説明

標識化されたグリチルレチン酸及びその誘導体

【課題】生体内において安定な標識化されたグリチルレチン酸及びその誘導体、そしてこれら化合物の効率的な製造方法の提供。
【解決手段】下記式(2)〜(9)で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標識化されたグリチルレチン酸及びその誘導体に関する。また、本発明は、これら化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
甘草の主成分であるグリチルリチン、及びそのアグリコンであるグリチルレチン酸は、優れた抗炎症作用をはじめ、種々の薬理作用を有することが知られている。しかしこれら薬理作用を発現する際の作用機序や生体内代謝に関しては、まだ十分に明らかにされていないのが現状である。
【0003】
通常、化学物質の生体内における動態を解析するためには、例えば、該化学物質を構成する原子の一部を放射性同位元素で置き換えることで標識化した標識化化学物質を生体内に導入し、生体内で該標識化化学物質が発する放射線をシグナルとして検出する手法が汎用される。この手法は、上記したような化学物質の作用機序や生体内代謝の解析にも適用され、例えば、解析対象の化学物質中の水素原子の一部をトリチウム(H)で置換した標識化化学物質が使用されることがある。そして、グリチルリチン及びグリチルレチン酸についても、トリチウム標識したものを使用した解析が試みられている(非特許文献1及び2参照)。
【0004】
また、放射性同位元素としては、トリチウム以外にも種々のものがあり、これらを同様の目的で使用することが考えられる。例えば、代表的なものとして14Cや13Cが挙げられ、作用機序や生体内代謝の解析を目的に、14Cが2位に導入されたトリテルペン(非特許文献3参照)、13Cが2位に導入されたステロイド(非特許文献4参照)が報告されている。
【非特許文献1】MINOPHAGEN MEDICAL REVIEW,263−272(1979)
【非特許文献2】核医学,第13巻第4号,451−458(1976)
【非特許文献3】Tetrahedron,55,14901−14914(1999)
【非特許文献4】Tetrahedron,53,11007−11020(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トリチウムで標識化された化学物質は、比較的容易に調製できるという長所がある反面、解析を高精度に行うのに支障が出易いという問題点がある。その理由は、トリチウムが不安定であるだけでなく、例えば、炭素−トリチウム結合が比較的切れ易く、生体内で水の水素原子と置換し易いためである。これはグリチルリチン及びグリチルレチン酸においても例外ではない。
【0006】
また、14Cや13Cで標識化された化学物質は、炭素−14C結合や炭素−13C結合が安定なため、解析を高精度に行うのに適している反面、調製が困難であるという問題点がある。その理由としては、まず炭素−炭素結合が安定であるために、これを切断して14Cや13Cを導入することが容易ではないことが挙げられる。加えて従来は、トリテルペンやステロイドにおける14Cや13Cの導入に際し環構造の開環及び閉環工程が必要であり、その際に例えば、14CHLiや14CHMgIなどの特殊な原料の調製も別途必要であり、工程が複雑であることが挙げられる。例えば、非特許文献3及び4に開示されている標識化化学物質の合成方法では、14Cや13Cを導入する部位(2位)の炭素原子が含まれる環構造(A環)を開環し、該当する炭素原子を除去してから、14Cや13Cの導入と閉環を行うという複雑な工程を採用している。
そしてこれまでに、14Cや13Cで標識化されたグリチルリチン及びグリチルレチン酸、並びにこれらの合成方法は開示されていない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、生体内において安定な標識化されたグリチルレチン酸及びその誘導体、そしてこれら化合物の効率的な製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、グリチルレチン酸のA環の23位の炭素原子にヒドロキシ基を結合させ、レトロアルドール反応を行うことで、開環を行わなくても穏やかな条件下で23位の炭素原子が除去でき、次いでCDIを反応させることで、位置選択的に23位の炭素原子に重水素原子を導入できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、下記式(8a)で表される化合物である。
【0010】
【化1】

【0011】
請求項2に記載の発明は、下記式(9)で表される化合物である。
【0012】
【化2】

【0013】
(式中、Bnはベンジル基である。)
【0014】
請求項3に記載の発明は、下記式(5)で表される化合物である。
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、Bnはベンジル基である。)
【0017】
請求項4に記載の発明は、下記一般式(7)で表される化合物である。
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、Rは水素原子又はベンジル基である。)
【0020】
請求項5に記載の発明は、下記一般式(6)で表される化合物である。
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、Rは水素原子又はベンジル基である。)
【0023】
請求項6に記載の発明は、下記一般式(2)で表される化合物である。
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、Bnはベンジル基であり;Zは酸素原子、=N−OHで表される基又は=N−O−C(=O)CHで表される基であり;Rはメチル基、ヒドロキシメチル基又は−CH−O−C(=O)CHで表される基であり;ただし、Zが酸素原子又は=N−OHで表される基である場合には、Rはメチル基又はヒドロキシメチル基であり、Zが=N−O−C(=O)CHで表される基である場合には、Rは−CH−O−C(=O)CHで表される基である。)
【0026】
請求項7に記載の発明は、下記式(3)で表される化合物である。
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、Bnはベンジル基である。)
【0029】
請求項8に記載の発明は、下記式(4)で表される化合物である。
【0030】
【化8】

【0031】
(式中、Bnはベンジル基である。)
【0032】
請求項9に記載の発明は、下記式(1)で表されるグリチルレチン酸に、濃塩酸存在下で亜鉛を作用させ、次いでジョーンズ試薬を作用させ、次いで塩化ベンジルを作用させて、下記式(2a)で表される化合物とし、
下記式(2a)で表される化合物に、ヒドロキシルアミン塩酸塩を作用させて下記式(2b)で表される化合物とし、
下記式(2b)で表される化合物に、酢酸ナトリウム及び塩化パラジウム二ナトリウムを作用させ、次いで無水酢酸を作用させ、次いで四酢酸鉛を作用させてから水素化ホウ素ナトリウムを作用させて下記式(2c)で表される化合物とし、
下記式(2c)で表される化合物に塩基を作用させて下記式(2d)で表される化合物とし、
下記式(2d)で表される化合物に、トリクロロチタン及び酢酸アンモニウムを作用させて下記式(2e)で表される化合物とし、
下記式(2e)で表される化合物に塩基を作用させて下記式(3)で表される化合物とし、
下記式(3)で表される化合物に、リチウムビストリメチルシリルアミドを作用させ、次いでクロロトリメチルシランを作用させ、次いで酢酸パラジウムを作用させて下記式(4)で表される化合物とし、
下記式(4)で表される化合物に、リチウムビストリメチルシリルアミドを作用させ、次いで一般式「CDL」で表される化合物(「L」はハロゲン原子を表す)を作用させて下記式(5)で表される化合物とする、
ことを特徴とする下記式(5)で表される化合物の製造方法である。
【0033】
【化9】

【0034】
(式中、Bnはベンジル基である。)
【0035】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の製造方法で製造された下記式(5)で表される化合物に水素ガス存在下でパラジウムカーボンを作用させて下記式(6a)で表される化合物とし、
下記式(6a)で表される化合物にヨウ化銅及びt−ブチルヒドロペルオキシドを作用させて下記式(7a)で表される化合物とし、
下記式(7a)で表される化合物に水素化ホウ素ナトリウムを作用させて下記式(8a)で表される標識化されたグリチルレチン酸とする、
ことを特徴とする標識化グリチルレチン酸の製造方法である。
【0036】
【化10】

