説明

模型ボート

【課題】水草等を原因とする不具合の発生を抑制できると共に、推進装置の小型化と構造の簡略化が可能な模型ボートを提案する。
【解決手段】羽根車28,28が取り付けられたモータ24,24の回動軸25,25が鉛直下方に向けて配された推進駆動装置23,23と、前記回動軸25,25の直下に吸入口29,29が開口形成された羽根車28,28を内装する推進力発生室21,21と、該推進力発生室21,21から船尾の噴出口32,32に至る流通路31,31とを具備するパドル式推進装置20,20を複数備え、該パドル式推進装置20,20が、中心線の左右両側に且つ左右対称となるように配設された模型ボート1であるから、羽根車28,28の回転により生ずる遠心力によって、吸入口29,29から吸入した水を流通路31,31を介して噴出口32,32から噴出して推進力を発生させ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動により水上航行可能な模型ボートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
模型ボートとしては、レジャー等で使用される遠隔操作可能なラジコン式のものがよく知られている。このような模型ボートに用いられる推進装置には、モータ式のものやエンジン式のものがあり、モータ式のものは、小型軽量化し易くかつメンテナンスも容易であることから、コスト面で有利となっている。
【0003】
上記の模型ボートに配設されるモータ式の推進装置としては、例えば特許文献1のように、モータで回転駆動させるプロペラを船尾に設け、該プロペラの直ぐ後に舵を設けて、プロペラの駆動により推進力を発生し、舵を傾動させることにより旋回させるようにしたものが提案されている。
【0004】
また、モータ式の推進装置には、ジェット噴射手段(例えば特許文献2)を適用したものもある。このジェット噴射手段としては、船体の下部に設けられて後方に連通する水通路に、該水通路の孔心に沿ってモータの回動軸を配して、該回動軸にインペラが取り付けられて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−99178号公報
【特許文献2】特開2002−362488号公報(第1の実施の形態、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記の特許文献1の従来構成では、プロペラが船外に露出していることから、水面に浮いているゴミや水草等がプロペラや舵に絡まり易く、該プロペラに絡まることにより推進力の低下や移動不能等の不具合が生じてしまうこともあり得る。例えば、海や湖で使用している場合に岸から離れた水上で動かなくなってしまうと、その回収が難しくなるという問題を生ずる。特に、模型ボートの場合には、人が乗るボートに比して動力が弱いことから、水草等が絡み付くことによる前記不具合の発生が懸念される。
【0007】
また、上記の特許文献2によるジェット噴射手段による推進装置では、水通路の途中にインペラが配設され、該インペラの前方にモータが配設されてなり、インペラの回転によって前方から吸入した水を後方へ噴出させるものである。そのため、インペラの前方から水を供給できるように水通路を形成することを要し、該水通路がインペラの前側にある程度の長さを有して、該インペラに至るまでの水の流れができるだけ滑らな流れとなるようにしている。これに伴って、モータの回動軸も長尺化することから、該回動軸の偏心を抑制するための構成も必要となる。このようなことから、ジェット噴射手段の推進装置は、その構造を簡略化することに限界があり、これに応じたメンテナンス作業も必要となる。さらに、この推進装置の小型化にも限界があり、船底もある程度の深さを必要とするなど、比較的小型の模型ボートには適用し難い。さらには、水通路内に露出するモータの回動軸について、耐水性を考慮した構成が必要となるため、コスト抑制にも限界がある。
【0008】
本発明は、水草等を原因とする航行中の不具合の発生を抑制できると共に、推進装置の小型化と構造の簡略化が可能な模型ボートを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、鉛直方向に沿って下方へ突出するように回動軸が配されたモータと、該回転軸の下端部に取り付けられて船底近傍に配置された羽根車とを具備する推進駆動装置と、前記羽根車が内装され、且つモータの回動軸の直下に該羽根車に比して小径の吸入口が開口形成された円筒状の推進力発生室と、該推進力発生室と船尾に開口する噴出口とを連通する流通路とを備えたパドル式推進装置が、前後方向に沿った中心線の左右両側に、該中心線に対して左右対称となるように複数配設されたものであることを特徴とする模型ボートである。
【0010】
