模様付き不織布及びその製造方法
【課題】 明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定した状態の模様付き不織布及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 多数の開口を有し且つ移送可能な開口支持体の上に載置した繊維ウエブを前記開口支持体によって移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造する方法であって、前記開口支持体はその投影図において互いの最短距離が2mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有しており、前記繊維ウエブに熱接着性繊維を5〜25質量%含有させ、且つ前記蒸気の温度を前記熱接着性繊維の融点以上とする模様付き不織布の製造方法。及びその製造方法による模様付き不織布。
【解決手段】 多数の開口を有し且つ移送可能な開口支持体の上に載置した繊維ウエブを前記開口支持体によって移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造する方法であって、前記開口支持体はその投影図において互いの最短距離が2mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有しており、前記繊維ウエブに熱接着性繊維を5〜25質量%含有させ、且つ前記蒸気の温度を前記熱接着性繊維の融点以上とする模様付き不織布の製造方法。及びその製造方法による模様付き不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維ウエブに蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造するに好適な模様付き不織布の製造方法、及びその製造方法による模様付き不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維ウエブに蒸気を噴射することにより不織布を製造する方法が知られており、例えば特許文献1には、加圧蒸気噴出ノズルを用いて、一方向に走行する多孔の繊維ウエブ担持移送手段に載置した繊維ウエブの幅方向に沿って多数のノズル孔から加圧蒸気を連続して噴射することにより構成繊維を交絡させる不織布の製造方法が記載されている。この方法によれば、蒸気噴出ノズルから噴出する過熱蒸気は飽和蒸気圧の下で飽和温度以上の温度にまで高温化された蒸気であり、飽和温度と過熱温度との中間では凝縮液化しにくくなる。そのため、蒸気噴出ノズルから噴出する過熱蒸気は繊維ウエブに当たっても凝縮することなく、その内部まで浸入して貫通し、周辺の繊維を加熱しながら交絡させる。その結果、この加熱蒸気の通過により繊維の交絡と熱セットとが同時に行われるようになることが記載されている。
【0003】
また、前述の多孔の繊維ウエブ担持移送手段として、例えば金網やパンチングメタルを使うことができ、その各移送手段のメッシュ度を20〜40(個/2.54cm)とすることが望ましいことが記載されている。また、加圧蒸気噴出ノズルの前位置に加圧高温空気の噴出装置を設けておき、さらに繊維ウエブの構成繊維の一部に低融点の繊維を混在させておき、加圧蒸気の付与に先立って加圧空気を付与して、繊維ウエブの面近くの構成繊維に含まれる低融点の繊維を溶融させて周辺の繊維同士に融着して、繊維ウエブの表面形態を安定化させることも可能であることが記載されている。
【0004】
なお、先述のような繊維ウエブに蒸気を噴射する方法とは異なり、多孔の繊維ウエブ担持移送手段に載置した繊維ウエブに柱状の高圧水流を噴射して繊維を交絡させる方法が知られている。後者の方法の場合、繊維ウエブ担持移送手段の開口部に水流により繊維が押し込められると共に繊維が高度に交絡すると考えられる。これに対して、前者の方法の場合、蒸気が繊維ウエブ担持移送手段の非開口部に衝突して横方向に広がる力により繊維ウエブ担持移送手段の開口部に繊維が集まると共に繊維が前者の水流による場合と比較して軽度に交絡すると考えられる。
【0005】
しかし、先述のように、特許文献1は繊維の交絡と熱セットとを同時に行なう技術であり、特許文献1に記載された技術によって明確な模様の付いた不織布を製造することはできなかった。すなわち、特許文献1では、移送手段のメッシュ度を20〜40(個/2.54cm)とすることが望ましいことが記載されている。この場合、20メッシュの金網を示す図17を用いて説明すると、移送手段のメッシュ度が2.54cmあたり20個の場合、2.54cmを20等分することになり、この結果、移送手段のメッシュを構成する織網の太さが限りなく0に近い値をとったとしても、開口の1辺l(またはm)の長さは0.127cm(2.54cm÷20=0.127cm)を超えることはない。また、1つの開口と、この開口の斜め方向にある隣接する開口との間の距離cは、0.18cm(0.127cm×1.41=0.18cm)を超えることはない。そこで、このような小さい開口に繊維が多数集まることができず、また仮に繊維が多少集まっても、繊維の多少による模様が細かすぎ、目視により明確な模様として認識することができない。また、非開口部を形成する織網の織糸の太さb1(またはb2)は0.127cm(2.54cm÷20=0.127cm)を超えることはない。したがって、蒸気がこの非開口部に衝突して横方向に広がる力が極めて弱く、繊維ウエブの繊維の移動がなされないか、または繊維の移動量が極めて少なくなり、この理由によっても、目視により明確な模様として認識することができない。
【0006】
さらに、模様付きの不織布を製造する場合の問題点を検討すると、模様付きの不織布を製造する場合、繊維ウエブ中の繊維が移動することが必要であり、この点で繊維を容易に移動可能な蒸気を噴射する技術を利用することが有利であると考えられる。すなわち、必要とする模様に対応する開口を設けた移送可能な開口支持体の上に載置した繊維ウエブに蒸気を噴射する方法を適用することが好ましい。しかし、この方法によって不織布に模様が形成されたとしても、繊維の交絡が軽度であるため形態安定性に欠けるという問題があり、繊維を固定することによりその模様を固定する必要がある。そこで、繊維ウエブに予め低融点の繊維を混在させておき、加圧蒸気の付与によって、繊維の移動による模様の形成と繊維交点の接着とを同時に行うことが考えられる。しかし、低融点の繊維により繊維交点が接着すると繊維が固定されてしまい、繊維の移動が妨げられてしまうという問題があり、この結果目的とする模様が形成されないという問題があった。あるいは低融点の繊維が溶融すると繊維表面の滑りが悪くなり、繊維の移動が妨げられてしまうという問題があり、この結果目的とする模様が形成されないという問題があった。
【0007】
なお、加圧蒸気の温度を下げて繊維の移動のみを行い、その後に高温の蒸気を吹き付けることも考えられるが、この方法の場合、蒸気を2度噴射することが必要となり、コストアップの要因となるという問題があった。また、この方法の場合、開口部に繊維が移動して開口部の繊維密度が上昇した後の高温の蒸気吹き付ける加熱処理となるため、繊維の内部まで充分に加熱されず、表面付近の低融点繊維だけが溶融してしまい、表面が硬くなる一方内部や反対面は繊維の固着が不充分になってしまうという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−238785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決し、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定した状態の模様付き不織布及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、多数の開口を有し且つ移送可能な開口支持体の上に載置した繊維ウエブを前記開口支持体によって移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造する方法であって、前記開口支持体はその投影図において互いの最短距離が2mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有しており、前記繊維ウエブに熱接着性繊維を5〜25質量%含有させ、且つ前記蒸気の温度を前記熱接着性繊維の融点以上とすることを特徴とする模様付き不織布の製造方法であり、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定した状態の模様付き不織布を提供することが可能となる。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記開口支持体が、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を複数対含んでおり、一対の隣接する開口の最短距離が他の一対の隣接する開口の最短距離と異なることを特徴とする請求項1に記載の模様付き不織布の製造方法であり、複雑な模様が形成された意匠性のある模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0012】
請求項3に係る発明は、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を含む複数の開口を前記開口支持体に配置することにより、1つの模様を形成した区域を設け、さらに前記区域と同じ模様の区域を前記開口支持体に複数繰り返して設けることを特徴とする請求項1または2に記載の模様付き不織布の製造方法であり、意匠性のある模様が繰り返し形成された模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記繊維ウエブを前記開口支持体と移送可能な開口押圧体との間で挟持して移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の模様付き不織布の製造方法であり、表面状態が特に優れるとともにより明確な模様が形成された模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れかに記載の模様付き不織布の製造方法によって形成されたことを特徴とする模様付き不織布である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定した状態の模様付き不織布及びその製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の模様付き不織布の製造方法は、本発明の模様付き不織布の製造に好適な装置の一例である図1の模様付き不織布の製造装置10を用いて説明すると、多数の開口を有し且つ移送可能な開口支持体11の上に載置した繊維ウエブ12を前記開口支持体11によって矢印Aの方向へ移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布18を製造する方法である。
【0017】
