説明

模様付き焼き菓子の製造方法

【課題】 食感に違和感を起こさないものを、簡単な作業で、安価に製造することができる模様付き焼き菓子の製造方法を提供する。
【解決手段】 付着させたい絵、文字、模様などの模様部3を有する模様型2を用意し、この模様型2を模様を付けたい焼き菓子1の表面に当て、可食色材4を模様部3から焼き菓子1表面に付着させ、その後、焼き菓子を加熱して模様部と焼き菓子の生地を一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッキー、ケーキ、カステラ、今川焼き、ドラ焼きなどの焼き菓子表面及び平面を有する食品に絵柄、模様、文字などの装飾を施す模様付き焼き菓子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、焼き菓子などの表面に装飾を施すには、熱した焼き鏝により菓子などに直接焼き印を付すか、柔らかい菓子などでは、生地に型で装飾を付すか、漏斗状の搾出し器からゼリー状の食品などを搾出して装飾を付すなどの方法があった。また、ケーキ用ベースのミックス粉と装飾を付したビスケット等とを組み合わせて模様を付するとかの方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、図柄を付けようとする菓子などに可食シートを貼り付けるものがある(例えば、特許文献2参照)。また、食用バインダーを用いて、装飾粉をペーパ状食品に付着させる方法なども知られている(例えば特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1の模様付焼成小麦粉食品の製造法は、焼成小麦粉食品のための原料混合ミックス粉と、模様を有するビスケットとを組合わせたミックス及び表面に絵や文字などの模様を付するものである。
この特許文献1の製造方法は、加熱した鉄板に模様を有するビスケットを模様を有する面を下にして載置し、その上から焼成小麦粉食品の生地を流し込み、焼成する。これにより、表面に模様を有する焼成小麦粉食品が製造される。
【0004】
また、特許文献2の模様を施したシートを用いる食品の装飾方法は、図柄を付けようとする菓子などに可食シートを貼り付けるものである。それによりその菓子などの表面の、水または油性分を吸収しもしくは水または油性分により貼着し、透明化するか、または柔軟化し熔融もしくは溶解する。これにより、クッキー、ケーキ、チョコレートなどの菓子、リンゴ、ナシ、モモなどの果物、卵焼き、カマボコ、豆腐などの固形食品、スープ、ミルクなどの液状食品に絵柄、模様、文字などの装飾を、あたかも直接菓子などに施したかのように見せるというものである。
【0005】
また、特許文献3のペーパ状食品の製造方法は、先ず、水性若しくは油性のバインダーでペーパ状の食品にデザインを印刷する。次に、粉末を振りかけてバインダー部に付着させるというものである。
【0006】
【特許文献1】特開平5−244857号公報
【特許文献2】特開平9−171号公報
【特許文献3】特開平2−295475号公報
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、熱した焼き鏝等により菓子などに直接焼き印を付す方法は、複雑な模様等の表現が難しいと共に焼き印用の鏝等の製作に時間を要し費用が高くなる。また、気軽に鏝を作製しデザインを変更・修正することが困難である。食用バインダーを用いて、装飾粉をシート状食品に付着させる方法では、装飾粉が粒子のまま表面に残るなどケーキの本体との一体化が望ましいものには適用できないというように適用に限界があった。
【0009】
上記特許文献1に示される模様付焼成小麦粉食品の製造法は、絵付きビスケットの上からケーキの生地を流し込んで焼くので、次のような問題点がある。
1)ビスケット部分と生地部分の均一性を得るのが難しく、焼き色を同じにすることができず、何か別のものを付けたようになり、違和感を起こさせると共に、食感を同じになるようにすることが難しい。
2)模様を有するビスケットを予め作っておかねばならず、手間がかかり面倒でコストが高くなる。
3)ビスケットに接する境界のケーキ生地の部分の焼きは、火通りが悪く、うまく焼くのが困難である。
【0010】
また、上記特許文献2に示される模様を施したシートを用いる食品の製造法は、絵付きシートを食品の表面に貼り付けるので、次のような問題点がある。
1)シートに可食インクを印刷するので、その技術が特殊でコストが高くなる。
2)ケーキなどの表面にシートが残り、違和感を持たせる。
3)ケーキの表面に凹凸が有るものでは、模様を鮮明に出すのが難しい。
【0011】
また、上記特許文献3に示されるバインダーを用いる方法は、適用できる食品は、表面が乾いていてなめらかなものに限られる。クッキーやパンなどでは印刷しても特殊なバインダーを用いなければ、しみ込んでしまって可食色粉末を付着させることができない。また、断面に気泡があり、それが表面に出ているものでは、色粉末が不要な部分の気泡に入り込んでしまい、それらをうまく取り除くことが困難で、デザインしたものと異なる模様ができてしまう。また、材料が特殊でコストが高くなる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためなされたもので、食感に違和感を起こさないものを、簡単な作業で、安価に製造することができる模様付き焼き菓子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための本発明による模様付き焼き菓子の製造方法は、付着させたい絵、文字、模様などの模様部を有する模様型を用意し、該模様型を模様を付けたい焼き菓子表面に当て、可食色材を模様部から前記焼き菓子表面に付着させ、その後、焼き菓子を加熱して模様部と本体部を一体化することを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2の模様付き焼き菓子の製造方法は、請求項1に記載の発明において、前記模様型が付着させたい絵、文字、模様などの模様部がくり抜かれたものであり、該模様部を通過させて前記可食色材を前記焼き菓子表面に付着させるようにした。
