説明

模擬移動床吸着からの改良された生成物回収方法

その前の段階で、吸着剤室(100、200)からラフィネート流を除去し、好ましくは、ラフィネート生成物(RP)から脱着剤(D)を分離するために利用されるラフィネートカラム(400)へと移送するために用いられる移送ライン(10)の内容物をフラッシングすることによって、模擬移動床吸着分離プロセスから得られる生成物の純度又はその容量が増加する。好ましくは、吸着剤室からの、供給物流入部分及びラフィネート回収部分間の中間点のストリームが、フラッシング液として利用される。このフラッシングステップによって、移送ラインのフラッシング時、又はこのプロセス導管がその後の段階で吸着剤室(100、200)への供給流(F)の供給に利用される際に、多量のラフィネート物質がこの吸着剤室(100、200)へと通過することが防がれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模擬移動床吸着からの改良された生成物回収方法、特に模擬移動床吸着を利用して、C8芳香族化合物の混合物からのパラキシレン及び/又はメタキシレンの回収に関する。
【背景技術】
【0002】
パラキシレン及びメタキシレンは、化学繊維工業における重要な原料である。パラキシレンから得られるテレフタル酸は、今日広く普及しているポリエステル織物やその他の製品の製造に利用される。メタキシレンは、殺虫剤やイソフタル酸などの多くの有用な製品の製造に用いられる原料である。吸着分離、結晶化、及び分別蒸留(分留)の内のいずれか1つ又はこれらの組み合わせが、これらのキシレン異性体の生成のために利用されてきた。現在、市場において主要な位置を占めるパラキシレン異性体の生成のために、新しく建設されるプラントの内の大部分が吸着分離の方式を採用している。
【0003】
吸着分離のためのプロセスについては多くの文献に記載がある。例えば、the September 1970 edition of Chemical Engineering Progress (Vol. 66, No 9)の第70頁には、パラキシレンの回収についての概要が述べられている。また利用可能な文献として、古くより、有用な吸着及び脱着剤、液体の流れを分配するための回転弁を含む模擬移動床系の機械的部品、吸着剤室の内部、及び制御方式について述べられた参考文献が数多く存在する。混合流体の成分を固体吸着剤と接触させることで連続的に分離する模擬移動床の利用原理が、米国特許第2,985,589号明細書に述べられている。米国特許第3,997,620号明細書においては、模擬移動床のこの原理が、C8芳香族化合物を含む供給流からのパラキシレンの回収に応用されており、そして米国特許第4,326,092号明細書には、C8芳香族化合物流からのメタキシレンの回収について教示されている。
【0004】
C8芳香族化合物を処理する吸着分離ユニットにおいては、通常、吸着剤及び供給流の模擬向流移動を利用する。このシミュレーションは既存の工業技術を利用して行われる。この技術においては、吸着剤が1つ又は複数の円筒状吸着剤室内に保持され、そしてこのプロセスに供給されるストリーム(流れ)のこの室への流入位置、及びこの室からの流出位置が、床の全長に沿って徐々にシフトする。通常、このステップにおいては少なくとも4つのストリーム(供給流、脱着剤流、抽出流、及びラフィネート流)が利用され、供給流及び脱着剤流のこの室への流入位置と、そして抽出流及びラフィネート流のこの室からの流出位置とが、一定の間隔を置いて、同時に同一方向へシフトする。移送位置の各シフトによって、この室内の異なる床へ液体が供給され、そしてまた異なる床から液体が除去される。これらの移送位置のラインは、各ストリームが関連する床へ流入、又は流出する際に再利用される。従って、それぞれのラインは、4つのプロセスストリームの内の1つを、サイクル中のある時点で搬送することになる。
【0005】
本技術においては、移送ライン中に残留化合物が存在することは、模擬移動床プロセスに対して有害な影響を及ぼすものと認識されている。米国特許第3,201,491号明細書、同第5,750,820号明細書、同第5,884,777号明細書、同第6,004,518号明細書、及び同第6,149,874号明細書には、回収される抽出成分又は収着成分の純度を高めるための手段として、吸着剤室へ供給流を供給するラインをフラッシング処理する方法が教示されている。こうしたフラッシング処理は、ライン中に供給物のラフィネート成分が残留し、それに続く段階でこのラインを吸着剤室からの抽出流の回収に利用する際に、この抽出流が汚染されることを防ぐ。米国特許第5,912,395号明細書には、ラフィネート流の除去に利用されたばかりのラインをフラッシングし、このラインが吸着剤室への供給流の供給に利用される際に、供給物がラフィネートによって汚染されることを防ぐ方法が教示されている。これらの参考文献で教示されている全ての方法において、ラインは吸着剤室内部へとフラッシングされ、結果的に吸着剤室内の分離負荷が増加する。