前記模様付き不織布の製造装置10は、多数の開口を有し且つ移送可能なエンドレスベルトからなる開口支持体11と、この開口支持体11を駆動回転する駆動ロール16又は17と、開口支持体11と互いに同期して駆動回転するエンドレスベルトからなる開口押圧体15と、開口支持体11と開口押圧体15の間に狭持された繊維ウエブ12に対して開口押圧体15を介して蒸気を噴出する蒸気噴出ノズル13と、蒸気噴出ノズル13から噴出された蒸気を、開口支持体11を介して吸引する吸引手段14とからなっており、駆動ロール16又は17によって回転する開口支持体11に載置した繊維ウエブ12は、回転に伴い開口支持体11と開口押圧体15の間に狭持されるようになっており、繊維ウエブ12が狭持されている間に、蒸気噴出ノズル13から繊維ウエブに向けて蒸気が噴出され、繊維ウエブ12を通過した蒸気が吸引手段14によって吸引されるようになっている。なお、図1の模様付き不織布の製造装置10では、開口支持体11は多数の開口を有し且つ移送可能なエンドレスベルトから構成されているが、この開口支持体11の代わりに多数の開口を有し且つ移送可能な回転ドラムから構成されていることも可能である。
【0018】
前記模様付き不織布の製造装置10においては、前記繊維ウエブを前記開口支持体と移送可能な開口押圧体との間で挟持して移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することが可能となっているが、このような方法によって、蒸気の噴射によって繊維ウエブの表面が乱れることが防止できるので、表面状態が特に優れるとともにより明確な模様が形成された模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0019】
前記蒸気噴出ノズル13は蒸気噴出口内径が0.05〜1mmであることが好ましく、また蒸気噴出口間のピッチが0.5〜3mmであることが好ましい。なお、蒸気噴出口がスリット状の噴出口であることも可能である。また、前記蒸気噴出ノズル13から蒸気を噴出させる場合、蒸気噴出ノズル13に導入される蒸気圧は0.1〜2MPaであることが好ましく、また、この蒸気は過熱蒸気であることが好ましい。このような蒸気圧により蒸気を繊維ウエブの表裏に確実に貫通させることができるという効果がある。なお、蒸気は水蒸気であることが実用上好ましく、水蒸気であれば蒸気の温度は105〜240℃程度であることが好ましい。
【0020】
また、開口支持体11からの距離である蒸気噴出ノズル13の高さは、開口支持体11と開口押圧体15との間の距離に近似しているが、この蒸気噴出ノズル13の高さは、繊維ウエブの厚さにもよるが、0.5〜40mm程度が好ましい。
【0021】
前記開口支持体11は、繊維ウエブ12に模様が形成されるように多数の開口が設けられている。この開口の態様としては、例えば、プラスチックネットや金網などからなる織網の開口部を目止めすることにより、織糸の太さよりも太い蒸気不透過部を設けたり、あるいは元の織網が有する蒸気不透過部、すなわち織網の織糸部分の面積よりも蒸気不透過部の面積を大きくして模様を明確に形成することを可能とした形態がある。なお、この織網の目の粗さは繊維ウエブ12を載置し易く、且つ蒸気が通過し易いようにメッシュ度が8〜40(個/2.54cm)であることが好ましい。
【0022】
前述の目止めの方法としては、例えば溶融樹脂または液状樹脂を織網の開口部分に付着させ固化させることにより、樹脂の埋め込みや樹脂皮膜によって特定の模様が形成されるようにした形態がある。液状樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂などを利用することができる。また、例えば糸の配置や糸の太さの違いによって模様が形成された織物や編み物、あるいは刺繍が施された織物や編み物を織網に接着固定して得られる形態がある。また、織物や編み物の開口部分に溶融樹脂または液状樹脂を付着させ固化させることにより、樹脂の埋め込みや樹脂皮膜によって織物や編み物に特定の模様を形成させた後に、この織物や編み物を織網に接着固定して得られる形態がある。また、樹脂フィルムまたは樹脂シートなどを切り抜くことにより、多数の開口を形成した後、この開口が設けられた樹脂フィルムまたは樹脂シートを織網に接着固定して得られる形態がある。なお、水流絡合の場合はこのような目止めした織網を用いると織編み物が水流の力で破損したり、織編み物に繊維ウエブが絡みこんだりする問題があるが、蒸気の場合は織編み物が破損したり、織編み物に繊維ウエブが絡みこんだりするリスクが極めて少ない。
【0023】
また、前記開口支持体が回転ドラムから構成されている場合は、金属製のドラムなどに目的とする模様に応じて開口部を設けると共に蒸気不透過部を設けて開口支持体を形成することができる。
【0024】
本発明では、前記開口支持体は多数の開口を有しているが、この開口の大きさは繊維ウエブ12を載置し易く、且つ蒸気が通過し易いように、開口支持体が織網の場合は、そのメッシュ度が8〜40(個/2.54cm)であることが好ましい。また、開口の面積としては10mm2〜0.1mm2であることが好ましい。また、開口支持体が金属ドラムの場合は、開口が8〜40(個/2.54cm)になるように開口を設けることが好ましい。また、開口の面積としては10mm2〜0.1mm2であることが好ましい。
【0025】
本発明では、前記開口支持体は、図2に例示するように、その投影図において互いの最短距離が2mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有している。ここで、「隣接する開口」とは、特定の開口に対して、その周囲に位置する開口のことを意味している。周囲とは、移送方向に対して前後、左右、及び斜め方向に位置する8個以下の数の開口を指し、8個を超える場合は、近くに位置する開口を選択するものとする。また、8個未満であっても、特定の開口の周囲の二つの開口の間にあり、しかもその二つの開口の後ろ側にあり、二つの開口の何れかに隠れる位置にある開口は隣接する開口から除外する。また、「最短距離」とは一対の隣接する開口の各辺同士を結ぶ直線、頂点同士を結ぶ直線、弧同士を結ぶ直線、辺と頂点を結ぶ直線、辺と弧を結ぶ直線、又は頂点と弧を結ぶ直線のうち、最も短い直線の長さで表すことができる。
【0026】
本発明では、互いの最短距離が2mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有しているので、非開口部である蒸気不透過部分の幅または面積が大きくなる。このため、この蒸気不透過部分の上に載置された繊維に対して、蒸気が噴射されると、蒸気が非開口部に衝突して横方向に広がる力が大きくなり、開口部への繊維の移動量が多くなり、この結果、多数の繊維が開口部に集まることになり、明確な模様が形成される。このようにして、明確な模様が形成された模様付き不織布を製造することが可能になる。本発明では、互いの最短距離が2mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有しているが、互いの最短距離が3mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有していることが好ましく、互いの最短距離が4mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有していることがより好ましく、互いの最短距離が5mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有していることが更に好ましい。なお、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を有していない場合は、明確な模様が形成された模様付き不織布を製造することができなくなる。
【0027】
また、本発明では、前記開口支持体が、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を複数対含んでおり、一対の隣接する開口の最短距離が他の一対の隣接する開口の最短距離と異なることが好ましく、複雑な模様が形成された意匠性のある模様付き不織布を得ることができるという利点がある。より好ましくは、前記開口支持体が、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を3対以上含んでおり、このような形態であれば、より複雑な模様が形成された意匠性のある模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0028】
本発明を、具体例を用いて説明すると、図2では、一種類の形の開口からなる開口支持体の例を示しており、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して前後、左右、及び斜め方向に位置するB1、B2、B3、B4、C1、C2、C3及びC4があり、これら8個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4となっている。図2では、c1、c2、c3及びc4の長さが最も長く、それらの長さと比較してb3及びb4の長さが短くなっており、b1及びb2の長さが更に短くなっている。そして、本発明では、b1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。なお、図2の開口の形態は、エンドレスベルト型の開口支持体または回転ドラム型の開口支持体に設けることが好ましい。
【0029】
また、図3では、二種類の形の開口からなる開口支持体の例を示しており、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して前後、左右、及び斜め方向に位置するB1、B2、B3、B4、C1、C2、C3及びC4があり、これら8個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4となっている。そして図3では、c1、c2、c3及びc4の長さが最も長く、それらの長さと比較してb1及びb2の長さが短くなっており、b3及びb4の長さが更に短くなっている。そして本発明では、b1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。なお、図3の開口の形態は、エンドレスベルト型の開口支持体または回転ドラム型の開口支持体に設けることが好ましい。
【0030】
また、図4では、三種類以上の多数の形の開口からなる開口支持体の例を示しており、複雑な模様を形成するのに好適である。この図では、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して前後、左右、及び斜め方向に位置するB1、B2、B3、B4、C1、C2、C3及びC4があり、これら8個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4となっている。そして図4では、b1の長さが最も長く、それらの長さと比較してb4及びc3の長さがこの順に短くなっており、c1、c2、c4、b2及びb3の長さが更に短くなっている。そして本発明では、b1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。なお、図4の開口の形態は、エンドレスベルト型の開口支持体または回転ドラム型の開口支持体に設けることが好ましい。
【0031】
また、図5では、二種類の形の開口からなる開口支持体の例を示しており、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して前後、及び左右方向に位置するB1、B2、B3、B4、B5及びB6があり、これら6個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、b3、b4、b5、及びb6となっている。そして図5では、b1、b2、b3及びb4の長さが最も長く、それらの長さと比較してb5及びb6の長さが短くなっている。そして本発明では、b1、b2、b3、b4、b5、及びb6のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。なお、図5の開口の形態は、回転ドラム型の開口支持体に設けることが好ましい。