【0037】
(式中、Bnはベンジル基である。)
【0038】
請求項11に記載の発明は、請求項9に記載の製造方法で製造された下記式(5)で表される化合物に水素ガス存在下でロジウム触媒を作用させて下記式(6b)で表される化合物とし、
下記式(6b)で表される化合物にヨウ化銅及びt−ブチルヒドロペルオキシドを作用させて下記式(7b)で表される化合物とし、
下記式(7b)で表される化合物に水素化ホウ素ナトリウムを作用させて下記式(9)で表される化合物とする、
ことを特徴とする下記式(9)で表される化合物の製造方法である。
【0039】
【化11】

【0040】
(式中、Bnはベンジル基である。)
【発明の効果】
【0041】
本発明により、生体内において安定な標識化されたグリチルレチン酸及びその誘導体を効率的に提供でき、グリチルリチン及びグリチルレチン酸の薬理作用を発現する際の作用機序や生体内代謝に関する高精度な解析が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明について詳しく説明する。なお、以下に示すグリチルリチン及びグリチルレチン酸並びにこれらの誘導体の炭素原子の番号表記について、グリチルレチン酸(式(1)で表される化合物、以下、グリチルレチン酸(1)と略記する)を例に挙げて以下に示す。
【0043】
【化12】

【0044】
また、本明細書において「Bn」は「ベンジル基」を、「Bz」は「ベンゾイル基」をそれぞれ表すものとする。
【0045】
[化合物]
<式(8a)で表される化合物>
本発明の第一の実施形態に係る化合物は、下記式(8a)で表される。すなわち、グリチルレチン酸の23位の炭素原子を含むメチル基が、−CDに変換されたグリチルレチン酸誘導体(以下、化合物(8a)又は標識化グリチルレチン酸(8a)と略記する)である。
【0046】
【化13】

【0047】
<式(9)で表される化合物>
本発明の第二の実施形態に係る化合物は、下記式(9)で表される(以下、化合物(9)と略記する)。すなわち、前記化合物(8a)の、30位の炭素原子を含むカルボキシ基がベンジル基で保護された標識化グリチルレチン酸の誘導体である。
そして化合物(9)は、3位の炭素原子に結合しているヒドロキシ基において配糖化を行い、後記する標識化グリチルリチン(8b)を合成するための重要な中間体である。
【0048】
【化14】

【0049】
<式(5)で表される化合物>
本発明の第三の実施形態に係る化合物は、下記式(5)で表される(以下、化合物(5)と略記する)。
化合物(5)は、標識化グリチルレチン酸(8a)及び標識化グリチルリチン(8b)を合成するための重要な共通中間体である。
【0050】
【化15】

【0051】
<一般式(7)で表される化合物>
本発明の第四の実施形態に係る化合物は、下記一般式(7)で表される(以下、化合物(7)と略記する)。
【0052】
【化16】

【0053】
式中、Rは水素原子又はベンジル基である。すなわち、具体的には、23位の炭素原子を含むメチル基が重水素原子で標識化されている、下記式(7a)及び(7b)で表される化合物(以下、それぞれ化合物(7a)及び化合物(7b)と略記する)である。
【0054】
【化17】

【0055】
<一般式(6)で表される化合物>
本発明の第五の実施形態に係る化合物は、下記一般式(6)で表される(以下、化合物(6)と略記する)。
【0056】
【化18】

【0057】
式中、Rは水素原子又はベンジル基である。すなわち、具体的には、23位の炭素原子を含むメチル基が重水素原子で標識化されている、下記式(6a)及び(6b)で表される化合物(以下、それぞれ化合物(6a)及び化合物(6b)と略記する)である。
化合物(6a)及び(7a)はいずれも、化合物(5)から標識化グリチルレチン酸(8a)を合成する際の中間体である。
また、化合物(6b)及び(7b)はいずれも、化合物(5)から化合物(9)を合成する際の中間体である。
【0058】
【化19】

【0059】
<一般式(2)で表される化合物>
本発明の第六の実施形態に係る化合物は、下記一般式(2)で表される(以下、化合物(2)と略記する)。
【0060】
【化20】

【0061】
式中、Zは酸素原子、=N−OHで表される基又は=N−O−C(=O)CHで表される基である。
また、Rはメチル基、ヒドロキシメチル基又は−CH−O−C(=O)CHで表される基である。
ただし、Zが酸素原子又は=N−OHで表される基である場合には、Rはメチル基又はヒドロキシメチル基であり、Zが=N−O−C(=O)CHで表される基である場合には、Rは−CH−O−C(=O)CHで表される基である。すなわち、具体的には、下記式(2a)、(2b)、(2c)、(2d)及び(2e)で表される化合物(以下、それぞれ化合物(2a)、化合物(2b)、化合物(2c)、化合物(2d)、化合物(2e)と略記する)である。
【0062】
【化21】

【0063】
化合物(2a)〜(2e)は、いずれもグリチルレチン酸(1)から化合物(5)を合成する際の中間体である。
【0064】
<式(3)で表される化合物>
本発明の第七の実施形態に係る化合物は、下記式(3)で表される(以下、化合物(3)と略記する)。
【0065】
【化22】

【0066】
<式(4)で表される化合物>
本発明の第八の実施形態に係る化合物は、下記式(4)で表される(以下、化合物(4)と略記する)。
【0067】
【化23】

【0068】
化合物(3)及び(4)はいずれも、化合物(2e)から化合物(5)を合成する際の中間体である。
【0069】
[化合物の製造方法]
本発明の化合物の製造方法について説明する。
標識化グリチルレチン酸(8a)は、グリチルレチン酸(1)を出発原料とし、化合物(5)を中間体として製造される。
具体的には、化合物(5)は、グリチルレチン酸(1)を出発原料として、化合物(2a)、(2b)、(2c)、(2d)及び(2e)、並びに化合物(3)及び(4)を経て製造される。そして、化合物(5)からは、化合物(6a)及び(7a)を経て標識化グリチルレチン酸(8a)が製造され、化合物(6b)及び(7b)を経て化合物(9)が製造される。さらに化合物(9)からは、後記するように化合物(10a)、(10b)、(10c)、(10d)及び(10e)を経て標識化グリチルリチン(8b)が製造される。
以下、本発明の化合物の製造方法を、各工程ごとに詳しく説明する。
【0070】
<化合物(5)の製造方法>
本発明の第九の実施形態に係る化合物(5)の製造方法における代表的な合成ルートを、以下に示す。
【0071】
【化24】