【発明の開示】
【発明の概要】
【0006】
本発明の広義の実施形態は、模擬向流吸着分離によって、2つ以上の化合物から成る供給混合物から所望の化合物を分離するためのプロセスである。このプロセスにおいては、供給流及び脱着剤流が、異なる移送ラインを経由する2つの異なるアクセスポイントで、複数のアクセスポイントを有する少なくとも1つの複数床吸着剤室内に注入され、そして所望の化合物から成る抽出流及びラフィネート流が、2つの異なるアクセスポイントの2つの追加の移送ラインによって、この吸着剤室から別々に回収される。またこのラフィネートの回収部分及び供給流の注入部分間の吸着室部分を吸着帯と定義する。本プロセスの改良点は、供給混合物の一部及び吸着帯からラフィネートフラッシュとして回収される物質のいずれか一方又はその両方を誘導して、その前の段階で吸着剤室からラフィネート流を除去するために利用された移送ラインの内容物を、この吸着剤室から外部へとフラッシングする点である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
吸着分離は、種々の炭化水素及びその他の化学生成物の回収に適用される。現在までに開示された、この方法を利用した化学的分離には、芳香族化合物の混合物の特定の芳香族異性体への分離、非直鎖状脂肪族及びオレフィン炭化水素からの直鎖状体の分離、芳香族化合物及びパラフィンの両成分から成る供給混合物からのパラフィン又は芳香族化合物の分離、医薬品及び精製化学製品に利用されるキラル化合物の分離、アルコール類、エーテル類などの含酸素化合物の分離、そして糖類などの炭水化物の分離がある。芳香族化合物の分離には、ジアルキル置換単環芳香族化合物、及びジメチルナフタレンの混合物が含まれる。上述の参考文献、またそれに限定されるわけではないが本発明の以下の説明において焦点となる主要な工業的用途は、C8芳香族化合物の混合物からのパラキシレン及び/又はメタキシレンの回収である。このようなC8芳香族化合物は、通常、芳香族化合物錯体から、ナフサの接触改質、そしてそれに続く抽出及び分留によって、又はこのような錯体中の芳香族化合物を豊富に含んだストリームのトランスアルキル化又は異性化によって得られる。C8芳香族化合物は、通常、キシレン異性体及びエチルベンゼンの混合物から成る。一般に、C8芳香族化合物模擬移動床吸着のプロセスは、高純度パラキシレン又は高純度メタキシレンの回収をその目的とする。高純度とは、通常、所望の生成物の少なくとも99.5重量%、好ましくは少なくとも99.7重量%以上を指す。
【0008】
本発明は、上述のように、吸着剤及びその周囲の液体の向流移動をシミュレートする吸着分離プロセスにおいて実施されるが、また一方、米国特許第4,402,832号明細書及び同第4,478,721号明細書に開示されているような並流連続プロセスにおいても実施することができる。液体成分のクロマトグラフ分離における吸着剤及び脱着剤の機能及び特性についてはよく知られており、また本明細書に参照として組み込まれる米国特許第4,642,397号明細書には、これらの吸着原理についてのさらなる説明が述べられている。向流移動床又は模擬移動床向流システムは、吸着及び脱着の操作が連続的に行われて、供給流が連続して供給され、抽出物及びラフィネートが連続して生成されるので、こうした分離プロセスに対しては、固定床システムに比べてはるかに高い分離効率を有している。Adsorptive Separation section of the Kirk- Othmer Encyclopedia of Chemical Technologyの第563頁に、模擬移動床プロセスについての極めて詳細な説明が述べられている。
【0009】
