説明

標識認識装置及び標識認識方法

【課題】認識対象に発光体標識と非発光体標識の両方が含まれる場合でも、その標識の内容を的確かつ比較的容易に認識することができる標識認識装置及び方法を提供すること。
【解決手段】標識認識装置100は、発光体標識照合部112と、非発光体標識照合部113と、候補領域画像の輝度分布に基づいて、候補領域画像が発光体標識の画像かあるいは非発光体標識の画像かを判断する輝度分布評価部104と、候補領域画像が発光体標識と判断された場合には発光体標識照合部112で照合を行わせ、候補領域画像が非発光体標識と判断された場合には非発光体標識照合部113で照合を行わせる照合制御部105とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標識認識装置及び標識認識方法に関し、例えば道路交通標識の内容を認識するのに用いて好適な装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されたカメラによって道路状況を撮像し、それによって得られた画像に基づいて、運転を支援したり、車両を制御することが考えられている。
【0003】
この場合、カメラで撮像された画像に所定を施すことで画像中に存在する道路交通標識、案内看板、信号機などを検出し、検出した標識や看板の内容メッセージを認識することは、非常に重要なことである。
【0004】
このような認識技術として、例えば特許文献1などに開示された方法がある。特許文献1に記載された技術は、例えば制限速度標識を認識する場合、まずカラーカメラ画像の色に基づいて標識の候補領域を特定する。次に、特定した候補領域の形状が円形かを識別し、円形である場合、内部分割数、赤領域面積比、円形度などを順番に求め、全てが速度制限標識の条件を満たした場合、パターンマッチングを実行することで制限速度標識を認識する。
【0005】
ところで、近年、各種標識や信号機として、発光体、とりわけ発光ダイオード(以下「LED」という)を多数利用し、LEDを特定の形状に配置して構成された標識や信号機が増えている。従って、発光体によって構成された標識や信号機の認識も必要となってきている。
【0006】
LED信号機の検出装置としては、特許文献2に開示されたものがある。特許文献2に記載された技術は、画像内における色及び形状に基づいて信号機の候補領域を検出し、検出した候補領域が所定周期で点滅しているかを判断することで、LED信号機の存在を検出するものである。
【特許文献1】特開平9−185703号公報
【特許文献2】特開2005−301518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のような手法は、発光体標識には適用が困難である。その理由は、色による候補領域の検出を形状検出の手法で代替できるとしても、円形検出後に必要な赤領域面積比計算とパターンマッチング処理を実施するのが困難だからである。
【0008】
詳しく説明する。図10Aに非発光体制限速度標識、図10Bに発光体制限速度標識のグレースケール画像が示されている。非発光体標識の場合は、数字部分が青色で、数字部分の背景が白色で、環状部分が赤色である。
【0009】
一方、発光体標識の場合は、数字部分がLEDの発光色であるオレンジなどで、背景相当部分が消灯中のLEDの黒色で、環状部分があれば赤色である。赤色環状部分のない発光体標識も存在する。従って、赤領域面積比を例えば輝度の相対的明るさで計算するなどの工夫をしても、発光体標識を認識できない場合もある。
【0010】
また、特許文献2のような技術は、LED発光体を撮像した画像における周期的点滅特性を利用する。点滅特性は使われた交流電源の正負波形に起因するが、通常、交流電源が全波整流されて使われるため、点灯と消灯の時間比は固定でない。つまり、場所によって点灯と消灯の時間比が異なることもよくある。結果として、特定フレーム率、例えば30FPS(Frame Per Second)のカメラで撮像した画像では、LEDの点滅周期が一定でなく、数フレーム或いは数十フレームに亘って検出できない場合もある。
【0011】