【0072】
(A)化合物(2a)の製造
化合物(1)の11位の炭素原子を含むカルボニル基を還元してメチレン基とし、3位の炭素原子にヒドロキシ基が結合している部位を酸化してカルボニル基とし、20位の炭素原子に結合しているカルボキシ基をベンジル基で保護することで、化合物(2a)が得られる。
還元反応は、好ましくはジオキサン等の溶媒中で、濃塩酸存在下、亜鉛粉末を用いて行うのが好ましい。反応温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
酸化反応は、好ましくはテトラヒドロフラン等の溶媒中で、ジョーンズ試薬を用いて行うのが好ましい。
カルボキシ基のベンジル基による保護は、好ましくはジメチルホルムアミド等の溶媒中で、炭酸カリウム等の塩基存在下、塩化ベンジルで行うのが好ましい。反応温度は50〜80℃が好ましく、65〜75℃がより好ましい。
反応終了後は、適宜必要に応じて、pH調整、抽出、洗浄、濃縮等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
【0073】
(B)化合物(2b)の製造
化合物(2a)の、3位の炭素原子と共にカルボニル基を構成している酸素原子を、ヒドロキシイミノ基に変換することで、化合物(2b)が得られる。
反応は、例えば、化合物(2a)に対し、好ましくはハロゲン化炭化水素及びアルコールの混合溶媒を用い、塩基存在下、ヒドロキシルアミン塩酸塩を加えて行うのが好ましい。
ここで、ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、クロロホルム等が例示でき、塩化メチレンが特に好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール等が例示でき、メタノールが特に好ましい。塩基は弱塩基性の無機塩基が好ましく、酢酸ナトリウムが特に好ましい。反応温度は30〜70℃が好ましく、40〜60℃がより好ましい。
反応終了後は、適宜必要に応じて濃縮等を行い、結晶化させて目的物を取り出すことができる。
【0074】
(C)化合物(2c)の製造
化合物(2b)のヒドロキシイミノ基をアセチルオキシイミノ基に変換し、23位の炭素原子に結合している一つの水素原子をアセチルオキシ基に変換することで、化合物(2c)が得られる。
具体的には、例えば、まず化合物(2b)に酢酸、酢酸ナトリウム及び塩化パラジウム二ナトリウムを加えて反応を行う。反応温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
次いで、塩基の存在下、好ましくはハロゲン化炭化水素を溶媒として用い、無水酢酸を加えてアセチル化反応を行う。
ここで、塩基としては弱塩基性の有機塩基が好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。また、ここでは触媒を用いることが好ましく、ジメチルアミノピリジン(DMAP)を用いることが特に好ましい。また、ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、クロロホルム等が例示でき、塩化メチレンが特に好ましい。反応温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
次いで、四酢酸鉛を好ましくは酢酸に溶解させた状態で加えて酸化反応を行った後、水素化ホウ素ナトリウムを好ましくは水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた状態で加えて還元反応を行うことで、化合物(2c)が得られる。酸化反応及び還元反応を行うときの反応温度は、15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
各反応終了後は、適宜必要に応じて結晶化、濃縮、乾燥等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
【0075】
(D)化合物(2d)の製造
化合物(2d)は、化合物(2c)を脱アセチル化することで得られる。
脱アセチル化は、例えば、化合物(2d)に、好ましくはアルコールを溶媒として用い、塩基を加えて反応させれば良い。
ここで、アルコールとしてはメタノールが特に好ましい。塩基は弱塩基性の無機塩基が好ましく、炭酸ナトリウムが特に好ましい。反応温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
反応終了後は、必要に応じて抽出、洗浄等を行い、濃縮や再結晶等により目的物が得られる。
【0076】
(E)化合物(2e)の製造
化合物(2d)のヒドロキシイミノ基を酸素原子に変換することで、化合物(2e)が得られる。
反応は、トリクロロチタン及び酢酸アンモニウムの塩酸水溶液に、化合物(2d)を好ましくはテトラヒドロフラン溶液として加えて行うのが好ましい。反応温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
反応終了後は、適宜必要に応じて、抽出、洗浄、濃縮等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
ここまでの工程で、23位の炭素原子にヒドロキシ基が導入される。これは、次工程においてレトロアルドール反応を行うために必要な構造である。
【0077】
(F)化合物(3)の製造
化合物(2e)のヒドロキシメチル基を水素原子に変換することで、化合物(3)が得られる。
反応は、例えば、化合物(2e)に対し、好ましくはアルコールを溶媒として用い、塩基を加えて行うのが好ましい。
ここで、アルコールとしてはメタノールが特に好ましい。塩基は弱塩基性の無機塩基が好ましく、炭酸ナトリウムが特に好ましい。反応温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
反応終了後は、適宜必要に応じて、pH調整、抽出、洗浄、濃縮等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
本工程では、レトロアルドール反応により、4位の炭素原子に結合しているヒドロキシメチル基が除去されて、分子中の炭素原子数が一つ減少する。これは、後の工程において、重水素原子で標識化されたメチル基(標識化メチル基)を4位の炭素原子に結合させるために必要な構造である。
【0078】
(G)化合物(4)の製造
化合物(3)の1位及び2位の炭素原子間の結合を二重結合とすることで、化合物(4)が得られる。
具体的には、例えば、化合物(3)に対し、好ましくはテトラヒドロフランを溶媒として用いて、リチウムビストリメチルシリルアミド(LHMDS)を加えて反応させる。反応温度は、まず好ましくは−90〜−60℃、より好ましくは−80〜−70℃とした後、昇温して好ましくは−20〜10℃、より好ましくは−10〜5℃とする。
次いで、クロロトリメチルシラン(TMSCl)を加えて反応を行う。反応温度は、まず好ましくは−90〜−60℃、より好ましくは−80〜−70℃とした後、昇温して好ましくは15〜40℃、より好ましくは20〜30℃とする。
次いで、好ましくはテトラヒドロフラン及びアセトニトリルの混合溶媒を用い、酢酸パラジウムを加えて反応を行う。反応温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
各反応終了後は、適宜必要に応じて、pH調整、抽出、ろ過、洗浄、濃縮等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
化合物(4)は、次工程において、前記標識化メチル基を導入して分子中の炭素原子数を増加させる際に、該標識化メチル基を2位の炭素原子ではなく4位の炭素原子に選択的に導入するために必要な構造である。
【0079】
(H)化合物(5)の製造
化合物(4)の4位の炭素原子に結合している水素原子を、−CDに変換することで、化合物(5)が得られる。
反応は、例えば、化合物(4)に対し、好ましくはテトラヒドロフランを溶媒として用い、リチウムビストリメチルシリルアミド(LHMDS)を加えて反応させた後、さらに一般式「CDL」で表される化合物を加えて反応を行うのが好ましい。ここで一般式中、「L」はハロゲン原子を表し、ヨウ素原子であることが特に好ましい。反応温度は、まず好ましくは−90〜−60℃、より好ましくは−80〜−70℃とした後、昇温して好ましくは−20〜10℃、より好ましくは−10〜5℃とする。
反応終了後は、適宜必要に応じて、pH調整、抽出、洗浄、濃縮等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
化合物(5)は、4位の炭素原子に結合しているメチル基が、重水素原子で標識化された化合物であり、同様に標識化された目的物である標識化グリチルレチン酸(8a)の中間体である。
【0080】
以上のように、本発明においては、グリチルレチン酸(1)誘導体の23位の炭素原子が結合している環構造(1位〜5位及び10位の炭素原子で構成されるA環)を開環することなく、4位の炭素原子に結合しているメチル基を、重水素原子で標識化されたメチル基に変換することで、化合物(5)を得る。このように開環を伴うことなく標識化が可能となったのは、23位の炭素原子にヒドロキシ基を結合させた後、レトロアルドール反応を行うことで分子中の炭素原子数を一つ減少させる合成法を適用したことによる。開環及び閉環を行う必要がないので、標識化までの工程数が削減できると共に、これら工程を従来よりも穏やかな条件下で行うことができる。そして標識化に使用する原料として、例えば、CDIなど市販品が利用でき、これらを別途調製する必要がない。
【0081】
なお、上記一般式「CDL」で表される化合物の代わりに、一般式「14CHL」(一般式中、「L」は前記と同様である)で表される化合物を用いることで、化合物(5)と同様に、化合物(5)の−CDが−14CHに置換された化合物が得られる。この場合、一般式「14CHL」で表される化合物としては、例えば、14CHIなどの市販品を利用できる。
【0082】
<標識化グリチルレチン酸(8a)の製造方法>
本発明の第十の実施形態に係る標識化グリチルレチン酸(8a)の製造方法における代表的な合成ルートを、以下に示す。
【0083】
【化25】