ここで、パドル式推進装置によれば、推進駆動装置の羽根車を回転させることにより生ずる遠心力によって、推進力発生装置内で羽根車の中心寄り領域が外周側領域に比して低圧力となることから、羽根車直下の吸入口から水を吸入できる。そして、前記遠心力によって推進力発生室の内周面に沿って水流を発生し、この水流が流通路を介して噴出口から後方へ噴出する。これにより、本発明の模型ボートの推進力を発生させている。そして、パドル式推進装置を、当該模型ボートの左右両側に且つ左右対称となるように配設していることから、左右のパドル式推進装置のモータを夫々駆動制御することにより直進および旋回できる。
【0011】
かかる構成は、羽根車の回転で発生した遠心力により、吸入口から吸入した水を羽根車の内側から外側へ向かう方向への水流に変換して推進力とするようにしたものであるから、上述した従来のジェット噴射手段を備えた構成に比して、モータの回動軸を短くでき、推進駆動装置の構造が簡略化される。これにより、推進駆動装置を小型化することができる。さらに、水を吸入する吸入口を羽根車の直下に設ければ良いことから、パドル式推進装置も簡略化されるため、前記した推進駆動装置の小型化を含めて、総じてパドル式推進装置の小型化が可能となる。このようにパドル式推進装置および推進駆動装置が簡略化されることによって、製造コストを低減できると共に、メンテナンス作業も簡略化でき、その作業性も向上できる。また、パドル式推進装置は、モータの回動軸が吸入口から噴出口まで流れる水に浸かり難い構造であることから、該回動軸の耐水性についても軽減可能であると共に、水による回動軸への影響も小さい。
【0012】
また、羽根車が船外に露出していないことから、該羽根車や回動軸に水草等が絡まり難く、絡まることによって生ずる不具合の発生を可及的に抑制できる。
【0013】
尚、本発明の模型ボートとしては、モータに電力を供給する電力源を備えた構成が好適に用いられる。この電力源としては、各パドル式推進装置毎にそれぞれ設けても良いし、所定数のパドル式推進装置で共通の一個を使用するように設けても良い。
【0014】
上述した本発明の模型ボートにあって、左右対称に配設されたパドル式推進装置は、推進力発生室と流通路と噴出口とが、モータの回動軸に直交する方向で連続的に形成されたものである構成が提案される。
【0015】
かかる構成にあっては、羽根車の回転によってモータの回動軸に直交する方向に遠心力が発生することから、該遠心力によって生じた水流を、同じ方向で連続する推進力発生室から噴出口まで比較的滑らかに移動させ得る。これにより、羽根車の回転によって発生した推進力を噴出口まで効率的に伝えることができる。また、推進力発生室から噴出口まで回動軸に直交する方向で連続することにより、ボートの深さ方向に沿った装置高さを可及的に抑制できるから、船底を比較的浅くした構造とすることができる。この構造によれば、水深の比較的浅い場所や水草等が多い場所などでも高い航行性を発揮できる。
【0016】
上述した本発明の模型ボートにあって、左右対称に配設されたパドル式推進装置は、流通路が、円筒状の推進力発生室の外側接線方向に沿って且つ船尾に向かってボート内側へ傾斜するように形成されたものである構成が提案される。
【0017】
かかる構成にあっては、推進力発生室内で羽根車の回転によって発生した遠心力による水流を、外側接線方向に沿って形成した流通路へ一層円滑に流出させることができる。これにより、推進力発生室で発生した推進力を噴出口まで一層効率的に伝えることができる。
【0018】
上述した本発明の模型ボートにあって、船底が平底形状であり、パドル式推進装置の推進力発生室および流通路を覆うようにして、船底に突成された前後方向の膨出底部が、前後方向に沿った中心線の左右両側に且つ左右対称となるように複数設けられたものである構成が提案される。
【0019】
かかる構成にあっては、船底が比較的浅くなるため、水深の浅い場所や水草等が多い場所などでも安定して航行することができる。また、左右両側に設けられた前後方向の膨出底部によって、船底下の水の流れを前後方向へ向け易いことから、船底が浅い構造であっても安定した航行性能を発揮でき得る。尚、平板状の船底による比較的浅い構造は、上述した本発明によるパドル式推進装置および推進駆動装置の簡略化と小型化によって達成され得るものである。
【0020】
上述した本発明の模型ボートにあって、遠隔操作される遠隔操作機から無線送信されたコマンド信号を受信する受信器と、該受信器により受信したコマンド信号に従って、左右のパドル式推進装置の推進駆動装置を夫々駆動制御することにより推進制御と操舵制御とを行う駆動制御手段とを備え、遠隔操作機により遠隔操作されるラジコン式のものである構成が提案される。
【0021】
