マクロライド系、リンコサミド及びストレプトグラミン(MLS)に対する耐性が、標識されたエリスロマイシン及び/又はクリンダマイシンの結合によって、ストレプトコッカスの同定と一緒に検出される、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
薬剤耐性のストレプトコッカス・ニューモニア(DRSP)が、FISHによって、β−ラクタム系とマクロライド系に対するそれぞれの耐性と一緒に同定される、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
高レベルのアミノグリコシド耐性のエンテロコッカス(HLAR)が、FISHと標識されたゲンタマイシンを介して検出される、請求項8から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
診断方法である、請求項1から26までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
予め決められた微生物の抗生物質耐性の検出に適したキットであって、
(a)標識された抗生物質と、
(b)場合により生物学的試料における微生物の同定に適したプローブと
を含むキット。
【請求項29】
標識された抗生物質を、生物学的試料における予め決められた微生物における抗生物質耐性の検出のために用いる使用。

【公表番号】特表2011−523546(P2011−523546A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544641(P2010−544641)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000621
【国際公開番号】WO2009/095258
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(509103624)ミアコム ディアグノスティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】miacom Diagnostics GmbH
【住所又は居所原語表記】Merowingerplatz 1a,D−40225 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】