【0032】
また、図6では、一種類の形の開口からなる開口支持体の例を示しており、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して左右、及び斜め方向に位置するB1、B2、C1、C2、C3及びC4があり、これら6個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、c1、c2、c3、及びc4となっている。そして図6では、b1、b2、c1、c2、c3、及びc4の長さは同一であり、b1、b2、c1、c2、c3、及びc4のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。なお、図6の開口の形態は、回転ドラム型の開口支持体に設けることが好ましい。
【0033】
本発明では、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を含む複数の開口を前記開口支持体に配置することにより、1つの模様を形成した区域を設け、さらに前記区域と同じ模様の区域を前記開口支持体に複数繰り返して設けることが可能であり、このような方法によって、意匠性のある模様が繰り返し形成された模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0034】
前述の、前記区域と同じ模様の区域を前記開口支持体に複数繰り返して設ける具体例を、図7を用いて説明すると、図7では、三種類以上の多数の形の開口からなる開口支持体の例を示しており、複雑な模様を形成するのに好適である。この図では、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して前後、及び斜め方向に位置するB1、B2、B3、B4、C1及びC2があり、これら6個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、b3、b4、c1、及びc2となっている。そして図7では、b3の長さが最も長く、それらの長さと比較してb1、b2、b4、c1、及びc2の長さが短くなっている。そして本発明では、b1、b2、b3、b4、c1及びc2のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。そして、図7では、開口A、B1、B2、B3、B4、C1及びC2からなる1つの模様を形成した区域が、開口支持体に設けられており、この区域と同じ模様の区域が前記開口支持体に前後、左右、斜め方向の位置に6個繰り返して設けられている。なお、図7の開口の形態は、エンドレスベルト型の開口支持体または回転ドラム型の開口支持体に設けることが好ましい。
【0035】
なお、図7では、開口Aと一対を形成する開口B1、B2、B3、B4、C1及びC2の組合せにより、本発明の構成が成り立つことを説明したが、図7における開口C1とその周囲の開口の組合せによっても、本発明の構成が成り立つ。その例を図8により説明すると、図8では、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して前後、左右及び斜め方向に位置するB1、B2、B3、B4、C1、C2、C3及びC4があり、これら6個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4となっている。そして図8では、c3の長さが最も長く、それらの長さと比較してb4、c4、c1、b1の順に長さが短くなっており、b2、b3及びc2が更に短くなっている。そして本発明では、b1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。
【0036】
本発明では、多数の開口を有し且つ移送可能な開口支持体の上に載置した繊維ウエブを前記開口支持体によって移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造する方法であり、前記繊維ウエブに熱接着性繊維を5〜25質量%含有させ、且つ前記蒸気の温度を前記熱接着性繊維の融点以上とする。
【0037】
前記繊維ウエブとしては、熱接着性繊維を5〜25質量%含有しているかぎり特に限定されず、前記繊維ウエブは、通常不織布の製法として知られる例えば乾式法や湿式法などによって得られる不織布の製法に使用される繊維ウエブを適用することができる。このうち、乾式法であれば、例えばカード機やエアレイ装置などを使用して、予めクリンプ加工がなされたステープル繊維の形態をした、前記熱接着性繊維を含む繊維原綿を開繊して繊維フリースとした後、この繊維フリースを一方向に、或いはクロスレイなどにより積層して、前記熱接着性繊維を含む繊維ウエブを形成しておき、その後前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造する方法を採用することができる。
【0038】
乾式法であれば、繊維長が15〜100mm程度の、捲縮数が5〜30個/インチ程度を有するステープル繊維を用いることになり、繊維長が比較的短いため、蒸気を噴射することにより繊維が移動し易いため、明確な模様が形成され易いという利点があり、また、熱接着性繊維を均一に混入させることができるので、接着の際にむらが少なく、模様がより安定した状態の模様付き不織布を得ることができるという利点がある。また、他の機能性のある繊維を混入することも容易であり、厚さ、面密度、物性などを広範囲に選択でき、目的とする用途にきめ細かく対応した模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0039】
また、湿式法による場合は、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、又は長網・円網コンビネーション方式の抄紙機などを用いて、カットした形態の前記熱接着性繊維を含む原料繊維をスラリー化させ、このスラリーから繊維シートを漉き上げて、前記熱接着性繊維を含む繊維ウエブを形成しておき、その後前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造する方法を採用することができる。
【0040】
湿式法であれば、繊維長が15mm程度以下のカット繊維を用いることになり、繊維長が短いため、蒸気を噴射することにより繊維が更に移動し易いため、明確な模様が形成され易いという利点があり、また、熱接着性繊維を均一に混入させることができるので、接着の際にむらが少なく、模様がより安定した状態の模様付き不織布を得ることができるという利点がある。また、他の機能性のある繊維を混入することも容易であり、目的とする用途に対応した模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0041】
前記熱接着性繊維としては、蒸気の噴射によって熱接着性が生じる限り、特に限定されず、例えば、繊維ウエブ中に含まれる他の繊維よりも融点が低い樹脂成分が1種類のみから形成された熱接着性繊維であることが可能である。また、低融点成分と高融点成分とからなり、低融点成分が繊維の表面の少なくとも一部に露出している複合繊維からなる熱接着性繊維であることが可能である。このような複合繊維としては、例えば、芯鞘型、サイドバイサイド型、断面が2成分以上の樹脂で分割されたオレンジ型、海島型の複合繊維などがある。
【0042】
また、前記熱接着性繊維の材質としても、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系樹脂およびポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂などを挙げることができる。また、複合繊維の場合、これらの樹脂の中から同じ種類の樹脂成分を選んで構成することも可能であり、異なる樹脂成分を選んで構成することも可能である。
【0043】
本発明では、前記熱接着性繊維が1種類の樹脂成分からなる場合は、繊維ウエブ中に含まれる他の繊維の中で最も低い融点を有する繊維の融点よりも融点が低いことが必要である。このような、熱接着性繊維または低融点成分と高融点成分とからなり、低融点成分が繊維の表面の少なくとも一部に露出している複合繊維からなる熱接着性繊維を繊維ウエブに含むことによって、当該熱接着性繊維の融点以上の温度の蒸気を、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより、明確な模様を形成すると共に、繊維ウエブの表面および内部においても共に繊維を固定して、模様が安定した状態の模様付き不織布を形成することができる。なお、前記熱接着性繊維は他の繊維の融点よりも5℃以上低いことが好ましく、10℃以上低いことがより好ましく、15℃以上低いことが更に好ましい。5℃未満であると、当該接着性繊維を含む繊維ウエブに蒸気を噴射した際に、加熱温度にばらつきがあると、複合繊維全体が溶融してしまい、明確な模様のある不織布を形成できない場合がある。
【0044】
本発明では、前記繊維ウエブに熱接着性繊維を5〜25質量%含有させることが必要であり、熱接着性繊維を5〜20質量%含有させることが好ましく、熱接着性繊維を5〜15質量%含有させることがより好ましく、熱接着性繊維を10〜15質量%含有させることが更に好ましい。前記繊維ウエブに熱接着性繊維を5〜25質量%含有させることにより、加圧蒸気の付与によって、繊維の移動による模様の形成と繊維交点の接着とを同時にスムーズに行なうことができる。すなわち、熱接着性の繊維により繊維交点が多数接着して繊維が固定されるということがないので、繊維の移動が容易となる。この結果目的とする明確な模様が形成される。あるいは熱接着性の繊維が溶融しても繊維表面の滑りが悪くなるという問題が生じないので、繊維の移動が容易となる。この結果目的とする明確な模様が形成される。また、明確な模様の形成と同時に熱接着性繊維により構成繊維が結合されるので、表面や内部の繊維が充分に固定され、模様が変形する恐れがなく明確な模様が安定した模様付き不織布を製造することができる。熱接着性繊維の含有量が5質量%未満の場合は、表面や内部の繊維が充分に固定されず、模様が安定せず、変形し易いという問題がある。また、熱接着性繊維の含有量が25質量%を超える場合は、加圧蒸気の付与によって、繊維の移動による模様の形成と繊維交点の接着とを同時に行うことがスムーズに実行されなくなる。すなわち、熱接着性の繊維により繊維交点が多数接着すると繊維が固定されてしまい、繊維の移動が妨げられてしまうという問題が発生する。この結果目的とする模様が形成されないという問題が発生する。あるいは多数の熱接着性の繊維が溶融すると繊維表面の滑りが悪くなり、繊維の移動が妨げられてしまうという問題が発生し、この結果目的とする模様が形成されないという問題が発生する。
【0045】
本発明では、前記繊維ウエブに熱接着性繊維以外の繊維を含むことが可能であり、含有可能な繊維としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維およびポリビニルアルコール繊維などの合成繊維に限らず、レーヨンなどの半合成繊維、あるいは綿、セルロース系繊維などの天然繊維を挙げることができる。
