説明

模擬銃におけるリコイルショック装置

【課題】リコイルショックを得ることができ、リコイルショックの必要がないときはこの効果を使わなくすることができる模擬銃におけるリコイルショック装置を提供する。
【解決手段】圧縮エアを生成するピストンシリンダー装置を銃本体に装備し、上記ピストンシリンダー装置を構成する可動部の動きに連動するウエイトの移動により反動を得るために、ピストンシリンダー装置11の可動部13とその後退方向への移動に連動するウエイト側の部分とから成る連絡部27を具備し、上記可動部から連絡部を経て上記ウエイトに伝えられる力を受けて圧縮されるリコイルばね34を設け、ウエイト30の移動に伴う反作用を銃本体に生じさせるショック発生モードと、反作用が銃本体に伝達されないショック不発生モードを選択可能にするために、ショック不発生モードにおいては、上記可動部13の後退位置にて可動部と接触しない状態にウエイトを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮エアを生成するピストンシリンダー装置を銃本体に装備し、上記ピストンシリンダー装置を構成する可動部の動きに連動するウエイトの移動により反動を得るためのリコイルショック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾丸発射時に反動(リコイルショック)を発生する実銃と同様に、模擬的な反動を玩具銃にも再現しようという試みは従来から行われている。市販された玩具銃に見られた反動付与方式は、圧縮エアを生成するピストンシリンダー装置を有する玩具銃について、ピストンを重くしてショックを得る方式のものであった。このため、十分なショックを得るにはピストンを十分に重くする必要があり、重くしたピストンによる弾速低下を避けるためにピストンスプリングを強化する必要が生じ、スプリング強化によりピストンをコッキングする負荷が増加し、ピストン前進時の衝撃でシリンダーヘッドやピストン自体、或いは作動機構などの損耗が早く進み、耐久性を著しく損なうという問題を生じた。
【0003】
出願公開された文献の中には、特開2000−88494号のように、引き金を引く操作でピストンロッドを突出させ、可動肩当てを後方へ突出させて射手の肩に衝撃を与えるものがあるが、肩当てを可動にするという実銃にはない機構を付与しなければならない不利がある。また特開平8−89661号は、スライドカバーを、トリガー操作に連動するソレノイドによって駆動し、反動を付与するものであるが、スライド機構を有していない小銃型のものには適さない。また実開平6−22793号は、銃身に沿ったスプリングと重りにより後ろ向きに発生させた衝撃を利用して空気室を押し、その圧力でエアガンの弾丸を発射させるというものであるが、衝撃が発射に先行するという特殊なもので一般向きということはできない。
【0004】
また、リコイルショックは当然に銃本体の固定に影響を与えることになるが、そのためこれまでのリコイルショックを生じない模擬銃に対して、リコイルショックを生じる模擬銃においては命中率が低下するという問題がある。そこで、実銃を模したことによるメリットとデメリットが生まれ、サバイバルゲームのような状況ではリコイルショックを生じることが歓迎されないこととなる。実銃のリアリティを求めてリコイルショックを生じる模擬銃を購入した者であっても、命中率が低下するというのは歓迎できないことであり、商品に対する不満となって跳ね返ることも考えられる。
【0005】
【特許文献1】特開2000−88494号
【特許文献2】特開平8−89661号