【0084】
(I)化合物(6a)の製造
化合物(5)に水素を付加し、1位及び2位の炭素原子間の結合を飽和結合とし、脱ベンジル化することで、化合物(6a)が得られる。
反応は、例えば、化合物(5)に対し、好ましくは酢酸エチル及びエタノールの混合溶媒を用い、パラジウム触媒を加え、水素ガス雰囲気下で攪拌することにより行うのが好ましい。前記パラジウム触媒としては、パラジウムカーボンが好ましい。
反応終了後は、ろ過により不溶物を除去した後、濃縮や再結晶等により目的物が得られる。
【0085】
(J)化合物(7a)の製造
化合物(6a)の、11位の炭素原子を含むメチレン基をカルボニル基に変換することで、化合物(7a)が得られる。
反応は、例えば、化合物(6a)に対し、好ましくはジクロロメタン、アセトニトリル及びピリジンの混合溶媒を用い、ヨウ化銅及びt−ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)を加えて行うのが好ましい。反応温度は20〜60℃が好ましく、30〜50℃がより好ましい。
反応終了後は、適宜必要に応じて、抽出、洗浄、濃縮等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
【0086】
(K)化合物(8a)の製造
化合物(7a)の3位の炭素原子に結合している酸素原子をヒドロキシ基に変換することで、化合物(8a)が得られる。
反応は、例えば、化合物(7a)に対し、好ましくはテトラヒドロフラン及びメタノールの混合溶媒を用い、水素化ホウ素ナトリウムを加えて行うのが好ましい。反応温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
反応終了後は、適宜必要に応じて、pH調整、抽出、洗浄、濃縮等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
【0087】
<化合物(9)の製造方法>
本発明の第十一の実施形態に係る化合物(9)の製造方法における代表的な合成ルートを、以下に示す。
【0088】
【化26】

【0089】
(L)化合物(6b)の製造
化合物(5)に水素を付加し、1位及び2位の炭素原子間の結合を飽和結合とすることで、化合物(6a)が得られる。
反応は、例えば、化合物(5)に対し、好ましくはベンゼン及びエタノールの混合溶媒を用い、ロジウム触媒を加え、水素ガス雰囲気下で攪拌することにより行うのが好ましい。前記ロジウム触媒としては、クロロトリストリフェニルホスフィンロジウムが好ましい。反応温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
反応終了後は、ろ過により不溶物を除去した後、濃縮や再結晶等により目的物が得られ、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
【0090】
このように、化合物(5)に対する水素付加反応で用いる触媒種を使い分けることで、化合物(6a)及び化合物(6b)を作り分けることが可能であり、化合物(5)を標識化グリチルレチン酸(8a)及び化合物(9)の共通中間体とすることができる。そして、化合物(9)は、後記するように標識化グリチルリチン(8b)の中間体なので、化合物(5)を用いることにより、標識化グリチルレチン酸(8a)及び標識化グリチルリチン(8b)を効率良く製造できる。
【0091】
(M)化合物(7b)の製造
化合物(7b)は、化合物(6a)に代わり化合物(6b)を用いること以外は、前記化合物(7a)の場合と同様の方法で得られる。ただし、反応温度は化合物(7a)の製造の場合よりも低めで良く、15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
【0092】
(N)化合物(9)の製造
化合物(9)は、化合物(7a)に代わり化合物(7b)を用いること以外は、前記化合物(8a)の場合と同様の方法で得られる。
【0093】
先に述べた通り、化合物(5)と同様に、化合物(5)の−CDが−14CHに置換された化合物が得られるので、この化合物を化合物(5)の代わりに用いること以外は、化合物(8a)又は化合物(9)の製造方法と同様の方法で、化合物(8a)又は化合物(9)の−CDが−14CHに置換された化合物を得ることもできる。このように、14Cで標識化された化合物が得られるのは、標識化メチル基が−CD及び−14CHのいずれであっても、上記製造方法における各合成反応が大差なく進行するからである。これは、合成反応においては、−CDの特性と−14CHの特性との差は些少であり、いずれの標識化メチル基で標識化されていても、標識化化合物を同様に取り扱うことが可能だからである。
【0094】
上記本発明の製造方法によれば、例えば、トリテルペンやステロイドの内、3位の炭素原子に水酸基が一つ結合し、4位の炭素原子にメチル基が二つ結合した、グリチルレチン酸(1)と類似の構造を有する化合物についても、グリチルレチン酸(1)と同様に、4位の炭素原子に結合している一方のメチル基を、重水素原子で標識化されたメチル基又は14Cで標識化されたメチル基に置換できる。
【0095】
<標識化グリチルリチン(8b)の製造方法>
次に、化合物(9)を用いて、23位の炭素原子を含むメチル基が重水素原子で標識化された標識化グリチルリチン(8b)を製造する方法について説明する。化合物(9)の代わりに、化合物(9)の−CDが−14CHに置換された化合物を用いることで、同様に、23位の炭素原子を含むメチル基が14Cで標識化された標識化グリチルリチンが製造でき、化合物(9)の代わりに、化合物(9)の−CDがメチル基に置換された化合物(すなわち、グリチルレチン酸のカルボキシ基がベンジル基で保護された化合物)を用いることで、同様にグリチルリチンが製造できる。その理由は、先に述べたように、−CDの特性と−14CHの特性との差は些少だからであり、これらの標識化メチル基の特性とメチル基の特性との差も些少だからである。
標識化グリチルリチン(8b)の製造方法における代表的な合成ルートを、以下に示す。本合成ルートは、化合物(9)から、下記式(10a)、(10b)、(10c)、(10d)、(10e)及び(10f)で表される化合物(以下、それぞれ化合物(10a)、化合物(10b)、化合物(10c)、化合物(10d)、化合物(10e)、化合物(10f)と略記する)を中間体として、標識化グリチルリチン(8b)を得るものである。
【0096】
【化27】

