説明

模型移動体

【課題】フレームと、ケースの先端側から露出し回転力を出力する出力軸が水平となる様にフレームに固定されたエンジンと、出力軸の先端部に設けられ出力軸の回転力を推進力に変換するプロペラとを備える模型移動体において、エンジンを防振部材を介してフレームに取り付けても、エンジンを始動させるためのプロペラの回転が容易であり、且つ、プロペラが防振部材によるエンジンの揺れにより地面に接触し難く、更に、エンジンの振動のエネルギーがフレームに伝達することをより抑制することができる模型移動体を提供する。
【解決手段】エンジン3はケース31の先端側に取付部31aを備え、取付部31aは、エンジン3の振動のエネルギーがフレーム1に伝達されることを抑制する防振部材6を介してフレーム1に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力軸が水平となる様にエンジンがフレームに固定され、出力軸の先端部にプロペラを備えるラジコン飛行機等の模型移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンを搭載した模型移動体としてのラジコン飛行機として、エンジンのケースから先端部が露出し回転力を出力する出力軸と、出力軸の先端に設けられたプロペラとを備え、出力軸が水平となる様にエンジンのケースの後端が防振ゴムを介してフレームに固定されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これによれば、防振ゴムが撓むことによりエンジンの振動のエネルギーがフレームに伝達されることを防止し、騒音の発生や、ラジコン飛行機の部品を固定するボルトが緩む等の不具合を解消することができる。
【0004】
ここで、この種のラジコン飛行機はプロペラを手やスターターモータで回すことによりエンジンを始動させる。しかしながら、防振ゴムが撓むことにより、防振ゴムを介してフレームに固定されたケースの後端を中心に出力軸が揺れ動き易いため、エンジンを始動させ難いという不都合がある。
【0005】
又、ラジコン飛行機の着陸の際など、エンジンの自重によりケースの後端を中心にエンジンが揺れ動き易く、この揺れによりプロペラが地面に接触して破損する虞もある。このような不具合を解消すべく、弾性係数の高い防振ゴムを用いてエンジンの揺れを抑えることも考えられるが、これでは、フレームへのエンジンの振動のエネルギーの伝達が抑制され難くなる。
【0006】
更に、近年、需要者の要望により、高出力のエンジンがラジコン飛行機に採用される様になってきており、エンジンの振動のエネルギーの問題がより顕著になりつつある。
【特許文献1】特開平7−313739号公報(段落番号0017)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、エンジンを防振部材を介してフレームに取り付けても、エンジンを始動させるためのプロペラの回転が容易であり、且つ、防振部材が撓みエンジンが揺れてもプロペラが地面に接触し難く、更に、エンジンの振動のエネルギーがフレームに伝達することをより抑制することができる模型移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、フレームと、ケースから先端部が露出し回転力を出力する出力軸が水平となる様にフレームに固定されたエンジンと、出力軸の先端部に設けられ出力軸の回転力を推進力に変換するプロペラとを備える模型移動体において、エンジンはケースの先端側にフレームに固定するための取付部を備え、取付部は、エンジンの振動のエネルギーがフレームに伝達されることを抑制する防振部材を介してフレームに固定されていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、エンジンを始動させるためにプロペラに外力を加えて回転させる際に、従来品と比較してプロペラと取付部との間の出力軸の軸線方向の距離が短いため、弾性係数の低い防振部材を用いても出力軸が揺れ動き難い。このため、手やスターターモータによりプロペラを回転させ易くなり、エンジンを始動させることが容易となる。
【0010】