【特許文献3】実開平6−22793号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その基本的な課題は、ピストンシリンダー装置における可動部とウエイトとを別体に設けることにより、ピストン重量を増すことなくピストン重量を増したのと同等のリコイルショックを得ることである。また、本発明の他の課題は、リコイルショックを得ることができるとともに、リコイルショックの必要がないときはこの効果を使わなくすることができる模擬銃におけるリコイルショック装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、圧縮エアを生成するピストンシリンダー装置を銃本体に装備し、上記ピストンシリンダー装置を構成する可動部の動きに連動するウエイトの移動により反動を得るためのリコイルショック装置について、ピストンシリンダー装置の可動部とその後退方向への移動に連動するウエイト側の部分とから成る連絡部を具備するとともに、可動部から上記連絡部を経て上記ウエイトに伝えられる力を受けて圧縮されるリコイルばねを設け、上記ウエイトの移動に伴う反作用を銃本体に生じさせるショック発生モードと、可動部の動きに拘らず反作用が銃本体に伝達されないショック不発生モードとを選択可能にするために、ショック不発生モードにおいては、可動部の後退位置にて可動部と接触しない状態にウエイトを設定するという手段を講じたものである(請求項1記載の発明)。
【0008】
本発明の玩具銃は、ピストンシリンダー装置を使用して圧縮エアを生成する方式の銃に関するものである。ピストンシリンダー装置は、ピストンがシリンダー内を摺動するとの理解が一般的であるが、ピストンが固定されシリンダーが可動となるものもあり、どちらの場合でも圧縮エアを生成する。従って、本発明における可動部とは圧縮エア生成のために摺動する方の部分を言い、ピストン、シリンダーのどちらが可動部分であってもウエイトを駆動するものは、本発明における可動部である。
【0009】
ピストンシリンダー装置により圧縮エアが生成される玩具銃では、圧縮エアは弾丸の発射のために使用することができる。しかし、弾丸が発射されない場合でも、ピストンシリンダー装置の動作に基因してウエイトが駆動されれば、模擬的な反動を得ることができるのはいうまでもない。従って弾丸発射に伴うリコイルショックに対して、本発明による模擬的な反動は弾丸発射を条件としていない。つまり本発明の装置は弾丸発射機構を備えているものについて適用できることはもちろん、弾丸発射機構を備えていないものについても適用可能である。本発明において、弾丸の発射を伴わずにリコイルショックが得られるということは、BB弾などの弾丸を消費しなくてもリコイルショックを体感できるということであり、弾丸の散乱防止の面からも好ましい。
【0010】
本発明の装置では、ピストンシリンダー装置の可動部とその後退方向への移動に連動可能としたウエイト側の部分とから成る連絡部をウエイトとの間に設けている。連絡部は、可動部により当該連絡部を経て上記ウエイトに伝えられる力を受けて圧縮状態になるリコイルばねをウエイトに作用させる機能を果たす。従って、連絡部は、例えば可動部とウエイト部の各部材の一部分である場合もあり、可動部側とウエイト側との間に介在する独立した部材である場合もある。本発明では可動部→連絡部→ウエイト→リコイルばね、という順序に力が伝えられるのであるが、3部品に分かれていることは絶対的に必要な条件ではなく、設計上部品数や構造を任意に変更することができるものに該当する。
【0011】
このようにして本発明の装置では、リコイルばねが圧縮された後、そのばねの弾発力により伸張する際のウエイトの移動に伴って発生する、反作用が銃本体に伝達されるように構成されている。なお、リコイルショックは、ピストンシリンダーに発する力がウエイトに伝わってリコイルばねを圧縮する状態から始まり、弾発力により伸張するそのリコイルばねとともにウエイトが前進するのに伴って顕著になる。そこで、本発明では、リコイルばねの圧縮に伴いウエイトが後退し、その後可動部前進時にウエイトの前進を同調させることにより、僅かなウエイトの移動でも実銃のようなリコイルショックを体感できるように図っている。リコイルショックの発生タイミングは、一般に、ばねが強ければ早まる方にずれ、弱ければ遅れる方にずれると考えられる。
【0012】