【0097】
(O)化合物(10a)の製造
化合物(9)に前記化学式(11)で表される化合物(以下、化合物(11)と略記する)を反応させることで、化合物(10a)が得られる。
反応は、例えば、化合物(9)に対し、好ましくはハロゲン化炭化水素を溶媒として用い、化合物(11)を加え、窒素ガス雰囲気下で酸を加えて攪拌することにより行うのが好ましい。
ここで用いる酸としては、ルイス酸が好ましく、BF−OEtが特に好ましい。
また、ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、クロロホルム等が例示でき、塩化メチレンが特に好ましい。反応温度は−40〜5℃が好ましく、−5〜5℃がより好ましい。
反応終了後は、適宜必要に応じて、pH調整、ろ過による不溶物の除去、濃縮等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
【0098】
(P)化合物(10b)の製造
化合物(10a)を脱ベンゾイル化することで、化合物(10b)が得られる。
反応は、例えば、化合物(10a)に対し、好ましくはメタノール及び1,4−ジオキサンの混合溶媒を用い、ナトリウムメトキシド等の塩基を加えて行うのが好ましい。反応温度は20〜60℃が好ましく、30〜50℃がより好ましい。
反応終了後は、適宜必要に応じて、pH調整、濃縮等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
【0099】
(Q)化合物(10c)の製造
化合物(10c)は、化合物(9)に代わり化合物(10b)を用いること以外は、前記化合物(10a)の場合と同様の方法で得られる。
【0100】
(R)化合物(10d)の製造
化合物(10d)は、前記化合物(10c)を脱アセタール化することで得られる。
反応は、例えば、化合物(10c)に対し、好ましくはハロゲン化炭化水素及びアルコールの混合溶媒を用い、酸を加えて行うのが好ましい。
ここで、ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチレン、クロロホルム等が例示でき、クロロホルムが特に好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール等が例示でき、メタノールが特に好ましい。酸としては有機酸が好ましく、p−トルエンスルホン酸(pTsOH)が特に好ましい。反応温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
反応終了後は、適宜必要に応じて、pH調整、濃縮等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
【0101】
(S)化合物(10e)の製造
化合物(10d)の糖部分を酸化し、得られたカルボキシ基をメチルエステル化することで、化合物(10e)が得られる。ここで糖部分とは、前記化合物(11)に由来する部分を指す。
酸化反応では、糖部分の第一級ヒドロキシ基が炭素原子に結合している部位をカルボキシ基に変換する。
酸化反応は、ハロゲン化炭化水素及び水の混合溶媒中で行うのが好ましく、ハロゲン化炭化水素として塩化メチレンを用いるのが特に好ましい。また、酸化反応は、触媒量の2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル(TEMPO)を共酸化剤と併用する方法で行うのが好ましく、共酸化剤としては、ビス(アセトキシ)ヨウドベンゼン(BAIB)が特に好ましい。TEMPO及び共酸化剤を併用する方法により、糖部分の第一級ヒドロキシ基が炭素原子に結合している二つの部位を、高選択的に一度にカルボキシ基に変換できるので、工程数を削減でき、目的物の収率を向上させるのに有利である。反応温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
酸化反応終了後は、例えば、チオ硫酸ナトリウム等を加えた後、適宜必要に応じてpH調整、抽出、濃縮等の後処理を行うことができる。
【0102】
次いで、前記酸化反応で得られたカルボキシ基をメチルエステル化する。メチルエステル化は、酸化反応で得られた化合物に対し、メチル化剤を作用させれば良い。メチル化剤は、求電子試薬として作用するものが好ましく、硫酸ジメチル、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、ジアゾメタンがより好ましく、ジアゾメタンが特に好ましい。ジアゾメタンは、ジエチルエーテル溶液として用いることが好ましい。反応温度は15〜40℃が好ましく、20〜30℃がより好ましい。
反応終了後は、適宜必要に応じて、pH調整、濃縮等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
【0103】
(T)化合物(10f)の製造
化合物(10f)は、化合物(10e)を脱ベンジル化することで得られる。
反応は、例えば、化合物(10f)に対し、好ましくはメタノール等のアルコールを溶媒として用い、パラジウムカーボンを加え、水素ガス雰囲気下で攪拌するのが好ましい。
反応終了後は、適宜必要に応じて、pH調整、ろ過、濃縮等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
【0104】
(U)標識化グリチルリチン(8b)の製造
標識化グリチルリチン(8b)は、化合物(10f)を脱ベンゾイル化し、メチルエステルを加水分解することで得られる。
反応は、例えば、化合物(10f)に対し、好ましくはメタノール等のアルコールを溶媒として用い、ナトリウムメトキシド等の塩基を加えて攪拌するのが好ましい。
反応終了後は、適宜必要に応じて、pH調整、ろ過、濃縮等を行い、カラムクロマトグラフィー等による精製を行っても良い。
【0105】
ここに示す標識化グリチルリチン(8b)の製造方法によれば、化合物(11)を二段階で反応させて配糖化を行うことで、化合物(10c)が容易に得られる。そして該化合物(10c)は、その糖部分の水酸基に対して、脱アセタール化及び酸化を行うことで、グルクロン酸誘導体二分子がグリチルレチン酸に結合した構造の所望の中間体に容易に変換されるので、化合物(10e)を極めて効率的に得られる。そして、該化合物(10e)は、公知の方法で容易に脱保護できる。このように、従来にない合理的な合成ルートを採用することにより、前記化合物(9)を原料として、標識化グリチルリチン(8b)を短工程且つ高収率で化学合成できる。
【実施例】
【0106】
以下、具体的に実施例を挙げ、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0107】
[実施例1]
(化合物(2a)の製造)
グリチルレチン酸(1)3.0gをジオキサン70mLに溶かし、亜鉛粉末3.36gと濃塩酸14mLを加え、室温で一夜撹拌した。反応液をろ過後、減圧濃縮した。濃縮物をテトラヒドロフラン70mLに溶かし、反応が終結するまでジョーンズ試薬を加えた。反応終結後、反応液に水を加え、クロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮物をジメチルホルムアミド70mLに溶かし、炭酸カリウム2.50gと塩化ベンジル0.8mLを加え、70℃で一夜加熱撹拌した。反応液を5%塩酸で中和後、酢酸エチルで抽出し、水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、減圧濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)で精製し、3.47gの化合物(2a)を白色結晶として得た(収率99%)。
得られた化合物(2a)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0108】
融点;157-160℃.
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 7.36-7.31 (5H, m), 5.18 (1H, t, J = 3.9 Hz), 5.19 (1H, d, J = 12.4 Hz), 5.08 (1H, d, J = 12.4 Hz), 2.59-2.51 (2H, m), 2.39-2.35 (1H, m) , 1.15 (3H, s), 1.13 (3H, s), 1.09 (3H, s), 1.07 (3H, s), 1.06 (3H, s), 1.00 (3H, s), 0.75 (3H, s).
13C-NMR (100MHz, CDCl3) δppm: 217.6, 176.8, 144.3, 136.3, 128.4, 127.98, 127.96, 122.3, 66.0, 55.2, 48.1, 47.4, 46.8, 44.2, 42.7, 41.6, 39.7, 39.2, 38.2, 36.6, 34.2, 32.1 , 31.9, 31.3, 28.5, 28.1, 26.9, 26.4, 26.1, 25.8, 23.6, 21.5, 19.6, 16.7, 15.2.
MS (ESI-TOF) [M + H]+ 545.3992.
【0109】
[実施例2]
(化合物(2b)の製造)
化合物(2a)3.47gをメタノール60mLとジクロロメタン60mLの混合溶媒に溶かし、ヒドロキシルアミン塩酸塩885mgと酢酸ナトリウム979mgを加えて、50℃で4時間加熱撹拌した。反応液を減圧濃縮後、ろ取した結晶を水洗、乾燥し、2.91gの化合物(2b)を白色結晶として得た(収率80%)。
得られた化合物(2b)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0110】
融点;216-217℃.
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 7.34-7.30 (5H, m), 5.18 (1H, d, J = 12.4 Hz), 5.17 (1H, t, J = 3.4 Hz), 5.08 (1H, d, J = 12.4 Hz), 3.09-3.06 (1H, m), 2.19-2.15 (1H, m), 1.16 (3H, s), 1.14 (3H, s), 1.11 (3H, s), 1.07 (3H, s), 1.05 (3H, s), 0.98 (3H, s), 0.74 (3H, s).
13C-NMR (100MHz, CDCl3) δppm: 176.8, 167.1, 144.3, 136.4, 128.4, 127.99, 127.95, 122.4, 66.0, 55.7 , 48.1, 47.1, 44.2, 42.7, 41.6, 40.3, 39.8, 38.6, 38.2, 37.0, 32.4, 31.9, 31.3, 28.5, 28.1, 27.2, 26.9, 26.1, 25.8, 23.6, 23.3, 19.1, 17.0, 16.8, 15.1.
MS (ESI-TOF) [M + H]+ 560.4106.
【0111】
[実施例3]
(化合物(2c)の製造)
化合物(2b)2.91gを酢酸200mLに溶かし、酢酸ナトリウム469mgと塩化パラジウム二ナトリウム1.68gを加えて、室温で3日間撹拌した。反応液を氷水に注ぎ、析出した結晶をろ過した。結晶を60℃で一晩減圧乾燥し、3.56gの結晶を得た。得られた結晶3.56gをジクロロメタン130mLに溶かし、無水酢酸1.3mL、トリエチルアミン1.8mL、ジメチルアミノピリジン32.1mgを加えて、室温で1時間撹拌した。次いで、反応液に水を加えて水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮物をテトラヒドロフラン100mLに溶かし、ピリジン0.5mLを加え、室温で15分撹拌した。その後反応液を−40℃に冷却し、四酢酸鉛2.92gを酢酸50mLに溶かした溶液を滴下した後、室温で一晩撹拌した。次いで、1N水酸化ナトリウム水溶液50mLに水素化ホウ素ナトリウム249mgを溶かした溶液を調製し、反応液に滴下して室温でさらに10分撹拌した。次いで、反応液を酢酸エチルで希釈し、セライトでろ過後、水洗し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)で精製して、2.7gの化合物(2c)を無色固体として得た(収率79%)。