上述したように、本発明の模型ボートは、水草等が絡まることによる不具合の発生を抑制でき、また、構造を簡略化できることにより保管やメンテナンス等の取扱性に優れることから、ラジコン式のものに好適である。特に、構造の簡略化による小型軽量化が可能であることから、比較的容易に使用したり保管したりできるため、一般的なレジャー品として受入れられ易いという利点も有する。
【0022】
尚、ラジコン式の本発明にかかる模型ボートは、魚群探知機と、該魚群探知機により探知したデータを無線により送信する送信器とを備え、送信されたデータを遠隔操作機で受信することによって、遠隔操作可能な魚群探知機として適用することもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の模型ボートは、上述したように、推進駆動装置の羽根車の回転により推進力発生室内で生ずる遠心力によって、吸入口から吸入した水を流通路を介して噴出口から噴出して推進力を発生させるようにしたものであるから、推進駆動装置およびパドル式推進装置の構造を簡略化でき、これに伴って小型化することができる。これにより、製造コストを低減できると共に、メンテナンス作業の簡略化とその作業性の向上とができる。また、羽根車やモータの回動軸に水草等が絡まり難いことから、絡まることによって生ずる不具合の発生を可及的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施例の模型ボート1と遠隔操作機51とを示す斜視図である。
【図2】模型ボート1の(A)平面図と、(B)底面図である。
【図3】模型ボート1の(A)側面図と、(B)後面図である。
【図4】模型ボート1の、図3(B)のP−P縦断面図である。
【図5】模型ボート1の分解斜視図である。
【図6】模型ボート1の、羽根車28,28とパドルカバー45とを分解した状態を表す斜視図である。
【図7】模型ボート1と遠隔操作機51との制御回路を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明にかかる実施形態を添付図面に従って説明する。
本実施例の模型ボート1は、図1のように、ラジコン式のものであり、遠隔操作機51から無線送信されたコマンド信号に従って推進制御と操舵制御されるものである。
【0026】
模型ボート1は、箱状の船体2と、該船体2を上方から覆う蓋状のデッキ3とを備えている(図5参照)。ここで、船体2の船底11とデッキ3の上面部4とは平板状に形成されており、模型ボート1が全体的に扁平な形状となっている。
【0027】
船体2の船底11の後部には、図1〜3のように、二つの膨出底部12,12が前後方向に沿った(ボート幅方向の)中心線Lの左右両側に且つ左右対称となるように形成されている。膨出底部12は、その前部が前方へ向かって徐々に幅狭くなり且つ後部が後方へ向かって徐々に幅狭くなる前後方向の略草履形状により、船底11から下方へ突出して形成されている。また、船底11は、左右の膨出底部12,12によってその間の部位が中心線Lに沿った前後方向の凹形状を成していることから、航行中における船底11下での水の流れを前後方向に滑らかに生じさせ得る。これによって、航行安定性を高めることができる。
【0028】
ここで、膨出底部12,12は、図5,6のように、後部に取り付けられたパドルカバー14に形成されている。このパドルカバー14は、平板状の主板部15に、該主板部15から突出するように前記の膨出底部12,12が形成されてなる。一方、船体2には、船底11の後部領域に、前部領域に比して平面状に凹む凹域部16が形成されており、この凹域部16に前記パドルカバー14の主板部15が収容されて、該パドルカバー14が装着される。これにより、膨出底部12,12を除く領域が略整一な平面状となる船底11が構成される。前記の凹域部16には、円周上の一部分が開放された円弧状壁部17,17と、各円弧状壁部17,17と連成されて船尾に向かって伸びる内外一対の直状双壁部18,18とが突成されている。この一対の直状双壁部18は、円弧状壁部17の外側部位でその接線方向に沿って連成され且つ該接線方向と平行に円弧状壁部17の内側部位で連成され、さらに、船尾に向かって中心線L側へ傾斜するように形成されている。このような凹域部16にパドルカバー14が装着されることにより、円弧状壁部17と直状双壁部18とを膨出底部12,12が下方から覆う。また、凹域部16には、各円弧状壁部17,17の中心に、該凹域部16を上下方向に貫通する貫通孔(図示せず)が夫々形成されている。
【0029】
上記の膨出底部12が円弧状壁部17と直状双壁部18とを下方から覆うことにより、円筒状の推進力発生室21と流通路31とが形成される(図4参照)。そして、膨出底部12の最後端と直状双壁部18の最後端とが後方開口していることから、船尾に開口する噴出口32が形成される。ここで、流通路31は、推進力発生室21の外側接線方向に沿って形成されており、該推進力発生室21と前記噴出口32とを連通して、船尾に向かって中心線L側(ボート内側)へ傾斜する略直線状に形成されている。この流通路31は断面長方形状で形成され、同様に噴出口32も長方形状で開口形成されている。さらに、推進力発生室21は、その高さ寸法が流通路31の高さ寸法とほぼ同じとなるように形成されている。こうして、推進力発生室21と流通路31と噴出口32とが、鉛直方向と略直交する方向で連続的に形成されている。