本発明は、かかる点を考慮してなされたものであり、認識対象に発光体標識と非発光体標識の両方が含まれる場合でも、その標識の内容を的確かつ比較的容易に認識することができる標識認識装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の標識認識装置は、撮像画像から標識の候補領域画像を抽出する候補領域抽出手段と、前記候補領域画像の輝度分布に基づいて、前記候補領域画像が発光体標識の画像かあるいは非発光体標識の画像かを判断する輝度分布評価手段と、前記候補領域画像と、複数の標識に対応した複数のテンプレートとを照合することで、前記候補領域画像に含まれる標識を特定する照合手段と、前記候補領域画像が発光体標識と判断されたかあるいは非発光体標識と判断されたかに基づいて、前記照合手段を制御する照合制御手段と、を具備する構成を採る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、候補領域画像が発光体標識の画像かあるいは非発光体標識の画像かを候補領域画像の輝度分布に基づいて判断し、発光体標識と判断された場合と非発光体標識と判断された場合とで照合処理を変更したことにより、認識対象に発光体標識と非発光体標識の両方が含まれる場合でも、その標識の内容を的確かつ比較的容易に認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の実施の形態では、本発明の標識認識装置及び方法を、道路交通標識を認識する場合に適用した例を示す。
【0015】
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態1に係る標識認識装置の構成を示す。標識認識装置100は、自動車等の車両に搭載されている。
【0016】
標識認識装置100は、候補領域抽出部101に入力画像を入力する。入力画像は、車に搭載されたカメラによってリアルタイムに撮像された車両周辺の画像である。また入力画像は、事前に記憶装置に保存された画像であってもよい。
【0017】
候補領域抽出部101は、入力画像から特定の形状、例えば三角形や円を含む画像を抽出し、これを標識の候補領域画像として出力する。具体的には、入力画像に含まれる多数の物体画像から標識と予想される画像領域を候補領域画像として抽出する。例えば、逆三角形を一時停止標識の候補、円を制限速度標識の候補として抽出する。なお、形状の抽出は、ハフ変換や色を利用した手法など公知の手法で実現できるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0018】
候補領域調整部102は、候補領域画像のサイズ、向き、形状などを調整(正規化)する。具体的には、候補領域調整部102は、候補領域画像を、標準テンプレートデータベース106に格納された標準テンプレートと照合し易い画像に調整する。例えば、候補領域画像を、テンプレートと同一サイズ、同一向き及び又は同一形状に変換する。変換の手法としては、アフィン変換など公知の手法を利用できる。候補領域調整部102は、調整された候補領域画像S11を候補領域調整部103及び輝度分布評価部104に送出する。
【0019】
候補領域調整部103は、サイズ、向き、形状などが調整された候補領域画像S11を入力し、この候補領域画像S11の輝度を調整することで、ノイズ成分を抑圧する。すなわち、通常、交通標識は2色又は3色しか有しないので、候補領域画像S11の輝度を2値又は3値画像にした方がノイズの影響を抑えることができ、続く照合部110での照合精度を向上させることができる。候補領域調整部103は、輝度が調整された候補領域画像S12を照合部110に送出する。
【0020】
輝度分布評価部104は、候補領域画像S11の輝度分布を計算し、輝度分布の特徴に基づき、候補領域画像S11が発光体標識候補かあるいは非発光体標識候補かを判断する。
【0021】
ここで、本発明の発明者らは、発光体標識の輝度分布と、非発光体標識の輝度分布とに以下のような特徴があることに着目した。図2は輝度分布のヒストグラムである。図2Aは発光体標識の輝度分布を示し、図2B及び図2Cは非発光体標識の輝度分布を示す。横軸は256段階に分けた輝度を示し、縦軸は各輝度の度数(画素数)を示す。なお、図2Bは周囲の明るさが普通の場合の非発光体標識の輝度分布であり、図2Cは周囲の明るさが非常に明るい場合の非発光体標識の輝度分布である。
【0022】
[発光体標識の輝度分布の特徴]
・2つの明確なピークが存在する(換言すれば、2つのピークとそれ以外のピークとの度数の差が所定の閾値以上である)
・ピーク間の幅が、非発光体標識のピーク間の幅よりも広い
・分布範囲が、非発光体標識の分布範囲よりも広い
・分布範囲が、全輝度範囲の半分以上に亘る
・分布が、非発光体標識の分布よりも高輝度側及び低輝度側の両端に集中する
【0023】
[非発光体標識の輝度分布の特徴]