さらに本発明のものは、上記ウエイトの移動に伴う反作用を銃本体に生じさせるショック発生モードと、可動部の動きに拘らず反作用が銃本体に伝達されないショック不発生モードとを選択可能にするために、ショック不発生モードにおいては、可動部の後退位置にて可動部と接触しない状態にウエイトを設定するという構成を有する。本発明において、ショック発生モードとショック不発生モードを分けるものは、可動部が後退位置まで移動したときに、その位置に接触すべきウエイトがあるかどうかである。可動部の後退位置にて可動部と接触しない状態にウエイトを設定するために、可動部の後退位置にて接触すべき位置からウエイトを排除することもできる。可動部にウエイトが接触しない状態にとしては、ウエイトが可動部の後退位置よりも後方の接触できない位置にある場合と、ウエイト自体を取り去った場合の両方を含む。
【0013】
上記ウエイトが可動部の後退位置よりも後方の接触できない位置にある場合としては、可動部の後退位置にて可動部と接触しない状態にウエイトを設定するために、ウエイトを前進位置で受け止める部材と当該ウエイトとの間に、可動部と接触しない位置にウエイトを固定するスペーサーを配置する方法がある(請求項2記載の発明)。可動部の後退位置にて可動部と接触しない状態にウエイトを設定するために、ウエイトを可動部と接触しない状態に配置する構成を取ることもできる(請求項3記載の発明)。また、可動部の後退位置にて可動部と接触しない状態にウエイトを設定するために、ウエイトそれ自体を取り外す構成を取ることも可能である(請求項4記載の発明)。この場合、ウエイト分だけ重量バランスが変わるという事実が残る。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、ピストンシリンダーの可動部とウエイトとを別体にしてウエイトをリコイルばねにより駆動するので、ピストン重量を増さなくても増したのと同等のリコイルショックを得ることができ、しかも銃本体に生じさせるショック発生モードと、可動部の動きに拘らず反作用が銃本体に伝達されないショック不発生モードとを選択可能であるので、ショック発生モードにより発射を体感することができるとともに、ショック不発生モードにより命中率の低下を防ぐことも可能であり、実銃のリアリティの追求と命中率の低下という矛盾する要求を満たすことができるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1ないし図4は本発明に係るリコイルショック装置を適用した模擬銃の例1を示すもので、電動発射機構を有するいわゆる電動ガンの構成を備えている。例示のピストンシリンダー装置11は、銃本体10に固定されたシリンダー12とその内部を摺動するピストン13から成り、ピストン13は本発明の例1における可動部であり、このピストン13には機関室後壁に支えられたピストンばね14が作用しており、前方へ弾発力を加えている。
【0016】
ここで電動発射機構について簡単に説明しておく。例示の発射部は、ピストン下部に前後方向に設けたラック15を有し、それに噛み合う歯部と早戻りのための無歯部とから成るセクターギヤ16の1回転でピストンの後退(蓄圧)と、前進(蓄圧の解放によるエアの圧縮)を行うもので、セクターギヤ16は減速歯車組を介してモーター17により駆動される。モーター17は、引き金18を引く操作によって切り換わるスイッチ19によりオンオフされる。セクターギヤ16にはピン21が側方へ向けて植設され(図2、図3等参照)、ピン21との係合によって所要寸法後退する係合部22を有するシア23がシリンダー前方へ伸びていて、シリンダー12の前端のノズル24を、一時的に後退させ、弾丸25を装弾部26へ1発ずつ供給することができるようになっている。このような電動発射機構及びピストンシリンダー装置11は、装弾部26へ弾丸を装填し発射までの操作を行なう機関部20を構成する。
【0017】
図1ないし図7に示す小銃型の玩具銃10の例1におけるリコイルショック装置は、ピストンシリンダー装置11の可動部とその後退方向への移動に連動するウエイト側の部分とから成る連絡部27を具備している。例1における連絡部27は、ピストンシリンダー装置11の可動部であるピストン13の後端部に設定したピストン後部28と、その後方にて係合可能にウエイト後部から突出するように、ウエイト本体と一体に設けたウエイト後部29とから構成されている。上記連絡部27は、ピストン13により伝えられる力を受けて、上記ウエイト30に伝達し、リコイルばね34を圧縮状態になるように作用させている。例1においてウエイト30は機関部20の上方に形成されている摺動室35の内部に組み込まれている。ウエイト30は重錘31と、それを貫通しかつ前後両端部にて銃本体10に取り付けられた中心軸32を有し、重錘31は中心軸上を摺動可能であり、その前後両端の部分にはそれぞれ前後のばね33、34が配置されている。後方のばね34はウエイト30と摺動室35の後壁の間に縮設されており、ウエイト30に作用する力を受けて圧縮されるリコイルばねである。