【0046】
また、熱接着性繊維以外の繊維として、潜在捲縮性繊維を含むことも可能であり、潜在捲縮性繊維を含有することで、蒸気の噴出に伴い潜在捲縮性繊維の捲縮が発現して、繊維ウエブの表面および内部においても共に繊維が絡まり、模様がより安定した状態の模様付き不織布を形成することができる。このような潜在捲縮性繊維としては、融点の異なる複数の樹脂が複合された複合繊維や、繊維の一部に特定の熱履歴を施した繊維が使用される。複合繊維には、例えば偏心型の芯鞘構造のものや、サイドバイサイド型の複合繊維が好適に用いられる。融点の異なる樹脂の組み合わせとして、ポリエステル−低融点ポリエステル、ポリアミド−低融点ポリアミド、ポリエステル−ポリアミド、ポリエステル−ポリプロピレン、ポリプロピレン−低融点ポリプロピレン、ポリプロピレン−ポリエチレンなど種々の合成樹脂を組み合わせたものが使用できる。
【0047】
前記潜在捲縮繊維は、蒸気の噴出によって捲縮発現を効率的に実施し得る105〜240℃程度の捲縮発現温度で自由収縮させた場合に、初期捲縮数に較べて2倍以上の捲縮数にまで達するものが望ましい。具体的には、加熱処理によって、例えば50個/インチ以上の比較的高い捲縮数を発現することが望ましい。
【0048】
本発明では、多数の開口を有し且つ移送可能な開口支持体の上に載置した繊維ウエブを前記開口支持体によって移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより、明確な模様を形成させつつ、前記繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって、構成繊維を結合するが、この結合を確実なものとするため、さらに後工程によって、加熱処理を行い、模様をさらに安定させることも可能である。加熱処理の方法としては、一対の加熱ロールの間を通過させる方法や、乾燥機の中を通過させる方法や、テンター加工などの方法などがある。
【0049】
本発明の模様付き不織布は、前述の模様付き不織布の製造方法によって形成されたことを特徴とする模様付き不織布であり、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定した状態の模様付き不織布である。本発明の模様付き不織布の具体例としては、図9〜図12に例示するように、図9の開口支持体を用いて得られた図10の模様付き不織布、及び図11の開口支持体を用いて得られた図12の模様付き不織布があり、これらの模様付き不織布では、開口支持体の開口部分にあたる部分の繊維ウエブの密度が高くなっており、開口支持体の蒸気不透過部分にあたる部分の繊維密度が低くなっており、繊維密度の濃淡によって、明確な模様が形成されている。また、繊維密度が高い部分と他の繊維密度が高い部分とに繊維がまたがっており、いいかえれば繊維密度が高い部分と他の繊維密度が高い部分とを繊維によって連結している形態となっており、この繊維によって連結している部分が、繊維密度の低い部分となっている。
【0050】
以上説明したように、本発明によって、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定した状態の模様付き不織布及びその製造方法を提供することが可能となった。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本願発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
熱接着性繊維として、2.2デシテックスの複合繊維(繊維長51mm、芯鞘型で鞘部は融点135℃の変性ポリエステル樹脂、芯部はポリエチレンテレフタレート樹脂)からなる熱接着性繊維Aを準備した。次いで、25質量%の熱接着性繊維Aと75質量%の1.7デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維(繊維長38mm)とを混合して、カード機とクロスレイヤー装置を使用して、クロスレイ繊維ウエブを作製した。
また、直径約0.6mmのワイヤーが平織りに編まれたメッシュ度が10メッシュからなる金網製のエンドレスベルトを設けた図1に示す模様付き不織布の製造装置10のエンドレスベルト上に、図9に示すような、樹脂フィルムに対して12×17mmの大きさの四角形を格子状に切り貫いて形成した開口支持部材を載置して、開口支持体Aとした。
次いで、上記繊維ウエブを開口支持体A11の上に載置して、3m/分の速度で移送させ、開口支持体11と開口押圧体15の間(1.2mmに設定)に狭持しながら、蒸気噴出ノズル13から繊維ウエブに向けて蒸気圧1MPaに設定した175℃の水蒸気を繊維ウエブに対して噴出させ、繊維ウエブ12を通過した蒸気が吸引手段14によって吸引されるようにして、図10に示す模様が形成された面密度80g/m2の模様付き不織布を得た。
この模様付き不織布には、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定していた。
【0053】
(実施例2)
7質量%の熱接着性繊維Aと93質量%の1.7デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維(繊維長38mm)とを混合して、カード機とクロスレイヤー装置を使用して、クロスレイ繊維ウエブを作製したこと、及び図11に示すような、樹脂フィルムに対して一辺が22mmの大きさのひし形を千鳥状に切り貫いて形成した開口支持部材を載置して、開口支持体Bとしたこと以外は、実施例1と同様にして図12に示す模様が形成された面密度100g/m2の模様付き不織布を得た。
この模様付き不織布には、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定していた。
【0054】
(実施例3)
直径約0.6mmのワイヤーが平織りに編まれたメッシュ度が10メッシュからなる金網製のエンドレスベルトを設けた図1に示す模様付き不織布の製造装置10のエンドレスベルト上に、図13に示すような刺しゅうが施された編み物からなる開口支持部材を載置して、開口支持体Cとしたこと以外は実施例1と同様にして、図14に示す模様が形成された面密度81g/m2の模様付き不織布を得た。なお、上記編み物は、刺しゅう糸が重なり又は束となり幅2mm以上の太さになった部分を多数有していた。
この模様付き不織布には、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定していた。
【0055】
(実施例4)
直径約0.6mmのワイヤーが平織りに編まれたメッシュ度が10メッシュからなる金網製のエンドレスベルトを設けた図1に示す模様付き不織布の製造装置10のエンドレスベルト上に、図15に示すような刺しゅうが施された編み物からなる開口支持部材を載置して、開口支持体Dとしたこと以外は実施例1と同様にして、図15に示す模様が形成された面密度78g/m2の模様付き不織布を得た。なお、上記編み物は、刺しゅう糸が重なり又は束となり幅2mm以上の太さになった部分を多数有していた。
この模様付き不織布には、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定していた。
【0056】
(比較例1)
30質量%の熱接着性繊維Aと70質量%の1.7デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維(繊維長38mm)とを混合して、カード機とクロスレイヤー装置を使用して、クロスレイ繊維ウエブを作製したこと以外は、実施例1と同様にして面密度79g/m2の模様付き不織布を得た。
この模様付き不織布は、表面および内部も共に充分に繊維が固定していたが、明確な模様が形成されていなかった。
【0057】
(比較例2)
3質量%の熱接着性繊維Aと97質量%の1.7デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維(繊維長38mm)とを混合して、カード機とクロスレイヤー装置を使用して、クロスレイ繊維ウエブを作製したこと以外は、実施例1と同様にして面密度80g/m2の模様付き不織布を得た。
この模様付き不織布は、明確な模様は形成されていたが、表面および内部の繊維が充分に固定しておらず、変形し易く模様が安定していなかった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な製造装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図8】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図9】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持部材の一例を示す模式図である。
【図10】図9に示す開口支持部材を用いて製造した、本発明の模様付き不織布の一例を示す模式図である。
【図11】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持部材の別の一例を示す模式図である。
【図12】図11に示す開口支持部材を用いて製造した、本発明の模様付き不織布の一例を示す模式図である。
【図13】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持部材の別の一例を示す模式図である。
【図14】図13に示す開口支持部材を用いて製造した、本発明の模様付き不織布の一例を示す模式図である。
【図15】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持部材の別の一例を示す模式図である。
【図16】図15に示す開口支持部材を用いて製造した、本発明の模様付き不織布の一例を示す模式図である。
【図17】従来の不織布製造装置に用いる繊維ウエブ移送手段のメッシュ度を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0059】
10 模様付き不織布の製造装置
11 開口支持体
12 繊維ウエブ
13 蒸気噴出ノズル
14 吸引手段
15 開口押圧体
16 駆動ロール
17 駆動ロール
18 模様付き不織布
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維ウエブに蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造するに好適な模様付き不織布の製造方法、及びその製造方法による模様付き不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、繊維ウエブに蒸気を噴射することにより不織布を製造する方法が知られており、例えば特許文献1には、加圧蒸気噴出ノズルを用いて、一方向に走行する多孔の繊維ウエブ担持移送手段に載置した繊維ウエブの幅方向に沿って多数のノズル孔から加圧蒸気を連続して噴射することにより構成繊維を交絡させる不織布の製造方法が記載されている。この方法によれば、蒸気噴出ノズルから噴出する過熱蒸気は飽和蒸気圧の下で飽和温度以上の温度にまで高温化された蒸気であり、飽和温度と過熱温度との中間では凝縮液化しにくくなる。そのため、蒸気噴出ノズルから噴出する過熱蒸気は繊維ウエブに当たっても凝縮することなく、その内部まで浸入して貫通し、周辺の繊維を加熱しながら交絡させる。その結果、この加熱蒸気の通過により繊維の交絡と熱セットとが同時に行われるようになることが記載されている。