・2つの明確なピークが存在しない(換言すれば、2つのピークとそれ以外のピークとの度数の差が所定の閾値未満である)
・ピーク間の幅が、発光体標識のピーク間の幅よりも狭い
・分布範囲が、発光体標識の分布範囲よりも狭い
・分布範囲が、全輝度範囲の半分以上に亘らない場合がある
・分布が、発光体標識の分布よりも高輝度側及び低輝度側の両端に集中しない
【0024】
輝度分布の特徴が、発光体標識と非発光体標識とで、上述したように分かれる原因は、発光体標識の輝度が発光体部分(点灯中LED)と非反射材(消灯中LED)に依存するのに対して、非発光体標識の輝度が反射材(ペント)に依存するからである。因みに、発光体標識の輝度分布における、ピークP1は消灯中LEDの輝度に依存するピークであり、ピークP2は点灯中LEDの輝度に依存するピークである。
【0025】
輝度分布評価部104は、上述した発光体標識の輝度分布と非発光体標識の輝度分布との特徴の違いを基準として、候補領域画像S11が発光体標識の画像かあるいは非発光体標識の画像かを判断する。
【0026】
ここで、上述した基準のうちどの基準を用いるかは適宜選択してよい。要は、候補領域画像の輝度分布ヒストグラムにおける、ピークレベル、ピーク間の距離、輝度分布範囲、及び又は、高輝度側と低輝度側とへの集中度に基づいて、候補領域画像が発光体標識の画像かあるいは非発光体標識の画像かを判断すればよい。
【0027】
本実施の形態の場合には、2つの明確なピークが存在し、かつピーク間の幅が所定値以上の場合に、発光体標識であり、それ以外は非発光体標識であると判断するようになっている。図2Aの例では、輝度が略101であるピークP1の度数が略120であり、輝度が略255であるピークP2の度数が略80である。そして、ピークP1、P2以外のピークの度数がピークP1、P2の度数よりも非常に小さく、かつピークP1、P2の輝度が非常に離れているので、輝度分布評価部104は、図2Aの輝度分布を発光体標識の輝度分布であると判断する。
【0028】
輝度分布評価部104は、判断結果S13を照合制御部105に送出する。照合制御部105は、判断結果S13に応じて、照合部110での処理を、発光体標識用の照合処理と、非発光体標識用の照合処理とで切り替えるための制御信号S14を出力する。
【0029】
照合部110は、制御信号S14によって出力先が切り替えられる切替スイッチ111と、発光体標識照合部112と、非発光体標識照合部113とを有する。切替スイッチ111は、候補領域画像S12を入力し、制御信号S14に応じて、候補領域画像S12を発光体標識照合部112又は非発光体標識照合部113のいずれかに出力する。
【0030】
ここで、標準テンプレートデータベース106には、複数の標識に対応した複数のテンプレートが格納されている。さらに、標準テンプレートデータベース106には、複数の標識に対応した複数のテンプレートとして、発光体標識用の輝度テンプレートと、非発光体標識用の輝度テンプレートとが格納されている。つまり、上述したように、発光体標識の輝度画像と非発光体標識の輝度画像とは異なるので、同一内容の標識(例えば速度制限が40キロを示す標識)でも、発光体標識用の輝度テンプレートと非発光体標識用の輝度テンプレートとでは異なる輝度テンプレートが格納されている。
【0031】
照合部110は、判断結果S13が発光体標識を示す場合には、候補領域画像S12を発光体標識照合部112に入力する。このとき、発光体標識照合部112は標準テンプレートデータベース106から発光体標識用の輝度テンプレートS15aを読み出し、この輝度テンプレートS15aに含まれる複数の標識の輝度テンプレートと候補領域画像S12とを照合する。
【0032】
これに対して、照合部110は、判断結果S13が非発光体標識を示す場合には、候補領域画像S12を非発光体標識照合部113に入力する。このとき、非発光体標識照合部113は標準テンプレートデータベース106から非発光体標識用の輝度テンプレートS15bを読み出し、この輝度テンプレートS15bに含まれる複数の標識の輝度テンプレートと候補領域画像S12とを照合する。
【0033】
このようにして、照合部110は、候補領域画像S12が、例えば「駐車禁止」を示す標識であることを特定し、これを照合結果として出力部107に送出する。
【0034】
このように、本実施の形態においては、輝度分布評価部104において、候補領域画像が発光体標識の画像なのかあるは非発光体標識の画像なのかを判別し、照合部110において、各候補領域画像に対して、発光体標識用のパターンマッチング又は非発光体標識用のパターンマッチングのいずれか一方のみを行う。これにより、各候補領域画像に対して、発光体標識用のパターンマッチングと非発光体標識用のパターンマッチングの両方を施す場合と比較して、パターンマッチングに要する処理量を半分に低減することができる。