【0018】
例1において、ウエイト30はそれに作用する力を受けて圧縮されるリコイルばね34によって常時前方の定位置に向けられており、連絡部27を構成するピストン後部28がウエイト後部29と接触することにより、圧縮度が増すように構成されている。ピストン後部28によりウエイト後部29が後退方向へ移動することにより、摺動室35の前壁とウエイト前面36との間に後退距離に応じた空所37を生じさせる。本発明ではショック不発生モードにおいて、可動部であるピストン後部28の後退位置にて接触しない状態にウエイト30を設定する手段として、この空所37にスペーサー38を配置するものとする。さらにスペーサー38の着脱のために、空所37に対応する操作口39を銃本体10に形成し、この部分の外形を整えるために整形カバー40を用意している。
【0019】
例1では、スペーサー38を空所37に配置するためにウエイト30を後退させる手段としてウエイト30に凹部41を設け(図2、図3参照)、そこに差し込む凸部42を有する工具43を使用している。従って、この構成によりショック不発生モードを選択するときは、整形カバー40を外して操作口39からウエイト30を露出させ、その凹部41に凸部42を差し込んでウエイト30を後退させ、生じた空所37にスペーサー38を配置する。また、これとは別にウエイト30に凹凸部44を設けそこに係合する先端45を有する工具46を使用する方法でも良い(図4、図5参照)。この構成により本発明装置をショック不発生モードとする場合には、整形カバー40を外して露出させたウエイト30の凹凸部44に、別の工具46の先端45を係合させてウエイト30を後退させ、生じた空所37にスペーサー38を配置する。
【0020】
上記の構成を有する例1のリコイルショック装置においてショック発生モードを選択するときには、図1、図2又は図4に示されるように、ウエイト30が摺動室35の前壁に接して前進位置にあるから、引き金18を引いて電動発射機構が始動することにより、ピストン13が後退方向へ移動し、このピストン13の動きに連動して連絡部27のピストン後部28がウエイト後部29と接触したときにウエイト30が後退を開始する。その結果、ウエイト30と連絡部27によって連動するピストン13は後退方向に抵抗を受けるようになり、さらに後退するとリコイルばね34の圧縮が進行し、圧縮限界においてウエイト30の荷重が銃本体10に伝わるようになる。圧縮限界を超えるとリコイルばね34は弾発力によって伸張に転じ、それによってウエイト30が前進し、その反作用が反動として射手に感じられることになる。自動銃の場合、このリコイルショックは引き金18を引いている間中、間欠的に発生する。
【0021】
他方、例1のリコイルショック装置においてショック不発生モードを選択する場合は、前述したように、整形カバー40を外して操作口39からウエイト30を露出させ、その凹部41に凸部42を差し込んでウエイト30を後退させ、生じた空所37にスペーサー38を配置するか、或いは工具46の先端45を係合させてウエイト30を後退させ、生じた空所37にスペーサー38を配置する。これによりウエイト30は連絡部27の一部であるウエイト後部29の後退位置にてピストン後部28と接触しない状態(位置)に置かれる(図6A参照)。この状態から引き金18を引き電動発射機構が始動するとピストン13が後退方向へ移動を開始するが(図6B)、図7Aに示すようにピストン13が後退位置まで移動しても連絡部27における連動が生じていないのでピストン後部28がウエイト後部29と接触することはない。従って、ウエイト30は後退位置に置かれたままで、ピストン13の移動とは関係しないから、可動部であるピストン13はピストンばね14によって弾発され、その動きは前進に切り替わり(図7B)、図6Aの初期状態に戻ることになる。