【0030】
模型ボート1を構成する船体2とデッキ3とにより画成される内部には、上記した左右の推進力発生室21,21の上方に、モータ24,24が並設されている。各モータ24,24は、夫々の回動軸25,25が鉛直方向に沿って下方へ突出するように配設され、各回動軸25,25が上記凹域部16の貫通孔を夫々貫通して推進力発生室21,21内に突出している。これにより、モータ24の回動軸25が、円筒状の推進力発生室21,21の仮想中心線に沿って配置されている。また、推進力発生室21,21内に突出したモータ24,24の回動軸25,25の下端部に、羽根車28,28が夫々に取り付けられている。そして、推進力発生室21,21内で羽根車28,28が周方向に回転可能となっている(図4参照)。この羽根車28は、回動軸25に取り付けられた中心部から放射状に四枚の羽根が一体的に設けられており、羽根が同じ向きに湾曲するように形成されている。ここで、左右のモータ24,24に取り付けられた羽根車28,28は、互いに羽根の湾曲方向が逆向きであり、左右対称となっている。また、羽根車28は、その外径寸法が円筒状の推進力発生室21の内径寸法に比して僅かに小さくなるように設定されている。
【0031】
また、左右の膨出底部12,12には、それぞれ、上記モータ24,24の回動軸25,25の下方に、吸入口29,29が開口形成されている。この吸入口29,29は、羽根車28の回転中心と同心状の円形を成し、該羽根車28の外径寸法に比して小さい口径寸法となっている。具体的には、吸入口29の口径寸法を、羽根車28の外径寸法の半分以下に設定している。
【0032】
また、上記のデッキ3には、複数の電池(図示せず)を着脱可能なバッテリホルダ35が配設されており、バッテリホルダ35内の電池を覆うカバー36も着脱可能に設けられている。このバッテリホルダ35と左右のモータ24,24とは、手動スイッチ37および駆動制御装置41とを介して接続されている。すなわち、電池による電力がバッテリホルダ35から、手動スイッチ37と駆動制御装置41とを介して左右のモータ24,24に供給される。尚、手動スイッチ37は、操縦者によりON/OFF操作できるものであり、ON操作した状態でモータ24,24へ電力供給可能とし、OFF操作した状態でモータ24,24への電力供給を完全に停止する。
【0033】
上記したモータ24と羽根車28とによって本発明の推進駆動装置23,23が構成されており、バッテリホルダ35にセットされた複数の電池によって、電力源が構成されている。そして、推進駆動装置23、推進力発生室21、流通路31、および前記電力源によって、本発明にかかるパドル式推進装置20が構成されている。本実施例では、二つのパドル式推進装置20,20が、中心線Lの左右両側に且つ左右対称となるように夫々配設されている。尚、本実施例では、二つ(全て)のパドル式推進装置20,20で共通する一の電力源を使用するようにした構成としている。
【0034】
次に、左右のモータ24,24を駆動して模型ボート1を推進および旋回する作動態様について説明する。
モータ24を駆動することにより推進力発生室21内で羽根車28が回転すると、該回転によって羽根車28の内側から外側へ向かって遠心力が発生する。これにより、推進力発生室21内で羽根車28の内側領域の圧力が低減し、これに伴って吸入口29から外部の水が推進力発生室21内へ吸入される。このように吸入された水が羽根車28の遠心力と回転方向に押し出す力とによって推進力発生室21内周面に沿った周方向の水流を生じ、この水流が流通路31を介して噴出口32から外部へ噴出される。これによって、模型ボート1を前方へ進ませる推進力を発生させている。
【0035】
ここで、左右のモータ24,24を同じ回転数で逆方向に回転することにより、左右のパドル式推進装置20,20によって同じ推進力を発生し、模型ボート1が直進する。また、左右のモータ24,24を異なる回転数で回転することにより、左右のパドル式推進装置20,20によって発生する推進力を変えて旋回する。具体的には、右のモータ24の回転数を左に比して高くすると、右のパドル式推進装置20の推進力が大きくなって左旋回し、左のモータ24の回転数を高くすると、左のパドル式推進装置20の推進力が大きくなって右旋回する。
【0036】
一方、本実施例の模型ボート1は、上述したようにラジコン式のものであることから、図7のように、遠隔操作機51から無線送信されたコマンド信号を受信する受信器42と、該受信器42から前記コマンド信号を入力する駆動制御装置41とを備えている。駆動制御装置41は、入力したコマンド信号に従って、上記したモータ24,24を駆動制御する。