【0035】
出力部107は、いわゆるインターフェースであり、照合結果を出力先にとって適切な信号に変換して、音声提示部、画像提示部又は車制御装置等に出力する。
【0036】
次に、図3のフローチャートを用いて、標識認識装置100の動作を説明する。
【0037】
標識認識装置100は、ステップST10で標識認識処理を開始すると、ステップST11で候補領域抽出部101に画像を入力し、ステップST12で入力画像から標識の候補である特定形状の領域を、候補領域画像として抽出する。
【0038】
ステップST13では、候補領域調整部102によって候補領域画像の幾何特性、例えばサイズ、向き及び形状を正規化する。
【0039】
ステップST14では輝度分布評価部104によって候補領域画像S11の輝度分布を計算し、ステップST15では輝度分布評価部104によって輝度分布の特徴に基づき候補領域画像S11が発光体標識か否かを判断する。本実施の形態の場合には、輝度分布評価部104は、輝度分布ヒストグラムにおいて、2つのピークを有し、かつピーク間の距離が所定の閾値以上である場合に、候補領域画像が発光体標識であると判断し(ステップST15:YES)、それ以外には候補領域画像が非発光体標識であると判断する(ステップST15:NO)。
【0040】
ステップST15で候補領域画像が発光体標識であると判断されると、ステップST16で候補領域調整部103によって輝度特性が調整され、ステップST17で発光体標識照合部112によって発光体標識用の輝度テンプレートS15aを用いた照合が行われる。
【0041】
ステップST15で候補領域画像が非発光体標識であると判断されると、ステップST18で候補領域調整部103によって輝度特性が調整され、ステップST19で非発光体標識照合部113によって非発光体標識用の輝度テンプレートS15bを用いた照合が行われる。
【0042】
ステップST20では、候補領域抽出部101が、全画像又は画像の特定領域に対して、全ての候補形状を探索したかを判断し、未だ探索していない領域又は候補形状がある場合は、ステップST12に戻り、次の領域又は候補形状に対してステップST12−ST19の処理が繰り返される。これに対して、ステップST20で、候補領域抽出部101が、探索を全て完了したと判断した場合は、ステップST21に移る。
【0043】
ステップST21では、出力部107によって照合結果が出力され、ステップST22で標識認識処理が終了される。
【0044】
以上説明したように、本実施の形態によれば、発光体標識照合部112と、非発光体標識照合部113と、候補領域画像の輝度分布に基づいて、候補領域画像が発光体標識の画像かあるいは非発光体標識の画像かを判断する輝度分布評価部104と、候補領域画像が発光体標識と判断された場合には発光体標識照合部112で照合を行わせ、候補領域画像が非発光体標識と判断された場合には非発光体標識照合部113で照合を行わせる照合制御部105とを設けたことにより、認識対象に発光体標識と非発光体標識の両方が含まれる場合でも、その標識の内容を的確かつ比較的容易に認識することができる。
【0045】
(実施の形態2)
図1との対応部分に同一符号を付して示す図4に、本実施の形態の標識認識装置の構成を示す。
【0046】
標識認識装置200は、実施の形態1の標識認識装置100(図1)と比較して、カメラパラメータ設定部202と、カメラ制御部203とが追加されている。
【0047】
カメラパラメータ設定部202は、輝度分布評価部201によって得られた輝度分布計算結果をS20入力し、この輝度分布計算結果S20に基づいて、動的にカメラ210の露光量を変動させるパラメータ、例えばカメラの絞り、シャッタースピード、感度などを調整する。カメラ制御部203は、カメラパラメータ設定部202によって設定されたパラメータに応じて、カメラ210の絞り、シャッタースピード、感度などを制御する。これにより、カメラ210の露光量が制御される。
【0048】
カメラ210の露光量を変動させると、カメラ210から出力される入力画像(撮像画像)の輝度分布が変化する。例えば、露光量を小さくすれば、図2Cに示した非発光体標識の輝度分布の高輝度端のピークは左にシフトする。これに対して、露光量を小さくしても、図2Aに示した発光体標識の輝度分布の高輝度端のピークP2はシフトしない。本実施の形態では、輝度分布評価部201がこの特性を利用して候補領域画像が発光体標識か否かを判断する。