水溶性の粉末状可食色材を用いることが、焼き菓子から発する水蒸気を利用して模様部と本体部を緊密に一体化するうえで好ましい。
また、スクリーン印刷用などの詳細な模様を転写できる模様型を用いることで、かなりの細かい模様を表現することができるので好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明による模様付き焼き菓子の製造方法は、安価に、簡単に模様を付着させた焼き菓子を製造することができる。しかも、適当な粘性を持つゲル状の可食色材をスクリーン印刷などの詳細な模様をできる方法を用いることで、かなりの細かい模様を表現することができる。
【0016】
請求項2の模様付き焼き菓子の製造方法によれば、上記効果に加えて、一層簡単に模様付き焼き菓子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は高価な焼き型を用いたり、シートを菓子に残したりせず、可食色材を菓子に付着させて加熱することで、食感、視覚に違和感を起こさせることのない焼き菓子を得ることができる模様付き焼き菓子の製造方法を実現した。
【0018】
本発明の模様付き焼き菓子の製造方法について、焼き菓子の例としては、焼成小麦粉食品のホットケーキ、パンケーキ、スポンジケーキ、カステラ、パン、今川焼き、ドラ焼き等があげられる。
また、焼き付けようとする模様を模様型材に描写、印刷、コピー等により描き、その模様をくり抜いて、模様型を用意する。この模様型としては、模様型材に直接描写、印刷、コピー等により模様を描いてくり抜いて作る。模様型としては、堅い材料で補強した模様型材を用い、取扱に便利なように取手を付けたものとしても良い。
さらに、可食色材としては、即席コーヒー、イカ墨、カラメル、チョコレート、粉末状食用色素、粉末ジュースのような水溶性の粉末食品等があげられ、これらは1種類で又は2種類以上が混ぜられて使用される。
【0019】
次に、製造工程の一部を示す図1のように、上記のように用意した模様を設けた模様型を準備したケーキ焼成体の上に置き、可食色材を模様型の模様を表現するように振りかけて付着させる。そして、その可食色材が散らないようにすると共に菓子から発する水蒸気が逃げないようにカバーなどをして、電子レンジで加熱して、可食色材をケーキ体と一体化して模様付き焼き菓子を得る。なお、加熱は電子レンジで行うのみに限られず、トースター、オーブン等で行なってもよい。なお、焼き菓子焼成体に模様を施すのではなく菓子生地に模様を施すようにしてもよい。
なお、くり抜いて模様型を作らないで、スクリーン印刷のように模様型材に網目で模様型を形成し、それを菓子に当てて模様を付するようにしてもよい。そして、模様を付した菓子を電子レンジ等で加熱して模様を定着させても良い。また、電子レンジで加熱するときに、水分の少ないクッキー、せんべいなどの場合には、模様を付けようとする菓子のそばに水で濡らしたテイッシュ等を置いておくと、菓子の代わりにそれらが水蒸気を発するので、模様の定着が良好になる。
以下に本発明の実施例を説明する。
【0020】
(実施例)
先ず、焼成小麦粉食品としてホットケーキを、小麦粉、膨張剤などからなる混合ミックス粉に水や卵などを加え、混合して生地とする。そして、これを加熱して油を引いた鉄板に流し込み、焼成して非装飾のケーキ焼成体を準備する。
また、焼き付けようとする模様を模様型材に描写、印刷、コピー等により描き、その模様をくり抜いて、模様型を用意する。
さらに、即席コーヒー粉末をすり鉢ですって細粉の可食色材を準備する。
【0021】
次に、製造工程の一部を示す図1のように、上記のように付けたい模様部3を有する模様型2をケーキ焼成体1の模様を付ける部分の上に置く。次に可食色材を模様型の模様を表現するように振りかけて付着させる。なお、この場合において、均一に散布するように、ふるい、茶こし等を用いても良い。そして、その可食色材が散らないようにカバーなどをして、電子レンジで数10秒、例えば600W電子レンジで10〜30秒、加熱して、可食色材をケーキ体と一体化して模様付き焼き菓子を得る。
【0022】
上記のようにして得たホットケーキは、加熱により模様と生地が良く一体化し、視覚的に違和感がなかった。また、食した場合にも、即席コーヒーの味が気になるというほどのことがなく、違和感がなかった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の模様付き焼き菓子の製造方法の1実施例の1工程の状態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ケーキ焼成体
2 模様型材
3 模様部
4 可食色材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
付着させたい絵、文字、模様などの模様部を有する模様型を用意し、該模様型を模様を付けたい焼き菓子表面に当て、可食色材を模様部から前記焼き菓子表面に付着させ、その後、焼き菓子を加熱して模様部と本体部を一体化することを特徴とする模様付き焼き菓子の製造方法。
【請求項2】
前記模様型が付着させたい絵、文字、模様などの模様部がくり抜かれたものであり、該模様部を通過させて前記可食色材を前記焼き菓子表面に付着させる請求項1記載の模様付き焼き菓子の製造方法。






【図1】
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【公開番号】特開2007−82443(P2007−82443A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273566(P2005−273566)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(505356457)
【Fターム(参考)】