説明

標高データの適正誤差幅特定装置及びその方法、並びに適正誤差幅を特定するためのコンピュータプログラム及びコンピュータプログラムを記録した記録媒体

【課題】 本発明は、標高データの適正誤差幅特定装置及びその方法に関する。
【解決手段】地図データ保存部から、標高値の適正誤差幅の特定対象となる道路リンク上の地点を抽出し、メッシュ標高データに基づいて、該対象地点の標高値を演算し、該対象地点の標高値について、該標高値に関連する精度に基づき第1の誤差幅を算出し、該道路リンクに設定された勾配に関する道路属性情報と、該道路リンク上の他の地点の参照標高データとに基づいて、該対象地点の第2の誤差幅を算出し、該第1の誤差幅と該第2の誤差幅との重複部分を、該対象地点の適正誤差幅と特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標高データの適正誤差幅特定装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、経路探索を行うナビゲーション装置において、エネルギー消費量を考慮した経路探索技術への要求の高まりから、道路勾配データを用いて当該エネルギー消費量を計算する技術が提案されている。
このような技術として特許文献1では、リンクごとに記憶された道路勾配データに基づいて、各リンクにおける推定燃費を計算し、計算された推定燃費を利用して最適な経路探索を行う車両用経路探索装置等が提案されている。
上記道路勾配データは、一般にリンク上の所定のポイント(座標)の標高値に基づき定められることから、精度の良い標高値を用いることが好ましい。そして、当該標高値は、例えば、計測車により取得された標高データ、メッシュ標高データに基づき得られる標高データ等種々のデータベースで整備されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3551634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、道路勾配データを算出するために用いられる標高データとしては、計測車により取得された標高データ、メッシュ標高データに基づき得られる標高データ等が挙げられる。
ここで、上記計測車により取得された標高データで構成されるデータベースは、実際に計測車を走行させることにより道路の標高を取得するため、各標高データの精度が高い。しかしながら、当該データベースは、実際に計測車を走行させるため、作業工数・費用・時間がかかり、広範にわたって整備されていないのが現状である。
【0005】
一方、上記メッシュ標高データに基づき得られる標高データで構成されるデータベースは、国土地理院の提供するメッシュ標高データを用いて演算された標高データで構成されるため、作業工数・費用・時間を比較的必要とすることなく、広範にわたって標高データを整備することができる。
ここで、メッシュ標高データとは、上記のように国土地理院より提供される標高データであり、ナビソフトと同様にCD−ROM等の記録媒体の形態で入手可能であり、全国の地図が、1辺の長さが50m又は10m程度の小さな正方形の領域に細かく区分され、地図データにおいて所定領域に含まれる任意の点はこの点を取り囲む4つの格子点の標高(メッシュ標高データ)に基づき一般的に線形補間の手法により定めることができる。すなわち、上記所定ポイントの標高値は、当該ポイントを取り囲む4つの格子点のメッシュ標高データに基づき特定される。
【0006】
しかしながら、このようにして得られた標高データは、種々の要素に起因して、人的誤差、測量誤差、演算誤差等を含むことから、その誤差幅も大きく、当該標高データをそのまま用いた場合、道路勾配データを精度良く演算することが困難であった。
そこで本発明者は、メッシュ標高データに基づいて得られた標高データについて、適正な誤差幅を特定すべく鋭意検討を重ねてきた。その結果、道路リンク上のある地点において、標高値に関連する精度に起因する誤差幅と、当該道路リンクに設定された勾配に関する道路属性情報を考慮した誤差幅とに基づいて、両誤差幅の重複部分を適正誤差幅と特定することにより、より確からしい適正誤差幅を得ることができることに想到した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その第1の局面は次のように規定される。即ち、
地図データ保存部から、標高値の適正誤差幅の特定対象となる道路リンク上の地点を抽出する対象地点抽出部と、
メッシュ標高データに基づいて、前記対象地点の標高値を演算する標高値演算部と、
前記対象地点の標高値について、前記標高値に関連する精度に基づき第1の誤差幅を算出する第1の誤差幅算出部と、