得られた化合物(2c)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0112】
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 7.35-7.31 (5H, m), 5.19 (1H, t, J = 3.7 Hz), 5.19 (1H, d, J = 12.4 Hz), 5.09 (1H, d, J = 12.4 Hz), 4.21 (1H, d, J = 11.0 Hz), 4.15 (1H, d, J = 11.0 Hz), 2.80-2.76 (1H, m), 2.56-2.47 (1H, m), 2.18 (3H, s), 2.06 (3H, s), 1.18 (3H, s), 1.14 (3H, s), 1.12 (3H, s), 1.01 (3H, s), 0.99 (3H, s), 0.74 (3H, s).
13C-NMR (100MHz, CDCl3) δppm: 176.8, 170.8, 170.4, 169.6, 144.3, 136.3, 128.4, 127.99, 127.97, 122.2, 68.1, 66.0, 48.5, 48.2, 46.7, 44.3, 43.9, 42.8, 41.7, 39.8, 38.3, 37.2, 36.0, 32.0, 31.4, 28.6, 28.2, 27.0, 26.1, 25.8, 23.7, 21.0, 20.3, 20.1, 19.44, 19.40, 16.8, 15.5.
MS (ESI-TOF) [M + H]+ 660.4276.
【0113】
[実施例4]
(化合物(2d)の製造)
化合物(2c)2.70gをメタノール41mLに溶かし、炭酸ナトリウム1.95gを加え室温で一夜撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、2.10gの化合物(2d)を白色結晶として得た(収率89%)。
得られた化合物(2d)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0114】
融点;194-197℃.
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 7.36-7.31 (5H, m), 5.18 (1H, t, J = 3.2 Hz), 5.18 (1H, d, J = 12.4 Hz), 5.08 (1H, d, J = 12.4 Hz), 3.63 (1H, d, J = 11.2 Hz), 3.52 (1H, d, J = 11.2 Hz), 3.15-3.11 (1H, m), 2.10-2.03 (1H, m), 1.14 (3H, s), 1.11 (3H, s), 1.09 (3H, s), 1.04 (3H, s), 0.99 (3H, s), 0.74 (3H, s).
13C-NMR (100MHz, CDCl3) δppm: 176.8, 166.5, 144.4, 136.3, 128.4, 128.0, 127.9, 122.2, 67.6, 66.0, 49.8, 48.2, 47.0, 44.9, 44.3, 42.8, 41.7, 39.8, 38.3, 38.1, 36.8, 32.2, 32.0, 31.4, 28.6, 28.2, 27.0, 26.1, 26.0, 23.7, 19.0, 18.6, 17.4, 16.9, 15.4.
MS (ESI-TOF) [M + H]+ 576.4053.
【0115】
[実施例5]
(化合物(2e)の製造)
水15mLに酢酸アンモニウム3.61gとトリクロロチタンの塩酸水溶液11mLを加え、化合物(2d)1.0gをテトラヒドロフラン15mLに溶かしたものを室温で滴下し、一夜撹拌した。次いで、反応液をクロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=8:1)で精製し、820mgの化合物(2e)を白色結晶として得た(収率84%)。
得られた化合物(2e)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0116】
融点;174-176℃.
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 7.36-7.31 (5H, m), 5.19 (1H, d, J = 12.2 Hz), 5.18 (1H, t, J = 4.3 Hz), 5.08 (1H, d, J = 12.4 Hz), 3.65 (1H, dd, J = 10.6, 4.8 Hz), 3.43 (1H, dd, J = 11.5, 5.1 Hz), 2.66-2.61 (1H, m), 2.42 (1H, t, J = 6.2 Hz), 2.30-2.26 (1H, m), 1.17 (3H, s), 1.14 (3H, s), 1.14 (3H, s), 1.04 (3H, s), 1.02 (3H, s), 0.75 (3H, s).
13C-NMR (100MHz,CDCl3) δppm: 218.9, 176.8, 144.4, 136.4, 128.4, 127.97, 127.95, 122.1, 67.0, 66.0, 52.4, 49.3, 48.2, 46.8, 44.3, 42.8, 41.7, 39.9, 39.0, 38.3, 36.5, 35.3, 32.1, 32.0, 31.4, 28.6, 28.2, 27.0, 26.2, 26.0, 23.7, 19.3, 16.95, 16.94, 15.5.
MS (ESI-TOF) [M + Na]+ 583.3763.
【0117】
[実施例6]
(化合物(3)の製造)
化合物(2e)820mgをメタノール15mLに溶かし、炭酸ナトリウム620mgを加えて、室温で3日間撹拌した。次いで、反応液に5%塩酸を加え、酢酸エチルで抽出し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製し、590mgの化合物(3)を白色結晶として得た(収率76% )。
得られた化合物(3)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0118】
融点;133-135℃.
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 7.37-7.30 (5H, m), 5.19 (1H, t, J = 3.9 Hz), 5.19 (1H, d, J = 12.4 Hz), 5.09 (1H, d, J = 12.4 Hz), 2.47-2.44 (1H, m), 2.33-2.30 (2H, m),1.15 (3H, s), 1.14 (3H, s), 1.12 (3H, s), 1.03 (3H, s), 1.01 (3H, d, J = 6.3 Hz), 0.75 (3H, s).
13C-NMR (100MHz, CDCl3) δppm: 213.4, 176.8, 144.5, 136.4, 128.4, 127.97, 127.95, 122.3, 66.0, 53.6, 48.2, 45.3, 44.8, 44.3, 42.8, 41.7, 40.4, 39.6, 38.3, 37.5, 36.6, 32.0, 31.6, 31.4, 28.6, 28.2, 27.0, 26.2, 25.9, 24.1, 22.1, 16.9, 13.5, 11.8.
MS (ESI-TOF) [M + H]+ 531.3859.
【0119】
[実施例7]
(化合物(4)の製造)
化合物(3)100mgをテトラヒドロフラン2mLに溶かし、−78℃に冷却して、リチウムビストリメチルシリルアミドのテトラヒドロフラン溶液(1M)を0.2mL滴下し、−78℃で30分撹拌後、30分かけて0℃まで昇温した。次いで、反応液を再度−78℃に冷却し、クロロトリメチルシラン0.07mLを滴下し、室温に戻して1.5時間撹拌した。次いで、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、クロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮した。濃縮物をテトラヒドロフラン1mLとアセトニトリル2mLに溶解し、酢酸パラジウム42.4mgを加えて、室温で24時間撹拌した。次いで、反応液を濾過した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=15:1)で精製し、160mgの化合物(4)を無色固体として得た(収率89%)。
得られた化合物(4)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0120】
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 7.37-7.32 (5H, m), 7.04 (1H, d, J = 10.2 Hz), 5.77 (1H, d, J = 10.2 Hz), 5.23 (1H, t, J = 3.2 Hz), 5.20 (1H, d, J = 12.2 Hz), 5.09 (1H, d, J = 12.2 Hz), 2.37-2.34 (1H, m), 2.15-2.09 (1H, m), 1.17 (3H, s), 1.152 (3H, d, J = 6.8Hz), 1.148 (3H, s), 1.139 (3H, s), 1.06 (3H, s), 0.75 (3H, s).
13C-NMR (100MHz, CDCl3) δppm: 202.1, 176.7, 159.1, 144.9, 136.3, 128.4, 127.99, 127.97, 125.4, 121.8, 66.0, 51.5, 48.4, 44.3, 42.7, 42.2, 42.0, 40.52, 40.45, 39.5, 38.3, 32.1, 31.8, 31.4, 28.6, 28.2, 26.9, 26.0, 25.9, 23.8, 21.1, 17.4, 15.7, 12.5.
MS (ESI-TOF) [M + H]+ 529.3698.
【0121】
[実施例8]
(化合物(5)の製造)
化合物(4)300mgをテトラヒドロフラン6mLに溶かし、−78℃に冷却して、リチウムビストリメチルシリルアミドのテトラヒドロフラン溶液(1M)を6mL滴下し、−78℃で30分撹拌後、30分かけて0℃まで昇温した。次いで、反応液を再度−78℃に冷却し、重水素化ヨードメタン1.2mLを滴下して、室温に戻して3時間撹拌した。次いで、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加え、クロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)で精製し、290mgの化合物(5)を無色固体として得た(収率93%)。
得られた化合物(5)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0122】
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 7.35-7.31 (5H, m), 7.04 (1H, d, J = 10.0 Hz), 5.80 (1H, d, J = 10.0 Hz), 5.23 (1H, t, J = 3.4 Hz), 5.20 (1H, d, J = 12.2 Hz), 5.09 (1H, d, J = 12.2 Hz), 1.18 (3H, s), 1.15 (3H, s), 1.14 (3H, s), 1.10 (3H, s), 1.04 (3H, s), 0.75 (3H, s).
