説明

横向溶接法及びそのための接合構造

【課題】横向溶接法及びそれに適した接合構造を提供する。
【解決手段】 2つの部品間に溶接接合部を形成する方法であって、本方法は、第1の部品(100)と第2の部品(200)を整列させて、第1の部品(100)と第2の部品(200)の間に、第1の部品(100)の突出部(122)と第2の部品(200)の陥凹部(222)とを含む接合部(300)であって、突出部(122)と陥凹部(222)とが相補的な形状を有する接合部(300)を形成するステップと、各々の主軸線(140,240)が縦向きに配向されるように第1の部品(100)と第2の部品(200)を配向するステップと、接合部(300)に沿って位置した略横向配向根元開口部(310)で第1の部品(100)と第2の部品(200)を溶接するステップ(730)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、総括的には溶接方法に関し、より具体的には、横向姿勢に溶接する方法及びそのような方法に適した接合部(継手)構造に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンロータなどの装置の製作には、部材のガスタングステンアーク溶接(GTAW)を必要とすることが多い。GTAWは、高性能機械で所望されることの多い異なるベース材料(基材)を有する部品を接合する能力を含む機械的特性の向上を可能にする。溶融池に導入する前に金属フィラーをその融点に近い温度に予加熱する「熱線」GTAWは、「冷線」GTAWよりも一般的に高速かつ効率的であるので多くの場合に好ましく、このことは、金属フィラーを溶融する電気アークによる加熱に全面的に依存している。
【0003】
公知のGTAW方法、特に熱線GTAW方法の欠点は、それらが下向き姿勢の溶接に限定されることである。つまり、そのような方法は、下向きに溶接接合部に面した電極を用いて溶接することを必要とする。従って、蒸気タービンロータなどの装置の製作においてGTAW、特に熱線GTAWを採用することは一般的に、溶接接合部を適切に配向させるために大型の部品を取扱いかつ移動させることを必要とする。そのように取扱いかつ移動させることは、必然的に効率を低下させかつ装置を製作するコストを上昇させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5280849号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本発明は、2つの部品間に溶接接合部を形成する方法を提供し、本方法は、第1の部品と第2の部品を整列させて、第1の部品と第2の部品の間に、第1の部品の突出部と第2の部品の陥凹部とを含む接合部であって、突出部と陥凹部とが相補的な形状を有する接合部を形成するステップと、各々の主軸線が縦向きに配向されるように第1及び第2の部品を配向するステップと、接合部に沿って位置した略横向配向根元開口部で第1の部品と第2の部品を溶接するステップとを含む。
【0006】
別の実施形態では、本発明は、装置の2つの金属部品間に溶接接合部を形成する方法を提供し、本方法は、略円筒形本体、本体の表面に沿っておりかつ突出部を備えた合せ面、及び合せ面から離れる方向にかつ本体に向けて延在する凹面形面を有する第1の部品を準備するステップと、略円筒形本体、本体の表面に沿っておりかつ第1の部品の合せ面の突出部の形状と相補的な形状を有する陥凹部を備えた合せ面、及び合せ面から離れる方向にかつ本体に向けて延在する凹面形面を有する第2の部品を準備するステップと、第1の部品の合せ面の突出部が第2の部品の合せ面の陥凹部に位置しかつ第1及び第2の部品の凹面形面が第1及び第2の部品の略円筒形本体の隣接する表面に沿って横向配向根元開口部を形成するように、第1の部品と第2の部品を整列させるステップと、横向配向根元開口部にわたって第1の部品を第2の部品に溶接するステップとを含む。
【0007】
さらに別の実施形態では、本発明は、タービンロータを提供し、本タービンロータは、第1の本体、第1の本体の表面に沿っておりかつ突出部を備えた第1の合せ面、及び第1の合せ面から離れる方向にかつ第1の本体に向けて延在する第1の凹面形面を有する第1の部品と、第2の本体、第2の本体の表面に沿っておりかつ第1の合せ面の突出部の形状と相補的な形状を有する陥凹部を備えた第2の合せ面、及び第2の合せ面から離れる方向にかつ第2の本体に向けて延在する第2の凹面形面を有する第2の部品と、第1及び第2の凹面形面によって形成された第1の部品と第2の部品の間の根元開口部と、根元開口部内に位置し、突出部及び陥凹部によって形成されかつ根元開口部の中心部からオフセットした接合部とを含む。
【0008】
本発明のこれらの及びその他の特徴は、本発明の様々な実施形態を示す添付図面と関連させてなした本発明の様々な態様の以下の詳細な説明から一層容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態による接合部構造を形成するのに適した装置の部品の側面断面図。