前記道路リンクに設定された勾配に関する道路属性情報と、該道路リンク上の他の地点の参照標高データとに基づいて、前記対象地点の第2の誤差幅を算出する第2の誤差幅算出部と、
前記第1の誤差幅と前記第2の誤差幅との重複部分を、前記対象地点の適正誤差幅と特定する適正誤差幅特定部と、
を備える、適正誤差幅特定装置。
【0008】
このように規定される第1の局面の標高値特定装置によれば、標高値の適正誤差幅の特定対象となる道路リンク上の対象地点を抽出し、メッシュ標高データに基づいて当該対象地点の標高値を演算し、演算された標高値に関連する精度に基づき算出される第1の誤差幅及び当該道路リンクに設定された勾配に関する道路属性情報に基づき算出される第2の誤差幅との重複部分を当該対象地点の適正誤差幅と特定する。
このように、標高値に関する精度に起因する第1の誤差幅と道路リンクの勾配情報に起因する第2の誤差幅とを夫々求め、その重複部分を当該地点における標高値の適正誤差幅とすることにより、より確からしい誤差幅を特定することができる。
【0009】
ここで、「第1の誤差幅」は標高値に関連する精度に基づき算出される。標高値に関連する精度としては、当該精度が標高値に影響を与えるものであれば特に限定されないが、メッシュ標高データベースの精度、地図精度等が挙げられる。
前者によれば、メッシュ標高データは、メッシュの節点における標高を測定したデータあるため、上記対象地点が当該メッシュの節点に位置する場合には、当該対象位置の標高を正確に取得することができる。一方、上記対象地点が当該メッシュの節点に位置しない場合には、当該対象地点を囲む4つのメッシュ標高データから求められる標高値は、誤差が生じてしまう。また、このようにして生じる誤差は、用いるメッシュ標高データの種別によっても異なる。すなわち、例えば、より高精度な5mメッシュ標高データを用いて得られた標高値の誤差範囲は、10mメッシュ標高データ等の比較的精度の低いメッシュ標高データを用いて得られた標高値の誤差範囲に比べて狭いものとなる。
【0010】
また後者によれば、地図の位置精度は、人的誤差、測量誤差等により、十数メートルの誤差があるとも言われている。したがって、当該誤差に基づいて対象地点の位置が水平方向にズレることにより、標高値も誤差幅を生じることとなる。そして、このようにして生じる誤差は、地図の種別によっても異なる。すなわち、例えば、より高精度な市街図が用いられる場合には、比較的精度の低い地形図が用いられた場合に比べて、水平位置のズレが小さいため、算出される標高値の誤差幅は狭いものと考えられる。
【0011】
「第2の誤差幅」は道路リンクに設定された勾配に関する道路属性情報と、該道路リンク上の他の地点の参照標高データとに基づき算出される。一般に、道路の勾配は、道路構造令等により設定されている。したがって、道路リンク上に位置する対象地点の標高値は、同じ道路リンク上に位置する他の地点の標高値(参照標高データ)と当該道路リンクに設定される勾配情報に基づいて得られる誤差範囲内に含まれると推定される。
【0012】
また、上記参照標高データは、前記第1の誤差幅算出部で算出された第1の誤差幅を含むこととできる(第3の局面)。上記第1の誤差幅を含む参照標高データを用いることにより、上記対象地点に関してより実際に即した第2の誤差幅を得ることができる。
上記適正誤差幅特定部は、前記第1の誤差幅が小さい前記参照標高データを基準として順に、前記対象地点の適正誤差幅を特定してもよい(第4の局面)。第1の誤差幅が小さい前記参照標高データを基準として順に、上記対象地点の適正誤差幅の特定を行うことにより、処理の迅速化を図ることが可能となる。
【0013】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面に規定の適正誤差幅特定装置において、前記対象地点における標高値の前記メッシュ標高データ出典精度に起因する第1−1の誤差幅を算出する第1−1の誤差幅算出部と、
前記対象地点の位置精度に起因する第1−2の誤差幅を算出する第1−2の誤差幅算出部と、を備え、
前記第1の誤差幅算出部は、前記第1−1の誤差幅と前記第1−2の誤差幅とを加算して前記第1の誤差幅を算出する。
このように規定される第2の局面の標高値特定装置によれば、上記第1の誤差幅を算出するに際して、上記対象地点における標高値のメッシュ標高データ出典精度に起因する第1−1の誤差幅と、当該対象地点の位置精度に起因する第1−2の誤差幅とを考慮するため、より実際に即した第1の誤差幅を得ることができる。
【0014】
また、この発明の第5の局面は次のように規定される。即ち、
地図データ保存部から、標高値の適正誤差幅の特定対象となる道路リンク上の地点を抽出する対象地点抽出ステップと、
メッシュ標高データに基づいて、前記対象地点の標高値を演算する標高値演算ステップと、
