説明

模様紙およびその製造方法

【課題】紫外線を含む光の照射によって不規則な連続模様が発現し、かつ良好な印刷適性を有する模様紙およびその製造方法の提供。
【解決手段】蛍光剤の水溶液および/または分散液と粘剤を混合して増粘させ、これを抄紙機のワイヤー上の湿紙に滴下、流送、スプレーの内の一つ以上の方法で添加し、抄紙機のシェーキング作用を調整することにより拡散させる。あるいは、基紙を製造するための原料スラリー中にカチオン性物質を添加しておき、これにアニオン性基を有する水溶性高分子を添加した蛍光剤の水溶液および/または分散液を、抄紙機のワイヤー上の湿紙に滴下、流送、スプレーの内の一つ以上の方法で添加し、抄紙機のシェーキング作用を調整することにより拡散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模様紙およびその製造方法に関するものである。詳しくは、紫外線を含む光の照射によって不規則な連続模様が発現し、かつ、良好な印刷適性を有する模様紙およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光染料や蛍光顔料および/またはそれらを使用した蛍光粒子、蛍光繊維、蛍光塗料を塗布や内添した紙や、フィルムの細片などの蛍光物質を用紙中に含ませた、蛍光発色する模様紙は過去からいくつか提案されていた。
【0003】
例えば、特許文献1では水溶性高分子に蛍光物質と凝集剤を添加し、得られたゲル状粒子を抄紙機のワイヤー上の湿紙に流下させることにより、星雲状の粒子群を形成する紙が提案されている。しかし、この方法ではゲル状粒子が紙の表面に偏在するために、オフセット印刷を行った際にインキがゲル状粒子の上にのってインキが光沢をおびたり、さらには、インクジェット印刷を行う際に、ゲル状粒子の部分においてインク吸収性が変化し、その結果白抜け現象が発生するという問題があった。
【0004】
また、特許文献2では、基紙を製造するためのスラリー中にカチオン性物質を含ませ、このスラリーが抄紙機のワイヤー上で湿紙になった状態において、湿紙中のカチオン性物質と反応して増粘もしくはゲル化する薬品と色料液、もしくは両者の混合液を供給することを特徴とする染色模様紙の製造方法が提案されている。しかし、模様を色料液でつけるために有彩色の模様しか発現せず、目視による判別ができるだけであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3915014号公報
【特許文献2】特許第2942703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記したような問題を解決することを課題とする。詳しくは、良好な印刷適性を有し、かつ紫外線を含む光の照射によって不規則な連続模様が発現する模様紙およびその製造方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明の請求項1に係る発明は、紫外線を含む光の照射により不規則な連続模様に蛍光発色することを特徴とする模様紙である。
【0008】
本発明の請求項2に係る発明は、蛍光剤として、蛍光染料および/または蛍光顔料を1種類以上使用することを特徴とする、請求項1に記載の模様紙である。
【0009】
本発明の請求項3に係る発明は、蛍光剤の水溶液および/または分散液と粘剤を混合して増粘させ、これを抄紙機のワイヤー上の湿紙に滴下する方法、流送する方法、およびスプレーする方法のうち一つ以上の方法で添加し、抄紙機のシェーキング作用を調整することにより拡散させることを特徴とする、請求項1または2に記載の模様紙の製造方法である。
【0010】
本発明の請求項4に係る発明は、基紙を製造するための原料スラリー中にカチオン性物質を添加しておき、これにアニオン性の水溶性高分子を添加した蛍光剤の水溶液および/または分散液を、抄紙機のワイヤー上の湿紙に滴下、流送、スプレーの内の一つ以上の方法で添加し、抄紙機のシェーキング作用を調整することにより拡散させることを特徴とした、請求項1または2に記載の模様紙の製造方法である。
【0011】
