説明

横型半導体装置

【課題】SOI基板のシリコン半導体層を薄膜化することによって横型の半導体装置の耐圧を高め、しかも大電流の通電時にシリコン半導体層が熱破壊されるまでの時間が短くなることを防止する。
【解決手段】IGBT1では、支持基板11と埋め込み酸化シリコン層12とシリコン半導体層13と絶縁層23とが順に形成されている。シリコン半導体層13は、エミッタ電極20に接しているエミッタ領域14と、コレクタ電極21に接しているコレクタ領域15と、ボディ領域17及びバッファ領域19の一部とドリフト領域16とからなる中央半導体領域とを備えている。絶縁層23の一部は、酸化シリコンよりも熱伝導性が高い材料で形成されているとともにドリフト領域16の真上に広がっている高熱伝導層27である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SOI基板を用いた横型の半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1に記載されるように、SOI基板を用いた横型のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が知られている。このIGBTでインバータ回路をスイッチングし、モータ等の電気機器に対する通電量を制御する。電気機器に短絡現象が生じると、IGBTに大電流が流れる。非特許文献1に記載のIGBTは、定格電流の8倍の電流が流れた場合に、8μsecの間は熱破壊しない耐性があると報告されている。したがって、IGBTに定格電流よりも大きな電流が流れたことをきっかけにしてゲート電圧を強制的にオフする保護回路を設けることによって、IGBTを熱破壊から保護することができる。熱破壊に至るまでの時間が8μsec程度あれば、それ以前に保護回路によってゲート電圧を強制的にオフすることが可能となる。
【0003】
SOI基板のシリコン半導体層の厚みを薄くすることにより、シリコン半導体層に形成されている半導体構造の耐圧を向上できることが知られている。非特許文献2には、厚みが4μmの埋め込み酸化シリコン層を有するSOI基板のシリコン半導体層の厚みを1μmにまで薄くすることによって、シリコン半導体層に形成されている半導体構造の耐圧を700Vにまで上昇できることが開示されている。また、本願発明者らによる実験よっても、厚みが4μmの埋め込み酸化シリコン層とを備えるSOI基板のシリコン半導体層の厚みを1.5μmにまで薄くすることによって、シリコン半導体層に形成されている半導体構造の耐圧を700Vにまで上昇できるという結果が得られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Akio Nakagawa et al,”Improvement in Lateral IGBT Design for 500V 3A One Chip Inverter ICs,ISPSD 1999, pp. 321−324
【非特許文献2】S.Merchan et al,”Realization of High Breakdown Voltage(>700V) in Thin SOI Devices” ISPSD1991, pp.31−35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したように、SOI基板のシリコン半導体層の厚みを薄くすることによって、シリコン半導体層に形成されている半導体構造の耐圧を上昇させることができる。しかしながら、シリコン半導体層の厚みを薄くすると、半導体層に定格電流以上の電流が流れる場合に、半導体層内で局所的に急速度で温度上昇するという現象が生じ、熱破壊までの時間が短縮化されるという問題が生じる。
【0006】
シリコン半導体層の下には埋め込み酸化シリコン層が配置されている。またシリコン半導体層の上にも、配線と半導体構造を絶縁する酸化シリコン層が配置されている。SOI基板のシリコン半導体層に半導体構造を形成すると、半導体構造の上下面に酸化シリコン層が積層されている構造となる。酸化シリコン層は、シリコン半導体層に比して、熱伝導率が低い。SOI基板のシリコン半導体層に半導体構造を形成すると、シリコン半導体層の上下面に低熱伝導層が積層されている構造となる。
【0007】
シリコン半導体層の上下面に低熱伝導層が積層されている構造においてシリコン半導体層を薄くすると、シリコン半導体層の局所的部位において発熱した場合、その熱を周囲に伝熱する能力が低くなり、その局所が急速度に温度上昇するという現象が生じる。
【0008】
半導体構造の耐圧を高めるためにシリコン半導体層の厚みを薄くすると、シリコン半導体層の半導体構造に定格電流以上の電流が流れる場合に、半導体構造内で局所的に急速度で温度上昇するという現象が生じ、熱破壊までの時間が短縮化されてしまう。したがって、ゲート電圧を強制的にオフする保護回路の動作時間が間に合わず、保護回路が作動する前に半導体構造が熱破壊されてしまう現象が生じやすい。
シリコン半導体層の半導体構造に大電流が流れて熱破壊される現象は、IGBTのみならず、LDMOS(Laterally Diffused MOS)やダイオードなどの半導体装置においても起こりうる。
【0009】
本明細書で開示される発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、SOI基板のシリコン半導体層を薄膜化することによって横型の半導体装置の耐圧を高め、しかも大電流の通電時にシリコン半導体層の半導体構造が熱破壊されるまでの時間が短くなることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書で開示される横型半導体装置は、支持基板と埋め込み酸化シリコン層とシリコン半導体層と絶縁層とが順に形成されており、絶縁層が形成されていない範囲においてシリコン半導体層に接している第1主電極と第2主電極とを備えている。そして、シリコン半導体層が、第1主電極に接している第1半導体領域と、第2主電極に接している第2半導体領域と、第1半導体領域と第2半導体領域との間に存在している中央半導体領域とを備えている。また、絶縁層の少なくとも一部が、酸化シリコンよりも熱伝導性が高い材料で形成されているとともに中央半導体領域の真上に広がっている高熱伝導層となっている。