【0037】
この駆動制御装置41は、図示しない制御回路と、該制御回路により制御される図示しない調整装置とを備えている。ここで、調整装置は、電池をセットしたバッテリホルダ35から左右のモータ24,24へ供給する電力量を調整するものである。すなわち、駆動制御装置41は、受信器42からコマンド信号を入力すると、制御回路により該コマンド信号に従って調整装置を制御して、モータ24,24へ供給する電力量を調整することによって左右のパドル式推進装置20,20(推進駆動装置23,23)を駆動制御している。
【0038】
駆動制御装置41による駆動制御としては、例えば、入力したコマンド信号が直進を指示するものであると、左右のモータ24,24に同じ電力量を供給するように制御する。これにより、左右のパドル式推進装置20,20が同じ推進力を発生し、模型ボート1が直線する。また、コマンド信号が右旋回を指示するものであると、左のモータ24に供給する電力量を右のモータ24への供給量に比して多くするように制御し、これにより模型ボート1が右旋回する。また、コマンド信号が左旋回を指示するものであると、右のモータ24に供給する電力量を左のモータ24への供給量に比して多くするように制御し、これにより模型ボート1が左旋回する。このように左右のモータ24,24への電力供給量を調整制御することにより、模型ボート1の推進制御と操舵制御とを行う。尚、本実施例にあっては、駆動制御装置41により、本発明にかかる駆動制御手段が構成されている。
【0039】
このような模型ボート1を遠隔操作する遠隔操作機51としては、横長形状の操作ボタン52を備え(図1参照)、操作ボタン52の操作に従って、模型ボート1を直進、右旋回、左旋回させるためのコマンド信号を送信するものである。そして、遠隔操作機51は、前記操作ボタン52の操作によってコマンド信号を発生するための操作信号制御装置55と、該コマンド信号を送信する送信器56とを備えている。ここで、操作ボタン52は、その中央部分52bが押圧操作された場合に、操作信号制御装置55により直進のコマンド信号を発生し、当該コマンド信号を送信器56から送信する。また、操作ボタン52の右側部分52aが押圧操作された場合には、右旋回のコマンド信号を発生して送信し、操作ボタン52の左側部分52cが押圧操作された場合には、左旋回のコマンド信号を発生して送信する。このように操作ボタン52の操作によってコマンド信号を送信する構成には、従来から用いられている構成を適用できるため、その詳細については省略する。
【0040】
この遠隔操作機51には、所定のバッテリ(電池)を着脱可能な電源装置(図示せず)が配設されている。この電源装置が上記した操作信号制御装置55や後述する画像表示器60等の各機器に電源ボタン54を介して接続されており、各機器に電力供給する。そして、電源ボタン54のON/OFF操作により、電力供給する状態と電力供給しない状態とに変換する。
【0041】
本実施例の模型ボート1は、魚群探知機として使用されるものとしている。すなわち、模型ボート1が、超音波を発生し且つその反響波を受信する超音波送受信器45と、該反響波の情報を無線により送信する送信器46とを備える。さらに、遠隔操作機51が、前記反響波の情報を受信する受信器58と、受信した反響波情報を処理する情報処理装置59と、該反響波情報を表示する画像表示器60とを備える。これにより、模型ボート1を遠隔操作することにより探知した反響波情報を、遠隔操作機51の画像表示器60で表示できる。本実施例の構成によれば、魚群を探知したポイントを正確に特定でき、釣果の向上に役立つ。
【0042】
また、本実施例では、遠隔操作機51と模型ボート1とを釣り糸61により連結できるようにしている。すなわち、遠隔操作機51には、その裏側に、所定長さの釣り糸61を巻回した手動式のリール63が配設されており、該リール63を回動することにより釣り糸61を巻き取ることができるようになっている。そして、釣り糸61の先端にはフック片62が取り付けられており、該フック片62を、模型ボート1の後部に設けた連結突部7に係止することによって、遠隔操作機51と模型ボート1とを連結する。これにより、模型ボート1が電池切れなどによって水上で動かなくなった場合に、釣り糸61をリール63に巻き取ることにより模型ボート1を回収できる。尚、前記リール63は、従来から用いられている構成のものを適用できるため、その詳細については省略する。
【0043】