図1は本発明の原理を応用した模擬移動床吸着プロセスの概略図である。このプロセスにおいては、順に、まず供給流“F”が容器内に含まれる吸着剤と接触し、続いて脱着剤“D”と接触して、ラフィネート流“R”から抽出流“E”が分離される。模擬移動床向流系においては、液体供給物及び生成物の複数のアクセスポイントを漸次下方にシフトする動きが、吸着剤室内に含まれる吸着剤の上方への動きをシミュレートする。模擬移動床吸着プロセスの吸着剤は、1つ又は複数の容器内の複数の床に含まれる。図1において、直列に配置される2つの容器100及び200が示される。各容器は、それぞれの処理スペース101及び201内に、吸着剤の複数の床を含有する。各容器は吸着剤床の数に比例するアクセスポイントを有し、そして供給流F、脱着剤流D、抽出流E及びラフィネート流Rの位置はこれらのアクセスポイントに沿ってシフトし、移動する吸着剤床をシミュレートする。脱着剤、抽出物及びラフィネートから成る循環液は、各容器を通じ、またポンプ110、210をそれぞれ通じて循環する。循環液の流れを制御するシステムについては米国特許第5,595,665号明細書に述べられている。しかしこのようなシステムの詳細な事項が本発明にとって不可欠の要素となるわけではない。回転円盤型弁300は、例えば米国特許第3,040,777号及び同第3,422,848号においてその特徴が示されるように、吸着剤室に沿ってストリーム(流れ)の位置をシフトさせ、対向する流れをシミュレートする。
【0010】
図1に示されるように、模擬移動床吸着において利用されるこれら種々のストリームは、以下のように特徴付けることができる。“供給流”は、1つ又は複数の抽出成分及び1つ又は複数のラフィネート成分を含有する混合物であり、これらの成分は本プロセスによって分離される。“抽出流”は、1つの成分、通常は所望の生成物から成り、この成分は吸着剤によってより選択的に吸着される。“ラフィネート流”は複数の成分から成り、これらの成分は抽出流の成分ほどには選択的に吸着されない。“脱着剤”は、抽出成分を脱着させることができ、概して供給流の成分に対して不活性であり、且つ抽出物及びラフィネートの両方から容易に分離することが可能な物質を指す。
【0011】
図1に示される抽出流E及びラフィネート流Rには、本プロセスにおける各生成物に対して0%〜100%の濃度の脱着剤が含まれる。図1に示されるように、脱着剤は、ラフィネートカラム400及び抽出カラム500において、既知の分別法によってラフィネート成分及び抽出成分から分離され、ストリームDとして本プロセスへと再循環される。図1において、脱着剤は各カラムの塔底物として示されており、これは脱着剤が抽出物又はラフィネートよりも重質であるということを意味する。C8芳香族化合物の分離に利用される他の工業ユニットにおいては、軽質又は重質脱着剤のいずれかを利用するものもある。本プロセスの生成物であるラフィネート生成物RP及び抽出生成物EPは、各カラムの抽出流E及びラフィネート流Rから回収される。C8芳香族化合物の分離から得られる抽出生成物は、通常、主に、パラキシレン及びメタキシレンのいずれか一方又はそれらの両方から成り、ラフィネートは、主に、非吸着C8芳香族化合物及びエチルベンゼンである。
【0012】
活性液アクセスポイントAは、吸着剤室を別々の帯域に効率的に分割し、これらの帯域はこのアクセスポイントがシフトするにつれてその位置が移動する。吸着帯は、供給物流入流Fとラフィネート流出流Rとの間に位置する。この帯域において、供給原料は吸着剤と接触し、抽出成分が吸着され、そしてラフィネート流が回収される。この流体流のすぐ上流側に位置するのが精製帯であり、この帯域は抽出物流出流E及び供給物流入流F間の吸着剤によって画定される。精製帯において、選択性のない吸着剤の空隙容積とこのラフィネート成分とが置き換えられ、そしてこのラフィネート成分は、脱着帯から流出する抽出流物質の一部を通過させることによって、この帯域へと移動する吸着剤の細孔容積又は表面から脱着される。この精製帯の上流側に位置する脱着帯は、脱着剤流入口D及び抽出物流出口E間の吸着剤によって画定される。この帯域を通過する脱着剤は、吸着帯において供給物との前の段階での接触によって吸着された抽出成分と置き換えられる。ラフィネート流出流R及び脱着剤流入流D間の緩衝帯は、脱着ステップにおいて利用される脱着剤の分量を保持し、またこのステップにおいて、ラフィネート流の一部がこの緩衝帯に流入し、この帯域から脱着帯へと流入する脱着剤物質と置き換えられる。この緩衝帯には十分な量の吸着剤が含まれ、ラフィネート成分が脱着帯へと流入し、抽出流を汚染することを防ぐ。
【0013】
上述の各帯域は、米国特許第2,985,589号明細書に述べられているような、複数の画分又は“床”によって成り立つ。上述の種々のストリームの位置は、水平な集液/分配グリッドによって構造的に互いに分離されている。各グリッドは、プロセス流が吸着剤室へと流入、また流出する移送ポイントを規定する移送ラインと連系する。この構成によって、チャネリング及びその他の非効率的事象が防止されて流体の吸着剤室内への分配が円滑化され、主な流体流の流れと逆方向への流体の対流逆混合が防止され、そして吸着剤のこの吸着剤室を通じての移動が防止される。上述の各帯域は、通常2〜10、より通常には3〜8の複数の床によって構成される。標準的な模擬移動床吸着ユニットは24の吸着剤床によって構成される。