前記対象地点の標高値について、前記標高値に関連する精度に基づき第1の誤差幅を算出する第1の誤差幅算出ステップと、
前記道路リンクに設定された勾配に関する道路属性情報と、該道路リンク上の他の地点の参照標高データとに基づいて、前記対象地点の第2の誤差幅を算出する第2の誤差幅算出ステップと、
前記第1の誤差幅と前記第2の誤差幅との重複部分を、前記対象地点の適正誤差幅と特定する適正誤差幅特定ステップと、
を備える、適正誤差幅特定方法。
このように規定される第5の局面の発明によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【0015】
この発明の第6の局面は次のように規定される。即ち、
第5の局面に規定の適正誤差幅特定方法において、前記対象地点における標高値の前記メッシュ標高データ出典精度に起因する第1−1の誤差幅を算出する第1−1の誤差幅算出ステップと、
前記対象地点の位置精度に起因する第1−2の誤差幅を算出する第1−2の誤差幅算出ステップと、を備え、
前記第1の誤差幅算出ステップは、前記第1−1の誤差幅と前記第1−2の誤差幅とを加算して前記第1の誤差幅を算出する。
このように規定される第6の局面の発明によれば、第2の局面と同等の効果を奏する。
【0016】
この発明の第7の局面は次のように規定される。即ち、
第5又は第6の局面に規定の適正誤差幅特定方法において、前記参照標高データは、前記第1の誤差幅算出ステップで算出された第1の誤差幅を含む。
このように規定される第7の局面の発明によれば、第3の局面と同等の効果を奏する。
【0017】
この発明の第8の局面は次のように規定される。即ち、
第7の局面に規定の適正誤差幅特定方法において、前記適正誤差幅特定ステップは、前記第1の誤差幅が小さい前記参照標高データを基準として順に、前記対象地点の適正誤差幅を特定する。
このように規定される第8の局面の発明によれば、第4の局面と同等の効果を奏する。
【0018】
更に、この発明の第9の局面は次のように規定される。即ち、
適正誤差幅を特定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
地図データ保存部から、標高値の適正誤差幅の特定対象となる道路リンク上の地点を抽出する対象地点抽出手段と、
メッシュ標高データに基づいて、前記対象地点の標高値を演算する標高値演算手段と、
前記対象地点の標高値について、前記標高値に関連する精度に基づき第1の誤差幅を算出する第1の誤差幅算出手段と、
前記道路リンクに設定された勾配に関する道路属性情報と、該道路リンク上の他の地点の参照標高データとに基づいて、前記対象地点の第2の誤差幅を算出する第2の誤差幅算出手段と、
前記第1の誤差幅と前記第2の誤差幅との重複部分を、前記対象地点の適正誤差幅と特定する適正誤差幅特定手段、
として機能させる、コンピュータプログラム。
このように規定される第9の局面の発明によれば、第1の局面と同等の効果を奏する。
【0019】
この発明の第10の局面は次のように規定される。即ち、
第9の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、更に、
前記対象地点における標高値の前記メッシュ標高データ出典精度に起因する第1−1の誤差幅を算出する第1−1の誤差幅算出手段と、
前記対象地点の位置精度に起因する第1−2の誤差幅を算出する第1−2の誤差幅算出手段、として機能させ、
前記第1の誤差幅算出手段は、前記第1−1の誤差幅と前記第1−2の誤差幅とを加算して前記第1の誤差幅を算出する。
このように規定される第10の局面の発明によれば、第2の局面と同等の効果を奏する。
【0020】
この発明の第11の局面は次のように規定される。即ち、
第9又は第10の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記参照標高データは、前記第1の誤差幅算出手段で算出された第1の誤差幅を含む。
このように規定される第11の局面の発明によれば、第3の局面と同等の効果を奏する。
【0021】
この発明の第12の局面は次のように規定される。即ち、
第11の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記適正誤差幅特定手段は、前記第1の誤差幅が小さい前記参照標高データを基準として順に、前記対象地点の適正誤差幅を特定する。
このように規定される第12の局面の発明によれば、第4の局面と同等の効果を奏する。
【0022】