【0003】
また、前述の多孔の繊維ウエブ担持移送手段として、例えば金網やパンチングメタルを使うことができ、その各移送手段のメッシュ度を20〜40(個/2.54cm)とすることが望ましいことが記載されている。また、加圧蒸気噴出ノズルの前位置に加圧高温空気の噴出装置を設けておき、さらに繊維ウエブの構成繊維の一部に低融点の繊維を混在させておき、加圧蒸気の付与に先立って加圧空気を付与して、繊維ウエブの面近くの構成繊維に含まれる低融点の繊維を溶融させて周辺の繊維同士に融着して、繊維ウエブの表面形態を安定化させることも可能であることが記載されている。
【0004】
なお、先述のような繊維ウエブに蒸気を噴射する方法とは異なり、多孔の繊維ウエブ担持移送手段に載置した繊維ウエブに柱状の高圧水流を噴射して繊維を交絡させる方法が知られている。後者の方法の場合、繊維ウエブ担持移送手段の開口部に水流により繊維が押し込められると共に繊維が高度に交絡すると考えられる。これに対して、前者の方法の場合、蒸気が繊維ウエブ担持移送手段の非開口部に衝突して横方向に広がる力により繊維ウエブ担持移送手段の開口部に繊維が集まると共に繊維が前者の水流による場合と比較して軽度に交絡すると考えられる。
【0005】
しかし、先述のように、特許文献1は繊維の交絡と熱セットとを同時に行なう技術であり、特許文献1に記載された技術によって明確な模様の付いた不織布を製造することはできなかった。すなわち、特許文献1では、移送手段のメッシュ度を20〜40(個/2.54cm)とすることが望ましいことが記載されている。この場合、20メッシュの金網を示す図17を用いて説明すると、移送手段のメッシュ度が2.54cmあたり20個の場合、2.54cmを20等分することになり、この結果、移送手段のメッシュを構成する織網の太さが限りなく0に近い値をとったとしても、開口の1辺l(またはm)の長さは0.127cm(2.54cm÷20=0.127cm)を超えることはない。また、1つの開口と、この開口の斜め方向にある隣接する開口との間の距離cは、0.18cm(0.127cm×1.41=0.18cm)を超えることはない。そこで、このような小さい開口に繊維が多数集まることができず、また仮に繊維が多少集まっても、繊維の多少による模様が細かすぎ、目視により明確な模様として認識することができない。また、非開口部を形成する織網の織糸の太さb1(またはb2)は0.127cm(2.54cm÷20=0.127cm)を超えることはない。したがって、蒸気がこの非開口部に衝突して横方向に広がる力が極めて弱く、繊維ウエブの繊維の移動がなされないか、または繊維の移動量が極めて少なくなり、この理由によっても、目視により明確な模様として認識することができない。
【0006】
さらに、模様付きの不織布を製造する場合の問題点を検討すると、模様付きの不織布を製造する場合、繊維ウエブ中の繊維が移動することが必要であり、この点で繊維を容易に移動可能な蒸気を噴射する技術を利用することが有利であると考えられる。すなわち、必要とする模様に対応する開口を設けた移送可能な開口支持体の上に載置した繊維ウエブに蒸気を噴射する方法を適用することが好ましい。しかし、この方法によって不織布に模様が形成されたとしても、繊維の交絡が軽度であるため形態安定性に欠けるという問題があり、繊維を固定することによりその模様を固定する必要がある。そこで、繊維ウエブに予め低融点の繊維を混在させておき、加圧蒸気の付与によって、繊維の移動による模様の形成と繊維交点の接着とを同時に行うことが考えられる。しかし、低融点の繊維により繊維交点が接着すると繊維が固定されてしまい、繊維の移動が妨げられてしまうという問題があり、この結果目的とする模様が形成されないという問題があった。あるいは低融点の繊維が溶融すると繊維表面の滑りが悪くなり、繊維の移動が妨げられてしまうという問題があり、この結果目的とする模様が形成されないという問題があった。
【0007】
なお、加圧蒸気の温度を下げて繊維の移動のみを行い、その後に高温の蒸気を吹き付けることも考えられるが、この方法の場合、蒸気を2度噴射することが必要となり、コストアップの要因となるという問題があった。また、この方法の場合、開口部に繊維が移動して開口部の繊維密度が上昇した後の高温の蒸気吹き付ける加熱処理となるため、繊維の内部まで充分に加熱されず、表面付近の低融点繊維だけが溶融してしまい、表面が硬くなる一方内部や反対面は繊維の固着が不充分になってしまうという問題があった。
【0008】
【特許文献1】特開2004−238785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題を解決し、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定した状態の模様付き不織布及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、多数の開口を有し且つ移送可能な開口支持体の上に載置した繊維ウエブを前記開口支持体によって移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造する方法であって、前記開口支持体はその投影図において互いの最短距離が2mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有しており、前記繊維ウエブに熱接着性繊維を5〜25質量%含有させ、且つ前記蒸気の温度を前記熱接着性繊維の融点以上とすることを特徴とする模様付き不織布の製造方法であり、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定した状態の模様付き不織布を提供することが可能となる。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記開口支持体が、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を複数対含んでおり、一対の隣接する開口の最短距離が他の一対の隣接する開口の最短距離と異なることを特徴とする請求項1に記載の模様付き不織布の製造方法であり、複雑な模様が形成された意匠性のある模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0012】
請求項3に係る発明は、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を含む複数の開口を前記開口支持体に配置することにより、1つの模様を形成した区域を設け、さらに前記区域と同じ模様の区域を前記開口支持体に複数繰り返して設けることを特徴とする請求項1または2に記載の模様付き不織布の製造方法であり、意匠性のある模様が繰り返し形成された模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記繊維ウエブを前記開口支持体と移送可能な開口押圧体との間で挟持して移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の模様付き不織布の製造方法であり、表面状態が特に優れるとともにより明確な模様が形成された模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れかに記載の模様付き不織布の製造方法によって形成されたことを特徴とする模様付き不織布である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定した状態の模様付き不織布及びその製造方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の模様付き不織布の製造方法は、本発明の模様付き不織布の製造に好適な装置の一例である図1の模様付き不織布の製造装置10を用いて説明すると、多数の開口を有し且つ移送可能な開口支持体11の上に載置した繊維ウエブ12を前記開口支持体11によって矢印Aの方向へ移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布18を製造する方法である。
【0017】
前記模様付き不織布の製造装置10は、多数の開口を有し且つ移送可能なエンドレスベルトからなる開口支持体11と、この開口支持体11を駆動回転する駆動ロール16又は17と、開口支持体11と互いに同期して駆動回転するエンドレスベルトからなる開口押圧体15と、開口支持体11と開口押圧体15の間に狭持された繊維ウエブ12に対して開口押圧体15を介して蒸気を噴出する蒸気噴出ノズル13と、蒸気噴出ノズル13から噴出された蒸気を、開口支持体11を介して吸引する吸引手段14とからなっており、駆動ロール16又は17によって回転する開口支持体11に載置した繊維ウエブ12は、回転に伴い開口支持体11と開口押圧体15の間に狭持されるようになっており、繊維ウエブ12が狭持されている間に、蒸気噴出ノズル13から繊維ウエブに向けて蒸気が噴出され、繊維ウエブ12を通過した蒸気が吸引手段14によって吸引されるようになっている。なお、図1の模様付き不織布の製造装置10では、開口支持体11は多数の開口を有し且つ移送可能なエンドレスベルトから構成されているが、この開口支持体11の代わりに多数の開口を有し且つ移送可能な回転ドラムから構成されていることも可能である。
【0018】
前記模様付き不織布の製造装置10においては、前記繊維ウエブを前記開口支持体と移送可能な開口押圧体との間で挟持して移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することが可能となっているが、このような方法によって、蒸気の噴射によって繊維ウエブの表面が乱れることが防止できるので、表面状態が特に優れるとともにより明確な模様が形成された模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0019】
前記蒸気噴出ノズル13は蒸気噴出口内径が0.05〜1mmであることが好ましく、また蒸気噴出口間のピッチが0.5〜3mmであることが好ましい。なお、蒸気噴出口がスリット状の噴出口であることも可能である。また、前記蒸気噴出ノズル13から蒸気を噴出させる場合、蒸気噴出ノズル13に導入される蒸気圧は0.1〜2MPaであることが好ましく、また、この蒸気は過熱蒸気であることが好ましい。このような蒸気圧により蒸気を繊維ウエブの表裏に確実に貫通させることができるという効果がある。なお、蒸気は水蒸気であることが実用上好ましく、水蒸気であれば蒸気の温度は105〜240℃程度であることが好ましい。
【0020】
また、開口支持体11からの距離である蒸気噴出ノズル13の高さは、開口支持体11と開口押圧体15との間の距離に近似しているが、この蒸気噴出ノズル13の高さは、繊維ウエブの厚さにもよるが、0.5〜40mm程度が好ましい。
【0021】
前記開口支持体11は、繊維ウエブ12に模様が形成されるように多数の開口が設けられている。この開口の態様としては、例えば、プラスチックネットや金網などからなる織網の開口部を目止めすることにより、織糸の太さよりも太い蒸気不透過部を設けたり、あるいは元の織網が有する蒸気不透過部、すなわち織網の織糸部分の面積よりも蒸気不透過部の面積を大きくして模様を明確に形成することを可能とした形態がある。なお、この織網の目の粗さは繊維ウエブ12を載置し易く、且つ蒸気が通過し易いようにメッシュ度が8〜40(個/2.54cm)であることが好ましい。