【0011】
上記構成では、シリコン半導体層を薄膜化することで高耐圧を実現することができる。
上記構成の横型半導体装置が接続されている回路で短絡現象が生じると、シリコン半導体層に定格電流以上の電流が流れるために、中央半導体領域が発熱する。上記構成では、中央半導体領域の真上に高熱伝導層が広がっているため、この熱が高熱伝導層によって周囲に伝導し、中央半導体領域の一部が局所的に高温になることを抑制することができる。これにより、シリコン半導体層に形成されている半導体構造が熱破壊される温度にまで上昇するのに時間がかかるようになる。したがって、その間に安全装置等で対策し、半導体装置を保護することが可能となる。
【0012】
本明細書で開示される横型半導体装置では、高熱伝導層が、シリコン半導体層の表面に酸化シリコン層を介して形成されていることが好ましい。
【0013】
シリコン半導体層の表面に高熱伝導層を直接形成した場合、高熱伝導層を構成する材料によっては、シリコン半導体層と高熱伝導層との界面に電荷が生じることがあり、これにより、リーク電流が生じる可能性がある。この点、上記構成では、シリコン半導体層と高熱伝導層との間に酸化シリコン層を介在させているために、シリコン半導体層と絶縁層との界面に電荷が生じることを抑制し、リーク電流が生じることを抑制することができる。
【0014】
本明細書で開示される横型半導体装置の一つは、中央半導体領域に、第1半導体領域を包囲しているとともにゲート絶縁膜を介してゲート電極に対向しているp型のボディ領域と、そのボディ領域に隣接しているとともに第2半導体領域の近傍まで延びているn型のドリフト領域とを備えている。この横型半導体装置では、高熱伝導層が、ドリフト領域の真上に形成されていることが好ましい。
【0015】
上記構成の横型半導体装置が接続されている回路で短絡動作が生じると、シリコン半導体層に定格電流以上の電流が流れるために、ドリフト領域とボディ領域との界面近傍で集中的に発熱する。上記構成では、ドリフト領域の真上に高熱伝導層が広がっているために、この熱が高熱伝導層によって効率よく周囲に伝導し、この発熱部位が高温になるまでに時間がかかるようになる。これにより、ボディ領域とドリフト領域との間にあるp/n接合が熱的に消滅してシリコン半導体層の半導体構造に大電流が流れ続ける状態となるまでに時間がかかるようになる。したがって、シリコン半導体層の半導体構造が熱破壊されることを抑制することができる。
【0016】
また、この横型半導体装置では、ゲート絶縁膜が、酸化シリコン層で構成されており、高熱伝導層が、シリコン半導体層の表面にゲート絶縁膜の厚み以下の厚みの酸化シリコン層を介して形成されていることが好ましい。
【0017】
上記構成では、シリコン半導体層と高熱伝導層との間に酸化シリコン層を介在させているために、シリコン半導体層と絶縁層の界面に電荷が生じることを抑制して、リーク電流が生じることを抑制することができる。
【0018】
また、シリコン半導体層と高熱伝導層との間に介在する酸化シリコン層の厚みが、ゲート絶縁膜以下の厚みであり、薄く形成されている。したがって、シリコン半導体層で発熱が生じた場合に、この熱が高熱伝導層に伝導するにあたって、酸化シリコン層がさほど大きな障壁とはならない。したがって、シリコン半導体層で生じた熱を高熱伝導層によって適切に周囲に伝導させることができ、シリコン半導体層の半導体構造が熱破壊されることを抑制することができる。
【0019】
また、本明細書で開示される一つの横型半導体装置では、第1半導体領域がアノード領域であり、第2半導体領域がカソード領域である。中央半導体領域には、p/n接合の界面が存在している。この半導体装置は、ダイオードとして機能する。
【0020】
上記構成の横型半導体装置が接続されている回路で短絡動作が生じると、シリコン半導体層に定格電流以上の電流が流れるために、p/n接合の界面近傍で発熱する。上記構成では、この界面が存在する中央半導体領域の真上に高熱伝導層が広がっているために、この熱が高熱伝導層によって効率よく周囲に伝導し、この発熱部位が局所的に高温になるまでに時間がかかるようになる。これにより、アノード領域とカソード領域との間にあるp/n接合が熱的に消滅してシリコン半導体層の半導体構造に大電流が流れ続ける状態となるまでに時間がかかるようになる。したがって、シリコン半導体層の半導体構造が熱破壊されることを抑制することができる。
【0021】
本明細書で開示される横型半導体装置は、高熱伝導性の材料が、窒化シリコン又は窒化アルミニウムであることが好ましい。
【0022】
これらの材料は、酸化シリコンよりも熱伝導性が高いため、高熱伝導層の材料として利用することができる。また、これらの材料を用いることによって、横型半導体装置に要求される耐圧特性も実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本明細書で開示される横型半導体装置では、SOI基板のシリコン半導体層を薄膜化することによって耐圧を高めることができ、しかも大電流の通電時にシリコン半導体層の半導体構造が熱破壊されるまでの時間が短くなることを防止することができる
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1のIGBTの要部を示す断面図。