【0022】
図8〜図12は本発明を適用した電動ガンの構成を有する玩具銃の例2を示すものであり、電動発射機構の後方にリコイルショック装置を備えている点において、例1の玩具銃と相違しているが、機関部の構成は例1と同様である。従って例1のものと同様の構成については例1の符号を各図に援用するものとし、詳細な説明は省略する。例2の場合リコイルショック装置は、ピストンシリンダー装置11の後方に連絡孔47を有する隔壁48を設けて配置された摺動室49に組み込まれている。摺動室49はピストン移動軸線の後方延長線上にあり、その内部にウエイト50が配置されている。
【0023】
ウエイト50は重錘51から成り、その前端部に取り付けた着脱可能なバッファーピン52を有している。重錘51は摺動室内を摺動可能であり、その前後両端の部分にそれぞれ前後のばね53、54が配置されている。後方のばね54はウエイト50と摺動室49の後壁を形成するキャップ55との間に縮設されており、ウエイト50に作用する力を受けて圧縮されるリコイルばねである。なお前方のばね53はピストン13と隔壁48との間に縮設されていて、ピストンばね14と兼用されている。
【0024】
56は隔壁前面に取り付けたガイドスリーブで、その内部をバッファーピン52が貫通しており、このバッファーピン先端58は以下に説明するように連絡部57の一方を構成する。即ち例2における連絡部57は、可動部であるピストン13の内部前端に設けたピストン側端部58と、その後方に位置してピストン13の後退位置にて上記のピストン側端部58と接触するバッファーピン側端部59とから構成され、可動部の後退位置にて連絡部57を経て上記ウエイト50に伝えられる力により、リコイルばね54を圧縮している。なお、バッファーピン52はシリンダー後壁に当たる隔壁48を貫通しているので、ピン口にシールリング52aを配置して気密性を得ている。
【0025】
例2において、ピストン13の後退位置にてピストン側端部58と接触が起こらない状態にウエイト50を設定する手段として、可動部の後退位置にて接触すべき位置からウエイトを排除する構成、より具体的にはウエイト50の重錘51を可動部のピストン側端部58と接触しない位置に配置する構成を取る。即ち、図8に示すように、バッファーピン52は大型のピン基部60にて重錘51の前端に形成されている取り付け部61に嵌め込み、留め具62により定位置に固定して、重錘51に着脱可能に設けられている。従って例2においては、連絡部57を構成している端部59を有するバッファーピン52を取り外し、ピストン13の後退位置にてピストン側端部58と接触が起こらない状態にウエイト50を設定するものである。
【0026】
例2のものは、バッファーピン52の取り外しを可能にするために、銃本体10からストック部分63を取り外し可能に形成されている(図9参照)。64は銃本体後端の嵌合部、65は嵌合相手部を夫々示しており、上記嵌合部64を嵌合させるためにストック部分63に設けられている。66は着脱操作のために設けられているストックリリースレバーを示しており、ストック部分63に回転可能に軸支されている。即ち、リリースレバー66を操作して嵌合ピン66aを上記嵌合部64の嵌合部64aから引き抜くことにより(図9B)、銃本体10からストック部分63を取り外す構成である。ストック部分63を取り外すことで、キャップ55を取り外すことが可能になる(図9C)。それによってウエイト50を取り外すことができ(図10A)、取り外したウエイト50の重錘51からバッファーピン52を取り外し(図10B)、重錘51を摺動室49に嵌め込むとともに、ストック部分63を元の通りに組み立て、例2のリコイルショック装置を装備した模擬銃を得る(図10C)。
【0027】