【0022】
前述の目止めの方法としては、例えば溶融樹脂または液状樹脂を織網の開口部分に付着させ固化させることにより、樹脂の埋め込みや樹脂皮膜によって特定の模様が形成されるようにした形態がある。液状樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂や紫外線硬化樹脂などを利用することができる。また、例えば糸の配置や糸の太さの違いによって模様が形成された織物や編み物、あるいは刺繍が施された織物や編み物を織網に接着固定して得られる形態がある。また、織物や編み物の開口部分に溶融樹脂または液状樹脂を付着させ固化させることにより、樹脂の埋め込みや樹脂皮膜によって織物や編み物に特定の模様を形成させた後に、この織物や編み物を織網に接着固定して得られる形態がある。また、樹脂フィルムまたは樹脂シートなどを切り抜くことにより、多数の開口を形成した後、この開口が設けられた樹脂フィルムまたは樹脂シートを織網に接着固定して得られる形態がある。なお、水流絡合の場合はこのような目止めした織網を用いると織編み物が水流の力で破損したり、織編み物に繊維ウエブが絡みこんだりする問題があるが、蒸気の場合は織編み物が破損したり、織編み物に繊維ウエブが絡みこんだりするリスクが極めて少ない。
【0023】
また、前記開口支持体が回転ドラムから構成されている場合は、金属製のドラムなどに目的とする模様に応じて開口部を設けると共に蒸気不透過部を設けて開口支持体を形成することができる。
【0024】
本発明では、前記開口支持体は多数の開口を有しているが、この開口の大きさは繊維ウエブ12を載置し易く、且つ蒸気が通過し易いように、開口支持体が織網の場合は、そのメッシュ度が8〜40(個/2.54cm)であることが好ましい。また、開口の面積としては10mm2〜0.1mm2であることが好ましい。また、開口支持体が金属ドラムの場合は、開口が8〜40(個/2.54cm)になるように開口を設けることが好ましい。また、開口の面積としては10mm2〜0.1mm2であることが好ましい。
【0025】
本発明では、前記開口支持体は、図2に例示するように、その投影図において互いの最短距離が2mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有している。ここで、「隣接する開口」とは、特定の開口に対して、その周囲に位置する開口のことを意味している。周囲とは、移送方向に対して前後、左右、及び斜め方向に位置する8個以下の数の開口を指し、8個を超える場合は、近くに位置する開口を選択するものとする。また、8個未満であっても、特定の開口の周囲の二つの開口の間にあり、しかもその二つの開口の後ろ側にあり、二つの開口の何れかに隠れる位置にある開口は隣接する開口から除外する。また、「最短距離」とは一対の隣接する開口の各辺同士を結ぶ直線、頂点同士を結ぶ直線、弧同士を結ぶ直線、辺と頂点を結ぶ直線、辺と弧を結ぶ直線、又は頂点と弧を結ぶ直線のうち、最も短い直線の長さで表すことができる。
【0026】
本発明では、互いの最短距離が2mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有しているので、非開口部である蒸気不透過部分の幅または面積が大きくなる。このため、この蒸気不透過部分の上に載置された繊維に対して、蒸気が噴射されると、蒸気が非開口部に衝突して横方向に広がる力が大きくなり、開口部への繊維の移動量が多くなり、この結果、多数の繊維が開口部に集まることになり、明確な模様が形成される。このようにして、明確な模様が形成された模様付き不織布を製造することが可能になる。本発明では、互いの最短距離が2mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有しているが、互いの最短距離が3mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有していることが好ましく、互いの最短距離が4mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有していることがより好ましく、互いの最短距離が5mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有していることが更に好ましい。なお、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を有していない場合は、明確な模様が形成された模様付き不織布を製造することができなくなる。
【0027】
また、本発明では、前記開口支持体が、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を複数対含んでおり、一対の隣接する開口の最短距離が他の一対の隣接する開口の最短距離と異なることが好ましく、複雑な模様が形成された意匠性のある模様付き不織布を得ることができるという利点がある。より好ましくは、前記開口支持体が、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を3対以上含んでおり、このような形態であれば、より複雑な模様が形成された意匠性のある模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0028】
本発明を、具体例を用いて説明すると、図2では、一種類の形の開口からなる開口支持体の例を示しており、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して前後、左右、及び斜め方向に位置するB1、B2、B3、B4、C1、C2、C3及びC4があり、これら8個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4となっている。図2では、c1、c2、c3及びc4の長さが最も長く、それらの長さと比較してb3及びb4の長さが短くなっており、b1及びb2の長さが更に短くなっている。そして、本発明では、b1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。なお、図2の開口の形態は、エンドレスベルト型の開口支持体または回転ドラム型の開口支持体に設けることが好ましい。
【0029】
また、図3では、二種類の形の開口からなる開口支持体の例を示しており、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して前後、左右、及び斜め方向に位置するB1、B2、B3、B4、C1、C2、C3及びC4があり、これら8個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4となっている。そして図3では、c1、c2、c3及びc4の長さが最も長く、それらの長さと比較してb1及びb2の長さが短くなっており、b3及びb4の長さが更に短くなっている。そして本発明では、b1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。なお、図3の開口の形態は、エンドレスベルト型の開口支持体または回転ドラム型の開口支持体に設けることが好ましい。
【0030】
また、図4では、三種類以上の多数の形の開口からなる開口支持体の例を示しており、複雑な模様を形成するのに好適である。この図では、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して前後、左右、及び斜め方向に位置するB1、B2、B3、B4、C1、C2、C3及びC4があり、これら8個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4となっている。そして図4では、b1の長さが最も長く、それらの長さと比較してb4及びc3の長さがこの順に短くなっており、c1、c2、c4、b2及びb3の長さが更に短くなっている。そして本発明では、b1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。なお、図4の開口の形態は、エンドレスベルト型の開口支持体または回転ドラム型の開口支持体に設けることが好ましい。
【0031】
また、図5では、二種類の形の開口からなる開口支持体の例を示しており、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して前後、及び左右方向に位置するB1、B2、B3、B4、B5及びB6があり、これら6個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、b3、b4、b5、及びb6となっている。そして図5では、b1、b2、b3及びb4の長さが最も長く、それらの長さと比較してb5及びb6の長さが短くなっている。そして本発明では、b1、b2、b3、b4、b5、及びb6のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。なお、図5の開口の形態は、回転ドラム型の開口支持体に設けることが好ましい。
【0032】
また、図6では、一種類の形の開口からなる開口支持体の例を示しており、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して左右、及び斜め方向に位置するB1、B2、C1、C2、C3及びC4があり、これら6個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、c1、c2、c3、及びc4となっている。そして図6では、b1、b2、c1、c2、c3、及びc4の長さは同一であり、b1、b2、c1、c2、c3、及びc4のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。なお、図6の開口の形態は、回転ドラム型の開口支持体に設けることが好ましい。
【0033】
本発明では、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を含む複数の開口を前記開口支持体に配置することにより、1つの模様を形成した区域を設け、さらに前記区域と同じ模様の区域を前記開口支持体に複数繰り返して設けることが可能であり、このような方法によって、意匠性のある模様が繰り返し形成された模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0034】
前述の、前記区域と同じ模様の区域を前記開口支持体に複数繰り返して設ける具体例を、図7を用いて説明すると、図7では、三種類以上の多数の形の開口からなる開口支持体の例を示しており、複雑な模様を形成するのに好適である。この図では、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して前後、及び斜め方向に位置するB1、B2、B3、B4、C1及びC2があり、これら6個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、b3、b4、c1、及びc2となっている。そして図7では、b3の長さが最も長く、それらの長さと比較してb1、b2、b4、c1、及びc2の長さが短くなっている。そして本発明では、b1、b2、b3、b4、c1及びc2のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。そして、図7では、開口A、B1、B2、B3、B4、C1及びC2からなる1つの模様を形成した区域が、開口支持体に設けられており、この区域と同じ模様の区域が前記開口支持体に前後、左右、斜め方向の位置に6個繰り返して設けられている。なお、図7の開口の形態は、エンドレスベルト型の開口支持体または回転ドラム型の開口支持体に設けることが好ましい。