【図2】実施例1のIGBTが接続されているインバータ回路で短絡現象が発生した後における発熱スポットの温度変化を示すタイミングチャート。
【図3】実施例1の高熱伝導層の厚みと発熱スポットの最高温度との関係を示すグラフ。
【図4】実施例2のIGBTの要部を示す断面図。
【図5】実施例3のLDMOSの要部を示す断面図。
【図6】実施例4のPINダイオードの要部を示す断面図。
【図7】実施例5のESD保護ダイオードの要部を示す断面図。
【図8】従来のIGBTの要部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施例の特徴を説明する。
(特徴1)高熱伝導層は、酸化シリコンよりも熱容量が高い材料で構成されている。シリコン半導体層で発熱が生じた場合であっても、高熱伝導層が加熱されにくいために、短時間で高温となることがない。このことによっても、シリコン半導体層の中央半導体領域が高温になることを抑制することができ、半導体構造が熱破壊される温度にまで上昇するのに時間がかかるようになる。
(特徴2)IGBTとLDMOSでは、シリコン半導体層と高熱伝導層との間に介在する表側酸化シリコン層が、ゲート絶縁膜の酸化シリコン層と一体に形成されている。ゲート絶縁膜と表側酸化シリコン層とを個別に形成する必要がないため、製造工程の簡素化を図ることができる。
【実施例1】
【0026】
実施例1の横型半導体装置は、インバータ回路をスイッチングするIGBTである。実施例1に係るIGBTを図1〜図3、及び図8を参照して説明する。
図1に、IGBT1の要部断面図を模式的に示す。IGBT1では、支持基板11と埋め込み酸化シリコン層12とシリコン半導体層13とが順に形成されている。支持基板11の主材料はシリコンであり、接地電位に固定されている。埋め込み酸化シリコン層12の厚みは約4μmであり、シリコン半導体層13の厚みは約1.5μmである。このIGBT1では、シリコン半導体層13を薄膜化することで高耐圧を実現することができる。シリコン半導体層13の表面は、その大部分が絶縁層23により覆われている。
【0027】
シリコン半導体層13には、第1半導体領域としてのn型のエミッタ領域14と、第2半導体領域としてのp型のコレクタ領域15とを備えている。エミッタ領域14とコレクタ領域15との間には、n型のドリフト領域16が設けられている。
【0028】
エミッタ領域14は、シリコン半導体層13の表面の一部に設けられている。このエミッタ領域14は、p型のボディ領域17に包囲されている。ボディ領域17は、シリコン半導体層13の表面から裏面に亘る範囲に形成されている。p型のボディコンタクト領域18が、シリコン半導体層13の表面で、ボディ領域17の内部に設けられている。コレクタ領域15は、シリコン半導体層13の表面の他の一部に設けられている。このコレクタ領域15は、n型のバッファ領域19に包囲されている。バッファ領域19は、シリコン半導体層13の表面から裏面に至る範囲に形成されている。
【0029】
ドリフト領域16の一端はボディ領域17に接しており、他端はバッファ領域19に接している。ドリフト領域16は、ボディ領域17によりエミッタ領域14と分離され、バッファ領域19によりコレクタ領域15と分離されている。本実施例では、シリコン半導体層13において、エミッタ領域14とコレクタ領域15との間、すなわち、ボディ領域17及びバッファ領域19のドリフト領域16に隣接している側の一部とドリフト領域16とが、中央半導体領域を構成している。
【0030】
エミッタ領域14とボディコンタクト領域18の表面の一部は、絶縁層23が形成されておらず、第1主電極としてのエミッタ電極20に接触している。すなわち、エミッタ領域14とボディコンタクト領域18は、エミッタ電極20に電気的に接続している。また、コレクタ領域15の表面の一部は、絶縁層23が形成されておらず、第2主電極としてのコレクタ電極21に接触している。すなわち、コレクタ領域15は、コレクタ電極21に電気的に接続している。ボディ領域17の表面には、酸化シリコンからなるゲート絶縁膜22を介してゲート電極24が対向している。ゲート電極24には、ゲート配線25が接続されている。
【0031】
絶縁層23は、表側酸化シリコン層26と高熱伝導層27と層間絶縁膜層28とを備えている。この絶縁層23により、エミッタ電極20とコレクタ電極21とゲート電極24とが絶縁されている。なお、図示を省略するが、この絶縁層23の表面にも層間絶縁膜が形成されており、上記各電極20,21,24に接続される配線が互いに絶縁されている。
【0032】
表側酸化シリコン層26は、シリコン半導体層13の表面において、ドリフト領域16とバッファ領域19のドリフト領域16側の部位とを覆うようにして形成されている。この表側酸化シリコン層26は、ゲート絶縁膜22に連続して一体に形成されている。すなわち、本実施例では、便宜上、ボディ領域17とゲート電極24との間の部位をゲート絶縁膜22といい、それ以外の部位を表側酸化シリコン層26というが、これらは、シリコン半導体層13の表面で一体に形成される酸化シリコン層である。したがって、表側酸化シリコン層26の厚みは、ゲート酸化膜と同じ厚みである。なお、表側酸化シリコン層26の厚みは、ゲート絶縁膜22の厚みよりも薄くてもよく、換言すれば、表側酸化シリコン層26の厚みは、ゲート絶縁膜22の厚み以下であればよい。
【0033】
高熱伝導層27は、表側酸化シリコン層26の表面の大部分を覆うようにして形成されている。すなわち、高熱伝導層27は、シリコン半導体層13のドリフト領域16の表面に、表側酸化シリコン層26を介して形成されており、ドリフト領域16の真上に広がっている。本実施例では、シリコン半導体層13と高熱伝導層27との間に表側酸化シリコン層26を介在させているために、高熱伝導層27を形成する材料に拠らず、シリコン半導体層13と絶縁層23の界面に電荷が生じることが抑制され、リーク電流が生じることを抑制することができる。