第9〜第12のいずれかの局面に規定されるコンピュータプログラムを記録する記録媒体が第13の局面として規定される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態の適正誤差幅特定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の適正誤差幅特定装置において、(A)第1の誤差幅を示す模式図、(B)第2の誤差幅を示す模式図、(C)適正誤差幅を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態の適正誤差幅特定装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態の適正誤差幅特定装置を構成するコンピュータプログラムを示す。
【図5】本発明の適正誤差幅特定装置で特定された適正誤差幅を用いた近似標高値特定装置の構成を示すブロック図である。
【図6】近似標高値特定装置で近似標高値を特定する手順を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の実施の形態の適正誤差幅特定装置を説明する。
図1に、適正誤差幅特定装置1の概略構成を示す。適宜、図2に示す模式図を用いて、以下に説明する。
図1に示すように、この適正誤差幅特定装置1は、地図データ保存部3、メッシュ標高データ保存部4、道路勾配情報保存部5、対象地点抽出部6、第1保存部7、標高値演算部8、第2保存部9、第1の誤差幅算出部10、第3保存部11、第2の誤差幅算出部12、第4保存部13、適正誤差幅特定部14及び第5保存部15を備えている。
【0025】
地図データ保存部3には地図情報が保存される。地図情報にはリンクやノードなど地図情報を規定するための道路要素に関する情報と地図に描画される情報等が含まれ、地図の出典情報を含んで構成されている。
メッシュ標高データ保存部4にはメッシュ標高データが保存される。当該メッシュ標高データとして、例えば10mメッシュ標高データ等を格納することとでき、メッシュ標高データの出典情報と関連付けて構成されている。
【0026】
道路勾配情報保存部5には、道路勾配情報がリンクに関連付けて保存されている。当該道路勾配情報は、リンクに設定された勾配情報であり、例えば、道路構造令で規定される道路の最大縦断勾配が挙げられる。
対象地点抽出部6は、地図データ保存部3を参照し、標高値の適正誤差幅の特定対象となる道路リンク上の地点を対象地点(図2(A)に示す地点P)として抽出する。当該抽出の方法は、特に限定されないが、例えば、当該地図データから任意に選択された領域内に存在するリンク上の地点を自動的に抽出することとできる。また、別の方法として、オペレータの手動による対象地点の抽出を許容するよう設計されていても良い。抽出された当該対象地点は、第1保存部7に保存される。
【0027】
標高値演算部8は、メッシュ標高データ保存部4を参照して、対象地点抽出部6で抽出された対象地点の標高値(同、標高値Pz)を演算する。当該演算の方法としては、当該対象地点を取り囲む4つのメッシュ標高データに基づき線形補間の手法により定めることができる。演算された標高値は、当該対象地点の座標と関連付けて第2保存部9に保存される。
第1の誤差幅算出部10は、地図データ保存部3及びメッシュ標高データ保存部4を参照して、第2保存部9に保存された標高値に関連する第1の誤差幅(同、誤差幅A)を算出する。第1の誤差幅の算出方法としては、対象地点の標高値について当該標高値に関連する精度に基づく誤差幅を算出できれば、特に限定されない。また、第1の誤差幅算出部10は、第1−1の誤差幅算出部101、第1−2の誤差幅算出部102及び算出部103を備えることとできる。
【0028】
第1−1の誤差幅算出部101は、メッシュ標高データ保存部4を参照して、標高値演算部8が対象地点Pの標高値の演算に用いたメッシュ標高データの出典精度に基づく第1−1の誤差幅を算出する。例えば、当該第1−1の誤差幅は、対象地点Pの標高値Pzを中心に、メッシュ標高データの種別ごとに予め定められた誤差範囲(例えば、±15m)を設定することとできる。
第1−2の誤差幅算出部102は、地図データ保存部3を参照して、対象地点Pの位置特定に用いた地図データの出典精度(位置精度)に基づいて、水平位置の誤差範囲を求め、さらに、メッシュ標高データ保存部4を参照して、当該水平位置の誤差範囲内における標高値を算出して最小標高値及び最大標高値を求め、対象地点Pの標高値Pzを基準に、当該最小標高値〜最大標高値の範囲を第1−2の誤差幅(例えば、Pzを基準とする−5〜15m)とする。
算出部103は、上記第1−1の誤差幅(例えば、±15m)と第1−2の誤差幅(例えば、Pzを基準とする−5〜15m)とを加算して、対象地点Pの標高値Pzを中心に、第1の誤差幅(例えば、−20〜30m)を算出する。当該算出部103は、上述のように第1−1の誤差幅と第1−2の誤差幅を単に加算することとしても良いし、夫々の誤差幅に任意の係数を乗算した値を加算することとしても良い。算出された第1の誤差幅は、当該対象地点の座標と関連付けて第3保存部11に保存される。