【0035】
なお、図7では、開口Aと一対を形成する開口B1、B2、B3、B4、C1及びC2の組合せにより、本発明の構成が成り立つことを説明したが、図7における開口C1とその周囲の開口の組合せによっても、本発明の構成が成り立つ。その例を図8により説明すると、図8では、1つの開口Aに対して、一対を形成する開口は移送方向に対して前後、左右及び斜め方向に位置するB1、B2、B3、B4、C1、C2、C3及びC4があり、これら6個の開口と開口Aとの最短距離はそれぞれb1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4となっている。そして図8では、c3の長さが最も長く、それらの長さと比較してb4、c4、c1、b1の順に長さが短くなっており、b2、b3及びc2が更に短くなっている。そして本発明では、b1、b2、b3、b4、c1、c2、c3及びc4のうち一つ以上の長さが2mm以上となっている。
【0036】
本発明では、多数の開口を有し且つ移送可能な開口支持体の上に載置した繊維ウエブを前記開口支持体によって移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造する方法であり、前記繊維ウエブに熱接着性繊維を5〜25質量%含有させ、且つ前記蒸気の温度を前記熱接着性繊維の融点以上とする。
【0037】
前記繊維ウエブとしては、熱接着性繊維を5〜25質量%含有しているかぎり特に限定されず、前記繊維ウエブは、通常不織布の製法として知られる例えば乾式法や湿式法などによって得られる不織布の製法に使用される繊維ウエブを適用することができる。このうち、乾式法であれば、例えばカード機やエアレイ装置などを使用して、予めクリンプ加工がなされたステープル繊維の形態をした、前記熱接着性繊維を含む繊維原綿を開繊して繊維フリースとした後、この繊維フリースを一方向に、或いはクロスレイなどにより積層して、前記熱接着性繊維を含む繊維ウエブを形成しておき、その後前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造する方法を採用することができる。
【0038】
乾式法であれば、繊維長が15〜100mm程度の、捲縮数が5〜30個/インチ程度を有するステープル繊維を用いることになり、繊維長が比較的短いため、蒸気を噴射することにより繊維が移動し易いため、明確な模様が形成され易いという利点があり、また、熱接着性繊維を均一に混入させることができるので、接着の際にむらが少なく、模様がより安定した状態の模様付き不織布を得ることができるという利点がある。また、他の機能性のある繊維を混入することも容易であり、厚さ、面密度、物性などを広範囲に選択でき、目的とする用途にきめ細かく対応した模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0039】
また、湿式法による場合は、水平長網方式、傾斜ワイヤー型短網方式、円網方式、又は長網・円網コンビネーション方式の抄紙機などを用いて、カットした形態の前記熱接着性繊維を含む原料繊維をスラリー化させ、このスラリーから繊維シートを漉き上げて、前記熱接着性繊維を含む繊維ウエブを形成しておき、その後前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造する方法を採用することができる。
【0040】
湿式法であれば、繊維長が15mm程度以下のカット繊維を用いることになり、繊維長が短いため、蒸気を噴射することにより繊維が更に移動し易いため、明確な模様が形成され易いという利点があり、また、熱接着性繊維を均一に混入させることができるので、接着の際にむらが少なく、模様がより安定した状態の模様付き不織布を得ることができるという利点がある。また、他の機能性のある繊維を混入することも容易であり、目的とする用途に対応した模様付き不織布を得ることができるという利点がある。
【0041】
前記熱接着性繊維としては、蒸気の噴射によって熱接着性が生じる限り、特に限定されず、例えば、繊維ウエブ中に含まれる他の繊維よりも融点が低い樹脂成分が1種類のみから形成された熱接着性繊維であることが可能である。また、低融点成分と高融点成分とからなり、低融点成分が繊維の表面の少なくとも一部に露出している複合繊維からなる熱接着性繊維であることが可能である。このような複合繊維としては、例えば、芯鞘型、サイドバイサイド型、断面が2成分以上の樹脂で分割されたオレンジ型、海島型の複合繊維などがある。
【0042】
また、前記熱接着性繊維の材質としても、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系樹脂およびポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂などを挙げることができる。また、複合繊維の場合、これらの樹脂の中から同じ種類の樹脂成分を選んで構成することも可能であり、異なる樹脂成分を選んで構成することも可能である。
【0043】
本発明では、前記熱接着性繊維が1種類の樹脂成分からなる場合は、繊維ウエブ中に含まれる他の繊維の中で最も低い融点を有する繊維の融点よりも融点が低いことが必要である。このような、熱接着性繊維または低融点成分と高融点成分とからなり、低融点成分が繊維の表面の少なくとも一部に露出している複合繊維からなる熱接着性繊維を繊維ウエブに含むことによって、当該熱接着性繊維の融点以上の温度の蒸気を、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより、明確な模様を形成すると共に、繊維ウエブの表面および内部においても共に繊維を固定して、模様が安定した状態の模様付き不織布を形成することができる。なお、前記熱接着性繊維は他の繊維の融点よりも5℃以上低いことが好ましく、10℃以上低いことがより好ましく、15℃以上低いことが更に好ましい。5℃未満であると、当該接着性繊維を含む繊維ウエブに蒸気を噴射した際に、加熱温度にばらつきがあると、複合繊維全体が溶融してしまい、明確な模様のある不織布を形成できない場合がある。
【0044】
本発明では、前記繊維ウエブに熱接着性繊維を5〜25質量%含有させることが必要であり、熱接着性繊維を5〜20質量%含有させることが好ましく、熱接着性繊維を5〜15質量%含有させることがより好ましく、熱接着性繊維を10〜15質量%含有させることが更に好ましい。前記繊維ウエブに熱接着性繊維を5〜25質量%含有させることにより、加圧蒸気の付与によって、繊維の移動による模様の形成と繊維交点の接着とを同時にスムーズに行なうことができる。すなわち、熱接着性の繊維により繊維交点が多数接着して繊維が固定されるということがないので、繊維の移動が容易となる。この結果目的とする明確な模様が形成される。あるいは熱接着性の繊維が溶融しても繊維表面の滑りが悪くなるという問題が生じないので、繊維の移動が容易となる。この結果目的とする明確な模様が形成される。また、明確な模様の形成と同時に熱接着性繊維により構成繊維が結合されるので、表面や内部の繊維が充分に固定され、模様が変形する恐れがなく明確な模様が安定した模様付き不織布を製造することができる。熱接着性繊維の含有量が5質量%未満の場合は、表面や内部の繊維が充分に固定されず、模様が安定せず、変形し易いという問題がある。また、熱接着性繊維の含有量が25質量%を超える場合は、加圧蒸気の付与によって、繊維の移動による模様の形成と繊維交点の接着とを同時に行うことがスムーズに実行されなくなる。すなわち、熱接着性の繊維により繊維交点が多数接着すると繊維が固定されてしまい、繊維の移動が妨げられてしまうという問題が発生する。この結果目的とする模様が形成されないという問題が発生する。あるいは多数の熱接着性の繊維が溶融すると繊維表面の滑りが悪くなり、繊維の移動が妨げられてしまうという問題が発生し、この結果目的とする模様が形成されないという問題が発生する。
【0045】
本発明では、前記繊維ウエブに熱接着性繊維以外の繊維を含むことが可能であり、含有可能な繊維としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系繊維およびポリビニルアルコール繊維などの合成繊維に限らず、レーヨンなどの半合成繊維、あるいは綿、セルロース系繊維などの天然繊維を挙げることができる。
【0046】
また、熱接着性繊維以外の繊維として、潜在捲縮性繊維を含むことも可能であり、潜在捲縮性繊維を含有することで、蒸気の噴出に伴い潜在捲縮性繊維の捲縮が発現して、繊維ウエブの表面および内部においても共に繊維が絡まり、模様がより安定した状態の模様付き不織布を形成することができる。このような潜在捲縮性繊維としては、融点の異なる複数の樹脂が複合された複合繊維や、繊維の一部に特定の熱履歴を施した繊維が使用される。複合繊維には、例えば偏心型の芯鞘構造のものや、サイドバイサイド型の複合繊維が好適に用いられる。融点の異なる樹脂の組み合わせとして、ポリエステル−低融点ポリエステル、ポリアミド−低融点ポリアミド、ポリエステル−ポリアミド、ポリエステル−ポリプロピレン、ポリプロピレン−低融点ポリプロピレン、ポリプロピレン−ポリエチレンなど種々の合成樹脂を組み合わせたものが使用できる。
【0047】
前記潜在捲縮繊維は、蒸気の噴出によって捲縮発現を効率的に実施し得る105〜240℃程度の捲縮発現温度で自由収縮させた場合に、初期捲縮数に較べて2倍以上の捲縮数にまで達するものが望ましい。具体的には、加熱処理によって、例えば50個/インチ以上の比較的高い捲縮数を発現することが望ましい。
【0048】
本発明では、多数の開口を有し且つ移送可能な開口支持体の上に載置した繊維ウエブを前記開口支持体によって移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより、明確な模様を形成させつつ、前記繊維ウエブに含まれる熱接着性繊維によって、構成繊維を結合するが、この結合を確実なものとするため、さらに後工程によって、加熱処理を行い、模様をさらに安定させることも可能である。加熱処理の方法としては、一対の加熱ロールの間を通過させる方法や、乾燥機の中を通過させる方法や、テンター加工などの方法などがある。
【0049】
本発明の模様付き不織布は、前述の模様付き不織布の製造方法によって形成されたことを特徴とする模様付き不織布であり、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定した状態の模様付き不織布である。本発明の模様付き不織布の具体例としては、図9〜図12に例示するように、図9の開口支持体を用いて得られた図10の模様付き不織布、及び図11の開口支持体を用いて得られた図12の模様付き不織布があり、これらの模様付き不織布では、開口支持体の開口部分にあたる部分の繊維ウエブの密度が高くなっており、開口支持体の蒸気不透過部分にあたる部分の繊維密度が低くなっており、繊維密度の濃淡によって、明確な模様が形成されている。また、繊維密度が高い部分と他の繊維密度が高い部分とに繊維がまたがっており、いいかえれば繊維密度が高い部分と他の繊維密度が高い部分とを繊維によって連結している形態となっており、この繊維によって連結している部分が、繊維密度の低い部分となっている。
【0050】