【0034】
本実施例では、高熱伝導層27が窒化シリコンで構成されており、その厚みは1.3μmである。なお、高熱伝導層27は、酸化シリコンよりも熱伝導性が高い材料で形成すればよく、窒化アルミニウムを用いることもできるが、その材料は特に限定されない。表1に、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、及び窒化アルミニウムの熱伝導率及び熱容量を示す。
【表1】

【0035】
表1に示すように、シリコンの熱伝導率は、138W/m・Kあり、酸化シリコンの熱伝導率1.4W/m・Kの約100倍である。また、窒化シリコンの熱伝導率は、19W/m・Kであり、酸化シリコンの熱伝導率の約14倍である。窒化アルミニウムの熱伝導率は、285W/m・Kであり、酸化シリコンの熱伝導率の約200倍である。したがって、絶縁層23の全てを酸化シリコンで形成するよりも、その一部を高熱伝導性の窒化シリコンや窒化アルミニウムで形成したほうが、シリコン半導体層13内で発熱が生じた場合に、この熱を絶縁層23によって周囲へ伝導しやすくなり、シリコン半導体層13の温度上昇を抑制することができる。なお、熱伝導性の高い材料として窒化シリコンや窒化アルミニウムを用いることにより、IGBT1に要求される耐圧特性も実現することができる。
【0036】
また、表1に示すように、酸化シリコンの熱容量は、1.63×10J/m・Kであり、シリコンの熱容量1.67×10J/m・Kと略同じ値である。窒化シリコンの熱容量は、2.78×10J/m・Kであり、窒化アルミニウムの熱容量は、1.94×10J/m・Kであり、これらの熱容量は、酸化シリコンの熱容量よりも大きい。したがって、絶縁層23の全てを酸化シリコンで形成するよりも、その一部を高熱容量の窒化シリコンや窒化アルミニウムで形成したほうが、シリコン半導体層13内で発熱が生じた場合に、絶縁層23が温度上昇しにくく、このことによってもシリコン半導体層13の温度上昇を抑制することができる。そこで、本実施例では、絶縁層23の一部を、窒化シリコンからなる高熱伝導層27としている。
また、層間絶縁膜層28は、高熱伝導層27の周囲及び上方等に形成されており、酸化シリコンで構成されている。
【0037】
本実施例のIGBT1を利用するインバータ回路で通電制御する電気機器に短絡現象が生じた場合の作用を、図1〜図3、及び図8を示して説明する。図8は、従来のIGBT90を示している。従来のIGBT90では、絶縁層91が酸化シリコン層のみからなり、高熱伝導層が形成されていない。従来のIGBT90のその他の構成は、本実施例と同じであるため、同じ符号を付与している。
【0038】
インバータ回路では、電気機器に短絡現象が生じると、保護回路によって、短絡現象の発生から4μsec後にゲート電極24に印加している電圧(以下において、ゲート電圧という)を強制的にオフするようにしている。短絡現象が生じた場合、IGBT1やIGBT90では、定格電流よりも大きい値の電流が流れる。そのため、シリコン半導体層13では、図1及び図8において、ドリフト領域16におけるボディ領域17側の点Aで示す部位(以下において、発熱スポットという)で発熱し、この発熱が周囲に伝導する。
【0039】
図2は、短絡現象発生後の発熱スポットAの温度変化を示しており、実線Aは本実施例のIGBT1、破線Bは従来のIGBT90を示している。図2の実線A及び破線Bに示すように、短絡現象が生じると、発熱スポットAの温度が徐々に上昇する。短絡現象の発生から4μsec後でゲート電圧をオフしても、発熱スポットAの温度は即座に低下せず、その後の約1μsec間においては温度上昇する。その後、発熱スポットAの温度が徐々に低下する。図2に示すように、ゲート電圧をオフしてから約1μsec後、すなわち短絡現象の発生から約5μsec後が、IGBT1とIGBT90の発熱スポットAが最も高温となる。図1の破線E〜Gと、図8の破線B〜Gは、このときの等温線、すなわち、短絡現象の発生から5μsec経過後の等温線を示している。破線B,C,D,E,F,Gは、ぞれぞれ、1100K,1000K,900K,800K,700K,600Kの等温線を示している。
【0040】
図2の破線Bに示すように、従来のIGBT90では、発熱スポットAの最高温度が1170Kである。図8に示すように、従来のIGBT90は、短絡現象の発生から5μsec経過後には、ボディ領域17とドリフト領域16のp/n接合の界面近傍の温度が破線Eで示すように約800Kとなる。IGBT90では、シリコン半導体層13がその上下を厚い酸化シリコン層12,91で覆われている。酸化シリコンは表1に示したように熱伝導率が低いため、発生スポットAで発生した熱が上下の酸化シリコン層12,91を通じて周囲に伝導されにくく、図8に示すように、この熱は主としてシリコン半導体層13を横方向に広がる。したがって、発熱スポットAが1170Kにまで上昇し、ボディ領域17とドリフト領域16のp/n接合近傍も高温になる。この状態で、少しでも温度上昇が進むと熱的にp/n接合が消滅して大電流が流れ、シリコン半導体層13に形成される半導体構造が熱破壊される可能性がある。
【0041】