【0029】
第2の誤差幅算出部12は、道路勾配情報保存部5を参照して、第2保存部9に保存された標高値に関連する第2の誤差幅(図2(B)に示す誤差幅B)を算出する。第2の誤差幅の算出方法としては、対象地点の標高値について、道路に設定された勾配に関する道路属性情報を反映した誤差幅を算出できれば、特に限定されない。例えば、図2(B)に示すように、対象地点Pと同一道路リンク上の地点Qを抽出し、該地点Qの参照標高データ(同、標高値Qz)と、該道路リンクに設定された勾配に関する道路属性情報(同、勾配d°)とに基づいて、道路の設計上許容される第2の誤差幅を算出することができる。ここで、参照標高データQzは、当該地点Qにおける標高値であっても良いし、地点Qの標高値に上記第1の誤差幅を含む標高データとしても良い。算出された第2の誤差幅は、当該対象地点の座標と関連付けて第4保存部13に保存される。
【0030】
適正誤差幅特定部14は、第3保存部11及び第4保存部13を参照して、上記対象地点の標高値における適正誤差幅を特定する。当該適正誤差幅の特定方法としては、特に限定されないが、例えば、第1の誤差幅Aと第2の誤差幅Bとの重複部分を適正誤差幅(図2(C)に示す誤差幅C)と特定することとできる。ここで、上記参照標高データが第1の誤差幅を含んでいる場合、適正誤差幅特定部14は、当該第1の誤差幅が最小の参照標高データを基準として順に、対象地点の適正誤差幅を特定することとできる。特定された適正誤差幅は、上記対象地点の座標と関連付けて第5保存部15に保存される。
この装置1では、第1の誤差幅算出部10と第2の誤差幅算出部12とを並列的に行ったが、当該第1の誤差幅算出部10と第2の誤差幅算出部12とを直列的に行うこととしても良い。
【0031】
図3を用いて、図1に示す適正誤差幅特定装置1の動作を説明する。
まず、ステップ1では、地図データ保存部3を参照し、適正誤差幅の特定対象となる対象地点Pを抽出し、保存する。
ステップ3では、メッシュ標高データ保存部4を参照し、ステップ1で抽出された対象地点Pの標高値を演算し、保存する。
ステップ5では、メッシュ標高データ保存部4を参照し、ステップ3で対象地点の標高値を演算するに際して用いたメッシュ標高データの種別に関連付けられた誤差範囲(例えば、±15m)を第1−1の誤差幅として算出する。
【0032】
ステップ7では、地図データ保存部3を参照し、ステップ1で対象地点Pの位置を特定するに際して用いた地図データの種別に関連付けられた水平位置の誤差範囲を求める。
ステップ9では、メッシュ標高データ保存部4を参照し、ステップ7で求められた対象地点Pに関する水平位置の誤差範囲内における標高値を算出して最小標高値及び最大標高値を求め、Pzを基準とする最小標高値〜最大標高値の範囲を第1−2の誤差幅(例えば、Pzを基準とする−5〜15m)とする。
ステップ11では、ステップ5で算出された第1−1の誤差幅とステップ9で算出された第1−2の誤差幅とを加算して、第1の誤差幅A(例えば、−20〜30m)を算出し、保存する。
【0033】
ステップ13では、上記対象地点Pと同一道路リンク上に位置する地点Qを指定する。
ステップ15では、メッシュ標高データ保存部4を参照し、ステップ13で指定された地点Qの標高値(参照標高データ)を算出する。
ステップ17では、道路勾配情報保存部5に保存された勾配情報とステップ15で算出された地点Qの参照標高データとに基づいて、対象地点Pにおける第2の誤差幅Bを算出し、保存する。
ステップ19では、ステップ11で算出された第1の誤差幅Aとステップ17で算出された第2の誤差幅Bとを比較して、その重複部分を対象地点Pにおける適正誤差幅Cと特定し、保存する。
【0034】
図4は適正誤差幅特定装置1のハード構成を示すブロック図である。
この装置1のハード構成は、一般的なコンピュータシステムと同様に中央制御装置221に対してシステムバス222を介して各種の要素が結合されたものである。
中央制御装置221は汎用的なCPU、メモリ制御装置、バス制御装置、割り込み制御装置更にはDMA(直接メモリアクセス)装置を含み、システムバス222もデータライン、アドレスライン、制御ラインを含む。システムバス222にはRAM(ランダムアクセスメモリ)223、不揮発メモリ(ROM224,CMOS−RAM225等)からなるメモリ回路が接続されている。RAM223に格納されるデータは中央制御装置221や他のハードウエア要素によって読み取られたり、書き換えられたりする。不揮発メモリのデータは読み取り専用であり、装置をオフとしたときにもそこのデータは喪失されない。このハードウエアを制御するシステムプログラムはハードディスク装置227に保存されており、また、RAM223に保存されており、ディスクドライブ制御装置226を介して適宜中央制御装置221に読みこまれて使用される。このハードディスク装置227には、汎用的な構成のコンピュータシステムを適正誤差幅特定装置1として動作させるためのコンピュータプログラムを保存する領域が確保される。