本発明によれば、紫外線を含む光のもとで不規則な連続模様の蛍光発色を呈する模様紙を製造することができ、新規な感覚の模様紙であると共に全く同一の模様が存在しないことから装飾性と共に高い偽造防止効果をも発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で使用する模様紙の基紙の主原料としては、一般的に製紙用として使用される繊維を使用することができる。例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSB)等の化学パルプ、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ等といった木材パルプや、麻、楮、雁皮、三椏等の靭皮繊維、コットン、コットンリンター、ワラ、バガス、エスパルト等の非木材繊維、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ビニロン、レーヨン等の合成繊維、半合成繊維、再生繊維、あるいはアルミナ繊維、シリケート繊維、アルミナシリケート繊維、ロックウール等の無機繊維が必要に応じて適宜使用することができる。本発明では上記した製紙用繊維の単独もしくは混合物を通常300〜500mlC.S.F.、好ましくは350〜450mlC.S.F.に叩解し、さらにサイズ剤、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、染料、顔料、填料、スライムコントロール剤、歩留向上剤等の製紙用副資材を適宜使用することもできる。
【0013】
本発明で使用する蛍光剤としては、蛍光染料や蛍光顔料を適宜使用することができる。蛍光染料としては、フルオレッセイン、クマリン系、オキサゾール系、ピラゾリン系、チアジアゾール系、スピロピラン系、ピレンスルホン酸系、ベンゾイミダゾール系、ジアミノスチルベン系等を使用することができる。蛍光顔料としては、有機および/または無機の蛍光顔料をいずれも使用できる。有機の蛍光顔料としては、ポリ塩化ビニル樹脂、アルキッド樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等の樹脂にフルオレッセイン、エオシン、ローダミン6G、ローダミンB、ベーシックイエローHG等の染料を均一に溶解させ粉砕させたもの等を使用することができる。また無機の蛍光顔料としては銅、銀、マンガン等で活性化した硫化亜鉛、マンガン等で活性化したケイ酸亜鉛、銀、銅等で活性化した硫化亜鉛カドミウム、ビスマス等で活性化した硫化カルシウム、サマリウム、セリウム等で活性化した硫化ストロンチウム、鉛等で活性化したタングステン酸カルシウム、ユーロピウム等で活性化したSr(POCl、マンガン等で活性化したZnGeO、ユーロピウム等で活性化したYS等を挙げることができる。また、これらにアントラキノン系やアセトフェノン系等の増感剤を併用することも適宜行うことができる。
【0014】
蛍光剤の水溶液および/または分散液と粘剤を混合して増粘させ、これを抄紙機のワイヤー上の湿紙に滴下、流送、スプレーの内の一つ以上の方法で添加し、抄紙機のシェーキング作用を調整することにより拡散させて模様紙を製造する方法においては、使用する粘剤としては、天然系および/または合成系の水溶性高分子をいずれも使用できる。天然系水溶性高分子としては、澱粉、ゴム、ガム類、カゼイン、ニカワ、ペクチン、トロロアオイ、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等が使用できる。合成系水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等を使用することができる。
【0015】
上記の製造方法で粘剤を添加、混合した蛍光剤の水溶液および/または分散液の粘度は、JIS Z 8803(1991)で示された単一円筒型回転粘度計で測定した粘度が、温度が20℃の時で50〜1000mPaのものが好ましい。粘度が50mPa未満であると不規則な連続模様が形成できず、粘度が1000mPaを超えると、蛍光剤を抄紙機のワイヤー上の湿紙に添加するためのパイプや噴霧器、振りかけ装置等が詰まる原因になるので好ましくない。
【0016】
蛍光剤の水溶液および/または分散液と粘剤を混合して増粘させ、もしくは蛍光剤の水溶液および/または分散液とアニオン性の水溶性高分子を添加、混合した蛍光剤の水溶液および/または分散液を、抄紙機のワイヤーの上方に設置したパイプや噴霧器、振りかけ装置等で抄紙機のワイヤー上の湿紙に添加する。具体的な例として以下に示す。
パイプに穴をあけて滴下もしくは噴出する。金属製もしくはプラスチック製等のパイプに穴をあけて、パイプに上記の水溶液および/または分散液を供給して抄紙機のワイヤー上の湿紙に滴下する。もしくは穴をあけて噴出させる。
金属製もしくはプラスチック製等のパイプに上記の水溶液および/または分散液を供給して抄紙機のワイヤー上の湿紙に滴下する。もしくは圧力をかけて噴出させる。