13C-NMR (100MHz,CDCl3) δppm: 205.2 176.7, 159.0, 144.7, 136.3, 128.4, 127.99, 127.97, 124.9, 121.7, 66.0, 53.4, 48.3, 44.4, 44.2, 42.6, 41.9, 41.8, 40.6, 39.4, 38.2, 32.5, 32.0, 31.4, 28.6, 28.2, 26.9, 26.1, 25.9, 23.5, 21.6, 19.0, 18.8, 17.4.
MS (ESI-TOF) [M + H]+ 546.4013.
【0123】
[実施例9]
(化合物(6a)の製造)
化合物(5)140mgを酢酸エチル1mLとエタノール1mLの混合溶媒に溶かし、パラジウムカーボン40mgを加えて、水素雰囲気下15時間撹拌した。次いで、反応液をろ過後、減圧濃縮し、114mgの化合物(6a)を白色結晶として得た(収率97%)。
得られた化合物(6a)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0124】
融点;265-267℃.
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 5.25 (1H, t, J = 3.5 Hz), 2.58-2.54 (1H, m), 2.39-2.35 (1H, m), 1.14 (3H, s), 1.08 (3H, s), 1.01 (3H, s), 0.99 (3H, s), 0.95 (3H, s), 0.76 (3H, s).
13C-NMR (100MHz, CDCl3) δppm:. 217.7, 182.9, 144.2, 122.5, 55.3, 48.1, 47.3, 46.9, 44.1, 42.6, 41.7, 39.8, 39.4, 38.3, 36.7, 34.3, 32.2, 32.1, 31.1, 28.8, 28.2, 27.0, 26.2, 25.9, 23.7, 21.5, 19.7, 16.8, 15.3.
MS (ESI-TOF) [M + H]+ 458.3739.
【0125】
[実施例10]
(化合物(7a)の製造)
化合物(6a)46mgを、ジクロロメタン1mL、アセトニトリル1mL及びピリジン0.5mLの混合溶媒に溶かし、ヨウ化銅1.9mgとt−ブチルヒドロペルオキシド70%溶液0.3mLを加えて、40℃で24時間加熱撹拌した。次いで、反応液に5%塩酸を加え、クロロホルムで抽出し、5%塩酸で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮後し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:1)で精製し、30mgの化合物(7a)を白色結晶として得た(収率63%)。
得られた化合物(7a)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0126】
融点;283-286℃.
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 5.74 (1H, s), 3.00-2.94 (1H, m), 2.68-2.60 (1H, m), 2.45 (1H, s), 2.36-2.33 (1H, m), 2.24-2.20 (1H, m), 1.38 (3H, s), 1.28 (3H, s), 1.23 (3H, s), 1.17 (3H, s), 1.07 (3H, s), 0.86 (3H, s).
13C-NMR (100MHz, CDCl3) δppm: 217.1, 199.4, 181.7, 169.6, 128.4, 61.1, 55.4, 48.3, 47.6, 45.3, 43.9, 43.4, 41.0, 39.8, 37.8, 36.8, 34.3, 32.2, 31.9, 31.0, 28.6, 28.5, 26.6, 26.5, 23.4, 21.4, 18.9, 18.6, 15.7.
MS (ESI-TOF) [M + H]+ 472.3481.
【0127】
[実施例11]
(標識化グリチルレチン酸(8a)の製造)
化合物(7a)58mgをテトラヒドロフラン1mLとメタノール1mLの混合溶媒に溶かし、水素化ホウ素ナトリウム14mgを加えて、室温で1時間撹拌した。次いで、反応液に5%塩酸を加え、酢酸エチルで抽出し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=100:1)で精製し、50mgの標識化グリチルレチン酸(8a)を白色結晶として得た(収率86%)。
得られた標識化グリチルレチン酸(8a)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0128】
融点;287-290℃.
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 5.70 (1H, s), 3.23 (1H, dd, J = 10.7, 5.4 Hz), 2.79 (1H, dt, J = 13.4, 3.4 Hz), 2.35 (1H, s), 2.20-2.17 (1H, m), 1.37 (3H, s), 1.22 (3H, s), 1.14 (3H, s), 1.13 (3H, s), 0.84 (3H, s), 0.80 (3H, s).
13C-NMR (100MHz, CDCl3) δppm: 200.3, 181.1, 169.2, 128.4, 78.8, 61.8, 54.9, 48.3, 45.5, 43.8, 43.3, 41.0, 39.2, 38.9, 37.8, 37.1, 32.8, 31.9, 31.0, 28.6, 28.5, 27.3, 26.6, 26.5, 23.5, 18.8, 17.6, 16.4, 15.6.
MS (ESI-TOF) [M + H]+ 474.3637.
【0129】
[実施例12]
(化合物(6b)の製造)
化合物(5)100mgをベンゼン1mLとエタノール1mLの混合溶媒に溶かし、クロロトリストリフェニルホスフィンロジウム85mgを加え、室温で水素雰囲気下24時間撹拌した。次いで、反応液をろ過した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、86mgの化合物(6b)を無色固体として得た(収率96%)。
得られた化合物(6b)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0130】
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 7.29-7.24 (5H, m), 5.19 (1H, d, J = 12.4 Hz), 5.11 (1H, t, J = 3.9 Hz), 5.08 (1H, d, J = 12.4 Hz), 2.48 (1H, ddd, J = 17.1, 9.9, 6.0 Hz), 2.31-2.27 (1H, m), 1.07 (3H, s), 1.06 (3H, s), 1.00 (3H, s), 0.98 (3H, s), 0.93 (3H, s), 0.67 (3H, s).
13C-NMR (100MHz, CDCl3) δppm: 217.6, 176.7, 144.3, 136.3, 128.4, 128.0, 127.9, 122.3, 66.0, 55.3, 48.2, 47.3, 46.9, 44.3, 42.8, 41.7, 39.8, 39.4, 38.3, 36.7, 34.2, 32.2, 32.0, 31.4, 28.6, 28.2, 27.0, 26.2, 25.9, 23.7, 21.5, 19.7, 16.8, 15.3, 14.3.
【0131】
[実施例13]
(化合物(7b)の製造)
化合物(6b)96mgをジクロロメタン1mL、アセトニトリル1mL及びピリジン0.5mLの混合溶媒に溶かし、ヨウ化銅1.7mgとt−ブチルヒドロペルオキシド70%溶液0.5mLを加えて、室温で24時間撹拌した。次いで、反応液に5%塩酸を加え、クロロホルムで抽出し、5%塩酸で洗浄して、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、50mgの化合物(7b)を無色固体として得た(収率51%)。
得られた化合物(7b)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0132】
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 7.40-7.31 (5H, m), 5.58 (1H, s), 5.20 (1H, d, J = 12.2 Hz), 5.09 (1H, d, J = 12.2 Hz), 2.97-2.94 (1H, m), 2.65-2.61 (1H, m), 2.42 (1H, s), 2.37-2.33 (1H, m), 1.36 (3H, s), 1.27 (3H, s), 1.16 (3H, s), 1.15 (3H, s), 1.06 (3H, s), 0.75 (3H, s).
13C-NMR (100MHz, CDCl3) δppm: 216.9, 199.1, 176.0, 169.3, 136.0, 128.5, 128.3, 128.2, 128.1, 66.2, 61.0, 55.4, 48.2, 47.6, 45.2, 44.0, 43.3, 41.2, 39.8, 37.7, 36.7, 34.2, 32.2, 31.8, 31.2, 28.5, 28.3, 26.6, 26.4, 23.3, 21.4, 18.8, 18.6, 15.7.
【0133】
[実施例14]
(化合物9の製造)
化合物(7b)50mgをテトラヒドロフラン1mLとメタノール1mLの混合溶媒に溶かし、水素化ホウ素ナトリウム10mgを加えて、室温で4時間撹拌した。次いで、反応液に5%塩酸を加え、クロロホルムで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製し、46mgの化合物(9)を無色固体として得た(収率91%)。
得られた化合物(9)の物性を確認したところ、以下のようであった。
【0134】
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δppm: 7.36-7.33 (5H, m), 5.54 (1H, s), 5.19 (1H, d, J = 12.2 Hz), 5.08 (1H, d, J = 12.2 Hz), 3.22 (1H, dd, J = 10.9, 5.6 Hz), 2.78 (1H, dt, J = 13.4, 3.4 Hz), 2.31 (1H, s), 1.35 (3H, s), 1.16 (3H, s), 1.13 (3H, s), 1.11 (3H, s), 0.80 (3H, s), 0.73 (3H, s).
13C-NMR (100MHz, CDCl3) δppm: 199.9, 176.0, 168.8, 136.0, 128.5, 128.4, 128.2, 128.1, 78.7, 66.2, 61.8, 54.9, 48.2, 45.4, 44.0, 43.2, 41.1, 39.2, 38.9, 37.7, 37.1, 32.8, 31.8, 31.2, 28.4, 28.3, 27.3, 26.5, 26.5, 23.4, 18.7, 17.6, 16.4, 15.6.
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、グリチルリチン及びグリチルレチン酸の薬理作用を発現する際の作用機序や生体内代謝の解析に利用可能である。特に医薬品開発に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(8a)で表される化合物。
【化1】