このハードディスク装置227の所定の領域が、適正誤差幅特定部14の特定結果を保存する保存部用に割り付けられる。
ハードディスク装置227の他の領域が地図データ保存部3、メッシュ標高データ保存部4及び道路勾配情報保存部5用に割り付けられる。
【0035】
システムバス222には、フレキシブルディスク232に対してデータの読み込み及び書き込みを行うフレキシブルドライブ制御装置231、コンパクトディスク234に対してそれからデータの読み取りを行うCD/DVD制御装置233が接続されている。この例ではプリンタインターフェース237にプリンタ238を接続させている。
システムバス222にはキーボード・マウス制御装置241が接続され、キーボード242及びマウス243からのデータ入力を可能としている。モニタ245がモニタ制御装置244を介してシステムバス222に接続されている。モニタ245にはCRTタイプ、液晶タイプ、プラズマディスプレイタイプなどを利用することができる。
各種の要素(モデムなど)の増設を可能とするため空きのスロット251が準備されている。
【0036】
このコンピュータシステムからなる適正誤差幅特定装置1を稼動させるために必要なプログラム(OSプログラム、アプリケーションプログラム(本発明のものも含む))は、各種の記録媒体を介してシステムの中にインストールされる。例えば非書き込み記録媒体(CD−ROM、ROMカード等)、書き込み可能記録媒体(FD、DVD等)、更にはネットワークNを利用して通信媒体の形式でインストールすることも可能である。勿論、不揮発メモリ224、225やハードディスク装置227に予めこれらのプログラムを書きこんでおくこともできる。
【0037】
上記適正誤差幅特定装置1で特定された適正誤差幅は、対象地点における近似標高値の特定にそのまま利用することができる。
図5は、この発明の実施例の近似標高値特定装置41のブロック図である。当該近似標高値特定装置41は、上記適正誤差幅特定装置1で特定された適正誤差幅を利用して、対象地点における近似標高値を特定する。適宜、図6に示す模式図を用いて、以下に説明する。
【0038】
すなわち、この近似標高値特定装置41は、制御部410、メモリ部411、入力部412、出力部413、インターフェース部414、適正誤差幅保存部415、地図データ保存部416、メッシュ標高データ保存部417、対象リンク選択部418、3Dリンク形成部419、基準線形成部420、第1の折れ点予定座標決定部421、第1の近似折れ線特定部422、第2の折れ点予定座標決定部423、第2の近似折れ線特定部424、近似標高値特定部425及び近似標高保存部426を備える。
制御部410はCPU、バッファメモリその他の装置を備えたコンピュータ装置であり、近似標高値特定装置41を構成する他の要素を制御する。
メモリ部411にはコンピュータプログラムが保存され、このコンピュータプログラムはコンピュータ装置である制御部410に読み込まれて、これを機能させる。このコンピュータプログラムはDVD等の汎用的な媒体へ保存できる。
【0039】
入力部412は対象リンク等を選択するために用いられる。入力部412としてディスプレイの表示内容と協働するタッチパネル式の入力装置を用いることができる。
出力部413はディスプレイを含み、入力画面や、地図データ保存部416に保存された地図データ、3Dリンク形成部418で形成される3Dリンク等、その他の情報を表示する。この出力部413は音声案内装置を含むこともできる。
インターフェース部414は近似標高値特定装置41を無線ネットワーク等へ連結させる。
【0040】
適正誤差幅保存部415は、適正誤差幅特定装置1で特定された標高値(z)の適正誤差幅(i=k〜n)が対象地点(x,y,z)と関連付けて保存されている。
地図データ保存部416には地図情報が保存される。地図情報にはリンクやノードなど地図情報を規定するための道路要素に関する情報と地図に描画される情報等が含まれる。
メッシュ標高データ保存部417にはメッシュ標高データが保存される。当該メッシュ標高データとして、例えば10mメッシュ標高データ等を格納することとできる。
【0041】