一方、図2の実線Aに示すように、本実施例のIGBT1では、発熱スポットAの最高温度が870Kとなる。また、図1に示すように、このIGBT1は、短絡現象の発生から5μsec経過後には、ボディ領域17とドリフト領域16のp/n接合の界面近傍で約650Kとなる。IGBT1では、ドリフト領域16の表面に表側酸化シリコン層26を介して高熱伝導層27が形成されており、この高熱伝導層27を構成する窒化シリコンは表1に示したように熱伝導率が酸化シリコンよりも高い。そのため、発生スポットAで発生した熱が高熱伝導層27を通じて効率よく周囲に伝導する。なお、シリコン半導体層13のドリフト領域16と高熱伝導層27との間には、表側酸化シリコン層26が介在しているものの、この厚みはゲート絶縁膜22の厚みと同じ厚みであり、薄く形成されている。そのため、ドリフト領域16の発熱スポットAで発熱が生じた場合には、この熱が高熱伝導層27に伝導するにあたって、表側酸化シリコン層26がさほど大きな障壁とはならない。したがって、ドリフト領域16で生じた熱を高熱伝導層によって適切に周囲に伝導させることができ、発熱スポットAで局所的に高温になることを抑制することができる。
【0042】
また、表1に示したように、高熱伝導層27を構成する窒化シリコンの熱容量は、酸化シリコンの熱容量よりも高い。したがって、高熱伝導層27は、発熱スポットAで発生した熱を吸熱しても、温度上昇しにくいために、短時間ではさほど高温にはならない。したがって、本実施例の高熱伝導層27が高熱容量であることによっても、シリコン半導体層13の温度上昇をより一層抑制することができる。
【0043】
高熱伝導層27の厚みは、以下のように設定されている。図3は、高熱伝導層27の厚みに対する発熱スポットAの最高温度を示している。図3に示すように、高熱伝導層27の厚みが厚くなるほど、発熱スポットAで発生した熱が高熱伝導層27を通じて周囲に伝導されやすくなるために、発熱スポットAの最高温度が低下している。なお、高熱伝導層27の厚みが4μm以上では、発熱スポットAの最高温度を低減させる効果がほぼ一定となる。したがって、高熱伝導層27の厚みは、1〜4μmに設定されることが好ましい。なお、本実施例では、高熱伝導層27の厚みが約1.3μmであるため、発熱スポットAの最高温度が870Kまで抑えられている。
【0044】
以上のように、本実施例のIGBT1は、絶縁層23の一部が高熱伝導層27であるために、回路内で短絡現象が発生した場合であっても、従来のIGBT90に比して、ボディ領域17とドリフト領域16との間にあるp/n接合の温度を低い温度に抑えることができる。したがって、このp/n接合がさらに温度上昇したとしても、熱的に消滅するまでにはある程度の時間的な余裕がある。これにより、保護回路によって短絡現象発生から4μsecでゲート電圧をオフするという対策を講じることにより、シリコン半導体層に形成される半導体構造を熱破壊から保護することが可能となる。
【実施例2】
【0045】
実施例2に係るIGBT2について、図4を参照して説明する。図4に、本実施例のIGBT2の要部断面図を模式的に示す。
実施例2は、実施例1とドリフト領域29の構成が異なる。なお、その他の構成は実施例1と同じであるため、同じ符号を用いて示し、その説明は省略する。
【0046】
図4に示すように、IGBT2のドリフト領域29は、不純物濃度が低い第1層29aと、不純物濃度が高く横方向に延びる第2層29bとを備えている。また、第2層29bでは、不純物濃度がコレクタ領域15側に向かうにしたがって順に高くなっている。なお、本実施例では、第2層29bの不純物濃度がコレクタ領域15側に向けて不連続に(階段状に)増加しているが、第2層29bの不純物濃度がコレクタ領域15側に向けて連続的に増加していてもよい。
【0047】
本実施例では、この第2層29bを設けているために、コレクタ電極21に電圧が印加されており且つゲート電圧がオフされている状態では、ドリフト領域29において電界強度を示す等電位線が横方向の全体に亘って均一となる。すなわち、ドリフト領域29内に局所的に電界が集中することが抑制され、IGBT2の耐圧をより高くすることができる。また、この状態でゲート電圧をオンした場合には、エミッタ領域14とコレクタ領域15とを結ぶ最短経路(ドリフト領域29の表面側の第1層29a)で伝導度変調が生じやすくなるため、第2層29bを表面側に形成した場合よりも、キャリアの移動抵抗が小さくなる。
【0048】
本実施例のIGBT2も、絶縁層23の一部が高熱伝導層27である。したがって、IGBT2が接続される回路内で短絡現象が発生した場合であっても、ボディ領域17とドリフト領域16との間にあるp/n接合の温度を低い温度に抑えることができ、シリコン半導体層に形成される半導体構造を熱破壊から保護することが可能となる。なお、その他の作用効果は実施例1と同じである。
【実施例3】
【0049】
実施例3の横型半導体装置は、インバータ回路をスイッチングするLDMOSである。実施例3に係るLDMOSについて図5を参照して説明する。
図5に示すように、LDMOS30では、支持基板31と埋め込み酸化シリコン層32とシリコン半導体層33とが順に形成されている。支持基板31の主材料はシリコンであり、接地電位に固定されている。埋め込み酸化シリコン層32の厚みは約4μmであり、シリコン半導体層33は、約1.5μmである。このLDMOS30では、シリコン半導体層33を薄膜化することで高耐圧を実現することができる。シリコン半導体層33の表面は、その大部分が絶縁層43により覆われている。
【0050】
シリコン半導体層33には、第1半導体領域としてのn型のソース領域34と、第2半導体領域としてのn型のドレイン領域35とを備えている。ソース領域34とドレイン領域35との間には、n型のドリフト領域36が設けられている。
【0051】
ソース領域34は、シリコン半導体層33の表面の一部に設けられている。このソース領域34は、p型のボディ領域37に包囲されている。ボディ領域37は、シリコン半導体層33の表面から裏面に亘る範囲に形成されている。p型のボディコンタクト領域38が、シリコン半導体層33の表面で、ボディ領域37の内部に設けられている。ドレイン領域35は、シリコン半導体層33の表面の他の一部に設けられている。このドレイン領域35は、n型のバッファ領域39に包囲されている。バッファ領域39は、シリコン半導体層33の表面から裏面に至る範囲に形成されている。