噴霧器を使用して、上記の水溶液および/または分散液を抄紙機のワイヤー上の湿紙に噴霧させる。
4) 抄紙機のワイヤーの走行方向とほぼ直角に設置された振りかけ装置で上記の水溶液および/または分散液を抄紙機のワイヤー上の湿紙に流出させる。
【0017】
ワイヤー上の湿紙に添加した、蛍光剤の水溶液および/または分散液と粘剤を混合して増粘させ、もしくは蛍光剤の水溶液および/または分散液とアニオン性の水溶性高分子を添加、混合した蛍光剤の水溶液および/または分散液を、抄紙機のシェーキング作用を調節させて拡散させることで、不規則な連続模様にすることができる。本発明の抄紙機のシェーキング作用とは、抄紙機のワイヤーを、走行方向に対して直角の水平方向に振動させることで、原料スラリー供給時に繊維を分散させる動きのことである。通常は抄紙機のワイヤー上でパルプスラリーの地合いが均等になるようにシェーキングさせるが、本発明においては通常よりも弱いシェーキングを行うことにより、蛍光剤の水溶液および/または分散液と粘剤を混合して増粘させ、もしくは蛍光剤の水溶液および/または分散液とアニオン性の水溶性高分子を添加、混合した蛍光剤の水溶液および/または分散液が抄紙機のワイヤー上で不規則な動きを行い、これによって連続した不規則模様が形成されるのである。
【0018】
本発明において、基紙を製造するための原料スラリー中にカチオン性物質を添加しておき、これにアニオン性の水溶性高分子を添加した蛍光剤の水溶液および/または分散液を、抄紙機のワイヤー上の湿紙に滴下、流送、スプレーの内の一つ以上の方法で添加し、抄紙機のシェーキング作用により拡散させて模様紙を製造する方法においては、使用するカチオン性物質としては、有機性物質であっても無機性物質であってもかまわない。無機性カチオン性物質としては、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、カリ明礬、アンモニウム明礬、塩化カルシウム、硫化第一鉄、硫化第二鉄、塩化第二鉄、アルミン酸ソーダ等が、有機性カチオン性物質としては、カチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性澱粉、カチオン性ポリアミン−ポリアミド−エピクロヒドリン樹脂等が使用できる。
【0019】
蛍光剤の水溶液および/または分散液に添加するアニオン性の水溶性高分子としては、アニオン性の天然系および/または合成系の水溶性高分子を使用することが好ましい。アニオン性の天然系の水溶性高分子としては、アルギン酸、アルギン酸ソーダ、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルグアーガム、カルボキシメチルキサンタンガム、カルボキシメチルタラガム、低メトキシルペクチン、カラギーナン等が、アニオン性の合成系の水溶性高分子としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ等が使用できる。
【0020】
このような方法により、紫外線を含む光の照射により不規則な連続模様に蛍光発色することを特徴とする模様紙を得ることができる。
【0021】
本発明の模様紙の基紙に、既存の偽造防止技術、例えばすき入れ、各種のスレッドすき込み、各種の細片や微粒子のすき込みや振りかけなどの加工を併用することで、偽造防止効果をより高めることができるので好ましい。
【実施例】
【0022】
[実施例1]
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)30質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)70質量部(乾燥質量部、以下同じ)よりなるパルプを400mlC.S.F.に叩解し、これに紙力増強剤(商品名「ポリストロン191」荒川化学工業(株)製)0.3質量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」荒川化学工業(株)製)を1.0質量部、硫酸バンドを適量添加し、原料を調製した。この原料を長網抄紙機を使用して坪量100g/mで抄紙した。この抄紙の際、下記の水溶液を抄紙機のワイヤー上の湿紙に対して滴下し、かつ、抄紙機のシェーキング作用を弱めに設定して下記の水溶液を抄紙機の湿紙に連続した不規則模様を描くように拡散させ、模様紙を製造し、これを実施例1のサンプルとした。