又、防振部材の撓みによりエンジンが揺れ動いても、エンジンはケースの先端側の取付部を中心に揺れ動くため、弾性係数の低い防振部材を用いてもプロペラが地面に接触し難く、プロペラの破損を防止することができる。
【0011】
又、本発明によれば、従来品と比較して弾性係数の低い防振部材を用いることができる。
【0012】
又、エンジンは、ケースの先端側でフレームに固定され、固定された箇所を中心に振れる。このため、出力軸の両端でエンジンの振動のエネルギーが放出され、出力軸の両端で放出される振動のエネルギーは互い相殺され易く、フレームにエンジンの振動のエネルギーが伝達し難い。
【0013】
このため、エンジンの振動のエネルギーがフレームに伝達して部品を固定するボルトが緩む等の不具合をより抑制することができる。
【0014】
又、防振部材は、エンジン側に固定されるエンジン側固定部と、フレーム側に固定されるフレーム側固定部と、エンジン側固定部とフレーム側固定部とを連結するゴムとで構成される防振ゴムであり、先端側でフレーム側固定部がフレームに固着され、先端側と反対側の後端側でエンジン側固定部がエンジンの取付部に固着されることが好ましい。
【0015】
従来の様にエンジンをケースの後端側で防振ゴムを介してフレームに固定する場合、防振ゴムのエンジン側固定部は先端側でエンジンのケースに固着され、防振ゴムのフレーム側固定部は後端側でフレームに固着される構造が一般的である。この場合、プロペラの推進力は防振ゴムを引張する方向に作用する。このため、従来の模型移動体では、防振ゴムに亀裂が発生し易く、防振ゴムの耐久性が低下し易い。しかしながら、本発明の如く構成すれば、プロペラの推進力は防振ゴムを圧縮する方向に作用する。従って、防振ゴムに亀裂が発生し難く防振ゴムの耐久性を維持し易くなる。
【0016】
又、エンジンの取付部に板状の孔位置調整板を設け、防振ゴムのエンジン側固定部は後方に突出する雄ねじを備え、雄ねじは孔位置調整板の外縁部に形成された貫通孔に挿入されナットで固定されることが好ましい。
【0017】
一般に市販されているエンジンは、取付部として袋ナット状のねじ穴を備えるものが多く、雄ねじを挿入してナットで固定するものは使用できない。これに対し、現在市販されている防振ゴムは、一般的に両端に雄ねじが設けられ、雄ねじを貫通孔に挿入し、ナットで固定するものが多く、このような防振ゴムを直接エンジンのねじ穴に螺合させることはできない。
【0018】
しかしながら、本発明の如く構成すれば、従来の防振ゴムを設計変更することなく、防振ゴムの雄ねじを孔位置調整板の貫通孔に挿入してナットで固定することにより、孔位置調整板を介してエンジンの取付部に防振ゴムを固定することができる。
【0019】
又、取付部は、出力軸の軸線に対して径方向外方に延び外縁部に複数の貫通孔が設けられたフランジであり、防振ゴムのエンジン側固定部は後方に突出する雄ねじを備え、雄ねじは貫通孔に挿入されナットで固定されるように構成してもよい。
【0020】
係る構成によれば、上述した孔位置調整板を用いることなく直接取付部に防振ゴムを取り付けることができる。従って、孔位置調整板をエンジンに取り付ける作業工程がなくなり、エンジンのフレームへの組付け作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明の模型移動体の実施の形態を図1及び図2を参照して詳細に説明する。
【0022】
本発明の実施形態の模型移動体はラジコン飛行機であり、フロントフレーム1と、フロントフレーム1の後端に設けられたリアフレーム21と、リアフレーム21に固定された主翼22と、リアフレーム21の後端部に取り付けられ後端部に尾翼23aを備える尾翼ロッド23とを備える。
【0023】
フロントフレーム1は一枚の金属板を略U字状に折り曲げて形成された後面11と一対の側面12とを備えるものである。後面11と両側面12とには、中央部に大きく切りかかれた切欠部11a,12aが形成され、フロントフレーム1の軽量化が図られている。又、両側面12の前方縁には内側に直角に折れ曲がる折曲片13が設けられている。又、両折曲片13には上下両端部にそれぞれ貫通孔13aが設けられている。