【請求項2】
下記式(9)で表される化合物。
【化2】

(式中、Bnはベンジル基である。)
【請求項3】
下記式(5)で表される化合物。
【化3】

(式中、Bnはベンジル基である。)
【請求項4】
下記一般式(7)で表される化合物。
【化4】

(式中、Rは水素原子又はベンジル基である。)
【請求項5】
下記一般式(6)で表される化合物。
【化5】

(式中、Rは水素原子又はベンジル基である。)
【請求項6】
下記一般式(2)で表される化合物。
【化6】

(式中、Bnはベンジル基であり;Zは酸素原子、=N−OHで表される基又は=N−O−C(=O)CHで表される基であり;Rはメチル基、ヒドロキシメチル基又は−CH−O−C(=O)CHで表される基であり;ただし、Zが酸素原子又は=N−OHで表される基である場合には、Rはメチル基又はヒドロキシメチル基であり、Zが=N−O−C(=O)CHで表される基である場合には、Rは−CH−O−C(=O)CHで表される基である。)
【請求項7】
下記式(3)で表される化合物。
【化7】

(式中、Bnはベンジル基である。)
【請求項8】
下記式(4)で表される化合物。
【化8】

(式中、Bnはベンジル基である。)
【請求項9】
下記式(1)で表されるグリチルレチン酸に、濃塩酸存在下で亜鉛を作用させ、次いでジョーンズ試薬を作用させ、次いで塩化ベンジルを作用させて、下記式(2a)で表される化合物とし、
下記式(2a)で表される化合物に、ヒドロキシルアミン塩酸塩を作用させて下記式(2b)で表される化合物とし、
下記式(2b)で表される化合物に、酢酸ナトリウム及び塩化パラジウム二ナトリウムを作用させ、次いで無水酢酸を作用させ、次いで四酢酸鉛を作用させてから水素化ホウ素ナトリウムを作用させて下記式(2c)で表される化合物とし、
下記式(2c)で表される化合物に塩基を作用させて下記式(2d)で表される化合物とし、
下記式(2d)で表される化合物に、トリクロロチタン及び酢酸アンモニウムを作用させて下記式(2e)で表される化合物とし、
下記式(2e)で表される化合物に塩基を作用させて下記式(3)で表される化合物とし、
下記式(3)で表される化合物に、リチウムビストリメチルシリルアミドを作用させ、次いでクロロトリメチルシランを作用させ、次いで酢酸パラジウムを作用させて下記式(4)で表される化合物とし、
下記式(4)で表される化合物に、リチウムビストリメチルシリルアミドを作用させ、次いで一般式「CDL」で表される化合物(「L」はハロゲン原子を表す)を作用させて下記式(5)で表される化合物とする、
ことを特徴とする下記式(5)で表される化合物の製造方法。
【化9】

(式中、Bnはベンジル基である。)
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法で製造された下記式(5)で表される化合物に水素ガス存在下でパラジウムカーボンを作用させて下記式(6a)で表される化合物とし、
下記式(6a)で表される化合物にヨウ化銅及びt−ブチルヒドロペルオキシドを作用させて下記式(7a)で表される化合物とし、
下記式(7a)で表される化合物に水素化ホウ素ナトリウムを作用させて下記式(8a)で表される標識化されたグリチルレチン酸とする、
ことを特徴とする標識化グリチルレチン酸の製造方法。
【化10】

(式中、Bnはベンジル基である。)
【請求項11】
請求項9に記載の製造方法で製造された下記式(5)で表される化合物に水素ガス存在下でロジウム触媒を作用させて下記式(6b)で表される化合物とし、
下記式(6b)で表される化合物にヨウ化銅及びt−ブチルヒドロペルオキシドを作用させて下記式(7b)で表される化合物とし、
下記式(7b)で表される化合物に水素化ホウ素ナトリウムを作用させて下記式(9)で表される化合物とする、
ことを特徴とする下記式(9)で表される化合物の製造方法。
【化11】

(式中、Bnはベンジル基である。)

【公開番号】特開2009−114132(P2009−114132A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289794(P2007−289794)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000170358)株式会社ミノファーゲン製薬 (16)
【Fターム(参考)】