ポリビニルアルコール(商品名「PVA205」(株)クラレ製) 22質量部
蛍光染料(商品名「ケイコールBU‐LC」日本曹達(株)製) 0.5質量部
水 100質量部
【0023】
[実施例2]
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)30質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)70質量部よりなるパルプを400mlC.S.F.に叩解し、これに紙力増強剤(商品名「ポリストロン191」)0.3質量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」)1.0質量部、硫酸バンドを5.0質量部添加し、原料を調製した。この原料を長網抄紙機を使用して坪量100g/mで抄紙した。この抄紙の際、下記の水溶液を抄紙機のワイヤー上の湿紙に対して滴下したほかは実施例1と同様にして模様紙を製造し、これを実施例2のサンプルとした。
アルギン酸ソーダ 0.3質量部
蛍光染料(商品名「ケイコールBU‐LC」日本曹達(株)製) 0.5質量部
水 100質量部
【0024】
[実施例3]
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)30質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)70質量部よりなるパルプを400mlC.S.F.に叩解し、これに紙力増強剤(商品名「ポリストロン191」)0.3質量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」)1.0質量部、硫酸バンドを適量添加し、原料を調製した。この原料を長網抄紙機を使用して坪量100g/mで抄紙した。この抄紙の際、下記の水溶液を抄紙機のワイヤー上の湿紙に対して滴下したほかは実施例1と同様にして模様紙を製造し、これを実施例3のサンプルとした。
ポリビニルアルコール(商品名「PVA205」(株)クラレ製) 22質量部
蛍光染料(商品名「ケイコールBU‐LC」日本曹達(株)製) 0.5質量部
蛍光顔料1(Mn活性化ZnGeO粒子、普通光のもとでは白色、紫外線を含む光の照射では緑色に発光する) 0.5質量部
蛍光顔料2(Eu活性化YS粒子、普通光のもとでは白色、紫外線を含む光の照射では赤色に発光する) 0.5質量部
水 100質量部
【0025】
[比較例1]
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)30質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)70質量部よりなるパルプを400mlC.S.F.に叩解し、これに蛍光染料(商品名「ケイコールBU‐LC」)0.5質量部、紙力増強剤(商品名「ポリストロン191」)0.3質量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」)を1.0質量部、硫酸バンドを適量添加し、原料を調製した。この原料を長網抄紙機を使用して坪量100g/mで抄紙し、これを比較例1のサンプルとした。
【0026】
[比較例2]
蛍光染料を使用しないほかは実施例1と同様にして坪量100g/mの紙を抄紙し、これを比較例2のサンプルとした。
【0027】
[比較例3]
水100質量部に、酸化デンプン(商品名「SK−100」日本コーンスターチ(株)製)1.0質量部とカルボキシメチルセルロース(商品名「サンローズF100MC」日本製紙ケミカル(株)製)0.6質量部を加え、攪拌、分散後、加熱、溶解する。酸化デンプンとカルボキシメチルセルロースの溶解液に、蛍光染料(商品名「ケイコールBU‐LC」日本曹達(株)製)1.0質量部、カチオン性ポリアクリルアミド(商品名「DH4160」星光PMC(株)製)2.1質量部、硫酸バンド1.0質量部、アルミン酸ソーダ0.5質量部を順に添加することで、酸化デンプンとカルボキシメチルセルロースの溶解液が凝集し、蛍光染料を含むゲル状粒子を得た。これとは別に針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)30質量部、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)70質量部よりなるパルプを400mlC.S.F.に叩解し、これに紙力増強剤(商品名「ポリストロン191」)0.3質量部、サイズ剤(商品名「サイズパインE」)1.0質量部、硫酸バンドを適量添加し、原料を調製した。この原料を長網抄紙機を使用して坪量100g/mで抄紙した。この抄紙の際、上記の方法で得たゲル状粒子を抄紙機のワイヤー上の湿紙に対して流下して製造し、これを実施例3のサンプルとした。