上記の構成を有する例2のリコイルショック装置においてショック発生モードを選択するときには、図11Aに示されるように、ウエイト50はリコイルばね54に付勢され、摺動室49の前壁に接した前進位置にあり、またピストン13もピストンばね53に付勢されシリンダー12の前壁に接した前進位置にある。ここで引き金18を引いて電動発射機構が始動することにより、ピストン13が後退方向へ移動し、このピストン13の動きに連動して連絡部57のピストン側端部58がウエイト50のバッファーピン側端部59と接触するとウエイト30が後退を開始する。その結果、ウエイト50と連絡部57によって連動するピストン13は後退方向に抵抗を受けるようになり、さらに後退するとリコイルばね54の圧縮が進行し、圧縮限界においてウエイト50の荷重が銃本体10に伝わるようになる。圧縮限界を超えると、リコイルばね54は弾発力によって伸張に転じるとともにウエイト50が前進し、その反作用が反動として射手に感じられることになる。
【0028】
他方、例2のリコイルショック装置においてショック不発生モードを選択する場合は、前述したリリースレバー66を操作し、ストック部分63、キャップ55を外してウエイト50を取り出し、バッファーピン52を取り除いてウエイト50を摺動室49に戻し、ストック部分63を再び銃本体10の嵌合部分64に装着する。これによりピストン13は、連絡部57の一部であるピストン側端部58が後退位置に後退しても、ピストン後部28と接触すべき相手の存在しない状態に置かれることになる(図11A参照)。この状態から引き金18を引き電動発射機構が始動すると、ピストン13は後退方向へ移動を開始するが(図11B〜C)、図12Aに示すようにピストン13が後退位置まで移動しても、連絡部57における連動が生じないので、ウエイト50は移動することなく静止した状態を維持する。そしてピストン13のみピストンばね14によって弾発され移動を継続するので、その動きは前進に切り替わり(図12B)、初期状態に戻ることになる(図12C)。
【0029】
図13、図14は本発明を適用した上記例2の電動ガンの構成を有する玩具銃の変形例を示すものであり、可動部の後退位置にて可動部と接触しない状態にウエイトを設定するために、ウエイト50を取り外す構成を取ることを特徴とする。例2では残されていた重錘51も取り外される結果、ピストン13は連絡部57の一部であるピストン側端部58が後退位置に後退しても、ピストンと接触すべき相手の存在しない状態に置かれることになる(図13A等を参照)。従って、引き金18を引き電動発射機構が始動すると、ピストン13は後退方向へ移動を開始するが(図13B〜C)、しかし、図14Aに示すようにピストン13が後退位置まで移動しても、例2と同様に連絡部57における連動が生じないとともに、ウエイト50は取り外されており、ピストン13のみピストンばね14によって弾発され移動を継続するので、その動きは前進に切り替わり(図14B)、初期状態に戻ることになる(図14C)。
【0030】
このように本発明は、銃本体10に生じさせるショック発生モードと、可動部の動きに拘らず反作用が銃本体10に伝達されないショック不発生モードとを選択可能であるので、希望する場合にはリコイルショックを体感することができるが、希望しない場合にはショック不発生モードに変換して命中率の低下を防ぐことができる。よって、リコイルショックを望んでリコイルショック付きの模擬銃を購入したものの命中率への影響まで想定できなかった者もリコイルショックを解除することによりリコイルショックなしの模擬銃に変更可能であるから不満なく使用することができ、1機種でも実銃のリアリティの追求と命中率の低下という矛盾する要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るリコイルショック装置を適用した玩具銃の1例を示す縦断面図。
【図2】同上装置の例1においてショック不発生モードに変換する過程の説明図。
【図3】図2に続くショック不発生モードに変換する過程の説明図。
【図4】同上装置の例1においてショック不発生モードに変換する他の過程の説明図。
【図5】図2に続くショック不発生モードに変換する他の過程の説明図。
【図6】同上装置の例1においてショック不発生モードの作動状態を示すもので、Aは作動前の状態、Bはピストンが後退を始めた状態を示す断面説明図。