【図2】整列して接合部を形成した、図1の部品。
【図3】図2の部品のより広範囲の側面断面図。
【図4】本発明の実施形態により溶接した、図3の部品を示す図。
【図5】本発明の別の実施形態による整列した部品の側面断面図。
【図6】本発明の実施形態による方法の流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の図面は正確な縮尺でないことに留意されたい。図面は、本発明の典型的な態様のみを示すことを意図しており、従って本開示の技術的範囲を限定するものとして考えるべきではない。図面を通して、類似の要素には同じ符号を付した。
【0011】
次に図面を参照すると、図1は、蒸気タービンロータなどの装置の第1の部品100及び第2の部品200の側面断面図を示す。第1の部品100及び第2の部品200の各々は、それぞれ本体110,210、合せ面120,220、及び合せ面120,220から離れる方向にかつ本体110,210に向けて延在する凹面形面130,230を備える。合せ面120,220は、接合部(継手)構造を形成することができる略相補的な形状をもつ。図1に示すように、第1の部品100の合せ面120は、合せ面120から外向きに延在する突出部122を含み、一方、第2の部品200の合せ面220は、その中に突出部122を配置することができる陥凹部222を含む。
【0012】
図2は、本発明の実施形態により接合位置にありかつ接合部300を形成した第1の部品100及び第2の部品200を示す。図2で分かるように、第1の部品100の凹面形面130及び第2の部品200の凹面形面230は、根元開口部310(つまり、それに沿って溶接部を形成することができる部品間の開口部)を形成する。第1の部品100及び第2の部品200は、最終的には根元開口部310で溶接することによって接合される。従って、根元開口部310への金属フィラーの堆積は、その角度付き形状によって可能になる。つまり、凹面形面130の少なくとも一部分は、水平面320の上方に角度αを形成し、凹面形面230の少なくとも一部分は、水平面320の下方に角度βを形成する。角度α及びβは各々独立に約0°〜約10°である。幾つかの実施形態では、各々は、約3°〜約7°である。幾つかの実施形態では、各々は、約5°である。当業者には解るようにまた以下により詳細に説明しかつ示すように、水平面320は、第1の部品100及び第2の部品200の半径方向軸線又は半径方向平面に沿って或いは平行に位置する。
【0013】
図2で分かるように、接合部300は、そこを通って水平面320が位置している根元開口部310の中心部からオフセット330している。つまり、そこにおいて根元開口部310内で第1の部品100及び第2の部品200が接触する箇所は、根元開口部310の中心部からオフセットしている。図2では、オフセット300は、突出部112を有する部品、つまり第1の部品100に向けて変位しているが、このことは絶対必要なことではない。
【0014】
図3は、図2の第1の部品100及び第2の部品200のより広範囲の側面図を示す。図3で分かるように、第1の部品100及び第2の部品200は各々、それぞれボア150,250、長手方向軸線140,240、並びに複数の半径方向軸線142、144及び242、244を有する略円筒形の又は管状の本体110,210を含むことができる。本体110及び210は、略円筒形又は管状であるものとして上記しているが、図3の断面図は各本体の弓形セグメントのみを示していることに注目されたい。根元開口部310は、それぞれ第1の部品100及び第2の部品200の外表面112、212に沿って開口している。第1の部品100及び第2の部品200は各々さらに、それぞれそれらのボア150,250に沿って形成された内表面114、214を含む。
【0015】
図4は、溶接作業の間にそれらの長手方向軸線140,240が略垂直方向に(縦向きに)配向された姿勢になっている第1の部品100及び第2の部品200を示す。従って、それら部品の半径方向軸線142、144及び242、244並びに根元開口部310は、略水平方向に(横向に)配向されている。
【0016】
上述したように、公知のGTAW方法、特に熱線GTAW方法は、下向き姿勢(つまり、根元開口部310が上向きに面した状態)で溶接することに限定される。しかしながら、図4に示すように、本発明の実施形態は、横向姿勢(つまり、根元開口部310が略横向に開口しかつ長手方向軸線140,240が略縦向きに配向された状態)で溶接するのを可能にするだけでなく、複数の溶接ヘッド700,702を使用するのを可能にする。つまり、溶接ヘッド700,702は、溶接部740を形成しながら各溶接ヘッド700,702を第1の部品100及び第2の部品200の周りを移動させるようにして、根元開口部310に沿った異なる箇所で同時に溶接730することができる。
【0017】