【0028】
実施例1〜3および比較例1〜3について、以下の評価試験を行い、その結果を表1に示した。
【0029】
[紫外線照射による蛍光発色性]
各サンプルについてブラックライト(商品名「ブラックライトブルーFL10BL‐B」パナソニック(株)製造)を30cmの距離で照射したとき、連続した不規則模様の蛍光発色をするものを合格とした。
【0030】
[印刷適性−1]
藍色のインキ(商品名「ハイユニティ藍 MZ」東洋インキ(株)製)1.0gをRI−I型印刷機(明製作所(株)製)によって紙に印刷し、これを目視観察するとき印刷ムラがないものを合格とした。
【0031】
[印刷適性−2]
セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−4300を使用して、印刷の設定は普通紙、きれいモードにて写真画像を印刷し、これを目視観察するときインクの白抜けがないものを合格とした。
【0032】
表1

【0033】
実施例1〜3は、いずれも紫外線を含む光の照射により連続した蛍光発色した不規則模様を呈し、特に実施例3においては、ブラックライトの照射によって白色、緑色、赤色の3色に蛍光発色した、連続した不規則模様が観察された。また、かつ、オフセット印刷やインクジェット印刷においても何らの問題も生じなかった。これに対し、比較例1は紫外線を含む光の照射により、用紙全体が蛍光発色したため、連続した不規則模様は確認されなかった。比較例2は、蛍光発色する物質を含まないため、紫外線を含む光を照射しても、何らの蛍光発色も呈さなかった。比較例3ではオフセット印刷によって印刷ムラが、インクジェット印刷によってインクの白抜けが確認された。このことは、実施例1〜3では、蛍光発色物質を含有する水溶液や、スラリー中のカチオン、アニオン反応によるゲル化を利用して蛍光発色する、連続した不規則模様を発現させているが、この場合は蛍光発色物質を含む材料が抄紙中のウエブの中にまで入り込み、シノ表面に偏在するようなことが無いのに対し、比較例3においては、蛍光発色物質を含むゲル状の粒子を予め作成しておき、これを抄紙機の湿紙上に振り掛ける形となるため、蛍光発色物質を含むゲル状粒子は湿紙の表面付近に偏在する形になると考えられる。この結果、紙の組成と全く異なる組成の物質が紙表面に存在することになるため、オフセット印刷時のインキののりや、インクジェット印刷のときのインク吸収性に差が発生し、印刷不良になると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の模様紙は、紫外線を含む光を照射することで、蛍光を発する連続した不規則模様を呈し、かつ、同じ模様が再現されないことから偽造防止用紙、装飾紙、文房具などに好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を含む光の照射により不規則な連続模様に蛍光発色することを特徴とする模様紙。
【請求項2】
蛍光剤として、蛍光染料および/または蛍光顔料を1種類以上使用することを特徴とする、請求項1に記載の模様紙。
【請求項3】
蛍光剤の水溶液および/または分散液と粘剤を混合して増粘させ、これを抄紙機のワイヤー上の湿紙に滴下する方法、流送する方法、およびスプレーする方法のうち一つ以上の方法で添加し、抄紙機のシェーキング作用を調整することにより拡散させることを特徴とする、請求項1または2に記載の模様紙の製造方法。
【請求項4】
基紙を製造するための原料スラリー中にカチオン性物質を添加しておき、これにアニオン性の水溶性高分子を添加した蛍光剤の水溶液および/または分散液を、抄紙機のワイヤー上の湿紙に滴下、流送、スプレーの内の一つ以上の方法で添加し、抄紙機のシェーキング作用を調整することにより拡散させることを特徴とした、請求項1または2に記載の模様紙の製造方法。

【公開番号】特開2010−189776(P2010−189776A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32462(P2009−32462)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000225049)特種製紙株式会社 (45)
【Fターム(参考)】