【0014】
自明の理として、アクセスポイントAにおいて、特定のストリームを吸着剤室内へ又は吸着剤室外へ移送する移送ラインが、ステップの終了時に遊休状態となる際、この移送ラインは、このストリームを構成する化合物が第2の流動ストリームによってこのラインから除去されるまで、この化合物に満たされた状態となる。従って、ここで使用されていない移送ライン中の残余化合物は、この移送ラインがストリームを吸着剤室から除去又は吸着剤室へと通過させる際に、本プロセスから除去されるプロセス流の最初の部分として本プロセスから回収されるか、あるいは吸着剤室内へ押し込まれることとなる。上述のように、本技術におけるこれらの作用によって、その前の段階でラフィネート流を吸着剤室から除去するのに利用された移送ライン中の残余化合物の存在は、模擬移動床吸着分離プロセスの性能に対して種々の有害な影響を及ぼし得る、ということが認識される。
【0015】
上述の参考文献には全て、前の段階で吸着剤室からラフィネート流を除去するために利用されたラインを、吸着剤室へと戻すかたちでフラッシングし、吸着剤室内の分離負荷を高める方法が教示されている。その結果として、脱着剤が吸着剤室へと通過するが、この脱着剤は、所望の異性体と吸着剤上の吸着サイトをめぐって競合するので望ましくない。この2つの化合物が吸着容量をめぐって競合する。つまり簡単にいうと、吸着帯内の吸着剤の吸着容量は、所望の異性体と、吸着剤上に吸着される脱着剤化合物との合計である。従って、吸着帯へと供給される脱着剤の量が減少すると、パラキシレン又は任意のその他の所望の化合物のための吸着容量が増加する。
【0016】
対照的に、本発明においては、前の段階で吸着剤室からラフィネート流を除去するために利用された移送ラインの内容物を、吸着剤室から外部へとフラッシングし、このラフィネートフラッシュが、好ましくは、その後の段階でラフィネートカラムへと通過する。このラフィネートフラッシュは、供給混合物及び吸着帯から回収された物質のいずれか一方又はその両方である。このフラッシュは、吸着帯から流出し、ラフィネートカラム400への供給物であるラフィネートRと合流するライン10として、図1中に示されている。フラッシュ物質は吸着帯内のいずれのポイントからも回収することができ、ラインはこの帯域内のいずれのアクセスポイントにおいてもフラッシングすることが可能であって、図1に示される特定のライン10は、本発明の内容への制限を意図して示されるものではない。好ましくは、そのすぐ前の段階でラフィネート流を移送した移送ラインからフラッシングされるフラッシュ物質は、供給流を吸着剤室へ注入するために利用される移送ラインの2つのアクセスポイント内の1つのアクセスポイントにおいてフラッシングされ、供給流がこのラインを通じて注入される際に、ライン中に残留する脱着剤の量を最小限化する。既存の技術のプロセスに比べ、ライン中の内容物をラフィネートカラムへ向けてフラッシングするため、吸着剤室の容量が影響を受けない。好ましくは、ラフィネート移送ラインのフラッシングに利用されるストリームの容量は、このラフィネート移送ライン及び関連弁の全容量の0.5〜2.5倍、より好ましくは0.5〜1.5倍、そしてオプションとして0.9〜1.1倍である。関連弁とは、この移送ラインに接続された弁及び関連する付属物を指す。
【0017】
本発明の実施にあたって、稼動条件、吸着剤又は脱着剤の組成、又は吸着剤室の機械構造に大幅な変更は必要とされない。本プロセスの装置において必要とされる唯一の大幅な変更は、供給流、及び本プロセスの吸着部から流出し、フラッシングされるラインへと通過し、そしてこのラインをラフィネートカラムへと結びつけるラフィネートフラッシュとしての中間流のいずれか一方又はその両方の流量の制御である。これらの変更は、好ましくは、プロセス流の流量の制御に利用される装置の内部及びその近傍にてなされる。従って、本発明のプロセスは、流体の流れを方向づける装置に修正を加えることで、既存のユニットにおいて実施することも可能である。
【0018】
本発明の模擬移動床プロセスに用いる吸着剤の選択において、唯一の条件となるものは、特定の吸着剤/脱着剤の組み合わせで所望の分離が得られるか否かということである。吸着剤の重要な特性は、供給混合物の抽出成分に対する脱着剤の交換速度、言い換えれば抽出成分の脱着の相対速度である。この特性は、本プロセスにおいて吸着剤から抽出成分を回収するために用いられる脱着剤物質の量に直接関連する。交換速度が速くなると、抽出成分の除去のために必要となる脱着剤物質の量が低減され、ひいては本プロセスの操業コストの削減にもつながる。交換速度が速くなることで、本プロセスを通じて循環される脱着剤物質の量が低減され、また本プロセスでの再利用のために抽出流から分離される脱着剤物質の量も低減される。