【0024】
フロントフレーム1にはエンジン3が包囲される様に配置されている。エンジン3は、単気筒のいわゆる4サイクルエンジンであり、燃料としてガソリンが用いられている。又、エンジン3は、ケース31と、ケース31の先端側から露出し回転力を出力する出力軸32とを備え、出力軸32の軸線が水平となる様にエンジン3がフロントフレーム1内に配置されている。出力軸32の先端にはプロペラ4が取り付けられている。尚、各図ではエンジン3の吸排気系とプラグ等の部品の図示を省略している。
【0025】
又、ケース31の先端側には取付部としての袋ナット状の4つのねじ穴31aが設けられている。このねじ穴31aに板状の孔位置調整板5がボルト5aで固定されている。孔位置調整板5は中央にケース31から露出する出力軸32を挿通自在な切欠部5bを備える。又、孔位置調整板5の四隅には折曲片13の貫通孔13aの位置に合せて貫通孔5cがそれぞれ設けられている。
【0026】
折曲片13と孔位置調整板5との間には防振ゴム6が4つ配置されている。防振ゴム6は、円柱状ゴム61の両端面に雄ねじ62aを備える円板62を焼き付けにより固着させたものである。そして、防振ゴム6の両端に設けられた雄ねじ62aを孔位置調整板5の貫通孔5cと、折曲片13の貫通孔13aとに挿通し、ナット6aで固定している。本実施形態においては、エンジン3側に位置する円板62がエンジン側固定部に該当し、フロントフレーム1の折曲片13側に位置する円板62がフレーム側固定部に該当する。
【0027】
一般に市販されているエンジンは、本実施形態のように取付部に袋ナット状のねじ穴を備えるものが多く、雄ねじを挿入してナットで固定するものは使用できない。これに対し、現在市販されている防振ゴムは、一般的に両端に雄ねじが設けられ、雄ねじを貫通孔に挿入し、ナットで固定するものが多く、このような防振ゴムを直接エンジンのねじ穴に螺合させることはできない。
【0028】
しかしながら、本実施形態のように孔位置調整板5を介して防振ゴム6をエンジン3のねじ穴31aに固定すれば、従来の防振ゴム6を設計変更することなく、エンジン3のねじ穴31aに防振ゴム6を固定することができる。
【0029】
次いで、ラジコン飛行機の作動について説明する。
【0030】
まず、プロペラ4を手や図示しないスターターモータで回転させエンジン3を始動させる。エンジン3はケース31の先端側で防振ゴム6を介してフロントフレーム1に固定されているため、プロペラ4を回してエンジン3を始動させる際に出力軸32がぶれ難くエンジン3の始動が容易となる。
【0031】
エンジン3が作動すると出力軸32の回転力がプロペラ4に伝達し、推進力が発生する。このとき、プロペラ4の推進力によりエンジン3が先方に引張されるため、防振ゴム6は孔位置調整板5と折曲片13との間で圧縮される。従って、従来のラジコン飛行機の様に防振ゴム6がプロペラ4の推進力により引張されることがなく、防振ゴム6の亀裂等の発生を抑制し耐久性を高めることができる。そして、ラジコン飛行機はプロペラ4の推進力により離陸し飛行する。
【0032】
又、ラジコン飛行機が着陸する際には、エンジン3がケース31の先端側でフロントフレーム1に固定されているため、プロペラ4からねじ穴31aまでの出力軸32の軸線方向の距離が従来品と比較して短い。
【0033】
このため、防振ゴム6の撓んでエンジン3が揺れ動いてもプロペラ4が地面に接触し難い。これにより、ラジコン飛行機の着陸時に防振ゴム6の撓みによるエンジン3の揺れによりプロペラ4が地面に接触することを抑制し、プロペラ4の破損を抑制することができる。
【0034】
本実施形態のラジコン飛行機によれば、エンジン3が防振ゴム6を介してフロントフレーム1に固定されているため、エンジン3の振動のエネルギーがフロントフレーム1に伝達されることを抑制し、騒音の発生等を低減させることができる。又、上述した様にエンジン3はケース31の先端側でフロントフレーム1に固定され、プロペラ4に外力が加わってもエンジン3が揺れ動き難いため、防振ゴム6の弾性係数を低く抑えることができる。
【0035】