対象リンク選択部418は、地図データ保存部416を参照し、近似標高値の特定対象となるリンクを対象リンクとして選択する。当該選択の方法は、特に限定されないが、例えば、当該地図データから任意に抽出された領域内に存在するリンクを自動的に選択することとできる。また別の方法として、オペレータの手動によるリンク選択を許容するよう設計されていても良い。選択される対象リンクの数は、1に限られず、隣接する2以上のリンクを選択することとできる。選択された当該対象リンクは、対象リンク保存部(図示せず)に保存される。
3Dリンク形成部419は、メッシュ標高データ保存部417を参照して、上記対象リンク上の各点座標の標高値を演算し、三次元のリンク(図6(A)に示すリンクL、以下3Dリンクともいう)を形成する。
【0042】
基準線形成部420は、上記3Dリンクの始点(同、M(x,y,z))及び終点(同、N(x,y,z))に基づき、当該始点と終点とを結ぶ基準線(同、I)を形成する。
第1の折れ点予定座標決定部421は、上記基準線から最も離れて位置する3Dリンク上の点(同、O)における第1の折れ点予定座標(xi1,yi1)を決定する。
第1の近似折れ線特定部422は、第1の折れ点予定座標決定部421及び適正誤差幅保存部415を参照して、3DリンクLと、始点M(x,y,z)、終点N(x,y,z)及び第1の折れ点予定座標(xi1,yi1)において誤差幅が考慮された第1の折れ点予定点(xi1,yi1,zi1=k〜n)を含む第1の折れ線とを比較して、3DリンクLに最も近い第1の折れ線を第1の近似折れ線(図6(B)に示すJ)と特定する。すなわち、3Dリンク上各点(x,y,z)と、当該3Dリンク上各点に対応する第1の近似折れ線J上の点(x,y,zj1)との垂直方向の距離の差の2乗和が最小になるように第1の近似折れ線Jを特定する。
【0043】
第2の折れ点予定座標決定部423は、上記第1の近似折れ線Jから最も離れて位置する3Dリンク上の点(同、O)における第2の折れ点予定座標(xi2,yi2)を決定する。
第2の近似折れ線特定部424は、第2の折れ点予定座標決定部422及び適正誤差幅保存部415を参照して、3DリンクLと、始点M(x,y,z)、終点N(x,y,z)、上記第1の折れ点予定点(xi1,yi1,zi1=k〜n)及び第2の折れ点予定座標(xi2,yi2)において誤差幅が考慮された第2の折れ点予定点(xi2,yi2,zi2=k〜n)を含む第2の折れ線とを比較して、3DリンクLに最も近い第2の折れ線を第2の近似折れ線(図6(C)に示すJ)と特定する。すなわち、3Dリンク上各点(x,y,z)と、当該3Dリンク上各点に対応する第2の近似折れ線J上の点(x,y,zj2)との垂直方向の距離の差の2乗和が最小になるように第2の近似折れ線Jを特定する。上記近似折れ線上の全ての点における標高値が、対応する3Dリンク上の点における標高値(z)の適正誤差幅(i=k〜n)内に収まるよう、第mの折れ点予定座標の決定、第mの近似折れ線の特定を繰り返す。
【0044】
近似標高値特定部425は、第1〜mの折れ点予定座標(xi1〜m,yi1〜m)に対応する第mの近似折れ線J上の点O1〜m’の標高値を夫々第1〜mの近似標高値(z1m〜zmm)と特定する。特定された近似標高値は、各点の座標と関連付けて近似標高値保存部426に保存される。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、これらのうち、2つ以上の実施の形態を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらのうち、1つの実施の形態を部分的に実施しても構わない。さらには、これらのうち、2つ以上の実施の形態を部分的に組み合わせて実施しても構わない。
【0046】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 適正誤差幅特定装置
3 地図データ保存部
4 メッシュ標高データ保存部
5 道路勾配情報保存部
6 対象地点抽出部
8 標高値演算部
10 第1の誤差幅算出部
12 第2の誤差幅算出部
14 適正誤差幅特定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図データ保存部から、標高値の適正誤差幅の特定対象となる道路リンク上の地点を抽出する対象地点抽出部と、
メッシュ標高データに基づいて、前記対象地点の標高値を演算する標高値演算部と、
前記対象地点の標高値について、前記標高値に関連する精度に基づき第1の誤差幅を算出する第1の誤差幅算出部と、
前記道路リンクに設定された勾配に関する道路属性情報と、該道路リンク上の他の地点の参照標高データとに基づいて、前記対象地点の第2の誤差幅を算出する第2の誤差幅算出部と、
前記第1の誤差幅と前記第2の誤差幅との重複部分を、前記対象地点の適正誤差幅と特定する適正誤差幅特定部と、
を備える、適正誤差幅特定装置。
【請求項2】