【0052】
ドリフト領域36の一端はボディ領域37に接しており、他端はバッファ領域39に接している。ドリフト領域36は、ボディ領域37によりソース領域34と分離され、バッファ領域39によりドレイン領域35と分離されている。本実施例では、シリコン半導体層33において、ソース領域34とドレイン領域35との間、すなわち、ボディ領域37及びバッファ領域39のドリフト領域36に隣接している側の一部とドリフト領域36とが、中央半導体領域を構成している。
【0053】
ソース領域34とボディコンタクト領域38の表面の一部は、絶縁層43が形成されておらず、第1主電極としてのソース電極40に接触しており、ソース電極40に電気的に接続している。また、ドレイン領域35の表面の一部は、絶縁層43が形成されておらず、第2主電極としてのドレイン電極41に接触しており、ドレイン電極41に電気的に接続している。ボディ領域37の表面には、酸化シリコンからなるゲート絶縁膜42を介してゲート電極44が対向している。ゲート電極44には、ゲート配線45が接続されている。
【0054】
絶縁層43は、表側酸化シリコン層46と高熱伝導層47と層間絶縁膜層48とを備えている。この絶縁層43により、ソース電極40、ドレイン電極41及びゲート電極44が絶縁されている。また、図示は省略するが、各電極40,41,44に接続される配線が、層間絶縁膜により互いに絶縁されている。
【0055】
表側酸化シリコン層46は、シリコン半導体層33の表面において、ドリフト領域36とバッファ領域39のドリフト領域36側の部位とを覆うようにして形成されている。この表側酸化シリコン層46は、ゲート絶縁膜42に連続して一体に形成されている。表側酸化シリコン層46の厚みは、ゲート酸化膜と同じ厚みである。なお、表側酸化シリコン層46の厚みは、ゲート絶縁膜42の厚み以下であればよい。表側酸化シリコン層46を形成しているために、シリコン半導体層33と絶縁層43の界面に電荷が生じることが抑制され、リーク電流が生じることを抑制することができる。
【0056】
高熱伝導層47は、表側酸化シリコン層46の表面の大部分を覆うようにして形成されており、ドリフト領域36の真上に広がっている。高熱伝導層47は、窒化シリコンで構成されており、厚みは1.3μmである。また、層間絶縁膜層48は、高熱伝導層47の周囲及び上方等に形成されており、酸化シリコンで構成されている。
【0057】
LDMOS30は、絶縁層43の一部が高熱伝導層47であるために、回路内で短絡現象が発生した場合であっても、ボディ領域37とドリフト領域36との間にあるp/n接合の温度を低い温度に抑えることができる。したがって、保護回路によって短絡現象発生から設計時間内にゲート電圧をオフするという対策を講じることにより、シリコン半導体層33に形成される半導体構造を熱破壊から保護することが可能となる。
【実施例4】
【0058】
実施例4の横型半導体装置は、PINダイオードである。実施例4に係るPINダイオードについて図6を参照して説明する。
図6に示すように、PINダイオード50では、支持基板51と埋め込み酸化シリコン層52とシリコン半導体層53とが順に形成されている。支持基板51の主材料はシリコンであり、接地電位に固定されている。埋め込み酸化シリコン層52の厚みは約4μmであり、シリコン半導体層53は、約1.5μmである。このPINダイオード50では、シリコン半導体層53を薄膜化することで高耐圧を実現することができる。シリコン半導体層53の表面は、その大部分が絶縁層63により覆われている。
【0059】
シリコン半導体層53には、第1半導体領域としてのp型の第1アノード領域54と、第2半導体領域としてのn型のカソード領域55とを備えている。第1アノード領域54とカソード領域55との間には、n型のドリフト領域56が設けられている。なお、ドリフト領域56は、i型(真性半導体)の領域であってもよく、n型である必要は必ずしもない。PINダイオード50では、ドリフト領域56の不純物濃度を低くすることにより、アノード電極60に所定値以上の電圧を印加した場合にのみ、アノード電極60側からカソード電極61側に電流が流れるようにしている。
【0060】
第1アノード領域54は、シリコン半導体層53の表面の一部に設けられている。この第1アノード領域54は、第1アノード領域54よりも不純物濃度が低いp型の第2アノード領域57に包囲されている。第2アノード領域57は、シリコン半導体層53の表面から裏面に亘る範囲に形成されている。カソード領域55は、シリコン半導体層53の表面の他の一部に設けられている。このカソード領域55は、n型のバッファ領域59に包囲されている。バッファ領域59は、シリコン半導体層53の表面から裏面に至る範囲に形成されている。
【0061】
ドリフト領域56の一端は第2アノード領域57に接しており、他端はバッファ領域59に接している。ドリフト領域56は、第2アノード領域57により第1アノード領域54と分離され、バッファ領域59によりカソード領域55と分離されている。本実施例では、シリコン半導体層53において、第1アノード領域54とカソード領域55との間、すなわち、第2アノード領域57及びバッファ領域59のドリフト領域56に隣接している側の一部とドリフト領域56とが、中央半導体領域を構成している。なお、中央半導体領域には、第2アノード領域57とドリフト領域56との界面が存在しており、本実施例では、この界面をp/n接合の界面とする。
【0062】
第1アノード領域54の表面の一部は、絶縁層63が形成されておらず、第1主電極としてのアノード電極60に接触しており、アノード電極60に電気的に接続している。また、カソード領域55の表面の一部は、絶縁層63が形成されておらず、第2主電極としてのカソード電極61に接触しており、カソード電極61に電気的に接続している。