又、エンジン3は、ケース31の先端側でフロントフレーム1に固定され、固定された箇所を中心に振れる。このため、出力軸32の両端でエンジン3の振動のエネルギーが放出され、出力軸32の両端で放出される振動のエネルギーは互い相殺され易く、フロントフレーム1にエンジン3の振動のエネルギーが伝達し難い。このため、エンジン3の振動のエネルギーがフロントフレーム1に伝達して部品を固定するボルトが緩む等の不具合を抑制することができる。
【0036】
又、従来のラジコン飛行機に一般的に用いられるグローエンジンよりも出力の高いガソリンエンジンを搭載しても、エンジンの振動のエネルギーによる騒音の発生やラジコン飛行機の部品を固定するボルトの緩み等の不具合の発生を抑制することができる。
【0037】
尚、本実施形態においては、エンジン3に孔位置調整板5を介して防振ゴム6を取り付けたものを説明したが、これに限られず、例えば、図3に示すように、エンジン3のケース31の先端側に出力軸32に対して径方向外方に延びるフランジ31bを形成し、このフランジ33に貫通孔31aを形成して防振ゴム6を取り付ける様にしてもよい。これによれば、孔位置調整板5を必要とせず、エンジン3のフロントフレーム1への組付け作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の模型移動体の実施形態を示した説明図。
【図2】本実施形態のフレームとエンジンの取付部とを示した説明図。
【図3】他の実施形態のエンジンの取付部を示した説明図。
【符号の説明】
【0039】
1…フロントフレーム(フレーム)、 11…後面、 11a…切欠部、 12…側面、 12a…切欠部、 13…折曲片、 13a…貫通孔、 21…リアフレーム、 22…主翼、 23…尾翼ロッド、 23a…尾翼、 3…エンジン、 31…ケース、 31a…ねじ穴(取付部)、 31b…フランジ、 32…出力軸、 4…プロペラ、 5…孔位置調整板、 5a…ボルト、 5b…切欠部、 5c…貫通孔、 6…防振ゴム(防振部材)、 6a…ナット、 61…円柱状ゴム、 62…円板(エンジン側固定部、フレーム側固定部)、 62a…雄ねじ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、ケースから先端部が露出し回転力を出力する出力軸が水平となる様に該フレームに固定されたエンジンと、該出力軸の先端部に設けられ該出力軸の回転力を推進力に変換するプロペラとを備える模型移動体において、
前記エンジンは前記ケースの先端側に前記フレームに固定するための取付部を備え、
該取付部は、前記エンジンの振動のエネルギーが前記フレームに伝達されることを抑制する防振部材を介して前記フレームに固定されていることを特徴とする模型移動体。
【請求項2】
前記防振部材は、前記エンジン側に固定されるエンジン側固定部と、前記フレーム側に固定されるフレーム側固定部と、該エンジン側固定部と該フレーム側固定部とを連結するゴムとで構成される防振ゴムであり、
前記先端側で前記フレーム側固定部が前記フレームに固着され、前記先端側と反対側の後端側で前記エンジン側固定部が前記取付部に固着されることを特徴とする請求項1に記載の模型移動体。
【請求項3】
前記エンジンの取付部には板状の孔位置調整板が設けられ、
前記防振ゴムのエンジン側固定部は後方に突出する雄ねじを備え、該雄ねじは前記孔位置調整板の外縁部に形成された貫通孔に挿入されナットで固定されることを特徴とする請求項2に記載の模型移動体。
【請求項4】
前記取付部は、前記出力軸の軸線に対して径方向外方に延び外縁部に複数の貫通孔が設けられたフランジであり、
前記防振ゴムのエンジン側固定部は後方に突出する雄ねじを備え、該雄ねじは前記貫通孔に挿入されナットで固定されることを特徴とする請求項2に記載の模型移動体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−237712(P2008−237712A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84994(P2007−84994)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】