【0049】
図3との対応部分に同一符号を付して示す図5に、本実施の形態の標識認識装置200による標識認識処理手順を示す。以下では、図3に対して追加された処理について説明する。
【0050】
標識認識装置200は、ステップST15で輝度分布評価部201によって候補領域画像が発光体標識であると判断されると(ステップST15:YES)、ステップST31に移る。ステップST31では、カメラ210からの入力画像が1フレーム目(1枚目)かあるいは2フレーム目(2枚目)であるか判断し、1枚目と判断した場合にはステップST32に移る。
【0051】
標識認識装置200は、ステップST32において、カメラパラメータ設定部202及びカメラ制御部203によってカメラ210の露光量を変更(例えば露光量を小さく)した後、ステップST11に戻り、変更した露光量で撮像した画像を用いて再度、ステップST11−ST15を繰り返す。
【0052】
再度ステップST15に入ると、輝度分布評価部201によって、露光量を変更して撮像された候補領域画像が発光体標識候補であるか否かが評価される。具体的には、輝度分布評価部201によって、高輝度端のピークがシフトしたか否かを判断する。高輝度端のピークがシフトした場合、このことは候補領域画像が非発光体標識の画像であることを意味するので、ステップST18に移る。これに対して、高輝度端のピークがほとんどシフトしない場合、このことは候補領域画像が発光体標識の画像であることを意味するので、ステップST31に移る。
【0053】
ステップST31では、入力画像が2枚目の画像なので、ステップST33に移る。続くステップST33では、カメラパラメータ設定部202及びカメラ制御部203によって、必要に応じてカメラ210の露光量を1枚目の入力画像を撮像したときの値に復帰させる。
【0054】
このように本実施の形態では、異なる露光量で撮像された第1及び第2の候補領域画像の輝度分布ヒストグラムにおける、高輝度端ピークのシフトの状態に基づいて、候補領域画像が発光体標識の画像かあるいは非発光体標識の画像かを判断したことにより、発光体標識かあるいは非発光体標識かを的確に判別できる。
【0055】
なお、本実施の形態では、実施の形態1と比較して、1枚目の入力画像が発光体標識かあるいは非発光体標識かを判別する処理(ステップST15での1枚目の処理)において、発光体標識であると判断するための基準を緩めてもよい。すなわち、本実施の形態の特徴は、主に、当該複数枚の入力画像から得た候補領域画像間における高輝度端ピークがシフトしたか否かに基づいて、発光体標識かあるいは非発光体標識かを判別することなので、本実施の形態においては1枚目の入力画像のみでの判別はあまり重要ではない。
【0056】
例えば、1枚目の入力画像のみでの判別は行わずに、1枚目の入力画像を記憶しておき、異なる露光量で撮像した複数枚(例えば2枚)の入力画像を取得した後に、この複数枚の入力画像から得た候補領域画像間において高輝度端ピークがシフトした候補領域画像を発光体標識であると判別してもよい。
【0057】
(実施の形態3)
図1との対応部分に同一符号を付して示す図6に、本実施の形態の標識認識装置の構成を示す。
【0058】
標識認識装置300は、実施の形態1の標識認識装置100(図1)と比較して、照合部310の構成が異なる。照合部は、制御信号S14によって出力先が切り替えられる切替スイッチ311と、白黒反転部312と、非発光体標識照合部313とを有する。
【0059】
標識認識装置300は、輝度分布評価部104において候補領域画像S11が非発光体標識であると判断すると、候補領域調整部103によって2値化された候補領域画像S12を切替スイッチ311を介して非発光体標識照合部313に入力する。そして、非発光体標識照合部313が標準テンプレートデータベース106から非発光体標識用の輝度テンプレートS15bを読み出し、この輝度テンプレートS15bに含まれる複数の標識の輝度テンプレートと候補領域画像S12とを照合する。
【0060】
これに対して、標識認識装置300は、輝度分布評価部104において候補領域画像S11が発光体標識であると判断すると、候補領域調整部103によって2値化された候補領域画像S12を切替スイッチ311を介して白黒反転部312に入力する。白黒反転部312によって白黒反転された2値画像は、非発光体標識照合部313に入力される。非発光体標識照合部313は、白黒反転画像に対しても上述した非発光体標識画像の場合と同様に、標準テンプレートデータベース106から非発光体標識用の輝度テンプレートS15bを読み出し、この輝度テンプレートS15bに含まれる複数の標識の輝度テンプレートと候補領域画像S12とを照合する。