【0063】
絶縁層63は、表側酸化シリコン層66と、高熱伝導層67と層間絶縁膜層68とを備えている。この絶縁層63により、アノード電極60、カソード電極61が絶縁されている。また、図示を省略するが、各電極60,61に接続される配線が、層間絶縁膜により互いに絶縁されている。
【0064】
表側酸化シリコン層66は、表側酸化シリコン層46は、シリコン半導体層53の表面において、第2アノード領域57及びバッファ領域59のドリフト領域56側の部位と、ドリフト領域56とを覆うようにして形成されており、ドリフト領域56の全体を覆っている。表側酸化シリコン層66を形成することにより、シリコン半導体層53と絶縁層63の界面に電荷が生じることが抑制され、リーク電流が生じることを抑制することができる。高熱伝導層67は、表側酸化シリコン層66の表面の大部分を覆うようにして形成されており、ドリフト領域56の真上に広がっている。高熱伝導層67は、窒化シリコンで構成されており、厚みは1.3μmである。また、層間絶縁膜層68は、高熱伝導層67の周囲及び上方等に形成されており、酸化シリコンで構成されている。
【0065】
このPINダイオード50は、絶縁層63の一部が高熱伝導層67であるために、PINダイオード50が接続されている回路で短絡現象が発生した場合であっても、第2アノード領域57とドリフト領域56との間にあるp/n接合の温度を低い温度に抑えることができる。したがって、シリコン半導体層53に形成される半導体構造を熱破壊から保護することが可能となる。
【実施例5】
【0066】
実施例5の横型半導体装置は、ESD(Electro Static Discharge)保護ダイオードである。実施例5に係るESD保護ダイオードについて図6を参照して説明する。
図6に示すように、ESD保護ダイオード70では、支持基板71と埋め込み酸化シリコン層72とシリコン半導体層73とが順に形成されている。支持基板71の主材料はシリコンであり、接地電位に固定されている。埋め込み酸化シリコン層72の厚みは約4μmであり、シリコン半導体層73は約1.5μmである。このESD保護ダイオード70では、シリコン半導体層73を薄膜化することで高耐圧を実現することができる。シリコン半導体層73の表面は、その大部分が絶縁層83により覆われている。
【0067】
シリコン半導体層73には、第1半導体領域としてのp型の第1アノード領域74と、第2半導体領域としてのn型の第1カソード領域75とを備えている。第1アノード領域74は、シリコン半導体層73の表面の一部に設けられている。この第1アノード領域74は、第1アノード領域74よりも不純物濃度が低いp型の第2アノード領域76に包囲されている。第2アノード領域76は、シリコン半導体層73の表面から裏面に亘る範囲に形成されている。第1カソード領域75は、シリコン半導体層73の表面の他の一部に設けられている。この第1カソード領域75は、第1カソード領域75よりも不純物濃度が低いn型の第2カソード領域77に包囲されている。第2カソード領域77は、シリコン半導体層73の表面から裏面に至る範囲に形成されている。
【0068】
第2アノード領域76と第2カソード領域77とは、互いに接している。すなわち、本実施例のESD保護ダイオード70は、実施例4のPINダイオードと異なり、n型のドリフト領域を設けていない。そのため、アノード電極80に微弱な電圧が印加された場合であってもアノード電極80側からカソード電極81側に電流が流れる。したがって、ESD保護ダイオード70を、IGBTなどの半導体装置を収容しているICと入出力信号用のパッドとの間に接続することにより、静電気による電圧が発生した場合には、電荷をESD保護ダイオード70を通じてグランドに流すことが可能となり、ICが保護される。本実施例では、シリコン半導体層73において、第2アノード領域76及び第2カソード領域77における第1アノード領域74と第1カソード領域75との間の領域が、中央半導体領域を構成している。
【0069】
第1アノード領域74の表面の一部は、絶縁層83が形成されておらず、第1主電極としてのアノード電極80に接触しており、アノード電極80に電気的に接続している。また、第1カソード領域75の表面の一部は、絶縁層83が形成されておらず、第2主電極としてのカソード電極81に接触しており、カソード電極81に電気的に接続している。
【0070】
絶縁層83は、表側酸化シリコン層86と、高熱伝導層87と層間絶縁膜層88とを備えている。この絶縁層83により、アノード電極80、カソード電極81が絶縁されている。また、図示を省略するが、各電極80,81に接続される配線が、絶縁層83の表面に形成される層間絶縁膜により互いに絶縁されている。
【0071】
表側酸化シリコン層86は、シリコン半導体層73の表面において、第2アノード領域76及び第2カソード領域77における第1アノード領域74と第1カソード領域75との間の領域の大部分を覆うようにして形成されている。表側酸化シリコン層86が形成されているために、シリコン半導体層73と絶縁層83の界面に電荷が生じることが抑制され、リーク電流が生じることを抑制することができる。高熱伝導層87は、表側酸化シリコン層86の表面の全体を覆うようにして形成されている。高熱伝導層87は、窒化シリコンで構成されており、厚みは1.3μmである。また、層間絶縁膜層88は、高熱伝導層87の周囲及び上方等に形成されており、酸化シリコンで構成されている。
【0072】
このESD保護ダイオード70は、絶縁層83の一部が高熱伝導層87であるために、ESD保護ダイオード70が接続されている回路で短絡現象が生じた場合であっても、第2アノード領域76と第2カソード領域77との間にあるp/n接合の温度を低い温度に抑えることができる。したがって、シリコン半導体層73に形成される半導体構造を熱破壊から保護することが可能となる。