【0019】
従って、本発明の実施は、異なる分離のために異なる篩/脱着剤の組み合わせを用いるような、特定の吸着剤又は吸着剤/脱着剤の組み合わせの利用に関連せず、またそれに制限されない。この吸着剤はゼオライトであってもなくてもよい。本発明のプロセスにおいて用いられる吸着剤の例は、炭素系分子篩、シリカライト及びX、Yゼオライトとして分類される結晶性アルミノ珪酸塩分子篩などの非ゼオライト系分子篩である。多くのこれら微孔性分子篩の組成及び合成についての詳細は、この教示のために本明細書に組み込まれる米国特許第4,793,984号明細書に述べられている。また吸着剤についての情報は、米国特許第4,385,994号明細書、同第4,605,492号明細書、同第4,310,440号明細書、及び同第4,440,871号明細書からも得ることができる。
【0020】
通常、液相を維持できる実質上一定の圧力及び温度で、連続的に稼動する吸着分離プロセスにおいては、脱着剤物質は、いくつかの基準を満たすものを選択しなくてはならない。まず第1に、脱着剤物質は、適切な質量流量で吸着剤から抽出成分を脱着し、その際に、この脱着剤物質自体が、その後に続く吸着サイクルで抽出成分がこの脱着剤物質に置き換えられる妨げとならないよう過度に吸着されない、といったものでなければならない。選択性の点からいうと、吸着剤は、1つのラフィネート成分に関して、脱着剤物質よりも、全ての抽出成分に対してより高い選択性を有することが望ましい。第2に、脱着剤物質は、特定の吸着剤及び特定の供給混合物に対して適合性を有するものでなければならない。より具体的にいうと、脱着剤物質は、吸着剤の容量、又は1つのラフィネート成分に関して吸着剤が抽出成分に対して有する選択性を減少させる又は破壊するものであってはならない。さらに、脱着剤物質は、抽出成分又はラフィネート成分のいずれかと化学的に反応する、あるいは化学反応を引き起こすものであってはならない。通常、抽出流及びラフィネート流の両方は、脱着剤物質との混合物の吸着剤空隙容量から除去されるのであって、脱着剤物質、及び抽出成分又はラフィネート成分又はそれらの両方を巻き込んだ化学反応は、生成物の回収を複雑化し又は妨害してしまう。また脱着剤は、分別などの手段によって、抽出成分及びラフィネート成分から容易に分離できるものでなければならない。最後に、脱着剤物質は、容易に入手可能であり、またコストの面で合理的なものでなければならない。参考文献中に、ベンゼン、トルエン、及びp‐ジエチルベンゼンは、パラキシレン回収のための適切な脱着剤であることが述べられており、この内p‐ジエチルベンゼン(p-DEB)はこの分離プロセスのための業界の標準的な脱着剤となった。p-DEBは、分別蒸留によって抽出流及びラフィネート流から容易に回収することができる“重質”脱着剤(パラキシレンよりも沸点が高い)である。
【0021】
一般に、吸着のための条件は温度が20〜250℃であり、パラキシレンの分離のためには60〜200℃の温度が望ましい。また吸着のための条件には、液相を維持するのに十分な、常圧〜4.2MPaの圧力も含まれる。また一般に、脱着のための条件には、吸着のための条件において利用されるのと同じ範囲の温度及び圧力が含まれる。その他の抽出化合物に対しては、これと異なる条件が好ましい場合もある。
【実施例1】
【0022】
本発明によって得られる改善の程度の確認のため、コンピュータ化モデルを利用して、C8芳香族化合物からのメタキシレン及びパラキシレンの回収の比較を行った。このコンピュータ化モデルは、キシレン異性体の混合物からのメタキシレン及びパラキシレンの回収に用いられる工業規模の模擬移動床吸着分離ユニットの実際の稼動を正確に予測し、またそれによって得られる結果が実際の稼動と相関することが示された。この模擬ユニットは、2つのカラムに分割された24の吸着剤床、またプロセス流の流れを方向付ける24ポート回転弁を有していた。2つの目標生成物のための供給原料の組成は、重量%で以下のとおりであった。

【0023】
結果は以下のとおりであった、生成物の純度/回収率の標準化のため、ラフィネートを吸着剤室からフラッシングする際の供給物の相対量を調整した。



【0024】
結果として、容量の増加は、メタキシレンの回収の場合が40%、そしてパラキシレンの回収の場合が10%であった。なお、ラフィネートを吸着剤室内へとフラッシングした場合、回収率は維持されなかった。
【0025】