【0061】
このように、本実施の形態の標識認識装置300においては、発光体標識照合部112(図1)に換えて白黒反転部312を設け、発光体標識であると判断された候補領域画像を白黒反転部312によって白黒反転した後に、非発光体標識照合部313によって非発光体標識用の輝度テンプレートS15bを用いて照合する。これにより、標識認識装置300においては、認識対象に発光体標識と非発光体標識の両方が含まれる場合でも、より簡易な構成で標識の内容を特定することができるようになる。
【0062】
図3との対応部分に同一符号を付して示す図7に、本実施の形態の標識認識装置300による標識認識処理手順を示す。以下では、図3と異なる処理について説明する。
【0063】
標識認識装置300は、ステップST15で輝度分布評価部104によって候補領域画像が発光体標識でないと判断すると(ステップST15:NO)、ステップST41において候補領域調整部103によって候補領域画像を2値化し、ステップST44において非発光体標識照合部313によって照合処理を行う。
【0064】
これに対して、標識認識装置300は、ステップST15で輝度分布評価部104によって候補領域画像が発光体標識であると判断すると(ステップST15:YES)、ステップST42において候補領域調整部103によって候補領域画像を2値化し、ステップST43によって白黒反転部312によって2値化画像を白黒反転処理した後に、ステップST44において白黒反転された2値化画像に対して非発光体標識照合部313によって照合処理を行う。
【0065】
なお、図6の例では、発光体標識照合部112(図1)に換えて白黒反転部312を設けた場合を示したが、図8に示すように構成してもよい。
【0066】
図1との対応部分に同一符号を付して示す図8に、本実施の形態の標識認識装置の他の構成例を示す。
【0067】
標識認識装置400の照合部410は、切替スイッチ411と、発光体標識照合部412と、白黒反転部413とを有する。
【0068】
標識認識装置400は、輝度分布評価部104において候補領域画像S11が発光体標識であると判断すると、候補領域調整部103によって2値化された候補領域画像S12を切替スイッチ411を介して発光体標識照合部412に入力する。そして、発光体標識照合部412が標準テンプレートデータベース106から発光体標識用の輝度テンプレートS15aを読み出し、この輝度テンプレートS15aに含まれる複数の標識の輝度テンプレートと候補領域画像S12とを照合する。
【0069】
これに対して、標識認識装置400は、輝度分布評価部104において候補領域画像S11が非発光体標識であると判断すると、候補領域調整部103によって2値化された候補領域画像S12を切替スイッチ411を介して白黒反転部413に入力する。白黒反転部413によって白黒反転された2値画像は、発光体標識照合部412に入力される。発光体標識照合部412は、白黒反転画像に対しても上述した発光体標識画像の場合と同様に、標準テンプレートデータベース106から発光体標識用の輝度テンプレートS15aを読み出し、この輝度テンプレートS15aに含まれる複数の標識の輝度テンプレートと候補領域画像S12とを照合する。
【0070】
このように、標識認識装置400においては、非発光体標識照合部113(図1)に換えて白黒反転部413を設け、非発光体標識であると判断された候補領域画像を白黒反転部413によって白黒反転した後に、発光体標識照合部412によって発光体標識用の輝度テンプレートS15aを用いて照合する。これにより、標識認識装置400においては、認識対象に発光体標識と非発光体標識の両方が含まれる場合でも、より簡易な構成で標識の内容を特定することができるようになる。
【0071】
図3との対応部分に同一符号を付して示す図9に、標識認識装置400による標識認識処理手順を示す。以下では、図3と異なる処理について説明する。
【0072】
標識認識装置400は、ステップST15で輝度分布評価部104によって候補領域画像が発光体標識であると判断すると(ステップST15:YES)、ステップST53において候補領域調整部103によって候補領域画像を2値化し、ステップST54において発光体標識照合部412によって照合処理を行う。
【0073】