(その他の実施例)
【0073】
上記各実施例では、高熱伝導層を窒化シリコンにより構成するようにしているが、高熱伝導層は、窒化アルミニウムや、酸化シリコンよりも熱伝導性の高いその他の材料で構成するようにしてもよい。また、上記各実施例では、高熱伝導層を酸化シリコンよりも熱容量が高い材料で構成しており、このことによってもシリコン半導体層の局所的な温度上昇をより効果的に抑制するようにしているが、高熱伝導層は酸化シリコンよりも高熱伝導性の材料であればよく、熱容量が高い材料でなくてもよい。
【0074】
上記各実施例では、高熱伝導層を、シリコン半導体層の表面に酸化シリコン層を介して形成することにより、リーク電流が生じることを抑制するようにはしているが、シリコン半導体層の表面に高熱伝導層を直接形成するようにしてもよい。このような場合であっても、シリコン半導体層で発熱した場合に、この熱を高熱伝導層によって周囲に伝導することができる。また、上記各実施例では、絶縁層の一部を高熱伝導層としているが、絶縁層全体を高熱伝導層としてもよい。
【0075】
上記各実施例では、埋め込み酸化シリコン層の厚みを4μmとし、シリコン半導体層の厚みを1.5μmとしたが、シリコン半導体層の厚みは2μm程度であってもよく、これらの厚みは特に限定されない。すなわち、これらの厚みはシリコン半導体層が高耐圧を実現できるように設定されていればよい。また、高熱伝導層の厚みも1.3μmに限定されず、シリコン半導体層の熱を適切に周囲に伝導することができる厚みであればよい。
【0076】
以上、本明細書に開示される技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は、複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0077】
1,2:IGBT
11,31,51,71:支持基板
12,32,52,72:埋め込み酸化シリコン層
13,33,53,73:シリコン半導体層
14:エミッタ領域
15:コレクタ領域
16,29,36,56:ドリフト領域
17,37:ボディ領域
18,38:ボディコンタクト領域
19,39,59:バッファ領域
20:エミッタ電極
21:コレクタ電極
22,42:ゲート絶縁膜
23,43,63,83,91:絶縁層
24,44:ゲート電極
25,45:ゲート配線
26,46,66,86:表側酸化シリコン層
27,47,67,87:高熱伝導層
28,48,68,88:層間絶縁膜層
29a:第1層
29b:第2層
30:LDMOS
34:ソース領域
35:ドレイン領域
40:ソース電極
41:ドレイン電極
50:PINダイオード
54,74:第1アノード領域
55:カソード領域
57,76:第2アノード領域
60,80:アノード電極
61,81:カソード電極
70:ESD保護ダイオード
75:第1カソード領域
77:第2カソード領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と埋め込み酸化シリコン層とシリコン半導体層と絶縁層とが順に形成されており、絶縁層が形成されていない範囲においてシリコン半導体層に接している第1主電極と第2主電極とを備えており、
前記シリコン半導体層が、前記第1主電極に接している第1半導体領域と、前記第2主電極に接している第2半導体領域と、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域との間に存在している中央半導体領域とを備えており、
前記絶縁層の少なくとも一部が、酸化シリコンよりも熱伝導性が高い材料で形成されているとともに前記中央半導体領域の真上に広がっている高熱伝導層であることを特徴とする横型半導体装置。
【請求項2】
前記高熱伝導層が、前記シリコン半導体層の表面に酸化シリコン層を介して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の横型半導体装置。
【請求項3】
前記中央半導体領域に、前記第1半導体領域を包囲しているとともにゲート絶縁膜を介してゲート電極に対向しているp型のボディ領域と、そのボディ領域に隣接しているとともに前記第2半導体領域の近傍まで延びているn型のドリフト領域とを備えており、
前記高熱伝導層が、前記ドリフト領域の真上に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の横型半導体装置。
【請求項4】
前記ゲート絶縁膜が、酸化シリコン層で構成されており、
前記高熱伝導層が、前記シリコン半導体層の表面に前記ゲート絶縁膜の厚み以下の厚みの酸化シリコン層を介して形成されていることを特徴とする請求項3に記載の横型半導体装置。
【請求項5】
前記第1半導体領域がアノード領域であり、
前記第2半導体領域がカソード領域であり、
前記中央半導体領域には、p/n接合の界面が存在している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の横型半導体装置。
【請求項6】
前記高熱伝導性の材料が、窒化シリコン又は窒化アルミニウムであることを特徴とする請求項4〜5のいずれか1項に記載の横型半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−134947(P2011−134947A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294293(P2009−294293)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】