前記対象地点における標高値の前記メッシュ標高データ出典精度に起因する第1−1の誤差幅を算出する第1−1の誤差幅算出部と、
前記対象地点の位置精度に起因する第1−2の誤差幅を算出する第1−2の誤差幅算出部と、を備え、
前記第1の誤差幅算出部は、前記第1−1の誤差幅と前記第1−2の誤差幅とを加算して前記第1の誤差幅を算出する、
請求項1に記載の適正誤差幅特定装置。
【請求項3】
前記参照標高データは、前記第1の誤差幅算出部で算出された第1の誤差幅を含む、請求項1又は2に記載の適正誤差幅特定装置。
【請求項4】
前記適正誤差幅特定部は、前記第1の誤差幅が小さい前記参照標高データを基準として順に、前記対象地点の適正誤差幅を特定する、請求項3に記載の適正誤差幅特定装置。
【請求項5】
地図データ保存部から、標高値の適正誤差幅の特定対象となる道路リンク上の地点を抽出する対象地点抽出ステップと、
メッシュ標高データに基づいて、前記対象地点の標高値を演算する標高値演算ステップと、
前記対象地点の標高値について、前記標高値に関連する精度に基づき第1の誤差幅を算出する第1の誤差幅算出ステップと、
前記道路リンクに設定された勾配に関する道路属性情報と、該道路リンク上の他の地点の参照標高データとに基づいて、前記対象地点の第2の誤差幅を算出する第2の誤差幅算出ステップと、
前記第1の誤差幅と前記第2の誤差幅との重複部分を、前記対象地点の適正誤差幅と特定する適正誤差幅特定ステップと、
を備える、適正誤差幅特定方法。
【請求項6】
前記対象地点における標高値の前記メッシュ標高データ出典精度に起因する第1−1の誤差幅を算出する第1−1の誤差幅算出ステップと、
前記対象地点の位置精度に起因する第1−2の誤差幅を算出する第1−2の誤差幅算出ステップと、を備え、
前記第1の誤差幅算出ステップは、前記第1−1の誤差幅と前記第1−2の誤差幅とを加算して前記第1の誤差幅を算出する、
請求項5に記載の適正誤差幅特定方法。
【請求項7】
前記参照標高データは、前記第1の誤差幅算出ステップで算出された第1の誤差幅を含む、請求項5又は6に記載の適正誤差幅特定方法。
【請求項8】
前記適正誤差幅特定ステップは、前記第1の誤差幅が小さい前記参照標高データを基準として順に、前記対象地点の適正誤差幅を特定する、請求項7に記載の適正誤差幅特定方法。
【請求項9】
適正誤差幅を特定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
地図データ保存部から、標高値の適正誤差幅の特定対象となる道路リンク上の地点を抽出する対象地点抽出手段と、
メッシュ標高データに基づいて、前記対象地点の標高値を演算する標高値演算手段と、
前記対象地点の標高値について、前記標高値に関連する精度に基づき第1の誤差幅を算出する第1の誤差幅算出手段と、
前記道路リンクに設定された勾配に関する道路属性情報と、該道路リンク上の他の地点の参照標高データとに基づいて、前記対象地点の第2の誤差幅を算出する第2の誤差幅算出手段と、
前記第1の誤差幅と前記第2の誤差幅との重複部分を、前記対象地点の適正誤差幅と特定する適正誤差幅特定手段、
として機能させる、コンピュータプログラム。
【請求項10】
前記コンピュータを、更に、
前記対象地点における標高値の前記メッシュ標高データ出典精度に起因する第1−1の誤差幅を算出する第1−1の誤差幅算出手段と、
前記対象地点の位置精度に起因する第1−2の誤差幅を算出する第1−2の誤差幅算出手段、として機能させ、
前記第1の誤差幅算出手段は、前記第1−1の誤差幅と前記第1−2の誤差幅とを加算して前記第1の誤差幅を算出する、
請求項9に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記参照標高データは、前記第1の誤差幅算出手段で算出された第1の誤差幅を含む、請求項9又は10に記載のコンピュータプログラム。
【請求項12】
前記適正誤差幅特定手段は、前記第1の誤差幅が小さい前記参照標高データを基準として順に、前記対象地点の適正誤差幅を特定する、請求項11に記載のコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれかに記載のコンピュータプログラムを記録する記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−33153(P2013−33153A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169441(P2011−169441)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(501271479)株式会社トヨタマップマスター (56)
【Fターム(参考)】