これに対して、標識認識装置400は、ステップST15で輝度分布評価部104によって候補領域画像が非発光体標識であると判断すると(ステップST15:NO)、ステップST51において候補領域調整部103によって候補領域画像を2値化し、ステップST52によって白黒反転部413によって2値化画像を白黒反転処理した後に、ステップST54において白黒反転された2値化画像に対して発光体標識照合部412によって照合処理を行う。
【0074】
(他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態では、候補領域画像のサイズ、向き、形状などを調整する候補領域調整部102を、候補領域画像の輝度を調整する候補領域調整部103の前段側に設けた場合について説明したが、候補領域調整部102を、候補領域調整部103の後段に設けてもよい。
【0075】
また、上述した実施の形態では、候補領域調整部102によって候補領域画像のサイズを標準テンプレートのサイズに調整する場合について説明したが、候補領域画像のサイズを調整せずに、標準テンプレートのサイズを候補領域画像のサイズに合うように調整してもよい。
【0076】
ところで、発光体標識の撮像画像においては、発光体標識の交流電源特性とカメラのフレーム率との関係に応じて、時系列画像が点滅する可能性がある。つまり、輝度分布評価部104で計算した輝度分布は、常に図2Aのような分布になるとは限らない。このような状況を考慮し、輝度分布評価部104において、図2Aの高輝度端ピークP2の存在が時間的に有無交錯することを許容して、発光体標識を認識してもよい。
【0077】
さらに、このように発光体標識の時系列画像が点滅することを積極的に利用して、時系列画像が点滅している場合(時系列画像の輝度分布ヒストグラムが大きく変化している場合)には、発光体標識の画像であると判断してもよい。実際には、発光体標識が点灯している場合には高輝度端の度数が高くなるのに対して、発光体標識が消灯している場合には高輝度端の度数が低くなるので、時系列画像における高輝度端の度数の変化が所定の閾値以上の場合に、発光体標識の画像であると判断すればよい。
【0078】
また、上述した実施の形態では、本発明の標識認識装置及び方法を、道路交通標識の認識に適用した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、認識対象に発光体標識と非発光体標識の両方が含まれる場合に広く適用可能である。例えば、ロボットナビゲーションや、リモートセンシングの壁検出装置等の種々の装置にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、例えば道路交通標識の内容を認識する標識認識装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態1に係る標識認識装置の構成を示すブロック図
【図2】図2Aは発光体標識の輝度分布を示すヒストグラム、図2B及び図2Cは非発光体標識の輝度分布を示すヒストグラム
【図3】実施の形態1の動作の説明に供するフローチャート
【図4】実施の形態2の標識認識装置の構成を示すブロック図
【図5】実施の形態2の動作の説明に供するフローチャート
【図6】実施の形態3の標識認識装置の構成を示すブロック図
【図7】実施の形態3の動作の説明に供するフローチャート
【図8】実施の形態3の標識認識装置の構成を示すブロック図
【図9】実施の形態3の動作の説明に供するフローチャート
【図10】図10Aは非発光体の制限速度標識を示す図、図10Bは発光体の制限速度標識を示す図
【符号の説明】
【0081】
100、200、300、400 標識認識装置
101 候補領域抽出部
102、103 候補領域調整部
104、201 輝度分布評価部
105 照合制御部
106 標準テンプレートデータベース
110、310、410 照合部
111、311、411 切替スイッチ
112、412 発光体標識照合部
113、313 非発光体標識照合部
202 カメラパラメータ設定部
203 カメラ制御部
312、413 白黒反転部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像画像から標識の候補領域画像を抽出する候補領域抽出手段と、
前記候補領域画像の輝度分布に基づいて、前記候補領域画像が発光体標識の画像かあるいは非発光体標識の画像かを判断する輝度分布評価手段と、
前記候補領域画像と、複数の標識に対応した複数のテンプレートとを照合することで、前記候補領域画像に含まれる標識を特定する照合手段と、