図4には、フィラーロッド720により根元開口部310に金属フィラーを堆積させながら接合部300に沿って溶接730する溶接ヘッド700を示す。当業者には解るように、シールドガス710,712が、酸素及び窒素のような大気ガスから溶接ステップ730を保護する。好適なシールドガス710,712としては、特に限定されないが、アルゴン、ヘリウム、水素及びそれらの混合物が挙げられる。
【0018】
いうまでもなく、根元開口部310に堆積させる金属フィラーは、部品の材料を始めとする多くの要因に応じて変化する。好適な金属フィラーとしては、特に限定されないが、ニッケル合金、ステンレス鋼、低合金鋼、高合金鋼及びそれらの混合物が挙げられる。
【0019】
部品自体の組成に関しては、多くの材料を採用することができること、それら材料は、例えば部品又は最終装置の用途に応じて変化することは、当業者には自明であろう。従って、場合によっては、部品自体は、異なる材料を含むことができる。このことは、例えば変化する温度の蒸気が異なる部品に接触するような蒸気タービンロータで使用する部品の場合には、よくあるケースである。そのようなケースでは、各部品の材料を部品が曝される蒸気の温度に基づいて選択し、それによって熱膨張のような要因を制御するようにするのが望ましいと言える。部品が独立に含むことができる材料の非限定的な具体例としては、例えばステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル合金、低合金鋼、高合金鋼及びそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
図5は、本発明の別の実施形態を示しており、この実施形態では、根元開口部610は、それぞれ第1の部品400及び第2の部品500の内表面414,514に沿って開口している。つまり、根元開口部610は、それぞれ第1の部品400及び第2の部品500のボア450,550内に開口している。従って、根元開口部610内における接合部600に溶接部を形成するステップは、1つ又は両方のボア450,550に溶接装置を通すことを必要とする。図4に示す実施形態におけるのと同様に、複数の溶接ヘッドを使用して略横向姿勢で溶接するステップが、実施可能になる。
【0021】
図6は、本発明の実施形態による方法の流れ図を示す。ブロックAにおいて、第1の部品100及び第2の部品200(図4)が整列して、第1の部品100の合せ面120(図1)上の突出部122(図1)が第2の部品200の合せ面220(図1)上の陥凹部222(図1)内に位置するようになる。それによって、根元開口部310(図2)が、第1の部品100及び第2の部品200の凹面形面130,230(図2)によって形成される。ブロックBにおいて、第1の部品100と第2の部品200は、それらの長手方向軸線140,240がそれぞれ略縦向きになりかつそれらの半径方向軸線142,144及び242,244が略横向になるように配向される。当業者には自明であろうが、ブロックAの整列ステップ及びブロックBの配向ステップは、いずれかの順序又は一緒に実行することができる。つまり本発明の幾つかの実施形態では、第1の部品100及び第2の部品200は、最初に互いに整列させ、次いでそれらの長手方向及び半径方向軸線が説明したように配向されるように配向することができる。本発明の他の実施形態では、第1の部品100及び第2の部品200は、最初にそれらの長手方向及び半径方向軸線が説明したように配向されるように配向し、次いで互いに整列させることができる。本発明のさらに他の実施形態では、第1の部品100及び第2の部品200の整列と配向を同時に行ってもよい。
【0022】
ブロックCにおいて、根元開口部310内に、任意選択的に金属フィラーを導入することができる。そのようなケースでは、金属フィラーは、ブロックDにおいて任意選択的にその融点まで加熱する(熱線溶接法)ことができる。
【0023】
最後に、ブロックEにおいて、第1の部品100及び第2の部品200は、根元開口部310に沿って溶接730される(図4)。上述したように、ブロックEにおける溶接するステップは、略横向方向に行うことができ、GTAW方法を含むことができ、複数の溶接ヘッド700,702(図4)によって同時に溶接するステップを含むことができる。
【0024】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであり、本開示を限定することを意図するものではない。本明細書で使用する場合に、数詞を付していない表現は、文脈がそうでないことを明確に示していない限り、複数の形態もまた含むことを意図している。さらに、本明細書で使用する場合の「含む」及び/又は「含んでいる」という用語は、記述した特徴、回数、ステップ、操作、要素及び/又は構成部品の存在を特定するが、その他の特徴、回数、ステップ、操作、要素、構成部品及び/或いはそれらの群の存在又は付加を排除するものではないことを理解されたい。
【0025】