以上説明したように、本発明によって、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定した状態の模様付き不織布及びその製造方法を提供することが可能となった。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例につき説明するが、これは発明の理解を容易とするための好適例に過ぎず、本願発明はこれら実施例の内容に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
熱接着性繊維として、2.2デシテックスの複合繊維(繊維長51mm、芯鞘型で鞘部は融点135℃の変性ポリエステル樹脂、芯部はポリエチレンテレフタレート樹脂)からなる熱接着性繊維Aを準備した。次いで、25質量%の熱接着性繊維Aと75質量%の1.7デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維(繊維長38mm)とを混合して、カード機とクロスレイヤー装置を使用して、クロスレイ繊維ウエブを作製した。
また、直径約0.6mmのワイヤーが平織りに編まれたメッシュ度が10メッシュからなる金網製のエンドレスベルトを設けた図1に示す模様付き不織布の製造装置10のエンドレスベルト上に、図9に示すような、樹脂フィルムに対して12×17mmの大きさの四角形を格子状に切り貫いて形成した開口支持部材を載置して、開口支持体Aとした。
次いで、上記繊維ウエブを開口支持体A11の上に載置して、3m/分の速度で移送させ、開口支持体11と開口押圧体15の間(1.2mmに設定)に狭持しながら、蒸気噴出ノズル13から繊維ウエブに向けて蒸気圧1MPaに設定した175℃の水蒸気を繊維ウエブに対して噴出させ、繊維ウエブ12を通過した蒸気が吸引手段14によって吸引されるようにして、図10に示す模様が形成された面密度80g/m2の模様付き不織布を得た。
この模様付き不織布には、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定していた。
【0053】
(実施例2)
7質量%の熱接着性繊維Aと93質量%の1.7デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維(繊維長38mm)とを混合して、カード機とクロスレイヤー装置を使用して、クロスレイ繊維ウエブを作製したこと、及び図11に示すような、樹脂フィルムに対して一辺が22mmの大きさのひし形を千鳥状に切り貫いて形成した開口支持部材を載置して、開口支持体Bとしたこと以外は、実施例1と同様にして図12に示す模様が形成された面密度100g/m2の模様付き不織布を得た。
この模様付き不織布には、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定していた。
【0054】
(実施例3)
直径約0.6mmのワイヤーが平織りに編まれたメッシュ度が10メッシュからなる金網製のエンドレスベルトを設けた図1に示す模様付き不織布の製造装置10のエンドレスベルト上に、図13に示すような刺しゅうが施された編み物からなる開口支持部材を載置して、開口支持体Cとしたこと以外は実施例1と同様にして、図14に示す模様が形成された面密度81g/m2の模様付き不織布を得た。なお、上記編み物は、刺しゅう糸が重なり又は束となり幅2mm以上の太さになった部分を多数有していた。
この模様付き不織布には、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定していた。
【0055】
(実施例4)
直径約0.6mmのワイヤーが平織りに編まれたメッシュ度が10メッシュからなる金網製のエンドレスベルトを設けた図1に示す模様付き不織布の製造装置10のエンドレスベルト上に、図15に示すような刺しゅうが施された編み物からなる開口支持部材を載置して、開口支持体Dとしたこと以外は実施例1と同様にして、図15に示す模様が形成された面密度78g/m2の模様付き不織布を得た。なお、上記編み物は、刺しゅう糸が重なり又は束となり幅2mm以上の太さになった部分を多数有していた。
この模様付き不織布には、明確な模様が形成されており、表面および内部も共に充分に繊維が固定して、模様が安定していた。
【0056】
(比較例1)
30質量%の熱接着性繊維Aと70質量%の1.7デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維(繊維長38mm)とを混合して、カード機とクロスレイヤー装置を使用して、クロスレイ繊維ウエブを作製したこと以外は、実施例1と同様にして面密度79g/m2の模様付き不織布を得た。
この模様付き不織布は、表面および内部も共に充分に繊維が固定していたが、明確な模様が形成されていなかった。
【0057】
(比較例2)
3質量%の熱接着性繊維Aと97質量%の1.7デシテックスのポリエチレンテレフタレート繊維(繊維長38mm)とを混合して、カード機とクロスレイヤー装置を使用して、クロスレイ繊維ウエブを作製したこと以外は、実施例1と同様にして面密度80g/m2の模様付き不織布を得た。
この模様付き不織布は、明確な模様は形成されていたが、表面および内部の繊維が充分に固定しておらず、変形し易く模様が安定していなかった。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な製造装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図7】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図8】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持体の別の一例を示す模式図である。
【図9】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持部材の一例を示す模式図である。
【図10】図9に示す開口支持部材を用いて製造した、本発明の模様付き不織布の一例を示す模式図である。
【図11】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持部材の別の一例を示す模式図である。
【図12】図11に示す開口支持部材を用いて製造した、本発明の模様付き不織布の一例を示す模式図である。
【図13】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持部材の別の一例を示す模式図である。
【図14】図13に示す開口支持部材を用いて製造した、本発明の模様付き不織布の一例を示す模式図である。
【図15】本発明の模様付き不織布を製造するのに好適な開口支持部材の別の一例を示す模式図である。
【図16】図15に示す開口支持部材を用いて製造した、本発明の模様付き不織布の一例を示す模式図である。
【図17】従来の不織布製造装置に用いる繊維ウエブ移送手段のメッシュ度を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0059】
10 模様付き不織布の製造装置
11 開口支持体
12 繊維ウエブ
13 蒸気噴出ノズル
14 吸引手段
15 開口押圧体
16 駆動ロール
17 駆動ロール
18 模様付き不織布
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の開口を有し且つ移送可能な開口支持体の上に載置した繊維ウエブを前記開口支持体によって移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造する方法であって、前記開口支持体はその投影図において互いの最短距離が2mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有しており、前記繊維ウエブに熱接着性繊維を5〜25質量%含有させ、且つ前記蒸気の温度を前記熱接着性繊維の融点以上とすることを特徴とする模様付き不織布の製造方法。
【請求項2】
前記開口支持体が、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を複数対含んでおり、一対の隣接する開口の最短距離が他の一対の隣接する開口の最短距離と異なることを特徴とする請求項1に記載の模様付き不織布の製造方法。
【請求項3】
互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を含む複数の開口を前記開口支持体に配置することにより、1つの模様を形成した区域を設け、さらに前記区域と同じ模様の区域を前記開口支持体に複数繰り返して設けることを特徴とする請求項1または2に記載の模様付き不織布の製造方法。
【請求項4】
前記繊維ウエブを前記開口支持体と移送可能な開口押圧体との間で挟持して移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の模様付き不織布の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の模様付き不織布の製造方法によって形成されたことを特徴とする模様付き不織布。
【請求項1】
多数の開口を有し且つ移送可能な開口支持体の上に載置した繊維ウエブを前記開口支持体によって移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することにより模様付きの不織布を製造する方法であって、前記開口支持体はその投影図において互いの最短距離が2mm以上である少なくとも一対の隣接する開口を有しており、前記繊維ウエブに熱接着性繊維を5〜25質量%含有させ、且つ前記蒸気の温度を前記熱接着性繊維の融点以上とすることを特徴とする模様付き不織布の製造方法。
【請求項2】
前記開口支持体が、互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を複数対含んでおり、一対の隣接する開口の最短距離が他の一対の隣接する開口の最短距離と異なることを特徴とする請求項1に記載の模様付き不織布の製造方法。
【請求項3】
互いの最短距離が2mm以上である一対の隣接する開口を含む複数の開口を前記開口支持体に配置することにより、1つの模様を形成した区域を設け、さらに前記区域と同じ模様の区域を前記開口支持体に複数繰り返して設けることを特徴とする請求項1または2に記載の模様付き不織布の製造方法。
【請求項4】
前記繊維ウエブを前記開口支持体と移送可能な開口押圧体との間で挟持して移送しながら、前記繊維ウエブに連続的に蒸気を噴射することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の模様付き不織布の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の模様付き不織布の製造方法によって形成されたことを特徴とする模様付き不織布。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−235637(P2009−235637A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85613(P2008−85613)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】
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