前記候補領域画像が発光体標識と判断されたかあるいは非発光体標識と判断されたかに基づいて、前記照合手段を制御する照合制御手段と、
を具備する標識認識装置。
【請求項2】
前記照合手段は、
前記候補領域画像と発光体標識用の標識テンプレートとを照合することで、前記候補領域画像に含まれる標識を特定する発光体標識照合手段と、
前記候補領域画像と非発光体標識用の標識テンプレートとを照合することで、前記候補領域画像に含まれる標識を特定する非発光体標識照合手段と、
を具備し、
前記照合制御手段は、前記候補領域画像が発光体標識と判断された場合には前記発光体標識照合手段が用いられ、前記候補領域画像が非発光体標識と判断された場合には前記非発光体標識照合手段が用いられるように、前記照合手段を制御する、
請求項1に記載の標識認識装置。
【請求項3】
前記照合手段は、
前記候補領域画像と非発光体標識用の標識テンプレートとを照合することで、前記候補領域画像に含まれる標識を特定する非発光体標識照合手段と、
2値化された前記候補領域画像を白黒反転する白黒反転手段と、
を具備し、
前記照合制御手段は、前記候補領域画像が非発光体標識と判断された場合には前記候補領域画像が前記非発光体標識照合手段によって照合され、前記候補領域画像が発光体標識と判断された場合には前記候補領域画像が前記白黒反転手段によって白黒反転された後に前記非発光体標識照合手段によって照合されるように、前記照合手段を制御する、
請求項1に記載の標識認識装置。
【請求項4】
前記照合手段は、
前記候補領域画像と発光体標識用の標識テンプレートとを照合することで、前記候補領域画像に含まれる標識を特定する発光体標識照合手段と、
2値化された前記候補領域画像を白黒反転する白黒反転手段と、
を具備し、
前記照合制御手段は、前記候補領域画像が発光体標識と判断された場合には前記候補領域画像が前記発光体標識照合手段によって照合され、前記候補領域画像が非発光体標識と判断された場合には前記候補領域画像が前記白黒反転手段によって白黒反転された後に前記発光体標識照合手段によって照合されるように、前記照合手段を制御する、
請求項1に記載の標識認識装置。
【請求項5】
前記輝度分布評価手段は、
前記候補領域画像の輝度分布ヒストグラムにおける、ピークレベル、ピーク間の距離、輝度分布範囲、及び又は、高輝度側と低輝度側とへの集中度に基づいて、前記候補領域画像が発光体標識の画像かあるいは非発光体標識の画像かを判断する、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の標識認識装置。
【請求項6】
前記輝度分布評価手段は、
時系列画像における前記候補領域画像の輝度分布ヒストグラムにおいて、高輝度端の度数が時系列で所定値以上変化しているか否かに基づいて、前記候補領域画像が発光体標識の画像かあるいは非発光体標識の画像かを判断する、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の標識認識装置。
【請求項7】
前記標識認識装置は、
前記撮像画像を撮像する撮像手段の露光量を変化させる撮像制御手段を、さらに具備し、
前記輝度分布評価手段は、異なる露光量で撮像された第1及び第2の候補領域画像の輝度分布ヒストグラムにおける、高輝度端ピークのシフトの状態に基づいて、前記候補領域画像が発光体標識の画像かあるいは非発光体標識の画像かを判断する、
請求項1から請求項4のいずれかに記載の標識認識装置。
【請求項8】
撮像画像から標識の候補領域画像を抽出する候補領域抽出ステップと、
前記候補領域画像の輝度分布に基づいて、前記候補領域画像が発光体標識の画像かあるいは非発光体標識の画像かを判断する輝度分布評価ステップと、
前記候補領域画像と、複数の標識に対応した複数のテンプレートとを照合することで、前記候補領域画像に含まれる標識を特定する照合ステップと、
前記候補領域画像が発光体標識と判断されたかあるいは非発光体標識と判断されかに基づいて、前記照合ステップでの照合処理を変更する照合制御ステップと、
を含む標識認識方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−26591(P2010−26591A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183976(P2008−183976)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】