本明細書は最良の形態を含む実施例を使用して、本発明を開示し、当業者が、あらゆる装置又はシステムを製作しかつ使用しまたあらゆる関連又は組込み方法を実行することを含む本発明の実施を行うことを可能にもする。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲により定めており、当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。そのようなその他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言と相違しない構造的要素を含むか又はそれらが特許請求の範囲の文言と本質的でない相違を有する均等な構造的要素を含む場合には、特許請求の範囲の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0026】
100,400 第1の部品
110,410 本体
112,412 外表面
114,414 内表面
120 合せ面
122 突出部
130 凹面形面
140,440 長手方向軸線
142,144,442,444 半径方向軸線
150,450 ボア
200,500 第2の部品
210,510 本体
212,512 外表面
214,514 内表面
220 合せ面
222 陥凹部
230 凹面形面
240,540 長手方向軸線
242,244,542,544 半径方向軸線
250,550 ボア
300,600 接合部
310,610 根元開口部
320 水平面
330 オフセット
700,702 溶接ヘッド
710,712 シールドガス
720 フィラーロッド
730 溶接するステップ
740 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの部品間に溶接接合部を形成する方法であって、
第1の部品(100)と第2の部品(200)を整列させて、第1の部品(100)と第2の部品(200)の間に、第1の部品(100)の突出部(122)と第2の部品(200)の陥凹部(222)とを含む接合部(300)であって、突出部(122)と陥凹部(222)とが相補的な形状を有する接合部(300)を形成するステップと、
各々の主軸線(140,240)が縦向きに配向されるように第1の部品(100)と第2の部品(200)を配向するステップと、
前記接合部(300)に沿って位置した略横向配向根元開口部(310)で第1の部品(100)と第2の部品(200)を溶接するステップ(730)と
を含む方法。
【請求項2】
前記溶接するステップ(730)が、前記略横向配向根元開口部(310)に沿って溶接するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記溶接するステップ(730)が、複数の溶接ヘッド(700,702)を使用して同時に溶接するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記溶接するステップが、ガスタングステンアーク溶接(GTAW)を含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記GTAWが、アルゴン、ヘリウム、水素及びそれらの混合物からなる群から選択されるシールドガス(710,712)を使用する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記溶接するステップ(730)が、前記略横向配向根元開口部内に金属フィラー(720)を導入するステップをさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項7】
前記金属フィラー(720)が、ニッケル合金、ステンレス鋼、低合金鋼、高合金鋼及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記溶接するステップ(730)が、前記金属フィラー(720)を金属フィラー(720)の融点近くの温度に加熱するステップをさらに含む、請求項6記載の方法。
【請求項9】
第1の部品(100)が第1の材料を含み、第2の部品(200)が第1の材料とは異なる第2の材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
第1の部品(100)と第2の部品(200)が各々独立に、ステンレス鋼、炭素鋼、ニッケル合金、低合金鋼、高合金鋼及びそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の材料を含む、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−177790(P2011−177790A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−25524(P2011−25524)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】