【図7】図6に続く作動状態を示すもので、Aはピストンの後退位置の状態、Bはピストンが前進に転じた状態を示す断面説明図。
【図8】同上装置の例2を拡大して示す縦断面図。
【図9】同上装置の例2においてショック不発生モードに変換する過程A、B、Cを示す説明図。
【図10】図9に続く過程A、B、Cを示す説明図。
【図11】同上装置の例2においてショック不発生モードの作動状態を示すもので、Aは作動前の状態、Bはピストンが後退を始めた状態、Cはさらにピストンが後退した状態を示す断面説明図。
【図12】図11に続く過程を示すもので、Aはピストンの後退位置の状態、Bはピストンが前進に転じた状態、Cは原位置への復帰状態を示す断面説明図。
【図13】同上装置の例2の変形例においてショック不発生モードの作動状態を示すもので、Aは作動前の状態、Bはピストンが後退を始めた状態、Cはさらにピストンが後退した状態を示す断面説明図。
【図14】図13に続く過程を示すもので、Aはピストンの後退位置の状態、Bはピストンが前進に転じた状態、Cは原位置への復帰状態を示す断面説明図。
【符号の説明】
【0032】
10 玩具銃
11 ピストンシリンダー装置
12 シリンダー
13 ピストン
14 ピストンばね
15 ラック
16 セクターギヤ
20 機関部
21 ピン
22 係合部
23 シア
24 ノズル
25 弾丸
26 装弾部
27、57 連絡部
28 ピストン後部
29 ウエイト後部
30、50 ウエイト
31、51 重錘
32 中心軸
33、34 ばねである弾性体
35、49 摺動室
37 空所
38 スペーサー
39 操作口
40 整形カバー
41 凹部
42 凸部
43、46 工具
44 凹凸部
45 先端
47 連絡孔
48 隔壁 他端
52 バッファーピン
53、54 ばね
55 キャップ
56 ガイドスリーブ
58 ピストン側端部
59 ウエイト先端部
60 基部
61 取り付け部
62 留め具
63 ストック部分
64 嵌合部
65 嵌合相手部
66 ストックリリースレバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮エアを生成するピストンシリンダー装置を銃本体に装備し、上記ピストンシリンダー装置を構成する可動部の動きに連動するウエイトの移動により反動を得るためのリコイルショック装置であって、
ピストンシリンダー装置の可動部とその後退方向への移動に連動するウエイト側の部分とから成る連絡部を具備するとともに、可動部から上記連絡部を経て上記ウエイトに伝えられる力を受けて圧縮されるリコイルばねを設け、
上記ウエイトの移動に伴う反作用を銃本体に生じさせるショック発生モードと、可動部の動きに拘らず反作用が銃本体に伝達されないショック不発生モードとを選択可能にするために、ショック不発生モードにおいては、可動部の後退位置にて可動部と接触しない状態にウエイトを設定したことを特徴とする
模擬銃におけるリコイルショック装置。
【請求項2】
可動部の後退位置にて可動部と接触しない状態にウエイトを設定するために、ウエイトを前進位置で受け止める部材と当該ウエイトとの間に、可動部と接触しない位置にウエイトを固定するスペーサーを配置して成る請求項1記載の模擬銃におけるリコイルショック装置。
【請求項3】
可動部の後退位置にて可動部と接触しない状態にウエイトを設定するために、ウエイトを可動部と接触しない状態に配置する構成を取る請求項1記載の模擬銃におけるリコイルショック装置。
【請求項4】
可動部の後退位置にて可動部と接触しない状態にウエイトを設定するために、ウエイトを取り外す構成を取る請求項1記載の模擬銃におけるリコイルショック装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−138979(P2009−138979A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314003(P2007−314003)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(592153584)株式会社東京マルイ (29)
【Fターム(参考)】