上に述べた説明及び実施例は、本発明の例示をその目的として示されたものであり、本発明の範囲の制限を意図して示されたものではない。本技術分野の当業者であれば、本明細書において開示される内容から、本発明のその他の実施の形態を容易に想定することが可能であろう。本発明は、本明細書において示される請求の範囲によってのみ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の理解のために必要な特徴を示す、模擬移動床吸着の簡略図である。
【符号の説明】
【0027】
100,200 吸着剤室(容器)
300 回転円盤型弁
400 ラフィネート蒸留カラム(ラフィネートカラム)
500 抽出物蒸留カラム(抽出カラム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
模擬向流吸着分離によって、2つ以上の化合物から成る供給混合物から所望の化合物を分離するためのプロセスにおいて、供給流(F)及び脱着剤流(D)が、異なる移送ラインを経由する2つの異なるアクセスポイントで、複数のアクセスポイント(A)を有する少なくとも1つの複数床吸着剤室(100、200)内に注入され、そして所望の化合物から成る抽出流(E)及びラフィネート流(R)が、2つの異なるアクセスポイントの2つの追加の移送ラインによって、前記吸着剤室(100、200)から別々に回収され、またラフィネートの回収部分及び供給流の注入部分間の吸着室部分が吸着帯と定義され、このプロセスの改良点は、供給混合物の一部及び吸着帯からラフィネートフラッシュとして回収される物質のいずれか一方又はその両方を誘導して、その前の段階で吸着剤室からラフィネート流を除去するために利用された移送ライン(10)の内容物を、前記吸着剤室から外部へとフラッシングすることである、ことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
さらに、その前の段階でラフィネート流を移送した移送ライン(10)からのラフィネートフラッシュが、吸着剤室(100、200)へ供給流(F)を注入するために利用される移送ラインの2つのアクセスポイント内の1つのアクセスポイントでフラッシングされることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
さらに、ラフィネート流(R)をラフィネート蒸留カラム(400)へと通過させるステップと、抽出流(E)を抽出物蒸留カラム(500)へと通過させるステップと、そしてラフィネートフラッシュでフラッシングされた移送ライン(10)の内容物を前記ラフィネート蒸留カラム(400)へと通過させるステップとで構成される請求項1記載のプロセス。
【請求項4】
ラフィネートフラッシュの容量が、ラフィネート移送ライン(10)及び関連弁の全容量の0.5〜2.5倍であることを特徴とする請求項1記載のプロセス。
【請求項5】
前記供給流がC8芳香族化合物によって構成され、前記抽出生成物がメタキシレン及びパラキシレンのいずれか1つ又はその両方によって構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記供給流が1つ以上の非直鎖状脂肪族及びオレフィン炭化水素によって構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記供給流が芳香族化合物及びパラフィンによって構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記供給流がキラル化合物によって構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記供給流が含酸素化合物によって構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記供給流が炭水化物によって構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。

【図1】
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【公表番号】特表2008−531274(P2008−531274A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558146(P2007−558146)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/007146
【国際公開番号】WO2006/096394
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】