本実施例の模型ボート1は、上述したように、モータ24,24を並べて縦置きに配設し、羽根車28,28を内装する推進力発生室21,21と流通路31と噴出口32とをモータ24,24の回動軸25,25に直交する方向で連続して設けた構成であるから、推進力発生室21,21で発生した水流がその勢いを保ちつつ流通路31を介して噴出口32まで進むことから、模型ボート1を進めるための十分な推進力を発揮できる。そして、羽根車28が推進力発生室21に内装され、かつモータ24の回動軸25もほとんど水に浸からないことから、羽根車28や回動軸25に水草等が絡み付き難く、該絡み付くことによって生ずる不具合の発生を可及的に抑制できる。また、このパドル式推進装置20は、モータ24を縦置きにする等の構造によって簡略化でき、これに伴って比較的コンパクトな形態に形成可能であるから、本実施例の模型ボート1のように小型のものに好適に用いられ得る。これに加えて、平板状の船底に設けた膨出底部12,12により推進力発生室21,21等が覆われた構成としていることから、船底が比較的浅い構成とできる。これにより、比較的水深の浅い場所や水草の多い場所等でも高い航行性能を発揮できる。
【0044】
また、上述したようにパドル式推進装置20,20の構造が簡略化できることから、製造コストの低減に寄与できる。そして、メンテナンス作業を簡略化でき、その作業性を向上できることから、保管や使用に伴うランニングコストも低減できる。
【0045】
さらにまた、平板状の船底11には中心線Lの左右両側に前後方向の膨出底部12,12が設けられ、該膨出底部12,12間で中心線Lに沿った凹形状が形成されていることから、航行中における船底11下での水の流れを前後方向への比較的滑らかにすることができる。これによって、船底11が浅い構造でありながら、高い航行安定性を発揮できる。
【0046】
本発明にあっては、上述した実施例に限定されるものではなく、上述の実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更して実施可能である。例えば、魚群探知機として構成されないものであっても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 模型ボート
11 船底
12 膨出底部
20 パドル式推進装置
21 推進力発生室
23 推進駆動装置
24 モータ
25 回動軸
28 羽根車
29 吸入口
31 流通路
32 噴出口
51 遠隔操作機
L 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿って下方へ突出するように回動軸が配されたモータと、該回転軸の下端部に取り付けられて船底近傍に配置された羽根車とを具備する推進駆動装置と、
前記羽根車が内装され、且つモータの回動軸の直下に該羽根車に比して小径の吸入口が開口形成された円筒状の推進力発生室と、
該推進力発生室と船尾に開口する噴出口とを連通する流通路と
を備えたパドル式推進装置が、
前後方向に沿った中心線の左右両側に、該中心線に対して左右対称となるように複数配設されたものであることを特徴とする模型ボート。
【請求項2】
左右対称に配設されたパドル式推進装置は、推進力発生室と流通路と噴出口とが、モータの回動軸に直交する方向で連続的に形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の模型ボート。
【請求項3】
左右対称に配設されたパドル式推進装置は、流通路が、円筒状の推進力発生室の外側接線方向に沿って且つ船尾に向かってボート内側へ傾斜するように形成されたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の模型ボート。
【請求項4】
船底が平底形状であり、
パドル式推進装置の推進力発生室および流通路を覆うようにして、船底に突成された前後方向の膨出底部が、前後方向に沿った中心線の左右両側に且つ左右対称となるように複数設けられたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の模型ボート。
【請求項5】
遠隔操作される遠隔操作機から無線送信されたコマンド信号を受信する受信器と、
該受信器により受信したコマンド信号に従って、左右のパドル式推進装置の推進駆動装置を夫々駆動制御することにより推進制御と操舵制御とを行う駆動制御手段と
を備え、
遠隔操作機により遠隔操作されるラジコン式のものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の模型ボート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−106866(P2013−106866A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255682(P2011−255682)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000116091)ロイヤル工業株式会社 (27)
【Fターム(参考)】